PI尾崎
PI円時
Orl・砂
time 0
(min) 2.5 5 10 wortmannin 2.5 (10μM)
図11 インスリン刺激に伴うPtdlns(3.4.5)P 3の産生
132PI正リン酸(125μCi/ml)で3時間標識した細胞を、 図のような時間イン スリンで刺激した。 抽出した標識リン脂質画分を薄層クロマトグラフィーで 展開し、 オートラジオグラフィーで検出した。 Ptdlns(3,4,5)P 3の位置は、 同一 の薄層クロマトグラフィープレートにて事前に確認しておいた。
- 3
1-2. PHドメインの細胞膜への局在化
Ptdlns(3,4,5)P3の産生によって、 PKBにそのシグナルが伝わっているかを検討す るため、 GFP融合蛋白としてPKBαのPHドメイン[GFP-PH(PKBα)Jの発現を
ATDC5細胞に誘導し、 その局在を観察した。 GFPタンパクのみと、 GFP-PH(PKBα)
phGFP empty vector
stimulated for 5min
stimulated for 15min (10μM wortmannin)
non-stimulated
stimulated for 15min
図12 GFP-PH(PKBα)のインスリン刺激による細胞膜への局在
A:GFPタンパクのみの発現 B-E: GFP-PH(PKBα)の発現をATDC5細胞に誘 導した。 8:インスリン無添加、 C、 D: 10μg/mlインスリンで時間刺激したo E: 10μM、 10分間のwortmannin前処理を施した。
をコードする遺伝子を含むプラスミドをリボソーム(LipfectAM INE reagent )によっ てATDC5細胞に形質転換し、 一時的過剰発現状態にある細胞を蛍光共焦点レーザー 顕微鏡により観察したっ
その結果、 無刺激時にはGFPのみの場合と同様、 GFP-PH(PKBα)は細胞質中に一 様に存在していたのに対し(図12A、 B)、 インスリンで刺激された細胞では、
GFP-PH(PKBα)が細胞膜付近へと局在している現象が観察された(図12C、 D)。
Ptdlns(3,4,5)P3 の産生と同様に、 細胞をwortmannin で前処理しておくと、 その局在 化は阻害された(図12 E)。
この実験により観察された現象は、 細胞に内在している PKBタンパクの局在を 直接的に調べて得たものではなく、 外来プラスミドの形質転換によって一 時的に過 剰発現しているタンパク質について観察したものである。 したがって、 得られる解 釈も間接的なものではある。 しかしながら、 インスリン刺激に伴う Pl 3Kの活性化 により産生された Ptdlns(3,4,5)P3に、 PKBの PHドメインが直接結合して細胞膜付 近へ局在化するという、 PI3K/PKB情報伝達経路の活性化機序が、 ATDC5細胞で も動いている証拠の一端を示唆するものであるといえよう。
3. PI3K阻害剤添加による効果の検討
インスリン刺激に伴う、 Ptdlns(3,4,5)P3の産生と、 GFP-PH(PKBα)の細胞膜付近へ の局在化が、 い ずれもwortmannin の添加によって阻害され ることが明らかとなっ た(図11、 12E)。 そこで、 wortmannin、 LY2940 02といった PI3K問害剤を培 地中に添加し、 PI3K/PKB情報伝達経路を遮断することによって、 ATDC5細胞の 軟骨細胞分化能が受ける影響について検討した。
アルシアンブルー染色による軟骨結節形成の定量化により評価したが、 その結果、
図1 3に示すように、 1 0μM の濃度で添加すると、 いずれの阻害剤でもほぼ完全に 分化を抑制する ことが明らかとなった。 0.1μM、 lμMの濃度では、 分化能に影響 がないことも同時に明らかとなった(図には示していない )。
-33-1.0
A
0.8
0.6
0.4
0.2
(εcωωω)ωOC何心」Oω心〈
30 10 20
。 0.0
days
1.0
B
0.8
0.6
0.4
0.2 (ECωωω)ωOC何心」Oω心〈
0.0
30 20
。 10
days
PI3K阻害剤によるATDC5細胞の軟骨分化能の抑制
ATDC5細胞を、 培地にwortmannin(A)、 LY294002(8)を10μMの濃度 で添加した(・)。細胞をアルシアンブルー8GXで染色し、 染色された軟骨 結節を6Mグアニジン塩酸で抽出し、 波長655 nmの吸光度を測定すること 図13
1.0
D ,
ロロ
ロ
A
0.8
0.6
0.4
0.2
(ECωωω)ωOC何(ゼOω心〈
0.0
30 10 20
。
days 1.0
ρ , , , , ロ
B
0.8
0.6
0.4
0.2
(ECUωω)ωOC何(ゼOω心〈
0.0
20 30 days
。 10
PI3K阻害斉IJ効果の可逆性について 図14
-非存在下(破線) で
ATDC5細胞を、 10μg/mlのインスリン存在下(実線)
を添加して培
養している期間を(・)、 対照としてDMSOのみを添加した期間を(0) で 示す。 いずれも3回の実験の平均値を示している。
およびLY294002 (8)
- 35-培養した。 10μMのwortmannin (A)
4. PI3K阻害剤効果の可逆性についての検討
両阻害剤の1C50値は、 in vitroでのPI3K活性測定により報告されているところ によると、 wortmanninで100---200 nM、 LY294002で1--5μMである3 3)。
今回の実験の結果得られた有効濃度の10μMは、 この報告と比較すると高い濃度 である。 そこで、 両阻害剤が高い濃度のために非特異的に細胞に毒性を与えている 可能性が考えられたため、 軟骨細胞分化能抑制効果の可逆性について検討した。
30日間の培養期間のうち、 前半の15日間は阻害斉IJを添加し、 後半の15日間は 阻害剤を添加しない実験と、 逆に前半の15日間は阻害剤を添加せず、 後半の15 日間は阻害剤を添加するという実験を行った。 図14に示すように、 いずれの阻害 剤においても阻害剤を添加した期間では分化が抑制されており、 その効果が可逆的 であることを示したo wortmannin (図14A)と比較しすると、 LY294002(図14 B)の効果がやや弱いことも、 以前の報告と一致していた1 4 )。 これは阻害剤の効果 が非特異的な毒性ではなく、 PI-3キナーゼ、に特異的に働きかけ、 分化を抑制してい る一つの証拠といえるであろう。
5. ATDC5細胞への各種PKB変異遺伝子の形質転換
これまでの結果は、 ATDC5細胞のインスリン刺激に伴う軟骨分化が、 PI3K/
PKB情報伝達経路の活性化によって引き起こされていることを示唆している。 そこ で、 PKBの活性化のみでATDC5細胞の分化を誘導できるかどうかを試みる実験を 行った。 常時活性型のPKBα遺伝子、 および図15Aに示すような変異遺伝子を、
エレクトロポレーション法にてATDC5細胞に形質転換し、 その効果を比較検討し た。
常時活性型のPKBα遺伝子(myr-PKB)として、 N-末端にSrc由来のミリストイ ル化・ シグナル配列(13アミノ酸: GSSKSKPKDPSQR)を、 PCR法により付加し たものを用いた。 この配列は、 翻訳直後に開始メチオニンが除去され、 2番目のア
ミノ酸であるグリシンに脂肪酸のミリスチル酸が結合することによって、
A
Thr308
rat PKB (WT)
myr-PKB (CA)
myr-KN-PKB
!J. PH-PKB
K179M
146 480
「一白圃ー」旦里」
B
173k -83k・
62k 47.5k
-32.5k・
1 2 3 4
lane 1: pcDL-SRM emp1y vec10r lane 2: myr-PKB
lane 3: myr-KN-PKB lane 4:ムPH-PKB
図15 ATDC5細胞への形質転換に用いたPKB変異遺伝子とその発現
A数字はアミノ酸の番号を示す。PH:PHドメイン、 Kinase:触媒活性中心ドメ イン、 Tail:C-末端Tailドメイン、 VýT:野生型、myr:ミリストイル化、CA:常
時活性型(constitutively active)、KN:酵素活性欠如型(kinasenegative)、 ム PH: PHドメイン欠失型、 斜線部: Src由来ミリストイル化シグナル配列 B
各PKB変異遺伝子を導入したATDC5細胞の細胞抽出液を調製し、SDSポリ アクリルアミドゲル電気泳動後、抗PKB抗体を用いてウエスタン ・ ブロット を行った。 分子量マーカーの位置を分子量k(kDa)で示している。
- 3
7-Ptdlns(3,4,5)P3の有無に関わらず細胞膜へアンカリングされる。 PKBの活性化には、
このミリストイ ドメインの働きによる細胞膜付近への局在が必須で、あるので、
PH
ル化をもってPKBの常時活性型とした。
このmyr-PKBの酵素活性中心部位に点変異(K179M) を入れた また、
またコントロー ルとしてタンパク質をコードする遺伝子を挿入していない発現ベクターを用いた。
PHドメインを欠失したムPH-PKBα遺伝子、
myr-KN-PKBα遺伝子、
insulin (一)
(+ ) A
âPH-PKB myr-KN-PKB
myr-PKB pcDL-SRM
1.0
0.5
ECののωoocのをoω心〈
B
。
insulin 十
ðPH国PKB 十
myr-KN-PKB +
myr-PKB +
pcDL-SRM
PKB変異遺伝子を形質転換したATDC5細胞の軟骨分化に与える効果 形質転換より24日後にアルシアンブルー染色を施し、 軟骨結節の形成につい
て観察した。 A:ベクターのみ、 myr-PKB、 myr-KN-PKB、 ムPH-PKBを形質転 換し、 インスリンの添加あるいは無添加で培養したもの。 B アルシアンブルー 染色性の定量。 3回の実験の平均値と標準偏差を示している。
図16
エレクトロボレーション法によ っ て各プラスミドをATDC5細胞に形質転換した 後、 インスリンを含む培地と含まない培地とで、 0.4 mg/mlのG418を加えて選択 をかけながら24日間培養した。 その結果 、 インスリン刺激のない条件で、培養したに
もかかわらず 、 常時活性型PKB遺伝子を導入した ATDC5細胞では、 軟骨細胞へ と分化し、 それに伴う軟骨結節の 形成が観察された(図16 A)。 同時に、
myr-KN-PKBをはじめ、 他の変異遺伝子では、 コードするタンパク質が細胞に過剰 多読見しているにもかかわらず(図15 B)、 その効果は認められなかった(図16 A)。
軟骨結節 形成のアルシアンブルー染色による定量の結果を、 図16 Bに示す。
この結果により、 PI3K/PKB情報伝達経路の経路のうち、 PKBの恒常的な活性 化によりATDC5細胞の軟骨分化を誘導できることが示された。
考察
本研究は、 軟骨細胞分化という一つの細胞活動に焦点を当て、 イノシトールリン 酸/イノシトールリン脂質代謝機構が果たす役割について解明することを試み、 そ の可能性の一端を示唆したものである。
Hiperlと同様に、 MIPPのmRNA発現も、 6日齢ラット腔骨骨端成長軟骨におい
て増殖軟骨細胞層/肥大軟骨細胞層の境界に特異的に発現していることを明らかと し、 MIPPとHiperl (Minppと改名) はラットとニワトリの種間におけるホモログ であると考えられるようになった。 加えて、 軟骨細胞分化のモデルとして多く活用 されているATDC5細胞を用いて解析を行ったところ、 ATDC5細胞の、 骨端成長 軟骨における増殖細胞層から肥大細胞層への境界に相当すると考えられる培養の段 階で、 MIPPの遺伝子発現、 酵素活性ともに上昇していることが明らかとなった。
ウサギの肋軟骨成長軟骨の初期継代培養細胞を用いた実験でも、 同様の結果が得ら れた。
内軟骨性骨形成の主役としての軟骨細胞分化には、 それに関する甚大な数の報告
が物語る通り、 きわめて複雑な調節機構が備わっているであろう。 必要に応じて増 殖し、 特異的な細胞外基質を産生し、 新たな骨組織の形成に備えて自身は肥大化し、
細胞外基質を石灰化していく。 骨形成の最初の引き金となる血管の浸潤を必要がな いときには食い止めて必要が生じるとそれを許して自身の細胞は生理的に死を迎え る。 このような独特で複雑な過程において、 イノシトールリン酸代謝に関わる酵素 であるMIPPが遺伝子発現・酵素活性がともに、 増殖細胞層から肥大細胞層への境 界で上昇するという興味深い挙動を示しており、 軟骨細胞分化の調節機構の一翼を 担う可能性が示唆されたり
また、 MIPP過剰発現ATDC5細胞を樹立・解析したところ、 その分化能が著し く低下していた。 これは、 MIPP遺伝子欠失マウスにより得られた所見と原因を同