中学生および高校生におけるトランポビクスのトレ ーニング効果 : 男子生徒を対象にした体育授業実 践
著者 山本 博男, 東 章弘, 山本 紳一郎, 犀川 豊, 北出
新子, 渡辺 貴子, 堂 久仁子
雑誌名 金沢大学教育学部紀要 自然科学編 = Bulletin of the Faculty of Education, Kanazawa University.
Natural science
巻 42
ページ 33‑38
発行年 1993‑02‑28
URL http://hdl.handle.net/2297/20422
33
中学生および高校生におけるトランポビクスのトレーニング効果
一男子生徒を対象にした体育授業実践一
山本博男・東章弘*・山本紳一郎*・犀川豊*
北出新子**・渡辺貴子***・堂久仁子…*
EffectsofTrampobicsTrainingfOrMaleStudents inPhysicalEducationClassofJuniorandSeniorHighSchool
HirohYAMAMoTo,AkihiroAzuMA,Shin-ichirohYAMAMoTo,
YutakaSAIKAwA,ShinkoKITADE,TakakoWATANABE,andKunikoDoH
身体機能に対する効果およびエアロビック・ダ ンスに関する意識の変化を調べ,今後の体育授 業におけるミニトランポリン導入の基礎的資料
を得ることである。
方法 1.被検者
被検者は,中学1年生78名(トレーニング群 40名,対照群38名)と高校1年生87名(トレー ニング群46名,対照群41名)であった。被検者 の身体的特性を表1に示した。
緒言
軽'快な音楽に合わせて身体を動かすエアロビ クスは,女性の間では人気が高い。このエアロ ビクスは,アメリカのCooper6)7)の提唱が最初 である。さらにSorensen22)23)によってダンスが 組み込まれ,エアロビック.ダンスが誕生した。
このエアロビック゛ダンスが普及するにつれ,
慢性的な下肢の痛み,障害が問題となった,2),9)
ため,新たに考案されたのが,トランポリン2,)25)
を利用したエアロビック・ダンス,すなわちト ランポビクス26)27)28)である。筆者らは,これまで 小学生,中学生,高校生及び大学生の女子生徒 学生を対象に,トランポビクスによるトレーニ ング効果について報告してきた。26)27)28)しかし,
男子を対象にした研究はなされていない。
こうした経緯の中,1989年度の文部省保健体 育科学習指導要領改定にともない,ダンスの学 習内容の多様化,拡大化および学習形態の男女 共修化という新しい方針が出され,エアロビッ ク・ダンスの教材としての活用も高まりつつあ る。そこで,本研究では,男子の体育授業にお ける準備運動としてトランポビクスの導入を試 みた。
したがって,本研究の目的は,中学生および 高校生男子を対象に,ミニトランポリンを利用 したエアロビック・ダンスの授業実践を行い,
TableLPhysicalCharacteristicsofsubjects.
GroupsnAge(yrs)Heightに、)Weight(kg)
Control3813.0±0.3156.8±7.345.1±8.0 Junior
highschoolTraining40130±0.3155.9±8.847.1±8.7
Control4615.1±0.3170.6±6.158.2±7.3 Senior
highschoolTraining4115、2±0.9170.0±6.059.4±9.3
2.運動内容
トレーニング群は,4分間のミニトランポリ ン上のエアロビック・ダンス・トレーニング,
すなわち,トランポビクス・トレーニングと4 分間の床上のエアロビクス・トレーニングを 行った。トランポビクスは,手・腕の動きと足 の動きを組み合わせた内容を行い,エアロビク スは,腕立て伏せやスクワットなどの筋力ト
平成4年9月16日受理
*金沢大学大学院
**石川県立寺井高校
**゛松任市立松南小学校
****日本交通公社営業一課
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て,トレーニング中の心拍数(HR)と主観的 運動強度(RPE)6)を記録した。ダンス開始か ら30秒間毎にHRを記録し,1分間毎にRPE を記録した。また,高校生のトレーニング群の 8名についても同様にHRとRPEを記録し た。これらの被検者は,トランポビクス,床上 エアロビクスの順でトレーニングを行った。
中学生3名と高校生2名における最大心拍数 を自転車エルゴメーターを用いて測定し,一連 のエアロビック・ダンス・トレーニングの運動 強度を%HRmaxとして推定した。’)2)'3)'5)
レーニングを主体に行った。その際,被検者は,
インストラクターの動きを見ながら行った。
このトレーニングは,正課体育授業の準備運 動として位置付けられ,週3回の頻度で8週間 行われた。トレーニング時の曲には,118~120 拍/分の曲が選択され,使用された。
中学生および高校生のトランポビクス・ト レーニングを行っている授業風景を写真1,2
に示した。
4.アンケート調査
トレーニング群に対して,8週間のトレーニ ング前後に,アンケート調査を行った。内容は エアロビック・ダンスに関する意識調査であっ た。また,床上エアロビクスとトランポビクス の違いについても調査した。
5.統計処理
8週間のトレーニング前後において,各測定 項目の平均値および両群間の統計的有意差の検 定には,t検定を用いた。なお,本研究の有意水 準は,1%,0.1%であった。
結果と考察 1.トレーニング前後の体力測定
トレーニング群と対照群の体力測定の結果を 表2に示した。トレーニング群では,中学生.
高校生ともに各測定項目で増大傾向がみられ た。しかしながら,同様に対照群においても増 大傾向にあったため,両群間に統計的有意差が みられたのは,高校生の1,500m走のみであっ た。この1,500m走のタイムが良くなったこと は,エアロビック●ダンスによって有酸素性能 力の向上があるとする多くの報告と_致す る。3)8),)10)11)16)17)18)20)24)また,他の測定項目にお いて,トレーニング効果がはっきりしなかった ことの原因として,体育授業開始8分間という 少ない運動量であったことや他の日常の運動の 写真1.中学生におけるトランポビクス・トレー
ニング風景
写真2.高校生におけるトランポビクス・トレー ニング風景
3.体力測定
対照群を含む全ての被検者は,8週間のト レーニング前後に,閉眼片足立ち,立位体前屈,
垂直跳び,背筋力,反復横跳び,皮下脂肪厚お よび持久走(中学生;5分間走,高校生;1,500 m走)の7項目を測定した。
中学生におけるトレーニング群の8名につい
山本・東・山本・犀川・北出・渡辺・堂:中学生および高校生におけるトランポビクスのトレーニング効果35 影響が強いことが考えられる。その点を考慮し
てみると,高校生の持久力が,ほんの授業開始 8分程度のエアロビック・ダンスで向上したこ とは,意義深いと考えられる。また,この実験 を行った高等学校は,県下有数の進学校であり,
体育系の運動部に所属している生徒は少ない。
これも体育授業でトレーニング効果がみられた
-要因であると考えられる。逆に,中学校につ いては,クラブ活動が盛んであり,運動部に所 属する割合が高い。したがって,中学生の場合,
エアロビック・ダンスのトレーニング効果は少 なかったと考えられる。
Table2MeanvaluesandSD・ofvariablesinpreandposttraining Juniorhighschool Seniorhighshool
variablesGroups
Pre Post pre Post
TCTCTCTCTCTCTCTC 76
●●34639834
筋釦85M冊閲乢肌肺29士十一
●●11+|+’67+|+|+|士十一十一432628士十一386001+|+l2L・・09・・・・..948004..233599..0133234498339911
23.8±24.8 34.6±25.4
*4.3±6.1 5.4±7.1 47.1±8.3 48.3±8.3
**103.3±28.5
**102.0±303
*41.7±4.3
**40.8±5.7
**9.4±3.3 9.2±3.5 1105.0±123.8 1125.6±112.8
9896●●96337778●●4876。・22。・・・33.、56十一+’3334
+|+’77+一十一29+|士十一十一
52士士21・・7445・・89・・55・・・・11・・64325501448955114411 8988●●。・9934313391・・・・22・・92346756+|+’33・・士十一十一十一十一十一55+|+’23997160・・11士士・・..・・83..891301082298・・541165114488*********Balance(sec)
Flexibility(c、)
Vertical
jump(c、)
Back
strength(kg)
Sidestep(steps)
Skinfold
thickness(m、)
5minmn(、)
359.2±32.0 365.7±39.1
**347.1±30.2 377.1±52.2 l500mrun(sec)
T;traininggroup,C;controlgroup
*;p<0.01,**;p<0.001
TableaMeanvaluesofHRandRPEduringtrampobicsandaerobics.
Time(min.)
Trampobics(1-4min.)Aerobics(5-8min.)
2345678
1
Juniorhighshool(n=8)
HR(beats/min.)
RPE
122 10
124 10
130 11
121 11
126 11
138 12
133 12
140 12
Seniorhighshool(n=8)
HR(beats/minJ
RPE
116 10
124 11
120 12
107 11
99 10
124 11
126 12
124 13
2.HRとRPE
中学生3名および高校生2名の最大心拍数か ら,トランボビクスとエアロビクス・トレーニ ングの運動強度を算出した。その結果,中学生 では,トランポビクスで64±7.1%HRmax,床
上エアロビクスで69±3.0%であった。高校生で は,トランポビクスで64±2.8%HRmax,床上 エアロビクスで,72±2.7%HRmaxであった。
エアロビック・ダンスに適した運動強度は,
60~90%HRmaxであると報告されてい
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る。’2)'4)したがって,本研究の運動強度は,ト レーニング効果を得るのに適していると考えら れる。しかしながら,このトレーニングプログ ラムは,正課体育授業の準備運動として実施さ れたため,運動時間は,トランポビクス4分間,
床上エアロビクス4分間の計8分間と少なく,
トレーニング効果を得るには十分でなかったと 考えられる。その点に関しては,今後の研究課
題である。
トランポビクスおよび床上エアロビクス・ト レーニング中のHRとRPEの結果を表3に示 した。中学生,高校生とともにトランポビクス のRPEの方が,床上エアロビクスより低かっ た。これは,トランポビクス・トレーニングの 方が主観的に楽であることを示している。女子 を対象にした研究26)27)28)でも同様な傾向を示し ており,トランポリン独特の$はねる〃ことで 楽しさが得られ,下肢に対する負担が軽減され
るのは確かであろう。
表4.アンケート調査結果 トレーニング前
1.エアロビクスとは何か知っていますか?
卯Yes16%NC84%,
S:Yes59%NC41%
2.エアロビクスを実際に経験したことがあります
か?J:Yes0%NC100%,
S:Yes0%NC100%
3.エアロビクスに興味がありますか?
J:Yes5%NC95%,
S:Yes2%N098%
4.男性がエアロビクスをしているのをみたことがあ りますか?
J:Yes34%NC66%,
S:Yes52%N048%
トレーニング後
1.エアロビクスは楽しかったですか?
肌Yes65%NC35%,
S:Yes59%NC41%
2.ダンスが上手になったと思いますか?
肌Yes89%NC11%,
S:Yes56%NC44%
3.これからも機会があればエアロビクスをやりたい
と思いますか?J:Yes59%No41%,
S:Yes31%NC69%
4.トランポリン上と床上のエアロビクスでは,どん な違いがありましたか?
J:トランポリンの方が楽。跳ねると面白い。トラ
ンポリン後,床で踊ると足が重くて変な感じ。
S:トランポリンの方が,楽or動きやすいorリズ
ムがとりにくい。5.どのような効果があったと思いますか?
J:やせた。リズム感がついた。筋肉がついた。気 分がすっきりした。ジャンプカがついた。効果 はなかった。
S:体力がついた。リズム感がついた。跳躍力がつ いた。集中力がついた。
3.アンケート調査
トレーニング前後のアンケート調査結果を表 4に示した。トレーニング前では,エアロビッ ク・ダンスを行ったことのある生徒は,中学生,
高校生ともに100%いなかった。また,興味を示 す生徒も中学生5%,高校生2%と少なかった。
しかし,トレーニング後には,被検者の60%以 上がm楽しかった〃と答え,また,剛機会があれ ばやってみたい〃という生徒も多かった(中学 生;59%,高校生;31%)。さらに,トランポビ クスの方が,床上エアロビクスより楽であると いう意見も多くあった。
以上のようにエアロビック・ダンスに対する 被検者の意識変化があったことから,今後,男 子においても,有酸素性能力の向上に効果のあ るエアロビックダンスを体育の教材として活用 されることが望まれる。また,本研究は,体育 授業の準備運動としての試みであったが,今後 どのように教材として扱うかについては,検討 を必要とする。
J:Juniorhighshool,S:Seniorhighshool
結 論
中学生および高校生の体育授業の準備運動と
して,ミニ・トランポリンを利用したエアロビッ
ク・ダンスを週3回,8週間行った結果,以下
のことがわかった。
山本・東・山本・犀川・北出・渡辺・堂:中学生および高校生におけるトランポビクスのトレーニング効果37 1.ミニ・トランポリン上や床上で,音楽に合
わせて身体を上下・左右に移動させることは,
中学生,高校生男子の運動能力の向上に有効 である。
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ク・ダンスに対する興味・関心の高まりなど,
意識の変化がみられた。
以上のことから,ミニ・トランポリンを利用 したエアロビック・ダンスは,中学生および高 校生男子における体育教材として活用できると 思われる。
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