教育カウンセリングの実践方法と効果検証
斎藤 やす子1・石塚 勝郎2・紀 久枝3
Practical a methods and effect verifications of educational counseling SAITO Yasuko
1・ISHIDUKA Katuro
2・KINO Hisae
3キーワード:育てる、ふれあい、予防的・開発的カウンセリング 星槎大学紀要(Seisa Univ. Res. Bul.)共生科学研究 No.12 101〜112(2016)
1星槎大学共生科学部
2星槎大学共生科学部(非常勤講師)
3星槎大学共生科学部(非常勤講師)
1 .はじめに
今日、学校現場において、いじめ、不登校、学級崩壊、非行などが起こっている背景には、
子どもたち相互の人間関係が乏しく、人とのかかわり方が確立されていないことが1つの要 因であると考えられる。お金も物も機器もなくて、人とかかわりなしでは生きていれなかっ た社会から、一人でいてもなに不自由なく過ごせる今日の社会へ変わった。豊かさと便利さ は得られても、人とのかかわりは少なくなり、社会生活や学校生活におけるコミュニケーショ ン能力の低下、マナーやルールを守り、お互いが深く結び合って補助自我になれるようなリ レーション(人間関係)が育ちにくくなっている。
活動的な昼間の大部分を学校で過ごしている子どもたちは、所属する学級集団の中で構成 メンバーの一人一人と適切に折り合いをつけ、認め合い、支え合い、学び合い、高め合いな がら育っていかなければならない。この学級集団が居心地がよくて、満足度の高い安心して 過ごせる居場所となるようにしていくのが教育カウンセリングの役割であると考える。
人はそれぞれであるが、他とのかかわりなくしては生きていけない存在であることは共通 している。お互いがわかり合い、認め合い、支え合って共生していくことを求めている教育 カウンセリングは、星槎大学の教育理念「人々が共生し得る社会を目指し」と共通するもの である。特に共生理念(星槎の3つの約束)①人を排除しない、②人を認める、③仲間を作 る(星槎大学教員ハンドブック、2016)は、人間関係づくりをめざしており、教育カウンセ リングの果たす役割は大きいと考える。
研究ノート
2 .目的
昨今、教育現場で問題が起こるたびに、「なぜ学校側は事件を予測できなかったか」と社 会から問われることが多い。そのときになって、教員の仕事の多様さと多忙さが浮き彫りに なる。教員の姿勢として、梶原(1996)は、「非断定的・共感的理解の仕方と、本気で向か い合う真正さgenuinenessの態度で、本気でぶつかり合う直接的なかかわり方が子どもとの 接し方」といっている。
「教育カウンセリング」は「育てるカウンセリング」即ち、「予防・開発的な」カウンセリ ングの方向性を持ち、その特徴はリレーション(かかわり)である。今日抱える不登校やい じめ、暴力などの教育問題に対応するためにこの「かかわり」が重要な役割を果たしている ことを、スクーリングに参加した学生が各実習を通してその必要性、有効性を実感し、教育 カウンセリングの主な実践方法の効果を検証することを本稿の目的とする。
3 .教育カウンセリングの実際
1 )教育カウンセリングとは
「教育カウンセリングは、教育の役に立つカウンセリングという意味であり、教育とカウ ンセリングをひとつに統合した知識体系と技法体型の総称である。」(國分、2013)統合する とは、「発達課題を解きつつ成長するのを援助するのに役立つように、知識と技法を構成す るという意味である。」(國分、2013)とされている。
教育は、「人間に他から意図をもって働きかけ、望ましい姿に変化させ、価値を実現する 活動」(広辞苑、1998)とある。また「英語でeducationであるが、語源はラテン語のエデュ
ケーレeducareで、『引き出す』『呼び起こす』という意味がある。」(日本ホリスティック教
育協会、2005)とされている。
教育カウンセリングの対象者には、児童生徒・学生をはじめ、保護者や教職員がいる。個 人的な援助が必要な場合や、環境や集団への支援や調整が必要な場合もある。いずれも時間 の制約がある中で、いかに本気で対象者の個性を壊すことなく価値を引き出し、その人らし い生き方を援助していくのかが問われるところである。つまり、「教育カウンセリング」は、
教育現場の中で個人や集団を対象に、問題の発生予防や問題の解決に導きながら共に成長し ていく働きをもっている。これはまさに星槎の共生に通じるところでもある。
「教育カウンセリングでは、医療現場と違い健常者がほとんどである。ゆえにその目的も 治すことではなく、育てることである。」(國分、2013)
①「育てる」
教育カウンセリングでいう、育てるとは「発達課題を乗り越えるのを言語的および非言語 的なコミュニケーションを通して援助することである。」(國分、2013)。
発達段階にはそれぞれ課題があり、「学業、人生設計、自立、人間関係、健康、グループ・
組織と6つの発達課題を示している。」(國分、2013)
それぞれの課題は、対象者の年齢や深刻さ・個性や特性などによっても異なり、育てる側 の援助は、やりがいを感じるときでもあり自分を試されるときでもある。ぜひ、育てる側の 価値観等の押しつけの一方通行にならないように、心掛けたいものである。そして育てる側 は、家族にとどまらず、教育現場や地域で協力しながら行われることが理想なのは、いうま でもない。このように、「育てる」ことは、対象者に合わせて前進と後退を繰り返しながら 連続して行われる。
②「育てる」「育つ」「育ち合う」関係
<育てると育つ>
河合 (1980)は、「教育の育という語は、育てる、育つ、と他動詞にも自動詞にも用いられる」
とある。また「育つは、その本人の自発的なはたらきであり、(中略)、教育される側に潜在 している自らの育つ力ということを無視することはできないのではなかろうか。(中略)育 てる、育つ側面の重要性を考えるときに、教育は知識を注入するのではなく、自らの力で知 識を獲得できるように育てることを考えよう。あるいは、自らの力で育つことを援助できな いかを考える。」とある。
このことを図解すると、図1のような関係が成り立つ。育つ力は、個人個人で質や量また 場面や状況でも異なる、と考える。それは表面化する場合もあるが、内在のままであること も多い。
<育ち合う>
個人の内在している育つ力に、他者や環境からの「育てる」行為が加わって、その人なり の個性・資質・価値観等ができあがってくる、と考えられる(図1)。
それが、他者との関係の中で、お互いに育ち合う交流ができてくる。この育ち合いが多け れば多いほど、人間関係力が深まるのではないだろうか。
図1 育つ力・育てる・育ち合うの関係模式図
2 )教育カウンセリングの主要な方法
①対話のある授業
学習者のレディネスとモチベーションを踏まえ、対話のある授業をすることである。聞く ことに主眼をおくカウンセリングと教えることに主眼を置く教育のすり合わせは、「対話が あるか、ないか」が重要なキーワードになる。
②構成的グループエンカウンター(Structured Group Encounter : SGE)
SGEとは「集中的グループ体験」のことである。「ふれあいと自他発見」を目的にしてい る。それを通して参加者の「行動変容」と「人間成長」を目標にしている。それゆえ人間関 係開発を意図した教育カウンセリングのグループ・アプローチであるといえる。
③チーム支援
援助チームとは、「援助ニーズの大きい子どもの学習面、心理、社会面、進路面、健康面 における問題解決を目指す複数の専門家と保護者によるチーム」(石隈、1999)のことをいう。
援助チームには次の3タイプが考えられる。
・コア援助チーム
・拡大援助チーム
・ネットワーク型援助チーム
④サイコエデュケーション
サイコエデュケーションとは、思考、行動、感情の何れかの反応を修正、あるいは反応の 選択肢を増やすためのプログラム、エクササイズ、シェアリングなの能動的技法を用いるカ ウンセリングの1つの方法であり、以下の3つの教育内容がある。
・思考の教育:複数の価値観に触れさせて、思考を練ること
・行動の教育:行動の仕方や身の処し方を学習させること
・感情の教育:感情体験の幅を広げること
⑤その他
キャリア教育、グループワーク、特別支援教育など
3 )教育カウンセリングの実践例と効果検証
「教育カウンセリング」のスクーリング(面接授業)ではさまざまな実習が行われるが、
主な実習について、学生の感想からその効果を検証していく。
①対話のある授業の実践:ロールプレイから
面接とは、直接その人に会うことである。目の前に姿があり、ことばのやりとりができる のである。このことは当たり前すぎてふだんはあまり意識しないが、スクーリングでの学生 とは一期一会の出会い=面接なのである。
今回は、スクーリングの利点を活かした「教育カウンセリング」の授業の
一端からその必要性を考察する。それは、水上 (2013)のいう「対話のある授業」に近づ くことを目指したものであり、同時に授業担当者も内面的に育てられていくことを感じるも
のでもある。
<ロールプレイ実習>
・内容
意図 ― カウンセリングの技法(コツ)を体験する。
方法 ― 3人一組。カウンセラー役、相談者役、オブザーバー役とする。
観点 ― 意図にそって、自分のようすと他人のようすを観察し、それを認識し表現 する。
・具体的活動
意図 ― どの技法を体験するのかを明確に伝える。技法のなかで個人的に意識して 体験したい部分をグループメンバーに事前に伝える。スタート時の技法レ
ベルを0(ゼロ)とする。
方法 ― 3人がそれぞれの役を順番に行う。順番は、そのグループに任せる。時間 を設定する。
観点 ― 言語・非言語のようす観察。個人の気づき度合(感性・表現力の差異)に任せる。
・シェアリング
まず、カウンセラー役から自身の意図に合わせてどうだったか、自己ふり返り(0を基点 としてスケール化等)をする。続いて、相談者役から、話しやすかったなどのよかったとこ ろや、気になったところを話す。オブザーバー役からは、カウンセリング場面で大きなウエ イトを占める非言語部分や対話のようすなどの場面観察を伝える。その後3人で、次につな がる内容になるように自由な話し合いをする。ときには指導者が介入することもある。これ を他のグループと共有して、全体でシェアリングする。
このシェアリングが育ち合うことであり、自他発見につながる。
以下はスクーリングでの学生の感想である。
・『カウンセリングは、日頃の生活にもとても生かせると思っています。そして、教員とし て生徒と向き合うときに、授業で学んだことをどれだけ自分のものにできるか、とても重 要だと思います。実際にロールプレイでカウンセラー役をやると、とても難しく感じまし た。ですが、皆さんに良かったと言ってもらえた点もあったので、それを励みに頑張って いきたいです。』(20代 女性)
・『教員となる上で、生徒との相談を多く受けると思いますが、今回の受講で充分な知識を 身につけました。受講者全員とのコミュニケーションもとれて、実践体験などとても役に 立ち勉強になりました。』(40代 男性)
・『自己理解の過程で、少しだけなりたい自分に近づいてみたいと、プラスな気持ちになった。
将来についてはまだはっきりと決められないが、自分の中でこんなにも殻をやぶりたがっ ていたのだと気付けた。』(20代 女性)
・『人生の折り返しにいて、自分のやりたいことが明らかにならず、悩んでいましたが、授 業の中で得たことが、頭の中にとても残っていて、仕事や家庭、SCの中で他者に語りかけ、
接し方を振り返ったりして変えようとしました。うまくいったときには満足感を味わいま した。少しでも何か見ええくると良いと思います。』(40代 女性)
・効果について
面接のスタイルで相手を理解することや自己理解について学ぶことは、教育現場の問題や 事件を予防することにもつながる。多忙と言い訳せずに、職業や立場に対する資質や感性、
意識等をさらに育てて鍛え上げ、向き合いかたを再考する必要性が認められた。
②構成的グループエンカウンターの実践から
教育カウンセリングのスクーリングでは、1日目の最初のプログラムに構成的グループエ ンカウンターを実施している。
構成的グループエンカウンターとは「ふれあいと自他発見」を目的にしている(國分、
1981)。
ふれあいとは「本音と本音の交流」のことで、参加メンバー相互の「感情交流」のことである。
メンバーが体で感じているものを互いに伝え合う。このシェアリングの中で「私は苦しくて つらかった」「私はスッキリした」といった発言が交わされる。ネガティブな感情も出すこ とで、互いの本音の交流が促進され、そのことで両者に深い気づきがもたらされる。このよ うな感情、思考、行動に関する気づきが自分では見えていない自分を知る「自己発見」「自 己理解」となる。こういったグループワークによって課題を達成させる過程において、人間 関係ができていくことが期待できる。
この実習を通して参加者の自己発見を通した行動変容を目標としている。
構成的グループエンカウンターのエクササイズメニュー
ペンネーム作成 5分間 ⇒ 好みの色画用紙にペンネームを書く首に掛ける。
歩いて自己紹介 5分間 ⇒ 出会った人と挨拶をし、ペンネームを紹介する。
バースデーライン 15分間 ⇒ 指を使い、誕生日を伝え12か月の列を作る。
二人一組の肩もみ 10分間 ⇒ 肩もみをされながら、ペンネームの由来を話す。
他己紹介 20分間 ⇒ 数人のグループを作り、自分の紹介と仲間の紹介を行う。
権利の熱気球 25分間 ⇒ 熱気球の危機を回避するため権利を捨てていく。
別れの花束 30分間 ⇒ ペンネームの画用紙にメッセージを貼る。
ねらい
エクササイズ
思考 行動 感情
リレーション
(関係)作り 自己理解 他者理解 自己主張 役割遂行 自己受容 信頼体験
肩もみ 〇 〇
他己紹介 〇 〇 〇
権利の熱気球 〇 〇 〇
別れの花束 〇 〇 〇
図2 構成的グループエンカウンター エクササイズのねらい 以下は学生の感想である(欲求不満状態の解消(エゴの強化)(石塚、2015))。
・多くの友だちができ、よい人間関係ができた。
・当初SGEで初対面の人や異性と握手を交わしたりジャンケンをしたりすることに躊躇 したが、授業が進むにつれて自然にできるようになり関係が深まった。
・人を理解すること、受け入れることの大切さがわかった。
・人見知りが改善され、他の授業でも自分から対話できるようになった。
・自分ではわかっていなかった自分に気づかされたり、見かけではわからない人のことも よく理解できた。
・多くの他学部の友人や知り合いができてよかった。
・自己開示(自分をさらけ出す)をすると相手も心を開いてくれることに気づいた。
・人との対話が抵抗なくできるようになった。
・人との関わり方を学んだ。
・最初は緊張したが、今になるともっと多くの人と深く関わりたくなった。
・登下校での車中、学食での食事中、授業の空き時間など、この講義の受講者と会話がで きて楽しい。
・人と関わるには、相手の立場に立ったり、相手への配慮や思いやりが必要であることが わかった。
・友人や知り合いが増え、自分の世界が広がった。
・県外からの入学で不安が多かったが、この授業で、ほとんど不安はなくなった。
・かねての学生生活に役立つことが多かった。
・将来人と関わる仕事に就くことになるが、そのとき生かせることが多かった。
・効果について
通信教育において、スクーリングは唯一の学生同士あるいは教師と学生とが顔と顔を合わ せて、言語的・非言語的コミュニケーションをする機会である。参加者は授業中いきいきと しており、意欲的に取り組んでいる。教育カウンセリングの授業を通して自己開示をし、自 他理解を深め、今まで気づかなかった自分(自己盲点)に気づき、他者の多くのことを知り、
リレーション(人間関係)を深めている。授業の中で、「人を排除しない」「人を認める」「仲 間を作る」という星槎大学の共生の理念を実践していることになる。
感想文を見ると、学生自身が気づいたり、感じたり、変容したりしていることが表われて いる。これを、教育現場で子どもたちに生かしていくことが、授業の成果につながるととら えたい。
③チーム支援の考え方の実践から
よりよい教育カウンセリングを展開するために、チーム支援と教師のリーダーシップの視 点は欠かせない。
不登校、いじめ、学力の低下、社会的経済問題、家庭の問題など現代の子どもが抱える問 題は複雑化、深刻化している。これらの問題を解決するために、おもにスクールカウンセラー を活用した教育相談体制の変革によって学校そのものを活性化することが求められている。
そのためには学校の機能が生かされ、さらにスクールカウンセラーなどの外部の専門家との 連携が十分に機能する校内体制を確立し、教職員が1つのチームになって児童生徒の指導に あたることが望まれる。
特別支援教育では教師一人ひとりの尽力だけからシステムの対応へと、多様なニーズのあ る多数の児童生徒に適切に対応するためにチームアプローチが欠かせない。
・チーム支援の視点
学校の中で問題が起きたとき、その問題が報告されるのは、多くの場合その児童生徒が所 属する学級担任である。しかし、その問題の責任または問題解決についての責任は学級担任 にあるのだろうか。学級担任だからといって皆が子どもの問題行動への対応を得意としてい るわけではなく、また当該児童生徒や保護者と必ずしも相性がいいとは限らない。
一人で問題を抱え込んで、途方に暮れる担任もいるだろう。
中村(2010)は「学級の子どもが起こした問題に担任がうまく対応できない時、学校の対 応はいくつかのパターに大別できる」とし、以下のパターンを提示している。
1つは「学級の児童生徒の問題解決は担任の仕事で、児童生徒の問題解決を通して担任は 育つのだから、担任にこそやってもらわなくては困る、担任がんばれという責任の所在=担 任型」で、2つめは「学年担任なども加わり、手を尽くしてみたが解決にいたらず、それに しても本人や家庭環境に深刻な問題を抱えているのだからどうにも仕方ない、という責任の 所在=本人・家庭型」とし、3つめは、「子どもの問題が解決できないと担任から児童生徒 指導部や管理職などに問題があげられて協議され、コーディネーター役の教師がスクール カウンセラーや外部機関などの援助資源を巻き込んで解決の手立てを探る責任の所在=援助 チーム型」であるとしている。
当然、この3つめの「援助チーム型」が望ましいのだが、では「援助資源を巻き込んで解 決の手立てを探る」ための援助資源とは何であろうか。飯田(2010)は、「学校内のさまざ まな役割」として校内の援助資源を以下のように挙げている。
管理職3役(校長、教頭、教務主任)、学年主任、学級担任、教科担任、部活顧問、各 種校務分掌上の役割(生徒指導、教育相談、特別支援教育コーディネーター他)、養護 教諭、用務員(校務員)、事務員、保護者(PTA)、地域の方々、スクールカウンセラー、
学校医他
これらの援助支援を使って、どのような連携の方法があるのだろうか。
効果的な連携方法として「コンサルテーション」「援助チーム」「コーディネーション」が あるが、ここでは援助チームについて述べる。
援助チームとは、「援助ニーズの大きい子どもの学習面、心理、社会面、進路面、健康面 における問題解決を目指す複数の専門家と保護者によるチーム」(石隈、1999)のことをいう。
保護者を含む援助チームには次の3タイプが考えられる。
・コア援助チーム:一人ひとりの子どもの問題状況を解決するために組まれたチームであり、
主に保護者、教師、コーディネーターが中心となる。
・拡大援助チーム:幅広い援助資源から情報を収集し援助案を作成・実行するためにコア援 助チームに加え、さまざまな学校外内外の援助資源が参加するチームである。参加者の発 言が通るよう、4〜8人程度が適当とされている。
・ネットワーク型援助チーム:拡大援助チームのメンバーのネットワークを通じてさらに関 係機関や友人、ボランティアなどさまざまな援助資源が関わるチームである。援助者全員 が集まることはまれで、通常はコーディネーターを介し方針の共有を図る。
こうして各援助資源の機能がネット―ワークを結び、最大限の力を生むことで、一刻も早 く困っている児童、生徒の支援を開始していかなくてはならない。そのためには、「弱音を 吐ける職員室」や気付いたことを気軽に相談しあえる「風通しの良い職場環境」が求められ るが、同時に教師の資質として教育カウンセリングでいわれる「アイネス(Iness)」の「自 己開示をする力」も必要である。
図3 拡大援助チーム(石隈他2003) 生徒指導
担当 養護
教諭
特別支援 教育担当 教育相談
担当 学年 主任
保護者
担任 コーディ ネーター コア援助チーム
・リーダーシップの視点
集団にあって何らかの目的を持ち、その目的を達成するために行動する、その行動の効果 的な目的達成へ向けての働きかけ全体をいう。リーダーシップの代表的な要件としては、狩 野(1985)が以下の5つを指摘している。
①集団の目標を具体的に設定し明確化すること
②集団の目標を達成するための具体的な方法を示すこと
③集団の目標の達成に向けて成員を動機付けること
④成員間相互の好ましい人間関係を形成し、集団としてまとめること
⑤集団内外の資源を有効に利用すること
④、⑤はチーム支援を行うためにも教師に求められる要件である。チーム支援を有効活用 するためには、リーダーシップの視点は欠かせない。そこで、以下に教師の代表的なリーダー シップスタイルを二点挙げる。
◆PM理論
三隅(1984)はリーダーシップ機能を、目的達成なし課題遂行機能であるP(performance)
機能と集団維持機能であるM(maintenance)機能の2つの次元から類型化することを提唱 した。さらにこの2つの機能の強弱を組み合わせ、4つのリーダシップスタイルを示した。
教師のイメージをこの分類に合わせると、PM型は細やかな気遣いの中に強い指導性をあ わせ持つ教師、pM型は温和で気遣いの細やかな教師、Pm型は一貫して厳しく指導する教師、
pm型は放任型教師となるであろうとしながら、日本の教師の理想のリーダーシップスタイ ルはPM型であるとした(河村、2010)。
スクーリングではチーム支援の考え方を中心に実際の学校現場や事例をもとにその必要性 についてディスカッション(シェアリング)を行い、グループごとにまとめた。以下はその
図4 PM式指導類型 pM型
目標達成遂行力は 弱いが人間関係配 慮が強いリーダー。
PM型 目標達成遂行力と
人間関係配慮が バランスよく強い。
pm型 両方ダメ
Pm型 目標達成遂行力は 強いが、人間関係配 慮が不足するリーダー。
p 機能:勝てるチームにする
M 機 能 : チ ー ム ワ ー ク を 強 く す る
感想である。
・今後も最大の課題は学校単位のチーム支援体制づくりです。2日目の最後にこのグルー プディスカッションを行ってみて、私はこのことが学びたくてここに来たんだと感じま した。「チーム学校」という名目のもと、組織の形としては整えていますが、実際の運 営としては生きていないのが現状です。「チーム学校」が組織として機能することがで きれば、生徒のこと、保護者のこと、あらゆることで支え合い、補い合って進むことが できるのだと思いました。(教員)
・子どもたち一人ひとりが安心、安全で過ごせる学校づくりにはチーム支援が第一!! 子 どもを中心に保護者、地域、教師が同じ方向を向き進めて行くことなのですね。日々問 題は山積みですが、学校が希望のかたまりであることを願っています。(教員)
・効果について
國分(2013)は『新版 教育カウンセラー標準テキスト初級編』のまえがきにおいて、「教 育カウンセリングは1人のプロフェッショナルの単独プレイではなく、学校内の連携ある 共同活動である」としている。教育カウンセリングが意図する、面接室内外の教育指導のな かで問題解決の予防、教育開発を目的とするために、関わる教育者がチーム支援の取り組み やリーダーシップ理論の理解を深めることは大きな意味があることが感想文からも認められ る。
4 .今後の視点と方向性
教育カウンセリングの特長は、グループ志向が強く、発達課題をテーマに面接室の内外に おいての教育指導の中で、問題発生の予防・問題の解決を目的にチーム支援の視点で子ども たちを「育てる」ことに視点を置き、実践されることが多い。この視点は今後も継続される であろう。今回、スクーリングで行う実習を取り上げ、対話を中心に教育カウンセリングの 必要性、有効性を感想から検証した。教育に従事している学生の感想からは、いずれもその 効果を検証できた。今後も星槎の「共生」のもと、共に育ち合う教育の実践のために、教育 カウンセリングの重要性を多くの学生と共有して行きたいと考える。
引用・参考文献
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