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各種インフルエンザ迅速診断キットの評価 ―検出感度の比較検討―

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各種インフルエンザ迅速診断キットの評価

―検出感度の比較検討―

1)神戸大学医学部附属病院検査部,2)兵庫県微生物検査ネットワーク,

3)大阪府立公衆衛生研究所,4)神戸大学大学院医学研究科臨床病態免疫学講座

徳野 治

1)

藤原 美樹

2)

中上 佳美

2)

山之内すみか

2)

足立 昌代

2)

池田 明子

2)

北山 茂生

2)

高橋 敏夫

2)

加瀬 哲男

3)

木下 承晧

1)

熊谷 俊一

4)

(平成 20 年 10 月 10 日受付)

(平成 21 年 7 月 14 日受理)

Key words : influenza, rapid diagnosis, real-time reverse transcriptase-polymerase chain reaction

インフルエンザ迅速診断キットは,その初期診断と治療に有用であり多種市販されている.しかし検査結 果の精度に関しては,各キット間の検出感度差も示唆される.今回 8 社から販売されているキットの特性を 明らかにすることを目的として,ワクチン株及び臨床分離株を用いて検出感度や性能等を比較検討した.供 試したウイルス株は分離培養した A 型 H1N1,A 型 H3N2,B 型のワクチン株 5 株,臨床株 6 株を用いた.

各ウイルス株原液を生理食塩水で 10 倍段階希釈し,キット添付文書記載の用法に基づき測定を行い,陽性 検出限界を求めた.これをさらに 2 倍希釈系に調製して測定し,最小検出感度を比較した.各試料中のウイ ルス RNA コピー数をリアルタイム reverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)法にて測 定した.同時に各キット添付の専用綿球と専用容器でのウイルス抽出効率の評価も実施した.各分離株に対 する最小検出感度のウイルス抗原量平均値〔log10コピー数!mL〕は,A 型 H1N1 が 5.68〜7.02,A 型 H3N2 が 6.37〜7.17,B 型が 6.5〜8.13 であり,一部のキット間で感度に有意差が認められ,ウイルス抽出効率につ いてもキット間に差が認められた.ウイルス検出感度は A 型に対して比較的高く,B 型には低い傾向が認 められた.各キット間の検出感度差については,用いられている検出原理の違いや,あるいはそれぞれのウ イルス抽出方法の違いによるものと推察される.

〔感染症誌 83:525〜533,2009〕

インフルエンザはほぼ毎年冬季に流行する急性呼吸 器感染症である.特に抵抗力の弱い乳幼児や高齢者で はその診断や治療が遅れると重篤な脳症や肺炎を合併 しうる.臨床症状としては,突然の 38 度以上の発熱 と咳,咽頭痛,鼻汁などの上気道炎症を呈し,さらに 頭痛,筋肉痛,関節痛,全身倦怠感,低意識などの全 身症状が強いことである.流行期は 11 月から 4 月に 集中しているため,この時期に上述の症状がみられた 場合はインフルエンザの可能性が高いと考えられる1). しかしインフルエンザには軽症や非特異的症状を呈す る例も多い.乳児や,自覚症状の乏しい高齢者におい

てはその診断が遅れることも考えられる.また,非流 行期の散発例や海外からの持ち込み例についても早期 かつ確実な診断が求められる.

近年,インフルエンザウイルス抗原を検出するため の迅速診断キットが多種普及し,これが臨床現場での インフルエンザの初期診断に大きく貢献している.こ れらのキットはイムノクロマトグラフィを基本原理と しており,小型かつ操作が簡便で,また 15 分以内で 判定が行われるので病床や外来でも有用である.しか しながらその検査精度については,検体の採取方法や 部位によって大きく左右されることが指摘されてい る2)3).最近の各キットの添付文書には,咽頭ぬぐい液 を検体とした場合は鼻腔ぬぐい液に比べて検出率が低 い傾向にある旨の記載がある.さらには,各キット間

別刷請求先:(〒650―0017)神戸市中央区楠町 7―5―2 神戸大学医学部附属病院検査部 木下 承晧

(2)

IC (Gold):

Immunochromatography Gold Colloid particle IC (Latex):

Immunochromatography Colored-latex particle IC (Enzyme):

Immunochromatography Enzyme Immunoassay

Reaction Time (min) Extraction

Container Materialsfor

Swab Absorbance

by Swab (μL) Extaction

Volume (μL) Reagent

Test Company

Rapid DiagnosisKit

SoftPlastic 15 Vial Unknown 40

300 TestPlate

IC (Enzyme) Fujirebio Inc.

Espline Influenza A & B-N

SoftPlastic 8 Nylon Tube

50 350

Dip Stick IC (Latex)

Denka Seiken Co.,Ltd.

Quick Ex-Flu Seiken

SoftPlastic 15 Vial Rayon

40 500

TestPlate IC (Gold)

Mizuho Medy Co.,Ltd.

Quick Chaser Flu A,B

SoftPlastic 15 Rayon Tube

40 400

TestPlate IC (Gold)

Nippon Beckton Dickinson BD Flu Examan

SoftPlastic 15 Vial Unknown 40

800 TestPlate

IC (Latex) Otsuka

Pharmaceutical Co.,Ltd Sysmex Co.,Ltd.

Poctem Influenza A/B

10 GlassTube Unknown

40 300

Dip Stick IC (Latex)

DS Pharma Biomedical Co.,Ltd.

Quick Vue Rapid SP influ

SoftPlastic 15 Vial Rayon

40 1,000

TestPlate IC (Gold)

Nippon Beckton Dickinson Alfresa Pharma Co.,Ltd.

Capilia Flu A+ B

3~ 10 SoftPlastic

Rayon Tube 40

300 Dip Stick

IC (Gold) DaiichiPure

Chemicals Kagaku Co.,Ltd.

Rapid Testa FLU stick

Table 1 Rapid-diagnosiskitsevaluated

Table 2 Influenza virusstrainsused (Osaka Prefect.Inst.ofPublicHealth,gratis)

TCID50/mL Vaccination strain

2.5×105 A/New Caledonia/20/1999 (H1N1)

2.0×106 A/Panama/2007/1999 (H3N2)

3.2×105 A/Wyoming/03/2003 (H3N2)

1.3×103 B/Shandong/07/1997 (Victoria)

6.3×104 B/Shanghai/361/2002 (Yamagata)

Clinicalstrains

2.0×105 A/Osaka/17/06 (H1N1)

7.9×107 A/Osaka/67/06 (H1N1)

1.6×108 A/Osaka/32/06 (H3N2)

4.0×106 A/Osaka/2588/05 (H3N2)

2.0×106 B/Osaka/158/05

7.9×105 B/Osaka/197/05

における検出感度の差も示唆されている4).これまで にインフルエンザ迅速診断キットの有用性に関する多 数の報告が行われてきた3)〜10).原ら10)はウイルス分離 培養陽性検体群を用い,迅速診断キット陰性群と陽性 群それぞれにおいてウイルスコピー数をリアルタイム reverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT- PCR)にて定量測定した.その結果,とくにインフル エンザ B 型においてはウイルスコピー数平均値に有 意差が認められ,迅速診断キットの偽陰性は検体中の ウイルス量が少ないことが最大の要因であり,検出感 度の改善が望まれると指摘している.

しかし数あるキットの中から臨床医がどのキットを 選択するかという点からみると,その検出原理のみな らず,測定操作法の違いによって検出感度差が生じる のかどうかといったキット自身の特性に踏み込んで評 価した例は皆無と思われる.今回我々は各キット間の 検出感度差とキット自身の特性を明らかにすることを 目的とし,判定ラインの目視による定性的評価,およ び検体中に含まれるウイルスコピー数測定による定量 的評価により,2006 年 11 月現在市販されている 13 種類のうち 8 種類を用いて総括的に行った.

対象と方法

評価対象となった迅速診断キットの概要を Table 1 に示す.測定原理はすべてイムノクロマトグラフィ法 である.判定ラインの検出原理は金コロイドもしくは 着色ラテックス(粒子)による呈色か,あるいはアル カリホスファターゼとその基質による発色反応かの相 違がある.キットの内容については,専用綿棒,ウイ ルス抽出液,テストプレート(スティック)という構 成は共通している.綿棒については 3 種が商品名を有 する( 滅菌紙軸綿棒 H ;エスプライン インフルエ ンザ A&B-N, EX スワブ 002 ;クイック Ex-Flu「生 研」, 滅菌紙軸綿棒 R ;Quick Vue ラピッド SP in- flu).

対象ウイルス株については,大阪府立公衆衛生研究 所より供与されたワクチン株 5 株および臨床分離株 6 株を用いた(Table 2).型別については,ワクチン株

(3)

Table 3 Primersand probesforreal-time RT-PCR11)

Productsize (bp) Sequence 5’ to 3’

Gene target Type

189 GGACTGCAGCGTAGACGCTT

AMP1-f Matrix protein

A AMP1-r CATYCTGTTGTATATGAGGCCCAT CTCAGTTATTCTGCTGGTGCACTTGCCA AMP1-probe

170 AAATACGGTGGATTAAATAAAAGCAA

BHA1-f Hemagglutinin

B BHA1-r CCAGCAATAGCTCCGAAGAAA CACCCATATTGGGCAATTTCCTATGGC BHA1-probe

に お い て A 型 に つ い て は H1N1 が 1 株,H3N2 が 2 株,B 型 は Victoria と Yamagata の 2 株,臨 床 分 離 株において A 型については H1N1 が 2 株,H3N2 が 2 株,そして B 型が 2 株である.

試料調製に際し,まず各キット添付の綿棒を用いて 生理食塩水の吸収前後の重量を測定し,その最大吸水 量を算出した.各ワクチン株ならびに臨床分離株のそ れぞれの原液を生理食塩水にて 10 倍段階希釈した.

実測においては,各ウイルス株の 10 倍希釈系列を 対象検体として,1)各社操作法に従ってキット添付 綿棒を実際に用いて抽出操作を行い調製した試料を反 応系に供したもの(以下 swab),および,2)綿棒の 最大吸収量相当量をキットの抽出液に添加し,これを テストプレート(スティック)(以下反応系)に供し たもの(以下 viral solution)について,複数の目視 による判定により陽性検出限界を評価した.

陽性検出限界を示した検体については,これをさら に生理食塩水にて 2 倍段階希釈し,上述と同様の方法 にて,最小検出感度を測定評価した.

最小検出感度を示した検体については,A 型およ び B 型インフルエンザウイルスの特定の標的遺伝子 配列を増幅できるプライマーを用いてリアルタイム RT-PCR を行い11)(Table 3),含有ウイルスコピー数 を測定した.リアルタイム RT-PCR 用標準コントロー ルとしては,A 型および B 型それぞれについて検出 用プライマーならびに蛍光プローブに相補的な配列を 組み込んだプラスミド DNA を合成し,Tris-EDTA 溶液(pH 8.0)に溶解後 10 倍段階希釈列を作製した.

これを用いて最小検出感度および定量性について検討 した結果,A 型および B 型検出系ともに最小検出感 度は 5.0×101コピー数!µL であり,5.0×101〜5.0×107 コピー数!µL の範囲において直線性を示した(data not shown).ウイルスの定量法については,生物学 的定量法(PFU!mL や TCID50!mL 等)を用いること はウイルス感染を定量化するという観点からは有用で ある.但し,感染能力を失ったウイルスについては定 量値として算出されない.また使用する細胞の感受性 などに大きく左右されることから,ウイルスの量を純 粋に反映しない.よって本検討では,リアルタイム RT-

PCR によるウイルスコピー数の測定により,各キッ トの抗原検出感度の定量的な相対比較も実施した.

1.専用綿棒使用時(swab)の最小検出感度の比較 A 型 H1N1 での最小検出感度を Fig. 1Aに示す.エ ス プ ラ イ ン イ ン フ ル エ ン ザ A&B-N(以 下 ESP),

クイック Ex-Flu「生研」(以下 QEx),ポクテム イ ンフルエンザ A!B(以下 Poc),BD Flu エグザマン

(以下 EXA)では臨床株 A!Osaka!67!06(H1N1)で 400 倍までの希釈倍数で陽性反応を認めた.これに対 し,キャピリア FluA+B(以下 CAP),クイックビュー ラピッド SP influ(以下 QV),ラピッドテスタ FLU スティック(以下 RT)では最大でも臨床株 A!Osaka

!67!06(H1N1)の 40 倍,臨床株 A!Osaka!17!06(H 1N1)に至ってはわずか 4 倍までの希釈倍数にとど まった.ウイルスコピー数に言及すると,ESP では 1×

105以上のコピー数で検出可能であったが,CAP,QV,

RT では 1×106以上のコピー数を要する結果であり,

多重比較法(Tukey 法)による各キット間の有意差 検定の結果,前述の ESP との間で顕著な有意差(p<

0.01)を認めた(Fig. 1B).

A 型 H3N2 での最小検出感度を Fig. 2に示した.全 体では A 型 H1N1 の場合よりも若干感度が下がる傾 向がみられた.ESP では臨床株 2 種では 400 倍,ま た QEx での臨床株 A!Osaka!32!06(H3N2)のみ 800 倍までの希釈倍数であった.QV,CAP と RT では最 大でも 80 から 100 倍までの陽性検出限界であった

(Fig. 2A).ウイルスコピー数に換算すると,ESP や QEx ではウイルス株によっては 1×106以上のコピー 数で検出可能であった.QV,CAP,RT では少なく とも 5×106程度以上のコピー数がないと陽性反応を 示さず,先と同様の検討により ESP または QEx との 間で検出コピー数に有意差を認めた(Fig. 2B).

B 型については,A 型の場合と比べて全体的に検出 感度が低く,またウイルス株によって検出感度に分散 を認めた(Fig. 3).ウイルスコピー数については,ワ クチン株ではキットによっては 106オーダーで検出可 能であるが,臨床株ではおしなべて 107オーダーのコ ピー数がないと陽性反応を示さない可能性が示唆され

(4)

Fig. 1A Kitdetection limitwith swabsforinfluenza A (H1N1)viruses

Fig. 1B Viralload in kitdetection limitforinfluenza A (H1N1)viruses

た.ワクチン株!臨床株共において比較的良好な検出 感度を示したのは QEx,ESP,QV,クイックチェイ サー Flu A,B(以下 QC)であった.一方,RT,EXA で は ワ ク チ ン 株 B!Shanghai!361!2002(Yamagata type)のみを除いて(data not shown)すべて 108オー ダーのコピー数がないと検出されなかった(Fig. 3 B).各キットでの,AH1 型,AH3 型,B 型の各分離 株に対する最小検出感度のウイルスコピー数平均値

(log10コ ピ ー 数)は,A 型 H1N1 が 5.68〜7.02,A 型 H3N2 が 6.37〜7.17,B 型が 6.5〜8.13 であった.

2.ウイルス抽出効果の比較

各キット添付の専用綿棒によるウイルス抽出効果に ついて swab と viral solution での検出感度の 違いを比較し,Fig. 4にまとめた.専用綿棒の最大吸 水量はどのキットでも大きな差は認められなかった

(Table 1).各ウイルス株についてみると,どのキッ トでも両者の間で検出できるウイルスコピー数の変動 を認めた.なかでも CAP,QV,RT では綿棒の使用 によって限界域の検出ウイルスコピー数が有意に増加 する,すなわち,感度が低下する傾向がみられた.

本検討で使用した各種迅速診断キットの検出感度差

(5)

Fig. 2A Kitdetection limitwith swabsforinfluenza A (H3N2)viruses

Fig. 2B Viralload in kitdetection limitforinfluenza A (H3N2)viruses

について,その原因を考察するための要因は 4 つある と考えられた.まず,1)テストプレート(スティッ ク)における反応および検出原理の違いである.また 各キットの専用抽出液および綿棒については,これら は各社が独自に感度,特異性等の性能を確認のうえ添 付しているものである.添付文書上もキット付属品の 使用を指示している事から,2)キット添付のウイル ス抽出液量の違いや,3)ウイルス抽出操作法といっ たキット自体の特性も要因となる.そして,4)判定 時間である.

まず判定ライン上の検出原理の相違が一つの原因と して考えられた.ESP は A 型および B 型に対しても 概ね良好な検出感度を示した.アルカリホスファター

ゼで標識された抗インフルエンザウイルスモノクロー ナル抗体がインフルエンザウイルス抗原と複合体を形 成し,これに基質が反応することによる発色反応を検 出原理としている6).他のキットではすべて,抗イン フルエンザウイルス抗原モノクローナル抗体で標識さ れた金コロイドあるいはラテックス(着色粒子)の集 積による呈色反応を検出原理としている.このため最 小検出感度は ESP と比較すると低下することになる のであろう.いずれにせよ,実際の臨床検体中には様々 な夾雑物が存在し,これが毛細管現象による検体の浸 潤を妨げ,判定ラインが微弱になる可能性はあるので 注意が必要である.

次に着目したのは,各キット添付の抽出液量および

(6)

Fig. 3A Kitdetection limitwith swabsforinfluenza B viruses

Fig. 3B Viralload in kitdetection limitforinfluenza B viruses

専用綿棒の吸水量の相違である.抽出液量では ESP,

QV,RT の 300µL から,CAP の 1,000µL まで大きく 差がある.しかし専用綿棒の最大吸水量は各キット間 でほとんど差は認められなかった(Table 1).このこ とは同一検体を用いた場合,単位体積あたりに含まれ るウイルス量が各キット間で大きく異なる可能性を示 唆する.この観点から比較すると,CAP で A 型と B 型すべてにおいて他のキットより検出感度が低い理由 を説明できよう.すなわち,1,000µL という比較的大 量の抽出液を使用することにより反応系に供されるウ イルス濃度が低くなり,見かけ上低い検出感度しか示 さなかった可能性が考えられる.

さらに注目したのはウイルス抽出操作法である.専 用綿棒からウイルスを抽出する際,多くの添付文書に は専用抽出容器の外から綿球を挟みながら,しごいて 絞り出す旨の手順が記載されている.容器の材質が柔 らかいプラスチック製であれば上記の操作は容易であ る.しかし,しごき方が不十分であったり,比較的硬 質のプラスチックの場合は抽出効果が下がる可能性が 高い.また QV では抽出容器がガラス製であり,綿棒 をチューブの側壁や底部に強く押し付けながら回転さ せて抽出するよう指示されている.データ上,QV,RT では綿棒を使用すると検出限界域となるウイルスコ ピー数が有意に増加し検出感度が低下する傾向がみら

(7)

Fig. 4 Comparison ofsensitivity using swab orviralsolution

れた.これは綿棒からのウイルス抽出が不十分となっ た結果を反映しているのではないかと考えられた.

キット添付の専用綿棒ではなく別種の綿棒(綿球)

で検体採取し検査室へ提出される例が散見される.こ れについては医療用検査薬の添付文書の指示が無視さ れているのみならず,その検査結果の信頼性にも影響 する可能性を指摘しておきたい.QEx については,綿 棒の材質を変更することにより(EX スワブ 002),鼻 咽頭粘膜上皮細胞の回収率が自社の従来品に比べて 3 倍に上がったことがホームページ上(デンカ生研)で 公開されており,その基礎デー タ も 発 表 さ れ て い る12)13).他社においても同様に,自社製品の綿棒と,抽 出液・テストプレート(スティック)との組み合わせ においてのみ,それらの性能について独自に検討がな されている.キットによっては綿棒の材質が明らかに されていないものもあり(Table 1),したがって他社 の綿棒を転用することも含め独断でキット添付以外の 綿棒を使用しても,その検査結果の信頼性がどの程度 保証されるかは全く不明である.

陽性ラインの判読に要する時間も判定に大きく影響 すると考えられる.本検討においては,判定に際して

所定の時間を守るという前提であった.しかし検出限 界付近のウイルス濃度の試料を供したときには陽性ラ インの呈色が非常に弱く,判読に時間を要し,かつ,

判定者間で差(非常に微弱な反応(weak)または陰 性(−))を生じるものがみられた.

またこれらのテストプレートのなかには,所定の判 定時間経過後,非常に微弱なラインと思われるものを 呈し,判定に苦渋した例もあった.このことは実際の 医療現場ではさらに混乱を招く恐れをはらんでいる.

すなわち,所定の判定時間をはるかに越えて判定され たとき,テストプレートの乾燥による偽陽性と思われ るごく微弱なラインを真の陽性と判定することが考え られる.逆に規定より短い時間でもって判定を急ぎ,

偽陰性の報告をする可能性もある.キットの規定の判 定時間を必ず守り,各施設で陽性と陰性の基準を決め ておくことが必要だろう.複数の判定者によるダブル チェックを行うほうがより安全であると思われる.光 学的リーダーによる判定について検討される場合もあ るが,使用法の煩雑さや費用などの面で実用化に至ら ず,病床や小規模医院での使用には現実的でないと思 われる.さらに我々の予備実験では,目視で陽性と判

(8)

定されたキットが光学的リーダーでは陰性と判定され た例があり,その感度にも疑問が残るものである.

本検討でも判明したとおり,すべてのキットで B 型に対する検出感度が A 型に比べて低いことは以前 から指摘されているとおりである8)10).しかしインフ ルエンザの正確な診断のために,どのキットに対して も B 型について A 型と同程度の検出感度を要求した い.抗 B 型インフルエンザ抗原モノクローナル抗体 については一考の余地があると思われる.モノクロー ナル抗体であってもそれぞれ認識エピトープが異なる と特異性が異なり検出感度が変わってくることも想像 されるからである.

どの程度の検出感度が臨床側で必要とされるかは重 要な問題である.Boivin ら14)によると,発症後 24 時 間以内と 24〜48 時間での臨床検体中のウイルス量を リアルタイム RT-PCR により定量比較した結果,そ の平均値には 40 倍以上の差が認められた.本検討に おいても,発症後 24 時間内の臨床症状と迅速診断キッ ト陽性反応との相関を示す 1 症例を得ている(data not shown).ただし本検討で使用したキットのうち,

ESP については A 型・B 型両方に陽性を示し重複感 染が疑われたにもかかわらず,RT-PCR 法ではウイル ス検出が不完全であった非特異反応・偽陽性例が報告 されている15).インフルエンザの正確な初期診断のた めには高感度かつ特異性の高い迅速診断キットが必要 である.

本論文はある特定のキットの優劣を強調することが 目的ではない.しかしキットを選択する臨床医にとっ て参考となりうるよう敢えて若干の言及をするなら ば,検出感度においては ESP が最も優れている.ウ イルス抽出操作法や扱い易さの面ではテストプレート 仕様のキットが使いやすい.特に測定時に必要な情報

(判定時間や検体滴下量)がテストプレートに明示さ れている QC は臨床現場において有用であろう.また 検出感度の如何に関わらず,いわゆるテストスティッ ク仕様(QEx,QV,RT)は,その抽出容器を立て置 くための付属品がないと不安定である.QEx ではウ イルス抽出液をさらに別の容器に移し替える操作が加 わるという点で特殊であり,他のキットと比べるとい ささか煩雑であろう.

今後のインフルエンザ迅速診断キットの更なる改 良・発展に期待する.

文 献

1)国立感染症研究所感染症情報センター「感染症 の 話」 http:!!idsc.nih.go.jp!idwr!kansen!k05!k 05̲08!k05̲08

2)市川正孝,三田村敬子,川上千春:現在可能な 病原体の迅速診断 インフルエンザウイルス.小 児科 2004;45:643―7.

3)加地正英:インフルエンザ迅速診断キットの有 用性と問題点.臨床と研究 2004;81:1927―32.

4)川上千春,糀谷敬子,渡邊寿美,三田村敬子:

今冬のインフルエンザ 迅速診断キットの有用 性.臨床と研究 2006;83:1799―806.

5)久保徳彦,池松秀之,鍋島茂樹,山路浩三郎,鍋 島篤子,近藤浩子,他:イムノクロマトグラフィ を原理としたインフルエンザ迅速診断キットの 成人における有用性についての検討.感染症誌 2003;77:1007―14.

6)三田村敬子,山崎雅彦,市川正孝,木村和弘,川 上千春,清水英明,他:イムノクロマトグラフィ 法と酵素免疫法を組み合わせた原理によるイン フルエンザ迅速検査キットの検討.感染症誌 2004;78:597―603.

7)原三千丸,高尾信一,福田伸治,島津幸枝,宮 崎佳都夫:A 型インフルエンザに対する 3 種類 のイムノクロマト法迅速診断キットの比較検討.

感染症誌 2004;78:935―42.

8)原三千丸,高尾信一,福田伸治,島津幸枝,桑 山 勝,宮崎佳都夫:B 型インフルエンザに対 する 4 種類のイムノクロマト法迅速診断キット の比較検討.感染症誌 2005;79:803―11.

9)山崎雅彦,三田村敬子,清水英明,小林米幸,小 林紫英,木村和弘,他:イムノクロマトグラフィ 法によるインフルエンザウイルス迅速検査キッ トの評価.感染症誌 2005;79:29―30.

10)原三千丸,貞升健志,高尾信一,新開敬行,甲 斐明美,福田伸治,他:リアルタイム PCR 法と の比較による A 型および B 型インフルエンザ迅 速 診 断 キ ッ ト の 評 価.感 染 症 誌 2006;80:

522―6.

11)van ELDEN LJ, Nijhuis M, Schipper P, Schuur- man R, van Loon AM:Simultaneous Detection of Influenza Viruses A and B Using Real-Time Quantitative PCR. J Clin Microbiol 2001;39:

196―200.

12)Castriciano S, Daley P, Chernesky M, Smieja M : Comparison of Flocked and Rayon Swabs for Epithelial Cell Yield from Nasopharyngeal Sam- pling of Patients with Respiratory Tract Infec- tions. 21st Annual Clinical Virology Symposium- Clearwater Beach, Florida USA, May 8―10, 2005.

13)Daley P, Castriciano S, Chernesky M, Smieja M:Comparison of Flocked and Rayon Swabs for Collection of Respiratory Epithelial Cells from Uninfected Volunteers and Symptomatic Patients. J Clin Microbiol 2006;44:2265―7.

14)Boivin G, Coulombe Z, Wat C:Quantification of the Influenza Virus Load by Real-Time Polym- erase Chain Reaction in Nasoparyngeal Swabs of Patients Treated with Oseltamivir. J Infect Dis 2003;188:578―80.

15)高尾信一,原三千丸,角田 修,島津幸枝,桑 山 勝,福田伸治,宮崎佳都夫:迅速診断キッ トで A 型と B 型インフルエンザウイルスの重複

(9)

感染が疑われ,RT-PCR 法とウイルス分離法で 確 定 さ れ た 11 例 に つ い て.感 染 症 誌 2005;

79:877―86.

Comparison of Detection Sensitivity in Rapid-diagnosis Influenza Virus Kits

Osamu TOKUNO1), Miki FUJIWARA2), Yoshimi NAKAJOH2), Sumika YAMANOUCHI2), Masayo ADACHI2), Akiko IKEDA2), Shigeo KITAYAMA2), Toshio TAKAHASHI2), Tetsuo KASE3), Shouhiro KINOSHITA1)

& Shunichi KUMAGAI4)

1)Clinical Laboratory, Kobe University Hospital,2)Hyogo Microbiological Examination Network,

3)Osaka Prefectural Institute of Public Health,

4)Department of Clinical Pathology and Immunology, Kobe University School of Medicine

Rapid-diagnosis kits able to detect influenza A and B virus by immunochromatography developed by different manufacturers, while useful in early diagnosis, may vary widely in detection sensitivity.

We compared sensitivity results for eight virus-detection kits in current use-Quick Chaser FluA, B(Mi- zuho Medy), EsplineInfluenza A & B-N (Fujirebio), CapiliaFlu A+B (Nippon Beckton Dickinson & Alfesa Pharma), PoctemInfluenza A!B (Otsuka Pharma & Sysmex), BD Flu Examan(Nippon Beckton Dickinson), Quick Ex-Flu “Seiken” (Denka Seiken), Quick Vue Rapid SP Influ (DP Pharma Biomedical), and Rapid Testa FLU stick (Daiichi Pure Chemicals)-against influenza virus stocks, contained five vaccination strains (one A!H1N1, two A!H3N2, and two B) and six clinical strains (two A!H1N1, two A!H3N2, and two B). Mini- mum detection concentrations giving immunologically positive signals in serial dilution and RNA copies in positive dilution in real-time reverse transcriptase-polymerase chain reaction (RT-PCR) were assayed for all kits and virus stock combinations.

RNA log10 copy numbers!mL in dilutions within detection limits yielded 5.68-7.02, 6.37-7.17, and 6.5-8.13 for A!H1N1, A!H3N2, and B. Statistically significant differences in sensitivity were observed between some kit combinations. Detection sensitivity tended to be relatively higher for influenza A than B virus. This is as- sumed due to different principles in kit methods, such as monoclonal antibodies, specimen-extraction condi- tions, and other unknown factors.

Tabl e 2 I nf l uenza  vi r us s t r ai ns us ed  ( Os aka  Pr ef ec t . I ns t . of Publ i c Heal t h, gr at i s )
Tabl e 3 Pr i mer s and  pr obes f or r eal - t i me  RT- PCR 11) Pr oduc t s i ze  ( bp)Sequence 5’ to 3’ Gene targetType 189GGACTGCAGCGTAGACGCTTAMP1-fMatrix proteinAAMP1-rCATYCTGTTGTATATGAGGCCCAT CTCAGTTATTCTGCTGGTGCACTTGCCAAMP1-probe 170AAATACGGTGGATTAA

参照

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