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近年,注目を浴びている「CSR(Corporate Social Responsibility)」は,法令遵守等のリスクマ ネジメントとしての防衛的な意味合いを越え,本業にそった経営戦略的な社会貢献活動として捉 えられるようになった。そのような
CSR
の戦略化が進むにあたって,かつては,グローバルな 事業展開をする人的・経済的に余裕がある大企業のものだと思われがちであったCSR
活動は,社会の期待に応えることによる企業競争力の向上を目指し,積極的に中小企業においても企業内 に取り込むべきという考えに転換されてきた。実際,国や地方公共団体が主催する
CSR
に関す るコンテストや表彰制度において,中小企業が多くノミネート・受賞するようになった。横浜市 の横浜型地域貢献企業認定制度では,認定企業の9
割以上が中小企業である。本論文では,先進的な
CSR
活動を行う中小企業2
社を比較分析することで,中小企業におけ るCSR
活動の戦略化に関して研究することを目的とする。本研究は,定性的な手法を用いた実証研究であり,横浜型地域貢献企業認定取得済みの株式会 社大川印刷と石井造園株式会社の
2
社を比較することで,中小企業のCSR
に関して考察する。第
2
章では,事例研究を行う前段階として,「CSR活動の戦略化」とは,一体どのような概念 なのかを明らかにするため,Carroll(1991),水尾(2005),Davis(2010)の3
者の先行研究を レビューする。Carrollの研究においては,企業の責任範囲は,時代・社会の変化に伴い,「経済 的責任→法的責任→倫理的責任→自由裁量的責任」と移り変わってきており,以上の4
つの責任 はピラミッドの層のように段階的に形成されていると主張される。水尾による研究では,Carroll によって提唱された4
つの責任範囲は,守りのCSR
と攻めのCSR
に分割することが出来,近年 では,攻めのCSR
活動を行うことこそが,社会かつ企業において求められる活動だと示唆して いる。さらにDavis
の研究では,「目的」を中心にした類型と「プロセス」を中心とした類型に よって,CSRイニシアティブは4
つのタイプに分類されることを明示している。本研究では,Davis
の理論によって提唱された,「ビジネス関係の変革によって更なる(特有の)価値を創造していく」という社会貢献的なアプローチこそ,社会的な価値を創造する最も「戦略的な
CSR」
であると理解する。
第
3
章では,先行研究のレビューを踏まえ,中小企業のCSR
活動を目的・戦略・手法に当て はめ,活動の構造を明らかにしていくための,筆者独自にフレームワークを作成し,中小企業のCSR
に関する仮説を構築する。仮説
1:中小企業にとっての先進的な CSR
活動は経営戦略に相似したものである。仮説
2:中小企業においては,CSR
の戦略化が事業内容によって異なる。第
4
章では,多くの中小企業が認定を取得している横浜型地域貢献企業制度にはCSR
イニシ アティブとなる要因があると考え,同制度の仕組み,評価制度,取得企業概況,有効性等を明示 する。同制度が,中小企業におけるCSR
イニシアティブとして有効であると考えられる理由に は,以下の3
点がある。中小企業における CSR の戦略化に関する研究
──横浜市の中小企業 2 社の比較を通して──
土 屋 美 樹 修士論文 アブストラクト
土屋美樹:中小企業における CSR の戦略化に関する研究
57
第
5
章では,横浜型地域貢献企業認定取得企業であり,かつ横浜市外からも,その活動ぶりが 高く評価されている,株式会社大川印刷と石井造園株式会社の中小企業2
社の比較を分析し,第3
章で構築した作業仮説の検証を行う。検証にあたり,CSR活動のみならず,2社の事業内容と,企業内の構造に注目し,分析をすすめる。検証の結果,本研究における仮説は支持される結果と なった。
第
6
章では,本研究で得た知見に関するまとめを行う。本研究において,仮説検証の結果以外 の大きな知見として,以下の3
つを挙げる。
1.中小企業による CSR
活動の取り組み方には,「CSR活動の外部化」と「CSR活動の内部化」がある。
2.組織マネジメント・システム(PDCA
サイクル)の循環に関して。3.CSR
の戦略化を進めるには,トップダウンの方法とボトムアップ方法がある。また,本研究の限界と課題としては,以上の
3
点を断定的に説明できないことを受け,さらに 深い研究をする必要があると考える。1.「地域志向」の徹底により,結果的に事業に大きな好影響を与える。
2.行政,大学,産業界,NPO,財団の 5
者協力体制によって設立,支援されているため多角的な視点を持つ制度である。
3.具体的な取り組みとマネジメント・システムの構築・運用を明示している。
立教ビジネスレビュー 第 5 号(2012) 56-57