不等式体系 における Tuc ke r の定理の 非線型への一般化
藤 本 喬 雄 ・石 山 健 一
1節 .は じめ に
線型計画理論お よび
vonNe uma nn
成長モデルに美 しく関連づ け られ る不 等式体系上のすぼらしい定理が,Tucke r( 1 95 6)によって与 えられた。Tu c ke r
はそれ を数学的帰納法 に よって証 明 した。 (なお,Ni
ka i do( 1 9 68)
第1章 で は,それ を分離定理 を使 って証 明 してい る。) この論 文 のあ と直 ちに,実 際,Tucke r
とは独 立 に,Fan ‑Gl i c ks be r g‑Ho f f ma n( 1 957)は,分 離 定 理 を用
い て 凸 関 数 で 構 成 され る不 等 式 体 系 上 の 定 理 を示 した。 (Ma n ga s a r i a n
( 1 9 69)
第4
章参照。)その後,著者のひ とりであ る
Fu j i mo t o( 1 98 0)が,そのなか に含 まれ る関
数が微分可能な同次関数かあるいは擬凹関数であるような体系 に村す る命選 を与 えた。 この結果 は,技術進歩の利潤率 に及 ぼす影響 に関す るOki s h i oの
定 理( Oki s hi o( 1 961 )参 照。
) を非 線 型 に拡 張 す る た め にFu j i mo t o ‑Ra na de
( 1 99 8)のなかで用い られている。一方,Fa ne ta
l.( 1 95 7)
の結果の部分的 な一般化 は,Fuj i mo t o( 1 99 7)においてなされている。
この論説では,二者択一式の
Tuc ke r
の定理 とミニマ ックス定理 の間 にあ る関係や,後者 を前者 に変換す るために必要な条件 について解説 してい く。Fa n( 1 95 3)以後, ミニマ ックス定理 に対する様 々な拡張が行われているが,
なかで もNika i do( 1 95 4)や Si on( 1 95 8)が有名であ る。 しか しなが ら, ミニ
マ ックス定理 をTuc ke r
の形式 に書 き改 めるにあたっては,問題が 1つあ る530
(第2節で述べ る)。
第2節では線型の場合 について,その後,第3節で非線型凹関数の場合 に 関 してそれぞれ説明 してい く。所与の関数が凹関数あるいは凸関数であると きに局所的な特徴づけが大局化 され得 ることを第
4
節で示す。最後 に,第5
節で諸注意 を述べ る。2
節.線型の場合n次元ユークリッ ド空間を
R
nで表 し,その非負象限をR
.nとす る。 また,2
つの集合 に関 して,以下の ように定義す る。T ≡ 〈 yl y∈1
Lm, e' y‑1
),S ≡ 〈 xl x∈R
.n, e′ x ‑1
)。ただ し,e
′≡ (1
,1
,・, 1 )
であ り,プライムは転 置 を表 す。加 えて,次 元m
お よびn
は 1以上 で あ る とす る。次 に示 す のは,Tu
c k
er( 1 95 6,p.ll )
にある定理3である。
Tuc ke r
の定理ある
m
行n
列の実数行列Aに関 して以下の2つの問題 を考 える。す なわ ち,(1)
x ∈R
llで,かつ,Ax ≧
0を満たすxを求め よ。
(2) y ∈1 L
mで,かつ,y/ A ≦
0となるような,y
を求め よ。この とき,以下の2つの条件 を同時 に満 たす,ある解の組(x,y)が存在す る。
(1
8)Ax+ y
>0 (2
')x'‑y'A>0
この定理 を証明す るために,我 々は直積空間 か
≡∫×T
か らそれ 自身へ の集合値写像fを考 える。D内の点(x,y)に関 して,我 々は次 の2つ の問 題 を解 く。(i) x
を固定 したときにy' Ax
を最小化す るTの点
yを求める。‑1 6 4‑
(i i)
yを固定 した ときにy'Axを最大化するSの点 xを求めるo
問題 (i)お よび
(i i)
に対す る解集合 をそれぞれ,T(
x) ,
0.(y)で表 し, これ らの集合 に関 して,次 の制 限 を考 える。す なわち,その解 のなか にあ る,要素xlあ るい はy,が正であ りうる ときにはいつで も,それはある一 定の正値Eよ り大である とす る。解集合が空で ない ようにす るため には, 我 々は,例 えばo<
E<mi n( 1 / ( 1+
m), 1 / ( 1 + n) )
となるようなEを選べ ば よ い。 この ように制 限 された解集合 は,cr(y,E)お よびT(
x,E)と書 かれ る。 こ の とき我 々は,写像 /を次の ように定義す る。f:
(x,y)i nD
→C,(y,E)×T( x, e )i nD
写像 ′は明 らか に空 でない凸集合値 であ り,かつ上半連続であ る。だか ら,我 々は角谷の不動点定理 を利用 して,上の問題
(i)
,(i i)への解 とな
るある組( x * , y* )
が存在す るとい うことがで きるO これは ミニマ ックス定理 を証明するための よく知 られた手法である。さて,こ こでp≡ y*'・Ax*とお くと
,p>
Oの と きは,Ax*>0
であ るか ら,x書の値 を少 し変 えたx * *>0
もまたAx* *>0
を満 たす。 この とき我 々 は,上述 の不等式 (1*)お よび (2
*) を満 たす( x
'*,y++)組 を形成す るた めにy+ *‑0を選ぶ ことがで きる。
また,FL
<
0 (す なわ ちy*′・A<0)の場合 も,双対 的 なや り方 で解 が求
め られる。次 に,p‑0である場合 について考察 しよう。 この ときAx*
≧0であ り,
またy*′・A≦0
が成 り立つ。我 々が課 したまさにその制限によって,この組 (x*,y*)は不等式 (1*)お よび (2*) を満たすのである。 (証明終)この定理か ら
,Tuc ke r ( 1 9 5 6 ,p.ll )
にある二者択一 に関す る命題 として 述べ られている系3A
が容易 に導かれる。532
3
節.凹関数さて ここで,我 々は
R
.nか らRmへの非線型連続 凹写像H(x)について考 え る。 この節 で我 々 は集 合 方の定 義 を変 更 し,あ る正 の 数αに対 してS
≡ (x lx∈R
.n,e'x ‑可
とす る。非線型 に拡張 されたTuc k
er
の定理 は以下の ようになる。
定理
3.1:
〟 (0
)‑0
を仮定 し,以下の2
つの問題 を考 える。す なわち, (1)x∈R
IかつH(x)≧
0となるx
を求め よ。(2)y∈R.mかつ,すべ ての
x ∈R
.nに対 してy'
H (x)≦0とな るyを求 め よ。この とき,ある解の組
( x 榊, y
**)が存在 して,それは次の条件 を満たす。(Nl*)H (x
* * )+y
**>0( N2
*) も し(1)に対す る半正解 が存在 しない な らば,そ の ときすべ てのx ∈Rヱ ー( 0
)に対 して‑y*′・H (x)>0となるy* ∈R
.mが存在す る。第
2
節 におけるTuc ke r
の定理の証 明の場合 と同様 に,我 々は,直積空 間D =SxT
か らそれ 自身へ写す集合値写像fについて考 える。D
内の所与 の点(x,y)に対 して,2
つの問題 を解 く。す なわち,(i)
xを固定 した ときにy'H (x)を最小化するT
の要素yを求め よ。(i i)
yを固定 した ときにy'H (x)を最大化す るS
の要素xを求め よO
問題(i)
,(i i)
に対す る解集合 をそれぞれT(
x) ,
0‑(y)で表 し,前節 の よ うに,あ る十分小 さい正数Eに よって集 合T( x)
が制 限 され てい る と考 え る。その制 限 された解集合 を,再 びT( x, E )
と表す。 この とき我 々は,Fを 以下の ように定義す る。f:(x,y)
i nD一
打(y)×T( x, E )i nD.
この写像fは非負 の凸集合値 でかつ上半連続 であ る。 (問題
(i i)
におい て,xの写像y'H (x)が凹であることに注意せ よ。)角谷の不動点定理 によっ‑1 6 6
‑て,我 々は,ある不動点
( x * , y
*)が存在す るとい うことがで きるo問題(1)に対 して,ある半正解
x
が存在す る と しよう。Sの定義 内で,あ
る適当なα>0を選ぶ ことによって,yで′ ・ H(
㌔)≧0とす る。第 2
節 と同 じ 方法 で( Nl*
) を証 明す る こ とが で きる。 また, も しy
*′ . H ( x* )
<0を満
たす正の値があれば,そのことが( N2*
) を証明する。 (Nl*
) を満 たすた めに,我々はx * *‑0
とおいてy
*か ら少 し離れたy**をとる。 (証明終)定理
3.1
よ り,H( x)≧0となる半正 x
は存在す るが,H(x)>0となる x
が存在 しない な らば,あ る租 ( x
',y+)が存在 し,それ に対 してH ,(
x')‑0
⇔y ;>0かつH ,( x* ) >0 ⇔y
L*‑0となる。すなわち, 自由財 に関す る厳密
な法則が成立 しているのである。以下のことを,ほぼ同 じ手法で証明す るこ とが可能である。定理
3.2: H( x)
は,Rnの非負 の コンパ ク ト凸集合 x をR
mに写す写像 である とす る。H(x) ≧0の解が X上 にない とすれば,すべ ての x∈X
に対して
y' H( x)<0となるような,ある
y∈Tが存在す る。これ は
,X
が コ ンパ ク トであ る こ とを利用 してい るの で,Fa n e t a
l.( 1 9 5 7 )
の定理1
より若干弱いが,結果 はよ り精密 な形で表現 される。ここで与 え られた証明のなかで重要 な点 は,問題 (ii) において Jの写 像
y' H( x)
が凹であることである。必要なのは,T
の任意の固定 されたベ ク トル 再 こ対 してx
の関数y/ H( x)
が最大値 を持つ ようなx
の集合が凸集合で ある, とい うことである。 ここで我々は,新 しい概念 を導入 しよう。それを 弱い凹族関数 と呼ぼ う。す なわち,関数H
L(x),i‑1
,2
,…,mはR
nをRへ
写す関数であ り,それ に対 し,任意 の半正yをパ ラメー タベ ク トル として
y' H( x)
が最大値 を とるxの集合 は,凸 になる もので あ る。 この族 に関 し て,同様 の命題 を証明することが可能である。534
4節.凹性 の もとでの局所的な結果
Fu j i mo t o( 1 98 0, 1 9 97)において示 されたことは,ヤ コビ行列 を用いた局所
的な特徴づけである。 ここでは,微分可能性 と凹性の もとでは局所的な結果 が大局的な結果 を生み出す( Fa ne ta
l.( 1 95 7))とい うことを証明す る
。Fu j i mot o( 1 9 80)
で は, も しH(x)≧0が S上 で 解 を もた な い な ら ば,
p'.∇H (x* )
<0を満 たす,ある非負ベ ク トルの組(x*,p)が存在す ることが 示 されている。 ここで,∇H (x*)はH(x)のx
*におけるヤ コビ行列 を意味 し ている。 このx
*は次の最小化問題 を解 くことによって求め られる。Mi ni mi z eM
(x)≡∑' t " = . G,( x) 2
sub j e c lt o
x∈S
この間題のなかで,関数G(x)はGE(x)≡ mintH.(x)
,0)f o r
i‑ 1,2,.・・ , m
と定義 されている。p≡ ‑G(㌔ )とお くと,G(x)はm次元列ベ ク トル関数 であるか ら,最小化の条件 は以下の ようになる。p'. ∇H ( x* )
≦一入*e
,かつ p'・∇H (x')x*‑‑
入*各H
.( x)
が 凹 関 数 で あ る と き,す べ て のx∈Sに 対 し て
∇H (x*)(x‑x*)≧H(x)‑H (x')が成 り立つ。先 の2つの条件 とこの こ とか ら,p'H(x)≦p'H (x*)が 導 出 され る. この不 等 式 の 右 辺 は 定 義 に よ り
‑M( x
')であるか ら,負 となる。Sが コンパ ク トであるがゆえに,我 々の結 果がFa ne ta
l.( 1 957)の相当す る定理 より弱い結果であることをここに記 し
てお く。領域 をS
か らRITに拡張することは困難ではないであろう。なお,si on( 1 95 8)の系 3. 3
に対 して同様 のことがなされ,少 し弱い形の結果が得 ら れている。‑1 6 8‑
5節.諸注意
準凸性あるいは準凹性 とい う概念 は, Nikaido(1954)のなかで初めて提言 され た。一 方,二 者 択 一 の 一 覧 と して の 行 列 理 論 に よ る 表 現 は
vi l l e
( 1 9 3 8)
にまで遡 る。 この論説 における手法 は, Karamardianによって記 さ れているものやMo r e( 1 9 7 3 )
のなかで明示的に述べ られているものに由来す る。 これは相補問題 と関連 している。我 々の修正は,2
つの変数の うち一方 を次元の異 なる空間に入れることによってなされている。 また,我 々は, ミ ニマ ックス定理 を証明 している, とい うことに注意 を喚起 した。Fujimoto
( 1 9 9 7)
における前 Enjの1
個 の注意事項 は間違 っていた。真 の凹 性 あるいは凸性 を超 えて二者択一の形式 でTuckerの定理 を非線型 に拡張す ることは容易ではない。関数の族 に関す る 「弱い凹性」の概念 は,脆い もの なのか も知れない。あるいはそれ どころか内実のない ものか も知れない。参考文献
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‑170‑