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台湾民事訴訟法における 裁判官の釈明義務の発展について

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Academic year: 2021

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台湾に於ける取締役候補指名制度  211

*台湾民事訴訟法は,争点集中型の裁判手続(争点中心型審理方式)の構 築を改革の方向として2000〜2002年に重大な改正を行い,その中核として 裁判所の釈明に関する規定が改正された。沈教授の論稿(報告原稿)は,

この改正趣旨と台湾民事訴訟における釈明義務の規定に基づく「積極的裁 判官像」の有用性について論じるものであると言えよう。沈教授は「旧法 時期の最高裁判所は,釈明により訴えの追加,変更,反訴又は新しい訴訟 資料の提出を促すことに関して拒否という厳格態度を採ってきた」という 状況は,この改正により変化したとして,「釈明義務違反を理由とする破 棄判決の比率が2000年の法改正後,旧法時代より著しく高くなったが,こ れは釈明義務の改正と相当関連性がある。」と指摘されている。私は,我 が国現行民訴法の基盤を創設した大正民訴法改正に大きな影響を与えたオ ーストリア民訴法における手続集中理念を研究し,そのキーとなるのが裁 判官の積極性であることを明らかにしてきた。この点で,沈先生の論稿 は,基本的な問題意識を共通する大変興味ある論稿である。

 今日,ドイツ法系だけでなく,英米法系においても,例えば,アメリカ 民訴法では裁判官の積極性を増大させている傾向があり,連邦民事訴訟規 則は裁判官の地位を強化する改正を行った。そして,事前手続(準備手 続)において,裁判官はケースマネジメント(訴訟指揮機能)を引き受け ることになった。イギリス法でもアクテイブ・ケースマネジメントという

【コメント】

台湾民事訴訟法における 裁判官の釈明義務の発展について

松 村 和 德

(2)

212  早稲田大学法務研究論叢第3

形で裁判官の積極性を認める傾向にある。これらは,民事訴訟法における

「積極的裁判官像」が世界的趨勢であることを意味している。台湾民事訴 訟法の改正はまさにこの趨勢を意識し,すでになされた諸外国の改正重点 を取り込む形となっていると言えよう。

 台湾民事訴訟法の特徴は,釈明義務について,一方で当事者の権利保護 を,つまり,当事者の審問請求権の保障及び不意打ち裁判の防止のための 釈明と,他方で,手続促進,訴訟経済化の促進(手続集中),つまり,争 点の整理及び訴訟の促進のための釈明とが明確に分けて意識され,その実 現が実務でも目指されていることにある。そして,当事者の手続協力義務 についても意識されている。民事訴訟における適正な裁判実現と迅速な裁 判実現という,相反するとされてきた目標を実現できる仕組みが創設,実 行されていると言えるのではなかろうか。理論的には,弁論主義の局面で は,協働主義的なものに変わってきたものと言えよう。また,とくに強調 して紹介されたのが,処分権主義の局面での釈明義務を規定した台湾民訴 法独自の規定である同法第199条ノ一である。当事者の処分権を尊重しつ つ,その意思確認について釈明義務を課す,きわめて興味深い規定であ り,わが国の釈明義務論にも影響を与えるものと思われる。

 これに対して,我が国の民事訴訟法及び実務では,争点集中審理方式を 採用したにもかかわらず,当事者主導的運営を支持する立場が多い。当事 者利益を強調しているのであろうが,民事訴訟の世界において,当事者主 導的裁判運営は歴史的に成功した例はほとんどなく,今日,「積極的裁判 官像」が世界的趨勢であることをも勘案すると,当事者主導を強調する日 本の民事訴訟の考え方は実は当事者利益を著しく損なう要因が大きい。沈 教授による台湾改正民訴法の紹介は,台湾民訴法が我が国の民訴法と基本 的には同様の構造をとりながら,裁判官の積極性に基づく民事訴訟を構築 し,成果を挙げていることを明らかにしており,これらの考察は,我が国 の理論,立法論,実務にも非常に参考になると思われる。

参照

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