空間図形とマルチメディア
斉藤智子*,松田清隆†,廣田悠二‡,北村右一§
1 はじめに
当研究室の卒業研究では,過去6年間,附属小学校と協力して,コンピュータを用いる学習コース の開発を行ってきた。
本年度は,私立精道三川台中学校の協力を得て,中学校数学における空間図形の分野を卒業研究の 対象に選んだ。同校の教頭である贋田から,「数学の授業で,その特性が生きるようなコンピュータ の使い方をしたい」という要求があり,彼の指導助言を受けながら,学生達がソフトウェアの開発を 進めた。そして,完成した教材は,実際に精道中学校の生徒が授業の中で使った。ただ,同校には,
まだコンピュータが十分完備されていないため,授業には本学部のコンピュータ室を利用した。
このように,現場の教師と学生達が協力して教材を開発することには,次のような利点がある。
・教師の立場からは,ソフトウェア開発の煩わしさがない点である。
コンピュータのハードウェアは,かなり安価になり広く普及しいるが,教材の開発を支援する良 質のソフトウェアを必要な数だけ整備することは,それほど容易なことではない。授業にコンピュー タを便いたくとも,標準的な機能だけでソフトを開発する時間的な余裕がないため,その利用を 躊躇しているのが現状ではないだろうか。
・学生の立場からは,授業で実際に使われるソフトを開発できる点である。
架空の授業を想定するだけでは,どうしても仕上がりが独善的になりがちである。また,教師と 協力して開発に当たることにより,生きた生徒を見据えた経験豊かな教師の知識を吸収すること
もできる。
・さらに,実用に耐えうる資産が蓄積される点もあげられる。これは,教師と学生のどちらにとっ ても,有益である。過去数年,附属小学校で利用するために開発してきた学習コースは,研究年 度の授業のみならず,その後もたびたび利用されてきた。
学生の中には,卒業して教職に就き,自分で作成した作品を利用している者もいる。時には,
卒論発表会に出席して内容を知った卒業生などから,新たに開発した教材や,以前の作品の請求 を受けることも,少なからずある。
*長崎大学教育学部数学選修・4年
†長崎大学教育学部数学専攻・4年
‡私立梢遺三川台中学校・教頭
§長崎大学教育学部数学・助教授
−57−
ただ,この協調関係を効果的に保つためには,十分な打合せと適当な調整が必要であるo教師の側 からはソフト開発の現状が見えないために,使用する機械の機能や,開発する学生の能力を超えた,
過大な要求が出されてしまうことがある口一方,学生もソフトの開発に夢中になり,いつの間にか現 実の授業から離れてしまうこともあるO 筆者は,卒業研究の指導上,この両者の調整に最も心を砕い たO
本年度は,立方体切断における空間認識を補助するための実験道具として,コンピュータを利用す ることになった。切断の自由度と画像の表示速度を考慮すると,教材の実現はプログラミング言語に 頼らざるをえなかった。本学部のコンビュータ室には富士通のFM‑Townsがある。利用可能で、,この 機種の機能を生かせる言語としては,機械に標準で付属するGearBASICしか準備されていない。学 生教育のために本研究を行う観点からは,機種に依存しない,できるだけ汎用的な開発手法を用いる べきであろう。しかし, BASICを用いて,しかも画像処理を必要とする以上,強く機種に依存してし
まうことは避けられなかった口
このように,本年度は, Towns Gearと,その開発言語であるGearBASICを用いて,教材の作成 を行った。昨年度もTownsGearを利用したが, BASICは使っていない。 Gearノートの機能だけで,
学習コースを開発した。その理由は,昨年がFM‑、I'ownsを使う初めての年で,この機種で「何が,ど うできるのか」を知りたかったためであるD プログラミングを行うと,どうしても,それに時間が取 られ,コンピュータの機能を生かした学習コースの完成がおろそかになる心配があったO 今年度,
BASCIを使おうと決めたのは,選択した分野の影響もかなり強いが,この機種の機能をどれだけ「自 由に利用できるか」という点についても,関心があったからである口
プログラミングを始める前に,学生達には,昨年度の卒論を参考にTownsGearの使用方法を習得 し,さらに, 3次元グラフィックスの基礎理論を勉強してもらった。途中,教育実習があり,これだ けの準備でかなりの時間を費やした。そして,いよいよプログラミングを開始したが,学生達にとっ て, BASICで本格的なプログラムを組むことは,初めての経験である。幾分,好余曲折はありながら も, Towns Gearのノートと協調して動くシステムが出来上がった。
Gear BASICは,画像やマウスなどのシステム資源を容易に扱える点では便利であったD しかし,
言語仕様で,構造化がなされていない,サブルーチン問での引き数の受け渡しができない,独立した サブプログラムの呼び出しを入れ子にできないことなどが,プログラムの見通しを悪くしているO
さらに,デバッグ機能の貧弱さは最大の欠陥であるD 検査のために,実行時の変数の値を表示させ るだけでも,一苦労であった。ほとんど開発には適していないと思われるD この環境下で,夜遅くま で(時には付合ったが)プログラミングとそのデバッグに追われた斉藤・松田の両君には頭が下がるO
本稿では,このようにして開発した教材の内容と理論,および,これを利用した授業について述べ るD ソフトウェア開発を担当した斉藤と松田が,それぞれ,教材内容と理論の部分を,授業者である 庚 田 が , 授 業 実 践 に 関 す る 部 分 を 記 述 す る 北 村 右 一 )
︒ ︒
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2
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空間図形J
学習における教材開発 開発の過程当研究室では. 6年前から 5年間,附属小学校の木村先生の指導のもとに教材開発を行ってきた。
今年度は,初めて私立精道中学校教諭・賢回悠二の指導を受け,中学1年生を対象とした教材開発を 行った。私たちは教材を使用する分野を選ぶとき,まず、パソコン(マルチメディア)を生かせる分野 とは何か, と考えた口教科書でもなくテレビでもなく他の教材でもなく,パソコンでしかできないも のでなければならない。そんなことから生徒が視覚的にイメージしにくいと思われる「空間図形」の 分野を選んだのであるO その中の具体的なテーマに関しては. )黄田を交えて話し合った。立体の切り 口を教えるとき「教科書などの紙面上だけでは生徒がイメージしにくい
J . r
適当な教材がないJ
と いう庚田の意見から,立体のなかでも基本的な「立方体の切り口」をテーマに教材を作成することに なった口まず,私たちは中心となる「立方体の辺上の点を動かし3点を決め,切り口を表示させる
J
という 部分を作成した。それだけで作成日数の2/3以上を費やしていたことや,鹿田の「これだけの機能 で,十分授業に活用できる」という意見から,改善しなければならないところを少し作り直す程度に した口このようにして出来上がった教材は,今までのようにドリル的なものや学習コースではなく,生徒が自由に立方体を切断するための教材となったのである。
また,本教材作成の副産物として,立方体の切断面を動かすという,動画によるシミュレーション ができ,よりいっそうのイメージ化を図るために,これを「まとめ」の部分で見せることにした。
教材の構成
本教材は2ページ,つまり 2つの画面から構成されている。 1ページ目は,立方体の辺上の 3点を 指定すると,その3点を通る平面による切り口が表れるもので,基本となる立方体が描かれたイメー ジフレームが1っと.
r
切り口J r
消しゴムJ r
おまけ」という 3つのボタンが置かれている。イメー ジフレーム上の立方体は. 3次元から 2次元への透視変換を用いて作図したものである。この変換に ついては第3節で述べる口「おまけJ
というのは. 2ページ目のシミュレーションへリンクするため のボタンだが,押してみたいという生徒の興味・関心を引くためにこのような名前にした口2ページ日は,立方体の切断面を平行移動していくシミュレーションで. 1ページ目と同じ立方体 の描かれたイメージフレームが1つ.
r
ひし形パターンJ r
台形パターンJ r
平行四辺形パターンJ r
六 角形パターン」という 4つのボタンと「連続パターン」というボタンが置かれているD教材の操作法
本教材では,生徒が「個々にパソコンを操作し,立方体の切り口を表示させる」ために 1ページ目 を,最後の「まとめ」として2ページ目のシミュレーションを使用するD
1ページ目では,立方体の辺上に,赤・青・紫の3色の点が表示されている。その3点が動く辺は 決まっており,それぞれ指定された3辺上のみ移動できるD 立方体の辺上でマウスをクリックすると,
その場所へ点が移動するD こうして3点を指定し.
r
切り口」ボタンをクリックすることによって,ハ 同
υphu
その3点が定める平面による切り口が表示されるoこの操作は,繰り返し実行することができるロ 現在表示されている切り口を消したいときは,
r
消しゴムJ
ボタンを使う。これをクリックするこ とによって初期状態に戻すことができる。この教材を使った授業の最後の方で問題を解かせる部分が あり,そのとき切断面が画面に表示されているとヒントになってしまうことから,r
消しゴム」ボタンを作成した。
「おまけ」ボタンは次のシミュレーション画面へリンクするためのものであるO シミュレーション は前に述べた通り基本的な4つのパターンがあるD 例えば,
r
ひし形」ボタンをクリックすると,立 方体の奥の頂点から手前の頂点まで切断面が平行移動していくD その途中で切断面がひし形になると いうもので,他の3つも同様であるor
連続パターン」のボタンはこの4つを連続して実行させるも のであるD教材作成にあたっての配慮点
この教材を作成するにあたって次の5つの点に配慮した。
まずlつ目は,プログラムのサブルーチン化であるO プログラムを組むとき同じことを何度も行う ならば,その働きをする部分を抜き出し,別の場所に置くことができるO この部分を,メインプログ ラム(メインルーチン)に対してサブルーチンと言う。必要な時だけこのサブルーチンを呼び出すこ とによって,プログラムの量は少なくなり,内容も整理されて,より分かりやすいものとなる。
今回は富士通のFM‑TownsのTownsGearを用いて開発を行ったが, Towns Gearで、はボタンなど の部品に設定したプログラムをサブルーチンとすることができるD 本教材では,座標を3次元から 2 次元へ変換する部分を「変換
J
,面を作図する部分を「面作図」等という部品名を付けたサブルーチンを作り,透明なボタンとして画面上に置くことにしたD
2つ目は,プログラムの変数名・配列名の付け方であるD プログラムの中に現れる名前をいい加減 に付けてしまうと,プログラムが大きくなるにつれ,後から見たときにその変数・配列の使用目的が 分からなくなってしまうD 従ってその変数・配列の目的を明確に示す名前を付ける必要があるoこれ はファイル名でも同じであるoGear BASICでは,変数名・配列名等に日本語が使用できるので,そ の機能を積極的に利用した。例えば,交点の数を表す変数を,プログラムが小さかったうちは i"
という変数名にしていたが,途中から 交点数"に改めた。
3つ目は,辺上の点を指定するとき,辺に幅(誤差)を持たせたことであるO これは工夫した点と いうより,改善しなければならなかった点と言えよう。立方体の辺上でマウスを左クリックして点の 指定を行うのだが,辺の太さは1ドットと大変細く,マウスの矢印の先をその辺上にぴたりと合わせ るのは非常に困難であるD そこで辺の周りに幅をもたせて点の指定できる範囲を広げ,その範囲内の クリックにより,そこに一番近い線分上の点を選択するようにした。このように範囲を持たせること によって,辺上の点の指定が容易になるD
4つ目は,切り口をどの様に見せるかである。初めは立方体の切り口を表すために,切り口よりも 手前にある部分を切り取り,残りの部分だけを描くようにしていた。しかし,切り取る部分が大きく なるほど,元の立方体との関係が分からなくなってしまうD そのため,立方体はそのままにし,その 上に切り口を描き足すという具合にした。
ハHV
Fh v
5つ目は,押してはいけないボタン等をどうするかであるo 1ページ目の「おまけ」ボタンは,生 徒が勝手に押してはならないものである。生徒が興味本位で押してしまうのではないか,という心配 から「次の画面へ行ってしまったときに前の画面へ戻るボタンを作っておく」等の意見が出された。
しかし,先生たちの助けがなければ1ページに戻れないことが,興味本位で「おまけjボタンを押す ことを抑制するであろう,との考えに基づき あえてそのままにしておくことにした。
授業を終えて
90分という長時間の授業だ、ったが,押してはいけない部分を興味本位で押してみる生徒もほとんど おらず,予想以上に授業に集中していたようであるo これは自分で選んだ点で切り口が描けることに 生徒が興味を持ち,この3点を選ぶとどんな切り口が表れるだろうか,と常に予想しながら作業を進 めていったことや,実際の操作活動に授業の多くの時間をさけたことなどが考えられるD
生徒の興味をヲ│いた理由としては,教科書等の紙面上ではイメージしにくい空間図形も,パソコン の画面を通した3次元の世界だと比較的イメージしやすいこと,また その図形を自分で表せるとい う点であろうD 生徒に書かせた感想には,
r
今度はもっと他の立体を切ってみたい」等の意見も多々 あり,パソコンや空間図形への関心は以前より深まっているように思われるD本研究では,庚田の協力を得て教材開発を行ったが,我々学生は庚田との意見交換を通して,空間 図形の中でも立体の切り口は教科書だけではイメージしにくく適切な教材が少ないことや,生徒が自 分で操作し簡単に切り口が表せるような教材が求められていることを知った。また,自分たちが作成 した教材が現実の授業において使用されるという貴重な体験ができ それによって新たに改善すべき 点や良かった点などの結果を得ることができた。これらの体験から 教材を作る側と使う側は密に意 見 を 交 換 し 合 う こ と , ま た 教 材 研 究 を 十 分 行 う こ と の 重 要 性 を 感 じ た 。 ( 斉 藤 智 子 )
3 立体の作図
立方体を描くために,最初は処理が簡単な平行投影を用いていた。ところが,教科書の図を調べて いるうちに,平行であるはずの辺が平行になっていないことに気付いた。つまり 平行投影ではなく 中心投影で描かれていたのであるO これは,空間図形が,より自然に見えるように配慮した結果であ ろう口そこで,我々も中心投影によって立方体を描くことにした。
この節では,最初に, 3次元グラフィックスの基礎理論の概略を述べ,次に,立方体,および平面 によるその切り口を表示するために,本教材で用いたアルゴリズムについて説明する。
3. 1 立方体を描くための理論
3次元の物体を2次元で表現するためには,例えば,視点と物体の間に透明なスクリーンをおき,見 たままの輪郭をスクリーン上に写し取ればよい。この原始的な方法を コンピュータのディスプレイ 上で実現することを考えよう口
空間内における物体の配置や視点の位置を確定させるために,座標系が必要である。これを.ワー ルド座標系とよぶ口この座標系は,見る位置(視点)とは独立に物体を置くためにも便利であるD
‑61ー
次に,物体を透明なスクリーン上に写し取るために,見たままの状況を表現する座標系をとる。つ まり,視点を原点とし,座標軸のひとつを視線方向と一致させるわけである。これを,視点座標系と いう。そして,写し取ることは,視点と物体上の点を結ぶ直線が,スクリーンと交わる点を求めるこ
とを意味する。
ワールド座標系から視点座標系へ
3次元直行座標系では ,X, y, Zの3座標軸が原点で直交する口座標軸の向きを区別すると, 3次 元空間内で可能な座標系は2通りのみであるD すなわち,上記3座標軸の正の向きを,それぞれ,右 手の親指,人差し指,中指の指先方向に対応させる右手系と,左手に対応させる左手系が考えられるo
物体の配置や視点の位置を定めるワールド座標系としては,使い慣れている右手系を用いるのが,自 然であるD また,視点座標系としては視線方向にz軸の正の向きを一致させる左手系が便利であるO
中心投影を行うには,ワールド座標系で定義されている物体の座標を,視点座標系による座標へと 変換しなければならない。このことを祝野変換というが,その手順は以下の通りである。
(1) ワールド座標系の原点を視点に平行移動する。
(2) 原点を中心とする座標系の回転により ,x軸の正の方向を右に ,y軸の正の方向を上に向か せ ,z軸と視線を一致させる。このとき,右手系である座標系のz軸の正の方向は,視線と
は逆向きであるO
(3) z軸の向きを反転する
上の座標変換は, 4次元空間で考えることで,適当な4次の行列による一次変換として表現す ることカfできるO
スクリーンへの投影
最後は,物体のスクリーンへの投影である。これには,視点座標系のz座標が1の点に ,xy平面と 平行なスクリーンを立てる。そうすることによって,物体上の点と視点(視点座標系の原点である) を結ぶ線分が,スクリーンと交わる点を容易に計算できる(具体的な計算方法については,アスキー ラーニングシステム・入門グラフィックスの第5章を参照)0
立方体の表示
ここでは,立方体の表現方法について注意するD 立方体の辺をすべて実線で描くと(ワイヤーフレー ムモデルという), 2通りの解釈が可能となり,どちらの解釈をするかによって,面の前後関係が入 れ替わってしまうD このあいまいさを排除するためには,立方体を面としてとらえ(サーフイスモデ ルという),見える辺と,立方体によって隠され見えない辺の処理を,変えなければならないD これ を陰線処理という口一般の空間図形では,この処理は複雑だが,ひとつの凸多面体の場合には,単純 な処理ですむD 本教材においては,不可視の辺を破線で描いているD
円ノU
FO
3.2 切り口の表示
立方体を平面で切ると,切り口は3角形から 6角形までの多角形となるoこれを描くためには,多 角形の頂点を全て求め,辺で連結される頂点どうしを,結んでいけばよい。以下で,そのアルゴリズ ムを説明するD
多角形の頂点を求める
平面による立方体の切断でできる多角形の頂点は,立方体の辺上にあるD したがって,与えられた 平面と立方体の辺との交点を求めればよい口直線と平面の交点を求めるのは容易であるが,線分と平 面の交点を効率良く求めるには,工夫が必要である。ここでは,次の事実を利用した口
‑空間は,平面により 2つの領域に分割される口
‑空間内の点が,平面のどちら側にあるかを調べるのは,容易である(点の座標を,平面を表す一 次式に代入し,符号を見る)。
‑平面と線分が交わるのは,線分の両端が,平面の異なる側にあるときだけである(ちょうど平面 上にある場合には注意)。
これに基づき,以下の手順で交点を求めた。
1 ) 立方体の各頂点毎に,切断面に対して視点と同じ側にあれば +1 異なる側にあれば ‑1 という値を与えるO ちょうど切断面上にあるときは. 0とするD
2 ) 立方体の各辺毎に,次を行うD
a ) 両端の頂点の値が同符号(積が正)ならば,両端は切断面の同じ側にあり,この辺と切断 面は交わらない口後の処理ために,この辺上に多角形の頂点がないという情報を残す。
b ) そうでなければ,この辺と切断面は交点を持つので,直線と平面の方程式を連立させて,
交点の座標を求める。さらに,求めた点に名前を付け,この辺上に多角形の頂点がある という情報と,点の名前を残すD
この連立方程式の解が,不定となる可能性があることを注意しておくD
このようにして,多角形の全ての頂点を求めることができる口
立方体の各辺毎に,多角形の頂点の有無を示す情報やその点の名前を残したのは,後で多角形を表 示するときのためである。また,点に名前を付けると表現したが,実際には,番号を割り振るだけで ある。
多角形の表示
上で求めた頂点を結んで、,切り口の多角形を表示するときにも,注意が必要であるD 無造作に頂点 をつなぐと,多角形の辺とは無関係な線分が現れてしまう可能性がある。例えば.
4
点A . B . C . D
をこのJ l l f t
に結び,最後にDA
を閉じてできる四角形が切り口になっているとき.A . C . D . B .
Aの順につないでしまうと,四角形とはならない。このような誤りを起こさないようにするためには,
円4
U ρh U
多角形の頂点を正確に結ばなくてはならない。そこで,多角形の頂点の連結状況を表す情報を取得す ることにするD 上の例を使って,模式的にこの情報を表現すると,
A‑B B一C C‑D D‑A
が頂点の連結状況であるD この情報を得るために,次の事実を利用するo
‑多角形の辺は,立方体の面上にあるD
立方体を平面で切断することによって 多角形が生ずるのだから,このことは明らかであろうD
‑したがって,多角形のある辺の両端は,それぞれ,立方体のひとつの面(正方形)を構成するふ たつの辺上にある。
ただし,多角形の辺と立方体の辺が一致することもありうる口
これに基づくアルゴリズムは 以下の通りであるO
立方体の各面毎に 以下の処理を行う。
その面(正方形)の周の各辺毎に,多角形の頂点の有無を調べる(多角形の頂点を求めるときに 残した情報が利用できる)。
頂点があれば,残りの辺上にもうひとつの交点があるはずだから,それを見つけるO そして,
この2点が連結するという情報を残す(ここで,頂点の名前を使う)。
このアルゴリズムにより多角形の頂点の連結状況が得られ,その情報にしたがって点を結ぶと,切り 口を正しく表示することができるO
以上で,本研究におけるプログラムで用いたアルゴリズムの概説を終わるが,説明の本質を見失わ ないために,細かい点については,注意を喚起するにとどめたことを付け加えておくo実際のプログ ラ ム で は , も う 少 し 綴 密 な 解 析 を 行 っ て い る 松 田 清 隆 )
4 数学科学習指導案
1.単元名 空間図形 2.単元について
平成8年1月19日(金) 1 :30‑3 : 00
中学l学年 授 業 者 庚 田 悠 二
0
身のまわりの空間にあるものは 実に様々な形をしているD しかし それらも単純な線や面の組 み合わせであり,簡単な位置関係に一般化されるD このように,複雑な物を抽象化させることは 日常生活においても大切な力となるD 一方で 単純に見える立体のなかに一見したところではわ からない規則性などが潜んでいるo例えば,正多面体におけるオイラーの定理や双体性などが挙 げられる。このように,r
空間図形」は生徒自らの取り組みによって,数学的な物の見方を養う‑64‑
ことのできる,非常に有益な単元であると考える。さらに,直感力や粘り強い取り組みによって 解決できる事柄を通して,数学の持つ幅の広さと,奥の深さを知り,新たに数学が好きになる生 徒をつくりだす機会ともなるであろう。
0
生徒たちは,これまでに小学校において,立体(円柱,角柱,円錐,角錐)の求積を学んできた。しかし,空間における直線と平面の位置関係や様々な空間図形の特徴などを体系的に学ぶのは初 めてである。また,この単元では測度を考えない場面が多く 数学を計量的なものを学ぶだけと 捉えている生徒の中には意欲を持って取り組めない者がいる。さらに 空間における直線と平面 の位置関係を2次元に正確に表すことはできないことなど空間の把握にとまどう生徒がいると 考えられるD
0
そこで,本単元では操作活動を重視していきたい。まず,身近にある鉛筆,ノートなどを使った り,実際に立体模型を作り 平面や直線の位置関係を調べる。さらに 正多面体なども数種類の ものに限り,できるだけ多くの展開図を作り,その特徴や様々な規則性に気付かせたい。また,実際には試行錯誤が困難な切り口の学習ではパソコンを利用して,視覚的にとらえることができ る機会をつくる。その他,平面図形の学習同様,生徒間の話し合い 教え合いを通してできるだ け正確な用語の必要性,有益性を実感させたい。
6.単元の目標
(1) 直線と平面,平面と平面の平行や垂直,直線と直線のねじれの位置など 位置関係について理 解するO
(2) 角柱や円柱は,底面の移動によって構成されることを理解するD
(3) 円柱,円錐,球などの立体が平面図形が回転して構成されることや 2平面のつくる角などに ついて理解するo
(4) 立体の平面上への表し方として見取り図や投影図などを考え,また立体の切断などについて考 え空間図形についての理解を深めるo
(5) 多面体や正多面体の意味を理解するD
4 .
指導計画空間図形(全18時間)
第1次 平 行 と 垂 直 (7)
1.直線や平面の平行 …...・H ・...・H ・..…...・H・...・H・H ・H ・..……...・H ・‑…...・H ・....・H ・....・H‑・・ (3)
2. 直線と平面の垂直 …...・H ・..…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2) 3.演習 ...・H ・...・H ・H ・H ・...・H ・...・H ・H・H ・...・H ・H・H・..…...・H ・...・H ・...・H ・H ・H ・...・H ・.. (2) 第2次 立体のいろいろな見方 (11)
1.空間における平面図形の移動 …...・H ・...・H ・H ・H・...・H・..…...・H ・...・H ・...・H ・...・H ・.. (2)
‑65‑
2.立体の平面上への表し方 ...・H ・...・H・H ・H ・...・H ・..…...・H ・H・H ・‑…H ・H ・....・H ・‑…....・H ・.. (1) 3. 立体の切り 口 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3) 4. 多 面 体 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3) 5.評価テスト ...・H ・H・H ・...・H ・...・H ・...・H ・..……...・H ・...・H ・...・H ・..…...・H ・..…...・H ・‑・(1) 6. まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 本時 (1)
5.本時の目標
パソコンを使って 立方体の切断面を調べていくことを通して,切り口の辺の数は切断する平面と 立方体の平面との交わる数によって決まることなど,様々な規則性などに気付くことができるO
6.パソコンの利用について
「この立方体をこう切ったら,切り口はどんな形になるか」という問いに対して,ぜひ試してみた い解き方は「実際に立方体を切ってみることである」。このことの大切さは言うまでもない。しかし,
いざ試みてみるとなかなかうまくいかない口第一に正確な立方体を作るのが難しい。切り口が長方形 になるように切ることはできても,六角形になるように切ることは至難の技である口しかも,単に切 り口の形がどんな形になるのかではなく,切り方と切り口の関係にまで問題を深めていくと,数多く の試行が必要であるD まさに,その点こそがパソコンのもっとも得意とすることであるo この授業で は,一人一台のパソコンを使い,何度も何度もしかも素早く,立方体を切ることができるO 始めは,
もの珍しさからでたらめに切っていくだけかも知れないが,その過程を通して,ある規則性に気づき はじめる時,パソコンを利用した授業の価値が出てくると考えるD
7 .展開 開 一 課 題 を
j舌
戸ι
寸4 動 留 意 事 項 ・ 評 価
。前時に使用した模型(ボール紙で作った 立方体)を提示しながら,どういう点で 不便だったのかを明らかにする。そのう
えで今日は一人一台のパソコンが使える ことを伝えるO
03点の動く範囲の説明の際,なぜ3点な のかを確認するo
0
ほとんどの生徒が初めてパソコンを使う ことを考慮し,簡単な例で練習させてみる。。パソコンを操作しながら,可能な図形を
10
できた図形がなぜそういえるのか,図形 調l
書き出していく の定義を確認しながらするように注意す べ 予 想 さ れ る 反 応 る。る │ ・正三角形,二等辺三角形はできるが直角 三角形はできない口
習
。前時では十分に調べられなかった切断面 について,パソコンを使って調べてみるO
。パソコンの操作上の諸注意を理解する口 . 3点の動く範囲の確認。
・マウスの使い方0
・関係のない点をクリックしない。など…
立方体で平面を切ると切り口はどん な形になるだろうか。可能な形をす べてあげなさい。
っ か む 日 分 /
円 ︒
ρh u
O¥3
っ
4ノ
‑長方形,正方形,台形(等脚台形,一般 の台形), 平 行 四 辺 形 , ひ し 形 は で き る が一般の四角形はできない。
‑四角形の場合,少なくとも 1組の対辺は 平行であるo
‑五角形はできるが,正五角形はできないD
‑正六角形はできる,一般の六角形もできる口 .七角形以上はできない。
0
立方体を書いた用紙を配布し,切り口を 書かせるO また,気づきもメモしておくように指示するO
0
切り口の調べ方について,効果的な方法 をしている生徒に着目するO0
様々な試行錯誤を通して,生徒一人ひと りが考えつく気付きを机間巡視の中で拾 い上げ,全体的に投げ掛ける。0
なぜ平行といえるのかなど説明をはっき り言えるように指導するO0
切断される面と面の位置から辺の位置関 係を説明できるようにするD0
切り口にできる図形は同じ平面上にある ことから 2本の直線は交わるかず‑行に なることにも気付かせる。0
三つの面を切ると三角形,四つでは四角 形,立方体は六面体だから, 7つ以上の 面を切ることはない。ということに着目 できるか。。パソコンを使いながら話し合いができる ことを知らせるO
Oよりわかりやすい言葉を使って説明がで きるように,多くの生徒に自分の言葉で 説明させるO
0
興味深くシミュレーションを見ているか。0
新たな疑問,さらに調べたいことが出て きたか口/
話 し
0
確認できた切り口を黒板に掲示する。O可能な切り口の図形を発表するO
‑説明用の立方体の見取り図に点を取り,
各自のパソコンにも同様の点を取らせな がら,説明する。
! な ぜ 仰 山 仰 向 な │ いのか
8.評価
授業後のアンケート結果より(総数23人) ア) 今日の授業に集中して取り組めましたか。
はい(10人) ふつう(12人) いいえ(1人) イ) 今日の授業は楽しかったですか。
はい(19人) ふつう (4人) いいえ (0人) ウ) 今日の授業はわかりやすかったですか。
はい (15人) ふつう (8人) いいえ (0人)
ム、
口
しE
確
刀 ︑ u
‑ 一=
nH
す
る 。パソコンを使って,確かめてみる。何度 も施行錯誤を繰り返しながら,規則性を 見つけようとする口
刀︑
3﹁y
﹄ ︐
λノ
0
気づいたことを近くの人と話し合ってみ る。0
気づきを発表する口 /ま と
め
O
間違った所を互いにおぎ合いながら理解 を確かなものにするo04
つのシミュレーションを見て,本時の 学習を通して学んだことのイメージ化を 図る白0
本時の学習を振り返り,わかったこと,パソコンを使った授業の感想を書くO
p o
︑ ー
円/
‑/
﹁ノ
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エ) 今日のようなパソコンを使った授業をまた受けてみたいですかD
はい (22人) ふつう (0人) いいえ(1人) オ) パソコンを使った授業についての感想
‑今までの授業でわからなかったことが今日の授業で、わかったことでパソコンって便利だなと つくづく思いました口
・パソコンを使って,紙ではできなかったことが何パターンもあり,面白くできたD
‑間違っても,すぐにやり直せる所,ややこしい切り口でも,すぐに出るところがよかった0
・パソコンを使ったことによって,図形の切り口の切り方などが,リアルにわかって良かった と思うO
‑正八面体や正十二面体の切り口がどうなるか調べてみたかった。
9.授業者の感想
この切り口はどのような形になるのかを正確に把握するには,それぞれの平面図形の定義や性質を 長日っておかねばならず,本時の課題は,中学l年生にはかなり難しかったようだD しかし,パソコン というひとつの道具を使うことを通して,これまでわからなかったことがわかる,より深い思考がで きたことは大きな成果だと思うo90分という長時間の授業にもかかわらず,最後まで楽しく課題に取 り組んだ生徒が多かったのにはこちらの方が驚いた。今後もパソコンの特性を生かした教材の開発に 微 力 な が ら 協 力 し た い と 思 う 庚 田 悠 二 )
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