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高等学校におけるマラソン大会による熱中症に関する研究

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Academic year: 2021

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全文

(1)

高等学校におけるマラソン大会による熱中症に関する研究 A Study of the Hyperthermia Caused by Long-distance Running in High Schools

東島 利佳

1

・清塚 更

2

・森 菜穂子

3

阿部 考四

4

・太田 誠耕

5

Rika HIGASHIJIMA1・ Sara KIYOZUKA2・Naoko MORI3・ Kohshi ABE4・Seikou OHTA5

要 旨

 青森県と群馬県における高等学校のマラソン大会実施状況や熱中症発生の予防対策の状況について調査・

検討した。その結果,マラソン大会は青森県より群馬県の方が多く実施されていた。青森県では最も気温が 高いとされる午後2~3時に実施している学校もあったが,群馬県では全ての学校で午後2~3時以外の時 間帯に実施していた。大会実施月は青森県で5月が多く群馬県で11月が多かった。給水・給食は青森県の方 が多かった。競技中の途中棄権者は青森県の方が多かった。競技中は,青森県に比べ,群馬県の方が専門機 関とより多く連携がとられており,特に警察との連携が多かった。

キーワード : 青森県,群馬県,高等学校,マラソン大会,熱中症,予防対策

1 株式会社ピュア  PURE Co.,ltd

2 福島県矢吹町立矢吹中学校

 Yabuki Junior High School, Yabuki Town, Hukushima Prefecture 3 青森県弘前市立第五中学校

 Hirosaki-daigo Junior High School, Hirosaki City, Aomori Prefecture 4 弘前大学大学院教育学研究科養護教育専攻

 Coordinated School Health(Yogo) Education, Graduate School of Education, Hirosaki University 5 弘前大学教育学部教育保健講座

 Department of School Health Science, Faculty of Education, Hirosaki University はじめに 

 近年,学校の管理下において児童生徒等の熱中 症による死亡事故が発生している。大半が体育・

スポーツ活動によるもので,特に,高温環境下で の夏の屋外,気温・湿度の高い体育館等における 運動や部活動の際に,多く発生している。また,

マラソンなどの学校行事では,夏以外でも熱中症 事故が発生している

1)

 熱中症発生の増加に伴い,各学校での熱中症を 防ぐための呼びかけや対策への関心は高いように 思われる。また,児童生徒が高温や多湿の環境下 で長時間に渡って運動を行う場合も多く,養護教 諭をはじめとする学校教職員の管理・指導が重要 になると考えられる。

 学校現場での熱中症の実状は,前述のように,

小学校,中学校,高等学校の部活,校内活動の時 間に年間数百人が診療を受け,数人が死亡してい

2)

。その背景には,水分補給や休憩,暑さ慣れ などの予防策が徹底されていないと考えられる。

しかし,実際の学校現場ではどのような予防対策 がとられているのかは,ほとんど研究が行われて いないと考えられる。

 そこで本研究では,青森県と群馬県の高等学校 で行われているマラソン大会,またはマラソン大 会にあたる行事(以下マラソン大会等)における 熱中症発生状況と,熱中症対策をどのように行っ ているのかを比較し,両県の違いを明らかにする ことを目的とした。

方 法

1.調査対象:青森県内の高等学校89校と群馬県

内の高等学校91校を対象とした。回収数は青森

県が72校(回収率80.9%),群馬県は56校(回

収率61.5%)であった。

(2)

東島 利佳・清塚 更・森 菜穂子・阿部 考四・太田 誠耕 92

2.調査期間:平成18年10月16日から平成18年11 月10日であった。

3.調査方法:選択肢式・自由記述式質問紙を用 い,郵送法で実施した。

4.調査内容:①マラソン大会等の行事の有無と その詳細 ②給水・給食の有無とその準備物 ③ 参加免除者の有無とその理由 ④競技中の途中 棄権者の有無 ⑤熱中症に関する事前指導の有 無(教職員と生徒)⑥教職員の配置状況と伴走 の有無 ⑦専門機関との連携等の有無とその詳 細(事前,競技中,事後)⑧マラソン大会以外 での熱中症を起こした生徒の有無とその詳細 等。

5.統計処理:SPSS for Windows を使用し,クロ ス集計,t 検定,χ

2

検定及び

Fisher

の直接法を 行った。なお,有意水準は5%とした。

結果と考察

1.マラソン大会等実施の有無(図1)

 調査対象校全体に「2005年10月~2006年9月ま での間に,マラソン大会等を行ったか」と聞い たところ,青森県の場合72校中「行った」と答え た学校は11校(15.3%)であった。群馬県の場合 56校中「行った」と答えた学校は28校(50%)で あった。群馬県が青森県に比べて大会実施校が多 かった。また,青森県と群馬県の大会実施の有無 には有意差(p <0.001)が見られた。

※以下の分析は,マラソン大会実施校を対象(以 下,調査対象校)とした結果である。

2.マラソン大会について

(1)時間帯(図2)

 気象庁によると,気温が最も高くなる時間帯は 午後2時~午後3時であるので,実施時間の区分 は,1. 午後2時~3時,2. 午後2時~3時以外

の時間帯,3. 不明の3つに区分した。

 青森県では男女同時刻に実施しており,最も多 かった時間帯は「午後2時~3時以外」で6校

(54.5%)であった。次いで,「午後2時~3時」

が3校(27.3%)であった。

 群馬県では男子のマラソン大会の実施時間帯は,

「午後2~3時」に行っていた学校はなく,「午後 2~3時以外」に行っていた学校は26校(96.3%)

であった。女子では,「午後2~3時」に行って いた学校はなく,「午後2~3時以外」に行って いた学校は21校(84%)であった。青森県と群馬 県では男女共に有意差(男子:p <0.01,女子:p

<0.05)が見られた。

 青森県の午後2~3時に行った学校の中には,

遠足など長時間行う大会もあったため,午後2~

3時にも実施したと考えられる。群馬県では比較 的短距離のため午後まで実施しない学校が多く,

また授業の代替であるために午前に行われる学校 が多かったと考えられる。

(2)実施月(図3)

 マラソン大会を実施した月は,青森県では5月 が最も多く5校(45.5%),次いで6月,9月が 各2校(各18.2%)であった。

 群馬県では,11月が最も多く22校(78.6%),

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(3)

高等学校におけるマラソン大会による熱中症に関する研究 93

次いで10月が3校(10.7%)であった。5月と11 月 に 有 意 差( 5 月:p <0.01,11月:p <0.001)

が見られた。

 これらの違いには,青森県の冬季の積雪や,群 馬県の夏季の気温の高さなど,地域の気候の違い が関係していると考えられる。

また,5月は健康診断,11月は文化祭といった他 の学校行事との兼ね合いによって実施月を決めて いることも考えられる。

3.給水・給食の有無と準備物について

(1)給水・給食の有無(図4)

 「給水・給食があったか」を聞いたところ,青 森 県 で は,「 有 り 」 と 答 え た 学 校 は11校 中8校

(72.7%)であった。群馬県では,28校中「有り」

と答えた学校は6校(21.4%)であった。

 給水・給食の有無には,青森県と群馬県に有意 差(p <0.01)が見られた。その理由として,青 森県は初夏に実施した学校が多く,また中には比 較的長距離の学校もあったため給水・給食が多 かったことが考えられる。群馬県は晩秋に実施し

た学校が多く,また比較的短い距離あったため給 水・給食が少なかったと考えられる。

 しかし,涼しい時期や,短時間の運動でも熱中 症は発生するため,季節・距離に関わらず全ての 学校で給水・給食を設ける必要があると思われる。

(2)給水・給食の準備物(図5)

 青森県では水を準備していた学校が多かった。

群馬県では水とスポーツドリンクを準備していた 学校は同数だった。なお,青森県の

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校と

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校 は歩行も可の大会であった。

 両県ではスポーツドリンクを準備していた学校

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(4)

東島 利佳・清塚 更・森 菜穂子・阿部 考四・太田 誠耕 94

が少なかった。しかし,塩分濃度低下によってお こる熱中症もあるため,給水物はスポーツドリン クが望ましい。一方,水は熱くなった体を冷やす のにも利用できる。したがって,水とスポーツド リンクの両方を準備するのが望ましい。

4.生徒について

(1)参加免除者の有無

 「参加免除者はいたか」を聞いたところ,青森 県では11校中10校で参加免除者がおり,1校は不 明であった。群馬県では全ての大会実施校で,参 加免除者がいたと答えた。

(2)参加免除した理由について(図6)

 大会の参加免除において,青森県で最も多かっ た理由は慢性疾患であり11校中9校(81.8%),

次いで体調不良が7校(63.6%)であった。群馬 県で最も多かった理由が慢性疾患であり28校す べて,次いで体調不良が19校(67.9%)であった。

どちらの県でも,生徒に無理をさせていないとい う点で共通している。

(3)競技中の途中棄権者の有無(図7)

 「競技中の途中棄権者の有無」を聞いたところ,

青森県では,11校中「有り」と答えた学校が7校

(63.6%)であった。群馬県では,28校中「有り」

と答えた学校は6校(21.4%)で,有意差(p < 0.05)が見られた。青森県は群馬県より長距離の 大会を実施していた学校が多かったからであると 考えられる。途中棄権者が出ないようにするため には,自己管理の徹底や体力向上に努めることが 望まれる。

(4)熱中症に関する事前指導について(図8)

 「熱中症に関する事前指導を行ったか」を聞 いたところ,教職員に対しては,青森県では,

「行った」と答えた学校は11校中1校(9.1%),

「事前ではないが行った」と答えた学校は3校

(27.3%),「行っていない」と答えた学校は6校

(54.5%)であった。群馬県では,「行った」と答 えた学校は28校中7校(25%),「事前ではない が行った」と答えた学校は11校(39.3%),「行っ ていない」と答えた学校は7校(25%)であっ た。また生徒に対しては,青森県では「事前に 行った」と答えた学校は11校中2校(18.2%),

「事前ではないが行った」と答えた学校は4校

(36.4%),「行っていない」と答えた学校は4校

(36.4%)であった。群馬県では,「行った」と答 えた学校は28校中13校(46.4%),「事前ではない が行った」と答えた学校は6校(21.4%),「行っ ていない」と答えた学校は6校(21.4%)であっ た。青森県と群馬県を比較すると,熱中症に関す る指導の有無では群馬県が教職員,生徒共に多 かった。このことから,群馬県は青森県に比べる と熱中症に対する関心が高いと予想される。

(5)教職員の配置状況 (図9)

 大会中の教職員の配置について聞いたところ,

青森県ではスタート地点,コース内,ゴール地点 全てで11校中10校(90.9%)が教職員を配置して いた。

  群 馬 県 で は, ス タ ー ト 地 点 が28校 中22校

(78.6%),コース内地点が26校(92.3%),ゴール 地点が18校(64.3%)で教職員を配置していた。

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 青森県では不明1校を除く全ての学校で教職員 を配置していたが,群馬県では青森県に比べ配置 している学校が少なかった。しかし,不明の理由 が明らかではなかったので,実際にはもっと多く の学校が教職員を配置していたと考えられる。

(6)伴走の有無(図10)

 伴走の有無を聞いたところ,「有り」と答えた 学校は青森県では11校中9校(81.8%)であった。

群馬県では28校中20校(71.4%)であった。

 群馬県では不明の理由が明らかではなかったの で,実際にはもっと多くの学校で教職員が伴走し ていたと考えられる。

(7)専門機関との連携等の有無(図11)

 「大会に際して専門機関と連携等をとっていた

か」を聞いたところ,青森県では,「とった」と 答えた学校が11校中9校(81.8%),「とっていな い」と答えた学校が1校(9.1%)であった。

 群馬県では,28校中「とっていた」と答えた学 校は27校(96.4%),「とっていない」と答えた学 校は1校(3.6%)であった。

 青森県と群馬県の専門機関の連携等の有無に関 しては差がなかった。

(8)連携先の専門機関と連携内容(図12,13,14)

 専門機関と連携等をとっていた学校に「どのよ うな専門機関と連携をとっていたか」を事前,競 技中,事後にわけて聞いた。

 事前では,青森県で10校中最も多かったのは

「医療機関」7校(70%)であった。群馬県で27 校中最も多かったのは「警察」21校(77.8%)で あった。

 競技中では,青森県は「医療機関」のみで1校

(10%)であった。群馬県は「警察」が最も多く 27校中11校(40.7%)であり,競技中専門機関と の連携がほとんどとられていない青森県と有意差

(p <0.05)が見られた。

 事後では,青森県で最も多かったのは「医療機 関」2校(20%)であった。群馬県では「教育委

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(6)

東島 利佳・清塚 更・森 菜穂子・阿部 考四・太田 誠耕 96

員会」が最も多く27校中6校(22.2%)であった。

 学校は地域の中にあり地域の諸機関との連携が あってこそマラソン大会等の学校行事を安全に行 うことができると考えられる。大会の種類や道路 の使用条件により,適切な専門機関と連絡をとり あうことが必須であり,それは事故発生の予防や 事故発生時の迅速な対応にも繋がるといえるだろ う。

5.マラソン大会以外での熱中症発生について  青森県72校,群馬県56校の調査対象校全体に,

マラソン大会以外(大会・行事・授業等)で熱中 症を起こした生徒の有無について聞いたところ,

青森県では部活動が11件,授業中が7件,体育祭 が7件,球技大会が2件,その他9件,全部で36 件であった。群馬県では,部活動が39件,球技大 会が13件,授業中が7件,体育祭が1件,その他 3件,全部で63件であった。

 青森県と群馬県では,群馬県のほうが気温の高 くなる日数が多く,熱中症が発生しやすい環境で あるためであると考えられる。部活動はマラソン 大会以上に熱中症発生が多いため,部活動の現状 を把握し,今後の予防対策に生かすことが必要で ある。

まとめ

 本研究では,青森県と群馬県における高等学校 のマラソン大会実施状況や熱中症に関する考え方,

熱中症発生の予防対策の実施状況について検討し た。

 その結果,青森県と群馬県の間には以下に示す ような違いが明らかになった。

1.マラソン大会は青森県より群馬県の方が多く 実施されていた(p <0.001)。

2.青森県では最も気温が高いとされる午後2

~3時に実施している学校もあったが,群馬 県では全ての学校で午後2~3時以外の時間 帯に実施していた(男子:p <0.01,女子:p

<0.05)。

3.大会実施月は青森県で5月が多く(p <0.01),

群馬県で11月が多かった(p <0.001)。

4.給水・給食の有無は青森県の方が多かった

(p <0.01)。

5.競技中の途中棄権者の有無は青森県の方が多 かった(p <0.05)。

6.競技中は,青森県に比べ,群馬県の方が専門 機関とより多く連携がとられており,特に警 察との連携が多かった(p <0.05)。

 

 最後に,本研究にご協力下さいました青森県及 び群馬県の高等学校の養護教諭の皆様に心より感 謝いたします

参考文献

1)文部科学省スポーツ・青少年局 企画・監修:

熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-,

p1~8,日本体育・学校保健センター学校安 全部,東京,2003

2)水口長 編集・発行:月間切り抜き 保健 2004 年 8月号通巻 413 号,p126,(株)アイオーエム,

東京,2004

3)東奥日報:11 面,2002 年 12 月1日

4)川原貴 他 著:スポーツ活動中の熱中症予防ガ イドブック,p12,(財)日本体育協会,東京,

2006

5)熱中症保健指導マニュアル編集委員会:熱中 症保健指導マニュアル,p32,環境省,東京,

2006

(2007. 7.31 受理)

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