• 検索結果がありません。

財団法人 機械システム振興協会 序 委員長挨拶 はじめに

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "財団法人 機械システム振興協会 序 委員長挨拶 はじめに"

Copied!
110
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)
(2)

わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる 経済的、社会的諸条件は急速な変化を見せており、社会生活におけ る環境、都市、防災、住宅、福祉、教育等、直面する問題の解決を 図るためには技術開発力の強化に加えて、多様化、高度化する社会 的 ニ ー ズ に 適 応 す る 機 械 情 報 シ ス テ ム の 研 究 開 発 が 必 要 で あ り ま す。

このような社会情勢の変化に対応するため、財団法人機械システ ム振興協会では、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を 受けて、システム技術開発調査研究事業、システム開発事業、新機 械システム普及促進事業を実施しております。

このうち、システム技術開発調査研究事業及びシステム開発事業 に つ い て は 、 当 協 会 に 総 合 シ ス テ ム 調 査 開 発 委 員 会 (委 員 長 : 政 策 研究院 リサーチフェロー藤正 巖氏)を設置し、同委員会のご指導 のもとに推進しております。

本「映像酔いガイドライン検証システムの開発に関するフィージ ビリティスタディ」は、上記事業の一環として、当協会が社団法人 電子情報技術産業協会に委託し、実施した成果をまとめたもので、

関係諸分野の皆様方のお役に立てれば幸いであります。

平成19年3月

財団法人 機械システム振興協会

(3)

はじめに

映像提示技術の飛躍的進歩により、映像情報メディア関連産業が発展し、映像の大 型化・高精細化が進む中、「映像酔い」など映像の生体に及ぼす影響が社会問題となり、

映像の生体影響に関する国際ガイドライン作成の機運が高まっています。

他方、映像技術の進展は、より現実感・臨場感あふれる映像制作を可能とし、人類 がこれまで経験したことがない映像環境を創出するとともに、それらの技術はアニメ ーションやゲーム等のエンターテインメントはもとより、さまざまな分野への応用も 期待されています。

このような現状に対し、日本の基幹産業である映像産業を守るという観点から、日 本主導での国際ガイドラインの作成が推進され、平成 20 年度にはその数値化に向けた 議論が本格的に進められようとしています。また、ガイドラインを先取りした訴訟を 心配する産業界からは当該検証システムの早期実用化が待望されています。

上記のような現状をふまえ、この報告書は、財団法人 機械システム振興協会の委託 により、当協会が実施した平成 18 年度事業「映像酔いガイドライン検証システムの開 発に関するフィージビリティスタディ」の成果をまとめたものです。安心、安全な生 活環境が求められ、映像の生体影響の重要性が注視されるなか、映像環境の変化が生 体に及ぼす影響を正しく評価し、不要の事故の未全防止策を講じ、安全で安心な映像 産業の発展に資することはもとより、映像産業関連の広い分野で議論され、国際的に も成果が生かされることを期待しております。

最後に、この研究の実施については、経済産業省商務情報政策局文化関連産業課(メ ディアコンテンツ課)、同産業技術環境局基準認証ユニット環境生活標準課推進室、さ らには医学系・工学系大学の研究者の方々、関連企業や団体の皆様をはじめ、多くの 方々にご協力をいただきました。

ここに謹んで、感謝の意を表するものです。

平成19年3月

社団法人 電子情報技術産業協会

(4)

委員長挨拶

日本では 2011 年7月でテレビ放送の完全デジタル化が終了する。ハイビジョンデジタ ル(1920×1080 ピクセル)の放送サービスが一般的になり、視聴者はより大きな画面で高 画質な迫力のある映像を楽しめるようになった。フラットTVの低価格化も進み、家庭に は 30 インチ以上の大型TVが普及しつつある。さらにハイビジョン画質の民生用ビデオム ービーや次世代DVDレコーダーも発売され、臨場感映像を個人で手軽に楽しめるように なった。

映像制作の現場では、デジタル編集により現実をも越えるような今までにない迫力ある 映像を追求できるようになり、その技術はアニメーション、ゲームなどの世界のみならず、

教育、医療、福祉分野などへの応用もされつつある。

一方、われわれは、過去に特殊映像を集中して見ていた小児に光過敏性発作が誘発され 入院騒ぎを起こした事件や、中高生多数が学校で手ぶれの激しい映像を鑑賞中、映像酔い と見られる体調不良を起こす事件を経験した。これらの原因究明と防止策は、映像関連産 業の振興策と表裏一体で進めるべきものであり、日本はもとより欧米各国の現状も調査研 究し、再発防止に努めてきた。

幸い、関連の研究グループは経済産業省(旧通産省)と財団法人機械システム振興協会 から理解と支援が得られ、過去 10 数年にわたり医学、心理、工学の専門家による「映像生 体影響研究委員会」や「基準認証開発委員会」を JEITA、産業総合研究所に設置、長期に 研究を継続できた。それらの成果は、平成 17 年の国際標準化機構(ISO)による「Image Safety(生体の安全性)に関する国際合意文書IWA3」として結実し、本格的国際ガイ ドラインの第1歩を印すことができた。

わが国は、TV、モバイル端末など映像を中心とする情報家電で世界をリードしており、

この優位性の確保には、車の両輪となる映像の安全性に関する国際標準化でも主導権を確 保すべきである。そのためには平成 20 年5月にも開始される予定の本格的国際ガイドライ ン策定作業までに「映像酔いガイドライン検証システム」の世界に先駆けた開発が必要不 可欠との認識から本スタディグループが組織されたものである。

平成 19 年3月

シャープ株式会社 先端映像技術研究所 千葉 滋

(5)

目 次

はじめに

委員長挨拶

1. スタディの目的

1

2. スタディの実施体制

2

3. スタディの内容

5

本 編

第1章 映像酔いガイドライン検証システムの開発

1-1 映像酔いガイドライン検証システムの概念設計 11

1-1-1 動画解析ソフトウエア基本構造設計 14

1-1-1-1 カメラ要素運動の推定方法 14

1-1-1-2 グローバルモーション推定における基本概念 15 1-1-1-3 ソフトウエアの基本構造 15

1-1-2 ブロックマッチングとそのパラメータの検討 16

1-1-2-1 ブロックのマトリクス数の検討 17

1-1-2-2 探索範囲の検討 18

1-1-3 カメラ要素運動の推定 18

1-1-3-1 ズームの推定値 19

1-1-3-2 ローテイトの推定値 19

1-1-3-3 パン、チルトの推定値 20

1-1-3-4 推定値に関わる課題 20

1-2 視覚運動要因に基づく映像酔い推定での統合化モデル構築 21

1-2-1 事変要因モデル 21

1-2-1-1 モデルの提案 21

1-2-1-2 検証実験 21

1-2-1-3 解析 22

1-2-1-4 評価 23

1-2-1-5 結果 24

1-2-1-6 考察 25

(6)

1-2-1-7 まとめ 26

1-2-2 感覚特性モデル 27

1-2-2-1 これまでに報告された基礎データ 27

1-2-2-2 感性特性モデルの構築 30

1-2-3 相互作用・時間要因検討 33

1-2-3-1 時変要因モデルからの検討 33

1-2-3-2 感性特性モデルからの検討 34

1-2-3-3 まとめ 35

1-3 映像酔い生体影響の計測 36

1-3-1 心理的計測手法 36

1-3-1-1 心理的計測手法の分類 36

1-3-1-2 心理的計測手法に基づく生体影響計測 38

1-3-1-3 計測値と測定値との比較 42

1-3-2 生理的計測手法 43

1-3-2-1 目的 43

1-3-2-2 従来の方法とその問題点 43

1-3-2-2-1 ρ

max

の定義 43

1-3-2-2-2 ρ

max

の計測上の問題点 44

1-3-2-3 提案方法 44

1-3-2-3-1 脈波伝播時間を用いる方法 44

1-3-2-3-2 規格化拍内積分値を用いる方法 44 1-3-2-3-3 脈波ピーク時間差を用いる方法 45

1-3-2-3-4 独立成分分析を用いる方法 45

1-3-2-3-5 簡易型心電・脈波計測装置 47

1-3-2-4 実験 47

1-3-2-4-1 実験1 47

1-3-2-4-2 実験2 47

1-3-2-5 結果 47

1-3-2-5-1 実験1 47

1-3-2-5-2 実験2 49

1-3-2-6 考察 49

1-3-2-7 結論 49

1-4 統合化モデルの構築 52

1-4-1 システムの構成 52

1-4-2 システムの操作方法 54

第2章 国際標準化の動向

2-1 映像の生体安全に関する研究経過と標準化への動き 61

(7)

2-2 国際標準化を目指して 62

2-2-1 ISOスタディグループの設立 62

2-2-2 ISO/TC 159/SC 4/WG 2 会議での説明 63

2-2-3 ISOスタディグループの活動状況 63

2-2-4 CIE TC1-67 の活動状況 63

2-2-5 今後の課題 64

第3章 ガイドラインの策定に向けて

3-1 背景 65

3-1-1 快適な情報社会 65

3-1-2 安全安心 65

3-2 ガイドラインの条件 66

3-3 被験者データの収集 67

3-3-1 複雑な対象に対する客観検査 67

3-3-2 多面的な被験者実験 68

3-4 科学技術データの扱い方 68

3-4-1 強い刺激の場合 68

3-4-2 弱い刺激の場合 69

3-4-3 測定技術の開発 69

3-4-4 評価関数・評価基準 70

3-4-5 光感受性発作と映像酔い 70

3-5 今後への展開 70

4. スタディの成果(まとめ)

72

5. スタディの今後の課題と展開

81

参考資料

「映像酔い研究」の国際動向に関する勉強会報告書

85

執筆者リスト

105

(8)

1.スタディの目的

本スタディは、映像酔いの防止を目的とした国際ガイドラインを検証するためのシ ステムを開発することを目的とする。

映像酔いを防止するために基準となる物理的条件の数値化に対して、これまでの研 究で得られている科学的なデータは、わが国の研究成果の他に、米国、香港、英国、

オランダ等の各研究グループからも報告されているが、いずれも実験用の映像で動き が単純化された映像で得られた基礎データに基づくものであり、複雑な運動で構成さ れる一般の映像への適合性は明確ではない。本来基準となる数値は、さまざまな要因 による映像酔いへの影響を統合する統合化モデルの確立が必要不可欠で、そのために 大規模な被験者参加による評価実験を行う必要がある。

そこで、本スタディでは、統合化モデルを暫定的に構築し、基礎データに基づく数 値化が、具体的にどの程度妥当かを評価できるような映像酔いガイドライン検証シス テムを構築する。このシステムは、国際標準化における基準数値の提案に対し、産業 界に与える影響を評価し、必要に応じて修正を求めるための科学的根拠を与える有力 なツールであり、必要不可欠である。

この映像酔いガイドライン検証システムの開発においては、一般の映像に含まれる 運動成分を分析し、統合化モデルを用いて生体影響を推定するとともに、同一の映像 による実際の生体影響を、多人数の被験者に映像を提示して計測し、比較を行う。ま た、統合化モデルのパラメータを変更することで、推定値と計測値の相違を検討し、

パラメータの設定による影響を明らかにしておくことが必要である。こうした映像酔 いガイドライン検証システムについては、国際的にも、まだ実現されていない。しか し、当研究グループやその関連研究機関は、映像生体影響プロジェクトや基準認証プ ロジェクトを実施する中で、こうした課題に必要な手法と経験を得てきた。そこで、

他国に先駆けて開発できれば、わが国の産業界が、国際標準化を実質的にも先導する ことが可能となり、わが国の有力な産業である映像情報メディアとデジタル家電開発 の健全な発展と保護につながることになる。

消費者がデジタル映像の醍醐味を正しく享受するためにも、新たなる産業の基盤と して、映像の安全性を確保するための事業を展開することは必要不可欠であり緊急性 をもつ。本分野で世界をリードするとともにわが国の経済構造改革・新規産業創出の 核をなす映像関連産業のバランスのとれた発展を促進することを狙うものである。

(9)

2.スタディの実施体制

本スタディを進めるにあたって財団法人機械システム振興協会内に「総合システム 調査開発委員会」を、社団法人電子情報技術産業協会内に「映像酔いガイドライン検 証システム」開発委員会を設置、その傘下に実際に研究を遂行する分科会及びその研 究を専門的立場から検証する分科会を置く。この開発にあたっては、経済産業省の関 係部局と連携をとりながら推進する。

映像酔いガイドライン検証システムの開発には高度に専門化された技術を必要とす ること、心理・生理評価実験では、倫理委員会を備える研究機関の協力が必要不可欠 なことから、一部業務については、大学、企業に再委託を行う。

再委託先

・東北大学(情報シナジーセンター)

映像視聴による生体影響計測

・新潟大学(自然科学系 超域研究機構)

視覚運動要因に基づく映像酔い程度の推 定での統合化モデルの構築

・(株)テクニカル・サプライ

「映像酔いガイドライン検証システム」の 構築

・(株)ユー・スタッフ

映像の動画解析及び使用すべき映像 の事前調査

システム開発分科会

(社)電子情報技術産業協会

映像酔いガイドライン検証システム開発委員会

ガイドライン評価分科会

新潟大学(自然科学系)、東北大(加齢医学研 /情報シナジーセンター)、早稲田大(理工)、福島大

(工)、(独)産総研、(株)テクニカルサプライ (株)日立製作所、(株)ユー・スタッフ

新潟大学(医歯学系)、防衛大学校、NH K技研、横浜市立大学(医)、シャープ(株)、

ソニー(株)、三洋電機(株)、松下電器産業 (株)、(株)東芝、CESA、(独)産総研

(財)機械システム振興協会 総合システム調査委員会

事務局担当:(株)ユー・スタッフ 委託

(10)

総合システム調査開発委員会委員名簿

(順不同・敬称略)

委員長 政策研究院 藤 正 巖

リサーチフェロー

委 員 埼玉大学 太 田 公 廣

地域共同研究センター 教授

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 金 丸 正 剛 エレクトロニクス研究部門

副研究部門長

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携部門

コーディネータ

委 員 東北大学 中 島 一 郎

未来科学技術共同研究センター センター長

委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫

総合理工学研究科 教授

委 員 東京大学大学院 藤 岡 健 彦

工学系研究科 助教授

委 員 東京大学大学院 大 和 裕 幸

新領域創成科学研究科 教授

(11)

「映像酔いガイドライン検証システム開発委員会」委員名簿

(委員/アイウエオ順・敬称略)

委員長 シャープ(株) 技術本部先端映像技術研究所 所長 千葉 滋 主 査 新潟大学大学院 自然科学研究科情報理工学専攻 教授 木竜 徹 主 査 新潟大学 副学長(医学博士) 板東 武彦 委 員 三洋電機(株) 研究開発本部デジタルシステム研究所

プロジェクションシステム開発部 主任研究員 安東 孝久 委 員 新潟大学大学院 医歯学総合研究科 助手 飯島 淳彦 委 員 NHK放送技術研究所 人間・情報 部長 伊藤 崇之 委 員 早稲田大学 理工学部応用物理学科 教授 鵜飼 一彦 委 員 (独)産業技術総合研究所 人間福祉医工学部門

マルチモダリティ研究グループ グループ長 氏家 弘裕 委 員 (株)日立製作所 中央研究所

組込みシステム基盤研究所 担当部長 木村 淳一 委 員 松下電器産業(株) 映像デバイス開発センター

ディスプレイデバイスグループ グループマネージャー 熊川 克彦 委 員 横浜市立大学 医学部神経内科 教授 黒岩 義之 委 員 防衛大学校 応用科学群応用物理学科 教授 斎田 真也 委 員 福島大学 共生システム理工学類 助教授 田中 明 委 員 東京西徳洲会病院 小児難病センター 神経・発達科長 二瓶 健次 委 員 (株)東芝 研究開発センター

ヒューマンセントリックラボラトリー 研究主幹 平山 雄三 委 員 北京電影学院 映画・映像全般 客員教授 古澤 敏文 委 員 (株)テクニカル・サプライ 代表取締役 茂呂 哲男 委 員 シャープ(株) 先端映像技術研究所第4研究室 室長 山中 篤 委 員 東北大学加齢医学研究所 病態計測制御研究分野 教授 山家 智之 委 員 東北大学 情報シナジーセンター先端情報技術研究部 教授 吉澤 誠

(12)

3.スタディの内容

本スタディでは、映像酔いに対するガイドラインの議論が、国際標準化機構で開始され ることを受けて、こうした動向が日本の産業界の健全な発展と合致するよう、ガイドライ ンのあり方を議論するための強力なツールとなる映像酔いガイドライン検証システムの 基本構造を確立する。

映像酔いの主要因は、映像中の視覚的運動であると考えられるが、この他にも映像中の 物理要因、視聴環境の物理要因、視聴者属性などさまざまな要因の影響を受けることが知 られている。本スタディでは、この主要因である映像中の視覚的運動に焦点をあて、必要 に応じて、その他の要因の影響を考慮する。

また、映像中の視覚的運動には、画面の各領域の運動方向や速度がある相関を有するい わゆる大局的運動(グローバルモーション)や、それらに相関のない局所的な運動(ロー カルモーション)の集まりに分類される。さらに、グローバルモーションには、映像を撮 影したカメラの要素運動(パン、チルト、ロール、ズーム)が含まれる。本スタディでは、

これまでの研究の成果に基づいてカメラの要素運動を第1次の要因ととらえ、その他の視 覚的運動要因についても適宜、その影響を考慮し、システムの精度向上を図るものとする。

従って、映像酔いガイドライン検証システムの開発は以下の手順で行う。

(1) 酔いを誘発しやすい映像の動画解析により、映像中の動きベクトル分布やカメラの 要素運動(ロール、ピッチ、ヨー、ズーム等)を推定する。

(2) 推定されたカメラの各要素運動など映像中の視覚運動要因による映像酔いの程度 を、既知の知見に基づいて算出し、これに生体特性を加味した統合化モデルを加え ることで、視覚的運動要因が統合された本来のカメラ運動による生体特性としての 映像酔いの程度を推定する。

(3) 映像を実際に被験者に提示し、生体特性としての映像酔いの程度を生理・心理指標 により計測する。

(5) 映像酔いの推定値と計測値とを比較する。

(6) 統合化モデルを修正し、さらに、映像酔いの推定値と計測値とを比較して、その影 響を検討する。

別の種類の映像を用いて、上述の(1)~(5)を繰り返し、統合化モデルのパラメータ設定に よる影響を明らかにする。

また、映像酔いガイドライン検証システムの基本構造を確立するにあたり、具体的に、

以下の研究項目を実施とする。

3-1 映像の動きベクトル分布解析とカメラ要素運動推定

映像酔いガイドライン検証システムでは、任意の映像から動画解析により、映像中の動 きベクトル分布や映像を撮影したカメラの運動を推定する必要がある。こうした動画解析 にはさまざまな手法が提案されているが、ここでは、まず映像をマトリクス状に分解した 各要素が、フレーム間でどの方向にどの程度移動したかを分析する動きベクトル分布の解 析を行い(ブロックマッチング法)、次に各要素の動きベクトルを基に、映像全体の動き として、パン、チルト、ロール、ズームの4つのカメラの要素運動を推定する。

この動きベクトル分布の解析とカメラの要素運動の推定では、誤差を最小限に抑えるこ と、できるだけ高速な処理を行うことの相反する課題を追求する必要がある。そこで、以 下の事項について検討する必要がある。

(13)

3-1-1 動きベクトル分布解析のマトリクスの要素数

マトリクス状に分解された映像の各要素が、フレーム間でどの方向にどの程度移動した かを分析するために、その要素の周囲のある範囲で、パタンマッチングを行う。従って、

各要素を細かく分解し要素数を増加させると、次の段階のカメラの要素運動の推定では、

きめ細かい動きベクトル分布が与えられるために、ある程度精度が高くなることが期待さ れるが、細かく分解しすぎると、パタンマッチングの精度が下がり、最終的にカメラ要素 運動推定も精度が下がることになる。どの程度の要素数とするか見極める必要がある。

3-1-2 パタンマッチング範囲

動きベクトル分布解析での各要素のパタンマッチングを行う範囲については、これを拡 げることで、マッチする領域の検出の可能性が向上するが、その一方で、より多くの時間 を要することになる。フレーム間でのある程度の移動量をカバーできる範囲を見極める必 要がある。

3-1-3 カメラ要素運動推定手法

主な推定手法として、第1に、ブロックマッチング等により解析された各要素の動きベ クトルをクラスタリングし、最大クラスタの重心点をカメラ要素運動とする手法と、第2 に、フレーム間で画像がマッチするように画面全体を変形させ、必要とされた変形からカ メラ要素運動を算出する方法である。ここでは、前者を主として検討する。

3-1-4 その他

ブロックマッチングによる欠点として以下の事項があり、これらの対策も検討すること が必要である。

(1) 要素内の輝度変化がわずかな場合、マッチングの最良点を決定することが難しい。

(2) 要素内に単一のエッジのみが含まれる場合、エッジに並行する動きは決定することが 難しい。

3-2 視覚運動要因に基づく映像酔い程度の推定における統合化モデルの構築 映像酔いに関する基礎研究により、過去に報告された知見から、カメラの要素運動等の 視覚運動要因に対する映像酔いの程度を算定する。ただし、これを実際のカメラ運動によ る映像酔いの程度の推定に適用するためには、視覚運動要因が複合することによる影響 を、生体特性を加味した統合化モデルとして構築する必要がある。

視覚運動要因に対する映像酔い程度の算定及び統合化モデルの構築に対しては、主とし て以下の事項について検討する必要がある。

3-2-1 視覚運動要因に対応する映像酔いに関する科学的知見の適用可能性 カメラの要素運動であるパン、チルト、ロール、ズームに対する映像酔いへの影響に ついては、2種類の方法で検討が行われてきた。1つは、各要素運動を映像で個別に再 現し、一方向に運動が一定時間継続する場合、または振幅や周期を個別に変えて、各々 一定時間継続する場合などの映像を被験者に観察させ、これにより映像酔いに対する影 響を調べたものである。もう1つは、カメラの要素運動が複合する映像を被験者に観察 させ、生体影響として何らかの変化が生じている全ての時間付近でのカメラ運動を調べ、

その共通性を検討するものである。さらに、映像中の運動ベクトル分布や他のさまざま な要因と生体影響との関係についての研究も行われている。

こうしたデータについて、個別に精査し、本スタディでのシステム開発に適用可能な ものについての検討を行う。

3-2-2 映像中の視覚運動要因による映像酔いの相互作用について

カメラの要素運動や映像中の動きベクトル分布等による酔いの程度の算定に基づき、カ メラの複合的な運動等の視覚運動要因のもとでの酔いの程度を推定するにあたり、運動の

(14)

複合性による統合化モデルを構築するが、これについて主として2つの検討事項がある。

(1) カメラ運動の複合性により、酔いの程度がどのような相互作用を示すかを検討し、仮 定に基づいて統合化モデルの構築を行う。複数の情報に基づく相互作用として、一般 に、線形的な重み付け加算や一方の情報による支配、または相互の増強等が存在する。

こうしたさまざまな相互作用についての可能性を検討する。

(2) カメラ運動による酔いの程度が、時間によりどのような変化を示すかについて検討 し、相互作用に組み込む必要がある。酔いは、比較的短期に軽度の不快症状が現れる ことがある一方で、気づかぬうちに、影響が累積し、突然嘔吐など重い症状を引き起 こすこともある。こうした生体特性を反映するために、カメラ運動による一過性の影 響と持続性の影響とを考慮することが必要である。

3-3 大規模被験者実験による映像酔い程度に関する生体影響計測

上述の3-1で分析した映像を、多数の被験者に提示し、生体特性としての映像酔いの 程度に対して、心理的計測手法と生理的計測手法とを用いて生体影響計測を行う。心理的 計測手法として、この分野である程度確立されている「シミュレータ酔いアンケート」(S SQ)や、観察中の不快度評価等を行う。生理的計測手法として、眼球運動(及び調節、

瞳孔)計測や心拍、血圧、呼吸、発汗等の計測を行うとともに、ρmax の算定を行う。

こうした計測結果の解析により、映像視聴の時間経過とともに、各計測指標がどのよう な変化を生じているか、その共通性を検討し、各計測指標の特徴を確認する。

各生体影響の計測指標については、その有用性が示されてきた。ただし、心理的計測手 法と生理的計測手法との関係については、さらに時間経過による状況で検討する必要があ り、本スタディにおいても、その関係について分析を行う。またこれにより、心理的計測 手法と生理的計測手法の間の特徴を明らかにして、映像中の視覚運動要因との関係付けを 行う上での基盤データとする。

3-4 生体影響の推定と計測の比較及び統合化モデルの修正

上述の3-3で計測した映像視聴による生体影響の結果と、3-2で統合化モデルによ り推定した生体影響の結果とを比較し、統合化モデルとして修正すべき事項についての検 討を行う。そのために、以下の事項について検討する。

上述の3-3で特徴づけられた心理的計測手法と生理的計測手法の結果に基づいて、映 像視聴の時間経過とともに生じる各計測指標の変化と、映像中の視覚運動要因との関係性 を検討する。

この関係性の検討においては、以下の事項が重要となる。

(1) カメラの各要素運動における各計測指標の変化の相関性 (2) 要素運動の組合せによる各計測指標の変化の相関性 (3) 動きベクトル分布と各計測指標との変化の相関性

(4) 繰り返し生じる視覚運動要因がある場合には、それによる増強と順応的減衰の有無を 確認

こうした検討を通じて、複合的なカメラ運動など映像中の視覚運動要因による生体影響 についての知見をさらに集積する。

上述の3-2で構築された統合化モデルに基づいて推定された映像視聴による生体影 響と3-3で計測された生体影響とを、以下の観点から比較検討する。

(1) 生体影響の時間変化としての共通する性質を検討する。

(2) 3-3の計測で集積された映像中の動きベクトル分布やカメラの要素運動の組合せに よる影響に基づいて、統合化モデルのパラメータを変化させることで推定結果を変化

(15)

させる。これにより計測結果との共通性が増加するか、減衰するかを見極める。

(3) 上述の(2)の検討を、いくつかの観点から実施し、統合化モデルのパラメータ変化に よる推定結果への影響を検討する。

3-5 映像酔いガイドライン検証システムの構築

上述の3-1~3-4で検討した事項に基づいて、映像酔いガイドライン検証システム の基本構造を構築する。基本的には、以下の手順に従ってガイドラインの検証を行うシス テムである。これをソフトウェアとして具現化する。

(1) 動画解析による動きベクトル分布の解析とカメラの各要素運動(ロール、パン、チル ト、ズーム等)を推定する。

(2) 推定されたカメラの各要素運動や動きベクトル分布等の視覚運動要因から統合化モ デルに基づいて、生体影響の時間変化を推定する。

(3) ガイドライン的数値基準が与えられた場合に、(2)の推定に基づいて、その妥当性を 判定する。

(16)

【 本 編 】

(17)

第1章 映像酔いガイドライン検証システムの開発

1-1 映像酔いガイドライン検証システムの概念設計

映像が生体に与える影響や効果を探る場合、映像特性、感覚(視聴覚)特性、自律 神経特性を統合して議論する必要がある。しかしながら、映像特性に関する調査はあ る程度進んできているものの、さらに進んで感覚特性や自律神経特性までとなると、

すべてを網羅することは難しい。また、数10人規模の比較実験を必要とする。その結 果、さまざまな客観的特性が十分に計測されないまま、主観的評価で映像酔いが調査 されることがほとんどであった。

映像酔いの主要因は、映像に含まれる視覚的運動であると考えられるが、この他に も映像の特性(物理要因)、視聴環境の物理要因、視聴者属性(感覚特性や自律神経 特性)などさまざまな要因の影響を受けることが知られている(図 1-1-1)。なお、こ れらのモデルはそれぞれ得意とする時間スケールが異なることにも注意が必要である。

本スタディでは、この主要因である映像中の視覚的運動に焦点をあてる。

図 1-1-1 映像酔いを探るキーポイント

映像中の視覚的運動には、画面の各領域の運動方向や速度がある相関を有するいわ ゆる大局的運動(Global Motion、以下、グロ-バルモーションという)や、それら に相関のない局所的な運動(Local Motion、以下、ローカルモーションという)の集 まりに分類される。さらに、グローバルモーションには、映像を撮影したカメラの要 素運動(パン、チルト、ロール、ズーム等)が含まれる。「映像酔いガイドライン検証

動きベクトル

シナリオ

フレームレート フィルタ 映像の特性

輝度

解像度 動きと関連する特性 表示機器と関連する特性

刺激 映像より

映像酔いの症状 生体信号より

自律神経系関連情報 感覚情報

個人性のモデル

映像品質

スクリーニング 表示方式・装置・

視聴環境特性評価

感覚(視聴覚)特性評価

自律神経系 評価ユニット レイティング 情報サーバー

動機付け

筋肉 体性感覚

エネルギー代謝

時間スケール 数10secスケール 数10msecスケール

前庭感覚 視聴覚

自律神経系 筋神経系

運動制御指令

生体情報の時間スケール 総合化モデルによるリスク度

のレイティング 映像酔いの予測

property

property

コンテンツ

(18)

システム」では、これまでの研究の成果に基づいてカメラの要素運動を第1次の要因 ととらえ、その他の視覚的運動要因についても適宜、その影響を考慮し、システムの 精度向上を図るものとする。開発の手順は以下のとおりである。

(1) 酔いを誘発しやすい映像の動画解析により、映像中の動きベクトル分布やカメラ の要素運動(視聴者の座標系ではロール、ピッチ、ヨー、ズーム等)を推定する。

(2) 推定されたカメラの各要素運動など映像中の視覚運動要因による映像酔いの程度 を、既知の知見に基づいて算出し、これに感覚特性や自律神経特性を加味した統 合化モデルを構築することで、映像酔いの程度を推定する。

(3) 映像を実際に被験者に提示し、映像酔いの程度を生理・心理指標で計測する。

(4) 統合化モデルによる映像酔いの推定値と被験者実験による計測値とを比較する。

(5) 統合化モデルを修正し、さまざまな視聴環境条件で推定値と計測値とを比較して、

映像酔いの影響を検討する。

(6) 別の種類の映像を用いて、上述の(1)~(6)を繰り返し、統合化モデルのパラメー タ設定による影響を明らかにする。

今年度は、これまでの研究成果を整理したうえで、一連の「映像酔いガイドライン 検証システム」のプロセスを体験できるプロトタイプシステムを構築した。すなわち、

個々の解析法をユーティリティとしてGUI(Graphical User Interface)を設計し、

互いのデータを共有することで、それらをシームレスに使えるようにした。各ユーテ ィリティは単独でも動作するが、さまざまな組み合わせで解析や評価を進めることが できる。これによって、任意の映像を解析し、既存ライブラリを参照にした映像酔い のチェックや自律神経系評価指標の推定を可能とするシステムをめざした。映像特性 ユーティリティでは映像ファイルを入力とし、カメラの動作を解析したさまざまな映 像特性を表示する様にした。また、生体機能を計測することで、自律神経関連の評価 値等を表示できる。ファイル構成は映像関連ファイル、生体影響評価関連ファイル、

映像酔いの刺激ライブラリなどからなる。図1-1-2に開発した「映像酔いガイドライン 検証システム」の概念設計を示す。

図 1-1-2「映像酔いガイドライン検証システム」の構成

開発した「映像酔いガイドライン検証システム」は、大きく分けて映像関連ユーテ

映像酔いガイドライン検証プロトタイプシステム

映像関連ユーティリティ 生体影響評価関連ユーティリティ

映像刺激ライブラリ

click!

映像酔いガイドライン検証プロトタイプシステム

映像関連ユーティリティ 生体影響評価関連ユーティリティ

映像刺激ライブラリ

click!

映像特性解析

視点体感シミュレーション

映像動きベクトルの解析

映像刺激ライブラリ 生体影響評価関連ユーティリティ

- LMV推定 - GMV推定 -輝度推定

-自律神経系評価パラメータ推定 -自律神経系生体信号時系列解析 -時系列表示

-時系列表示 -時間周波数表示

- LMVとGMVの相関係数ラスター表示 - GMVとトリガ要因の重合せ表示

-ランダムドット映像 -視線体感映像

-トリガ要因推定

-リスクが予想される区間表示

データベース 映像関連ユーティリティ

(19)

ィリティ、生体影響評価関連ユーティリティ、映像刺激ライブラリからなる。これによっ て、任意の映像の動きベクトルを推定することで、映像評価ライブラリを参照にした映像 酔いのリスク度推定を実現する。さらに、自律神経系から生体への影響を推定する方法を 提供する。

1−1「映像の動きベクトル解析とカメラ要素運動推定」では、映像関連ユーティリティ として、映像の動きベクトル解析、カメラ要素運動推定において、既存の方法を用いた。

しかし、現状では映像の動きベクトル解析に非常に長い時間を要している。この点は、映 像の動きベクトル推定エンジンのハードウエア化等、リアルタイム化を図る必要がある。

推定した映像の動きベクトルに対しては、時系列表示、時間周波数表示やローカル動きベ クトルとグローバル動きベクトルとの相関係数のラスター表示などを用意し、時間を追っ て映像の動きに関する特徴を解析できるようにした。

1−2「視覚運動要因に基づく映像酔い推定での統合化モデルの構築」では、映像酔いの モデルとして映像特性、感覚(視聴覚)特性、自律神経特性を統合的に取り扱おうとする 2つのモデルを紹介する。第1に、時変要因モデルでは映像のカメラワークに酔いのきっ かけがあるとし、そのきっかけが自律神経系に蓄積的な影響をもたらすと考える。第2に、

映像のカメラワークによる視覚的運動に注目し、主観的な方法で影響や効果を調べる感覚 特性モデルである。これらのモデルはそれぞれ得意とする時間スケールが異なることにも 注意が必要である。この章では、時変要因モデルと感覚特性モデルを紹介したあとで、相 互作用・時間要因の取り扱いに関する考えを述べる。なお、各々のモデルに基づくリスク 度の推定法を参考までに示した。ただし、裏付けデータは十分ではなく、あくまで参考と して取り扱っていただきたい。

1−3「映像酔い生体影響の計測」では、映像酔いの生体影響を探るために、心理的計測 と生理的計測の手法を示した。生理的計測では心電図と脈波が計測できるとして、自律神 経系への影響を評価する方法を生体影響評価関連ユーティリティとして提供する。なお、

生体影響を計測する装置に関しては、安価な方式で小型、軽量化を進めている。これが実 現できれば、計測される人々への負担も少ないため、多数の被験者に同時に適用すること が可能となる。このような多数の被験者を同時に用いた方法を用いることにより、映像の 定量的かつ客観的な生体影響評価を少ない回数の実験で行うことができるようになる。

これまでの研究では映像特性、感覚特性、自律神経特性をすべて客観的データで網羅し た研究はほとんどなく、従って、客観的データと主観的データとの対比も十分に行われて こなかった。また、映像用に関与する要素のうち、感覚特性と自律神経特性には個人差が ある。これまでの研究成果を統合した「解析デスクトップ」では、映像酔いに関与するさ まざまな要因を統合し、映像酔いのリスク度評価を試みる。

1−4「統合化モデルの構築」では、「映像酔いガイドライン検証システム」のプロトタ イプを紹介する。任意の映像の動きベクトルを推定することで、既存の映像評価ライブラ リを参照にした映像酔いのリスク度推定を実現する。この際、時変要因モデル、感覚特性 モデルによるリスク度の推定プロセス、さらに、自律神経系の振る舞いから映像酔いの生 体への影響を検証する方法を提供する。

最後に、映像酔い刺激のライブラリ化に関しては、多くの被験者を対象にした実験で、

ある程度、確認がとれている映像刺激を用いる。しかし、従来の方法では多くの時間がか かるため、手振れ映像等、映像酔いの発症が報告されている映像から動きベクトルの特徴 を抽出し、映像酔いの刺激候補としてライブラリ化を進める。ただし、ライブラリの蓄積 は始まったばかりで、実際の被験者実験とのダブルチェック等をふまえながら、地道にラ イブラリを増やす努力が必要である。

(20)

1−1−1 動画解析ソフトウェア基本構造設計

映像酔いガイドライン検証システムでは、映像中の物理的特徴のうち、いわゆるグ ローバルモーション(基本的にはカメラ運動により生じると仮定する)に焦点をあて、

これを発生させるカメラの要素運動(パン、チルト、ローテイト、ズーム等)の推定 を行う。本システムを将来的に普及しやすいものにするためには、このカメラ要素運 動の推定手法について検討しておく必要がある。そこで、ソフトウェアの基本構造設 計にあたっては、カメラの要素運動抽出をどのような手法で行うかをあらかじめ決定 するとともに、またその手法における各種パラメータの設定をある程度フレキシブル に行って、その適正値を検討できるようにしておく必要がある。

1-1-1-1 カメラ要素運動の推定方法

映像の解析から、カメラ要素運動の推定に直接的に関係する、いわゆるグローバル モーションを抽出する手法については、主に2つの手法に分類されるといわれる。1 つは、映像中の各部位の動きであるいわゆる動きベクトルを算出し、その分類から、

ある特定領域に分布するベクトルの重心をグローバルモーションとするボトムアッ プ的手法であり、もう1つは、映像の動きを、画面全体を変形させてフレーム間での マッチングを行うことで求めるトップダウン的手法である。

これら2つの手法にはそれぞれに利点と欠点とが存在する。ボトムアップ的手法は、

あらかじめ動きベクトルを算出するため、映像中の局所的な物体の運動など、本来の グローバルモーションとは異なる運動を比較的排除しやすいが、局所的に輝度勾配の 変化に乏しい領域が存在する場合、その領域付近の動きベクトルが正確に算出し難い という問題がある。また、トップダウン的手法は、画面全体でマッチングを行うため、

局所的に輝度勾配の変化に乏しい領域が存在しても、その影響は排除されるが、映像 中の局所的な物体の運動が存在する場合、その影響を受けやすいという問題がある。

本スタディでは、2つの手法のうち、動きベクトルの算出を行うボトムアップ的手 法を採用する。動きベクトル算出は、MPEGなど映像圧縮技術で採用されているた め、映像酔いガイドライン検証システムを将来的に普及させる上で、有利であると考 えたためである。

一方、ボトムアップ的手法の処理の第1段階として実施される動きベクトルの算出 方法としてさまざまな手法が提案されているが、これらは大きく2つに分類されると 言われる。1つは、ブロックマッチング法とよばれるもので、あるフレームの画像上 で特定の領域をテンプレートとして、次のフレームの画像上でその領域に一番類似し ているところがどこかを探索する手法である。もう1つは、勾配法とよばれるもので、

画像上の点が時間とともに画像上を移動するとの立場から、画像上の位置の時間微分 による拘束方程式をたて、さらに仮定条件を加え、これを解くことで動きベクトルを 求める手法である。

この2つの手法のうち、本スタディでは、ブロックマッチング法を採用する。ブロ ックマッチング法は、映像圧縮などでも比較的よく利用される手法であり、映像酔い ガイドライン検証システムを将来的に普及させる上で、有利であると考えたためであ る。

従って、カメラの要素運動推定の処理としては、図 1-1-3 のような構成となる。

(21)

図 1-1-3 映像酔いガイドライン検証システムのカメラ要素運動推定の手続き

図 1-1-4 透視射影カメラモデル

1-1-1-2 グローバルモーション推定における基本概念

カメラ要素運動の推定にあたり基本となるカメラモデルを定義する。図 1-1-4 は、

透視射影のカメラモデルであり、視点0による特徴点 P(X,Y,Z)は、投影面上の点 p(x,y)に投影される。ここで、p と P との関係は式 1-1-1 で表せる。

式 1-1-1

動画解析ソフトウェアでは、複数の点(x,y)の動きから複数の点(X,Y,Z)の変化を オプティカルフローとしてとらえ、その基になるカメラの要素運動を推定する。

このカメラの要素運動として、パン、チルト、ローテイト、トラック、ブーム、ド リー、ズームがあげられるが、これらは、カメラの位置変化をともなうかどうかの観 点と、視覚運動の種類による観点とで、表 1-1-1 のように分類できる。本スタディで は、これらのうち、カメラの位置変化の有無の区分についてはその難易度と必要性の 程度に配慮し、特に区別せず、変化をともなわないパン、チルト、ローテイト、ズー ムによる分類までを必須として行うものとする。

1-1-1-3 ソフトウェアの基本構造

カメラ要素運動推定のソフトウェアでは、ここまでに述べた手法と基本概念に従い、

ブロックマッチングによる動きベクトルに基づいて、カメラ要素運動を推定する動画 解析ソフトウェアの基本構造を決定した。まず映像をAVIファイルとして入力した 後、ブロックマッチングを行うためのウィンドウを開き、マッチング要素数の設定や パタンマッチング範囲の設定を行う。そして次に、カメラ要素運動推定を行うための ウィンドウを開き、推定区間等の設定を行い推定を実施する。具体的な構成と操作方

動 き ベ ク ト ル の 推 定

( フ ゙ロ ッ ク マ ッ チ ン ク ゙)

ク ゙ロ ー ハ ゙ル 運 動 の 推 定

( 動 き ヘ ゙ク トル の 特 徴 空 間 内 分 類 )

映 像 入 力

視点 O

X

Y

Z

特徴点P(X,Y,Z)

x

y p(x,y)

D

画像平面

) , ( ) ,

( X Y

Z y D

x =

(22)

法については、1-4 統合化モデルの構築に詳述する。

表 1-1-1 カメラ要素運動の分類

1−1−2 ブロックマッチングとそのパラメータの検討

動きベクトル推定及びグローバルモーション推定においては、そのパラメータを検 討し、カメラ要素運動を推定する上で、最適な値を検討しておく必要がある。ここで は、まずブロックマッチングの手法、さらに具体的にパラメータの検討について述べ る。

図 1-1-5 ブロックマッチング

ブロックマッチング法とは、先述のとおり、あるフレームの画像上で特定の領域を テンプレートとして、次のフレームの画像上でその領域に一番類似している場所を探 索する手法である(図 1-1-5)。具体的には、テンプレートの画像と次フレームの同じ サイズの画像との間に、図 1-1-6 のようにマッチングする画素が存在する時、各画素 の値に対し、式 1-1-2、1-1-3 に基づいて相関係数 r を算出し、その値が最大となる 次フレームの画像をマッチング位置として決定する。なお、カラー画像の場合には、

rgbそれぞれの値に対して相関係数rを計算した後、その平均値を評価の対象とし ている。

式 1-1-2 ただし、

カメラの位置変化無し カメラの位置変化有り

水平並進運動 垂直並進運動 回転 拡大・縮小 パン チルト ローテイト ズーム

トラック ブーム ドリー

カメラの位置変化無し カメラの位置変化有り

水平並進運動 垂直並進運動 回転 拡大・縮小 パン チルト ローテイト ズーム

トラック ブーム ドリー

11

探索範囲

探索範囲

探索ブロック

21 31 41

12 13

22 32 42

23 33 43

映像

∑∑

= =

− −

=

m

i

ij ij

n

j

y y x SxSy x

r n

1 1

) )(

) ( 1 (

1

∑∑

= 1

m n

∑∑

= 1

m n

(23)

}

図 1-1-6 マッチング画像

ブロックマッチングのソフトウェアでは、以下のパラメータを設定できるようにし た。

(1) 探索開始フレーム:解析処理を開始するフレーム

(2) 探索終了フレーム:解析処理を終了する1つ手前のフレーム (3) 探索フレーム間距離:解析を実施する2枚のフレーム間の距離 (4) ブロックサイズ:動きベクトルを求める際のブロックの画素サイズ (5) 探索範囲:動きベクトルを求める際のブロックのマッチングの範囲

(6) 色処理指定:画像をグレースケールに変換して処理するか、rgb値で処理する か。

(7) フィルタ処理:解析前の低域通過フィルタ処理。処理する場合、画像の空間周波 数帯域を半分に制限する。

(8) フィルタ種類:低域通過フィルタ処理の種類。バイリニアとキュービック (9) オーバーサンプリング:画像の画素数を増やして処理する。

(10) オーバーサンプリング倍率:2倍、4倍、8倍を選択。ゆっくりとした動きの 解析に有効

(11) フィールド処理:NTSCなどのフィールドごとに更新される画像に対応 (12) 先頭フィールド:フィールド処理する場合、画面の先頭に来るフィールドを指

これらのうち、ブロックサイズ(あるいはブロックのマトリックス数)と探索範囲 について、以下のとおり検討した。

1-1-2-1 ブロックのマトリクス数の検討

MPEG等では、ブロックマッチングのための要素数として、縦×横で 16×16 が 用いられている。要素数を増加させ、ブロックサイズを小さくすると、局所的な動き の影響を排除し、マッチングの精度が向上するが、探索時間が増加する可能性がある。

そこで、具体的に解析処理を行い、精度をある程度維持できる比較的大きめのブロッ クサイズを検討した。

∑∑

= =

− −

=

m

i

ij ij

n

j

x

x x x x

S n

1 1

) )(

) ( 1 (

1

∑∑

= =

− −

=

m

i

ij ij

n

j

y

y y y y

S n

1 1

) )(

) ( 1 (

1

11 21 31 m1

12 22 32 m2 13 23 33 m3

1n 2n 3n mn 11 21 31 m1

12 22 32 m2 13 23 33 m3

1n 2n 3n mn

11 21 31 m1

12 22 32 m2 13 23 33 m3

1n 2n 3n mn 11 21 31 m1

12 22 32 m2 13 23 33 m3

1n 2n 3n mn

テンプレート画像 次フレームの画像

式 1-1-3

(24)

0 1 2 3 4 5 6

10 100 1000

Pan Tilt Roll Mean

SD (deg/s)

ブロックサイズ (pixel)

0 1 2 3 4 5 6

10 100 1000

Pan Tilt Roll Mean

0 1 2 3 4 5 6

10 100 1000

Pan Tilt Roll Mean

SD (deg/s)

ブロックサイズ (pixel)

映像は、回転(以下、ローテイトという)映像とし、映像サイズは、640×480 ピク セル、フレームレート 30 fps、フレーム数 30 フレームにおいて、29、 38、 50、 100、

128 ピクセル(ブロックの要素数は各々、22×16, 16×12, 12×9, 6×4, 5×3)の 5種類のブロックサイズで、得られたローテイトの速度の標準偏差を求めた(図 1-1-7)。この結果、ブロックの要素数の減少とともに標準偏差値が増加するが、12×

9 程度までは標準偏差値がある程度維持されることがわかった。そこで、ブロックの 要素数として 12×9 程度(用いた映像サイズでは、ブロックサイズは 50 ピクセル)

が妥当だと考えられる。

1-1-2-2 探索範囲の検討

映像酔いの報道事例で視聴された映像酔いしやすい典型的な映像に対して、カメラ 要素運動を推定した結果、映像が 640×480 ピクセルの場合、1フレームあたり、パ ン方向では 29 ピクセル程度、チルト方向では 14 ピクセル程度の変化が確認された。

従って、これをある程度カバーする範囲で設定すればよいことが明らかになった。そ こで、探索範囲は、この値に1割増しした 32 ピクセル程度で妥当だと考えられる。

図 1-1-7 ブロックサイズと推定値の標準偏差値との関係

1−1−3 カメラ要素運動の推定

前節の手法で算出された各画像中の動きベクトルの分布に基づいてグローバルモー ションを推定し、これをカメラの要素運動とする。カメラの要素運動については、定 式化が十分に行われている。ここでは、それらの概要をまとめておく。表 1-1-1 に示 したカメラの位置変化のないカメラ要素運動について、画像1の点 p1(x,y)から画像2 の点 p2(x’,y’)への変化は、式 1-1-4 に示す関係で記述される。

式 1-1-4 ここで、

ただし、Aをカメラのズームでの倍率、θをカメラの回転角度とする。また、azoom

brotate,cpan,dtilt は各々カメラの要素運動(ズーム、ローテイト、パン、チルト)を

表すパラメータである。従って、両画像間の動きベクトルは式 1-1-5 で与えられる。

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

⎝ + ⎛

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

⎟⎟ ⎛

⎜⎜ ⎞

= −

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

tilt pan zoom

rotate

rotate zoom

d c y x a

b

b a

y x

θ cos A a

zoom

=

θ

sin

A

b

rotate

=

(25)

式 1-1-5

ここで、

である。さらに、カメラの位置変化のあるカメラ要素運動の項目も加えると、最終的 に動きベクトルは式 1-1-6 で与えられる。

式 1-1-6

1-1-3-1 ズームの推定値

式 1-1-6 において動きベクトルの u と v を各々x と y とで偏微分し、式 1-1-7 を得 る。

式 1-1-7

従って、図 1-1-9 に示す

x u

y v

の特徴空間上で、動きベクトルの偏微分値が

x u y v

= ∂

の直線付近に存在する時、それらは拡大・縮小の視覚運動成分を反映するこ

とになる。ソフトウェア上では、ズームとドリーとを区別せず、また図 1-1-8 中で破 線の領域に入っているもののみをズーム成分として処理をしている。

1-1-3-2 ローテイトの推定値

式 1-1-7 において動きベクトルの u と v を各々y と x とで偏微分し、式 1-1-8 を得 る(図 1-1-9)。

式 1-1-8

図 1-1-8 ズームを示す特徴空間 図中では、u を Vx で、v を Vy で表現している。

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

⎝ + ⎛

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

⎟⎟ ⎛

⎜⎜ ⎞

− ′

= ′

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

− ′

− ′

⎟⎟ =

⎜⎜ ⎞

tilt pan zoom

rotate

rotate zoom

d c y x a

b

b a

y y

x x v u

− 1

′ =

zoom

zoom

a

a

⎪⎭

⎪ ⎬

⎪⎩

⎪ ⎨

⎧ ⎟⎟

⎜⎜ ⎞

⎝ + ⎛

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

⎟⎟ ⎛

⎜⎜ ⎞

′ + ′

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

⎝ + ⎛

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

⎟⎟ ⎛

⎜⎜ ⎞

− ′

= ′

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

boom track doly

doly tilt

pan zoom

rotate

rotate zoom

d c y x a a z d

c y x a

b

b a

v u

0 1 0

doly

zoom

a

a z y v x

u = ′ + ′

= ∂

∂ 1

rotate

x b v y

u =

− ∂

∂ =

図 1-1-9 ローテイトを示す特徴空間      図中では、u を Vx で、v を Vy      で表現している。  図 1-1-10 パン、チルト、トラック、                   ブームを示す特徴空 間    図中では、u を Vx で、v を Vy    で表現している。  従って、図 1-1-9 に示す y u∂∂ と xv∂∂ の特徴空間上で、動きベクトルの偏微分値が xvyu∂−∂∂=∂ の直線付近に存在する時、それらは回転の視覚運動成分を反映することにな る。  1-1-3
図 1-2-8  一 方 向 回 転 速 度 の 効 果   (a) 映 像 酔 い に 関 わ る 主 観 評 価 値 、 (b)  ベ ク シ ョ ン 強度の主観評価値
図 1-2-9 往復回転速度による映像酔いの主観評価値  (a)ピッチ軸、(b)ヨー軸、
図 1-2-10 動画解析により推定したカメラの運動  の運動を決定して作成したものである。映像は 20 分間であり、ただし、実験では直前の 5分間と直後の2分間に白色画面を付け加えて、合計 27 分間の映像とした。また、映像 提示に用いた液晶ディスプレイのサイズは、37 インチ(25.9 x 34.1 deg)である。  実験参加者は、映像視聴中1分おきに、SSQの質問項目の一つである、 「一般的な不 快感を感じる」に対し、 「全く感じない」 、 「わずかに感じる」 、 「中程度に感じる」 、 「激し く
+7

参照

関連したドキュメント

周 方雨 東北師範大学 日本語学科 4

(公財) 日本修学旅行協会 (公社) 日本青年会議所 (公社) 日本観光振興協会 (公社) 日本環境教育フォーラム

Solar Heat Worldwide Market and Contribution to the Energy Supply 2014 (IEA SHC 2016Edition)

【助 成】 公益財団法人日本財団 海と日本プロジェクト.

(一社)石川県トラック協会 団体・NPO・教育機関 ( 株 ) 石川県農協電算センター ITシステム、情報通信

高尾 陽介 一般財団法人日本海事協会 国際基準部主管 澤本 昴洋 一般財団法人日本海事協会 国際基準部 鈴木 翼

二月八日に運営委員会と人権小委員会の会合にかけられたが︑両者の間に基本的な見解の対立がある

原子力損害賠償・廃炉等支援機構 廃炉等技術委員会 委員 飯倉 隆彦 株式会社東芝 電力システム社 理事. 魚住 弘人 株式会社日立製作所電力システム社原子力担当CEO