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KOBE STEEL ENGINEERING REPORTS

/Vol. 54 No. 3(Dec. 2004)

新 製 品 ・ 新 技 術

 近年,切削工具やしゅう動部品向けの TiAlN や CrN に代表さ れる硬質皮膜は,より過酷な環境において高い耐摩耗性が要求 されていることから,元素添加による皮膜硬度や耐酸化性など に関する特性改善の研究開発が盛んに行われている。当社は,

上記硬質膜(トライボコーティング)に求められる性能の高度 化・多様性に対応すべく,アークイオンプレーティング法(Arc  Ion Plating,以下 AIP)とアンバランストマグネトロンスパッ タ法(UnBalanced Magnetron Sputtering System,以下 UBMS)

を組合わせた複合成膜装置を上市している。 

 当社は,この複合成膜装置を使用してナノ積層構造を有する 硬質膜を形成し,硬度や耐酸化特性などの飛躍的性能アップに 成功した。以下にその概要を説明する。

1.ナノ積層硬質膜の形成

 図 1に示したのは,量産型の複合成膜装置の模式図である。

被処理体は中央の自公転するステージ上に搭載され,ステージ の回転に合わせて成膜中に各々の蒸発源前方を通過することに より,AIP 蒸発源及び UBMS 蒸発源で形成された層が積層さ れ,ナノ積層膜となる。AIP で形成する層は TiAlN,TiCrAlN,

CrN,UBMS で形成する層は SiN,BCN,WN などであり,多 彩な組合わせによるナノ積層膜が形成可能である。写真 1に CrN/BCN ナノ積層膜の透過電子顕微鏡像観察例を示す。AIP で形成した CrN 層と UBMS で形成した BCN 層の積層状態が観 察される。

2.ナノ積層化の効果

 ナノ積層化の効果の一つは,皮膜を構成する結晶粒の微細化 による高硬度化である。写真 1 に示したように,結晶構造の異 なる層を組合わせることにより結晶粒の垂直方向への成長が中 断され,結晶粒が微細化する。図 2に,CrN/BCN 積層膜の基 板回転数と硬度−結晶粒径の関係を示す。基板回転数の増加す なわち積層周期が小さくなるに伴い,結晶粒微細化効果により 皮膜が高硬度化する。また,積層する物質を選択することで,

耐酸化性(SiN,WN),しゅう動特性(BCN)の向上が可能で ある。

3.応用例

 図 3には,実際の切削工具に従来の TiAlN 膜及びナノ積層膜 を形成し,高硬度材(SKD61:HRC50)の高速・ドライ(220m/ 

min)切削試験を実施した結果を示している。従来の TiAlN 膜が 約 50m で摩耗過多となり寿命に至っているのに対し,BCN ある いは SiN を積層したものはその倍の 100m 切削しても摩耗量は 半分以下となる。

 以上,複合成膜装置を用いて形成したナノ積層硬質膜の特性 を紹介した。今後,本技術を複合成膜装置とともに広くユーザ に PR していく予定である。

AIP+UBMS 複合成膜機で形成したナノ積層硬質膜

山本兼司・久次米進**・高原一樹**

技術開発本部 材料研究所 **機械エンジニアリングカンパニー 高機能商品部

問合わせ先:技術開発本部 材料研究所 表面制御研究室 山本兼司 TEL:(078)992−5505 FAX:(078)992−5512       E-mail:[email protected]

写真 1 複合成膜装置で形成した CrN/BCN ナノ積層膜の断面 TEM 像

AIP

AIP UBMS ステージ 

UBMS

図 1 量産型複合成膜の模式図

50nm

図 2  CrN/BCN ナノ積層膜形成時の基板回転数と硬度・結晶 粒径の関係

30 

25 

20 

15 

10

30  25  20  15  10  5  0

皮膜硬度 (GPa) 結晶粒サイズ (nm)

0 2 4 6 8 10

CrN

CrN/BCN

基板回転数 (rpm)

図 3  通常の TiAlN 膜及びナノ積層 TiAlN 膜の高硬度材の高速 切削試験結果

250  200  150  100  50  0

逃げ面摩耗量 (μm)

切削長 (m)

0 40 80 120

TiAlN

TiAlN/BCN

TiAlN/SiN

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