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Academic year: 2021

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懸案の『 木器集成図録 近畿古代篇』を ここに世 にお くることができて大変喜ばし い。発掘調査で多量の木製品が出土 したのは昭和十一年暮か ら翌年春にかけておこ なわれた奈良県唐古遺跡の発掘であった。その当時中学生であった私は十一年の早 春 に他界 した森本六爾が今一年存命であれば

,弥

生時代の鍬

,鋤,杵

をはじめとす る農具を見 ることができたであろうと関係者が話を しているのを聞き

,ま

た出土直 後 の精巧な高杯杯部を見せ られた感激を今でも忘れることができない。

唐古遺跡出土木器は早速石膏型や木で複製をつ くるなどの処置はされたが

,実

物 は水漬状態で半世紀近 く保管 されてきた。戦時中に水を替えることもままな らず徴 がはえるなどひどいこともあったが

,昨

年当研究所 と京都大学考古学教室の共同研 究で

P.E.G含

浸 と真空凍結乾燥を混用する新方式で処理が進行中である。唐古出 土木器の現状が出土木製品の保存処理の歴史を物語 っているのである。

戦後登 呂をはじめ多量 の木器が全国各地で出上 したが

,昭

和三十五年 に平城宮跡 で木簡が出土 したことか ら

,出

土木製品の処理 に本格的に取 り組 まざるをえな くな った。その後十年

,関

係者の努力 によって保存処理方法は確立 し

,文

化庁 も指導 に つ とめ

,処

理施設なども拡充 し処理の補助金を出すなどしてきたが

,何

分 にも経費 その他の制約で

,そ

の処置は未だ緒についたとい う状態である。一方全国の開発に 伴 う大規模発掘で出土する木器は膨大な数にのぼ り

,ほ

とん どが, とりあえずの水 漬保存では十分な研究 もできない状態にある。 これを克服するため都道府県の枠を こえた『木器集成』を望む声が強 くな り

,当

研究所の御世話でとりあえずの型をつ

くることにな った。手はじめに近畿地方の古代を取 りあげたのは便宜的なもので,

今後時代別

,地

域別 に順次資料の整理できたものを刊行する予定である。本資料が ささやかなが ら学界に寄与するものとなったと自負 しているが

,編

集 にあた って,

縮尺・ 表現の統一

,材

質の同定など当事者の苦労は大変なものであった。 この企画 に賛同され協力 していただいた方 々に感謝の意を表 し

,今

後各方面の御協力を心か ら願 うとともに

,本

事業 の完成 の一 日も早か らんことを祈 るものである。

昭和六十年二月五 日

奈 良 国立 文 化 財 研 究所長

坪 井 清 足

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