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艦隊これくしょん -本当に何も知らない提督- ID:89953

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Academic year: 2022

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(1)

艦隊これくしょん ─本当に何も知らない提督─

7seven

(2)

︻注意事項︼

 このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP

DF化したものです︒

 小説の作者︑﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作

品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁

じます︒

︻ あ ら すじ ︼

 齢18の少年は友に勧められて︑艦隊これくしょんというブラウザ

ゲームに手を出す︒

 空いていたサーバーに籍を置こうとしたら⁝⁝アレードコデスカ

ココー

!?

﹁やあ︑君が来月から私の鎮守府で勉強するという修習生かな﹂

 うわー違います

!!や︑やめろ

!う︑うわー

!!!︵略︶

 そんなミリ知識もへったくれもない少年による︑提督への道︒

 ※ミリ知識皆無なのはオリ主も筆者も同じです︒生暖かい目で見

守ってください︒

 ※投稿は不定期です︒

 ※初期艦から推し艦まで筆者の好みと筆者の鎮守府です︒

 ※舞台は現代なのでスマホとか普通にあります︒1人の艦娘は鎮

守府に1人顕現できます︒

 ※主軸ではないのですが︑女提督

×艦娘表現もあります︒

(3)

  目    次   

││││││ 00│00 提督が鎮守府に着任していません 

1

01 本当に何も知らない提督候補

││││││││││││ 01│01 はじめてのかんむす 

6

│││││││││││││││ 01│02 いざ︑呉鎮へ 

10

││││││││││││││││ 01│03 呉鎮探検隊 

14

│││││││││││││││ 01│04 呉鎮歓迎会

! 

18

│││││││││││││││││ 01│05 朝の呉鎮 

21

│││││││││││││││││ 01│06 出撃命令 

25

││││││││││││││││ 01│07 支援艦隊

? 

29

│││││││││││││││││││ 01│08 投錨 

34

│││││││││││││││││ 01│09 吹雪の瞳 

37

│││││││││││││││ 01│10 ﹃最初の艦娘﹄ 

40

││││││││││││││││ 01│11 呉鎮卒業式 

44

│││││││││││││ 01│12 ﹃叢雲﹄のはなし 

48

02 本当に何も知らない提督

││││││││ 02│01 はじめての ていとくぎょう 

53

││││││││││ 02│02 はじめての しゅつげき 

57

(4)

00│00 提 督が 鎮守府 に着 任 していませ ん

 特徴がないことが特徴とまで言われた俺︒

 何事もほどほど︑高校卒業して進学する大学も並︒

 選んだ学部も︑珍しいとは到底言えない︒

 友達の数も並︑仲のよさも並︒並しかない︒

 俺を5段階評定で表すなら︑完全なオール3︒

 さて︑オール3な俺はたまに話す程度の友人から︑艦隊これくしょ

んというブラウザゲームを勧められた︒今年で3年目を迎えるゲー

ムで︑美少女達を戦わせるゲーム⁝⁝なんだそうだ︒こういう言い方

はあれだが︑男は何してるんだ︒

 美少女達ってことは︑成人女性だけじゃなくて︑中学生とかも戦わ

せてるんだろう

? 可哀想に︒言ってしまえばキモヲタの範疇に入

るであろう佐伯が見せてくれたその美少女達︑艦娘は年の頃はせいぜ

い18︑19の俺達と変わらないぐらいだったが⁝⁝あれは美少女と

いうよりも美女にあたるだろう︒

 DMMに登録して︑そして空いている鎮守府を探す︒

 友人曰く人気が高いおかげで着任にも一苦労するそうなのだが︑運

がよかったのか︑いくつかの泊地は着任枠が空いている︒それでも鎮

守府には着任できないあたりに俺のオール3みを感じる︒

 勧めてくれた友人︑佐伯と同じ名の泊地に空きを確認した俺は︑特

に希望のサーバがあるわけでもなく︑佐伯湾泊地をクリックした︒

 ⁝⁝さて︑これで提督着任か︒初期艦5人からどの娘を選んだか報

告しろって言われてたが⁝⁝俺は軍艦について全然知らないんだよ

なあ︒

 月並みに︑戦艦大和とか︑そういうのを知っている程度︒戦艦と軍

艦って何か違うのか

?

 読み込み中画面をぼーっと見ていると⁝⁝

 カッ

 結婚式の記念写真撮影とかよりも眩しいフラッシュみたいなのに

(5)

網膜が焼かれて︑一瞬で世界が暗転した︒

 ***

 目を開けると︑一番最初に目に入ったのは白いスラックス︒触って

みると間違いなく俺の足だ︒さっきまで黒のジャージだったのに︒

なんでこんな︑ぱりっと糊のきいたスラックスなんかを︒

 視線を上げると︑硝子戸の書棚︒難しげで︑そして古い本が収めら

れている︒その硝子に映る俺は︑白い軍服のようなものを着ていた︒

肩になんか飾りもついてるし︑すごく本格的だ︒

 というかここはどこだ︒見渡しても書棚がたくさんあって︑あとは

扉があるだけなんだが︒

 その時︑がちゃ︑と扉についているドアノブが回った︒

 扉が開いて︑そこから出てきたのは⁝⁝じゃないな︑入ってきたの

は女二人だ︒

 片方は俺の今着ている服と同じ服を着た︑黒髪と赤い口紅が目を引

く背の高い女︒もう片方は︑赤いスカートを履いた︑もうひとりの女

と変わらないくらいの背丈の女だ︒

﹁やあ︑待たせたようだな︒君が来月から私の鎮守府で勉強するとい

う修習生かな﹂

 見た目に反して男勝りな話し方をする赤い口紅の女性︒

 もう一人の女性は後ろに控えていて︑まさに撫子といった印象

を受ける︒

﹁︑本当に修習生をお受けなさるつもりですか

? ︑反対で

す︒上官に敬礼も挨拶も返事もできないような落ちこぼれを呉のよ

うに大きな鎮守府で受け入れるメリットがあるとは思えません﹂

﹁大和︑やめなさい﹂

 ⁝⁝提督

? ⁝⁝大和

?

﹁すみません︑あの︑おふたりはどちらさまですか

?﹂

﹁呉鎮の提督を知らないか⁝⁝成績に難ありと聞いていたが⁝⁝まあ

佐伯 あずさいい︒私は日本海軍所属呉鎮守府の提督︑だ︒君が内海君だ

(6)

?﹂ 内海 伊織 ﹁はい︑です﹂

﹁うむ︒君が私の鎮守府で後期修習を行うことになっている提督候補

生だな︒呉へは⁝⁝そうだな︑広島駅まで新幹線で来たまえ︒そこま

で迎えを出す︒修習は2か月︑その間必要な着替え等は呉鎮宛に海軍

本部から送ってくれ︒まあ何︑修習後に何事もなければ呉の傘下の鎮

守府に配属になるだろう︒仲良くしていこう﹂

 ⁝⁝ん

? 修習

? 配属

?

﹁あの︑人違いじゃありませんか

?﹂

﹁そんなわけないだろう︒顔写真とも一致するし︑何よりその軍服が

何よりの証拠じゃないか﹂

 突き出された履歴書の顔写真は︑確かに俺だ︒俺のオール3な顔

だ︒

 ただ︑履歴書の⁝⁝学歴欄がおかしい︒

 中学までは合っている︒でも︑中学卒業後に︑海軍提督候補養成学

校に入学して︑そして今春卒業したことになっている︒なんだその学

校︒聞いたことがないぞ︒

 そして︑何より気になるのが︒

 佐伯と名乗った女性の後ろに控える︑赤いスカートに黒髪をポニー

テールにした女性︒大和と呼ばれた彼女の容姿が︑先日佐伯に見せら

れた艦娘の顔と完全に一致すること︒

 あいつの嫁艦とやらも︑確か戦艦大和だったなあ︒

﹁あの︑言いにくいんですが︑俺こんな高校出てないですし︑気付いた

らここにいたというか⁝⁝﹂

﹁⁝⁝はぁ︒こりゃ確かに問題児だな﹂

 問題児とは失礼な︒今まで可もなく不可もなくすごしてきた俺の

どこに問題があるんだ︒オール3すぎて問題だとでも言うのか

? 

悪かったな

!

﹁ここはどこだかわかるか

?﹂

﹁わかりません﹂

﹁はぁ﹂

(7)

 溜息ばっかり吐かれると俺が申し訳なくなるな︒俺は何もしてな

いのに︒

 っていうかあれ

?

﹁すみません︑あなたは日本海軍の提督とおっしゃいましたか

?﹂

﹁ああ︑日本海軍所属呉鎮守府の提督︑佐伯だ﹂

﹁よし︑夢だな︒寝よう﹂

﹁寝るな︒何がおかしい﹂

﹁日本に海軍なんてないですよ︒性質の悪い冗談か︑夢かに決まって

います﹂

﹁それはもう何年も前の話だ︒お前が海軍提督候補養成学校を受験し

た志望動機も︑深海棲艦に︑結婚記念日で客船に乗っていた両親を殺

されたから︑となっているぞ﹂

﹁ないない︑何ですかそのシンカイセーカンって︒確かに実の両親は

結婚記念日の旅行で客船に乗っていたら船が沈んで亡くなりました

けど﹂

 佐伯さんが黙ったので︑俺は白い軍服が汚れるのも気にせずその場

に横になる︒

 そうだ︑寝れば夢も覚めるだろ︒

﹁⁝⁝そうか︑お前も︑なのだな﹂

 突然声のトーンが変わったのに驚いて︑俺は体を起こす︒佐伯さん

は少しばかり切なそうな︑嬉しそうな︑微妙な顔をしていた︒

﹁すまない︒だが内海︑お前の両親はもういないし︑両親の

仇を取るためと︑学費免除を理由に提督候補養成学校に入学したん

だ︒手に職などない︑お前が生きていくにはもう︑提督になるしかな

いんだ﹂

﹁いいですよ︑夢だからそのうち覚めます﹂

﹁いや︑覚めることはない︒何度寝て起きてもこれは夢じゃない︒●

●●高校卒業のお前はもう︑存在しないだろう﹂

 ●●●高校

? なんでこの人が俺の出身高校知ってるんだ

?

 ついでに存在しないってなんだ︒

﹁お前はこの世界にトリップ⁝⁝って言い方じゃわからんか︒この世

(8)

界のお前として生きていくしかなくなったんだ﹂

﹁は︑はぁ﹂

﹁⁝⁝お前が私の鎮守府で修習することになってよかった︒じっくり

と︑時間をかけてこの世界での生き方を教えられる﹂

 まったくよくわからんのだが⁝⁝表情といい︑口ぶりといい︑佐伯

さんの言うことが本当なら︑佐伯さんは俺と同じ立場⁝⁝とかなんだ

ろうか︒

﹁提督︑お時間です﹂

﹁ああ︑今日は顔合わせだけだったからな⁝⁝︒内海︑私の方から修習

開始時期を早めてもらうように志願しておく︒周りの話にはうまく

話を合わせておけ︒あとこのような服を着ているのは大半が上官だ︒

このように敬礼をしておけ﹂

 よく見る警官とかのとは全然違う敬礼︒俺も真似をすると︑佐伯さ

んは満足げに笑って︑部屋を出ていった︒

 ⁝⁝ってちょっと待て︑俺はここからどうすればいいんだよ

!?

(9)

01  本当に何 も知ら ない 提 督 候補

01│01  はじ め てのか んむ す

 あの後︑俺は胸ポケットに海軍提督候補生手帳という名のそのまま

名前通りの手帳があることに気付いた︒

 それのおかげでなんとか迷いながら自室で休むことができた︒

 で︑寝て起きても佐伯さんの言うとおり︑夢は覚めていない︒え︑マ

ジで夢じゃないんですか

? 帰りたいぞ︑家族のところに︒でも帰る

方法なんてどこにあるんだよ︒

 さて︑ここの建物はこの世界とやらの俺の出身高校である海軍提督

候補養成学校に隣接しているらしい︒

 学校での成績が極めて優秀な生徒は卒業後すぐに自分の鎮守府を

持つが︑それ以外は今稼働している鎮守府のうち︑候補生受け入れの

余裕がある鎮守府で1〜2か月勉強をしてから自分の鎮守府を持つ

らしい︒

 伝聞推定でしか説明できないのがむなしいが︑こればかりはしょう

がないと思う︒

 そして︑何より︒

 この世界とやらは︑どうやら艦隊これくしょんに酷似しているよう

なのだ︒

 5年前に現れた︑正体不明の敵戦力﹁深海棲艦﹂︒それに歯の立たな

い現代兵器︒

 そして︑深海棲艦にすら大ダメージを与えられる少女たち︑﹁艦娘﹂︒

 友人の佐伯の言っていた艦隊これくしょんの情報と一致する部分

が多いのだ︒

 ゲームだと思ってたんだが⁝⁝つまり︑佐伯さんの言っていること

は︑俺と佐伯さんは︑ゲーム画面の向こうから指示を出しているはず

が︑ゲームの世界に引きずり込まれたと︑そういうことなんだろうか︒

 そのあたりは未だよくわからんが︑とりあえず俺は非日常を楽しも

(10)

うと思っている︒

 艦娘とやらは美少女と美女ばかりだ︑女っ気のなかった俺の青春時

代を思えば︑まあ少し遅い青春時代と言えるだろう︒

 ⁝⁝悪かったなオール3だからモテなかったんだよ︒

 さて︑そんなこんなで提督候補生という立場に立たされている俺だ

が︑護衛兼艦娘と支え合うことを覚える一貫として︑いわゆる初期艦

と言われる艦娘を宛がわれるらしい︒

 初期艦は駆逐艦とのことなので︑まあ俺より幼い艦娘ばかりだろ

う︒

 ゲームでは選べたけど︑こっちでは選ぶ権利がないみたいで︑今は

その艦娘に会いに行くところだ︒

﹁内海君の初期艦は叢雲という艦娘でね︒⁝⁝少々御しにくいが︑い

い子なんだよ﹂

 ふむ︑むらくも︒御しにくいってどういうことなんだろうな︒

 案内をしてくれている養成学校の先生が扉を開けて入るのに続く

と︑そこには青みがかった銀髪に︑頭に謎の機械をつけた︑セーラー

ワンピースみたいなものを着た少女がいた︒

﹁叢雲︑待たせたね﹂

﹁ほんっと︑遅かったわ﹂

﹁すまないね︒彼が君の司令官になる内海君だよ﹂

 高飛車な子だなあ︒

 俺︑一緒にやってけるんだろうか⁝⁝

?

﹁内海伊織です︒よろしく︑叢雲⁝⁝ちゃん

?﹂

﹁ちゃん付けなんて気色悪いことしないで︒叢雲で結構よ﹂

﹁よし︑それじゃあ内海君と叢雲は11日のヒトフタマルサンの新幹

線で広島駅まで行って︑そこで呉鎮からのお迎えと合流し︑呉鎮で勉

強してきてください﹂

﹁11日

? 私は26日からだって聞いていたのだけれど

?﹂

﹁呉鎮の提督から︑少し早めてほしいって頼まれてね︒大規模作戦の

直前はてんてこ舞いで指導してる暇がないからって﹂

(11)

﹁仕方ないわね⁝⁝﹂

 言葉に棘は感じるけど︑正当な理由があれば従うみたいだし︑確か

に根はいい子︑なのかもしれないな︒そんな初期艦感想︒

 今日が7日なので︑あと4日でこの少女とある程度の交流をはかる

必要があるっちゃあるんだが︑やっぱりこの年の娘が戦うなんて︑

ちょっと納得できないよなあ︒他に対抗手段がないって言ってもさ︒

﹁それじゃあ︑叢雲は今日から4日間︑内海君の隣の部屋で過ごしてく

れ︒いいね

?﹂

﹁わかったわ︒鍵をちょうだい﹂

﹁はい︑どうぞ﹂

 先生は鍵を渡すと出ていってしまう︒とりあえず︑まあ︒

﹁叢雲︑もうすぐ昼だし︑先に食堂に行かないか

?﹂

﹁悪くないわね︒それじゃあ行きましょう﹂

 俺の部屋に置いてあった本には︑艦娘も体はほとんど人間で︑違い

は怪我を負っても入渠したら人間よりもとても早く治る程度のこと

だと書いてあった︒

 ということは︑普通に食事を食べるということだ︒なら同じ釜の飯

を⁝⁝って感じで︑一緒に食卓を囲めば交流も図れるんじゃなかろう

か︒

 食堂は時間が時間だけあって︑人で賑わい始めている︒

 ここの食堂は俺と同じ立場の人や海軍の大本営で働いている人が

来るらしいが︑そういう事務職でも艦娘を1人︑護衛兼秘書でつける

らしく︑様々な少女や女性を連れた人が訪れている︒

 ちなみにここの食堂の味はまあまあ︒向こうでの俺の養母はとて

も料理上手で︑特に肉じゃがの味はこれ以上にうまいものなど世界に

は存在しないと思っていたほどだから︑俺の舌が肥えてしまっている

可能性もあるが︒

﹁ここのメニュー︑どれがおすすめなの﹂

﹁ええと⁝⁝俺はよく和定食を食べるけど︑叢雲には多いかな

?﹂

﹁そうね︒ならハーフセットを頼んでみるわ﹂

 叢雲はハーフセットを︑俺は気分的に洋定食を選んで注文する︒艦

(12)

娘は確定で無料︑ここの職員と俺達提督補佐は身分証で無料という懐

に優しいサービスだ︒

 受け取った料理を持って席に着き︑食べ始める︒

 隣に座る叢雲は︑確かに幼く小学校中〜高学年ぐらいといった印象

を受けるんだが︑それにしては痩せすぎている︒ぴったりとしたセー

ラーワンピースが︑浮かび上がったあばら骨までくっきりと見せ付け

ている︒

﹁なあ叢雲︑余計なお世話だと思うけど﹂

﹁余計だと思うなら口に出さないでちょうだい﹂

﹁もっと食べたほうがいいぞ

? そんなに細くて︑戦ってる最中に怪

我したらどうするんだ﹂

﹁バッカじゃないの︒戦闘で傷はつきものよ﹂

﹁無傷が一番だろう﹂

 叢雲は無言でハーフセットを食べきると︑カウンターでおかわりの

唐揚げを少しもらってきて︑ぱくぱくと食べていた︒

 うんうん︑それぐらい食べて健康的なほうがいい︒戦闘とか関係な

くな︒

 体脂肪率低すぎると免疫力も下がるし︑食べるのは大事だな︑うん

うん︒

(13)

01│02  いざ ︑ 呉 鎮 へ

 手配してもらった新幹線の切符を持って︑叢雲と駅へと行く︒

 今日から俺は呉鎮守府で提督候補として鎮守府修習をすることに

なる︒

 幸い俺も叢雲もほとんど荷物はなく︑俺は本と着替え︑叢雲も着替

えだけを先に呉鎮守府のほうに送っており︑今手荷物は財布とスマホ

と切符ぐらいのものだ︒

 叢雲があまり自分のことを教えてくれないので︑行き道の新幹線の

中で叢雲の名を検索する︒クソッスマホで変換できないぞ⁝⁝

! 

ひらがなで検索をかけるから︑対深海棲艦においては無力となった護

衛艦や巡視艇ばっかりがヒットするんだが︒

 あっ︑もしかしてこの東雲型駆逐艦︑もしくは吹雪型駆逐艦のどっ

ちかか

?

 そうか叢雲ってこんな感じの

﹁さっきから何してるのよ﹂

 叢雲がスマホを覗きこんでくる︒プライバシーってないのか

?

﹁いや︑叢雲ってどんな船かなと思って﹂

﹁それなら私に聞くほうが早いでしょ﹂

﹁叢雲があんまり自分のこと話してくれなくてさ⁝⁝でも俺が知って

たらかっこいいかなって﹂

﹁あんたねぇ⁝⁝知ってることは司令官として常識よ

? 自分の指揮

する艦隊のことを知りもしないなんて司令官失格だから﹂

 まあ︑それもそうか⁝⁝︒

﹁私は特型駆逐艦として生まれた吹雪の妹分なのよ︒吹雪から始まる

シリーズだから吹雪型︒その5番目だから吹雪型5番艦︑それが私っ

てわけ︒まったく︑それぐらいもわからないなんてあの学校は何を教

えてるのかしら﹂

﹁吹雪型の5番艦の︑叢雲︑だな︒覚えた﹂

﹁ま︑せいぜい提督候補生のうちに勉強しておきなさい︒提督になっ

たら鎮守府の運営に出撃命令︑エトセトラ⁝⁝忙しいらしいわよ﹂

(14)

﹁だなあ⁝⁝︒佐伯さんも︑忙しいだろうに受け入れてもらえて本当

にありがたい﹂

 大規模作戦

? がなんなのか俺は知らないけど︑まあ普通に考えた

ら規模の大きい出撃ってことなんだろうし︒

 俺もいつか参加するのかなあ︒

 まもなく広島駅︑広島駅と新幹線のアナウンスが流れる︒手荷物を

持って叢雲とふたり︑新幹線を降りた︒

 待ち合わせは新幹線改札を出たところで︑と言われている︒

 迎えに艦娘をやるから︑それに着いていけとも︒

﹁で︑どの艦娘かは聞かなかったわけ

?﹂

﹁佐伯さん曰く︑君どうせ見てもわからないだろうって︒艦娘同士な

らお互いわかるし︑秘書艦を頼るといいらしいから⁝⁝叢雲︑頼む﹂

﹁ほんっとに︑しょうがないわねぇ﹂

 頭についているうさみみ状の浮遊ユニットのランプをちかちか点

滅させてきょろきょろしていると︑叢雲は何かに気付いたようで歩き

出す︒

 それに着いていくと︑そこには茶髪をポニーテールにした︑品のよ

さそうな少女が立っていた︒

﹁あんた︑重巡熊野ね

?﹂

﹁ええ︒わたくし︑呉鎮守府所属の重巡洋艦︑熊野ですわ︒そちらは本

日から呉鎮守府で修習予定の提督候補・内海さんと︑その秘書艦叢雲

でよろしかったかしら

?﹂

 立ち姿から受ける印象と変わらない物言い︒

 女子高生みたいな出で立ちだけど︑もっと年上のように感じる︒

 まあ︑実のところ彼女たちは軍艦だったころの記憶もあるらしい

し︑俺なんか目じゃないくらい経験豊かなわけだが︒

﹁初めまして︑内海伊織です︒よろしくお願いします︑熊野さん﹂

﹁内海の秘書艦︑叢雲よ︒よろしく頼むわ﹂

﹁それでは鎮守府にご案内します﹂

 鎮守府へは専用車を使っての移動のようで︑まるでVIPにでも

(15)

なったような気分だ︒

 まあ︑専用車とは言っても見た目が見た目だからVIP気分は半減

するわけなのだが︒

 ***

 呉鎮守府に到着すると︑まずボディーチェックを受けた︒

 本当に財布とスマホくらいしか手荷物がないから︑すぐに終わっ

た︒

 そして⁝⁝︒

﹁こちらが提督のお部屋ですわ﹂

﹁ありがとうございます︑熊野さん﹂

﹁どういたしまして︒提督︑熊野ですわ︒内海さんをお連れしました﹂

 中からどうぞ︑と聞こえる︒失礼します︑と扉を開けて入る熊野さ

んに続いて俺も入る︒

 中は豪勢な執務室で︑立派な執務机と椅子︑応接テーブル︑応接ソ

ファー︑書棚と非常にいい物の置いてある部屋だと︑俺にも一瞬でわ

かる︒

 執務机で書類を広げてペンを握る佐伯さんは︑今日も赤い口紅をし

ている︒

﹁やあ︑よく来たな︒ようこそ︑呉鎮守府へ﹂

﹁今日からお世話になります﹂

 一礼すると︑堅苦しいのはいらんよと言われてしまった︒

﹁改めて︑私がこの鎮守府の主の佐伯梓だ︒階級は中将︒そしてそっ

ちが︑私の秘書艦である大和だ﹂

﹁大和型戦艦1番艦︑大和です﹂

﹁俺は内海伊織です︒階級は少佐です︒こっちは秘書艦の叢雲です﹂

﹁吹雪型駆逐艦5番艦︑叢雲よ﹂

﹁んじゃあまず︑誰か暇をしていそうな艦娘を呼んでここの案内をさ

せるよ︒ここの決まりとかも聞いてくれ︒夕飯の時に君のことをみ

んなに紹介しよう﹂

(16)

﹁わかりました︑ありがとうございます﹂

 大和さんに︑鎮守府内放送で暇そうな娘を呼んでくれと言ってから

ペンを握った佐伯さん︒気付いたらばっちりと目が合う︒

 しばらく見つめ合っていると赤い唇がにっと釣り上がった︒

﹁ふぅん︒たった数日でいい目をするようになったじゃないか﹂

﹁ありがとうございます⁝⁝

?﹂

 そのうち扉の向こうがバタバタと騒がしくなり︑失礼します

! と

元気な声が聞こえてくるのであった︒

(17)

01│03  呉 鎮探検隊

 開いた扉の向こうには叢雲と近い年頃の少女を先頭に︑何人かの艦

娘がいた︒

 けれどその全ての艦娘が︑みな小学校高学年とか︑それぐらいの少

女達︒見るからに駆逐艦の艦娘︑といった印象を受けた︒

﹁こらこら︑ちゃんと名乗ってから開けなさい﹂

﹁あっ︑つい︒すみません︑司令官⁝⁝﹂

 先頭の黒髪の女の子はしょんぼりとして肩を落とした︒

 その少女を見て叢雲は︑驚きの表情を見せている︒

﹁挨拶しなさい﹂

﹁はいっ

! 吹雪型駆逐艦︑ネームシップの吹雪です

! どうかよろ

しくお願いします

!﹂

﹁ご丁寧にどうも︒初めまして︑今日からここで勉強することになっ

た︑提督候補生の内海伊織といいます︒こっちは俺の秘書艦の叢雲︑

きっと君の妹分にあたると思います﹂

﹁叢雲よ︒⁝⁝久し振りね︑吹雪﹂

﹁叢雲ちゃん⁝⁝本当に叢雲ちゃんだ

!﹂

 吹雪ちゃんは叢雲をぎゅうっと抱き締める︒後ろにいた少女達も

叢雲と吹雪ちゃんを囲む︒

 ほのぼのとした光景だ︒

﹁すまんな内海︒ウチにも駆逐艦叢雲は所属していたんだが︑色々

あって解体されてしまっていてな︒⁝⁝そこにいるのは同じく吹雪

型の子たちだよ﹂

 解体って⁝⁝壊すことか

? なんでなんだろう︒

 聞きたい︒だけど︑佐伯さんの顔には聞くなとはっきり書かれてし

まっている︒

﹁吹雪︑感動の再会もいいがメインは内海に鎮守府を案内することだ

からな︒ヒトハチマルマルに食堂集合で︑鎮守府の決まりを教えて

やっておいてくれ︒部屋は客室棟203と204だ﹂

﹁はい︑お任せください

! 行きましょう内海さん︑叢雲ちゃん

!﹂

(18)

 こうして吹雪ちゃんを始めとする吹雪型駆逐艦による︑呉鎮守府案

内ツアーが幕を開けた︒

 ***

 ﹁ここが工廠で︑こっちが艦娘用の風呂場だ﹂

﹁艦娘用

?﹂

﹁司令官は女だけど︑今の司令官がこの鎮守府に着任する前は男性司

令官がいたらしいから︑その時の名残だと思うよ﹂

﹁ああ︑なるほど︒俺が艦娘と一緒にお風呂に入るのはよくないから

なあ⁝⁝﹂

﹁この先は資源貯蓄倉庫なので︑今度はあっちに行きましょうか﹂

 吹雪ちゃんはずっと叢雲の手を握ったまま︒案内は深雪ちゃんや

白雪ちゃんが積極的にしてくれている︒初雪ちゃんと磯波ちゃんは

自己紹介をしたきり︑一緒についてくるばかり︒あまり話すのが得意

じゃないのかもしれない︒

 しかし大きな鎮守府だ︒100を超える艦娘の所属する鎮守府に

相応しい規模︒

﹁ここの先は艦娘寮です︒こっちを真っ直ぐに進めば食堂で︑食堂に

行く途中に酒保もあります﹂

﹁あれ

? 白雪やん︒後ろのは⁝⁝お客さんかいな﹂

 どこか胡散臭い関西弁の少女の声が飛んでくる︒白雪ちゃんは

りゅうじょうさん︑と呼んだ︒

 りゅうじょう︑りゅうじょう⁝⁝ああ︑軽空母の龍驤か︒こっちに

来てから本で読んだことある︒軽空母の中でも飛び抜けて参加作戦

数が多かったと言われてる空母だ︒

﹁初めまして︑今日からこの鎮守府で勉強をする︑提督候補生の内海で

す﹂

﹁こらどうも︒ウチは軽空母︑龍驤や︒よろしゅうなー︑内海はん﹂

﹁こちらこそよろしくお願いします︒こっちは俺の秘書艦の叢雲で

す﹂

(19)

﹁駆逐艦︑叢雲よ﹂

﹁ふうん︑叢雲なあ⁝⁝﹂

 龍驤さんはもの珍しげに叢雲を見ている︒そんなに珍しい艦娘な

のか⁝⁝

?

﹁龍驤さんはこの鎮守府に来たのが遅かったほうなので︑以前この鎮

守府にいた叢雲ちゃんとは会ってないんです﹂

﹁せやなぁ︒艦娘になってから会うんはこの叢雲が初めてや﹂

﹁ここの私は一体何をしたの

? 解体処分を受けたって聞いたけれ

ど﹂

 そこにいた駆逐艦達はみな︑貝のようになってしまった︒

 俺と龍驤と叢雲はただ︑首を傾げるばかり︒

 解体処分ってつまりあの︑あれだろう︒かなり重い罰︑人間でいう

ところの死刑とかになるんじゃないのか︒⁝⁝何をしたんだ︒殺人

? それとも放火

?

﹁あっれー

? もう夕飯の時間だよ︑みんな食堂に集合ーっ

!﹂

 頭におだんごをふたつ作った茶髪の少女がそういって拳を突き上

げたまま︑食堂のほうへと歩いて行った︒⁝⁝元気のいい娘だな︒

﹁そうね︑そろそろヒトハチマルマルよ︒夕飯の時間なのよね

?﹂

﹁はい︑席は自由で︑食事は各自の食べる量を盛ってもらうんですよ﹂

﹁おかわりも︑勿論できるし⁝⁝﹂

﹁おかわり自由

! いいですね﹂

 鎮守府運営のあれこれはわからんが︑それでも食費を十二分に賄え

ているっていうのは︑流石大鎮守府だなあって感じだ︒

 飯を食べさせるのがどれぐらい大変かなんて︑親戚にたらい回しに

された時に痛いほど感じたしな︒

﹁⁝⁝ねぇ吹雪︑さっきからちょっと歩きにくいわ﹂

﹁⁝⁝ごめんなさい︑叢雲ちゃん﹂

 口だけは謝っていてもしっかりと抱きしめた叢雲の右腕を離すこ

とはなくて︑叢雲もやれやれと溜息を吐いている︒それでも振り払わ

ないあたり︑姉妹なんだろうなあ︒

 ⁝⁝佐伯さんはとても優秀な提督に見えたけど︑佐伯さんですら解

(20)

決できていない問題ってあるんだな︒ばちりと叢雲と目が合った︒

(21)

01│04  呉 鎮 歓 迎会

!

 食堂に入ると︑艦娘がたくさんいて︑みんなが思い思いの席につい

ている︒

 見たことのある艦娘︑見たことのない艦娘︑様々だ︒

 そして︑駆逐艦と思わしき艦娘達に囲まれている︑佐伯さん︒

 佐伯さんはこちらに気が付くと︑片手を上げたので俺も一礼してお

いた︒

 その手をこいこい︑と招くものだから︑俺も素直にそっちに行く︒

﹁しれぇ︑この方は誰ですかぁ

?﹂

﹁今紹介するから︑いい子で待っててくれ雪風﹂

﹁はいっ

!﹂

 艦娘は一部きわどい服装の娘がいる︒今の雪風という娘もそのひ

とりだ︒もうちょっと色が濃くて長いワンピースを着なさいね︒

﹁やぁ︑鎮守府探検は楽しめたかな

?﹂

﹁はい︑とても﹂

﹁うんうん︑それは結構︒はい︑全員注目

!!﹂

 佐伯さんがパンパンと手を打ち鳴らすと︑厨房も︑厨房の前で並ん

でいた艦娘も︑席に座って談笑しながら食事していた艦娘も︑みんな

がさっとこっちに注目した︒

﹁今日からこの鎮守府で︑提督候補生の教育を行う︒名前は内海だ︒

私の仕事に同行するため︑顔を覚えておくように﹂

﹁内海伊織です︒よろしくお願いします﹂

﹁以上︑戻ってよし﹂

 佐伯さんの戻ってよしが聞こえるとすぐに談笑や調理に戻るこの

鎮守府は︑指令系統がしっかりしていそうだ︒めりはりがあるという

か︑なんというか︒

﹁内海さん

! 私︑陽炎型駆逐艦の雪風です

! よろしくお願いしま

!﹂

﹁同じく陽炎型駆逐艦︑時津風︒よろしくね〜﹂

 佐伯さんと一緒にいた艦娘ふたり︑雪風と時津風︒

(22)

 このふたりも姉妹なのかあ︒

﹁よろしくお願いします︑雪風ちゃん︑時津風ちゃん︒雪風ちゃんのそ

れは何ですか

?﹂

﹁これは双眼鏡です

! しれぇがくれたものなんですよ

!﹂

﹁雪風は戦時中の超武勲艦でね︒太平洋を庭のように駆けずりまわっ

ていた間に︑僚艦の乗員の救助から︑漂流者や沈没船の乗員救助︑撃

墜された艦載機のパイロットの救助⁝⁝色々な人間を助けているん

だ︒そういうことができる優しい娘になってほしいと思って︑救助を

求めている人を見つけられるように買ってあげたんだよ﹂

﹁へえ⁝⁝いいですね︒雪風ちゃん︑頑張ってね﹂

﹁はい︑頑張ります

!﹂

 俺には妹はいなかったけど︑いたらこんな感じなんだろうか︒

 それにしてもすごいなぁ︑太平洋が庭って︒こんなでかい庭持って

る人初めて見たぞ俺︒

﹁お疲れさまです︑内海提督候補︒お食事はどれぐらいにしましょう

?﹂

 厨房のカウンターでは︑和服に黒髪の︑いかにも日本人女性といっ

た感じの風貌の女性が︑お茶碗片手に俺に問いかけている︒

﹁茶碗いっぱいにお願いします﹂

﹁あらあら︑ふふふ⁝⁝︒男性ですものね﹂

 しとやかに笑って︑今日のメニューであろうとんかつや︑白米︑味

噌汁をトレーに置いてくれる︒旅館の女将さんとか︑こんな感じじゃ

ないか

? 旅館行ったことないけど︒

﹁彼女は軽空母︑鳳翔だ︒最初から空母として建造された世界初の軍

艦という非常に伝統のある艦で︑普段はこうして穏やかだが︑実戦に

出ると⁝⁝いやなんでもない﹂

﹁えっ﹂

﹁うふふ︑ほら提督︑提督候補︑お食事が用意できましたよ﹂

 言いかけてやめるとかひどいよな

!? すごい気になる

!

 けど鳳翔さんの背後に何かが見えた気がして気になると言いにく

い⁝⁝︒

(23)

 というか︑最初から空母としてってことは︑最初は空母じゃない状

態から空母にした船もあるのか

? ちょっとよくわからん︒

﹁ああ︑それでだな内海︒もう客室を見たかもしれんが︑客室にはシャ

ワールームがついている︒風呂はそこで済ませてくれ︒広い風呂な

ら鎮守府から徒歩20分くらいのところに銭湯もある﹂

﹁叢雲⁝⁝は吹雪ちゃん達と一緒に艦娘用のお風呂に入れても大丈夫

ですよね

?﹂

﹁ああ︑それについては構わん︒艦娘にも裸の付き合いが必要だろう﹂

 船ってもともと服なんて概念ないんじゃ⁝⁝︒

﹁明日から早速勉強に移る︒お前は他の提督候補どもより知識が不足

しているからハードスケジュールにはなるが︑2か月できっちりと有

象無象の提督よりも優秀な提督候補に叩き上げてやろう﹂

﹁よかったわね︑いい教官ができて﹂

 叢雲︑背後に鬼が見える人をいい教官ってちょっとどうなんだ︒

﹁まずは鎮守府内の対外活動をしているところを見に行く︒明朝マル

ロクサンマルにこの建物の玄関入口に集合するように︒叢雲も行っ

てくれ﹂

﹁わかったわ﹂

 鎮守府内の対外活動ってなんだ︒入る時のボディーチェックみた

いなあれか

? ボディーチェックの守衛を見に行くってどういうこ

となんだ

?

 よくわからん︒それでも提督候補修習生の幕開けだ︑よくわからん

なりに頑張るしかない︒

(24)

01│05 朝 の呉 鎮

 小鳥もさえずるマルロクサンマル︒眠いが︑顔も洗って歯も磨い

て︑着替えた状態で玄関に立っている︒叢雲は眠気をまったく感じさ

せない︑いつも通りの凛々しい顔だ︒

﹁くぁ⁝⁝﹂

﹁何よ︑だらしないわね﹂

﹁ほんまや︒おっきいあくびやなぁ﹂

 のびをしていると︑聞いたことのある声が後ろから飛んできた︒龍

驤さんの声だ︒

﹁あれ︑龍驤さん﹂

﹁龍驤でええよ︒おはよう﹂

﹁おはようございます﹂

﹁内海はんと叢雲はここで何してるん

?﹂

 龍驤さんへ佐伯さんから言われたことを素直に伝えると︑ほなウチ

についてきてと歩きだしてしまった︒歩いていく先には⁝⁝鎮守府

に入る時にくぐった門の︑隣の建物︒そういえば門の外のこのあたり

には郵便ポストがあったかもしれない︒

 ああ︑もしかしてここは︒

﹁ここは外部からの郵便や本部からの通信を受けて︑不審物を排除す

る仕事をしてるのか﹂

﹁せやで︒あとはー⁝⁝これ︒本部からの電文で︑毎日きちんと片付

けなアカンらしくて︒これを完成さしたやつとか︑出撃報告書とか︑

そんなんはまた夕方にここに出しにくるんや﹂

﹁夕方

?﹂

﹁夕飯の前や︒取りにくるのも持ってくるのも︑うちの鎮守府では当

番制なんよ︒で︑今日はウチの番ってわけ﹂

﹁なるほど﹂

 玄関からここまで結構な距離があったし︑この時間に毎日起きるの

は確かにちょっとつらいかもしれない︒まあこの時間に取りに来さ

せるってことは佐伯さんはこんな時間から書類仕事をしているのか

(25)

もしれないけど︒

﹁龍驤さん︑おはようございます︒これが今日の分です﹂

﹁おっちゃんおはよう

! こっちは昨日から鎮守府で勉強しとる︑内

海はんやで﹂

﹁内海伊織です︒2か月の間よろしくお願いします﹂

﹁文書管理の井沢です︒内海君︑よろしくお願いします﹂

 井沢さんというおじさんは人当りのよさそうな笑みを浮かべてい

て︑朝一番には到底見えない︒慣れってすごい︒

 というか提督である佐伯さんも女性だし︑こういうところの職員も

全員女性かと思ってたから意外だなあ︒やっぱりそこは軍事組織っ

てことなんだろうか︒

﹁内海はん︑ウチはこれを提督の部屋に届けたら終わりやけど︑どうす

?﹂

﹁俺も様子を見てこいとしか言われてないから︑ご一緒してもいいで

すか

?﹂

﹁叢雲もそれでええ

?﹂

﹁ええ︑構わないわ﹂

﹁ほな︑提督執務室へしゅっぱーつ

!﹂

 ***

 提督執務室では既に佐伯さんが難しい顔をしてペンを走らせてい

た︒龍驤は気軽におはよー︑ここに置いとくでーって声をかけて︑受

け取った書類を机の上に載せていく︒

﹁ああ︑おはよう︒私は朝食に遅れそうだから︑呉一水戦と呉五駆に朝

食後ここへ来るよう伝えておいてくれ﹂

﹁はーい︒ちゃんと朝ご飯食べるんやで

?﹂

﹁善処する﹂

 ペン先から目を離すことなく︑龍驤におつかいも頼む佐伯さん︒ど

れだけ仕事が忙しいんだろう︒しかも龍驤のお小言も聞く気はなし︒

﹁ああ︑内海と叢雲も一緒に来るように﹂

(26)

﹁わかりました﹂

﹁わかったわ﹂

 しかし﹁くれいっすいせん﹂とか﹁くれごく﹂ってなんだ

?

 邪魔してはいけないと龍驤と一緒に執務室を出ると︑龍驤がこの鎮

守府ならではのシステムなのだと語った︒

 通常一水戦と言うと阿武隈という軽巡洋艦をきかん

? に︑複数駆

逐隊が所属して︑主力艦の護衛や輸送艦の護衛をしている部隊のこと

らしい︒

 だが呉一水戦︑つまり呉鎮守府限定での第一水雷戦隊は旗艦も那珂

という軽巡であれば︑所属駆逐隊は呉一駆から呉三駆までの3つであ

るとのこと︒

﹁んーとな︑つまり第二次世界大戦中とかの部隊編成とは関係なく︑提

督がええと思うオリジナルの編成で出撃するんや﹂

﹁そうなのか⁝⁝何か考えのことがあってなんだろうがよくわからん

な﹂

﹁噂では鎮守府にやってきた順とか言われとるけど﹂

 前言撤回︒適当だ︒

﹁でもまあ︑もし考えてそれぞれの相性を考えて組まれた艦隊なら強

いわね︒強い艦を集めれば強いってわけじゃないもの﹂

﹁うーん︑他はどうか知らないけど︑ウチはいいと思うよ︒ウチの所属

してる呉三航戦︒どっちみち︑まだ艦娘としては見つかってへん軍艦

も多いし︑変に昔と同じ編成よりも現状に合わせて詰めてった艦隊の

が使い勝手いいと思う﹂

﹁そんな軍艦がいるのか

?﹂

﹁いくらでもおるで︒あと⁝⁝たとえばここは叢雲がいないから︑第

十一駆逐隊とかも組めないし﹂

﹁なるほど﹂

 その穴を開けっ放しにするよりは︑適当に着任順にでも詰める必要

があったってことか︒

 朝の食堂に行くと︑夕飯時よりかはすこしまばらに︑艦娘たちが食

事をとっていた︒

(27)

﹁おーい

! 朝ごはん食べ終わったら︑呉一水戦と呉五駆は執務室集

合やでー

!﹂

 ぱらぱらとはーいと返事が返ってくる︒今朝の呉鎮も︑平和だ︒

(28)

01│06 出撃 命 令

 朝食を終えて︑再び佐伯さんの執務室へと向かう︒

 早い艦娘もちらほらいて︑応接ソファで座っておしゃべりに興じて

いる︒

 呉一水戦︑呉五駆が呼ばれているそうだが︑水戦⁝⁝水雷戦隊と︑駆

⁝⁝駆逐隊︑前者は軽巡洋艦数名と駆逐艦多数名︑後者は駆逐艦だけ

で構成される部隊の単位だそうだ︒

 つまりまあ︑何が言いたいかというとあれだ︒執務室が小学生ぐら

いの少女で溢れている︒

 しかし悲しきかな︑俺は別にロリコンでもない︒

﹁あっ︑内海さんと叢雲よ

! 私は雷︑かみなりって書いていかずちっ

て読むのよ︒そこんとこ︑よろしくねっ﹂

﹁あっ雷ちゃん⁝⁝

! えっと︑その︑電です⁝⁝﹂

 何をしようときょろきょろしていたら︑ソファーに座っていた茶髪

の女の子ふたりが声をかけてくれた︒似たような名前︑似たような服

装︒もしかしなくても彼女たちも姉妹なんだろうか︒

﹁もうっ︑提督候補の邪魔しちゃだめじゃない

!﹂

 ふたりによく似た服装に︑帽子をかぶった黒髪の女の子が頬を膨ら

ませている︒その隣に座る銀髪に帽子をかぶった娘は静かにお茶を

飲んでいた︒

﹁いえ︑大丈夫ですよ︒よろしくお願いします︑雷ちゃん︑電ちゃん︒

それと⁝⁝

?﹂

﹁あっ︑暁よ︒一人前のレディーとして扱ってよね﹂

﹁はい︑よろしくお願いします︑暁さん﹂

﹁こっちは響よ︒私達︑暁型4姉妹は呉五駆の構成員なの︒ほんとは

六駆って呼んでもいいんだけど︑呉六駆と紛らわしいから︑呉五駆っ

て呼んでちょうだい

!﹂

 なるほど︑やっぱり姉妹だったのか︒服装が似てるのは艤装が似て

るってことなんだろうか︒ならわかりやすくって何よりだ︒

﹁改めまして︑内海伊織です︒よろしくお願いします︑呉五駆のみなさ

(29)

ん﹂﹁あ︑もう呉五駆は揃ってたか︒すまないな︑気付かなくて﹂

﹁司令官

! 無理はだめなのです﹂

﹁無理はしてないよ︑電は優しい子だね﹂

 佐伯さんは優しく微笑んで︑電ちゃんの頭を撫でる︒

 電ちゃんもとても嬉しそうで︑指令系統がきっちりしてるだけじゃ

なく︑信頼し合えている素敵な鎮守府だなあ︒俺ももし鎮守府を運営

するのなら︑こういう鎮守府がいい︒

﹁⁝⁝さて︑呉五駆の4人は︑今日はボーキサイトを輸送している輸送

船の護衛任務にあたってもらうよ︒先方は︑輸送を成功させたら︑5

%をうちに譲ってくれると言っている︒頼めるね

?﹂

﹁当然よ

! 司令官︑絶対に成功させて見せるわ︒だから︑安心して

待っててよね

!﹂

﹁うん︑信じてるぞ︒抜錨時刻はマルキューマルマル︑航路は2│3

だ︒それじゃあ行ってこい﹂

 いってきまーす︑と言って4人は部屋から出ていった︒これは⁝⁝

遠征か︒

 なら呉一水戦のほうが︑今日の出撃になるのか︒出撃ってどんなな

んだろ⁝⁝

﹁しっつれいしまーす

! 那珂ちゃん登場ー

!! きゃはっ

!﹂

 ⁝⁝うか︒

 ⁝⁝昨晩︑食堂前で見た元気のいい子が現れた︒そうか︑彼女が那

珂という軽巡洋艦なのか︒⁝⁝とんでもなく元気がいいな︒

﹁あっ︑昨日の︒那珂ちゃんはー︑川内型軽巡洋艦︑3番艦︒みんなの

アイドル︑那珂ちゃんだよ

! よろしくお願いしまーす

!﹂

﹁よろしくお願いします︑那珂さん﹂

﹁那珂︑今日は出撃だからその元気は取っておきなさい﹂

﹁はーい

!﹂

 佐伯さんの鶴の一声で︑那珂さんは座って鼻歌を歌い始めた︒元歌

はわからんが︑違和感はないから音程に間違いはなさそうだ︒

﹁那珂はアイドルとしてステージに立つことを夢見ているんだ︒⁝⁝

(30)

この戦いが終わるまで叶えてやれない夢だが︑たまに鎮守府内でス

テージを作ってやったりもしている﹂

﹁那珂ちゃんは︑ステージに立てるようになるまで︑一生懸命戦うよ

!﹂

﹁⁝⁝ふふっ︑那珂さん︑頑張ってください﹂

﹁うんっ

!﹂

 なんだ︑ただの空気を読まない子かと思ったけど︑全然そんなこと

はないじゃないか︒俺とは違って明確に夢があって︑それに向かって

尽力している︒立派だ︒

﹁いいわね︒私もこの戦いが終わったら︑ぱりこれっていうのを見に

行きたいわ﹂

﹁あっ︑那珂ちゃんパリコレ知ってる

! 海を越えた先の遠くの遠く

のフランクって国にある︑パリスってところのファッションショーだ

よね﹂

﹁あら︑よく知ってるじゃない︒そうよ︑昔は流行の最先端って言われ

てたみたいよ﹂

 叢雲も那珂さんと意気投合してるみたいだ︒っていうかフランク

とかパリスってなんだ︒フランスとパリじゃないのか︒

﹁内海のいた世界とは︑海外の地名が多少異なっているかもしれない

が︑似たような名前だから察してくれ﹂

﹁あ︑はい﹂

 じゃあなんで日本だけ俺の記憶ときちんと合致するんだろうな︒

 しばらく経ってから︑執務室の扉がノックされた︒吹雪ちゃんの声

で︑呉一︑二︑三駆参りました︑と扉の向こうから聞こえる︒

 佐伯さんがどうぞと言うと︑扉が開いて総勢11名の駆逐艦と思し

き娘達が入室してきた︒

﹁よし︑揃っているな︒それでは呉一水戦にはマルキューサンマルか

らキス島へと向かってもらう﹂

﹁キス島

? キス島って一度敵勢力を殲滅しましたよね

?﹂

﹁貿易国から貿易船が同地域に漂流したとの連絡をもらった︒漂流の

原因は嵐だが︑双眼鏡で何やら艦影が見えたそうだ﹂

(31)

 かんえい︑かんえい⁝⁝︒艦の影で艦影か︒敵か味方かわからな

いってことか︒

﹁その貿易船を保護︑曳航し︑曳航不可能な場合には乗員と載せられる

だけの資源を搭載し︑呉に帰港しろ︒呉からの輸送は別の部隊が引き

継ぐ﹂

﹁那珂ちゃんが旗艦だよね

? 曳航可能かどうかの判断はどうするの

?﹂

﹁それは那珂︑お前に任せる︒私よりも船であった記憶のあるお前ら

のほうが正しい判断を下せるだろう﹂

﹁那珂ちゃん了解

!﹂

﹁了解しました︑司令官

!﹂

﹁よろしい︒それでは頼んだぞ﹂

 11人の駆逐艦と那珂さんはさっと執務室を出ていった︒出撃の

準備をするためだろう︒

 それにしても︑呉駆逐隊は4人で1隊と聞いていたのに︑なんであ

の場には駆逐艦は11人しかいなかったんだろうか︒

﹁さっきの11人の資料はこれだ︒⁝⁝呉一駆のリーダーになってい

る吹雪は︑内海で言うところの叢雲にあたる﹂

﹁叢雲⁝⁝初期艦ですか

?﹂

﹁ああ︒その流れで︑うちの最前線の駆逐隊である呉一駆のリーダー

を任せ続けているんだ︒真面目な子で︑うちの鎮守府の駆逐艦を統括

するようなこともしてくれているよ﹂

﹁そうなんですか⁝⁝﹂

 佐伯さんから手渡された資料に目を通して︑あの場にいた駆逐艦娘

の顔と名前を一致させていく︒

 吹雪︑綾波︑皐月が呉一駆︒三日月︑敷波︑夕立︑雪風が呉二駆︒時

雨︑村雨︑大潮︑不知火が呉三駆︒⁝⁝呉一駆が︑3人編成なのか︒

﹁⁝⁝呉一駆だけが3人編成でおかしいと思うだろう

? ⁝⁝そこ

が︑うちの叢雲の席だったんだよ﹂

(32)

01│07  支 援艦隊

?

 佐伯さんの表情に︑なんと声をかけていいかわからない俺と叢雲を

救ったのは︑執務室に現れた黒髪で眼鏡な子だ︒セーラー服みたいな

ものを着ている︒

﹁失礼します︒提督︑司令室の方にー﹂

 佐伯さんへ用があって訪れたようで︑言いかけて途中で俺と目が合

う︒

 目が合った瞬間綺麗なお辞儀をした︒小学校とかでお手本にして

もいいぐらい綺麗なお辞儀だ︒

﹁初めまして︑内海提督候補︒連合艦隊旗艦︑大淀です︒この鎮守府で

は主に出撃している艦娘との通信︑司令伝達を受け持っています﹂

﹁初めまして︑大淀さん︒内海伊織です﹂

﹁内海︑この大淀は潜水艦隊指揮を運用目的に建造されたた軽巡洋艦

だ︒索敵活動用の偵察機を積むための格納庫と︑発艦用の大型カタパ

ルトを持ち合わせている︒⁝⁝まあ︑その偵察機の出来が芳しくなく

て︑実際には潜水艦隊旗艦を務めたことはなかったようだが﹂

 ほう︒つまり最初の建造目的通りの使われ方はしなかったのか︒

可哀想だ︒大淀も困った顔で︑笑っている︒

﹁しかし潜水艦隊旗艦を任せる予定だった軍艦だ︑載せている通信機

と通信係は非常に能力が高い︒その通信能力を買われて︑帝国海軍最

後の連合艦隊旗艦を務めることになったんだ﹂

﹁それはすごい︒⁝⁝ああ︑もしかして今ここで艦娘との通信や司令

伝達を担当しているのもそれが理由ですか

?﹂

﹁ああ︒だから艦娘が出撃や遠征に行っている間は通信室を兼ねた司

令室に入り浸ってもらっているんだが⁝⁝どうかしたのか

?﹂

 俺の存在が話の本腰を折ってしまっていたようだ︒

 大淀さんについての解説に区切りをつけた佐伯さんは︑大淀さんの

方に向き直った︒

﹁はい︑輸送船の護衛任務にあたっている呉五駆の暁から︑通信が入り

ました︒4時の方向︑かなり遠いですが大型艦の反応が複数あったそ

(33)

うです﹂

﹁詳細な距離は

?﹂

﹁わかりません︒かなり遠い︑反応しただけ奇跡じゃないかとのこと

です︒周辺鎮守府に出撃中の大型艦艇はいるか確認したところ︑あり

ませんでした﹂

 大淀さんの話を聞きながら立ち上がって執務室を後にしようとす

る佐伯さんに︑俺は着いて行っていいのだろうか︒司令室ってかなり

重要な場所なんだろ

? たぶん⁝⁝︒

 もたもたしていると︑佐伯さんから早く来い

! と怒られた︒すみ

ません今行きます

!!

 ***

 機械だらけだ︑迂闊に転んだらそれだけで何かを壊しそうだ︒

 以上︑司令室というものを初めて見た感想︒

 司令室ってなんかこう︑会議室みたいなものかと思っていて︑まさ

かこんな何の機械ともわからないものが壁一面を覆い尽くし︑床に機

械の巨塔を乱立させているとは思っていなかった︒

﹁ここの機械についての説明は後だ︒内海︑これを付けて黙って聞い

ていろ﹂

 俺より先に司令室に入っていた佐伯さんは頭にマイク付きのヘッ

ドホンのようなものを付けている︒俺に投げ渡されたのはマイクが

付いていないことを除けば佐伯さんの着用するヘッドホンと同じも

のだ︒突然投げられたので慌ててキャッチした︒

 見る限り普通のヘッドホンを付けると︑突然幼い女の子たちの声が

聞こえた︒

﹁な︑ななな

!?﹂

﹁静かにしていろと言っただろう︒これは艦娘の通信機と繋がってい

る︒女の子の声は暁たち呉五駆だ﹂

 呉五駆︒確かに言われてみれば同じ声だ︒

 司令官︑どうするの

? って暁さんの声が聞こえてくる︒そういえ

(34)

ば大淀さんや熊野さん︑大和さんは佐伯さんのことを提督って呼ぶの

に︑呉五駆のみなさんや吹雪ちゃんたち姉妹は佐伯さんのことを司令

官って呼ぶんだろうか︒

 付き合いの長い子は司令官って呼ぶのかな

?

﹁今から足の速い戦艦︑巡洋艦︑空母をそちらに送る︒詳細な編成は後

ほど連絡する︒周辺の索敵に努めてくれ﹂

﹃了解よ︑司令官﹄

 話をやめた佐伯さんはヘッドホンを外し︑部屋の中に設置されたマ

イクのスイッチを入れてマイクに話しかける︒

﹁緊急招集

! 以下の艦娘は直ちに司令室へ﹂

 金剛︑榛名︑鈴谷︑熊野︑翔鶴︑瑞鶴︒

 あ︑なんとなく金剛って聞き覚えあるかもしれない︒どこで聞いた

んだっけ︒

 しばらくすると︑サラサラストレートの長い銀髪のお姉さんと︑黒

髪をツインテールにしたお姉さんが司令室の門を叩いた︒そのすぐ

あとに︑熊野さんが水色のサラストの女の子と︒そして最後に︑金剛

デース

! と声高に入ってきた︑茶色いシフォンヘアの金剛さんと︑

黒髪サラストのお姉さん︒

 ⁝⁝佐伯さんがわざとやってるんじゃないかってぐらいサラサラ

ストレートヘア︑略してサラストが多い︒

﹁よし︑揃ったな︒内海︑右から金剛型巡洋戦艦の金剛︑榛名︒最上型

重巡の熊野と鈴谷︒そして翔鶴型航空母艦の翔鶴と瑞鶴だ﹂

 ほうほう︒よくわかんないけど全員足の速い艦ってことだけはわ

かる︒そして彼女らがおそらく⁝⁝︒

﹁本日マルキューマルマルから航路2│3にて輸送船護衛任務にあ

たっている呉五駆から︑遠方に大型艦の反応ありと通信が入った﹂

 登場の仕方がいかにもお調子者っぽかった金剛さんや鈴谷さんも︑

きりっとした顔つきで佐伯さんの指示を直立姿勢で聞いている︒こ

れが大鎮守府の非常事態か⁝⁝︒すごいな︒

﹁周辺鎮守府にはこれに該当する出撃艦娘はなく︑当鎮守府はこれを

敵影と判断した︒よって︑旗艦金剛︑以下榛名︑鈴谷︑熊野︑翔鶴︑瑞

(35)

鶴の臨時艦隊で呉五駆に合流し︑敵影を撃破︑護衛任務を完遂せよ﹂

﹁旗艦金剛︑了解ネー﹂

 金剛さんの敬礼と︑その敬礼を解いた瞬間5人の艦娘がびしっと同

じタイミングで敬礼し︑同じタイミングで解く︒まるで軍隊だ︒いや

海軍の艦隊だから略して軍隊かもしれないけど︒

﹁よろしい︒出撃用意が終わり次第抜錨してくれ﹂

 佐伯さんの言葉で一瞬にして散開し︑司令室を出ていった6人の艦

娘たち︒

 あの改造巫女服や和服︑制服姿の女の子が海の上で戦うというのか

⁝⁝︒丸腰じゃないか︒

﹁暁︑聞こえるな

? そちらに金剛を旗艦として︑榛名︑鈴谷︑熊野︑

翔鶴︑瑞鶴を送る︒現在︑その大型艦はどうしている

?﹂

﹃あまり足が速くないみたい︒私たちとの距離は狭まっていないわ﹄

﹁了解︒金剛たちが到着し次第︑臨時連合艦隊とし︑艦隊指揮は金剛に

一任し︑大型艦との接触︑排除をしてくれ﹂

﹃了解よ︑司令官

!﹄

 そもそも女の子が戦うって話をしたら暁さんや響ちゃん︑雷ちゃ

ん︑電ちゃんもそうじゃないか︒⁝⁝深海棲艦とやらがいなくなっ

て︑彼女たちが戦う理由がなくなってくれればいいのにな︒

 だってどう考えてもおかしいじゃないか︒しかも︑出撃だって聞い

て嫌な顔ひとつしない彼女たちは明らかに間違っている︒男の俺

だって戦場に行けって言われたら嫌だ︒

﹃テートクゥ

! 臨時艦隊︑抜錨するネー

!﹄

 ヘッドホンに突然︑金剛さんの朗々とした声が入る︒うだうだ考え

ていた俺には青天の霹靂︒

 佐伯さんが抜錨

! と掛け声をすると︑金剛さんや熊野さん︑それ

に多分榛名さんたちと思わしき声が抜錨

! と復唱した︒

 ⁝⁝ん

? なんで金剛さんたちは出かけるんだ

? 暁さんたちだ

けで対処すればいいじゃないか︒

 俺が素直に思ったことを言うと︑佐伯さんは大きく息を吐き出した

あと頭を抱えたし︑大淀さんの笑顔が引き攣ったことをお伝えしてお

(36)

こうと思う︒

(37)

01│08 投錨

 臨時連合艦隊が投錨した︒

 抜錨︑投錨というのは船が出港する︑帰港することらしい︒船の か のことを錨と書くらしく︑それを抜いて船に引き上げると︑船を

引きとめるものがないので出港でき︑下ろす︵投げる︶と船を引きと

めることができて乗員が船から降りられると佐伯さんが教えてくれ

た︒なるほど︒

﹁ヘーイテートクゥ︒臨時連合艦隊︑帰投したネー﹂

﹁ああ︑みんなお疲れさま︒金剛︑暁︑報告を頼む﹂

 暁さんから受けた報告は︑通信で聞いていたとおりの内容だった︒

 あ︑ちなみに呉五駆の旗艦は暁さんだそうだ︒もともと呉五駆の4

人︑暁型4姉妹は暁さんが長女ということもあって︑それで暁さんに

旗艦を任せているとか︒

﹁今度はワタシが報告しマース︒ヒトゼロヨンキュー︑2│3航路上

でワタシたち臨時艦隊と呉五駆︑そして呉五駆の護衛する輸送船と合

流したネー︒それから瑞鶴旗下第四航空部隊の偵察機を発艦しマシ

タ︒すぐに大型艦は見つかったヨ﹂

 ***

 ﹃空母瑞鶴より︑旗艦金剛に報告

!﹄

﹁オーウ︑見つかりまシタかー

?﹂

 テイトクの指示で︑ワタシと榛名︑そして鈴谷︑熊野︑翔鶴︑瑞鶴

は臨時艦隊を組んで︑呉五駆のサポートに来てるネー︒

 なんデモ︑遠方4時の方向に大型艦艇の反応があったらしいデー

ス︒それを敵影と判断したテイトクは︑高速艦のワタシたちを派遣し

たヨー︒

 ⁝⁝まあ︑翔鶴たちの34ノットの超高速は︑ワタシたちがいると

なかなか発揮できてナイけど︑仕方ないネー︒

﹃瑞鶴旗下の彩雲部隊︑4時の方向に軍艦ではなさそうな大型船を発

(38)

見︒砲門もなく︑カタパルトもありません﹄

﹁What

? 軍艦じゃナイ

?﹂

﹃彩雲の高度を下げ︑もう少し詳細なことを調べてみるわね﹄

﹁お願いしマース﹂

 軍艦じゃナイ

?

 そりゃあ確かに︑ここの航路は随分前から呉鎮と︑その傘下の泊地

の提督や艦娘で深海棲艦から奪還シテ︑守っていマース︒輸送船の往

来も少なくないネー︒

 けど︑このrouteは呉鎮の管理下︒呉鎮の許可なくここを通れ

る船は︑呉鎮傘下の各泊地に所属する艦娘か︑呉鎮と同規模の鎮守府

の艦娘ダケ⁝⁝︒輸送船や貿易船はあらかじめ通るrouteを管

理する鎮守府か海軍本部に連絡を入れることが義務付けられてるは

ずデス︒

﹃空母瑞鶴より︑旗艦金剛に報告︒例の大型船︑どうやら輸送船みた

い︒どうする

?﹄

﹁輸送船

?﹂

﹃うん︒でも変ね︑結構鈍足なのよ︒今目測で10ノット切るぐらい﹄

﹁10ノット

? 随分ゆっくりネー﹂

 通常状態で10ノットはまずありえないネー︒機関部に異常の出

た輸送船

? でもテートクは今護衛してる輸送船以外に輸送船がい

るなんて話しなかったネ︒

﹃あっ

! 白旗振ってるらしいわ︑HELPの文字も見えたみたい﹄

﹁Help

? ンー⁝⁝榛名︑響︑聞こえマスカ

? 瑞鶴旗下の彩雲が

大型艦影発見︑それの正体追求のために2人でその船の近くまで見て

きてほしいネ︒瑞鶴は直掩を15機︑飛ばシテ﹂

﹃榛名︑了解です﹄

﹃響︑了解﹄

﹃瑞鶴︑了解

!﹄

 榛名と響が隊列から離れテ︑その上をついていく直掩の紫電改二︒

 Helpを出すってことは︑白旗ってことは︑これはつまり⁝⁝︒

参照

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