九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
地理空間情報と情報通信技術を活用した地域防災の 高度化に関する研究
岡島, 裕樹
http://hdl.handle.net/2324/2236211
出版情報:九州大学, 2018, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式2)
氏 名 :岡島 裕樹
論 文 名 :地理空間情報と情報通信技術を活用した地域防災の高度化に関する研究 区 分 :甲
論 文 内 容 の 要 旨
今後,我が国で取り組むべき防災については,内閣府の「防災 4.0」未来構想プロジェクトにお いて,住民・地域における「備え」や進展する情報通信技術の防災分野への活用が提言されている.
また,総務省の「G空間×ICT推進会議」においても,地理空間情報(G空間情報)と情報通信技 術(ICT)を活用した世界最先端の防災システムの構築を目標として様々なプロジェクトが計画・
実施されている.
このように防災分野において地理空間情報や情報通信技術を活用した研究開発が推進されてはい るものの,地域防災を対象として,その規模(圏域,県域,市町村域)を考慮に入れながら,防災 サイクルの全ての段階において対処可能な地理空間情報と情報通信技術を活用した具体的かつ実践 的な研究は存在しない.
そこで,本研究では,行政自体や行政と住民の防災への取り組みを地理空間情報と情報通信技術 を活用したG空間防災システム(九州地理空間情報ポータル,G空間情報収集システム,防災業務 支援システム)や災害リスク・コミュニケーション等の新しい技術を開発・提案し,地域防災のた めの自助・共助・公助を促進させる取り組みを具体的に実践し,地域防災力を高度化させることを 目的とした研究を行う.
本論文は以下の章から構成される.
第1章では,本研究の背景と目的を述べた.
第2章では,G空間防災システムの基盤となる防災G空間情報基盤を設計・構築した.本システ ムの活用が見込まれる県域レベルで実証した結果,地域における地理空間情報の流通・利活用を阻 害する課題が解決され,これまで十分に地理空間情報が流通・利活用されてこなかった自治体にお いても流通・利活用される状況に至った.
第3章では,市町村の災害応急対策段階を対象として,意思決定や情報共有に関する市町村の課 題解決を目的とした防災システムを提案・構築し,実証実験によって有用性を評価した.
人吉市等の防災訓練では,複数の住民・現地職員の投稿により周りの状況がリアルタイムで把握 できること,避難所の情報が迅速に把握できる点が有効であり,G空間情報収集システムは自助・
共助を促進するシステムとして有効であった.
さらに,糸島市の災害図上訓練を通して,災害対策本部で使用するG 空間情報収集システム(PC 版)と防災業務支援システムに対して職員による評価を行った.その結果,G空間情報収集システム はリアルタイムに同時に複数人で情報共有ができる点,写真や位置情報で視覚的に情報を確認でき る点,入力し蓄積した災害記録を報告書として出力できる点,労力軽減や時間短縮が図れる点にお いて有用と評価された.また,防災業務支援システムは,地理空間情報として従来よりも多くの情 報を参照でき意思決定支援に資する点,災害対策本部で状況認識の統一が図れる点において有用と
評価された.
第4章では,九州圏域レベルの災害応急対策段階を対象に,広域の被害情報の収集・分析・共有 手法を構築し実証試験を行った.その結果,G空間情報収集システムを活用した方法により,短期 間で広域に亘る被害情報を収集できるとともに,その収集された被害情報の分析を行う等,より高 度な被害情報の利活用が可能となった.さらに,被害情報の共有を九州地理空間情報ポータルで行 うことで,関係者への幅広い利活用の場を提供することができた.
また,災害時の現地調査において,オフライン状態でも地理空間情報を活用できる機能を持つ
Android版のアプリケーションを開発・実証し,その有用性を確認するとともに,九州地方整備局
における津波防災訓練でも活用した結果,災害応急対応に十分に活用できる可能性を示すことがで きた.
第5章では,市町村域レベルでの災害予防段階について,糸島市を対象に,九州地理空間情報ポ ータルによるハザードマップの作成・公開を行った.ハザードマップの作成・公開を迅速化すると ともに,Web上に公開することで紙情報とは異なり,住民がいつでもどこでも活用可能な状況とな り,認知度や保有状況の課題の解決に貢献できた.
また,災害リスク・コミュニケーションを通して,地理空間情報と情報通信技術を活用した地区 防災マップ作成手法を提案し,住民への多種多様な情報の提示,住民からの地理空間情報としての 情報収集を可能とした.その結果,作成された地区防災マップを活用することで,各ステークホル ダーの相互的,持続的,自主的なリスクマネジメントを実践させ,地域防災力の向上につながるこ とをアンケート等から確認できた.
第6章では,災害復旧・復興段階での地理空間情報と情報通信技術の効果を示すために,市町村 域レベルで,災害復旧・復興段階における災害リスク・コミュニケーションを実施し,地域の自助・
共助・公助の向上を期待できる成果を得た.また,同様の技術を活用した災害伝承館を構築するこ とで,様々な災害に関する情報だけではなく,地図上に可視化された復旧・復興に関する情報を住 民へ提供でき,復旧・復興の推進に寄与することができた.
また,九州圏域・県域レベルでは,平成 29年 7 月九州北部豪雨被災地で衛星を利用した土砂災 害モニタリングを実施し,観測・解析結果を九州地方整備局に九州地理空間情報ポータルを通して 提供することで二次災害防止への対応を支援することができ,災害復旧・復興段階においても地理 空間情報と情報通信技術が有効であることを示すことができた.
第7章では,各章を総括し結論とした.