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兵庫県立健康環境科学研究センター

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Academic year: 2021

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(1)

オセルタミビル販売量を用いた兵庫県内における感染症発生動向 調査インフルエンザ罹患数推計値の妥当性の検討

兵庫県立健康環境科学研究センター

山本 昭夫 谷岡 絵理 前田 幹雄

(平成 20 年 3 月 19 日受付)

(平成 20 年 12 月 11 日受理)

Key words : influenza, number of patients, Oseltamivir, surveillance

感染症発生動向調査(NESID)による定点医療機関からのインフルエンザ患者数をもとに全体の罹患数 を推計する方法が報告されているが,その妥当性の検証はなされていない.そこで,兵庫県において,イン フルエンザ治療薬であるオセルタミビル(商品名:タミフル)の販売量を用いることにより推計値の妥当性 の検証を試みた.

インフルエンザ流行シーズンは 4 シーズン(11 月〜5 月,03〜07 年)について検討した.NESID による 罹患数推計値(「NESID 推計値」)が正しいと仮定して,オセルタミビル販売量から求めた罹患数推計値(「オ セルタミビル推計値」)と「NESID 推計値」の比「推計処方率」はシーズンによって 59〜100% と大きく異 なったが,04! 05 年及び 05! 06 年については「推計処方率」94% 及び 100% に対して,オセルタミビル処方 率に関する 05 ! 06 年の全国的な調査結果 90% と近い値を示すなど,仮定の妥当性が示唆された.NESID に よるインフルエンザ罹患数推計値の一般的な妥当性の検証のためには,全国的な同様の解析並びに他のシー ズンにおけるオセルタミビルをはじめとするインフルエンザ治療薬の処方率調査が必要と考えられた.

〔感染症誌 83:107〜112,2009〕

感染症発生動向調査(NESID : the National Epide- miological Surveillance of Infectious Diseases)にお けるインフルエンザ患者数の把握は,全医療機関から の報告ではなくて,予め指定された定点医療機関から の報告に基づいている.インフルエンザのみならず他 の発生動向調査対象疾病について,この定点からの報 告患者数から全体の罹患数を推計する方法が厚生労働 科学研究班(主任研究者:永井正規)

1)

によって報告さ れているが,実際の患者数に基づく推計値の妥当性の 検証はなされていない.本報告では,インフルエンザ で受診する患者の多くにオセルタミビル(商品名:タ ミフル,製造:ロシュ社,国内販売元:中外製薬)が 処方されているというわが国の現状に基づき,兵庫県 内におけるオセルタミビル販売量を用いてインフルエ ンザ罹患数推計値の妥当性の検討を行った.

対象と方法

1.対象期間

対象としたインフルエンザ流行シーズンは,03! 04 年,04! 05 年,05! 06 年,及び 06! 07 年の 4 シーズ ン で,各シーズンは第 45 週あるいは 46 週(11 月初旬)

から翌年の第 21 週(5 月中・下旬)までとした.

2.オセルタミビル販売量によるインフルエンザ罹 患数の推計

オセルタミビル販売量(卸)は中外製薬より情報提 供を受けた.販売量は各流行シーズンにおける納品量 から返品量を引いた数量であるが,05! 06 年及び 06! 07 年については週ごとの販売量も同様に得られた.オセ ルタミビルは小児用のドライシロップと成人用のカプ セル剤として販売されているが,各々の販売量からの 罹患数推計(「オセルタミビル推計値」)は標準服用量 に基づきドライシロップ 1 本を 2.3 人分,カプセル剤 10 カプセルを 1 人分として計算

2)

したものを「標準用 量推計値」とし,我が国における処方実態に基づき

3)

ドライシロップ 1 本を 2.9 人分,カプセル剤 8 カプセ

別刷請求先:(〒652―0032)神戸市兵庫区荒田町 2―1―29 兵庫県立健康環境科学研究センター感染症部

山本 昭夫

(2)

Tabl e 1 Es t i mat ed of i nf l uenza pat i ent s and Os el t ami vi r pr es c r i pt i on r at e

Es t i mat ed pr es c r i pt i on

r at e ( B) /( A) ( %) ( h) = ( b) /( e) No. of pat i ent s es t i mat ed by

NESI D

dat a ( B) Pr es c r i pt i on

r at e

( %) ( d) No. of pat i ent s es t i mat ed by Os el t ami bi r

c ons umpt i on ( A)

Upper l i mi t of 95% C. I .

( g) Lower

l i mi t of 95% C. I .

( f ) Poi nt

es t i mat e

( e) Es t i mat e

adj us t ed by pr opot i on of pr es c r i pt ed

( c ) = ( b) /( d) Es t i mat e

bas ed on ac t ual dos i ng

c ondi t i on ( b) Es t i mat e

bas ed on nor mal dos age ( a)

64 349, 000

240, 000 296, 000

― 190. 502

152, 006 03/04

94 604, 000

416, 000 512, 000

― 482, 013

384, 380 04/05

100 471, 000

323, 000 398, 000

90 443, 480

399, 132 318, 350

05/06

59 431, 000

296, 000 364, 000

― 213, 970

170, 627 06/07

: The Nat i onal Epi demi ol ogi c al Sur vei l l anc e of I nf ec t i ous Di s eas es

ルを 1 人分として計算

4)

したものを「処方実態推計値」

とした.

3.感染症発生動向調査によるインフルエンザ罹患 数の推計

報告患者数は感染症発生動向調査に基づく県内 199 カ所(兵庫県人口:559 万人;2005 年国勢調査)の定 点医療機関(小児科及び内科)からの毎週の報告を用 い,県全体の罹患数推計値は永井らの報告

1)

をもとに 算出し「NESID 推計値」とした.その算出方法は,研 究班報告書にある 2000 年から 2003 年までの 4 年間の 都道府県別罹患数推計値及び 95% 信頼区間の兵庫県 値について,それらに対応する兵庫県内の定点からの 報告数の比を求め,今回の研究対象とした流行シーズ ンにおける定点からの報告数に上記 4 年間の比の平均 値を乗じたものとした.

1.「オセルタミビル推計値」

Table 1(A)に「オセルタミビル推計値」を示し た. (a)列に示したのは「標準用量推計値」である. (b)

列は「処方実態推計値」を示した.「標準用量推計値」

は,03! 04 年 152,006 人,04! 05 年 384,380 人,05! 06 年 318,350 人,及び 06 ! 07 年 170,627 人で,「処方実態 推計値」は,03! 04 年 190,502 人,04! 05 年 482,013 人,

05! 06 年 399,132 人,及 び 06! 07 年 213,970 人 で あ っ た.いずれも 04! 05 年と 05! 06 年の推計値が多く,03!

04 年と 06 ! 07 年の推計値が比較的少なかった.

2.「NESID 推計値」

「NESID 推 計 値」を Table 1の(B)に 示 し た.推 計値及び 95% 信頼区間は,03! 04 年 296,000(240,000〜

349,000)人,04! 05 年 512,000(416,000〜604,000)人,

05 ! 06 年 398,000(323,000〜471,000)人,及 び 06 ! 07 年 364,000(296,000〜431,000)人であった.

3.小児用及び成人用オセルタミビル販売量 小児用のドライシロップと成人用カプセルの処方対 象の境界は体重で 37.5kg,年齢で 10〜13 歳とされて いる.また,1 歳未満児に対しては原則投与しないこ

ととされている.また,NESID の年齢区分が,1〜9 歳は 1 歳刻み,10 歳以上は 10〜14 歳,15〜19 歳,…

となっている.そこで,1〜9 歳あるいは 1〜14 歳を 小児,10 歳あるいは 15 歳以上を成人と考え,それら の報告患者数とドライシロップ及びカプセルの販売量 を 比 較 し た.Fig. 1及 び Fig. 2に 示 す よ う に,04! 05 年及び 05! 06 年ではドライシロップ及びカプセル共に ほぼ報告患者数と並行した販売量を示したのに対し,

06! 07 年では報告患者数の減少以上に販売量が減少し たことは既に述べたが,10 歳以上の報告患者数が増 加しているのに対してカプセルの販売量が減少してい た.

4.「NESID 推計値」と「オセルタミビル推計値」の 週推移

05! 06 年及び 06! 07 年についての「NESID 推計値」

と「オセルタミビル推計値」の週ごとの累積値推移を Fig. 3に示した.「オセルタミビル推計値」は「処方 実態推計値」を用いた.05! 06 年では,シーズン始め の 12 月第 2 週段階で累積「NESID 推計値」は 1,430 人に対して「処方実態推計値」は既に 106,795 人とな り,流行に先立って 10 万人分を超えるオセルタミビ ルが販売されていた.12 月第 2 週以前のデータは得 られていない.その後 5 週間の販売量の伸びは少な かったが,累積「NESID 推計値」が急増した 1 月第 3 週から 2 月第 4 週までは「NESID 推計値」の増加 に合わせて「処方実態推計値」も増加した.その後は 患者数の減少に合わせて返品と販売を調整してシーズ ン末には累積「NESID 推計値」と累積「処方実態推 計値」がほとんど同じになった.06! 07 年については,

11 月第 4 週の早期より流行に先立って累積「処方実 態推計値」の増加がみられたが,前シーズンのように 大量の備蓄購入と見られる動向はみられなかった.イ ンフルエンザ流行開始が遅く,2 月に入ってから累積

「NESID 推計値」が増加し始めた.しかし,累積「処 方実態推計値」はあまり増加せず,2 月第 4 週に累積

「処方実態推計値」の 78,119 人に対して累積「NESID

(3)

Fi g. 1 Pedi at r i c i nf l uenza pat i ent number s and Os el t ami vi r dr y s yr up c ons umpt i on i n Hyogo Pr ef ec t ur e

Fi g. 2 Adul t i nf l uenza pat i ent number s and Os el t ami vi r c aps ul e c ons umpt i on i n Hyogo Pr ef ec t ur e

推計値」84,512 人が上回った.その後の流行拡大に 3 月第 2 週より後追い的に販売量が急増したが,3 月第 5 週頃に累積「処方実態推計値」は頭打ちとなり,シー ズン終了時には累積「NESID 推計値」364,174 人に対 して累積「処方実態推計値」は 59% に当たる 213,970 人であった.

1.「NESID 推計値」の妥当性検証の必要性と方法 感染症発生動向調査の定点報告患者数を用いた罹患 数の推計法は永井ら

1)

によって報告されているが,今 回の我々の罹患数推計値も永井らの推計値に基づいて 算出した.永井らの推計方法の概略は,都道府県別,

医療施設特性別(病院の小児科,主たる診療科目が小 児科の一般診療所,主たる診療科目が小児科以外の小 児科を有する一般診療所,病院の内科及び内科を有す る一般診療所の別)に,定点報告数を全医療機関数に

占める定点医療機関の割合で割ることによって算出す るもので,信頼区間は罹患数が多項超幾何分布すると 仮定して求めている.これら推計値および信頼区間が 妥当であるためには,定点が無作為に選択されている ことが前提となっているが,この前提は必ずしも保証 されているわけではない.そのため,ゴールドスタン ダードである実際の罹患数との比較で検証するのが理 想であるが,インフルエンザのように罹患数の多い疾 病の罹患を,たとえ地域と流行シーズンを限定したと しても,全医療機関に報告を依頼することは容易では ない.そこで,オセルタミビル販売量からの罹患数推 計値の妥当性を検討した上で「NESID 推計値」と比 較した.

2.治療薬販売量から患者発生の動向を調査した報 告例

患者発生の動向を知る指標として,その疾病におい

(4)

Fi g. 3 Weekl y- c umul at ed i nf l uenza pat i ent s es t i mat ed by NESI D

dat a and by Os el t ami vi r c ons umpt i on i n Hyogo Pr ef ec t ur e. ( 2005/06 and 2006/07 year s )

¶: Nat i onal Epi demi ol ogi c al Sur vei l l anc e of I nf ec t i ous Di s eas es

て特異的に服用される治療薬の販売量が用いられるこ とがある.インフルエンザに関しては,伊集院ら

5)

,Ko- bari ら

6)

,および林ら

7)

は薬局でのオセルタミビル販売 量から東京近郊におけるインフルエンザ伝播パターン を解析している.また,菅原ら

8)

は薬局での市販風邪 薬の販売量とインフルエンザ流行の比較検討を行い,

感染症発生動向調査による患者数増加より約 2 週間先 行して販売量が増加することを明らかにした.インフ ルエンザ以外においても,中川ら

9)

は鹿児島県におい てパーキンソン病患者と L-DOPA 製剤の販売量との 比較検討を行っている.望月ら

10)

はいわゆる市販の水 虫治療薬販売量から自家治療している皮膚真菌症患者 が全国で約 330〜430 万人と推計した.今回の我々の 研究も疾病に特異的に処方される治療薬の販売量を罹 患の指標と考えるものであるが,市中の薬局からの情 報ではなく,オセルタミビル国内唯一の販売元の販売 量データを用いることができた.

3.「オセルタミビル推計値」の妥当性

「処方実態推計値」は 03 ! 04 年の約 19 万人から 04 ! 05 年の 48 万人とインフルエンザ流行シーズンによっ て大きく異なった.これはシーズンによって流行の規 模が異なることだけでなく,オセルタミビル処方率の 変化があると考えられる.「NESID 推計値」が仮に正 しいと仮定すると,「処方実態推計値」と「NESID 推 計値」の比はオセルタミビルの処方率の推計値と考え ることが出来る.05! 06 年の全国調査

11)

のように医療 機関にアンケート調査して求めた処方率と区別するた め「推計処方率」と呼ぶことにする.この「推計処方 率」は Table 1(h)列に示した.シーズンによって 59〜

100% と大きく変動したが,04 ! 05 年 94%,05 ! 06 年 100% と高い「推計処方率」を示した.

平成 17 年度厚生労働科学研究班:「インフルエンザ に伴う随伴症状の発現に関する調査研究」(主任研究 者:横田俊平)

11)

によると,05 ! 06 年に全国 12 都県の 小児科医から収集した 2,846 症例中 2,560 例(90%)に おいてオセルタミビルが処方されていた.千葉ら

12)

は 東京都足立区における 04! 05 年の 28 医療機関に対す るアンケート調査を行っているが,治療にオセルタミ ビルを使用すると回答した医療機関は 28 機関中 27 機 関(96%)と報告している.したがって,受診したイ ンフルエンザ患者へのオセルタミビル処方は 04! 05 年 及び 05! 06 年では一般化していてその処方率は 90%

程度であったと考えられる.これらのシーズンの「推 計処方率」は 94% 及び 100% でほぼ近い値であった.

他のシーズンについては,オセルタミビルの国内販売 開始が 2001 年 2 月

12)

であったことや,2004 年 1 月に 1 歳未満児への投与への安全性の問題が明らかにされ た

13)

ことから,実質的に 2 シーズン目にあたる 03 ! 04 年はまだ十分普及していなかった可能性,および投与 の差し控えがあったことが考えられる.2003 年 12 月 19 日付の中外製薬の文書では,最大級の流行規模と して約 1,400 万人を想定し,その場合の処方患者数を 約 1,000 万人と推定していることから,当時約 70%

の処方率を考えていたと考えられる.03! 04 年の「推

計処方率」は 64% でこれも近い値である.06! 07 年

については「オセルタミビル服用後の異常行動」の問

題が大きくなり,2007 年 2 月 28 日には厚生労働省も

注意事項として発表するに至ったことから,特に 10

(5)

歳代の患者への処方率が相当低下したと考えられる.

そこで,年齢階級別報告患者数から,小児の患者数と ドライシロップ販売量,成人の報告患者数とカプセル 販売量をシーズンごとに比較した結果,異常行動で問 題となった 10 歳代を含む成人の報告患者数が 06! 07 年に増加しているにもかかわらずカプセル販売量が減 少していた.これは,ドライシロップの販売量減少よ り著しかったことから,「オセルタミビル服用後の異 常行動」の問題が大きく影響したと考えられる.撹乱 要因としては各医療機関における前シーズンからの在 庫および備蓄である.ここで,罹患数とは医療機関を 受診して医師により新規に診断された患者数である.

罹患しても受診しなかった患者は考慮外であるが,オ セルタミビルは医師の処方箋がなければ購入すること ができないので,少なくとも販売量のうち受診しな かった患者が服用する量は考慮しなくてよい.

4.「NESID 推計値」と「オセルタミビル推計値」の 週別推移

05! 06 年 と 06! 07 年 の「NESID 推 計 値」と「オ セ ルタミビル推計値」の週ごとの累積値推移(Fig. 3)

をみると,05! 06 年は流行前の大量備蓄と見られる動 向があったが,流行が始まるに従い累積「NESID 推 計値」と累積「オセルタミビル推計値」はほぼ並行し た動きとなり,流行終息に向けて累積「NESID 推計 値」と累積「オセルタミビル推計値」はほぼ同数に収 束した.患者数の減少に先立って販売量も減少,ある いは返品という動向を示していることから,シーズン を跨ぐ備蓄はそれほど多くはないものと考えられる.

また,2006 年 4 月にオセルタミビルの薬価が 1 カプ セルあたり 363.7 円から 316.4 円に減額されており,そ のため 05! 06 年のシーズン末における医療機関や処方 薬局での在庫および備蓄はあったとしても最小限のも のであったと考えられる.

5.「NESID 推計値」の妥当性

3.「オセルタミビル推計値」の妥当性の考察におい て,仮に「NESID 推計値」が正しいと仮定して「推 計処方率」を求めシーズンによる変動を検討した.そ の結果,「推計処方率」の変動がそのシーズンにおけ る変動要因の動きによってよく説明できること.03! 04 年の概ね 70% という処方率見込みに対して「推計処 方率」は 64%,04! 05 年及び 05! 06 年に関しては,05!

06 年の厚生労働科学研究班の調査結果

11)

での 90% の 処方率に対して,「推計処方率」はそれぞれ 94% 及び 100% と近い値が得られたことから, 「NESID 推計値」

が正しいとの仮定は概ね妥当と考えられる.特に 05!

06 年については定点報告患者数とオセルタミビル販 売量の週ごとの推移に関する解析からシーズンを跨ぐ 在庫蓄積はそれほど大きくないと考えられる.05! 06

年は元々「処方実態推計値」と「NESID 推計値」が ほぼ一致していたが,「処方実態推計値」をそのシー ズンの全国調査による処方率 90% で割った値は Ta- ble 1の(c)列に示したとおりで,443,480 人と「NESID 推計値」398,000 人に近い 値 で あ り,95% 信 頼 区 間 323,000〜471,000 人の範囲内であった.以上のことか ら,「NESID 推計値」が正しいとした仮定は概ね妥当 であり,少なくとも 05! 06 年に関しては兵庫県内のオ セルタミビル販売量もとにしたインフルエンザ罹患数 推計値及び,それと事実上一致したといえる感染症発 生動向調査に基づく罹患数推計値はほぼ妥当であった と考えられる.

6.「NESID 推計値」妥当性の一般化への可能性 以上により,兵庫県の 05! 06 年については感染症発 生動向調査に基づく罹患数推計値の妥当性が示唆され たが,感染症発生動向調査からインフルエンザ罹患数 推計値を算出することの一般的な妥当性について言及 するためには,一つには他の地域においても同様の解 析をすることと,もうひとつは今後の流行シーズンに おいても流行終息時点での医療機関や処方薬局におけ る備蓄量に注意を払いつつ,オセルタミビルの処方率 調査を実施することが必要である.ザナミビルおよび アマンタジンの処方率も調査すればさらに正確な罹患 数推計が可能となる.処方率調査も決して容易ではな いにしても,全国の抽出された地域の抽出された医療 機関においてのみ実施すればよいので,罹患の全数を 把握するよりははるかに容易であると考えられる.ま た,今回の報告では「処方実態推計値」をより実際の 罹患数に近いと考えたが,処方実態自体が標準用量に 近づいてきていることが考えられる.処方の用量に関 する調査も併せて実施する必要があると考えられる.

謝辞:オセルタミビル(タミフル)販売量のデータを提 供していただいた中外製薬株式会社に感謝します.兵庫県 における感染症発生動向調査の報告定点医療機関並びに兵 庫県庁担当課及び保健所の関係者の方々,特に販売量の データ取得にご尽力いただいた健康生活部薬務課鶴井成央 氏に感謝します.

文 献

1

)永井正規:感染症発生動向調査に基づく感染症 の警報・注意報および全国年間罹患数の推計―

その 7―.平成 18 年度厚生労働科学研究費補助 金による「効果的な感染症サーベイランスの評 価並びに改良に関する研究」研究報告書.2007.

2

)抗インフルエンザウイルス薬の供給等について

(依頼).厚生労働省,2004 年 10 月 28 日付.

3

)抗インフルエンザウイルス剤『リン酸オセルタ ミビル』2005―2006 年シーズンの供給計画につ いて.中外製薬,2005 年 6 月 9 日.

4

)抗インフルエンザウイルス薬の安定供給等につ

いて(依頼).厚生労働省,2005 年 11 月 24 日付.

(6)

5

)伊集院一成,高橋瑞穂,竹内尚子,岩木和夫,松 田りえ子,林 譲,他:薬局の薬剤販売量の 解析からインフルエンザ伝播パターンを知る試 み.国立衛研報 2006;124:56―9.

6

)Kobari T, Takahashi M, Ijuin K, Takeuchi H, Iwaki K, Ishii F, et al.:Quantitative Epidemi- ological Understanding of Influenza Propagation in Tokyo and Environs. J Health Sci 2006;52:

637―41.

7

)林 譲,矢島毅彦:薬の販売量から推定する インフルエンザ感染の経路と速度.ファルマシ ア 2006;42:1246―51.

8

)菅原民枝,大日康史,重松美加,谷口清洲,村 田厚夫,岡部信彦:OTC(一般医薬品)を用い ての症候群サーベイランスの試み.感染症誌 2007;81:235―41.

9

)中川正法,有里敬代,加世田俊,野元正弘,納 光弘:鹿児島県におけるパーキンソン病の疫学

調査 1980 年調査との比較検討.2001 年度厚生 労働科学研究費補助金による「神経変性疾患に 関する研究班」研究報告書.2006.

10

)望月真弓,朝長文弥,久米 光,奥平雅彦:皮 膚真菌症の潜在患者 アンケート調査及び市販 薬販売量の観点から.真菌と真菌症 1985;26:

200―6.

11

)横田俊平:インフルエンザに伴う随伴症状の発 現状況に関する調査研究.平成 17 年度厚生労働 科学研究費補助金による研究報告書.2006.

12

)千葉昭典,青木芳郎,大橋一雄,佐藤幸子,清 水博史,中島正樹,他:インフルエンザに関す る諸事項の調査研究.東京小児科医会報 2007;

25:46―50.

13

)田原卓浩:オセルタミビルの乳児への投与の安 全性について.東京小児科医会報 2007;25:

32―6.

Validity in Estimating Influenza Patient Numbers from National Epidemiological Survey of Infectious Diseases (NESID) Data Using Oseltamivir Consumption in Hyogo Prefecture

Akio YAMAMOTO, Eri TANIOKA & Mikio MAEDA Hyogo Prefectural Institute of Public Health and Environmental Sciences

The National Epidemiological Surveillance of Infectious Diseases (NESID) estimates the number of influ- enza patients using sentinel medical institutions reports (NESID estimate) rather than the actual number of patients visiting medical institutions. We estimated Hyogo Prefecture influenza patient numbers using Oseltamivir consumption (Oseltamivir estimate) to determine NESID estimate validity for the Nov-May, 2003-2007 influenza seasons. We divided the seasonal Oseltamivir estimate by the NESID estimate to derive an estimated prescription rate assuming that the NESID estimate was accurate.

Estimated prescription rates ranged from 50% to 100%, but the NESID estimate assumption is appro-

priate from the relationship between the estimated prescription rate and prescription status. In 2004-2005

and 2005-2006 years 94% and 100% for the estimated prescription rate were close to the results (90%) from

nationwide Oseltamivir prescription investigation. Nationwide analysis and investigations needed in other

seasons on prescription rate of influenza medicine (Oseltamivir, Zanamivir, etc.) are thus needed for generali-

zation on the validity of “NESID estimate”.

Tabl e 1 Es t i mat ed  of i nf l uenza  pat i ent s and  Os el t ami vi r pr es c r i pt i on  r at e Es t i mat ed pr es c r i pt i on r at e  ( B) /( A) ( %) ( h) = ( b) /( e)No.ofpatientsestimated by

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