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気管支喘息を合併せる難治性てんかんに 対するヒスタグ・ビン療法

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(二二難1。第購56鞘)

特別掲載

気管支喘息を合併せる難治性てんかんに 対するヒスタグ・ビン療法

東京女子医科大学小児科学教室(主任:福山幸夫教授)

 原 美智子・丸山 博・福山 幸夫

 ハラ ミチコ マルヤマ ヒロシフクヤマ ユキオ

(受付 昭和56年8月10日)

Successful Treatment of lntractable Ep凱epsy Associated wi止Type l Allergy with

       Histaglob血R⑪㎞C田dren

Mi面ko HARA, M.D., Himshi MARUYAMA, M.D. and Yuldo FUKIUYAMA, M.D.

       Department of Pediatrics(Director:Pro£Y. FUKUYAMA)

       Tokyo Women s Medical College

  The authors have treated 3 children su飴ring f}om intractable epllepsy and bronch五al asthma with repeated doses of HistaglobinR⑪or an anti−allergic drug.

  This mode of therapy brought to all patients a good e旋ct on bronchial asthma, and, to our surprise,

acomplete confrol of epileptic.seizures along with a dear−cut imprQvement of EEG abnormalities and behavior.

  Apossible signiβcance ofthe type I allergy in the process ofepileptogenesis in human, at least in a part of patien亡s, was thus suggested, and the pertinent literatures were reviewed.

         はじめに

 気管支喘息,アレルギー性鼻炎などのアレルギ ー疾患に,てんかんの発症または脳波異常,行動 異常などの中枢神経系異常がしぼしぽ合併するこ とが報告されている3) 6).また一方,てんかん児 やその近縁者にアレルギー疾患が高頻度に発症す

るとも言われている1).

 このような,てんかんとアレルギーの密接な関 係については,いくつかの検討がなされている が,両老の関係がいかなる機序に基づくものであ

るかは未だ明確な結論は出ていない.

 今回我々は,原因不明の難治性てんかんに一型

アレルギーによる気管支喘息を合併した3症例を 経験し,両者の因果関係の検討を目的として,彼 等に一型アレルギーの非特異的減感作療法剤であ るヒスタグμビンを投与したところ,気管支喘息 に有効であったのみならず,難治性てんかんにも 著明な改善が得られ,また行動面においても著し い変化が認められたので報告するとともに,一型 アレルギーの中枢神経系に及ぼす影響について若 干の考察を行なった.

       対象および方法

 対象は,表1に示す3例(男2,女1)であ

る.ヒスタグロビン療法開始年齢は平均7歳5カ

(2)

表1 HG療法対象者

症例

HG

J始 N齢

中枢神経系症状 一型アレルギー

てんかん その他のCNS症状    −

症 状  IgE

iIU/ml) 抗原

1.T,Y. 8歳

P⑪円月

@男 LennQX症候群

知能遅滞 s動異常

気管支喘息

Aレルギー性鼻炎および結膜炎 3150

HD

2.M.M. 6歳

Oカ月

j

二次的全汎発作 s動異常知能遅滞

気管支喘息

Aレルギー性鼻炎および結膜炎

ヨ麻痺アトピー性皮膚炎

UOO

HD

bandida

̀spergirus uタクサyニンリウム

3.M, S, 7歳 Uカ月

@女

ミオクロニー発作 知能遅滞

カ遷性片麻痺 気管支喘息 1620

HD

bandida

表2  アトピー型気管支喘息 とするための必要  条件(八倉)

条     件 点数配分

1.皮膚反応が陽性(ただし真菌類,細菌類のみに陽

@性である場合を除く) 1点

2,発症年齢が小児期または思春期 1点

3.ア.レルギー性疾患の既往歴または合併症を有する 1点

4.アレルギー性疾i患の家族歴を有する 1点

5.喀疲中の好酸球の増多または末梢血中の好酸球の

@増多(6%以上) 1点

6.血清IgE値の上昇(700 U/m藍以上) 1点

7,特異的lgE抗体が陽性(RASTでscore 2以上) 2点

8.誘発試験が陽性 3点

合計点3点以上である場合を アトピー型気管支喘息 とする.

月であった.

 合併する気管支喘息は,表2の八倉の判定基 準2)に基づき一型アレルギーによると診断した.

 てんかんは第1例しennox症候群,第2例は難 治性二次的全汎発作,第3例はミオクロニー発作 で,いずれも各種抗痙剤に抵抗し,特に第1例で はケトン食療法,ホルモン内服療法にても効果は 得られず,第3例はACTH療法にても反応せず

難治性であった.

 てんかんの原因検索では手がかりとなる所見は 得られなかった.すなわち既往歴に特記すべきこ と無く,脳血管写,脳CTスキャン正常,血清,

尿アミノ酸分析,血液一般,血清生化学,尿一 般,髄液検査,空腹時血糖も正常であった.

 外見上変質徴候なく,眼底も正常であった.但 し第3例には原因不明の軽度痙性両麻痺が認めら

れた.

 症例1.T・Y・(昭和46年6月25日生)

      8歳10ヵ月男児  臨床診断

 1.Lenn・x症候群

 2.一型アレルギー(気管支喘息,アレルギー 性鼻炎,結膜炎)

 家族歴:父にアレルギー性鼻炎.てんかんな

し.

 既往歴:出生前,周生期特記すべきことなし.

1歳8カ,月熱性けいれん発症.

 現病歴:2歳6ヵ月ミオクロニー発作発症.1 日5㌍6回毎日出現,2歳9ヵ月強直発作を合併 するようになり,脳波は連続性広汎性棘徐波複合 を示す.3歳ケトン食療法施行.一時的改善を認 めたが間もなく再発.6歳ホルモン療法(Hアdro−

cortison内服)施行したが,むしろ増悪傾向を示 し,中止している.以後各種抗痙剤を試みたが,

てんかん発作は抑制されず,殆んど毎日5〜6回 のミオクロニー発作,強直発作がみられている.

 アレルギー歴は,生来アトピー体質であった が,はっきりとした気管支喘息は3歳より発症,

以後月1回程度の喘息発作を繰返している.

 てんかん発作は特にこの気管支喘息発作時に頻 発する傾向があった.

 症例2.M・M・(昭和49年4月5日生)

     6歳0ヵ月男児  臨床診断

 1.原因不明の中等度脳障害

 ①てんがんe:二次的二二発作(難治性)

一1200一

(3)

 ②知能遅滞(IQ=62)

 2.一型アレルギー(気管支喘息,アレルギー 性鼻炎,結膜炎,蒜麻疹,アトピー性皮膚炎)

 家族歴=父方の叔父および母に熱性けいれんの 既往あり.父にアトピー性皮膚炎,アレルギー性 鼻炎,父方および母方祖母に気管支喘息あり.

 既往歴:出生前,周生期特記すべきことなし.

0歳5ヵ月突発性発疹罹患有熱時に右半身間代け いれん発症.

 現病歴:0歳6ヵ月原因不明のけいれん重積症 発症,以後月4〜5回の全身間代けいれんがみら れる.有熱時,温度差,日射,便秘などがしぼし ぼ誘因となり,特に気管支喘息発作中には必ず数 回の全身けいれんが繰り返される.

 てんかんは各種抗蓬剤に難治であった.

 アレルギー歴は,生来アトピー体質であり,3 歳より気管支喘息を発症,以後月1〜3回の喘息 発作を繰り返している.

 通常1回の喘息発作発症後2〜3時間で,1〜

2分持続の全汎性間代けいれんが出現し,これが 喘息発作経過中に数回にわたって繰返されること が多い.また時には全身けいれんの終了と同時 に,それまで強く聞かれていた喘鳴が急激に減 弱,そのまま喘息発作が終了することも経験され

ている.

 症例3.M・S・(昭和42年7月15日生)13歳女児  臨床診断

 1.原因不明の中等度脳障害  ①てんかん:ミオク子偏ー発作  ② 知能遅滞

 ③脳性麻痺:癌性両麻痺(軽度)

 2.一型アレルギー(気管支喘息)

 家族歴=特記すべきことなし.

 既往歴:出生前,周生期特記すべきことなし.

三下時より四肢の動きが鈍かった.生後2週目に 原因不明の発熱あり10日間で治癒している.

 現病歴:1歳3ヵ月全身間代けいれん発症.次 いでミオク島上ー発作,失立発作が頻回に出現す るようになり,多い時には1日200回を越えるミ オクロ←ニー発作が出現した.4歳ACT宜療法施

行,一時的に有効であったが中止とともに再発.

以後,バルプロ酸ナトリウム,クロナゼパム等各 種抗痙剤使用するも,臨床発作, 脳波ともに改善 がみられず難治性であった.

 喘息発作は6歳2ヵ月初発,以後1〜2ヵ月に 1回程度の発作を繰り返している.

 喘息発作時にてんかんの出現頻度が増すことは

なかった.

        投与方法  1. 使用注射薬

 Histaglobin⑬ヒスタグロビン(以下HGと略

す)

 1バイアル中以下の成分を含有する.

humanγ一gl・bulin     12mg

 his匙amin dihydrochloride    O.15μg  溶解用液:日局注射用蒸留水   2ml

 HGは図1に示すように,ヒスタミンの固定能 を高め,肥辟細胞または好塩基球からのヒスタミ

ンの遊離を抑制して,喘息発作などの一型アレル ギーの発症を抑える薬剤である.

アレルゲン

㌣/・自自

アレルゲン除去減感作療法剤非特異的変調療法剤(ヒスタグロビン)

…豊…聖画ミン〉礫

   \

インタール

(Disodium cromQglycate)

気管支 平滑筋収縮 欄莫浮腫 分泌物増加

脱水 低酸素血症 高炭酸ガス 血症 アシドーシス

抗ヒスタミン剤 気管支拡張剤 交感神馬刺激剤 テオフィリン系薬剤 ステロイド剤

輸液 酸素吸入 アシドーシス補正 呼吸管理

   感染      抗生物質

図1 気管支喘息の病態と治療剤ヒスタグロビンの  作用機序

 2.投与方法

 原則として週1回目G 1バイアル宛上腕皮下

注射を行なった.

 10回を1クールとし,1クール終了後1ヵ月間 休止,症状の改善が完全でない場合,さらに1〜

(4)

表3 HG療法効果判定基準

著効 HG投与前に比し,発作日数が1/3以下に減少 有効 HG投与前に比し,発作日数が2/3〜1縄の減少 無効 HG投与前に比し,発作日数が不変〜1/3の減少 増悪 HG投与前に比し,発作日数が増加

著効. HG投与前に比し,発作波の出現頻度が1/3以下に減少 有効 HG投与前に比し,発作波の出現頻度:が2/3〜1/3の減少 脳    波

無効 HG投与前に比し,発作波の出現頻度が不変〜1/3の減少 増悪 且G投与前に比し,発作波の出現頻度が増加

改善 HG投与前に比し,1Q 10以上の増加 不変 HG投与前に比し,不変

知能指数

s動異常

改善 HG投与前に比し,行動面に何らかの改善が見られる 不変 HG投与前に比し,不変

著効 HG投与前に比し,発作日数が1/3以上に減少 有効 HG投与前に比し,発作日数が2/3〜1/3に減少 気管支喘息

無効 HG投与前に比し,発作日数が不変 増悪 HG投与前に比し,発作日数が増加 数クールを反復した.

 本剤の効果判定を明確にするために,併用抗電 剤の変更は極力避けた.

 症状の消失した後は,月1日投与による維持療

法を行った.

 3.効果判定基準(表3)

  (1)てんかん発作=発作記録表を用い,毎日 の発作回数な記録した.HG投与開始前3ヵ月の 表4.HG投与による中枢神経系および気管支喘息に対する効果

症例1(T。Y.) 症例2(MM、)

HG前 1クール終了 2クール終了 HG前 1クール終了 2クール終了

てんかん 著効 著効 著効. 著効

効果判定

行動異常 改善 改善 改善 改善

気管支喘息 著効 著効 著効 著効

てんかんi発作日数) 10/日 1−0/月 消失 8/月 2/月 0一1/月

その他の?武̲経

ヌ   状

行動異常@IQ 562

集中力増加 ス 弁@IQロ74

左に同じ 行動異常

@IQコ62

意欲的 W中力増加

@IQ=67

左に同じ

脳波所見

基礎律動異常 L汎性棘徐波 牛№

R〜5回/10秒

基礎工動異常 L汎性棘二二 牛№

O〜1回/分

陽性二巴のみ ュ作波消失

基礎律動異常 L汎性棘徐波

基礎律動異常

z性棘波のみ 左に同じ 気管支喘息

i発作日数) 2/月 1−0/月 0/月 2/月 1−0/月 0/月

IgE(IU/ml) 3150 2380 1100 570

副 作 用

抗 蓬 制 VPA,PB,cX PRM DX ,      , oHT CZP  ,

VPA PB DX  ,     ,

oHT, CZP 左に同じ PB,CBZ,CZP

cX VPA DZ ,      ,

oHT

PB CZP CBZ ,        ,DX VPA DZ ,      ,

PB CBZ DZ ,        , bZP↓,DX↓VPA↓

VPA:デパケン, PRM:マイソリン,CBZ:チグレトール, PB:フェノバルビタール, DX:ホリゾン,

       一1202一

(5)

発作日数の月平均回数をHG投与前の発作回数 とし,投与後のそれと比較した.HG投与前に比 し発作回数が1!3以下に減少した場合を著効,2/3

〜1/3の減少を有効とし,1/3以内の減少または不 変を無効とした.

 (2)脳波;H:G投与前3ヵ月以内に施行した ものを投与前脳波とし,1クール投与終了時に記 録したものと基礎波の変化および発作波の出現頻 度につき比較検討した.HG投与前に比し,発作 波の出現頻度が1/3以下を著効,2/3〜1/3の減少を 有効とした.

 (3)知能指数および行動変化:HG療法1ク ール終了時にIQ検査を施行, HG前のものと 比較した.IQ 10以上の増加を改善とした.

 行動変化は,HG投与前に比し目立つた行動の 改善がみられた場合改善とした.

 (4)気管支喘息:HG投与前3ヵ月の月平均 発作回数を投与前喘息発作回数とし,HG療法1 クール毎に比較検討した.HG投与前に比し発作 回数が1/3以下に減少した場合を著効,2/3〜1/3の 減少を有効とした.

 (5)免疫グロブリン:1クール終了時に免疫 グロブリンを測定した.特にIgEの変動を観察

した.

 (6)副作用:HG療法1クール終了時に血液 一般,尿一般,血清生化学検査を施行し,副作用 を検討した.

         成  績  1.てんかん発作

 表4に示すように,3例ともに著明な効果が得

られた.第1例はHG投与後3週目より発作の

減少がみられ,9週目より完全に消失した.第2 例はHG投与後9週目より発作は消失した.し かし1クール終了後3週目に軽い全身けいれんが 認められたため2クール目を開始した.以後再発 はみられていない.

 第3例はHG開始後3週目より発作が減少し

はじめ,3クール目より完全に消失,以後維持療 法中,さらにHG中止後も再発は認めていない.

 2.脳波

 表4に示すように,3例と.もに著明な変化を認

めた.

表4 つづき 症例3(M.S,)

HG前 1クール終了 2クール終了 3クール終了 4クール終了 維持療法 HG中止

不変 軽快 著効 著効 著効 著効

改善 改善 改善 改善 改善 改善

不変 不変 軽快 軽快 著効 著効

30/日 30/日 3/日 消失 消失 消失 消失

無気力 意欲的 左に同じ 以後左に同じ

広汎性棘銀 レ徐波結合 P0〜20回/10秒

広汎性棘徐波 牛№

X〜8日/10秒

広汎性棘徐波 牛№

T回/10秒

広汎性棘徐波 牛㍼チ失W点性棘波

発作波消失 発作波消失 発作波消失

3/月 3/月 3/月 2/月 1ノ月 消失 消失

1620 1620

PHT,PBPZ

uPA NZ DX  ■      野

bZP

PHT,PB,DZ uPA,CZP,DX

   PB↓PHT↓VPA, OZPDX 一 VPA CZP  ,

cZ

VPA CZP  ,

cZ

VPA CZP  l

cX

VPA CZPcX 

NZ:ベンザリン,PHT:アレビアチン,CZP:リボトリール

(6)

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       図2 HG療法前睡眠脳波症例1.T・Y・8歳 ♂        広汎性棘徐波結合のshort burstsが頻回に出現している.

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図3 HG療法1クール終了時覚醒時脳波症例1.T.Y.8歳 ♂      軽度律動異常を認めるが,発作波の出現はない。

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(7)

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  図4 HG療法1クール終了時睡眠脳波症例1.T・Y・8歳 ♂

左右後側頭一後頭部6&14Hz陽性報酬がまれに出現.広汎性棘徐波結合は消失.

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        図5 気管支喘息発作中の脳波症例2.MM.6歳♂

      連続性の広汎性棘偏波結合を認める.

(8)

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図6 HG療法1クール終了時間即時脳波 症例2.M,M.6歳 ♂      軽度律動異常を認めるが,発作波はみられない.

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    図7 HG療法1クール終了時睡眠脳波 症例2.M.M.6歳 ♂

左右後側帰一後頭部6&14Hz陽性棘波をまれ}こ認める.棘徐波結合のてんかん波消失.

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     1㌔胸脚

轟一一一_昌一一几一     HG療法前(左)

広汎性鋭波,鋭徐波が連続してみられる.

      図.8 症例3.M.S.7歳♀

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   HG 1クール終了時(右)

広汎性回田,錦徐波が頻度を減ず.

睡眠脳波

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       みられる.

      図9 症例3.M.S,7歳 ♀ 睡眠脳波        一1207一

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    図10HG療法4クール終了時

  軽度律動異常のみ,発作波は完全に消失.

    症例3.M.S.7歳 ♀ 睡眠脳波

 第1例は基礎波の律動異常は不変であったが,

発作波の出現頻度はHG開始前では10秒毎に3

〜5回の全汎性棘徐波複合が出現していたが,1 クール終了時には棘徐波複合は消失し,まれに軽 睡眠時に左右後側頭一後頭部に6&14HZ陽性 平野がみられるのみとなった(図2〜4).

 第2例は,基礎波の変化はみられないが,喘息 発作時に認められた広汎性棘徐波複合,頭頂部優 位の一群波は消失し,まれに軽眠期に左右後側頭 一後頭部に6&14HZ陽性三二を認めるのみと

なった(図5〜7).

 第3例はHG投与前には10秒毎に20回以上の 広汎性鋭波または三二波が頻回に認められたが,

2クール目より出現頻度を減じ,3クール終了時 では広汎性の発作波は消失し,左または右側頭部 の焦点性棘波のみとなり,4クール終了後発作波 は全く消失した.HG中止後3年間発作波の再発

はない(図8〜10).

 3.知能指数,行動変化

 第1例はHG前のIQ−62,1クール終了時

IQ=74と改善が認められた.

 また耳G投与前は過運動性行動異常が目立つ たが,HG投与2週目より落付きが出,集中力が

増した,

 第2例はHG投与前IQ=62,投与後1クー

ル終了時67と変化は軽度であったが,HG投与後

5週目頃より意欲的,社交的となり,他の園児と 自からすすんで遊びの仲間入りをするようになっ

た.

 第3例はIQは施行されなかった.

 HG投与後3週目より,非常に意欲的となり,

リハビリテーションにも効果が上った.

 4.気管支喘息

 3症例ともに著明な効果が得られた.

 第1例は1クール後半より発作は消失した.

 第2例は9週目より発作は消失し,1クール終 了,HG休止中も再発していない.

 第3例は2クール目までは不変であったが,3 クール目より減少し,維持療法に移行後消失,

HG中止後も再発していない.

 5.免疫グロブリンの変動はIgG, A, M, D, E について検討したが,IgE以外に変化はなく,第

1,2例で1クール終了時にIgEの軽度の減少

が観察された,

 6.副作用

 IIG投与により,てんかん,アレルギー症状に 増悪は認められなかった.

 血液一般,尿一般,血清生化学検査にも異常は 認めなかった.

         考  按

 我々はてんかんとアレルギーの因果関係を明ら かにする目的で,一型アレルギーによる気管支喘 息を伴った,原因不明の難治性てんかん児3例に 対し,一型アレルギーの非特異的野感作療法剤で あるHGを投与し,気管支喘息治療経過中にお けるてんかんの変化を観察した.

 結果は3症例ともにHGに著明な反応を示し,

気管支喘息発作の消退とほぼ平行またはやや先行 して,臨床てんかん発作および脳波異常の改善を 観察しえた.

 さらに全例において,HG投与後早期で,気管 支喘息発作,てんかん発作ともに減少が明らかで ない時点より,行動面での改善が認められたこと 一1208一

(11)

は予想外のことであり注目された.また1例(症 例1)にIQの改善も認められた.

 γ一グロブリン量も少く,抗けいれん作用を有す ることの考えられないHGの投与により,アレ ルギー症状の改善に伴って,てんかん等の中枢神 経症状の改善を認めたことにより,我々はこれら の症例においては,中枢神経系障害の発症機序に 一型アレルギーが直接的に関与していたことを証

明しえたと考える.

 さらに症例1,2例のように,気管支喘息発作 時にてんかん発作が頻発する事は,アレルギー反 応の際の生体の変化が直接てんかん発現に関係が

あることを強く示唆していると思われた.

 しかしアレルギー歴とてんかん歴を検討してみ ると,3症例ともにてんかんの発症が気管支喘息 発症に先行している.これは,てんかん発症が,

反復する気管支喘息発作時のan・xiaなどによる 脳損傷の結果現われたものではないことを証明し ている.もし次の平な推測がゆるされるならぽ,

気管支喘息発作に到らない程度の一型アレルギー の状態がすでに中枢神経系へ影響をおよぼしてお り,明確な気管支喘息の発症によって,それがさ らに強められたとも考えられる.

 気管支喘息などのアレルギー疾患と中枢神経障 害との関係については,Campbellら3)のアレル ギー疾患の神経学的所見に関する研究 Panzani ら4)の偏頭痛と喘息における脳波学的検討(1960),

Fowlerら5)のアレルギーとけいれんと行動異常を 有する小児の脳波所見に関する研究(1962),本 邦では近藤ら6)7)の気管支喘息嬰児の脳波学的検 討(1978,1976)など多くの研究がある.これら の研究者も,気管支喘息患者に脳波異常,臨床て んかん発作,行動異常が高率に出現することを観 察している.Panzaniら4)は我々の2症例(症例 1,2)と同様,喘息発作時にてんかん発作が増 加する症例を経験したと述べている.気管支喘息 にてんかんや脳波異常を合併する理由としては,

1.喘息の病因としててんかんが存在する.2.

喘息発作の結果として,特にan・xiaの結果とし て脳波異常やてんかんの発症を来たす.3.喘息

の治療剤の作用による中枢神経系障害の可能性.

4.アレルギー反応時に遊離されるChemical mediatorの作用.などが論じられている.1の 存在は認めがたく,我々の症例においては,2,

3の病因論はあてはまらないと考える.4の

Chemical mediatorについてはヒスタミンをはじ め,ECF−A, Serotonin, prostaglandinsなど一型ア

レルギー反応の際肥満細胞や好塩基球から放出さ れる種々の物質の作用は無視できない.

 またすべてのアレルギー患老にてんかんが発症 するわけではないので,てんかん発症にはさらに 何らかの特殊な状態が介在することは当然考えな

、ければならない.

 最近P6chadreら(1977)8)は10例の難治性て んかん児にγ一g1・bulin大量療法を行なって,て んかんおよび行動異常に対し好成績を得ている.

 また,詳しい解説はなされていないが,これら の症例に合併していた,季節的鼻アレルギーの症 状も改善されたと述べている.

 また我々は経験的にある感染症の罹患時にてん かんの改善をみ,その回復期に再びてんかんが悪 化することを観察することがある.

 これら多くの報告により裏付けられるように,

ある種のてんかんは,免疫【生反応と深いつながり があると考える.

 新しい抗痒剤の開発,難山剤血中濃度測定技術 の普及などにより,最近のてんかん治療は驚く程 進歩しているが,中には,あらゆる抗てんかん療 法を持ってしても難治のものが存在する.

 今回我々が観察しえたように,てんかんに対す るアレルギーの直接的な関与に注目し,てんかん の一治療法として,抗アレルギー療法を試みる価 値があると考える.

 免疫の場としての中枢神経系の研究は今,緒に ついたぽかりであるが,今後てんかんとアレルギ ーなどの免疫異常との関係が,より一層明らかと なることが期待される.

 本論文は当教室笠井和教授御退職を記念し,在職中の 師の多大な御指導に感謝し,師にささげるものでありま

す.

(12)

       文  献

1)Utin, A.V.3 Ef琵ct ofthc incicence of allergies   among relatives Qn the risk level fbr dcveloP−

  mcnt of in蝕ntile convulsions and cpilepsy in   their progeny. Zh Ncropatol Psikhiatr 78    (4):580〜2(1978)

2)八倉隆保:病気の生化学(XVX)気管支喘息、.

  代謝15(6)・565〜577(1978)

3)Campbe11, M。B。3 Neurologiρmani艶stations   of allergic diseases. Ann Allerg 31485〜498    (1973)

4)Panzani, R., R. Boyer and M. Turner;

  The electroencephalograln in migraine and as.

  thma. Ann.AIIerg 18491〜509(1960)

5).Fowler, W.M., E.M。1{eimlich, R.D.

  Walter。 et a1。3 Elcctroencephalographic pat−

   terns in children with allergic, convulsive and    behavior disorders. Ann AIIerg 201ん14(1962)

6)近藤直美:小児の気管支喘息の病態に関する   研究,特にアレルギー反応,自律神経機能およ    び.中枢神経系の相互の関連について.岐阜大   卦医学部紀要26(1)59〜95(1978)

7)近藤直美・種田陽一・岩村春樹・他:気管支   喘息児における血清.IgE値と脳波学的検討.

  小児科診療39(8)977〜983(1976)

8) Pechadne, J.c。, B. sauvezie, c. osier.

et a1.=Traitement des enc6phalopasthies 6pi−

1eptiques de l en髭mt par les Ga皿ma−Glo−

bulines. Rev E.E.G。 Neurophys量017443〜447

(1977)

一1210一

参照

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