神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第12号 2008年 3月 29
■ 研究論文
特定非営利活動法人におけるコーポレート ガバナンス
ー 営利企業 との比較 を中心に して ‑
Corporategovernanceofnonprofitorganization
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程
早 川 竜 平
HAYAKAWA,Ryohei
■キーワー ド
コ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス、NPO、経営機構、認定NPO法人、税制優遇制度
1 は じめに
近年、NPOとい う言 葉 をマスメデ ィアな どか ら耳 にす る機 会 が増 えて きて い る。 この マスメ デ ィアな どで取 り上 げ られ るNPOとは、主 に特 定 非営利 活 動 法 人 (以下 「NPO法人」 とい う) で ある。マスメデ ィアな どで頻繁 にNPOが取 り 上 げ られ るよ うになった こ とは、 日本 において NPOの存在 が ここ数年 の間 に大 きくなってい る とい うことをあらわす。そ して、 このことは、社 会への影響力が大 きくなっているとい うことで も ある。だが、社会 に良い影響だけではな く、不祥 事などといったように負の影響 も及ぼ しつつ ある
とい うことも事実である。
これ まで、経営学 は、企業 とい う営利組織 を中 心に考 えられて きた。 日本の企業 は、戦 後の高度 経済成長期 を経て、社会への影響力 をもつ大規模 な企業が増加 して きた。 しか し、大規模化 した企 業 は、社会 に良い影響 を与 えるばか りではな く、
公害や環境破壊 などといったよ うに、社会 に負の
影響 ももた ら した。 その よ うな なか、1990年代 初頭か ら、企業の相次 ぐ不祥事 により、コーポ レー ト・ガバ ナンス問題の議論 が盛んに行われ るよう になった。
今 日、 日本 においてNPO法人 は、 かつ ての企 業のように大規模化 しつつ ある。 それは、企業 に 比べてまだ発展途上ではあるものの、確実 に社会 への影響力が大 きくなってお り、最終的には、政 府や企業 と肩 を並べ る程の組織 に発展す ると考 え られ る。 そこで、経営学 を企業 とい う営利組織 だ けでな く、非営利組織であるNPO法人に も、 もっ と目を向けるべ き時期が来 たのではないか と考 え る1。 そ して、 これ までの企業 に よる教訓 を生 か し、不祥事による社会への負の影響 をで きるだけ 抑 えなければ な らない。 その ためには、 コーポ レー ト・ガバナ ンスを応用 してい くことが重要で あると考 えた。なぜ な ら、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンスには、企業不祥事 を防止す る役割 を持 ってお り、 これ を同 じ組織体 で あ るNPO法人 の健 全 な 経営のための ヒン トがあ るの ではないか と考 え
30 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第12号 2008年3月
たか らである。 そこで、本稿 では、 まず、第2章 で、NPO法人 とはなにか を明 らか にす る ととも に、今 日のNPO法人の現状や役割 を示す。つ ぎに、
第3章で、NPO法人 における経営機構体制 を明 ら かに し、 その問題点や課題 を明 らかにする。 そ し て、第4章 で、税制優遇制度や規模の考慮 などを 検討 し今後の課題 を示 してい くことにす る。
2
特定非営利活動法人 とはなにか2.1 NPOの定義
NPOと 聞 く と、 ボ ラ ン テ ィ ア や 非 営 利 と い っ た キ ー ワー ドを想 像 す るで あ ろ う.NPO とは、 日本 では非営利 組織 といい、 アメ リカで は、Non‑profitOrganizationま た はNon‑for‑profit Organizationといわれてお り、アメ リカで誕生 し た組織で ある2。簡単 にい えば、ボ ランテ ィア活 動 などの社会貢献活動 を行 う、営利 を目的 としな い団体の総称 で あ る。 しか し、NPOといって も 人や国によって捉 え方 は様 々である。
NPOにつ いての代表 的 な定義 は、 アメ リカの ジ ョンズ ・ホプキ ンス大学 の レス ター・M・サ ラ モ ン (LesterM.Salamon)教 授 ら が 中 心 と なって行 って きた非営利 セクター国際比較 研究
プ ロ ジ ェ ク トの 唱 えた もの で あ る とい わ れ て い る。 この 定 義 は、 世 界 のNPOの 調 査 の た め に、NPOで あ るた め の要 件 を分 拝 し定 義 した もので あ る。 その内容 は、①正式 の組織 で あ る こ と (formalorganization)、② 非 政 府 で あ る こ と (nongovernmental)、③利 益 を分配 しな い こ と (nonprofit‑distributing)、 ① 自 己統 治 して い る こ と (self‑governing)、 ① 自発 的 で あ る こ と (Voluntary)、である3。 さらに詳 しくみてみ ると、
(Dは、実質的に規定や定款 などを定め、組織 とし て意思決定のシステムを明文化 されていることで ある。① は、政府や行政 などの団体か ら独立 して い る、つ ま り民間組織 とい うことで ある。③ は、
収益事業で得た利益 について、出資者 に分配す る のではな く、次の活動の資金 とす ることで ある。
④ は、他の組織に支配 されず、独立 して組織 を運 営 していることである。6)は、強制ではな く自発 的な参加 によ り組織 が運営 されていることである。
以上の5点が、多 くの者 に支持 されてい る世界 的 なNPOの定義であるといえよ う。
2.2 特定非営利活動法人の意義 と目的
日本 に は、 さま ざまなNPOが存 在 して お り、
これ をまとめると図表1の よ うに表す ことがで き る。NPOの うち、特定 非営利活動促 進法 (以下 図表1NPOに含 まれる団体の種類
① ⑦ ③ 在)
( 特 ポ 市 社 財 社 学 宗 医 .一一 」‑. 労 経 協 NP 非定 ラン 活民 法 法 福団 団 全 校法 法教 療法 .内町∠ゝ 団 団働 済 組同 o 営 テ 動 人 人 祉 人 人 人 コ言 体 体 合
法 利 イ 団 汰 千袷A自 等
公益団体 共益団体
(注)まれに地縁組織である町 内会 や自治 会をNPOに含めるときがあるO (山所)経済企画庁 [2000]。
特定非営利活動法人におけるコーポレー ト・ガバナンス 31
図表2特定非営利活動の定義
1 保健、医療又は福祉の増進を図る活動 2 社会教育の推進を図る活動
3 まちづ くりの推進を図る活動
4 学術、文化、芸術又はスポーツの振興 を図る活動 5 環境の保全 を図る活動
6 災害救援活動 7 地域安全活動
8 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 9 国際協力の活動
10男女共同参画社会の形成の促進を図 る活動 11子どもの健全育成 を図る活動
12前各号に掲げる活動を行 う団体の運営又は活動 に関する連絡、助言又は援助の活動
1 保健、医療又は福祉の増進を図る活動 2 社会教育の推進 を図る活動
3 まちづ くりの推進 を図る活動
4 学術、文化、芸術又はスポーツの振興 を図 る活動 5 環境の保全 を図る活動
6 災害救援活動 7 地域安全活動
8 人権の擁護又は平和の推進を図る活動 9 国際協力の活動
10男女共同参画社会の形成の促進を図る活動 11 子 どもの健全育成 を図 る活動
12情報化社会の発展 を図る活動 13 科学技術の振興 を図る活動 14経済活動の活性化 を図 る活動
15職業能力の開発又は雇用機会の拡充 を支援す る 活動
16消費者の保護 を図 る活動
17前各号に掲げる活動を行 う団体の運営又は活動 に関する連絡、助言又は援助の活動
他 所)httpノ/ⅥW .npo‑hoITlepage.gO.jpを基に筆者作成。
「NPO法」 とい う) に よ って法 人格 を取 得 した 団体 の こ とを、一般 的 にNPO法人 と呼ぶ。 これ を最狭義 のNPOとい うことがで きる。 その他 の NPOと して は、財 団法人 や社 団法人 といった公 益法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、医 療 法人 な どが存 在 す る。 さ らに最広義 のNPOと して捉 えた場合 、労働団体、経済団体、協同組合 などもあげることがで きる4。
NPO法1条 で は、 「特定 非営利 活 動」 を行 う団 体に法人格 を付与す ること等によ り、ボ ランテ ィ ア活動 をは じめ とす る市民 が行 う自由な社会貢献 活動 としての特定非営利活動の健全 な発展 を促進 し、 もって公益の増進 に寄与す ることを目的 とす ると示 され て い る。 ここで い う 「特 定 非営利 活 動」 とは、NPO法 の別表 で掲 げ られ て い る、① 保健、医療又 は福祉の増進 を図 る活動、①社会教 育の推進 を図 る活動、③ まちづ くりの推進 を図 る 活動、④学術、文 化、芸術又 はスポ ーツの振興 を 図る活動、①環境の保全 を図 る活動、⑥災害救援 活動、⑦地域安全活動、⑧人権の擁護又は平和の 推進 を図 る活動、⑨ 国際協力の活動、⑩子 どもの
健全育成 を図 る活動、⑩情報化社会の発展 を図 る 活動、⑬科学技術の振興 を図 る活動、⑭経済活動 の活性化 を図 る活動、⑮職業能力の開発又 は雇 用 機会の拡充 を支援 す る活動、⑯消 費者 の保護 を図 る活動、⑰前各号 に掲 げる活動 を行 う団体の運営 又 は活動 に関す る連絡、助言 又は援助 の活動、の 17分 野 の ことで あ るoNPO法設立 当初 は、12分 野で あったが、当ては まらない分野で活動 してい るNPOの要望 が多か ったため、2003年5月に17分 野に改正 された。
2.3 特定非営利活動法人誕生の背景
NPO法 は、1998年12月1日に施行 され た比較 的 新 しい法律である。このNPO法 が設立 され るきっ かけとなったのは、今 なお記憶 に新 しいであろ う 1995年1月17日に起 きた阪神 ・淡路大震災 で あ る。
死亡者6,000人以上、負傷者35,000人 以上 とい う 被害 を出 した大震災 である。一般 に災害 に対す る 救助活動 は、 これ まで政府 や行政 が行 うものだ と 一般 的には考 え られていたO しか し、 この震災 を きっかけにその考 え方 は大 きく変 わ ることとなる。
32 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第12号 2008年3月
政府や行政では救助活動が追いつかず、市民のボ ランティアな しでは十分な救助活動 を行 うことが できなかったのである。実際、ボランテ ィアに参 加 した人数 は100万人 を上回 るとされてお り、 こ の年 は 「ボ ランテ ィア元年」 とも呼ばれている。
こうして、 日本 にボ ランテ ィア活動の社会 に及ぼ す影響力を認知 させ ると同時に、ボランテ ィア参 加の潮流が生 まれたのである。
その後、阪神 ・淡路大震災 の復興 に活躍 した 個 人のボ ランテ ィアが組織 化 され る動 きが進 ん だ。 そ して、図表2の特定非営利 活動の よ うに社 会の様 々な分野 において、ボ ランテ ィア活動 を中 心 と したNPOの社会貢献活動 が活 発化 し、社会 に定着 して きた。 これ らのほとん どは、法人格 を 持 たない任意団体 として活動 していた。 そのため、
銀行口座 を開設 した り、事務所 を借 りた り、電話 を設置す るなどの行為 を行 う場合 に、団体の名前 で行 うことがで きない とい う不都合 が生 じること があった。そ うか といって、金銭的な要件などの 理由によって、簡単に法人 を設立で きるものでは ない。民法33条 に よ り、法人 は 自由に設立で き るのではな く、民法又は他の法律によらなければ な らない、 とされている。 また、民法33条2項の 公益法人の設立 に関 しては、許可主義 により主務 官庁の自由裁量 に任 されてお り、簡単に法人 を設 立す ることはで きない。 このような問題が生 じる なか、政府 や行政 と して もNPOの これ か らの社 会 的重要性 を無視 で きな くなっていた。 そ して、
1998年3月、現行の公益法人 に比べ ると非常 に簡 易な手続 きで法人化で きるNPO法 が成立 し、同 年12月に施行 され ることになるのであった。
2.4 特定非営利活動法人の概要
NPO法 は、 旧民法34条 (公益 法人 の設立) の
特別法 と して制定 され た。NPO法 人 を設立 す る ためには、所轄 庁の認証 を受 けなけれ ばな らな い。NPO法人 にお け る所轄庁 とは、主 た る事務 所の所在地の都道府県知事、複数県に事務所 をお く場合は内閣総理大臣の ことである。認証 を受 け るには まず、前述 した17分野 の特定非営利 活動 のいずれか1つ または複数の活動 を主 た る活動分 野 としておこな う必要 がある。 そ して、非営利性、
社員の資格の得失 に関 して不当な条件 を付 さない こと、役員の うち報酬 を受 ける者 の数が役員の3 分の1以下 であること、宗教や、政治 団体 などを 主 たる目的 としないこと、などの要件規定がある。
これ らの要件 を満 た し、 さらに、定款、設立趣 旨 書、事業計画、予算書、役員名簿などの必要書頬 を添付 した申請書 を提出 しなければな らない。 こ れ を受 けた所轄 庁 は、NPO法で定 め られ た要件 を満 た していれば、4ヶ月以内に
認
証 しなければ な らない。NPO法人 の設立方 法 は、認証主義 で あり、許可主義である公益法人 などに比べて法人 化 Lやすいのである5。1998年 に施 行 され たNPO法 で あ るが、翌 年 の1999年 に は1,176件 ものNPO法 人 が認 証 され た。 その数 は年 々増加 し、2007年11月30日現在、
33,124件 もの数 が認証 されてい る6。主 た る活動 分野について見てみ ると、保険、医療又は福祉の 増進 を図 る活動 (39.4%) が圧倒 的に多 く、環境 の保全 を図 る活動 (ll.9%)、 まちづ くりの推進 を図 る活動 (10.9%)と続 いている7。
2.5 特定非営利活動法人の役割 と社会的位置 付 け
NPO法 が誕生 した背景や認証数の 多 さか らも 分 か るよ うに、NPO法人 は 日本 に とってな くて はな らない存在へ と成長 している。では、 日本の
図表3NPO法人認証 ・解散団体累積件数の推移
1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 認証数 (累計) 1,176 3,156 5,625 9,329 14,657 19,963 24,763
他 所)h仕pノ/www.npo‑holllepage.gO.jpを基に筆者作成。
特定非営利活動法人におけるコーポ レー ト・ガバナンス 33
図表4 NPO法 人 にお ける主 た る活 動 分野 の割 合
主 た る活動分野 2004年 2005年 2006年 1 保健、医療又 は福 祉の増進 を図 る活動 39.6% 38.7% 39.4% 2 社会教育の推進 を図 る活動 4.5% 3,8% 4.4% 3 まちづ くりの推進 を図 る活動 9.4% 10.0% 10.9% 4 学術、文化、芸術又 はスポーツの振興 を図 る活動 10.0% 10.6% 9.6%
5 環境の保全 を図 る活動 ll.6% 12ー4% ll.9%
6 災害救援活動 0.4% 0.5% 0.5%
7 地域安全活動 0.8% 0.9% 1.10%
8 人権 の擁護又 は平和の推進 を図 る活動 1.2% 1.2% 1.1%
9 国際協力の活動 3.9% 3.6% 3.2%
10 男女共 同参画社会 の形成 の促進 を図 る活動 0.9% 0.9% 0.7% 11 子 どもの健全育成 を図 る活動 7.8% 8.2% 8.2% 12情報化社会の発展 を図 る活動 2.0% 1.8% 1.8% 13科学技術の振興 を図 る活動 0.7% 0.9% 0.9%
14 経済活動の活性化 を図 る活動 1.6% 1.5% 1.9%
15 職業能力の開発又 は雇用機会 の拡充 を支援す る活動 1.2% 1.8% 1.9% 16消 費者の保護 を図 る活動 0.4% 0.9% 0.7%
17活動 を行 う団体の運営又 は活動 に関す る連絡 、助言又 は援助 の活動 3.2% 2.3% 1.7%
(山所)経済産業研究所 [2006] を基に筆者作成 。
社 会 シ ス テ ムの 中 で、NPO法 人 は、 どの よ うな 役割 を期 待 され実 際 に貢 献 して い るの か を明 らか に してい く。
今 日の 日本 の社会 シ ス テ ム は、 図表5の よ うに、
政 府 セ ク タ ー、 営 利 企 業 セ ク タ ー、 非 営 利 セ ク ター とい っ た3つ の トライア ングル 体 制 に よっ て 形成 され て い る。 この 非営利 セ ク ター こそが広 義 のNPOで あ り、 そ の 中 心 的 存 在 と して 期 待 され て い るの がNPO法 人 で あ る とい え よ う。 非営 利 セ ク ター は、3つ の セ ク ターの うち最 後 に登 場 し たセク ターで あ る。 非営利 セ ク ターが登 場 す る ま で、 日本 は政府 セ ク ター と営利 企業 セ ク ターで成 り立 って い た。政 府 セ ク ターで あ る政府 や行政 は、
公共性 を もったサ ー ビス な どを供給 し、 営利 企 業 セ ク ターで あ る企 業 は、消 費者 が要 求 す る商 品 な どのサ ー ビス を供 給 して いた。 人 々 が必要 とす る もの は、政府 や行 政 、 企業 に よ って ほ とん どの こ とは満 た され て い たの で あ る。 しか し、 多様化 す
る現 代 社会 の 中で 、 この両 者 だ けで は人 々 の ニ ー ズ を十 分 に満 たす こ とがで きな くな った。 そ こで 第3の セ ク ター と して で て きた の が、 非 営利 セ ク ターで あ る。 第1の セ ク タ ‑で あ る政 府 や行 政 な どは、公 共 性 、均 等性 、均 質性 、画 一 性 な ど を追 求 し実 現 す る。 第2の セ ク ター で あ る企 業 は、 経 済性 、収 益 性 、生 産 性 、合 理 性 な ど を追 求 し実 現 す るO そ して、 第3の セ ク タ ーで あ るNPOは、 政 府 や 行政 、企 業 が補 い きれ な い部 分 を追 求 し実 現 す る役 割 を担 って い るの で あ るS。
この よ うに、NPOは現 代 社 会 に と っ て 必 要 不 可 欠 な存 在 で あ る とい える。 その なか で も著 しく 存 在 感 を増 して お り、 そ の 中 心 的 存 在 とい え る の がNPO法 人 なの で あ る。 しか し、NPO法 人 は、
企 業 や 政 府 ま た は最 広 義 のNPOで 捉 え た場 合 の 他 の組 織 に比 べ て も、 まだ歴 史 が浅 く、 多 くの そ れ は経 営 体制 の基盤 も しっか り して い な い とい え よ う。 そ の よ うな な か、 今 後 もNPO法 人 の 存 在
34 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第12号 2008年3月
図表5 非営利 セクターを含 む トライア ングル
撹
撹
(出所)山内直人 [1999]36貢を基に筆者作成。
は さ らに大 きくな り、大規模 なNPO法人 も増 え て くるであろう。 それは、社会への影響力が強 ま ることを意味 し、最終的にその存在感 は、政府や 行政、企業に も匹敵す ると考 えられ る。 そのよう な存在になる前に、経営体制 を今一度確認 し、健 全な経営のあり方 を示 さなければな らないのであ
る。
NPO法人 にお け るイメージの悪 化 は、今 日問 題 となってい る企業不祥事 な どとい った企業 イ メージの悪 化 と比 にな らない くらい致命 的で あ るといえよ う。 なぜ な ら、NPO法人の資金源 は、
会費や寄付金が多 くを占めてお り、そ ういった資 金 を提供 して くれ る人 を含めた利害関係者 が企業 のそれ と比べて離れやすい と考 えられ るか らであ る。 また、他のNPO法人への イメージ悪 化 な ど といった影響 も企業のそれに比べて大 きいといえ よ う。そ して、相次 ぐ企業不祥事 により盛んに議 論 され るようになったコーポ レー ト・ガバ ナンス を、NPO法人 に も応 用す ることがで きるのでは ないか とい う考 えに至 った。 なぜ な ら、企業 も NPO法人 も、同 じ組織体だか らである。
3
特 定 非 営利 活動 法 人 にお け る経 営機 構体制3.1 特定非営利活動法人 における経営機構体 制の全体像
ここで は、NPO法人 における経営機構 体制 を 明 らかに してい くoなぜ な ら、狭義の コーポ レー ト・ガバ ナ ンスは、企業 経営機 構 体制改革 を行 うことを指 す と さま ざまな論者 が論 じてお り9、 NPO法人 における経営機構 体制 を明 らかにす る
ことによって、問題点や課題が浮 き彫 りになると 考 えたか らである。
NPO法人 における経営機構体制 は、図表6の よ うに、理事 と監事か らなる役員会、そ して社員総 会で構成 されている。 まず、役員会 と して、理事 3人以上 及び監事1人 以上 を置 か なければ な らな い。理事、監事 ともに、任期 は2年以内において 定款で定める期間 としている。ただ し、再任は防 げない。理事は、NPO法人の業務 を、過半数 をもっ て決定す ることがで き、NPO法人 の業務 につ い て代表権 を有す る。ただ し、定款 をもって、その
特定非営利活動法人におけるコーポレー ト・ガバナンス 35
図表6NPO法人の経営機構体制
(出所)筆者作成。
代表権 を制限す ることができる。監事 は、理事 ま たは職員を兼任 してはな らない。職務は、理事の 業務執行の状況 と財産の状況の監査である。監査 の結果 として、不正行為 または法令や定款 に違反 する重大な事実 を発見 した場合 には、 これ を社員 総会 または所轄庁に報告 し、直接理事に意見 を述 べ ることもで きる。
つ ぎに、社 員総会 は、正会 員 によって構成 さ れてお り、年1回以上 開催 され なければな らない。
定款の変更や他 のNPO法人 との合併 な どとい っ た役員会に委任 した事項以外の事務の決定は、原 則 と して社員総会 の決議 に従 わなければな らな い。 しか し、NPO法人における社員総会の権限は、
特 にNPO法 で定 め られてお らず、定款 の定 めに よるものとしている。
3.2 特定非営利活動法人における理事の役割 理事は、前述 した通 り任期は2年以内 としてお り、各々が業務執行の代表権 を有 している。企業 に例 えるな ら、取締役会 に該 当す るといえよう。
業務については、過半数 をもって決定す る。過半 数の議決が必要 な項 目として、社貞総会 に提出す る議案等や、事業計画書などの書類等、そ して会 員の入会の承認 などがあげ られ る10。多 くのNPO
法人では、定款において 「理事長」や 「代表理事
」
といったように、理事の中か らさらに代表の人物 を定めることにより、各理事の代表権 を制限 して いることがよくある。 また、理事は、企業 におけ る取締役 と同様 に善管注意義務11を負 う。 この善 管注意義務 に違反LNPO法人 に損害 を与 えた場 合 には、賠償責任 を負 うこととされてい る】2。
設立 当初の理事は、設立時に提出す る定款 に定 めることにより置かれる。 しか し、設立後の理事 については、定款の定めに従い選任 され る。 しか し、理事は、社員総会により選任 され るべ きであ り、実際にその方法が定款で定 め られているとこ ろが多い。 これは、監事に関 して も同様 である。
理事 は、善管注意義務 を負 うことや社員総会 に よ り選任 され ることか ら分か るよ うに、社員か ら NPO法人の業務遂行 を委託 され た者 で ある。最 低3人以上の理事 が必要 とされてい るのは、法人 の業務に際 し、合議 し、多数決で決定で きる最低 数 を定めたためである。 これは、公益法人におい て1人の理事で も構 わないとされ てい るが、実際 には複数存在 し、多数決によって運営が決定 され ているとい うことが考慮 された結果である13。
36 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報j第12号 2008年3月
3.3 特定非営利活動法人 にお ける監事 におけ る監査
監事 は、理事 の業務執 行やNPO法人の財務状 況 などを監査す る役割 をもつ。企業に例 えるな ら、
監査役 または監査委員会 といえよう。利益 を追求 す る企業 に比べて非営利組織 であるNPO法人は、
業務執行に不正 など絶対にないと考 えるのが普通 で あ る。 なぜ な ら、NPO法人 の活動 は、ボ ラ ン テ ィア精神の上で行われてお り、社会性 を追求 し ているか らである。それは、企業以上の信頼性 を、
私 たち一般市民が最初か ら持 っているとえいよ う。
逆 をい えば、NPO法人の不祥事 に よる裏切 り行 為は、企業以上の不信感 を抱 くと考 えられ る。 し か し、NPO法人 の不祥事 は年 々増 えて いるのが 現状 で あ る。NPO法人 が信頼 を失 くして しまっ ては、存在 を否定す ることになるであろう。 した が って、NPO法人 の経営機 構 において、監査 は 重要な役割 をもっているのである。それでは、そ の監査の役割 を担 っている監事について見てい く ことにする。
監事の職務 は、①理事の業務執行状況の監査、
檀)財産状況の監査、③監査の結果、法令 もしくは 定款 に違反す る重大 な事実があることを発見 した 場合 には、 これ を社員総会 または所轄庁に報告す る、④必要 な場合 には社員総会 を招集す る、6)莱 務執行状況、財産状況について、理事に意見 を述 べ ること、 とされている。
監事は、理事 または職員 を兼ねてはいけないと されている。 これにより、監事の独立性 を規定 し ている。 また、監事は、業務執行だけでな く財務
状況 も監査 しなければな らない。つ まり、財務に ついて も知識 を要 していなければな らない とい う ことがい えよ う。 しか し、実 際 には、NPO法人 の会計書類 には数 多 くの誤 りが見 られ、会 計能 力に限界があ ることが明 らかである14。会計書頬 は、利害関係者 にとって非常に重要 な参考材料に なるため、それに誤 りがあっては信頼 を失いかね ない。会計能力のない監事に財務状況の監査 を任 せていいのか とい う疑問がでて くるQ そこで、監 事 とは別に、企業 と同 じような会計監査人 とい う 立場の機関 を設 けるべ きではないか と考 える。実 際に、会計監査 を会計事務所 などに委託 している NPO法人 も近年増 えてお り、NPO法人の役員が、
会計書類の必要性やその誤 りなどか ら生 じる危機 を意識 し始 めていることが分かる。
さらに、会計基準の不統‑ も問題 とされて きた。
これ まで、会 計基準 は、各NPO法 人 が独 自の会 計方式 を採用 して きた。 その結果、不透明な処理 が少な くない とい う問題が しば しば指摘 されて き た。 これ をうけ、内閣府 は、一定の公的基準が必 要 と判 断 し、2008年度 に も企業 並みの複式簿 記 を使 う会計 を導入 し、会計基準 を統一す る方針 を 固めている。
3.4 社 員総会の構成 と役割
NPO法人 におけ る社員総会 の社員 とは、企業 における社貞 (従業員) とは違い、正会員の こと を指す。NPO法人 におけ る会 員 には、賛助会 員 と正会員 とい う2つの会員が存在 している。賛助 会員 とは、会費 とい う形で資金的な支援 をする会
図表7監事の概要
職務 1 理事の業務執行の状況を監査すること○
2 NPO法人の財産の状況を監査することo
3上記2項の監査の結果、NPO法人の業務または財産に関 し、不正の行為または法令 もしく は定款 に違反する重大な事実があることを発見 した場合には、これを社員総会 または所 轄庁に報告することo
4 前項の報告をするために必要がある場合には、社員総会を招集することo
5理事の業務執行の状況またはNPO法人の財産の状況について、理事に意見 を述べることo
(出所)筆者作成。
特定非営利活動法人におけるコーポレー ト・ガバナンス 37
図表8‑法人あたりの平均会員数
2004年度 2005年度 2006年度
正会員 うち個人うち団体 7187 995 13125
合計 91 112 133
賛助会員 うちうち団体個人 364 239 8101
合計 49 36 96
(備考)「個人」、「馴本」の内訳を回答していない団体があるため、合計と一致しないO (ll̲L'lJiT)千)経済産業研究所 [2006]O
貝の ことであり、正会員 とは、社員総会で議決権 を有 して い る者 で あ り、運営 に も参加 す る会員 の ことで あ る。社員総会 とは社員、つ ま り正会 員で構成 されているのである。会員数の平均 は、
2006年12月の時点で、正会員が133、賛助会員が 96である。 したがって、社員総会は、1法人 あた り約130人の社員 によって行われているとい えよ う。社員総会 の権 限 は、NPO法 によ り定款 の定 めに よると先 に述べ たが、 これ はNPO法の 目的 である活動の発展、促進に基づいて考慮 されてい るためであると考 えられ る。 したがって、社員総 会 は、 よほ どの理由がない限 り、最高意思決定機 関であるといえようD
4
特 定 非 営利 活動 法 人 にお け る現 状 と 課題4.1 資金源 と税制優遇制度
NPO法人の資金源 は、主 に4種類 に大別す るこ とがで きる. それは、①会費、⑦寄付金、(彰助成 金 ・補助金、④ 自主事業収入である。① は、会員 か ら支払われ るものである。① は、活動や事業 に 賛同 した人などか ら、見返 りを期待せずに提供 さ れ るものである。③は、助成財団や企業、国や地 方 自治体が、特定の事業に対 して支援す る目的で 提供 され るものである。④ は、本来の活動か ら得 る収入 で ある。 ここか ら分か るよ うに、NPO法 人における活動資金 は、企業の株式発行などに比 べて調達 しに くい とい えよ う。NPO法人の規 模
が大 きくなればなるほど多 くの資金 が必要 になる。
そ して、十分な活動 を行 うために も多 くの資金 が 必要 になるのである。
多 くかつ十分な資金 を調達す るためには、資金 を提供 して くれ る団体 または個人、 さらには公益 を受 ける市民 といった利害関係者 に賛同 して もら うことが必要 とされ る。 そのためには、活動内容 や成果 などの情報開示 を しなければな らない。 そ れ に よ り、利害 関係者 は内容 の良いNPO法人 を 支援 し、 そ うで ないNPO法人 は資金 調達 が困難 になるのである。
また、NPO法人の活動 を税 制面 で支援 す るこ とを 目的 に制定 され た、租税特別措置法 に規 定 され る 「認定NPO法人制度」 とい う制度 があるO これは、一定の要件 を満たす もの として国税庁が 認定 したNPO法人 に対 して 「認定NPO法人」 と い う資格 が付与 され る。資格 を取得 す ることに よ り、寄 付 を集 めやす くな るとい った制度 で あ る。具 体 的に要 点 をま とめ ると、認定NPO法人 に対 して寄付金 を拠出 した個人および法人は、一 定の金額 までその寄付金 を課税所得か ら控除す る ことがで きる。 さらに、認定NPO法人 が実施 し た課税対象事業の法人税 が軽減 され るといった も のである】5。 このような認定NPO法人が増 えるこ とによ り、個人や法人が寄 付を しやす くなること が期待 され る。 しか し、 この認定NPO法人制度 は、認定要件が厳 しす ぎることが しば しば指摘 さ れ る。実 際 に、認定NPO法 人の資格 を取得 した NPO法人 は、2007年11月現在、わず か73法人で
38 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第12号 2008年3月
ある16。 これでは、NPO法人 を税制面 で優遇す る とい う素晴 らしい制度 がつ くられたに もかかわ ら ず、 これでは絵 に描 いた餅になって しまう恐れが あるO
つ ま り、認定要 件 を易 しくし、認定NPO法人 を増やす ことによ り、寄付金 を集 めやす くす る。
そ して、個人や法人が寄付 しやすい環境がつ くら れ る。 そ うす るこ とによって、 日本 に寄付 をす るとい う意識の変 化 を起 こす ことが、今後の 日 本 におけ るNPOの発展 に とって必要 なのではな いか と考 える。 これ は、NPO先進 国 といわれ る アメ リカや イギ リスの寄付 をす るとい う文化が、
NPOを支 える1つの要 因 となっていることか らも 説得力 を持つ ものである。
4.2 社会への影響力の考慮
NPO法人 に規定 を設 け る場合 には、 その規 模 を考慮 しなければな らない。なぜな ら、法人の大 きさや活動 内容によって、社会への影響力が大 き く異 なるか らである。
で は、NPO法人 の規模 の現状 を、経済産業研 究所 が調査 した図表10の デ ータを基 に して見 て い くことにす る。2006年度 におけ るNPO法人 の 全 収入規 模 は、「100万 円未 満」 が24.3%、「100 万 円以上500万 円未満」 が26.9%、「500万 円以上 1,000万 円未満」 が13.0%、「1,000万 円以上3,000 万 円未 満」 が21.0%、「3,000万 円以上5,000万 円 未 満 」 が6.1%、「5,000万 円以上1億 円未満」 が 4.5%、「1億 円以上」 が4.2%となっている。主 た る活動 分野 に よって偏 りが あるが、収入規 模 が 500万 円未満の小規模 なNPO法人が、全体の半数 を占めてい ることが分か る。 これ は、NPO法の 目的が、市民の社会貢献活動 を促進す ることにあ るため、期待通 りの割合 といえよ う。
この よ うに、NPO法人の規 模 は、大規 模 な団 体 か ら小規 模 な団体 まで様 々で あ り、大規模 な NPO法人 はわずかで あ る。NPO法人 は、NPO法 によって、最低限のル ールが定め られている。 こ れは、企業でい うと、会社法により株式会社等が 最低限のル ール を定め られているの と比較で きる。
日本 に存在す るすべての株式会社の うち、上場 し てい る会社 は約0.2%である。 その上場企業 にお いては、 さらに、上場規則 などといった通常の企 業 よ り厳格 なル ール を守 らなければな らない。な ぜ な ら、上場企業は、その他の約99.8%の中小企 業 と比べて、社会への影響力が大 きい と考 えられ るか らで あ る。 この ことは、NPO法人 において も参考 に しなければな らないポイン トであると考 えられ る。
これ に似 た制度 と して、先 に述べ た認定NPO 法人制度 が存在す る。 しか し、 この制度 は、要件
を満 た し国税庁に認定 され ることによ り寄付金が 集 めやす くな るといった制度 で あ り、社会 への 影響 力 を考慮 してい るとはい えない。NPO法 で は、NPO法人 は、 自 らに関す る情報 をで きるだ け公開す ることによって市民の信頼 を得て、市民 によって育て られてい くべ きとい う考 えに基づい ている。 そのため、情報開示制度 を厳 しく規定 し ていない。 しか し、例 えば認定NPO法人の ような、
社会へ の影響力 が大 きい と考 え られ るNPO法人 については、集めた寄付金の使 い道などの情報開 示 を義務付 けるといったように、上場規則 に対等 す る制度 が必要であると考 える。
特定非営利活動法人におけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンス 39
図表92006年 度 の非 営 利 事 業 活 動 の全 収 支 規 模 (%)
調 査
数 潤万莱円001 滴 上万 万未 以円 円0 05 10 0 万 万未 以満 上円 円0 50 00 01 万 万滴 上未 以円 円0 00 03 10 0 万 万満 上未 以円 円0 00 00 05 3 満 上未 以円 円億 万
1 0
005・ 円億以上1主な
活動 保 健、 医療 又 は福 祉 の増進 を図 る活動 840 16.2 22.5 ll.9 28.2 8.5 6ー9 5.8 社会教育 の推進 を図 る活動 96 34.4 21.9 13.5 19.8 5.2 3.1 2.1 まちづ くりの推進 を図 る活動 237 35.4 31.2 12.2 13.1 4.2 2,1 1.7 学術、文化、芸術又 はスポ‑ツの振興 を図 る活動 199 23.6 30.2 15.6 15.6 6 5 4 環境 の保全 を図 る活動 268 28.7 37.3 ll,9 15.7 3.7 2.2 0.4 災害救援活 動 9 55.6 33.3 ll.1 0.0 0.0 0.0 0.0 地域安全活動 26 26.9 30.8 15.4 7.7 3.8 7.7 7.7 人権 の擁護 又 は平和 の推進 を図 る活動 26 30.8 23.1 15.4 23.1 3.8 3.8
0 . 0
国際協 力の活動 67 20.9 35ー8 13.4 14.9 4.5 1,5 9 男女共 同参画 社会 の形成 の促進 を図 る活動 17 23.5 35.3 17.6 ll.8 5.9 0.0 5.9 子 どもの健全育成 を図 る活動 182 27ー5 24.2 14.8 20.9 4.4 3.8 4.4 情報化社会 の発展 を図 る活動 39 43.6 23.1 10.3 15.4 2.6
0 . 0
5.1科学技 術 の振興 を図 る活動 21 28.6 23.8 14.3 19 4.8 0.0 9.5 経済活動 の活性化 を図 る活動 36 22.2 33.3 19.4 16.7 5.6 2.8
0
職業能力の開発又は雇用機会の拡充 を支援す る活動 35 31.4 28.6 8.6 22.9 2.9 0.0 5.7 消 費者 の保護 を図 る活動 13 46.2 23.1 15.4 0.0 7.7 7.7 0.0
活動 を行 う団体 の運営 又 は活 動 に関す る連絡 、助
言 又 は援助 の活動 40 22.5 10 20 25 10 5 7.5
(出所)経済産業研究所 [2006]を基に筆者作成 。
図表10 NPO法 の情 報 開 示 に関 す る主 な項 目
第10条 設立 の認証 1 認証 申請 時 において提 出 した一 部 の書類 (定款 、役員 名簿、設立趣 旨書 、事業 計画書、収支予算書) を、 公衆 の縦 覧 に供 しなけれ ば な らないo
第28条 事業報告書等の備置 き等及び閲覧 1 毎事業年度初 めの3ケ月以 内 に、事業 報告書 、財産 目録、貸借対 照表 、収支 計算書、
役員名簿等 を作成 し、 これ らを、翌 々事業年度 の末 日までの間、主 た る事務 所 に備 え置 か なければ な らないo
2 利害 関係人 か ら事業報 告書 等、役 貝名 簿等、定款 、認証若 しくは登記 に関す る 書類 の写 しの閲覧 の請 求 が あった場合 には、正 当 な理 由が場合 を除 いて、 これ
を閲覧 させ なければ な らない o
第29条 事業報告書等の提 出及 び公開 1 毎 事業年 度1回、事 業報 告 書 等、役 員名簿 等、 定款 等 を所 轄 庁 に提 出 しなけれ ばな らない o
2 事業報告書 等、役員名簿 等、定款 等 につ いて 閲覧の請 求 が あった場合 に は、 こ
(出所) 筆者作成 。
40 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第12号 2008年3月
5
おわ りにNPO法 人 は、急激 なス ピー ドで存在感 を増 し てお り、社会への影響力が大 きくなっている。 そ の成長 を支 える基盤 と して、十分な法制度や経営 への取 り組みが必要 である。 しか し、本稿におい て、経営機 構体制 の課題 や、会計監査 の未熟 さ、
さらには情報 開示制度の不十分 さなど、様 々な問 題 が あ る こ とが明 らかにな った。 これ らの問題 は、企業 の事例 か らも推測で きるように、今後の NPO法人 の発展 に と もない、必ず立 ち向か って いかなければな らない課題であるといえよう。本 稿 では、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンスを応用 させ る ことによ り、 い くつ かの改善点 を提言 す ることが で きたが、問題 は多 く残 ってい る。今後、 これ ら の問題 を解決 してい く際に、参考に しなければな らない と考 えるの が、NPOの歴 史 が深 い国 を中 心 と した他国の制度 である。
NPO先 進 国 といわれ るアメ リカで は、州 ご と にNPO法 が異 な って い る。 ア メ リカのNPOは、
軽 く100万 団体 を超 えてお り、活動資金の多 くが 寄付金 によるもので ある。 さらに、民間個人の寄 付金 が約8割 を占めてい ると され、 その額 は、 日 本 の約100倍 であ る。 これは、文化の違 い もあ る が、税制優遇制度の充実 さも理由 としてあげ られ るO イギ リスで は、NPOの よ うな民 間非営利 組 織 の ことを、 チ ャ リテ ィ (charity)と呼び、その 数 は、イ ングラン ドとウェールズ地方 だけで も20 万団体 を超 えてい る。 このチ ャ リテ ィにおける免 税措置 は独特で あ り、寄付す る者 が、少な くとも 3年以上、一定額 を特定のチ ャ リテ ィに寄付す る 契約 をす ると、寄付金の源泉徴収分が当該 チ ャ リ テ ィに還付 され る仕組みになっている18。
このよ うに、ほんの一部ではあるが、国によっ てNPOの制 度 や環 境 が様 々で あ るこ とが理解 で きる。他 国 のNPOの制度 を比較 ・検 討 し、参考 に して い くこ とが、 日本 にお け る今後 のNPO法 人発展につ なが るのではないか と考 える。本稿 で 明 らかに な った課題 を、他 国 のNPOの制度 や環 境 と照 らし合 わせ、具体的な提言 を行 ってい くこ
とを次 なる課題 とし、論 を閉 じることに したい 。
注
NPOに関す る経営学 の研究 は い くつ か存 在 す るが、 まだ企業のそれに比べ ると、圧倒 的 に少 ない。
P.F.ドラ ッカーによる と、 日本 の寺 が 自治 的 で あ った とい う背 景 か ら、最 古 のNPOは 日 本 にあるとい う説 もある。
山内直人 [1999]30‑31頁 経済企画庁 [2000]
許可主義 とは、法律の定 め る要件 を具備 して もなお、設立許可 をす るか ど うか主務官庁の 自由裁量 に任 されている。 これ に対 し認証主 義 とは、法律 に定める要件 を具備 していれば 行政 は必ず認可 を与 えなければな らないとい
うもので ある。
http://www.npo‑homepage.gojp/
経済産業研究所 [2006]
西村剛 [2005]36頁 小島大徳 [2007]194頁
o 堀田力 ・雨宮孝子 [1998]161頁
、ソー345678
菩 管 注 意 義務 とは、善 良 な管理者 の注 意 を もってその職務 を負 う義務の ことである。取 締役 は会社 と委任の関係 にあるため、菩管注 意義務 を負 っている (民法400条、644粂)。
堀田力 ・雨宮孝子 [1998]156頁 堀田力 ・雨宮孝子 [1998]155頁
山内直人 ・馬場英朗 ・石 田祐 [2007]4頁 シ ーズ ‑市民 活動 を支 え る制度 をつ くる会 [2005]
http://www.nta.go.jp/
日本経済新聞朝刊2005.12.18 堀田力 ・雨宮孝子 [1998]23頁
特定非営利活動法人におけるコーポレー ト・ガバナンス
4 1
参考文献
雨宮孝子
[ 2 0 0 0 ]「 NP O
法人への課税 の あ り方 と 今後 の課 題」
『税 理』 第4 3
巻 第9号, ぎ ょ う せ い,8 ‑ 1 4
頁.雨宮孝子
[ 2 0 0 3 ]
「非営利 法人 の立 法論」『 NBI 』
第
7 6 7
号,商事法務,3 4 ‑ 4 2
頁.神作紹之
[ 2 0 0 3 ]
「非営利 団体の ガバ ナ ンス‑ コー ポ レー ト・ガバ ナ ンス論 との比較 を中心 に‑」
『 NBL
』 第7 6 7
号,商事法務,2 3 ‑ 3 3
頁.経 済 企 画庁
[ 2 0 0 0 ]
『平 成1 2
年度 国民生 活 白書』
経済企画庁.
経済産業研究所
[ 2 0 0 5 ]『 2 0 0 5
年NPO
法人 ア ンケー ト調査結果報告』経済産業研究所.経済産業研究所
[ 2 0 0 6 ]F 2 0 0 6
年NPO
法人 ア ンケー ト調査結果報告』 経済産業研究所 .小 島大徳
[ 2 0 0 4 ]
『世界 の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則一原則の体系化 と企業 の実践‑ 』文 集堂.小 島大徳
[ 2 0 0 7 ]
『市民 社会 とコーポ レー ト ・ガ バ ナ ンス』文 異堂.シ ー ズ ‑ 市 民 活 動 を支 え る 制 度 を つ く る 会
[ 2 0 0 5 ]
『新 版 ・改 正NPO
支 援 税 制 準 拠NPO
支 援 税制 が よ くわ か る本 ・図 解』
シ ー ズ ‑市民活動 を支 える制度 をつ くる会 . 西村剛[ 2 0 0 5 ]
「非営利 組織( NPO)
の基本 的性格 に関す る一考察
」
『奈 良産業 大学紀要』 第2 1
集,奈良産業大学,2 9 ‑ 4 7
頁.林昌彦
[ 2 0 0 3 ]
「非営利組織 の戦略経営( 2 ) 」
『流 通科 学 大 学論 集‑ 経 済 ・経 営情 報編‑
』 第1 2
巻 第2
号,流通科学大学学術研究会,1 ‑ 1 4
頁.堀 田力 ・雨宮孝子
[ 1 9 9 8 ]『 NPO
法 コ ンメ ンター ルー 特定非営利 活動促進法の逐条解説‑』 平 文社.
森本三男
[ 1 9 8 2 ]
『経営学入門』 同文舘 . 山内直人[ 1 9 9 9 ]『 NPO
入門』 日本経済新 聞社.山内直 人 ・馬場英朗 ・石 田祐