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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

リズム チカク ノ キソ トシテノ ジカン カ ンカク ノ チカク ニ オト ノ ジカン コウ ゾウ ガ オヨボス エイキョウ

蓮尾, 絵美

九州大学大学院芸術工学府中島研究室

https://doi.org/10.15017/19760

出版情報:Kyushu University, 2010, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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6 章 結論

本論文では,リズムの知覚が,リズムを示すひとつひとつの音自体の時間構造によってど のような影響を受けるかを調べた。通常,私たちが言葉や音楽などのリズムを捉える際に手 掛かりとする要素は「音の始まり」であると考えられていたが,本研究では,音の持続時間 や振幅包絡など音自体の時間構造を体系的に変化させた実験によって,音の始まりだけでな く音の時間構造もリズム知覚に影響することを示した。

まず,第2章では,継時的に鳴らされる二つの音の始まりによって示された単独の時間間 隔を用いて,区切音の持続時間が変化すると時間間隔の主観的な長さが変化することを明ら かにした。実験1では,時間間隔を示す二つの区切音の持続時間をそれぞれ20-100 msの範 囲で変化させ,その時間間隔の主観的な長さを調整法を用いて調べた。その結果から,時間 間隔の終わりを示す第2区切音の持続時間が長くなると,時間間隔の主観的な長さが長くな ることがわかった。また,時間間隔の始まりを示す第1区切音の持続時間が長くなった場合 は,時間間隔が240 ms以上であれば時間間隔の主観的な長さは長くなるが,時間間隔が120 msのときはそのような第1区切音の持続時間の影響は見られないことがわかった。実験2お よび実験3では,実験1で見られた区切音の持続時間の影響が,本当に持続時間自体の変化 によるものであったかどうかを検証した。実験2では区切音の振幅の違いの影響を,実験3 では区切音の音エネルギーの時間分布の影響を,それぞれ調べた結果,区切音の持続時間自 体の変化が時間間隔の知覚に影響していたことが確かめられた。ただし,時間間隔が最も短

い120 msの条件においては,第1区切音の音エネルギーの時間分布が時間間隔の主観的な

長さに影響することも示された。

第3章では,第2章で明らかにされた区切音の持続時間の影響が,二つの時間間隔が隣接 するパターンにおいても見られることを確かめた。実験4では,隣接する二つの時間間隔の 長さを比較してどちらが長かったかを回答するという,普段自然にリズムを聴くときの聴き 方と密接に関連する課題を用いて,三つの区切音の持続時間が,二つの隣接する時間間隔の リズムパターンとしての知覚にどのように影響するかを調べた。実験5では,実験1-3および いくつかの先行研究と同様の,典型的な時間知覚研究の課題を用いて,三つの区切音の持続 時間が隣接する二つの時間間隔それぞれの主観的な長さにどのように影響するかを調べた。

どちらの実験でも結果は一致しており,実験1-3の結果と同様に,時間間隔の終わりを示す 区切音が長くなると,その時間間隔の主観的な長さが長くなることが示された。また,二つ の隣接する時間間隔の全体の長さが短く(240 ms),一つ目の時間間隔が二つ目の時間間隔よ りも長いパターンにおいては,一つ目の時間間隔の始まりを示す第1区切音が長くなると一 つ目の時間間隔の主観的な長さが長くなることがわかった。この現象は,時間間隔が単独で 存在するときには見られず,二つの時間間隔の対比を促進するはたらきがあるようであった。

第4章では,音自体の主観的な長さに着目し,実験6では20-180 msの音,実験7では

40-360 msの音の主観的な長さを調べた。その結果,第2章および第3章で用いたような,

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第6章 結論 87

100 ms以下の非常に短い音であっても,音の持続時間が変わるとその主観的な長さもそれと

対応して変わることがわかった。また,二つの音の始まりによって示された時間間隔の主観 的な長さと,音自体の持続時間の主観的な長さとを比べると,特に200 ms以下の時間間隔 において,音の始まりによって示された時間間隔のほうが主観的に長かった実験参加者と,

音自体の持続時間のほうが主観的に長かった実験参加者に分けられることがわかった。

最後に,第5章で,区切音の持続時間が,時間間隔の知覚過程にどのように影響したかに ついて考察した。従来のリズム知覚研究において,音の持続時間が変化すると音の知覚的な 始まりの位置が変化することは報告されていたが(e.g. P. G. Vos et al., 1995; Marcus, 1981),

音の知覚的な始まりの位置の変化だけでは,本研究で明らかになった区切音の持続時間の影 響を説明することができないことが示された。区切音の持続時間は,音の始まりの知覚以外 の時間情報処理にも影響していた可能性が高いと考えられた。さらに,本研究で非常に単純 な音を用いて明らかにした区切音の持続時間の影響を,より日常的で複雑なリズム知覚研究 (Schubert & Fabian, 2001; Repp & Marcus, 2010)と結び付けることができるかどうかを検 討し,結び付けられる場合(Schubert & Fabian, 2001)とそうでない場合(Repp & Marcus,

2010)とがあることを示した。日常的で複雑な刺激を用いたリズム知覚研究と,非常に単純

な刺激を用いた本研究との溝を埋めていくことが,今後の研究の課題のひとつである。

参照

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