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【学位論文審査の要旨】

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【学位論文審査の要旨】

1. 論文の目的

本論文は、日本において近年急速に取り組みが広がっている貧困世帯への無料学習支援 について、その政策上の意義・位置づけが導入当初から現在にかけて、どのように変容して きたかを行政文書や国会議事録などから分析し、その上で、これら学習支援事業が対象者で ある子どもに、どのようなメカニズムを通して、どのような影響を及ぼしているのかを、量 的および質的調査を用いて実証的に検証したものである。

我が国における子どもの貧困への関心は、2008 年のリーマンショック以降、急激に高ま ったと言える(阿部2014)。特に、2009年に厚生労働省によって日本における子どもの貧 困率が公表され(厚生労働省 2009)、約6人に1人の子どもが貧困状態であることが報道 されたことは、日本社会に大きな衝撃を与えた。これらを契機に、子どもの貧困対策の必要 性が認識されるようになり、2013 年には「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(以下、

「子どもの貧困対策法」)が議員立法で成立し、 2014 年には「子供の貧困対策に関する大 綱について」(以下、「大綱」)が閣議決定されるに至った。

子どもの貧困対策法の第一条(目的)は、「子どもの将来がその生まれ育った環境によっ て左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備 するとともに、教育の機会均等を図る」ことを明記し、 第二条(基本理念)では対策の4 つの柱として、「教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援」が示された。大綱に おいても、これらの4つの柱をより具体化する各種政策や方針が示され、各自治体において 取組が期待されるようになった。

数ある子どもの貧困対策の選択肢の中でも、特に注目を浴びてきたのが、貧困の子どもを 対象とする無料の学習支援事業と子ども食堂である(末冨 2017: 湯浅 2018)。特に、学 習支援事業については、自治体が生活困窮者自立支援法の枠組みにて学習支援事業を行う ことが可能となると、この取り組みは全国的に飛躍的に普及した。

これら無償の学習支援事業がこれまでの福祉政策や教育政策と異なる点は、これらがこ の二つの政策のどちらでもない両面的な性格を持つものであることである。これら事業は 厚生労働省が所管している福祉政策であるにもかかわらず、その内容は教育支援であり、ま た、逆に言えば、これらは「教育支援」と名付けられているにもかかわらず公教育の外で行 われ、文部科学省が定める「教員」の資格を持たないものが、文部科学省や教育委員会など の縛りにとらわれずに行われている点である。

このことは、学習支援事業の意義や位置づけを曖昧なものとし、その便益性についても、

何を「効果」と見るかといった点において統一された見解はなされていない。そもそも学習 支援事業を、何のために実施しており、どのような効果を期待しているのか、そして、実際 にはどのような効果があるのか、という点において、行政的にも、学術的にも確立された理 論が存在していないのである。

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本論文は、これらの問題意識を踏まえて、以下を行ったものである:

(1) 学習支援事業が、政策的・行政的に、どのような位置づけで始められ、それがど のように変容してきたかを明かにする;

(2) 学習支援事業の効果が、これまでどのように語られたきたのか先行研究から明ら かにする;

(3) 貧困研究・社会福祉研究の視点から、学習支援事業がどのような作用を通して、

どのような効果を対象者にもたらすかを理論的に考察する;

(4) 学習支援事業の対象の子どもと、そうでない子どもとを大規模アンケート調査の データを用いて比較し、(3)で考察された効果を実証的に明かにする;

(5) 学習支援事業の対象の子どもたちを対象とするインタビュー調査を用いて、事業 のどのような作用が、そのような効果をもたらしているかを考察する。

2. 論文の構成

論文の構成は以下の通り:

第Ⅰ部 理論編 第1章 問題提起

第2章 先行研究のレビューと考察 第3章 学習支援の政策分析 第4章 学習支援の理論分析 第Ⅱ部 実証編

第5章 アンケート調査 第6章 インタビュー調査 第7章 終章

補論

第1章 インタビュー調査(保護者)

第2章 ヤングケアラー

第3章 スティグマと生活保護バッシング 文献

3. 本論文の概要 3.1 本論文の知見

第I部においては、まず、近年における学習支援事業が政策上どのように変容し、その意

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義が捉え直されてきたのかを行政文書、国会議事録などから明らかにした。次に、学習支援 事業による子どもへの「効果」について国内外の先行研究をレビューし、さらに、貧困の子 どもに対するさまざまな支援が基づく理論を整理した。その結果、これまで注目されてきて こなかった学習支援による「ケア」の作用によって子どもにさまざまな効果がもたらされる という仮説(「ケア仮説」)を導きだした。 さらに、 第Ⅱ部の実証編においては、独自の 調査紙調査およびインタビュー調査を実施し、「学習支援によるケア」を実証的に検証する とともに、それが学習支援の現場におけるどのような作用を通じてもたらされるのかを量 的および質的に検証した。

本論で明らかになった知見は、以下の3つ、①政策・制度面、②理論面、③実証面に大別 される。 以下、 順番に述べる。

(1)政策・制度面で明らかになった知見

近年、我が国において取組が広がっている自治体による貧困世帯の子どもに対する学習 支援事業について、政策上の意義、位置づけとその変化を分析した。 対象とした期間は、

学習支援が行政の制度・政策として本格的に開始された2000年代なかばから、 2013年の 子どもの貧困対策法、 2014年の大綱の成立、 そして2015年4月に生活困窮者自立支援 制度の事業としてスタートするまでである。 分析の結果、貧困世帯の子どもの学習支援事 業は、生活保護を受給する有子世帯の生保からの自立を促す福祉政策としてスタートした が、次第に、 子ども自身の健全育成や学びに重きが置かれるようになり、近年においては、

子どもの教育機会の保障に資する教育政策としての意義が拡大し、福祉政策から教育政策 として位置づけが変化しつつあることが明らかになった。

次に、2015年から、 2019年4月より施行された「子どもの学習・生活支援事業」成立に 至るまでの期間における学習支援事業を、問題意識や方向を示した厚生労働省設置の検討 会、 社会保障審議会の部会の議論を素材として、 政策上の意義、位置づけとその変化に焦 点を当て分析した。 まず、 学習支援における「学び」が、 学力のみならず、 生活力や非 認知能力を含む多元的能力の発達と理解されるようになった過程を明らかにした。 また、

かかる能力養成の上で、 親の養育や家庭環境の改善の必要性が注目され、 子どもに対する 学習支援と世帯に対する支援の一体化が志されるようになった。これは言わば、 学習支援 から世帯支援につなげるという新たな政策展開であった。

これらの展開の中で成立した事業は、 学習支援事業の変遷のなかで、 学習支援と生活支 援が結実した、 総合的支援事業の意義を帯びるものとなったといえる。

また、 かかる新たな展開によって、 学習支援事業は、 生活・養育支援といった世帯支 援、 自立相談事業の活用を促し、結果として被保護世帯の「自立」に資することに加えて、

学力に留まらない、 生活力や非認知能力、学習の土台となる学習習慣の向上など多元的な アウトカムの向上を目指すものとなった。さらに、 このような新たな学習支援事業は、 学 校部門や地域との連携をも強化することとなり、 「学習機会の保障」を一層進める事業に

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発展する可能性を持つものといえる。

(2)理論面で明らかになった知見

本稿では、次に、「学習支援によるケア」の理論を考察し、 その要素・特性、 レジリ エンスとの関係を踏まえ上で、 学習支援事業におけるケアに着目し、そのケアの作用に よって子どもに効果がもたらされるとする「ケア仮説」を導出した。「ケア仮説」とは、

学習支援事業における「ケア」の要素が、 成長・発達途上にある子どもたちに、 貧困か ら生じる逆境や不利などに対する防御機能となるレジリエンスを構成する効果をもたらし 得るというものである。

「ケア仮説」によれば、 学習支援によるケアの作用は、子どものレジリエンス、 ひいて は、 子どものウェルビーイングを向上させ、 貧困の連鎖・再生産を断ち切る経路になり得 ることが考えられる。 そこで、「ケア仮説」を検証・実証するべき研究課題として、 学習 支援事業によってレジリエンスを構成しうる効果がもたらされるのか(研究課題1)、 学 習支援事業のケアのいかなる作用が効果をもたらすのか(研究課題2)の2点が導出された。

(3)実証面(アンケート調査及びインタビュー調査)で明らかになった知見

まず、 研究課題1として、 学習支援事業の効果を検証した。 用いたデータは、東京都 下の 4 つの自治体の学習支援教室に通う中学生の子ども及びその保護者を対象として行っ た調査紙アンケート調査のデータと、 同じ4自治体に住むすべての中学2年生とその保護 者を対象として行った東京都「子どもの生活実態調査(小中高校生調査)」(東京都2017年)

のデータを統合したデータである。これを用いて、子どもの性別、 家族構造、 世帯の生活 困難度等をコントロールした上でも、学習支援教室に参加している子どもは、参加していな い子どもと比べて、 授業理解度、自己肯定感、精神的安定が統計的に有意に高いといえる のかを検証した。 その結果、 授業理解度、自己肯定感については、 学習支援参加が、 有 意な差をもたらしていなかったものの、 精神的安定には、正に有意に作用していた。しか も、コントロール変数が増えるほど、 係数が大きい傾向にあった。対照的に、 学校の補習 への参加は有意ではなく、 効果の有無が検証できなかった。換言すると、学習支援教室は、

子どもの精神的ウェルビーイングについては有効に作用している可能性が浮かび上がった。

次に、研究課題2に関して、 学習支援のどのような作用が子どもに影響を与えるのかを 明らかにするべく、学習支援参加者を対象に、生活困難度等をコントロールした上で分析を 行った。 主たる結果として、「学習支援教室でボランティアの先生と困っていること」・「悩 んでいることを話すこと」が、 子どもの精神的安定に対する頑健性ある正の作用があるこ とが看取された。 また、 自己肯定感や、 学習意欲・習慣、 学校適応、 コミュニケーシ ョン、将来の希望、自信についても、ボランティアの先生が子どもと会話したり、 ほめた り、 気にかけたりするなどの、 子どもに効果をもたらす可能性が示唆された。 これらは、

学習支援事業における「ケア」ということができ、その効果が実証的に確認された。

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続いて、東京近郊のX市において学習支援事業に参加した21人にインタビュー調査を行 った。その上で、 代表的なケースを引きながら、 学習支援の効果をもたらす作用について 考察した。 調査から、 彼らの多くは、 学校でいじめ、 不登校、 周辺化された人間関係 などの様々な不利・困難に直面していたことが明らかとなった。 また家庭においても、 そ うした不利・困難を克服するどころか、経済的制約に加えて、 家族のケア、 家事負担、 ロ ールモデルの欠如、 将来の見通しの低さなど、 低所得世帯に特有の不利・困難に直面して いた。 また、 彼らには、 学力だけでなく、 コミュニケーション、 自信、 将来の希望な どが低位に留まる傾向がみられた。 一方、 彼らは、学習支援に参加したことによって、 学 習意欲や、 他者とのコミュニケーション、 自信などが向上したと感じていた。

ここで重要なのは、 彼らは、 こうした効果をもたらす作用として、【誰かに気にかけて もらう感覚】、【頼れる大人に会える】、【自分が成長していく実感】、【人間的なつながり】、

【もうひとつの学びの場】、【居場所感】という学習支援によるケアの作用を認識していると いうことである。 すなわち、これらの作用が、 それぞれの子どもたちに、「学習支援によ るケア」の効果を生み出していることが本論の分析によって明らかになった。 子どもたち は、学習支援に参加し、ケースワーカーやボランティアとの会話、相談などのコミュニケー ションなどを通じ、結果として、他者とのコミュニケーション、 自信、 学習意慾、将来の 見通しなど、不利や困難といった逆境に抗うレジリエンスを構成する効果を得ることがで きたと感じている。

これまで述べてきた、「学習支援によるケア」モデル図を以下に示す(図)。

図 学習支援事業によるケアのモデル図

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3.2 本論から導かれる政策提言

ここまで得られた知見を踏まえると、以下の政策提言が得ることができる。

まず、 学習支援事業の意義を、 学力の向上のみでなく、貧困から生じる不利や困難に抗 うレジリエンスを向上させるものとして捉え直す必要がある。 すなわち、 学習支援は、学 力にとどまらず、 精神的安定やコミュニケーションなど、 健康・生活・意欲・社会性など の子どもの多様な側面に影響を及ぼし、 レジリエンスを構成する多元的な効果をもたらし 得るものと、 位置づけ直すべきである。 また、 学習支援事業の子どもへの効果を的確に 測るためには、 健康・生活・意欲など、 多元的な効果を反映した指標を用いるなければな らないといえる。

次に、 学習支援事業の内容についても再検討すべきである。「ケア」が学習支援の重要 な要素であることを踏まえると、 子どもへの日々の接し方・指導において、 単なる学習指 導のみならず、 子どもの声に耳を傾け、 困っていることや悩んでいることの相談に乗った り、 ほめたり、 気にかけるといった、「学習支援によるケア」を実現するものでなければ ならない。 換言すれば、 学習支援教室において、 子どもの困っていること・悩んでいる ことの相談に乗ったり、 ほめたり、 気にかけてくれるという「学習支援によるケア」の作 用を実践する取組が強く期待される。 子どもに効果をもたらす上で重要なのは、「学習支援 によるケア」であった。今回の調査では、「学習支援によるケア」の作用として、【誰かに気 にかけてもらう感覚】、【頼れる大人に会える】、【自分が成長していく実感】、【人間的なつな がり】、【もうひとつの学びの場】、【居場所感】という作用が確認された。 そのため、 学習 支援教室における日々の接し方・指導のみならず、 学習支援のボランティアやスタッフな どの研修やフィードバックでも、 かかる点に重きを置いた接し方・指導の共有や、 学習支 援によるケアを担う多様な人材の養成がなされるべきである。

さらに、 2019年4月から「子どもの学習・生活支援事業」がスタートし、 学習面・生 活面・養育面という生活困窮世帯の課題に広く対応するべく、 生活習慣・育成環境改善に 関する支援(学校・家庭以外の居場所づくり、 生活習慣の形成・改善支援、 家庭の養育支 援等)、 子どもの進路選択その他の教育や就労に関する支援(相談、 情報提供、 助言、

関係機関との連絡調整等)が事業内容として盛り込まれるようになった。 かかる新たな展 開は、 学習支援が子どもの健康や生活等をも視野に含めた総合的事業として、「学習支援 によるケア」と共鳴し、 「学習支援によるケア」を実現する政策・制度、 実践に発展する 大きな可能性を有する。

まず、 政策・制度レベルとして、 学習支援を、 勉強を教えるだけではなく、「学習支援 によるケア」の場として捉え直した上で、 従来の行政における縦割りや、 官民の垣根を越 えて、 生活支援や進路選択等の支援と密接に結び付けながら 展開するべきである。 例え ば、 学校や子ども食堂や地域の取組を学習支援事業の入口としたり、 学習支援教室の隣で 保護者向けに自立相談支援事業を行ったりと、 学習支援と生活支援を結びつけながら行う ことも、 「学習支援によるケア」の実践に資するものであろう。

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さらに、より実践レベルでいえば、 「学習支援によるケア」を行う「場」は教室での指 導にとどまらず、 教室外のイベントや様々な経験、 進路説明会、 卒業生による体験談・

交流会などにも拡充するべきである。 さらに、 自立相談支援等を行うワーカーと、 学校、

子ども食堂のような地域の取組、 多様な機関をつなげる連携が期待される。 地域住民や大 学生などの若い世代をはじめ、 多様な人材による様々な取組は、 量・質ともに、 「学習 支援によるケア」に基づく支援の内容、 支援のあり方を拡大・深化させるものである。

子どもたちは、学習支援に参加し、「学習支援によるケア」を通じて、 今回実証された精 神的安定を含む、不利や困難といった逆境に抗うレジリエンスを構成する効果を得ること ができていることが本論で示唆された。これらは、子どもの貧困の連鎖・再生産を断ちきる 大きな可能性を有し、 子どもの貧困対策の核心として極めて重要な意義をもつものであろ う。

4. 審査結果

本論文は、2010 年代に入って飛躍的に増加している貧困の子どもに対する学習支援事業の 政策的意義と効果を理論的かつ実証的に明かにしたものであり、学術的に新しい知見を提 供するだけでなく、政策立案・実施・評価の実践において貴重な示唆を与えるものである。

本論文の特徴と意義は以下に集約される。

第一に、従来、教育の側面からは、学力向上がその目的であると捉えられてきた学習支援 事業に、貧困に抗う力(レジリエンス)に資すると考えられている非認知能力の向上や精神 的安定といった効果が期待できるという社会福祉の側面からの意義を改めて付与したこと である。本論文の実証研究部分で明かになったように、学習支援事業が対象とする貧困世帯 の子どもたちの多くは、非貧困世帯の子どもに比べて、そもそも学力が低い傾向があり、そ のため、学力向上のみを学習支援事業の「効果」と捉えると、「効果」が測定できる形で表 れにくいという問題があった。本論文では、学力に限らないさまざまなアウトカムを測定し た調査を用いることにより、学力以外の効果を実証することに成功している。これは、本論 文にて用いられたデータが、コントロール群と、学習支援事業の対象者とコントロール群の 両者において十分なサンプル数が確保できる大規模なアンケート調査と詳細なインタビュ ー調査の二つを駆使して初めて可能となる分析である。

第二に、本論文にて提示された、学習支援事業における「ケア」が、さまざまな効果をも たらしているという「ケア理論」は、これからの学習支援事業の立案・実施・評価において 重要な示唆をもたらすものである。学習支援事業は、例えば、民間大手の学習塾に委託され るものから、地域のNPOが大学生のボランティアを動員して実施しているものまで、さまざ まな形態が存在するが、学習支援事業に「ケア」の要素が必要であるという本論文からの示 唆は、その選択に大きな影響を与えるものであろう。

一方で、残される課題も多い。本論文で分析対象とした学習支援事業は、どれもNPOが主

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催しているものであり、そもそも「ケア」を重視する傾向がある事業であった。そのため、

そこに通う子どもたちも、「ケア」をより必要としている傾向がある可能性がある。今後は、

異なるタイプの学習支援事業を分析対象に含め、それぞれの効果を測ることにより、この事 業のよりよい形態とは何かという論点を極めることができるであろう。また、本論文では、

現在、学習支援事業に通っている子どもたちのデータを用いているため、学習支援事業終了 後の長期的な影響については把握することができていない。すなわち、事業終了後において も、貧困に抗う力(レジリエンス)が長期的・継続的に身についているのかは、対象者を長 期にフォローした研究が必要である。この2点については、本論文の範疇を超える大きな課 題であり、今後の研究に期待したい。

本論文の公開審査は、2019年9月5日(木)16:30~18:00に5号館143号室にて行われた。

公開審査の場では、本論文の内容は政策的含意について活発な議論がなされ、松村はこれら に的確に答えるとともに、今後のさらなる研究の方向性についても明確に示した。これらを 踏まえ、残される題はあるものの、本論文は博士論文として十分に評価できる内容であると して、審査員全員一致で、松村智史に博士(社会福祉学)の学位を授与することが適当と判 断した。

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【訂正 新旧対応表】

博士学位論文審査要旨の訂正箇所

訂正前 訂正後

5頁 11~16行

その結果、 授業理解度、自己肯定感については、

学習支援参加が、 有意な差をもたらしていなか ったものの、 精神的安定には、正に有意に作用 していた。しかも、コントロール変数が増える ほど、 係数が大きい傾向にあった。対照的に、

学校の補習への参加は有意ではなく、 効果の有 無が検証できなかった。換言すると、学習支援 教室は、子どもの精神的ウェルビーイングにつ いては有効に作用している可能性が浮かび上が った

その結果、 授業理解度、自己肯定感、精神 的安定について、 学習支援参加が、 有意な差 をもたらしているという結果は得られなかっ た。また、 学校の補習への参加は有意ではな く、 効果の有無が検証できなかった。

5頁 20~22行

子どもの精神的安定に対する頑健性ある正の作 用があることが看取された。 また、 自己肯定 感や、 学習意欲・習慣、 学校適応、 コミュニ ケーション、将来の希望、自信についても、ボラ ンティアの先生が子どもと会話したり、 ほめた り、 気にかけたりするなどの、 子どもに効果 をもたらす可能性が示唆された。

子どもの自己肯定感に対する正の作用がある ことが看取された。また、学校適応、自信につ いても、ボランティアの先生が子どもと会話し たり、 ほめたり、 気にかけたりするなどの、

子どもに効果をもたらす可能性が示唆された。

参照

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