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軟骨細胞分化とイノシトールリン酸/リン脂質代謝機 構に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

軟骨細胞分化とイノシトールリン酸/リン脂質代謝機 構に関する研究

日高, 聖

九州大学歯学研究科歯学臨床系専攻

https://doi.org/10.11501/3180221

出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(歯学), 課程博士

(2)
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第1部:軟骨細胞分化とイノシトールリン酸代謝との関係に関 する研究

軟骨細胞分化とイノシ卜ールリン酸/リン脂質 代謝機構に関する研究

第2部:軟骨前駆細胞株ATDC5の分化におけるイノシトール リン脂質代謝とPI3K/PKB情報伝達経路に関する研究

2000

吉岡

九州大学大学院歯学研究科歯学臨床系専攻小児歯科学

九州大学大学院歯学研究院口腔保健抗進学講座小川口)J空医学

指導教官 中旧 稔 教授

九州大学大学院歯学研究|涜口腔常態制御学講座1-1

)j空細胞工学

(4)

本論文の一部は下記の論文に報告した。

Hidaka, K., Kanematsu, T., Takeuchi, H., NakataヲM.,Kikkawa, U. and Hirata, M.:

Involvement of the phosphoinositide 3幅kinase/protein kinase B signaling pathway in

insulin-induced chondrogenesis of the nlouse embryonal carcinoma-derived cell line ATDC5.

投稿中,2000

Caffrey, 1.J., Hidaka, K., Matsuda, M., Hirata, M. and Shears, S.B.: The hunlan and rat forms of multjple inositol polyphosphate phosphatase: functional homology with a histidine acid phosphatase up-re思llated during endochondral ossification.

FEBS Letters 442,99-104,1999

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略語一覧

basic FGF :塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor) cDNA:相補的DNA(complementary DNA)

DIG:ジゴキシゲニン(Digoxygenin)

DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's modified Eagle's medium) DMSO:ジメチルスルホキサイド(dimethy Isu Ifoxide)

G3PDH :グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素

(glyceraldehyde 3 -phosphate dehydroxygenase) GFP:緑色蛍光タンパク質(green f1uo印scence protein) HiPER1 :小胞体に存在するヒスチジン酸性ホスファターゼ

(histidine acid phosphatase of the en吋doplasmi比c r印e抗仙ti比c uI山Iunμm

hMI印PP :ヒト型イノシト一 ルポ リリン酸ホスフア夕一ゼゼ (hu山山111a

HPLC:高速j液夜イ体本クロマトグラフイ一(仏ωhig凶h-pe引rform司I汀mance liQuid chr崎刀.刀01汀matωog釘r 凋-a勾phyρ)

1C50 : 50 %阻害に必要な濃度(concentration required for half-maximal inhibition) 1GF-1 :インスリン様増殖因子-1 (insulin-like growth factor-1)

InsPn :イノシトールリン酸(inositol polyphosphates) nはリン酸基の数を示す。

特に断らない限り、 0-型異性体を表す。 さらに括弧を付してリン酸基の位 置を示す。 例えば、Ins(1,4,5)P3は0-イノシトール1,4,5-三リン酸を表す。

IRS-1 :インスリン受容体基質-1 (insulin receptor substrate-1) KN :リン酸化酵素活性欠如(kinase negative)

MIPP:イノシトールボリリン酸ホスファターゼ、

(1川ltiple inositol polyphosphate phosphatase)

(6)

3'-NTS: 3'-非翻訳配列(3'-non -translates seq uence)

PBS:リン酸緩衝生理的食塩水(phosphate buffered saline) PCR:ボリメラーゼ、連鎖反応(polymerase chain reaction) P DK-l : 3-ホスホイノシタイド依存性タンパク質キナーゼ、

(3 -phosphoinositide-dependent protein kinase-l) PH :プレックストリン相同(pleckstrin homology)

PI3K:ホスホイノシタイド3-キナーゼ (phosphoi nosi tide 3 - kinase)

PKB:ブロテインキナーゼB (pl・otein kinase B)

PtdlnsPn :イノシトールリン脂質(phosphatidylinositol Pn) nはリン酸基の数を

示す。 さらに括弧を付してリン酸基の位置を示す。 例えば、 Ptdlns(3,4,5)P3 は ホスファチジルイノシトール3.4.5-三リン酸を表す。

PVDF:ポリピニリジンジフルオリド(polyvinylidene d ifl uoride) RT-PCR:逆転写ボリメラーゼ連鎖反応

(reverse transcriptional-polymerase chain reaction) SAX:強陰イオン交換(strong anion exchange)

SDS:ドデシル研し酸ナトリウム(sodi um dodecy 1 sulfate) [3H]Ins(1,4,5)P3 :トリチウム標識イノシトール1,4,5-三リン酸 [3H]Ins(1,3,4,5)P4 :トリチウム標識イノシトール1,3,4,5-四リン酸

α_[32p]-dCTP :α位[32p]標識デオキシシトシン三リン酸

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要旨 緒言

ーム Aせ のδ

目次

材料と方法 ・ 結果

第l部:

軟骨細胞分化とイノシトールリン酸代謝との関係に関する研究. . . 1 7 第2部:

軟骨前駆細胞株ATDC5の分化におけるイノシトールリン脂質

代謝とPI3K/PKB情報伝達経路に関する研究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 0 考察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ . . . . . • . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ 4 0

5射苦手 ・ . . . . 4 5

参考文献 ・ ・ ・ ・ . . . . . . . . . ・ ・ ・ ・ ・ 4 6

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要旨

<第1部:軟骨細胞分化とイノシトールリン酸代謝との関係に関する研究>

イノシトールボリリン酸ホスファターゼ(MIPP:Multiple Inositol Polyphosphate

Phosphatase)をコードする遺伝子が、 ニワトリの骨端成長軟骨において増殖軟骨細 胞層/肥大軟骨細胞層の境界に特異的に発現している遺伝子として報告された Band17遺伝子(後に小胞体に存在するヒスチジンホスファターゼという意味で

Hi?ERl、 さらにMinppと改名)と極めて類似していることが明らかとなった。 本 研究では、 細胞でのイノシトールリン酸代謝機構に関与するMIPP分子を中心に、

イノシトールリン酸代謝を介する細胞内情報伝達機構が、 軟骨細胞分化に果たす機 能を明らかにすることを目的とした。

6日齢ラット腔骨骨端成長軟骨を用いたin situハイプリダイゼーション解析によ り、 MIPPmRNAが増殖軟骨細胞層から肥大軟骨細胞層にかけて強く発現している ことが明らかとなった。 これはHi?ERl 遺伝子で示されていた結果と同様で、あり、

両遺伝子の機能的な類似性 を強く示唆するものであった。

加えて、 軟骨細胞分化のモデルとして多く活用されているATDC5細胞を用いて 解析を行ったら ATDC5細胞を、 インスリン存在下で培養後、 各段階でtotal RNA を調製し、 ノーザン ・ ハイブリダイゼーション解析により種々の軟骨細胞分化マー カー遺伝子とMIPP遺伝子との発現を比較検討した。 さらに、 各段階のATDC5細 胞から細胞抽出液を調製し、 MIPP酵素活性を測定した。 その結果、 ATDC5細胞の、

骨端成長軟骨における増殖細胞層から肥大細胞層の境界に相当すると考えられる培 養の段階で、 MIPPの遺伝子発現、 酵素活性ともに上昇していることが明らかとなっ た。 ウサギの肋軟骨成長軟骨の初期継代培養細胞を用いた実験でも、 MIPPの遺伝 子発現、 酵素活性について同様の結果が得られた。

また、 MIPPを恒常的に過剰発現しているATDC5細胞を樹立し、 その軟骨細胞

-1 -

(9)

<第2部:軟骨前駆細胞株ATDC5の分化におけるイノシトールリン脂質代 謝とPI3K/PKB情報伝達経路に関する研究>

ホスホイノシタイド3 -キナーゼ(PI3K) / プロテインキナーゼB (PKB)情幸町云 迄経路は、 インスリンなどの増殖因子刺激に応答し、 細胞の分化や細胞周期の制御、

抗アポトーシス作用、 グルコース取り込みなど、 多くの生理的機能の調節にあずか る細胞内情報伝達経路である。

マウス胎性腫湯由来ATDC5細胞は、 インスリン /インスリン様成長因子刺激に 応答して軟骨細胞へと分化する。 本研究では、 ATDC5細胞においてインスリン刺 激によってPI3K/PKB情報伝達経路 が活性化し、 軟骨細胞への分化に関わってい

る可能性を探った:'

ATDC5細胞は、 インスリン刺激に伴って、Ptdlns(3,4,5)P 3を産生していることが、

脂質の薄層クロマトグラフィーによる解析により明らかとなった。 また、 ATDC5 細胞にPKBのプレックストリン相同領域(pleckstrin homology domain; PH domain) をGFP (Green fluorescene protein )融合タンパク質として発現させたところ、 非刺 激時には細胞質中に一様に存在していたのに対し、 刺激に伴って細胞膜付近へと局 在する現象が確認された。 これらの結果は、 インスリン刺激の下流で、PI3K が活性

化を受け、 そのシグナルをPKBへと伝えていることを示している。

また、 分化におけるPI3Kの機能を具体的に検討するために、PI3Kの特異的な阻 害剤であるwortmaninn およびLY294002を培地中に添加し、 その効果を観察した。

としての分化能を検討したところ、 分化能の著しい低下が観察された。 これは、

HiPERI/MIPP遺伝子欠損マウスを用いた実験により得られていた、InsP5やInsP6 といったイノシトールポリリン酸のレベルが正常に保たれていることが、 正常な細 胞の増殖に必須である、 という知見と一致するものであった。

以上の結果は、 軟骨細胞の分化過程において、 MIPP を中心としたイノシトール リン酸代謝の重要性を示唆するものである。

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その結果、 いずれの阻害剤においてもlO!-1Mの濃度で添加すると、 インスリン存在 下においても顕著にATDC5細胞の分化を抑制することが、 軟骨分化の指標である 軟骨結節の形成をアルシアンブルー染色によって定量することにより明らかとなっ た。 加えて、 この抑制は可逆的であった。 これは、 PI3Kの活性化がATDC5細胞の 分化に必須であることを示している。

さらに、 ATDC5細胞に様々なPKB変異遺伝子を導入し、 分化に及ぼす影響を検 討した。 その結果、 常時活性型PKBがインスリン非存在下においても軟骨細胞へ の分化を誘導したのに対し、 他のミュータントではその現象は確認されなかった。

これは、 PKBの活性化がATDC5細胞の軟骨分化に必須であることを示している。

以上の結果は、 いずれもインスリン刺激に応答して、 PI3K/PKB情報伝達経路が 活性化され、 その結果ATDC5細胞の分化を引き起こしているという仮説を支持す るものであるむ ATDC5細胞は軟骨初期分化および最終分化のモデルとして汎用さ れている細胞であるが、 生体における軟骨分化にも、 このPI3K/PKB情報伝達経 路をはじめとするイノシトールリン脂質代謝が、 根幹となる役割を担っている可能 性が示唆されたむ

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緒言

ヒトをはじめとする多細胞生物では、 機能的に分化した多種の細胞が秩序をもっ て個体を形成するために、 ホルモン、 増殖因子、 神経伝達物質、 サイトカインなど による細胞聞の情報伝達が必須であり、 これらによる刺激は細胞の生命活動をさま ざまな局面で制御している。 細胞は細胞膜で覆われているため、 細胞外からの刺激

~一次情報伝達物質~はそれぞれの特異的な受容体で感知され、 細胞膜内で情報の 交換が行われる。 情報交換の結果、 細胞内での情報伝達機構をつかさどる二次情報 伝達物質を介した伝達経路が活性化され、 核や細胞内小器官などに作用して種々の 標的遺伝子転写の調節や標的タンパク質機能の制御などを行い、 それらの総和とし て細胞の生理的機能を調節する。

イノシトールボリリン酸は、 機能の最もよく解明されているイノシトール1,4,5

-三リン酸[D- myo-inositol 1,4,5 -trisphosphate, Ins( 1,4, 5)P 3Jをはじめとして、 細胞 機能をつかさどる最も重要な細胞内情報伝達物質のーっとしてその機能が解明され つつある1)。 ins(l,4,5)P3は細胞の受容体刺激などの外来刺激によって活性化された ホスホリバーゼC酵素群による、 細胞膜構成脂質ホスファチジルイノシトール4,5

・二リン酸[Ptdlns(4,5)PzJの加水分解によって生じる分子である。Ins(l,4,5)P3は細

胞質中を拡散し、 小胞休日莫上にあるIns(1,4,5)P3受容体に結合して、 内腔に蓄えら れているカルシウムイオン動員を引き起こすことにより、 様々な細胞応答を引き起 こすきわめて重要な働きを担っている2 )。 また、Ins(1,4,5)P3は、 こういったカルシ

ウムイオン動員に働くのみならず、 細胞中に存在しているイノシトールポリリン酸 キナーゼ群の基質となってInsP4、InsP 5、InsP 6へと代謝されることにより、 核内で 転写されたメッセンジャーRNAの核外移行3 )や、 アルギニン酸代謝に関与するあ る種の酵素の転写4. 5)といった細胞の基本的な機能を制御しているなど、 新たな機 能が解明されてきている。 特にInsP6は、Ins(l,4,5)P3と比較して数十倍もの量が細

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胞内に存在しており1)、その機能の解明が待たれている。

InsP 6 代謝に関連して重要な働きを担うであろう酵素にイノシトールポリリン酸ホ スファターゼ(MIPP:Multiple Inositol Polyphosphate Phosphatase)がある。 これは 米国国立環境衛生研究所のStephenB. Shears 博士らのグループがラット肝より初め て単離した6 7)c このMIPPは小胞体腔内に存在し、InsP6、Ins(1,3,4,5β)P5、

Ins(l,3,4,5)P4を基質として加水分解し、Ins(1,4,5)P3を産生する。 ホモロジー検索に

より、このMIPPが、ニワトリの骨端成長軟骨において増殖軟骨細胞層/肥大軟骨 細胞層の境界に特異的に発現している遺伝子として、米国ロチェスター大学医学部

Paul R. Reynolds博士らのグループにより報告されていたBand17遺伝子(後に小 胞体に存在するヒスチジンフォスファターゼという意味でHiPERl、さらにMinpp と改名)8・ 9)と極めて類似していることが明らかとなった1 0)。 これらの2つの分

子が類似している点から、イノシトールリン酸の機能と代謝が、軟骨細胞の細胞生 化学に大きな関わりを持つことが予想、された。

本研究では、MIPP分子を中心に、イノシトールリン酸代謝を介する細胞内情報 伝達機構が、軟骨細胞分化に果たす機能を明らかにすることを目的として研究を開 始した。 そしてHiperlと同様に、MIPPのmRNA発現も、6日齢ラット腔骨骨端 成長軟骨を用いたin situハイブリダイゼーション解析により、増殖軟骨細胞層/肥 大軟骨細胞層の境界に特異的に発現していることが明らかとなった1 0)。 これによ り、MIPPとHiper1 1M inppはラット ・ ニワトリ種間のホモログであると考えられる ようになった。

加えて、軟骨細胞分化のモデルとして多く活用されているATDC5細胞を用いて

解析を行ったところ、ATDC5細胞の、骨端成長軟骨における増殖細胞層から肥大 細胞層への境界に相当すると考えられる培養の段階で、MIPPの遺伝子発現、酵素 活性ともに上昇していることが明らかとなった。 ウサギの肋軟骨成長軟骨の初期継

代培養細胞を用いた実験でも、同様の結果が得られた。 さらに、1vIIPP過剰発現 ATDC5細胞を樹立 ・解析して、その表現型についてMIPP(HiPERI/Minpp)遺伝

「hυ

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子欠損マウスにより得られた知見1 1 )をもとに考察を加えた。

また、 近年になって、 細胞膜構成脂質であるホスファチジルイノシトール4,5-二 リン酸[Ptdlns(4,5)P2Jが、 Ins(1,4,5)P3という2次情報伝達物質産生の前駆体とし て使われる以外に、 そのものが細胞骨格系制御や各種タンパク質のの機能修飾を引 き起こすことや 、 PI3K (phosphoinositide 3 -kinase)によって産生される3位にリン 酸の入ったイノシトールリン脂質群が様々な機能を引き起こしていることが新たに 示されてきた1 2)。

PI3Kの情報伝達系は、 Ptdlns(3)P、 Ptdlns(3,4)P2、 Ptdlns(3,4,5)P3といった3位に リン酸を持った脂質が実際の機能を果たしている。 従来からインスリンの情報伝達 系にPI3Kが関与することは知られていたが、 そのシグナルはこれらの脂質を介し てPDK-l (3-phosphoinositide-dependent protein kinase-l)や PKBなどのキナーゼを 活性化しシグナルを伝達している。 PKB (protein kinase B; Akt、 Rac-protein kinase とも呼ばれる)はN-末端側にPH (pleckstrin homology) ドメイン、 c-末端側に酵素 触媒ドメインを有するセリン/スレオニンキナーゼであり1 3. 1 4)、 PI3Kの下流の エフェクターとしての機能が関心を集めている14)。 つまり、 インスリンやPDGF'

(platelet derived growth factor;血小板増殖因子)などの増殖因子刺激によりPI3K が活性化され、 産生されたPtdlns(3,4)P2、 Ptdlns(3,4,5)P3といった脂質が直接PKB のPHドメインに結合し、 その活性を制御する15)o PKBの活性化には、 このPH ドメインとPtdlns(3,4)P2、 Ptdlns(3,4,5)P3の結合のほかにも、 や はりPHドメインを 有し、 これらの脂質と結合するタンパク質キナーゼであるPDK-l による 308番目 のスレオニン残基と、 473番目のセリン残基のリン酸化が必要である1G)。 こうし て活性化されたPKBは、 様々な下流の分子をリン酸化することによって細胞の分 化や 細胞周期の制御、 抗アポトーシス作用、 グルコース取り込みなど、 多くの生理

的機能の調節にあずかる17. 1 8)。

マウス胎性腫蕩由来ATDC5細胞の軟骨細胞分化は、 インスリン/IGF-l (insulin li ke growth factor-l)刺激によって引き起こされる。 本研究では、 ATDC5細胞にお

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いてインスリン刺激によってPI3K /PKB情報伝達経路が活性化し、 軟骨細胞への 分化をつかさとごっているという仮説のもとで、研究を行った。 事実、 多くの細胞にお いてPtdlns(3,4,5)P3の産生が確認されており1 9)、 またウサギ肋軟骨を用いた実験 では チロシンホスファターゼ、の悶害剤であるパナジン酸が軟骨細胞の分化を促進 したという報告もされている2 0)。 インスリン刺激に伴うインスリン受容体基質

IRS-l (insulin 日ceptor substrate-l)のチロシン残基のリン酸化は、 PI3Kの活性化 には必タ頁2 1 )なのである。

ATDC5細胞は、 インスリン刺激に伴って、 Ptdlns(3,4,5)P3を産生し、 PKBのPH ドメインは、 刺激に伴って細胞膜付近へと局在することが確認された。 また、 PI3K の特異的な阻害剤であるwortmanninおよびLY294002を培地中に添加したところ、

インスリン存在下においても顕著にATDC5細胞の分化を抑制し、 この抑制は可逆 的であった。 さらに、 ATDC5細胞に様々なPKB変異遺伝子を導入したところ、 常 時活性型PKBがインスリン非存在下においても軟骨細胞への分化を誘導した。

以上の結果は、 いずれもインスリン刺激に応答して、 PI3K/PKB情報伝達経路が 活性化され、 その結果ATDC5細胞の分化を引き起こしているという仮説を支持す るものである。 ATDC5細胞は軟骨初期分化および最終分化のモデルとして汎用さ れている細胞であるが、 生体における軟骨分化にも、 このPI3K /PKB情報伝達経 路をはじめとするイノシトールリン脂質代謝が、 根幹となる役割を担っている可能 性が示唆されたり

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材料と方法

1 . 材料

軟骨前駆細胞株ATDC5は、 理研Cell Bank (Tsukuba, ]apan)より入手したο Dulbecco's modified Eagle's/Ham's F12等比混合培地(DME/F12)は、 Flow

Laboratories (Ivine, UK)より、ウシ胎児血清は、 Biowittaker (Walkersville, MI) より、 ヒトトランスフェリンは、 Boehringer Manheim (Manheim, Germany)より入 手した。 DuI becco' s mod ified Eagle' s培地(DMEM)、 セレン酸ナトリウム、コラゲ

ナーゼ、type I、 塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF)、ジメチルスルホキサイド (DMSO)、 wortmannin、 LY294002、 精製イノシトールリン脂質、 MOPSは、

Sigma (St. Louis, MO)より入手した。 ウシインスリン 、 アルシアンブルー 8GX 、ア スコルピン酸、チオシアン酸グアニジウム、ドデシル研し酸ナトリウム(SDS)、 核 酸抽出用フェノールは、 和光純薬(Osaka, ]apan)より、 αffilnlmum essential

medium (α-MEM)、 G418(Ge凹ticin)、トリ プシン-EDTA、 LipofectAMINE

reagentは、 GibcoBRL(Gaithersburg, MD)より入手した。 α_[32p]-dCTP (Specific radioactivity, 110 TBq/mmol)、[32p]正リン酸(Specific radioactivity, 10563.5 GBq/mg)、[3H]Ins(1.3,4,5)P4 (Specific radioactivity, 777 GBq/mmol)は、

DuPont-New England Nuclear (Boston, MA)より入手した。 シリカゲjレ60プレー トは、 MERCK (Darmstadt, Germany)より、 核酸転写用 ナイロンメンブレン

Hybond N+はAmersham Pharmacia Biotech (Uppsala, Sweden)より、オートラジオ グラフィーに用いるX線フィルム X-Omat filmは、 Kodak(Rochester, NY)より入 手した。 各種制限酵素 、 DNA修飾酵素は、 東洋紡(Osaka, ] ap an)より、 Taq DNA ポリメラーゼ、 DNAランダムプライムラベリン グキットは、 TaKaRa(Kyoto,] apan)

より、 DIGラベル RNA in vitro合成キット 、in situハイブリ夕、、イゼーションキット は、ニッポンジーン(Toyama, ]apan)より、 RT-PCRキットは、 Perkin Elmer

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(Branchburg, NJ)より入手した。抗PKBポリクローナル抗体は、 New England Biolabs Inc. (Beverly, MA)より、 アルカリホスファターゼ染色キットはPierce

(Rockford, IL)より、 プレステインド電気泳動用タンパク質分子量マーカ一、 ウエ スタン ・ ブロット解析用のpolyvinylidene difluoride (PVDF)膜はBio-Rad

(Hercules, CA)より入手した。 ヒトおよびラットイノシトールポリリン酸ホスフア ターゼ、cDNAは、 米国国立環境衛生研究所の StephenB. Shears 博士より、 ラット

ブロテインキナーゼ、B cDNAは、 神戸大学バイオシグナルセンター・吉川 潮教授 より供与されたものを使用した。

2. 細胞培養

軟骨前駆細胞株ATDC5細胞は、 DME/F12等比混合培地(5%ウシ胎児血清、

10μg/mlヒトトランスフエリン、 3X 10.8 Mセレン酸ナトリウムを含む)中で培養 した22 )。 軟骨分化誘導には、 6 X 104 cells/wellの細胞を6-multiwellプレート上に 播種し、 培地中に10μg/mlのウシインスリンを添加して培養した2 3・2 4 )。 以後培 地は3日毎に交換した。

3. ウサギ肋軟骨細胞初期継代培養

ウサギ肋軟骨細胞の初期継代培養は、 Shimomuraらの方法に準じ2 5)、 これを改

良することによって行った。オスの4週齢日本白ウサギ3匹をジエチルエーテル麻 酔下で、 胸部術野の剃毛・ 消毒後、 前頚部~中腹部にかけて切開し、 胸部肋骨を採 取した。個々の肋骨片に単離後、 軟組織を骨膜・軟骨膜とともに除去し、 肋骨/肋 軟骨移行部の成長軟骨を得た。 この成長軟骨組織をかまぼこ板上でメスによりミン スした(0 これらの過程は可能な限り無菌下で操作した。0. 1 %トリフシン-EDTA20

ml中で37 oc、 45分間処理したい次酵素処理)のち、 PBSにて3回洗浄、 さら に0.06 %コラゲナーゼtype I/DMEM (血清不合)12 mlにより37 oc、 2時間 45分処理した( 2次酵素処理)0 10 mlメスピペットで20回ビペッテイングし、

-9-

(17)

細胞をばらばらにするとと もに個々の細胞 に付着している基質を除去した後、 メッ シュのフィルターでj慮、過し、 得られた細胞を10 %血清添加 DMEMで3回洗浄し、

残存している酵素を完全に除去した。 さらに10 %血清添加αMEMで洗浄後、 細 胞数を5 X 10'i cells/ mlとなるように調製し、 basic FGFを0.4 ng/ml添加した後、

1 ml/wellずつ12 -multi wellプレートにt番手重した。 3日後、 basic FGFを1 ng/ml 分追加し、 6日後には50μg/mlアスコルビン酸を含む10 %血清添加α-MEMに

培地を交換し、 以後2日おきに同様の培地 に交換した。

4. Total RNAの抽出

ATDC5 細胞 およびウサギ肋軟骨初期継代培養細胞より、 必要に応じて AGPC法

2 6)にてtotal RNA を抽出した。 106 -.._ 107個の細胞を6Mチオシアン酸グアニジ ウム 溶液8 ml に懸濁した後、 ポリトロンホモジナイザーにて破砕した。 さらに6 Mチオシアン酸グアニジ ウムーSDS溶液 4 mlを加えてポリトロンホモジナイザーに

て破砕した。 この破砕液 に、 2M酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH 4.0) l.2 ml、 水飽 和フェノール12 ml、 クロロホルム / イソアミルアルコール溶液(v/v49:1) 3.6 mlを加え、 よく撹枠後、 氷上に20分間静置し、 4 ocにて20,000 g、 30分間遠心 した。 上層(水層)を注意深く別のチューブに移し、 等量のイソプロパノールを加

え、 軽く撹持した後にマイナス20 ocに一昼夜静置した。 その後、 この溶液を4 oc にて20,000 g、 30分間遠心し、 ペレットにクロロホルム飽和フェノール2 ml、 10

% SD S 10μ!、 トリス-E DTA緩衝液(pH7.4) (以後TE緩衝液) 2 mlを加え、 よ く撹祥後20,000 g、 10分間遠心した。 この上層(水層)を、 あらかじめ氷上で冷 やしておいた2M酢酸カリウム緩衝液(pH 5.2) 600 �l/ 1 00 %エタノール15 ml 中に加えた。 残った下層(フェノール層) にTE緩衝液2 mlを加え、 よく撹祥後 20,000 g、 10分間遠心、 上層を先程の酢酸カリウム緩衝液(pH 5.2) /100 %エ タノール溶液 に加え、 さらにこの操作をもう一度繰り返した。 マイナス20 ocに一 昼夜静置した後、 4 ocにて20,000 g、 30分間遠心し、 ペレットに70 %エタノー

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ル1 mlを加えた。 20,000 g、 10分間遠心し、 上清を捨て、 乾燥させた後、 500μl のTE緩衝液を加え、 RNAのペレットを完全に溶解させ、 lμiを50倍希釈して波 長2 60 nmの吸光度を測定し、 濃度を決定した。

5. ノーザン ・ハイブリダイゼーション解析

AGPC法により調製したtotal RNA 20同(4.5μlに希釈)を用いて、 これに10 X MOPS緩衝液2μl、 ホルムアルデヒド3.5μl、 ホjレムアミド10μlを加え全量を 20μ!とし、 65 ocで15分間加熱することにより変性させた。 4μl の6Xサンプル

バッファーを加えた後、 6%ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル、 MOPS 緩衝液中で電気泳動し、 さらに20X SSC溶液中でナイロンメンブレンHybond N十 に転写した。

ハイブリダイゼーションに用いる標識cDNAプローブは、 それぞ、れ

マウスtype II collagen forward: 5'-CACACTGGTAAGTGGGGCAAGACCG-3' マウスtype II collagen reverse: 5'-GGA ITGTGTIGTTTCAGGGITCGGG-3' マウスtypeX collagen forward: 5 '-CCTGG GTIAGATGGAAAA-3

マウスtype X collagen reverse: 5'-GGCATGITGCTAGGCACGAAG-3' マウスMIPP forward: 5'-GATCACCAGCTCCAAGCACC-3'

マウスMIPP reverse: 5'-TGTAAGCGGTCAGAGGCTCC-3' G3PDH forward: 5'-ACCACAGTCCATGCCATCAC-3'

G3PDH reverse: 5'-TCCACCACCCTGITGCTGTA-3'

をプライマーとしてPCR法 で増幅したフラグメントを鋳型とし、 α_[32p]-dCTPを用

いてランダ ム プライ ムラベリング法によって標識した。 ナイロンメンブレンと 標識 cDNAプローブを、 0.5 Mリン酸緩衝液(pH 7.2)、 7% SDS、 1 mM EDTAよりな

る緩衝液中で、 65 oc、 一昼夜ハイブリダイズし、 2X SSC溶液中、 65 oc、 2回、

0.2 X SSC 溶液中、 65 oc、 2回の洗浄を施した後、 オートラジオグラフィーにより 検出した。

-11・

(19)

6. アルシアンブルー染色およびその染色性の定量化

ATDC5細胞の軟骨細胞への分化を評価するため に、ア ル シアンブルー染色を行っ た。 培養 中の細胞の培地を除いた後、 PBSで2度洗浄し、95 %メタノールで20分 間固定、 0.1 %アルシアンブルー8GX/0.1 M塩酸 溶液を加え一昼夜静置した。 そ

の後、 PBSで3度洗浄し、 6Mグアニジン塩酸溶液500μlを加え2時間静置し、

染色された軟骨結節を融解させ、この色素抽出液を回収・遠心した上清 を マイクロ プレートリーダーにて波長655nmの吸光度 を測定した。

7. イノシ卜ールポリリン酸ホスファターゼ活性測定

ATDC 5細胞およびウサギ肋軟骨初期継代培養細胞より調製した細胞抽出液を用 いて、MIPPの[3H]Ins(1,3,4,5)P 4を基質とした3-phosphatase酵素活性を測定する実 験を行った。 各培養時期の細胞を回収し、10 mM Tris-HC1 ( pH 7.5)、0 .9 % NaC1、

0.1 % Triton X-100より成る緩衝液に懸濁し(6-multiwell plate 1 well当たり40 0 μ1)、氷冷し ながらポリトロンホモジナイザー にて破砕した。13,000 g、20分、4

℃で遠心して得た上清である粗抽出液を用いて実験 に供した。 酵素反応は、細胞抽 出液中のタンパク質25μg を 200μl の100 mM KCl、25 mM Hepes ( pH7.4)、l mM EDTA、[3H]Ins(1. 3,4, 5)P '1よりなる緩衝液中で37oc、5分間行わせ、等量 の10

%トリクロロ酢酸を加えることによって 反応を停止させた。 さらに5 %トリクロロ 酢酸 を加えて全量を1 mlとして13,000 gで5分間 遠心し、上清を 3回ジエチル エーテjレ抽出して洗浄した。 こうして得 られた溶液を、 HPLCシステムにマウント した陰イオン交換カラムにアプライし、Flo-On eßシステム(Packard,Merid en, CT) により[3Hl放射活性を検出し、[3H]Ins(1,4,5)P3に代謝された割合を測定した。

8. in situハイブリダイゼーション解析

6日齢ラット腔骨骨端成長軟骨 を用いて、MIPPmRNA発現を調べるためにln situハイブリダイゼーション解析を行った。 RNAプロープとして、 2種の鋳型

(20)

cDNA コンストラクトを作製した。 一つは、 ラットMIPP の3'-NTS (3'-非翻訳配列:

3'-non-translates sequence)領域を主とするもので、 5peI - ApaIフラグメント

(730bp : nt 1302-2031)をpBluescript II SK-にサブクローンした。 もう一つは、

選択的スブライシングによってその領域を欠如するmRNAが存在する領域で、

5'-TAATCGCGGATCCACπ'AA廿CAGGTAGCCI 1 1 1 1 C-3' (Forward)、

5'-TAAGATA口CGAGCTITGC廿CTG口CAACTGC-3'(Reverse)をプライマーとし

てPCR法により増幅したラットMIPP のBamHI - XhoIフラグメント(232bp : nt 698・929)をpBluescript II SK-にサブクローンした。 ジゴキシゲニン標識センス ・

アンチセンス RNAプロープを、 それぞれT3 . T7 RNAポリメラーゼにより合成し た。in situハイブリダイゼーション解析は、 Kukitaら27) の方法に準じて行った。

9. MIPP発現コンストラクト構築およびATDC5細胞への形質転換

MIPP 過剰発現ATDC5細胞樹立のための発現コンストラクトは、 開始メチオニ ンコドンを含むヒト型MIPP cDNA の5maI・HindIIIフラグメントを、 まず

pB l uescript II SK- のHincII-HindIII サイトにサプクローンし、 さらにXhoI-NotIフラ グメントを切り出して晴乳動物細胞発現ベクターBCMGSNeoにサブクローンして 構築した。 このBCMGSNeoベクターは、 ウシパピローマウイルスゲノムの69 %、

サイトメガロウイルス(CMV)由来の転写プロモーター配列、 poly (A) tail付加シ グナルおよびアンピシリン/ネオマイシン耐性遺伝子を含み、 晴乳動物細胞中で複 製され、 挿入遺伝子発現を誘導できる発現ベクターである2 8)。 完成したプラスミ

ドの構造は制限酵素地図を作製して確認した。 このMIPP /BCMGSN eoプラスミドを、

6-multiwellプレートに播種し80 % コンフルエントとなったATDC5細胞に形質転 換した。 リポソーム(LipofectAMINE reagent) 60μ!とプラスミド(20μ1)の混合

液を、 室温で15分間静置し、 これを添加した血清不合培地中でまず培養した。 6 時間後、 5 %血清添加培地を加え、 さらに24時間後には、 0.4 mg/ml の G418 を

含む5 %血清添加培地に完全に交換した。 7日後に、 G418 により選択されて残つ

-13 -

(21)

たシングルコロニーをピックアップし、 以後これを継代することによってMIPP過 剰発現ATDC5細胞株を樹立した。 MIPPの発現は、 RT-PCR解析と酵素活性の測 定により確認した。

1 O. RT - PCR解析

G418 により選択されたシングルコロニーをピックアップし、 継代したATDC5

細胞の亜株について、 AGPC法によりtotalRNAを抽出し、 このうちl同を用い てRT-PCR解析を行った。 ヒト型MIPPm RNAを探知するためのプライマーとして、

日ATCACCAGπCCAAGCACC-3'(forward)、 5'-TGT ACGCTG廿AGGGG廿CC-3'

(reverse)を用いた。

1 1 . リン脂質標識、 抽出、 およびその解析

リン脂質の抽出および解析は、 Bil1ahら2 9)の方法に準じて、 これを改良するこ とにより11-った。 ATDC5細月包を、 30 mM Hepes/HCl (pH7.4)、 110 mM Na Cl、 10

mM KCl、 1 mM MgC12、 10 mM グルコースよりなる緩衝液(以後 緩衝液A)にて 2度洗浄した後、 緩衝液A中の[32PI正リン酸(125μ Ci/ml)で、 37 oc、 3 時間標 識した。 細胞に取り込まれなかった[32P1正リン酸を、 緩衝液Aで3回洗浄するこ とにより除いた後、 前処理として10μM wo山nannln で10分間処理したものと、

対照としてDMSOを加えたものを用意した。 これらの細胞を、 10μg/ml のインス リンで、 種々の時間刺激した。 刺激後、 10 %トリクロロ酢酸を加えることによっ て反応を停止すると同時に細胞を破砕し、 15分間氷上で冷却することによって脂質 とタンパク質画分の沈殿を促した。 細胞をスクレイパーではぎ取り、回収した後、

13,000 gで5分間遠心し、 さらにペレットを5 %トリクロロ酢酸11 mM EDTAで 洗浄した。 このベレットに、 酸化防止剤BHT (0.63 mg/ml)と非標識担体としての イノシトールリン脂質(10 flg/ml)を含むクロロホルム/メタノール/塩酸

(40:80:1 v/v/v) 0.75 ml を加えて20分間放置することによって、 リン脂質画分

(22)

を抽出した。 これに0.25 mlのクロロホルムと0.45 mlの塩酸を加えることにより クロロホルム層と水層とに分離し、 13,000 gで1 分間遠心してクロロホルム層 (下層)を回収した。 この溶液を完全に乾燥させ、 抽出されたリン脂質を50μ!の メタノール/クロロホルム(1:5 v/v)に溶解させて、 シュウ酸カリウム溶液で前処 理、 110 ocで15 分間乾燥させておいたシリカゲル60 プレートにスポットし、 薄 層クロマトグラフィータンク中で、 クロロホルム/メタノール/アセトン/酢酸/水 (7:5:2:2:2 v/v/v/v/v)より成る溶媒によって展開した。 展開後、 プレートを乾燥 させ、 標識されたリン脂質をオートラジオグラフィーによって検出した。

1 2. 各種PKB発現コンストラクト構築およびATDC5細胞への形質転換 PKBαPHドメイン( ラットPKBα: nt 1-363)のGFP融合タンパク発現ベクター は、 5'-T AA TCGCCTCGAGGCA TGAACGACGTAGCCA ITGTG-3' (forward)、

5'・TAAGATAGAA廿CAATCAGCCACAGT口GAATGGC-3' (reverse)をプライマーと

して用い増幅させたcDNAフラグメントをEcoRI、 XhoI で切断し、 phGFP105C1 ベクターにサブクローンして構築した。 完成したプラスミドの構造は制限酵素地図 を作製して確認した。 この phGFP105C1 /PKBαPHプラスミドを、 リボソーム法

(LipofectAM INE reagent)を利用して形質転換した。 その6 時間後、 5%血清添加 培地を加え、 12時間後には5%血清添加培地に完全に交換した。 さらに24時間 培養し、 一時過剰発現状態にある未聞包を実験に供した。10同Imlのインスリンで種々 の時間刺激し、 4%パラホルムアルデヒドで固定した後、 共焦点レーザー蛍光顕微 鏡にて観察した。 必要に応じて細胞は10μM wortma nninで前処理した。

また、 Src由来のミリストイレーション ・ シグナル配列をN-末端に付加した常時 活性型PKBα30)(mry- PKB)と、 酵素活性中心に点変異(K179M)を導入したも の(mry-K N -PKB)は、 PCR法を利用してKitamura ら3 1)の方法に準じて作製したコ

これらのcDNAを、 晴乳動物細胞発現ベクターpcDL-SRM3 2)にサブクローンし、

完成したプラスミドの構造は制限酵素地図を作製して確認した。 これらのプラス ミ

-1 5-

(23)

ド20μgと、 ネオマイシン耐性遺伝子を含むBCMGSNeoベクター4μgを、

ATDC5細胞に形質転換した。 対数増殖期にあるATDC5細胞をトリブシン処理し、

血清不合培地中に107 cells/mlとなるように懸濁した。 このうちの400μ!とプラ スミド溶液を混合して5分間氷上にて冷却したのち、 キュベットに移して、 Electro Square Portel・(BTX, ECM2001)により200 V, 9 msecの条件のエレクトロポレー ションにより形質転換を行った。 細胞は、 あらかじめ37 ocに温めておいた5 %血 清添加培地6ml中に懸濁し、 6・multiwellプレートに3 mlずつ播種した。 12時間

後、 それぞれのウエルを10μg/mlのインスリンを含む培地と含まない培地とに交 換し、 さらに培地には0.4 mg/mlのG418を添加した。 以後、 培地は3日毎に交 換し、 24日後、 アルシアンブルー染色を施して観察した。

1 3. PKBおよびその変異分子のウエスタン ・ ブロット解析

各PKB変異遺伝子を含むプラスミドを形質転換したATDC5細胞に、 目的タン パク質の発現が誘導されているかを確認するため、 細胞抽出液を調製し、 ウエスタ ン ・ プロット解析を行った。 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、

PVDF膜に転写した。 膜は5 % (w/v)脱脂粉乳溶液でブロッキング後、 抗PKBポリ クローナル抗体で1時間インキュベートし、 結合した抗体をピオチン化したロバ抗 ウサギIgG抗体およびアピジンーピオチン複合体キットを用いてアルカリホスフア

(24)

結果

<第1部>

軟骨細胞分化とイノシトールリン酸代謝との関係に関する研究

1.

MIPP遺伝子発現のin situハイブリダイゼーション解析

HiPER1のmRNA は、 増殖軟骨細胞層と肥大軟骨細胞層との境界に強く発現する と報告されている8, 9)。 アミノ酸配列上、MIPPがこのHiPER1 と高い相同性を有 している1 0)が(図1)、 両者が機能的にも 類似しているかを探るため、 6日齢、ラッ

トの腔骨骨端成長軟骨を用いて、 in situハイブリダイゼーション解析によりMIPP mRNAの発現 を調べる実験を行った。 図2 に示すように成長軟骨においては、 静止 軟骨細胞層(図2R: Resti ng chondrocytes)、 成長軟骨細胞層(図2 P: P roliferating

chondrocytes)、 肥大軟骨細胞層(図2 H: Hypertrophi c chondrocytes)を形態的に 区別するこ とができる。MIPPmRNAの発現 に関して、MIPPmRNAのセンスRNA プロープを用いたもの(図2A、 B)と比較して、 アンチセンスRNAプロープを用

いると 、 増殖軟骨細胞層から肥大軟骨細胞層にかけて、 強い発現のシグナルが観察 できた1 0) (図2 C、 D)。 これはHiPERl遺伝子 で示されていた結果と同様 であ

り、 両遺伝子の機能的な類似性を強く示唆するものであった1 0)。 図2 には、 ラッ トMIPPの3'-NTS(3'-非翻訳配列: 3人non-translates sequence)領域を主とする

(73 0bp: nt 1302-2031) RNAプローブを用いたものを示しているが、 選択的スプ ライシングによってその領域を欠如するmRNAが存在する領域(232bp: nt

698・929)をRNAプローブとして用いた場合も同様の結果であった(図には示し ていない)。

これは、 まずはじめにHiPER1 とMIPP との機能的な類似性を、 強く示唆するも

-17-

(25)

hM工PP rM工PP HiPER1 hM工PP rM工PP HiPER1 hMIPP rM工PP HiPER1 hM工PP rMIPP 日エPER1 hM工PP rM工PP HiPER1 hM工PP rM工PP HiPER1 hM工PP rM工PP HiPER1 hM工PP rM工PP HiPER1 hMIPP rM工PP HiPER1 hM工PP rMIPP HiPER1

1 MLRAPGCLLRTSV瓦PAλALAAALLSSLARCSLLEPRDPVASSDSPYFGTK

1 'MLRGARSHLSA$VALÄAVLA.AÄLLS$FAR_C$.LPGRGDl?VA$v:r,SP,:YFGTK

1 MAPCR... ..AACLLPLLVAVASAGLG. . . . . . GYFGTK 51 TRYE DVNPVLLS GPEA . . PWRDPELLEG虫CTPVQDV五LエR日G�RY�'lW�Q 51 T附$py�.gW;tp'GPr::V.A,.. ?IWPP.Ex"t.AGWG:TgYQl;NMl:Rß.G除問T:,r�Q 29 S:RYEE湖�Ht.AEÖ�LSLGP.HAAAARtPAAÇA�LQU隠れ尽母Ç;'rRY:PW.AGQ

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図1 MIPPとHiPERlのアミノ酸配列比較

(26)

のであった。 事実、 以後MIPPとHiPERl (Minppと改名) はラット型とニワトリ 型のホモログであると考えられるようになり、 遺伝子欠失マウスを用いた解析など が進められている1 1)。

A

R P H

図2 G日齢ラット腔骨骨端成長軟骨におけるMIPP mRNA発現のin si tuハイ ブリダイゼーション解析 A, B:センスRNAプロープ、 C,D アンチセンス RNAプロープを使用した。 円:静止軟骨細胞層(Resting chondrocytes)、 P:増 殖軟骨細胞層(Proliferating chondrocytes)、 H:肥大軟骨細胞層(Hypertrophic

chondrocytes) 0 B、 Dは強拡大。

(27)

ATDC5細胞を用いたノーザン ・ハイブリダイゼーション解析 2.

マウス胎性腫蕩由来細胞株AT805より、 軟骨前駆細胞としての 性質を保持している細胞としてクローニングされた細胞ネ朱である22)0 10μg/mlの

ATDC5細胞は、

A

day 15 day 10

day 5

day 30 day 25

day 20

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

εcωωωωOC何心」Oω心〈

B

0.0

20 30 10

days

ATDC5細胞の軟骨結節形成

A : ATDC5細胞を10μg/rnlのインスリン存在下で、6・rnulti wellプレート中で 培養した。 軟骨結節は、0.1 %のアルシアンブルー8GXで染色した。 B:この 染色された軟骨結節を6Mグアニジン塩酸で抽出し、 655 nmの吸光度を測定

図3

することにより染色性を定量した。 インスリン添加(・)無添加(0)

(28)

インスリン存在下で培養すると、 高率に軟骨分化が誘導されるo ATDC5細胞は、

通常の継代時には線維芽細胞様の形態を呈して旺盛に増殖するが、 コンフルエント に達すると接触阻害により増殖を停止する。 しかし、 インスリン存在下で培養する と、 コンフルエント後に特有の細胞凝集領域が出現し、 この領域から軟骨細胞が出 現して、 ついには培養血全面にアルシアンブルーにより染色される多数の軟骨結節 が形成されるようになる(図3) 0 ATDC5は通常の継代時にはI型コラーゲン遺

A type 11 collagen mRNA

o 5 1 0 1 5 20 25 30 days

B type X collagen mRNA

o 5 1 0 15 20 25 30 days

図4 軟骨細胞分化マーカー遺伝子発現のノーザン ・ ハイブリダイゼーション 解析 10同/m1のインスリンを添加して培養した細胞より抽出したtota1 RNA 20μgを用いて 、lype IIコラーゲンmRNA (A)と、type XコラーゲンmRNA (8)の発現を解析した。 検出した各バンドの太さを相対的に数値化したもの をグラフとして示している。

- 21・

(29)

伝子を発現しており、II型コラーゲン遺伝子は発現していない(図4A)。 しかし 軟骨結節の形成と平行して、 軟骨細胞マーカー遺伝子の一つであるII型コラーゲン 遺伝子の発現が認められ(図4A)、 さらに肥大軟骨細胞へと分化してX型コラー ゲンを発現するようになり(図4 B)、 ついには石灰化する。 すなわち、ATDC5 細胞によって骨形成においてみられる軟骨分化の全ての段階をシミュレートするこ とができるモデルとして有効で、ある23. 2 4 )。 このATDC5細胞を利用して、 MIPP

遺伝子発現をノーザン ・ ハイブリダイゼーション解析により検討した。 ATDC5細 胞を、10μg/mlのインスリン存在下で6-multiwellプレートで培養し、培養後O、

5、 1 0、 1 5、 2 0、 2 5、 3 0日においてAGPC法によりtotalRNAを抽出し た。 このうち20μgを1 %アガロースゲルで、電気泳動することにより分離し、 核 酸転写用メンブレンに転写した。 このメンブレンを、 ランダムプライムラベリング 法により[32P1標識した各cDNAプロープとハイブリダイズし、 X線フィルムに露

光して放射活性を検出した。 検出した各バンドの太さを相対的に数値化したものを グラフとして示している。

分化マーカー遺伝子の発現解析により、 細胞外マトリックスを構成するtype IIコ

ラーゲン遺伝子の発現が見られ始める培養後10日目から増殖細胞層に相当する分 化段階にあり(図4A)、 肥大軟骨細胞に特徴的であるtypeXコラーゲン遺伝子の 発現が見られ始める培養後15日目から肥大細胞層に相当する段階へ分化すると考 えることができる(図4 B)。

刻5Aに示すのはMIPP遺伝子の発現であるが、 この増殖細胞層から肥大細胞層 への境界に相当すると考えられる培養後10---15日に、 その発現が上昇し、 以後次 第に低下していくことが明らかとなった。 同様の実験を、 インスリン刺激のない条 件で培養した細胞で行うと、 その変化は認められなかった(図5B)。 向時に、 図 5Aで使用したメンプレンと同じものを用いて、 ハウスキーピング遺伝子である

G3PDH遺伝子の発現を解析し、 発現量に差がないことで各レーンには等量のRNA が泳動されていることを確認した(図5C)。

(30)

A MIPPmRNA

【- 二エコ

o 5 1 0 15 20 25 30

days

B MIPPmRNA

C

【一一二:ιて:てJ

o 5 1 0 1 5 20 25 30

days

G3PDHmRNA

園町・・恒国喧F 園哩ー哩園圃園田�可F 可・F�ー-二二7 司-ー占一一環éliI 可・-

i �"-L "金_...ーーIII!I!III!'!'Iトー-金b一一--

o 5 1 0 1 5 20 25 30 days

図5 ATDC5細胞でのMIPP mRNA発現のノーザン ・ ハイブリダイゼーショ ン解析 A: 10同1m!インスリン添加、B無添加で培養した細胞より抽出し たtota! RNA 20μgを用いてMIPP mRNA発現を解析した。C:Aと同じメンブ レンを用いたG3PDH mRNA発現の解析。 検出した各バンドの太さを相対的に 数値化したものをグラフとして示している。

- 2 3-

(31)

ATDC5細胞を用いたMIPP酵素活性の測定

3.

ATDC5細胞が増殖細胞層から肥大細胞層への境界に相当する分化段階でMIPP 遺伝子の発現が上昇することが明らかとなったので、 実際に機能する形としての酵 素活性についても検討する実験を行った。 各培養日数が経過したATDC5細胞より 25μgを用いて、[3Hllns(1,3.4,5)P4を基質と 得た細胞抽出液中のタンパク質のうち、

によりイ (SAX-HPLC)

して反応させ、 強陰イオン交換カラムクロマトグラフイー

Flo-One ßシステムで[3Hl放射活性を測定し、

ノシトールリン酸を分離して、

[3HlIns(1.4,5)P 3に代謝された割合を算出することによってMIPP酵素活性を測定し た。 その結果、 遺伝子発現と同様に、 培養10日目で活性の上昇がピークとなり、

(図6)。

以後次第に低下していくことが明らかとなった

80

60

40

20

忘三一O」玄工式

30 25

20 15

5 10

days

ATDC5細胞のMIPP酵素活性(3-phosphatase活性)の測定 図6

ATDC5細胞の粗抽出液25μgを]3H]Ins(l,3 ,4,5)P 4とインキュベートした後、

SAX-HPLC でイノシトールリン酸を分離、 Flo-0neßシステムで]3H1放射活性 を測定し、]3H]Ins(l,4 ,5)P 3に代謝された割合を算出した。 10μg/mlのインスリ ン添加(圃)、 無添加(口)での培養。 3回の実験の平均値と標準偏差を示し

ている。

(32)

4. ウサギ肋軟骨成長軟骨初期継代培養細胞を用いた実験

ATDC5細胞では、 増殖細胞層から肥大細胞層の境界に相当する分化段階でMIPP

遺伝子の発現、 酵素活性がともに上昇することが明らかとなった。 ATDC5細胞は 優れた軟骨細胞分化の再現モデルであるが、 同様の実験を、 ウサギ肋軟骨成長軟骨 初期継代培養細胞を用いても行った(1 ATDC5細胞とは異なり、 初期継代培養細胞 は成長軟骨を用いているため、 培養を始めた当初からそのほとんど全ての細胞が増 殖軟骨細胞である(残りは肥大軟骨細胞) 0 Shimomuraらの方法により培養経過と ともに肥大軟骨細胞へと分化するが2 5)、 この過程が順調に進んでいるかどうかを、

type Xコラーゲン遺伝子発現のノーザン ・ ハイブリダイゼーション解析によって確 認した(図7) 'j cDNAプロープとしては、 マウスのtype Xコラーゲン ・ フローブ で、 ウサギmRNAに対しても交差することを事前に確認しておいたので、 マウスの ものを用いてハイブリダイゼ、{ションを行った。 理想的な結果と比較すると、 多少 のばらつきはあるものの、 脱分化もみられず、 実験に使用するには十分満足のいく 標品であると考えられた。

type X collagen mRNA

11 15 19 23 27 31 35 days

図7 ウサギ肋軟骨成長軟骨初期継代培養細胞のtype Xコラーゲン遺伝子発 現ノーザ、ン ・ ハイブリダイゼーション解析 検出した各バンドの太さを相対的 に数値化したものをグラフとして示している。

(33)

ATDC5 マウスのMIPP cDNAフローフ MIPPの遺伝子発現と酵素活性について、

この初期継代培養細胞を用いて、

マウスのプロープ 細胞と同様の方法で調べる実験を行った。 やはり、

でウサギmRNAに対しでも交差することを事前に確認したので、

MIPP遺伝子発

現・酵素活性ともに、 培養当初をピークとして、 肥大軟骨細胞へと分化していくに を用いてノーザン ・ ハイブリダイゼーションを行った。 その結果、

これらは、 基本的には (図8)。

つれて次第に低下していくことが明らかとなった ATDC5細胞で得られた結果と同様であった。

MIPPmRNA A

35 31 27 23 19 15 11 7

days

40 30 20 10

ちω三一O」℃EJ小

B

31 27

23 19

days 11 15

7

ウサギ肋軟骨成長軟骨初期継代培養細胞を用いたMIPP遺伝子発現およ 図8

Ä: MIPP遺伝子発現のノーザン ・ ハイブリダイゼーション びMIPP酵素活性

解析。検出した各バンドの太さを相対的に数値化したものをグラフとして示し ている。 B: MIPPの酵素活性(3-phosphatase活性)の測定。

(34)

MIPPを過剰発現

MIPP過剰発現ATDC5細胞の樹立とその解析

5.

さらにMIPP機能の生理的意義について明らかにするために、

するATDC5細胞株の樹立を試みた。

N-末端に小胞体輸送経路に選別されるシグナ MIPP分子はそのアミノ酸配列上、

(図1 ) した (SDEL) をもつ

c-末端にノj寸包イ本リテンションシグナル jレ配列と、

ニワトリ型ホモ がって生理的には小胞体中でその機能を発揮していると予想され、

ログであるHiPERlについては小胞体への局在化が確認されている9 )。 つまり、

ATDC5細胞に発現を誘導する際には全長のcDNAを利用し、 小胞体への選別を促 さなくてはならない。 そこで、 全長が得られているヒト型のMIPPcDNA 10)

(以

を、 挿入cDNA由来の開始コドンによってタンパク質として翻訳する 後、 hMIPP)

ことができる晴乳動物細胞発現ベクターBCMGSNeoにサブクローンし、 発現コン ストラクトを構築してATDC5細胞に形質転換した。

50 40 30 20 10

ちωω弘一O」ちE4r

B

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ーhMIPP

A

WT M4 M7

M2 M3 MIPP過剰発現ATDC5細胞亜株の解析

図9

B: MIPP酵素活性(3 -phosphatase活性)の測定。 3回の実験 Ä: RT-PCR解オ庁

の平均値と標準偏差を示している。WT:野生型ATDC5細胞

のうち、 継 であった。

G418によって選別しピックアップした7クローンの亜株, (Ml---7) M7) M3、 M4、 M6、

(Ml 、 M2、

ー27-

代;に両tえて株イtできたのは6 クローン

(35)

RT-PCR法によってhMIPPmRNAの発 これらの細胞株からtotal RNAを抽出し、

M7)においてその発現を確認 M4、

(M2、 M3、

現を解析したところ、 4クローン

このPCRに用いたプライマーはhMIPPを検出する (図9A)。

することができた

の内在性 ために設計されたものであるため、 野生型のATDC5細胞(マウス由来)

これら4クローンすべての細胞

。 残念ながら、

(図9A) のMIPPは増幅されない

株について抗ラットMI PPポリクローナル抗体を用いたウエスタン ・ プロット解析 MIPP酵素活性の測 では過剰発現を確認できなかったため、 細胞抽出液を調製し、

のみで活性の増加が認められ、 残りの (M2)

lクローン 定により解析したところ、

(図9 B)。

3クローンは擬陽性であることが判明した

この細胞株M2 を用いて、 その軟骨細胞への分化能について検討した。軟骨結節 M2細胞株は分 のアルシアンブルー染色による染色性の定量化により評価したが、

(図10)。

化能が著しく低下していることが分かつた

0.6

0.4

0.2

0.0 0 0.3 0.5

0.1

ECωωωωOC何心」Oω心〈

30 20

10

days

M2細胞株の分化能の検討

M2細胞株を10 �g/mlインスリン添加のもとで培養し(・)、 アルシアンブ ルー染色性を定量することにより分化能を検討した。 野生型ATDC5細胞の

図10

10 �g/mlインスリン添加(・)、 無添加(0)での培養による染色性。 3回

の実験の平均値を示している。

(36)

最近になって、MIPP遺伝子欠失マウスが作製された1 1)が、 その解析によると、

このMIPP遺伝子欠失マウスでは細胞中のInsP5、InsP6といったMIPPの基質とな るイノシトールリン酸量の増加が認められるものの、 生命活動に支障はなく、 内軟 骨性骨形成においても顕著な変化はみられなかった。 しかし、 このマウス由来の細 胞に、 N-末端のシグナル配列を欠く、 つまり本来の生理的な機能発揮の場である小 胞体ではなく、 細胞質中にMIPPタンパク質の発現を誘導したところ、 正常な細胞 増殖がみられないことが明らかとなった11)。 図10に示すMIPP過剰発現ATDC5 細胞の分化能の低下は、 このようなMIPP遺伝子欠失マウスによって得られた知見 と関連している可能性が考えられる。

(37)

<第2部>

軟骨前駆細胞株ATDC5の分化におけるイノシトールリン脂質 代謝とPI3K/PKB情報伝達経路に関する研究

1. Ptdlns(3,4,5)P3の産生

ATDC5細胞は、 マウス胎性腫蕩由来クローン化細胞株AT805より、 さらに軟骨

前駆細胞としての性質を保持している細胞としてクローニングされた細胞株である 22) 0 10μg/mlのインスリン存在下で培養すると、 非常に高い効率で軟骨分化が誘 導されるのみならず、 軟骨前駆細胞としての性質を極めてよく保持しており、 軟骨 細胞初期分化過程および歌骨細胞としての最終分化過程全てをシミュレートできる

モデルとして有効である23,24)O

ATDC5細胞の分化は、 培地へのインスリン添加によって誘導される訳であるが、

まず、 このインスリン刺激によってPI3Kが活性化され、 その結果Ptdlns(3.4,5)P3

が産生されているかどうかを、 標識リン脂質の薄層クロマトグラフイー解析により 検討した。

ATDC5細胞を[32P1正リン酸で標識し、 インスリンで刺激後、 細胞よりリン脂質 画分を調製し、 薄層クロマトグラフィーによって展開し、 オートラジオグラフィー により検出した。 その結果、 インスリン刺激後2.5分以内にPtdlns(3.4,5)P3が産生 されることが 認められた(図11 )υ さらにこの産生は一過性のもので はなく、 持続

的に行われていることも明らかとなった。

また、 ATDC5細胞をPI3Kの阻害剤であるwortmanninで前処理すると(10μM、

10分間)、 このPtdlns(3,4,5)P3の産生が間害されることも認められた(図11)

(38)

PI時 PIP ..

PI尾崎

PI円時

Orl・砂

time 0

(min) 2.5 5 10 wortmannin 2.5 (10μM)

図11 インスリン刺激に伴うPtdlns(3.4.5)P 3の産生

132PI正リン酸(125μCi/ml)で3時間標識した細胞を、 図のような時間イン スリンで刺激した。 抽出した標識リン脂質画分を薄層クロマトグラフィーで 展開し、 オートラジオグラフィーで検出した。 Ptdlns(3,4,5)P 3の位置は、 同一 の薄層クロマトグラフィープレートにて事前に確認しておいた。

- 3 1-

参照

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