中国における産業構造変化の貢献度分析
萩 原 弘 子
0.はじめに
一国の経済発展の過程は、通常、産業構造の変化を伴う。経済発展過程における産 業構造変化に関する研究は、Kuznets(1957)に代表される各国の長期データを用いた一 人当たり所得水準と産業構造変化の関係に関する定型的事実の研究と、産業構造変化 が生じるのはなぜかを説明しようとする研究の両面で蓄積されてきた。後者の産業構 造変化をもたらす要因を明らかにしようとする研究として、代表的なものとしては、
Chenery(1960)、Chenery・Shishido・Watanabe(1962)などが用いた「DPG 分析」(Deviation from Proportional Growth) がある。
本稿の目的は、中国の産業構造の変化とそれをもたらす要因を明らかにすることで ある。われわれは、DPG 分析を展開した新たな方法を用いている。産業構造の変化を各 産業の総生産額に対するシェアの変化でとらえて、そのシェア変化を分析対象とする ところに本研究の独自性がある。1 RIETI の CIP データベースの産業連関表を用いて、
1982 年から 2007 年までを 5 年ごとに 5 つの期間に分けて分析をおこなう。
本稿の以下の構成は、次のようなものである。まず、第 1 節では、分析のモデルと 方法について説明する。第 2 節では、分析に用いたデータとその実質化、および産業 分類について述べる。第 3 節では、第 1 節で述べた産業連関分析の枠組に基づき、各 産業の生産額の対総生産額シェアの変化を概観する。第 4 節では、産業連関分析に基 づき、各産業のシェアの変化をもたらす諸要因の貢献度を計測する。第 5 節では、結 論を述べる。
1 各産業の総生産額シェアを用いた研究として、萩原(2012、2017)、Hagiwara(2015)がある。
1.モデルと方法
本節では、本稿で用いたモデルと方法について述べる。われわれのモデルは、DPG
(Deviation from Proportional Growth)分析を展開したものである。DPG 分析が、産 業のシェアに変化がない「比例的成長」の状態を定義し、現実の生産額と比例的成長 の場合の仮想的生産額の差異によって産業構造変化を把握するのに対し、本稿の分析 は、各産業の生産額を総生産額で除した各産業の総生産額に占めるシェアの変化を産 業構造変化としてとらえて、それに対する要因の貢献度分析をおこなう。分析期間が 2 期間以上になる場合、基準年をどこに定めるかの問題が生じるが、我々の方法はその 問題を回避することができる。
競争輸入型の産業連関表における需給一致式は、
m e fd Ax
x
と書ける。ただし、xは各産業の生産額から成るベクター、e は輸出額のベクター、m は輸入額のベクター、fd は国内最終需要のベクター、
g i c fd である。 輸入係数を
Ax fd
M
m
と定義すると、国内生産額(x)は、
I M
Ax
I M
fd ex
とあらわすことができ、
I I M A
I M
fd e
x 1
となる。
産業構造の変化を考えるために 2 時点の生産額のシェアを比較する。
2 時点の産業連関表
0 0 0 0
0 0 0
1 1 1 1
1 1 1
e fd M I x A M I x
e fd M I x A M I x
について、それぞれの時点の生産額合計の逆数をα0,α1
i i
i xi0 1 x1
0 1 , 1
として、それぞれにかけると左辺は産業部門別のシェアとなる。
0 0 0 0 0 0
0 0 0 0
0
1 1 1 1 1 1
1 1 1 1
1
e fd
M I x A M I x
e fd M I x A M I x
上式より、産業のシェア変化は、
1 1 0 0
0 0 0 1 0 0 1 1 1
0 0 0 0 1 0 0 0 1 1
0 0 1 1 1 1 0
0 1 1
e e
fd M
M fd fd
M I
x A M M x A A M I
x x A M I x x
となり、
1
1 0
0 00 0 0 0 0 0 1
0 0 1 1 0 0 1 1 1 0
0 1 1 1 1
x A A M I
fd x
A M M
e e fd
fd M
I x x A M I I
と変形できる。ここで、
0 1
0 1
0 0 1 1
0 0 1 1
0 0 1 1
A A A
M M M
e e e
fd fd
fd
x x x
レオンチェフ逆行列を、
1 1
11
I I M A B
とおくと、各産業の生産額の対総生産額シェアの変化は、
0 0 0 0 0
1 1
0 01
1 1
1
x A M I B fd x
A M B
e B fd M I B x
で求められ、(対総生産額比率としての)国内最終需要、(対総生産額比率としての)輸 出、輸入係数、投入係数の変化によって説明できる。本論文では、上式を用いて、各 産業のシェアの変化に対するこれらの要因の貢献度を分析する。
1.モデルと方法
本節では、本稿で用いたモデルと方法について述べる。われわれのモデルは、DPG
(Deviation from Proportional Growth)分析を展開したものである。DPG 分析が、産 業のシェアに変化がない「比例的成長」の状態を定義し、現実の生産額と比例的成長 の場合の仮想的生産額の差異によって産業構造変化を把握するのに対し、本稿の分析 は、各産業の生産額を総生産額で除した各産業の総生産額に占めるシェアの変化を産 業構造変化としてとらえて、それに対する要因の貢献度分析をおこなう。分析期間が 2 期間以上になる場合、基準年をどこに定めるかの問題が生じるが、我々の方法はその 問題を回避することができる。
競争輸入型の産業連関表における需給一致式は、
m e fd Ax
x
と書ける。ただし、xは各産業の生産額から成るベクター、e は輸出額のベクター、m は輸入額のベクター、fd は国内最終需要のベクター、
g i c fd である。 輸入係数を
Ax fd
M
m
と定義すると、国内生産額(x)は、
I M
Ax
I M
fd ex
とあらわすことができ、
I I M A
I M
fd e
x 1
となる。
産業構造の変化を考えるために 2 時点の生産額のシェアを比較する。
2 時点の産業連関表
0 0 0 0
0 0 0
1 1 1 1
1 1 1
e fd M I x A M I x
e fd M I x A M I x
について、それぞれの時点の生産額合計の逆数をα0,α1
i i
i xi0 1 x1
0 1 , 1
として、それぞれにかけると左辺は産業部門別のシェアとなる。
2.データ
本稿の実証分析では、経済産業研究所(RIETI)の提供する CIP(China Industrial Productivity)データベース 3.0 を用いた。2 CIP データベースは、1980 年から 2010 年までの各年の産業連関表から成るデータベースである。本稿では、長期的な産業構 造変化のトレンドをみるために、このデータベースの中から、1982 年以降 5 年毎の産 業連関表(1982、1987、1992、1997、2002、2007)を選択して、1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間について産業構造変化と その要因の貢献度分析をおこなう。
産業分類は、CIP 3.0 に従い、37 産業部門とした。37 部門および統合部門は、第 1 表に示すとおりである。37 部門すべてに各部門の対総生産額シェアの変化に対する要 因の貢献度分析を行い、大きな傾向を把握しやすいように集計した。
CIP データは、対前年価格で実質化されているが、本稿では、5 年前(各区間の基準 年)の価格に変換して実質化した。
第 1 表 産業分類
2 WU, Harry X. and Keiko ITO (2015) 参照。
1農林水産業 農業・林業・牧畜・漁業
2鉱業 採石業,原油・天然ガス掘削,金属鉱業,非金属鉱業
3軽工業 食品・飲料,たばこ製品,繊維および繊維製品,衣服,皮革・皮革製 品・毛皮,製材・木製品・家具・装備品,紙加工品・印刷・出版,そ の他製造業
4重工業(素材型) 石油・石炭製品,化学製品,ゴム・プラスティック製品,窯業・土石 製品製造業,第一次加工金属工業,金属製品(圧延品を除く)
5重工業(組み立て型) 産業機械および機器,電気製品,電子・通信機器,器具・事務用品, 自動車およびその他の輸送用機械
6電気・ガス・水道供給 電気・ガス・水道供給
7建設 建設
8サービス
卸・小売業,旅館業および飲食業,輸送・倉庫・郵便業,情報サービ スおよびコンピューターサービス,金融仲介業,不動産,リース・科 学技術・ビジネスサービス業,政府・行政、,教育,医療および福祉 サービス,文化・スポーツ・娯楽業
3.産業構造変化の概観
本節では、各産業の対総生産額シェア変化を概観する。1982-1987 年、1987-1992 年、
1992-1997 年、1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間について、各産業の対総生産 額シェア変化を集計して統合部門別に対総生産額シェアの変化をみる。第 1 図は、統 合部門別に 1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、1997-2002 年、2002-2007 年 の 5 期間における対総生産額シェアの変化を示したものである。
農業・林業・牧畜・漁業部門は、全 5 期間を通じて対総生産額シェア変化はマイナ スであり、シェアを毎期減少させている。減少の程度は、1982-1987 年、1987-1992 年 の期間は 5%を超える大きなものであったが、その後の 3 期間は 3%前後の減少とやや緩 やかになっている。
軽工業は、1982-1987 年の期間にはシェアの上昇幅は 5%を超え、上昇幅は組立型重 工業に次いで大きかった。しかし、その後シェアの上昇幅は、趨勢的に縮小している。
1997-2002 年の期間にはシェアの変化は-2.63%となりシェアを低下させている。
第 1 図 産業別シェアの変化
出所:RIETI CIP データベース 3.0 のデータをもとに、筆者算出。
-8%
-6%
-4%
-2%
0%
2%
4%
6%
8%
10%
1982-87 1987-92 1992-97 1997-02 2002-07
2.データ
本稿の実証分析では、経済産業研究所(RIETI)の提供する CIP(China Industrial Productivity)データベース 3.0 を用いた。2 CIP データベースは、1980 年から 2010 年までの各年の産業連関表から成るデータベースである。本稿では、長期的な産業構 造変化のトレンドをみるために、このデータベースの中から、1982 年以降 5 年毎の産 業連関表(1982、1987、1992、1997、2002、2007)を選択して、1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間について産業構造変化と その要因の貢献度分析をおこなう。
産業分類は、CIP 3.0 に従い、37 産業部門とした。37 部門および統合部門は、第 1 表に示すとおりである。37 部門すべてに各部門の対総生産額シェアの変化に対する要 因の貢献度分析を行い、大きな傾向を把握しやすいように集計した。
CIP データは、対前年価格で実質化されているが、本稿では、5 年前(各区間の基準 年)の価格に変換して実質化した。
第 1 表 産業分類
2 WU, Harry X. and Keiko ITO (2015) 参照。
1 農林水産業 農業・林業・牧畜・漁業
2 鉱業 採石業,原油・天然ガス掘削,金属鉱業,非金属鉱業
3 軽工業 食品・飲料,たばこ製品,繊維および繊維製品,衣服,皮革・皮革製 品・毛皮,製材・木製品・家具・装備品,紙加工品・印刷・出版,そ の他製造業
4 重工業(素材型) 石油・石炭製品,化学製品,ゴム・プラスティック製品,窯業・土石 製品製造業,第一次加工金属工業,金属製品(圧延品を除く)
5 重工業(組み立て型) 産業機械および機器,電気製品,電子・通信機器,器具・事務用品, 自動車およびその他の輸送用機械
6 電気・ガス・水道供給 電気・ガス・水道供給
7 建設 建設
8 サービス
卸・小売業,旅館業および飲食業,輸送・倉庫・郵便業,情報サービ スおよびコンピューターサービス,金融仲介業,不動産,リース・科 学技術・ビジネスサービス業,政府・行政、,教育,医療および福祉 サービス,文化・スポーツ・娯楽業
素材型重工業は、1982-1987 年の期間には、シェア変化はマイナスであったが、その 後プラスに転じている。シェアの上昇幅は、1987-1992 年期間の 2.4%からは縮小して いるが、根強くシェアを伸ばしている。
組立型重工業は、全期間を通じてシェアの変化がプラスである唯一の部門である。
シェアの上昇幅も全期間を通じて最も大きい部門であり、成長産業あるいはリーディ ングインダストリーとなっている。
サービス部門は、全期間においてシェアを減らしている。名目値でみたシェア変化 はプラスであるが、サービスの相対価格の上昇により、実質化したデータに基づくシ ェア変化はマイナスとなっている。
以上のことから、分析対象とした 1982 年から 2007 年の期間の中国の産業構造を実 質値で見たとき、農林漁業などの第 1 次産業とサービス業が各々対総生産額に占める シェアを減らしており、他方で製造業がシェアを伸ばしていること。また、製造業の 中においても、軽工業がシェアの上昇幅を大きく低下させているのに対して、素材型 重工業はシェアの上昇幅が安定しており、組立型重工業は製造業において唯一全期間 を通じてシェアを上昇させている部門であり、かつ全期間においてシェアの上昇幅が 最大の部門であることが確認できた。
4.産業構造変化の貢献度分析
本節では、第 1 節で提示したモデルと方法を用いて、中国における産業構造変化に 対する諸要因の貢献度分析をおこなう。1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、
1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間について、産業構造変化を各産業の生産額の 対総生産額に対するシェアの変化によってとらえ、対総生産額比率としての国内最終 需要、輸入係数、投入係数のそれに対する貢献度を分析する。ここでは、各産業の変 化に着目して、産業ごとに全期間を通じたシェアの変化をもたらす要因について述べ る。
また、第 3 節で示した部門のうち、大きなシェアの変化がみられる製造業とサービス 業に焦点を当てて分析する。
(1) 軽工業
第 2 表は、1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間における各産業の対総生産額シェアの変化ΔS、およびそれに対する(総
生産額比率としての)国内消費の変化の貢献度ΔC、同じく国内投資の変化の貢献度Δ I、輸出変化の貢献度ΔE、投入係数の変化の貢献度ΔA、輸入係数の変化の貢献度ΔM を示したものである。
繊維、食品に代表される軽工業は、1982-1987 年の期間において、その対総生産額シ ェア上昇幅(5.07%)が組立型重工業(6.94%)に次いで大きい部門である。このシェア の上昇に対する貢献度を見ると、投入係数の変化の寄与(2.93%)が最も大きく、次に 輸出変化の貢献度が高い(1.84%)。投入係数の変化は軽工業のシェア上昇の約 60%を説 明しており、技術変化と輸出変化 2 つの要因で軽工業のシェア上昇の 94%を説明してい る。
技術変化と輸出の変化は、本研究で対象としたすべての期間において一貫してプラ スの貢献をしている。それにも拘わらず、第 1 図でみたように 1987 年以降、軽工業の シェアの上昇幅は趨勢的に縮小していく。これに寄与した最大の要因は、消費変化の マイナスの貢献である。消費変化は、1982-1987 年の期間においては軽工業のシェア上 昇に対してプラスの貢献をしていたが、それ以降の期間は一貫してマイナスの貢献を しており、かつその傾向を強めている。1982-1987 年の期間は、軽工業部門における新 製品(繊維産業であれば化学繊維)の導入期であり、外国からの直接投資の受け入れ による生産拡大・輸出増加とともに、新製品に対する国内市場が形成されたと考えら れる。1987 年以降は、上述のように輸出が継続的にプラスの貢献をする一方で、消費 の貢献度はマイナスになっていく。
(2)素材型重工業
石油、石炭、化学、金属製品などの素材型重工業は、1982-1987 年の期間にはシェア 変化がマイナスであったが、それ以降の 4 期間はプラスとなっており、対総生産額シ ェアを上昇させている。1982-1987 年の期間においては、技術変化(投入係数の変化)
と輸入変化がマイナスの貢献をしていることが、素材型重工業のシェアの低下をもた らしている。
1987 年以降の 3 期間における素材型重工業のシェアの上昇に対しては、技術変化が 大きくプラスの貢献をしている。1992 年以降の 3 期間については、輸出変化のプラス の貢献度が大きい。2002-2007 年については輸出変化が大きくプラスの貢献をしている のに加えて、輸入代替効果が素材型重工業のシェア上昇に大きくプラスの貢献(2.55%)
をしている。
素材型重工業は、1982-1987 年の期間には、シェア変化はマイナスであったが、その 後プラスに転じている。シェアの上昇幅は、1987-1992 年期間の 2.4%からは縮小して いるが、根強くシェアを伸ばしている。
組立型重工業は、全期間を通じてシェアの変化がプラスである唯一の部門である。
シェアの上昇幅も全期間を通じて最も大きい部門であり、成長産業あるいはリーディ ングインダストリーとなっている。
サービス部門は、全期間においてシェアを減らしている。名目値でみたシェア変化 はプラスであるが、サービスの相対価格の上昇により、実質化したデータに基づくシ ェア変化はマイナスとなっている。
以上のことから、分析対象とした 1982 年から 2007 年の期間の中国の産業構造を実 質値で見たとき、農林漁業などの第 1 次産業とサービス業が各々対総生産額に占める シェアを減らしており、他方で製造業がシェアを伸ばしていること。また、製造業の 中においても、軽工業がシェアの上昇幅を大きく低下させているのに対して、素材型 重工業はシェアの上昇幅が安定しており、組立型重工業は製造業において唯一全期間 を通じてシェアを上昇させている部門であり、かつ全期間においてシェアの上昇幅が 最大の部門であることが確認できた。
4.産業構造変化の貢献度分析
本節では、第 1 節で提示したモデルと方法を用いて、中国における産業構造変化に 対する諸要因の貢献度分析をおこなう。1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、
1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間について、産業構造変化を各産業の生産額の 対総生産額に対するシェアの変化によってとらえ、対総生産額比率としての国内最終 需要、輸入係数、投入係数のそれに対する貢献度を分析する。ここでは、各産業の変 化に着目して、産業ごとに全期間を通じたシェアの変化をもたらす要因について述べ る。
また、第 3 節で示した部門のうち、大きなシェアの変化がみられる製造業とサービス 業に焦点を当てて分析する。
(1) 軽工業
第 2 表は、1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間における各産業の対総生産額シェアの変化ΔS、およびそれに対する(総
第 2 表 産業のシェア変化に対する貢献度
出所:RIETI CIP データベース 3.0 のデータをもとに、筆者算出。
シェア変化
産業 期間 ΔS ΔC ΔI ΔE ΔA ΔM
1982-87 -5.04% -3.51% -0.59% 0.00% -1.22% 0.28%
1987-92 -5.51% -3.53% -0.55% -0.56% -0.94% 0.08%
1992-97 -3.10% -2.73% 0.13% -0.02% -0.45% -0.04%
1997-02 -2.56% -1.47% -0.46% -0.04% -0.48% -0.10%
2002-07 -3.63% -3.53% -0.03% 0.17% -0.43% 0.19%
1982-87 -1.39% -0.01% -0.02% -0.43% -0.88% -0.04%
1987-92 0.41% -0.13% 0.07% -0.26% 0.60% 0.13%
1992-97 -0.40% -0.19% -0.05% 0.08% 0.01% -0.25%
1997-02 0.04% -0.02% 0.05% 0.14% 0.03% -0.15%
2002-07 -0.98% -0.40% -0.11% 0.10% -0.86% 0.29%
1982-87 5.07% 0.91% -0.23% 1.84% 2.93% -0.39%
1987-92 0.04% -1.67% -0.02% 0.45% 1.25% 0.04%
1992-97 2.37% -1.01% 0.58% 1.65% 1.54% -0.39%
1997-02 -2.63% -1.55% -1.07% 0.13% 0.15% -0.29%
2002-07 0.55% -2.97% 0.22% 1.29% 1.03% 0.97%
1982-87 -1.20% -0.21% 0.43% 0.77% -0.80% -1.40%
1987-92 2.41% -0.83% -1.13% -0.33% 3.45% 1.25%
1992-97 1.41% -1.26% 0.80% 2.34% 1.12% -1.59%
1997-02 0.76% -0.79% -0.47% 1.06% 1.55% -0.59%
2002-07 1.84% -2.31% -0.36% 2.65% -0.69% 2.55%
1982-87 6.94% 1.71% 2.94% 0.81% 2.66% -1.19%
1987-92 3.02% -0.44% 0.63% 1.48% 1.49% -0.15%
1992-97 4.02% -0.06% -0.06% 2.37% 2.19% -0.42%
1997-02 5.42% 0.01% 1.31% 3.07% 1.81% -0.78%
2002-07 7.48% -1.02% -0.07% 6.48% -0.15% 2.24%
1982-87 -1.07% -0.03% -0.03% 0.00% -0.84% -0.17%
1987-92 1.01% -0.24% -0.08% 0.01% 1.22% 0.09%
1992-97 -0.91% -0.22% 0.00% 0.13% -0.76% -0.07%
1997-02 0.74% 0.00% -0.03% 0.14% 0.72% -0.09%
2002-07 0.55% -1.44% -0.11% 0.63% 0.94% 0.53%
1982-87 -0.19% -0.05% -0.15% 0.01% 0.00% -0.01%
1987-92 -1.27% -0.01% -1.49% 0.10% 0.24% -0.11%
1992-97 0.04% -0.03% -0.06% -0.10% 0.15% 0.09%
1997-02 0.43% -0.09% 0.30% 0.03% 0.20% 0.00%
2002-07 -0.98% 0.04% -0.84% 0.03% -0.22% 0.01%
1982-87 -3.11% -2.20% -0.04% 0.64% -0.35% -1.16%
1987-92 -0.11% -4.01% -0.10% -0.41% 3.92% 0.48%
1992-97 -3.44% -1.95% -0.56% 1.14% -2.33% 0.26%
1997-02 -2.20% -1.86% -0.07% 0.70% -0.56% -0.41%
2002-07 -4.82% -5.18% -0.06% 1.15% -0.08% -0.66%
1982-87 0.00% -3.40% 2.33% 3.64% 1.51% -4.07%
1987-92 0.00% -10.86% -2.65% 0.48% 11.22% 1.81%
1992-97 0.00% -7.43% 0.79% 7.59% 1.46% -2.41%
1997-02 0.00% -5.79% -0.44% 5.23% 3.40% -2.41%
2002-07 0.00% -16.80% -1.36% 12.50% -0.47% 6.13%
貢献度
建設
サービス
合計 農林水産
業
鉱業
軽工業
重工業 (素材型)
重工業 (組立型)
電気・
ガス・
水道
(3) 組立型重工業
産業機械、電気・電子、自動車などの組立型重工業の対総生産額シェアの変化は、
本稿で分析対象とした 5 期間全てにおいてプラスであり、その上昇幅も全期間を通じ て他産業に比べて大きい。(第 2 表参照。)
1982-1987 年の期間における組立型製造業の対生産総額シェア変化は 6.94%と 2002-2007 年の期間(7.48%)に次ぎ大きい。このシェアの大幅な上昇については、輸 入係数を除くすべての要因がプラスの貢献をしている。その中でも、特に、投資需要 の変化(2.95%)と技術変化(2.66%)のプラスの貢献が突出して大きく、この2つだけで シェア変化の 80%以上を説明する。また、消費需要の変化が 1.7%と大きなプラスの貢 献をしているのもこの期間の特徴である。上述した軽工業と同様に、組立型産業にお いてもこの期間は新製品の導入期であり、外国からの直接投資の受け入れ、固定資本 形成の増加と新技術の導入が進むと同時に、新製品に対する消費市場が形成されたこ とを示している。
1987 年以降の 4 期間は、輸出変化の貢献度が上昇することにより当該産業の対総生 産額シェアの上昇幅が拡大していき、2002-2007 年の期間においては輸出変化だけでシ ェア上昇の 87%を説明している。また、1987 年以降の 3 期間には、技術変化の貢献度 も大きく、この部門の技術導入が進んだことにより産業間の連関がより強まったこと がわかる。2002-2007 年の期間の特徴として、輸入係数変化が初めてプラスの効果
(2.24%)をもち、輸出変化とともに組立型重工業のシェアの上昇に大きく貢献してい ることである。この輸入係数の効果は、当該産業において輸入代替が進んだことを表 わしている。
(4) サービス部門
サービス部門の生産額の対総生産額シェアの変化は、第 1 図および第 2 表に示した ように、全期間を通じてマイナスである。実質値で計測した場合、中国におけるサー ビス部門の対総生産額シェアは低下していることになる。サービス部門のシェア低下 に最も影響しているのは、消費需要の貢献度の低下である。中国が、サービス部門の 発展を目指すとき、国内消費需要の拡大が鍵になることがわかる。
第 2 表 産業のシェア変化に対する貢献度
出所:RIETI CIP データベース 3.0 のデータをもとに、筆者算出。
シェア変化
産業 期間 ΔS ΔC ΔI ΔE ΔA ΔM
1982-87 -5.04% -3.51% -0.59% 0.00% -1.22% 0.28%
1987-92 -5.51% -3.53% -0.55% -0.56% -0.94% 0.08%
1992-97 -3.10% -2.73% 0.13% -0.02% -0.45% -0.04%
1997-02 -2.56% -1.47% -0.46% -0.04% -0.48% -0.10%
2002-07 -3.63% -3.53% -0.03% 0.17% -0.43% 0.19%
1982-87 -1.39% -0.01% -0.02% -0.43% -0.88% -0.04%
1987-92 0.41% -0.13% 0.07% -0.26% 0.60% 0.13%
1992-97 -0.40% -0.19% -0.05% 0.08% 0.01% -0.25%
1997-02 0.04% -0.02% 0.05% 0.14% 0.03% -0.15%
2002-07 -0.98% -0.40% -0.11% 0.10% -0.86% 0.29%
1982-87 5.07% 0.91% -0.23% 1.84% 2.93% -0.39%
1987-92 0.04% -1.67% -0.02% 0.45% 1.25% 0.04%
1992-97 2.37% -1.01% 0.58% 1.65% 1.54% -0.39%
1997-02 -2.63% -1.55% -1.07% 0.13% 0.15% -0.29%
2002-07 0.55% -2.97% 0.22% 1.29% 1.03% 0.97%
1982-87 -1.20% -0.21% 0.43% 0.77% -0.80% -1.40%
1987-92 2.41% -0.83% -1.13% -0.33% 3.45% 1.25%
1992-97 1.41% -1.26% 0.80% 2.34% 1.12% -1.59%
1997-02 0.76% -0.79% -0.47% 1.06% 1.55% -0.59%
2002-07 1.84% -2.31% -0.36% 2.65% -0.69% 2.55%
1982-87 6.94% 1.71% 2.94% 0.81% 2.66% -1.19%
1987-92 3.02% -0.44% 0.63% 1.48% 1.49% -0.15%
1992-97 4.02% -0.06% -0.06% 2.37% 2.19% -0.42%
1997-02 5.42% 0.01% 1.31% 3.07% 1.81% -0.78%
2002-07 7.48% -1.02% -0.07% 6.48% -0.15% 2.24%
1982-87 -1.07% -0.03% -0.03% 0.00% -0.84% -0.17%
1987-92 1.01% -0.24% -0.08% 0.01% 1.22% 0.09%
1992-97 -0.91% -0.22% 0.00% 0.13% -0.76% -0.07%
1997-02 0.74% 0.00% -0.03% 0.14% 0.72% -0.09%
2002-07 0.55% -1.44% -0.11% 0.63% 0.94% 0.53%
1982-87 -0.19% -0.05% -0.15% 0.01% 0.00% -0.01%
1987-92 -1.27% -0.01% -1.49% 0.10% 0.24% -0.11%
1992-97 0.04% -0.03% -0.06% -0.10% 0.15% 0.09%
1997-02 0.43% -0.09% 0.30% 0.03% 0.20% 0.00%
2002-07 -0.98% 0.04% -0.84% 0.03% -0.22% 0.01%
1982-87 -3.11% -2.20% -0.04% 0.64% -0.35% -1.16%
1987-92 -0.11% -4.01% -0.10% -0.41% 3.92% 0.48%
1992-97 -3.44% -1.95% -0.56% 1.14% -2.33% 0.26%
1997-02 -2.20% -1.86% -0.07% 0.70% -0.56% -0.41%
2002-07 -4.82% -5.18% -0.06% 1.15% -0.08% -0.66%
1982-87 0.00% -3.40% 2.33% 3.64% 1.51% -4.07%
1987-92 0.00% -10.86% -2.65% 0.48% 11.22% 1.81%
1992-97 0.00% -7.43% 0.79% 7.59% 1.46% -2.41%
1997-02 0.00% -5.79% -0.44% 5.23% 3.40% -2.41%
2002-07 0.00% -16.80% -1.36% 12.50% -0.47% 6.13%
貢献度
建設
サービス
合計 農林水産
業
鉱業
軽工業
重工業 (素材型)
重工業 (組立型)
電気・
ガス・
水道
5.おわりに
本稿では、DPG 分析を応用した新たな方法を用いて、中国における 1982 年から 2007 年までの産業構造の変化とそれに対する需要サイドからの貢献度分析をおこなった。
われわれの方法は、各産業の生産額の総生産額に対するシェアの変化を産業構造変化 の指標として、各産業のシェア変化に対する各要因の貢献度を分析したものである。
主な結果は、以下のようなものである。
(1)1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間における各産業の対総生産額シェアの推移をみると、農林水産牧畜業とサー ビス業は、一貫してシェアの変化はマイナスの値をとっており、シェアを低下させて いる。他方で、製造業は対総生産額シェア変化を上昇させている。
(2)製造業の構成をみると、軽工業がシェアの変化幅を趨勢的に低下させているの に対し、素材型重工業のシェア変化は 1982-1987 年の期間を除いてプラス値をとって おり、安定的にそのシェアを伸ばしている。また、組立型重工業は、全期間を通じて シェアの変化がプラスである唯一の部門であり、変化幅が上昇している。このことか ら、組立型重工業は、改革開放後の中国におけるリーディングインダストリーである といえる。
(3)軽工業の生産額シェアの変化に対して、技術変化と輸出変化はプラスの貢献を しているが、(対生産額比としての)消費の変化は一貫してマイナスに貢献している。
素材型重工業のシェア上昇に対して、技術変化が先行してプラスの貢献をしており、
次いで輸出変化がプラスの貢献をしている。組立型重工業は、製造業で唯一そのシェ アを拡大し続けている(シェア変化がプラス)が、当産業のシェアの上昇に貢献した 要因は輸出比率変化と技術変化である。
(4)サービス業は、実質値で見ると一貫してそのシェアを減少させている。サービ ス業のシェアの低下に貢献した最大の要因は消費であり、その貢献がシェア低下の大 部分を説明している。
以上のように、1982 年から 2007 年までの中国の産業構造は、製造業の中でも素材 型重工業と組立型重工業がシェアを伸ばしており、その中でも組立型重工業のシェア の変化幅が突出して大きく、中国のリーディングインダストリ-となっており、これ ら 2 部門のシェア上昇に貢献している要因としては、技術変化と輸出変化があるが、
時間の経過とともに、輸出変化の貢献が技術変化の貢献を上回る最大要因となってい ることが明らかになった。
参考文献
Chenery, H.B., “Patterns of Industrial Growth,” American Economic Review, Vol.50, No.4 , 1960.
Chenery, H.B., S. Shishido, and T. Watanabe, “The Pattern of Japanese Growth, 1914-54,” Econometrica, Vol.30, No.1, 1962.
Hiroko Hagiwara,“A Comparative Analysis of the Industrial Structure of China and India,” Discussion Paper No.83. Institute for Policy and Social Innovation, 2015.
Kuznets, S., “Quantitative Aspects of the Economic Growth of Nations:
Ⅱ.Industrial Distribution of National Product and Labor Force,”
Economic Development and Cultural Change, Vol.5, No.4, 1957.
Pan A. Yotopoulos, and Jeffrey B. Nugent, Economics of Development-Empirical Investigations, Harper & Row, Publishers, Inc., 1976.
Wu, Harry X. and Keiko Ito, "Reconstructing China's Supply-Use and Input-Output Tables in Time Series", RIETI Discussion Paper Series 15-E-004, 2015.
陳光輝・藤川清史、「台湾経済の比例成長からの乖離(DPG)分析」、『世界経済評論』
第 31 巻第 8 号、1987 年。
藤川清史、「産業構造の変化とその要因-日本、韓国、台湾の経験-」、『経営経済』
第 31 号、大阪経済大学、1996 年。
萩原弘子、「中国とインドの産業構造の差異とその要因」、『商大論集』第 63 巻 第 3 号、兵庫県立大学、2012 年。
萩原弘子、「日本における産業構造変化の貢献度分析」、『商大論集』第 69 巻 第 1/2 号、兵庫県立大学、2017 年。
CIP データベース 3.0、独立行政法人経済産業研究所 RIETI http://www.rieti.go.jp/jp/database/cip.html
5.おわりに
本稿では、DPG 分析を応用した新たな方法を用いて、中国における 1982 年から 2007 年までの産業構造の変化とそれに対する需要サイドからの貢献度分析をおこなった。
われわれの方法は、各産業の生産額の総生産額に対するシェアの変化を産業構造変化 の指標として、各産業のシェア変化に対する各要因の貢献度を分析したものである。
主な結果は、以下のようなものである。
(1)1982-1987 年、1987-1992 年、1992-1997 年、1997-2002 年、2002-2007 年の 5 つの期間における各産業の対総生産額シェアの推移をみると、農林水産牧畜業とサー ビス業は、一貫してシェアの変化はマイナスの値をとっており、シェアを低下させて いる。他方で、製造業は対総生産額シェア変化を上昇させている。
(2)製造業の構成をみると、軽工業がシェアの変化幅を趨勢的に低下させているの に対し、素材型重工業のシェア変化は 1982-1987 年の期間を除いてプラス値をとって おり、安定的にそのシェアを伸ばしている。また、組立型重工業は、全期間を通じて シェアの変化がプラスである唯一の部門であり、変化幅が上昇している。このことか ら、組立型重工業は、改革開放後の中国におけるリーディングインダストリーである といえる。
(3)軽工業の生産額シェアの変化に対して、技術変化と輸出変化はプラスの貢献を しているが、(対生産額比としての)消費の変化は一貫してマイナスに貢献している。
素材型重工業のシェア上昇に対して、技術変化が先行してプラスの貢献をしており、
次いで輸出変化がプラスの貢献をしている。組立型重工業は、製造業で唯一そのシェ アを拡大し続けている(シェア変化がプラス)が、当産業のシェアの上昇に貢献した 要因は輸出比率変化と技術変化である。
(4)サービス業は、実質値で見ると一貫してそのシェアを減少させている。サービ ス業のシェアの低下に貢献した最大の要因は消費であり、その貢献がシェア低下の大 部分を説明している。
以上のように、1982 年から 2007 年までの中国の産業構造は、製造業の中でも素材 型重工業と組立型重工業がシェアを伸ばしており、その中でも組立型重工業のシェア の変化幅が突出して大きく、中国のリーディングインダストリ-となっており、これ ら 2 部門のシェア上昇に貢献している要因としては、技術変化と輸出変化があるが、
時間の経過とともに、輸出変化の貢献が技術変化の貢献を上回る最大要因となってい ることが明らかになった。