仮訳にあたって
製品に着目した環境対策としては、環境配慮設計やライフサイクルアセスメント
(LCA)が有名ですが、欧州連合(EU)ではこれらを包含した「統合的製品政策
(Integrated Product Policy, IPP)」の策定が進められています。EUでは、IPPに関する 専門のウェブページ(http://europa.eu.int/comm/environment/ipp/home.htm)を開設し、
広く情報発信しています。
本冊子は、上記のウェブページに掲載されている情報の中からEUの方向性を示す 文書と考えられた欧州委員会のコミュニケ、COM (2003) 302 final, Brussels, 18.6.2003,
“COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE COUNCIL AND THE EUROPEAN PARLIAMENT, Integrated Product Policy, Building on Environmental Life-Cycle Thinking” を 仮 訳 し た も の で す 。 な お 、 仮 訳 に 当 た っ て は 、 http://europa.eu.int/eur-lex/lex/LexUriServ/site/en/com/2003/com2003_0302en01.pdf に掲載 されている英文(参考資料として本冊子の後段に添付)を元本として使用しました。
循環型社会の形成に向けて、廃棄物の発生抑制やリサイクルの促進が重要性なこと は論を待ちませんが、我々が日々何気なく利用している「製品」に着目し、そのオー バーオールの環境影響について検討することも重要なことと思います。そのような検 討に本冊子が多少なりとも資することができれば幸いです。
平成18年3月
財団法人クリーン・ジャパン・センター
COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES
Brussels, 18.6.2003 COM (2003) 302 final
欧州委員会から理事会と欧州議会へのコミュニケ
統合的製品政策
環境的ライフサイクル思考の構築
(仮 訳)
出典:http://europa.eu.int/eur-lex/lex/LexUriServ/site/en/com/2003/com2003_0302en01.pdf
1. はじめに
欧州連合の基本的目標の一つは持続可能な開発である。これは、将来の世代のニ ーズを損ねることなく、現世代のニーズを満たすことを意味する。この目標は、
2001年ヨーテボリ(スウェーデン)欧州理事会でさらに補強され、持続可能な開 発のための戦略という形で、環境的側面がリスボン・プロセスに追加された1。 この戦略において、第6次環境行動計画の優先テーマに従って、環境分野におけ るいくつかの活動が特定された2。天然資源をより責任をもって管理するという領 域では、欧州理事会は、「資源の利用と廃棄物による環境影響の軽減を目指した EUの統合的製品政策(Integrated Product Policy:IPP)を産業界と協力して実 施すべきこと」に合意した。
欧州委員会は、利害関係者らと協力し、研究の助けをかりて、EU の統合的製品 政策(IPP)を策定した3。IPPについて初めて利害関係者と討議したのは、1998 年の会議の場であった。翌年、IPPは「ヴァイマール(独)環境大臣非公式会合」
で検討された。議長国がまとめたこの会議の結果は、グリーンペーパーを採択し ようとする欧州委員会の意向を歓迎し、欧州市場におけるよりグリーンな製品の ための市場状況の改善もまた欧州の産業の競争力の強化に役立つことを強調して いる。欧州委員会は2001年2 月にグリーンペーパーを採択し、その内容に関し て利害関係者らからの意見の聴取に着手した。(詳しくは付属書1を参照)
この意見の聴取は、IPPには明らかに持続可能な開発に貢献する役割があること を示した。本コミュニケは、なぜ環境政策に製品の側面を考慮することが必要な のかを改めて述べている。次節では実際に着手する前のIPPアプローチを、3節 では、EUのIPP戦略の指針を説明する。残りの節では、IPPアプローチの採用 を推進するために欧州委員会が今後実施することを概説する。
2. 環境政策に製品の側面を取り入れることがなぜ必要か?
ここ 2、3 年間、欧州委員会は製品による環境影響に関する政策の再検討を開始
1 2001年6月15日-16日のヨーテボリ欧州理事会の議長国結論文書のパラグラフ19-32、
http://ue.eu.int/pressData/en/ec/00200-rl.enl.pdf
2 第6次共同体環境行動計画を記載している欧州議会と理事会の指令1600/2002/EC(2002年9月10 日付OJL 242、p1–p15)
3 例:http://europa.eu.int/comm/envionment/ipp/ippsum.pdf
した。すべての製品とサービス4は、生産、使用又は廃棄の過程で、環境に影響5を 及ぼす。この影響の正確な性質は複雑で、これを数量化することは困難であるが、
問題の潜在的な重要性は明白である6。同時に、継続的な経済成長と繁栄は、製品 の生産と使用から多大な影響を受けている。取り組むべき課題は、ライフスタイ ルと快適な暮らし(製品から直接影響を受けることが多い)の向上と環境保護を 両立させることである。言い換えると、双方にプラスとなる状況(win-win
situation)、すなわち、環境の改善と製品のより優れた性能が同一歩調をとり、
そして、環境の改善が産業の長期的な競争力に寄与するような状況が見出される 必要がある。IPPはこれを実現しようとしているのである。
これまで、製品に関連した環境政策は、工場からの汚染物質の排出や廃棄物管理 の問題など、大規模な点汚染源に焦点を当てがちであった。これらは多くが成功 してきた。しかし現在、使用段階を含め、製品のライフサイクル全体を見据えた 政策によって補完される必要があることが明らかになってきている。この政策に おいては、ライフサイクル全体を通じた環境影響について統合的な方法で対処さ れること、そして、(環境影響が)単にライフサイクルの一部分から別の部分への 転換されるようなものでないことが確保されなければならない。これはまた、環 境影響の対処については、総合的な環境影響と資源利用を最善かつ最も費用効率 良く軽減できるライフサイクルの時点においてなされることを意味するはずであ る。成功のためには、この政策においては、汚染軽減措置の対象を拡散させてし まうといった製品というものの多くのの特性が考慮されなければならない。
第一に、製品の全体的な数量が増加している。可処分所得7の増大はより多くの製 品を購入できることを意味する。例えば、以前は、1世帯に 1台の固定電話があ るだけであったが、現在では家の中に数台の子機があることが多い。世帯の平均 規模も縮小しており、これが一定の家庭用品の数量の増加に拍車をかけているよ
4 本コミュニケの残りの部分では、分かり易くするために、製品のみについて言及する。しかし、一般 的な領域内にはサービスも含まれると理解すべきである−4項を参照。
5 環境影響には人の健康への影響も含まれると解釈すべきである。
6 例えば、車という一製品は、運輸部門からのEUのCO2排出量のほぼ80%に対する責任を負ってお り、同分野からの排出量が最も急速に上昇してきた。同時に住民当たりの車の台数も上昇しているこ とで(1990年から1999年の間に14%)、メーカーはより多くのリソース(財源、人的資源等)を必 要とし、駐車場と道路のためのより多くのスペースが必要になり、より多くの廃棄物処理問題を生じ ている。こうした状況は、車1台当たりの排出量の大幅な削減や2008年までにCO2排出量を25%
削減するとした任意の合意など、関係産業の多大な努力があったにもかかわらず生じている。さらに、
他の汚染物質については、ここ何十年かの間にかなり大幅に減少した。
7 1980年から1997年の間に、消費者支出は実質46%上昇し、食品や住居などの基本的なニーズから交 通、燃料、レクリエーション等のより選択的な品目に移行してきた。(EEA Fact Sheet
2001–YIR01HH04)
うだ8。これは、同じ製品が数多くあり、それらがより拡散していることを意味す る。そのため、いかなる製品政策も製品の数量の増大による環境影響の軽減を目 指すべきである。
第二に、製品とサービスの種類が増加している。現在、基本的な製品は多くの多 様な種類で登場している。例えば、テレビのスクリーンには異なったタイプ(ブ ラウン管、LCD、プラズマ)がある。従って、多くの異なった機種に同時に対処 するために、製品政策は柔軟なものでなければならない。
第三に、革新が新機種を絶えず生みだしている。例えば、過去 20 年間に、レコ ードプレーヤーから CD プレーヤーに移り、現在では、DVD プレーヤーの登場 によって、以前の機器の座がかなり奪われていると言える。構成部品の革新サイ クルはさらに短い場合が多い。より高性能のコンピュータ・プロセッサの急速な 開発がこれを証明している。製品政策においては、環境のみならず経済のために も、この創造性が活用される必要がある。
第四に、製品が世界的に取引されている。シングル・マーケット(単一市場)と 多国間市場の両方の貿易と投資の障壁の軽減は、多くの国の製品が国際的に取引 されるより世界的な市場に貢献してきた。われわれが店舗で購入できる製品の原 産地は非常に多様になってきている。製品政策においては、貿易の世界的な性質 が考慮されるべきであり、国際貿易機関の規則など関連の国際協定が遵守される ことが必要である。
第五に、製品がよりいっそう複雑になっている。これは、製品に関する専門知識 が設計担当者に集中するようになっていることを意味する。規制担当者が、まし てや一般大衆が、どのような技術的変更が可能かについて現実的なアイデアをも つことは非常に難しい。そのため、いかなる製品政策においても、製品が健康、
安全性、環境に関して合意された基準を満たすことに対し、生産者と設計者がよ りいっそう責任を負うことが確保される必要がある。
第六に、製品は完全な設計が可能だが、不適切な使用と廃棄は環境に多大な影響 を及ぼす。製品はできるだけ環境影響を少なくするように設計することが可能で あるが、それでも消費者は環境に優しくない方法で使用することがあるだろう。
例えば、省エネの電球は環境面に大きく役立つが、これらは不使用時に電源を切
8 1980年から1995年の間に、EUにおける平均世帯人数は2.82人から2.49人に低下した。この傾向 は継続しそうである。EEA Fact Sheet 2001–YIR01HH03
っておいて初めて十分にその効果を達成できる。同様に、不法投棄などによって 製品が不適切に廃棄されたならば、製品設計が使用後の環境破壊に対する責任を 負っているとみなすことはできない。
最後に、現在、製品はそのライフサイクル全体を通して多くの多様な関係者を関 与させている。製品の複雑化とグローバル化の進行は、製品にはそのライフサイ クル全期間を通して多くの多様な関係者がかかわることを意味している。また、
製品が非常に離れた場所で一連の異なった社会的価値の下で組み立てられ、市場 化され、使用されることがあるのを考慮する必要がある。そのため、その製品の ライフサイクルの一つの段階における関係者が、その他の段階で起こりうる問題 について明確な見解をもつことは困難である。われわれが使用している製品がど のような状況下で生産されているかはわからないだろう。ゆえに製品政策は供給 チェーンに沿った情報の流れの向上に貢献すべきである。
これらすべての要因は、製品の側面を環境政策に取り入れる必要性を裏付けてい る。製品を総体的に見て、できる限り多くの関係者を関与させ、関係者が選択し たことに対して彼ら自身に責任を負わせるべきである。それが、現行の商品関連 施策への強力な補完となるはずである。IPP アプローチは、リスボン戦略に定め られているEUのより広範な社会経済的目標を支援し、国際条約義務を遵守しな がら、この課題に対処することを目指している。IPPアプローチについては次の 節で説明する。
3. IPPアプローチ
IPP プローチは、過去 10 年の間に徐々に策定されてきたもので、現在は、製品 の環境的側面に対処する非常に有効な方法であり得ると広く認識されている。こ のアプローチは次の5つの基本方針に基づいている。
– ライフサイクル思考9-これは、製品のライフサイクルを考慮し、「ゆりかご から墓場まで」の累積的な環境影響の軽減を目指すものである。これを実施 するに当たり、ライフサイクルの個々の部分への対処が、単に環境面への負 担を別の場所に移すことにならないようにすることも目指している。製品の ライフサイクル全体を統合的な方法で観察することで、IPPは政策の一貫性 も高める。IPPは、企業と社会のために、環境影響を軽減し、経費を節減す
9 製品のライフサイクル全体の環境影響の数量化と評価を必要とする「ライフサイクルアセスメント
(LCA)」とは対照的であるが、実際的な理由から、狭義に定義した枠内の意味で。
るために最も有効と思われるライフサイクルの時点での環境影響軽減措置 をとることを奨励している。
– 市場との連携-よりグリーンな製品の需要と供給を奨励することで、市場が より持続可能な方向に動くためのインセンティブ(奨励策)を設定する。こ れは、革新性があり、先進的な思考をもち、持続可能な開発に尽力している 企業に見返りを与えるものである。
– 利害関係者の関与-これは、製品に関与するすべての者(すなわち、産業界、
消費者、政府)が自らの影響の領域に対処するよう奨励し、異なった利害関 係者間の協力を推進することを目指している。産業界は製品の設計にどのよ うに環境的側面をよりよく統合するかを考えることができ、一方、消費者は どうしたらよりグリーンな製品10を購入でき、よりよく使用し、廃棄できる かを判断することができる。政府は国全体の経済のために経済的・法的な枠 組条件を定めることができ、また、例えば、よりグリーンな製品を購入する ことで市場に直接働きかけることもできる。
– 継続的な改善-改善は、設計、製造、使用又は廃棄のいずれの段階であれ、
市場で定められた指標を考慮して、ライフサイクル全体にわたる製品の環境 影響を軽減するためになされることが多い。IPPは、達成すべき詳細な基準 を設定するよりもむしろ、上述したような継続的な改善を目指している11。 そのため、企業は自己のペースで基準を設定でき、最も費用効果のよい改善 に焦点を当てることができる。
– 多様な政策手段-IPPアプローチは多くの異なった手段を必要とする。これ は多様な製品が入手可能であり、さまざまな利害関係者が関与しているため である。これらの手段は自主的な取り組みから規制へ、地方から国際規模へ と及ぶ。IPPにおいては、義務的な措置が必要な場合があるかもしれないが、
自主的なアプローチと連携する傾向であるのは明らかだ。決定要因は、持続 可能な開発に係る望ましい成果を達成するための手段の実効性である。
4. EUのIPP戦略
10 ここでは、そして本書全体を通し、よりグリーンな製品とは、同一の機能を達成する類似製品と比較 し、そのライフサイクル全体を通した環境影響がより少ない製品と定義されている。
11 法的な基準が継続的な改善の促進に有効でないと言っているのではなく、それらは柔軟性に乏しいだ けである。ただし、一部のケースでは法的基準が望ましいことがあるかもしれない。
第1節で述べたように、EUのIPP はEUの持続可能な開発戦略の不可欠な一部 である。IPP の主な目的は、可能な場合には、競争性の問題を統合した市場主導 型アプローチを利用し、製品の全ライフサイクル期間からの環境影響を軽減する ことである。実際、企業の競争力は、ライフサイクル内で、そして異なった政策 手段の間の両方において、IPPが促進する政策の一貫性の強化によって高められ る。いくつかの環境管理手法の経験から、企業の環境意識の向上はコスト削減を 伴うことがわかっている。さらに、ますます競争的になっている世界において、
環境パフォーマンスは企業やその製品を競争上優位に立たせる要因になりうる。
実際、一部の企業は自社の環境パフォーマンスをマーケティング手段として利用 している。IPPは、特にそれらの企業の一部の知名度を高めることに役立つだろ う。
現時点で、製品の全ライフスタイル期間の環境影響を評価する方法がある。製品 の環境的側面にIPP を最初に適用したことから得た経験は、広範な持続可能性へ の影響に向けて構築すべき非常に貴重な知識基盤となる。
言うまでもなく、他の政策を十分に考慮した上で、IPPのさらなる開発が進めら れる。すでに、域内市場や競争政策の枠組内で製品の性質や取引を規制する実質 的かつ重要な法令体系がある。基本的に、IPPは、必ずしも法令を必要としない 性質の製品のさらなる改善に向けて自主的に取り組むきっかけを与えることで現 行の法令を補完する。
本コミュニケを実行する際には、取引関係の国際法に基づく共同体の義務、とり わけ貿易に関する義務、及びEUの他の政策を規律している原則が十分に考慮さ れる。さらに、欧州委員会からの新たな法律提案もまた「影響評価に関する欧州 委員会規則」12に従わなければならない。これによって、それらの提案が持続可 能な開発の3つの柱に向けたバランスのとれたアプローチとなることが確保され る。IPPの開発はまた、環境管理制度や環境ラベリングなど、既存の環境ツール
(手法)に関する経験を基に構築される。
IPPの目標の達成のために、当政策は3つの主要な役割を担う。
第一に、IPP は、「持続可能な開発戦略」及び「第 6 次環境行動計画」の両方で 特定されている環境課題への対処に貢献する。製品の側面を取り入れなければ目
12 2002年6月5日付のCOM(2002)276最終版に記載されている「影響評価に関する欧州委員会のコ ミュニケ」
標を達成するチャンスは少なくなる。IPPはまた、近々予定されている「資源の 持続可能な利用」及び「廃棄物のリサイクルと発生の抑制」に関するテーマ別戦 略のための施策を実施する重要な一部である。IPPは、近々予定されている「環 境技術活動計画」とも密接に関係している。国際的には、IPP は、2002 年 9 月 に ヨ ハ ネ ス ブ ル グ で 開 催 さ れ た 「 持 続 可 能 な 開 発 に 関 す る 世 界 首 脳 会 議
(WSSD)」で合意された持続可能な生産・消費計画の10カ年の枠組に対しても 大きな役割を果たす13。
第二に、IPPは、他の環境問題への影響も検討できるより幅広い「ライルサイク ル」の 概念を提供することで、製品関連の現行の政策を補完する。その際、わ れわれが白紙状態から始めているのでないことを考慮に入れる。なぜなら、農業 と食品の安全性の領域における「農場から食卓まで」の概念のように、一部の製 品関連の政策分野では、すでにある程度統合的なライフサイクル思考を取り入れ ているためである。
第三に、そして最も重要なことに、IPPは、現在の環境関連の製品政策手段と将 来のそれとの間の調整と一貫性を強化する。これは、これらの手段の間に潜在す る相乗効果を十分に引き出すことに役立ち、統合された手段の開発の推進を助け る。さらに、ライフサイクル・アプローチの統合を通し、必要な妥協点を明らか にし、政治的決定がなされたならば、その実行を調整することで、製品関連の環 境政策措置をより効果的なものとする。この強化された調整は事業の競争力と環 境の両方に利益をもたらす。
この目標の達成には時間を要する。欧州委員会は目標に向けて前進するために2 つの相互に関係する活動に焦点を当てる。
– 生産・使用・廃棄の段階に至る製品のライフサイクル全体を通した、すべて の製品の継続的な環境改善のための枠組条件の確立
– 環境改善の可能性が最も大きい製品への重点的取り組みの策定
本コミュニケは、欧州委員会がこれらの活動を実行するためのステップを説明し ている。しかし、他のすべての利害関係者の環境パフォーマンスの向上を目指す ことを通した、彼らの積極的な協力が IPP の成功には不可欠である。そのため、
13 WSSD(持続可能な開発に関する世界首脳会議)のパラグラフ14(ヨハネスブルグ実施プラン)及 び2002年10月30日付の「一般問題と対外関係」に関する理事会の結論文書のパラグラフ8
政策の策定は利害関係者と協力して続けられる。加盟国14及びその他の利害関係 者の役割及び責任であると欧州委員会が考えている事柄のリストを付属書 II に 示す。
IPP を始動させるために、欧州委員会はサービスよりも製品15に焦点を当ててこ の取り組みに着手する。これは、IPPの対象からサービスを除外するという意味 ではない。単に、ライフサイクル思考はサービスに対してよりも製品に対しての 方がより進んでいて、製品に関する共同体の法令体系がより進歩しているからに 過ぎない。そのため、欧州委員会にとって、製品の領域における政策を実現する ことの方がたやすいと思われる。
5. 継続的な環境改善のための枠組条件を確立する
すでに多くの異なった政策手法が存在しており、それらの手法は、特に産業界に よってグリーン製品に取り入れられているか、あるいは取り入れるために再度焦 点を当てられる可能性があるものである。それらの手法のすべてが全製品に適し ているわけではない。これについては次の節で考察する。
5.1適正な経済的・法的枠組を形成するための手法
継続的な環境改善には、ライフサイクル思考に基づいて、そして市場によって定 められた指標を考慮した上で、製造者が以前よりもグリーンな新製品を生みだす ための動機付けを必要とする。また、消費者がそうした製品を購入するための動 機付けも必要である。効果的なIPPは、製品のグリーン化とそれらの購入をもた らすための経済的・法的な枠組を必要とする。ここでの欧州委員会の役割は、そ のための適正な手段がこうした方向への移行を促進することを確保することであ る。この目的に適した政策手法を囲み1に示す。
囲み1
a) 税及び補助金
環境問題という外在性を製品の価格に内部化し、製品の環境影響を価格に正 確に反映させることによって、適正な価格にすること16が欧州委員会の長期
14 本書で使用する「加盟国」とは、加盟決定国と加盟候補国も指すものと理解すべきである。
15 本コミュニケは、製品、製造者又は製品タイプ等の構成物に関する現行の法的定義の変更を意図する ものではない。
16 これは、製品に対して消費者が支払う価格内に製品が生ずるすべての環境影響のコストを含めるよう
的な目標である。価格シグナルは、製品のライフサイクル全体を通した継続 的な環境改善に取り組む動機付けとなる。価格シグナルは、グリーンな設計 と生産に対する経済的な見返りを増大することで、よりグリーンな公共調達 と製品設計の義務といった施策を促進し、強化することとなる。価格シグナ ルはまた、消費者に重要な情報を提供し、彼らに環境影響の少ない製品の購 入を奨励する。欧州委員会はすでに、欧州レベルでのエネルギー関連税につ いていくつか提案している17。エネルギー製品への課税に関する共同体の枠 組を再構築するための1997年の提案は、すでに理事会で全会一致の政治的 支持を得ている。この提案は、EUの最低税率をすべてのエネルギー製品に 拡大するもので、それによって、加盟国の環境その他の政策目標を達成する 手段としてエネルギー課税を利用するためのより一貫性のある枠組を各加 盟国に与える。欧州委員会は引き続き、地方、一国又は共同体の適切なレベ ルで、環境関連税や奨励策などの財政措置の導入を促進、奨励していく18。
しかし、利害関係者(特に加盟国)からの意見を考慮し、欧州委員会は、当 面、EU エコラベルを付けている製品に低 VAT率を適用すべく積極的に行 動するつもりはない19。他の種類の税については、適切な場合、加盟国はよ りグリーンな製品に便宜を図るために前述の財政措置の採用を促進し、奨励 すべきである。
努めることを意味する。
17 商業目的で使用するディーゼル燃料に対する特別税の取り決めを導入するための指令92/81/EEC及 び92/82/EECを改正するための2002年の欧州委員会提案。ガソリン燃料とディーゼル燃料への消 費税の調整は理事会で現在協議されている。
18 第6次共同体環境行動計画を規定している2002年7月22日付の欧州議会と理事会の指令
1600/2002/ECの第三段落の第3(4)条で求められている(2002年9月10日付OJL242、p1–p15)。 当然ながら、これは関連の域内市場法令に従って実施されなければならない。
19 この分析は、労働集約的サービスへの低VAT率の適用経験の結果も考慮することになる。
20 関連の作業がOECD国際エネルギー機関の枠組内ですでに始まっている。
21 環境保護のための国庫補助に関する共同体ガイドライン(2001年2月3日付OJC37、p3–p15)
22 欧州委員会から欧州議会、理事会、経済社会評議会、地域委員会へのコミュニケ「法的環境の簡素化 と改善に係る活動計画枠内の共同体レベルでの環境協定」(2002年7月17日付のCOM(2002)412 最終版)
23 The European Environmental Citizens Organisation for Standardisation
24 公共調達に適用可能な共同体法及び環境への配慮を公共調達に取り入れる可能性に関する欧州委員 会の「解釈コミュニケ」−2001年7月4日付のCOM(2001)274最終版
http://simap.eu.int/EN/pub/src/welcome.htmで閲覧可能
25 上記24のウェブサイトを参照のこと。
26「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限」に関する欧州議会及び理事会の指令2002/95/EC
(2003年2月13日付OJL37、p19–p23)
27 「将来の化学物質政策のための戦略に関する白書」COM(2001)88最終版
さらに、第 6 次環境行動計画の枠組において、欧州委員会は環境的に好ま しくない補助金を記録できるようにするための基準リストの作成に取りか かる20。これは、そうした補助金を廃止するための信頼できる根拠となる。
欧州委員会はまた、より環境に優しい製品とサービスに役に立つ技術転換を 支援するような、環境目的の国庫補助に関するガイドラインを設定した21。
b) 自主協定と標準化
製品を効果的により環境に優しくするためには、法令に加え、環境協定や標 準化プロセスなどの非法令的な解決策の検討が必要である。このテーマに関 する欧州委員会のコミュニケを受けて、共同体レベルでの環境協定の枠組が 現在検討されている22。
標準化については、欧州委員会は可能な限り、国際標準を引き続き使用する。
欧州レベルでは、欧州委員会は2003年のコミュニケにおいて、欧州標準と 環境保護に関するいくつかの重要な問題に取り組む予定である。同委員会は また、欧州の標準化プロセスに環境面を統合できるように、欧州の環境NGO のコンソーシアムであるECOS23とサービス契約を結んだ。
c) 公共調達に係る法令
公共調達は共同体の国民総生産(GDP)の約16%を構成している。公共調 達は公共機関が製品のグリーン化を促進するために利用できる多大な市場 部門である。詳細な共同体規則が存在し、域内市場における公共調達の際に 遵守すべき手続きを規定している。「公共調達と環境に関する欧州委員会の 解釈コミュニケ(Interpretative Communication)」24は、法的状況25を説 明し、共同体規則の対象となっている契約の付与の際に環境への配慮を考慮 できる十分な可能性があることを示している。この状況は、現在進行してい る公共調達指令の改正によって変えられることはないだろう。よりグリーン な製品の調達のための真の課題は、現在の可能性が公共調達者らによって行 使されるのを確保することである。
d) その他の法令
製品関連の施策のための共同体法令は、とりわけ、市場の失敗が矯正されて いない場合、又は共同体の対策がなく、単一市場が影響を受ける可能性があ
る場合に、環境問題を解決するために必要と思われる。例えば、「電気電子 機器に含まれる特定有害物質の使用制限」に関する指令26や、近く予定され ている「欧州委員会の化学物質白書」27を受けた法令などである。近々予定 されている、エネルギー使用製品のエコデザインのための枠組の確立に関す る指令のための欧州委員会提案も同様であり、この提案書には、さらに、法 的枠組におけるライフサイクル思考、利害関係者の参加、及び継続的な改善 など、IPP原則を正式に記載している。ライフサイクルによる環境影響を軽 減する最も効果的な方法とするために、製造者責任を拡大する措置又はデポ ジット(保証金)制度を考慮する場合も、法令が必要である。こうした取り 組みもまた、各加盟国がこの領域における独自の取り組みをすでに策定して いるか、又は策定過程にある場合、共同体レベルで行うことが特に重要であ る。欧州委員会は、「廃棄物のリサイクルと発生の抑制に関するテーマ別戦 略」内でこれらの点についてさらに検討を展開する予定である。
5.2ライフサイクル思考の適用を推進する
IPPを有効なものとするには、ライフサイクル思考が製品に関与することになる すべての人々の習慣となる必要がある。一国内や地域レベルでの教育対策や意識 向上策は市民にとり最も身近で最善の方法である。共同体レベルでは、異なった 3つの行動の組み合せが求められている(囲み2)
囲み2
a) ライフサイクル情報と解釈ツールの入手を確保する
設計のためであれ、ラベリングのためであれ、評価の基礎となるライフサイ クル・データは体系的に収集されなければならない。いくつかの加盟国と産 業界は、収集を支援するためのデータベースをすでに開発している。欧州委 員会は情報や意見の交換を円滑にするためのプラットホームを提供する。こ れには、欧州委員会が支援する定期会合や定期的に更新される LCA(ライ フサイクルアセスメント)データベースのディレクトリが含まれる。
また、ライフサイクル・データへのアクセスをより容易にする必要がある。
そのために、欧州委員会は、進行中の EU 内のデータ収集の取り組みと既 存のハーモナイゼーション・イニシアティブ(調和に向けた取り組み)の両 方を巻き込んだ連携イニシアティブに着手する。このイニシアティブは、現 在進行中の「国連環境計画ライフサイクル・イニシアティブ」と欧州を連携
させるものとして機能する。欧州委員会は、現状と将来の可能な方向を探る ための研究を先導することから始める。
LCA は、現在入手できる製品に潜む環境影響を評価するための最善の足掛 かりを提供する。そのため、LCAはIPPの重要な支援ツールである。しか しLCAの利用と解釈のベスト・プラクティス(最善の実践)については現 在議論が行われている。欧州委員会は、一連の研究やワークショップを通し てこの議論をさらに深め、利害関係者間で達成可能な最善の合意に基づい て、2年以内にベスト・プラクティスに関するハンドブックを作成すること を目指している。
欧州委員会はまた、IPPアプローチのこの部分の実施に向けた研究開発の支 援を継続している。「第5 次28及び第 6 次29研究枠組計画」は、環境プロセ スに関する知識を深め、基礎データと測定システムを提供し、よりグリーン な製品のための実行可能な解決策を策定することで、この研究開発に貢献す る。IPPプロジェクトはすでに、欧州委員会のLIFEプログラム30の領域の 重要な一部となっている。
b) 環境管理システム
環境管理システム(EMS)は、組織の運営にライフサイクル思考を取り入 れ、継続的な改善を達成するための優れた枠組を提供する。2001年のEMAS
(環境管理・監査制度)の改定では、製造工程から製品に注目するよう方向 転換し始めた。今や製品は明らかに、活動やサービスと同様の方法でEMAS 規則の対象範囲となっている。すなわち、環境再調査・環境管理・環境監査 システムに製品の多大な環境影響を含めなければならず、これらの影響もま たEMAS検証者によって検証されなければならず、製品の影響情報を環境 ステートメントに記載しなければならず、製品の環境パフォーマンスを継続 的に向上させなければならない。EMAS は、過去には産業界の活動面によ り焦点が当てられていたため、欧州委員会は、製品に関する事項を EMAS 内で対処する方法に関するガイドラインを2004年末までに作成する。EMS
28 「研究・技術開発・実証活動のための欧州共同体の第5次枠組計画」(1998年から2002年)に関す る1998年12月22日付の欧州議会と理事会の指令182/1999/EC(1999年2月1日付OJL26、p1–p31)
29 「欧州研究エリア」の創設と刷新を支援する「研究・技術開発・実証活動のための欧州共同体の第6 次枠組計画」(2002年から2006年)に関する2002年6月27日付の欧州議会と理事会の指令 1513/2002/EC(OJL232、p1–p33)
30 「環境のための財政手段(LIFE)」に関する欧州議会と理事会の規則(EC)No.1655/2000(2000 年7月27日付OJL192、p1–p9)
は、官民を問わずあらゆるタイプの組織に関係し、組織の調達のグリーン化 から「グリーン」情報の検証に至るまで、あらゆるタイプのツール(手法)
のための枠組を提供するために使用できる。EMSによる証明自体は、製品 の具体的な環境パフォーマンスを保証するものではないが、EMAS の場合 は、EMAS 検証者によって、環境パフォーマンス情報を検証する枠組を提 供する。
欧州委員会はまた、EMASへの製品面の導入を監視、評価し、EMAS規則 の次回の改定(2006年までに予定されている)に取り入れられるようにす る。欧州委員会はEMAS IIの登録を取得するかどうか2004年に決定する が、3総局の参加を得て、すでに試験的に実施されている。
c) 製品設計義務
上記に述べた2つの要素は、先進的な取り組み者らによるよりグリーンな製 品の開発を促進するはずである。さらに欧州委員会は、特定の製品に対する 適切な一般義務を含め、企業の IPP アプローチの実践を推進する方法を検 討する討議資料を2005年に提示する。これは、IPPグリーンペーパー31の 発行を受けた、環境分野における新アプローチの適用についての議論を踏ま えたものとなる。最終消費機器のエコデザインに関する指令及び電気電子機 器(EEE)の環境設計に関する指令の草案発表の反響も考慮される。エネ ルギー使用製品(EuP)のエコデザイン要件設定のための枠組を確立する指 令のため提案が近々予定されているが、この協議から得た経験も考慮され る。とりわけ、次の事項に対処することになろう:適切な法的根拠;域内市 場への配慮;国際条約義務;活動範囲;該当する製品又は製品グループ;求 められる設計要件の詳細度;製品の最低基準の役割;実施と報告の適切な手 段;こうしたアプローチの費用と便益;起こりうる環境影響;製品の環境的 側面に影響を及ぼす政策と措置の統合方法(IPP手法を含め)
エネルギー使用製品(EuP)の場合は、十分な経験がすでに得られているた め、環境影響がますます明らかになっている。そのため欧州委員会はこれら の製品のためのEuP方式の枠組を検討する。適切なものであれば、製品固 有の法的措置を可能とするこの枠組はまた、産業界が、より速やかに、又は
31 次を参照のこと:www.europa.eu.int/comm/environment/ipp/standard.pdf 及び2002年の Godenman, G : Hart, J.W. : Sanz Levia, Lによる「安全性、環境保護、人の健康のための保護基準 設定の新アプローチ−将来の方向性」デンマーク環境保護庁発行「環境ニュース66号」内
法令よりも費用効率よく環境影響を軽減するために、自主規制する余地を与 えることとなるだろう。
さらに欧州委員会は、製品の環境パフォーマンスと設計に関する情報が一般 市民に確実に伝達される最善の方法を検討する。これらの情報は、環境ステ ートメントなど、企業の公文書を大幅に充実させることになるだろう。
5.3消費者に決定のための情報を提供する
官民又は個人であれ、消費者は自分たちがよりグリーンな製品を購入するかどう か、そして購入した後はどのように使用するかを決定する。これに関する共同体 の役割は、消費者に製品の情報を提供するEU全体のツール(手法)と枠組を提 供し、奨励することである。加盟国が製品のグリーン化に十分な役割を果たすた めに必要な消費者意識の水準を達成するには何が必要かを決定するのは各加盟国 である。多数の適切な政策手段を「囲み 3」で論じている。しかし、安全性や健 康面、費用及び効果など、製品購入の際の他の関連要因も重要であるのは明らか である。
囲み3
a) 公共調達のグリーン化
現行の公共調達法令における可能性を行使するよう公共機関に奨励する積 極的な働きかけが必要である。そのため、欧州委員会はいくつかの行動に着 手する。
現時点では各加盟国において実践されているよりグリーンな公共調達の範 囲についての限定的な情報しか入手できないため、欧州委員会は、よりグリ ーンな公共調達の範囲の決定に努める。欧州委員会は、2003年末までに、
公共機関が実践しているよりグリーンな公共調達の範囲を評価するための 調査に取りかかる。同委員会はまた、よりグリーンな公共調達から起こりう る環境と市場への影響を評価する研究プロジェクトに共同出資している。
そのため欧州委員会は、加盟国が自国の「公共調達のグリーン化のための
(公的に利用可能な)行動計画(アクションプラン)」を作成するよう奨励 する。この計画には現状評価と 3 年後の状況に対する意欲的な目標を含め るべきである。行動計画には、目標達成のために講ずる施策も明確に記載す
べきある。最初の計画書を2006年末までに作成し、3年毎に改定されるも のとする。この行動計画は法的拘束力を有するものではないが、よりグリー ンな公共調達の実施プロセスと意識向上を目指す政治的推進力を提供する。
行動計画は、各加盟国が自国の政治的枠組や達成している水準にとって最も 適切な選択肢を採ることを可能にするとともに、よりグリーンな公共調達の 促進におけるベスト・プラクティス(最善の実践)についての情報交換を可 能にする。欧州委員会もまた、2006年末までに行動プログラムを作成し、
同委員会自身の調達のための目標と行動をまとめる。欧州委員会は、共同体 の他の機関や事務所に対しても同様の実行を要請し、これを円滑に進めるた めにこの領域における専門知識を提供する用意がある。
さらに欧州委員会は、公共機関による購入方針のグリーン化を支援するため に、以下に示すような公共機関のための情報ツールも入念に検討している。
– 公共機関のための実用的なハンドブック:これは、よりグリーンな調達の 可能性を明快な、分かりやすい、法律用語でない言葉で説明するものである。
最初の草案が2003年半ばに作成される予定。今後の展開とこのハンドブッ クの利用の実際的な経験に照らし、必要に応じて改訂される。
– 製品グループのデータベース:これは、特定の製品にどの基準が当てはま るかについての基礎情報を企業と公共機関の購入者に提供するために、エコ ラベリングや環境製品宣言スキーム(計画)で使用されているような、現行 の製品基準に関する情報を一つのウェブサイトに収集するものである。
2003年に最初の試験的なモデルが完成する予定。
– 「公共調達のグリーン化」に関するウェブサイト:これは、ハンドブック、
製品のデータベース、関連法令を一つにまとめるものである。2004 年末ま での開設が予定されている。
b) 企業によるよりグリーンな購入
民間企業は、よりグリーンな製品とよりグリーンな生産過程を供給業者に要 求できる。民間企業は、例えば、EMAS のような認定された環境管理シス テムを要求するなどによって影響を及ぼそうとすれば、よりグリーンな市場 に影響を及ぼす多大な潜在力がある。
公共調達のグリーン化のために開発された手法と上記のツールは、企業によ るよりグリーンな購入も円滑化するはずである。さらに、下記の異なったタ イプのラベリングも利用できる。欧州委員会は、報告を通じて購入の実践の 透明性をより高めるよう企業に要求することで、大規模な企業購入市場の活 性化にも取り組み始めた32。
c) 環境ラベリング
ラベリングの領域では、欧州委員会はすでにいくつかの重要なラベリング計 画を実践しており、消費者が製品を選択する際の信頼できる、理解しやすい 情報を消費者に提供している。これらはIPP枠組内にうまく適合している。
製品へのEUエコラベル33の登場によって、その製品がそのライフサイクル 全体を通して、他の多くの類似製品よりも環境に優しいことが証明されてい ることを消費者に知らせている。現在、全 EU 市場を網羅している比較可 能な他のラベルがないため、これは、EUのIPP34の観点から見て利用でき る最善のラベルである。
EUエネルギーラベル35は、通常、その製品のエネルギーの使用によって、
ライフサイクル全体を通して環境への最大の影響を及ぼす多くの製品(特に 大型家電製品)に付けられている。これは製品への表示が義務づけられてい るために、このラベルの認知度は極めて高い。欧州自動車ラベリング制度36 もまた新車のCO2排出量に関する重要な情報を消費者に提供している。
32 欧州委員会は、最低500人の従業員を抱えるすべての株式上場会社に対し、経済的・環境的・社会 的基準(欧州委員会コミュニケ「よりよい社会のための持続可能な欧州−持続可能な開発のための欧 州戦略」2001年5月15日付のCOM(2001)264)に照らした自社のパフォーマンスを測定した「3 種の最終結果」を株主への年次報告書内に発表するよう要請した。この過程を支援するために、欧州 委員会は、環境問題の開示方法に関する提言書を作成した[企業の年次会計及び年次報告書での環境 問題の認識・測定・開示に関する2001年5月30日付の欧州委員会提言書(2001/453/EC)−2001 年6月13日付のOJL 156、p33]。これはまた、2004年半ばまでに、測定・報告・保証のための一 般に認められるガイドラインと基準の開発を求めている(企業の社会的責任に関する欧州委員会コミ ュニケ「持続可能な開発への企業の貢献」−2002年7月2日付のCOM(2002)347、p15)
33 全国的なEUラベルと同様に、これはISOタイプIラベルとしても知られている。
34 しかしながら、これは同等の取り決め又は新たな開発によって、将来的に他のラベルがこうした消費 者情報の提供に重要な役割を果たすことを排除するものではない。
35 家庭電化製品によるエネルギーその他の資源の消費についてのラベリング及び製品の標準情報の表 示に関する1992年9月22日付の理事会指令92/75/EEC(1992年10月13日付OJL297、p16)
36 新乗用車の市場化に関連する燃費とCO2排出量に関する消費者情報の入手に係る1999年12月13 日付の欧州議会及び理事会の指令1999/94/EC(2000年1月18日付のOJL12、p16–p19)
これらすべてのラベルの対象範囲は、消費者により多くの選択肢を与えるた めに、徐々に拡大するだろう。欧州委員会は、同時に、「誤解を招くような 加盟国の広告」に係る指令37の施行を目指し、「グリーンクレーム」38ガイド ラインに関する作業を終わらせる予定である。これは、誤解を招くようなグ リーンクレームによって環境製品情報の全般的な信頼度が低下しないこと を確保するためにある程度役立つはずである。欧州委員会は、EMAS 制度 を通し、こうしたクレームを独立して検証可能かどうか調査する。さらに、
民間のラベリング施策の効果とさらなる施策の必要性について、現在の消費 者政策戦略39の枠組内で評価することになっている。
比 較 的 新 し い 手 法 で あ る 環 境 製 品 宣 言 (environmental product
declaration:EPD)40は欧州の枠組内において策定されることが必要かも
しれない。EPD はCO2や NOXの排出量など、製品についての数量化され た、ライフサイクルに基づく情報を標準化された方法で示す手段である。そ の製品自体がどの程度「環境的」であるかについての判断はなされていない が、数量化された情報は、潜在的購買者が自己の判断を下す際に利用するこ とやLCAに取り入れることができる。欧州委員会は現行のEPD方式の制 度(及び同様の性質をもつ制度)を調査し、策定のための可能な選択肢41を 探るための研究42に資金投入した。利害関係者らはそれらの結果に関する意 見を求められた43。欧州委員会は、2005 年末までに、この潜在的に有力な 手段の策定を推進するために共同体レベルで何らかの措置を講ずるべきか 決定を下すことになっている。この決定には、現在開発中のEPD制度のた めの国際基準を考慮に入れる。
6. 特定の製品に焦点を当てる
37 誤解を招く広告に関連する加盟国の法律、規制、管理規定の近似化に関する1984年9月10日付の 理事会指令84/450/EEC(1984年9月19日付OJL250、p17–p20)。欧州委員会は、不当な商習慣 に関する枠組指令のための提案を2003年中に採択予定。理事会と議会に承認されれば、現行の同指 令のいくつかの条項を一部入れ替えることになる。
38 「グリーンクレーム」は時にISOタイプIIを指す場合もある。これは、一般的に第三者による検証 が義務づけられていない製品の環境的特性に関する説明である。
39 欧州議会、理事会、経済社会評議会及び2002–2006年消費者政策戦略地域委員会への欧州委員会コ ミュニケ−2002年5月7日付のCOM(2002)208最終版
40 ISOタイプIIIを指す場合も多い。
41 この調査の最終版はhttp://europa.eu.int/comm/environment/ipp/epds.htm で閲覧可能。
42 建設分野のLCA/EPD ツールに焦点を当てた平行した研究も欧州委員会から資金提供されている。
この研究はttp://europa.eu.int/comm/enterprise/construction/internal/essreq/lcarep/lcafinrep.htm で閲覧可能。
43 脚注44に示すウェブサイトで閲覧可能。
6.1自主的な試験的プロジェクト
ライフサイクル思考は、これまでかなりの期間、多くの企業によってすでに幅広 く実践されてきた。しかしながら、依然としてライフサイクル思考を実践してい ない多くの企業がある。製品政策の成功のためにはライフサイクル思考が重要で あることから、この課題は優先事項として対処されなければならない。この概念 の利点を証明する最善の方法は、実際に適用して証明することである。そのため 欧州委員会は、試験的プロジェクトの実践において多数の製品それぞれにこの概 念を取り入れることによって、最善の理解を得られると考えている。よって、欧 州委員会はIPPの潜在的利益を実際的な方法で証明するために、多数の試験的プ ロジェクトの実施を予定している。それによって、利害関係者らは自己の日常的 な活動と自分が関与する製品に対してこの考え方を取り入れることが可能になる。
試験的プロジェクトへの利害関係者の参加は、同プロジェクトの成功のために極 めて重要であり、特定の製品に-そのライルサイクル全体を通して-関与するす べての者による自主的な参加を歓迎する。積極的に名乗りをあげる利害関係者は、
欧州全域での知名度の向上という利益を得られる。欧州委員会はこれらの試験プ ロジェクトのための提案を提出するようすべての利害関係者に要請している。提 案書は、2003年10月末までに到着しなければならない。その後、欧州委員会は、
参加するすべての利害関係者の実行可能性と意思など実際的な要因に基づいて提 案書を分析する。これらのプロジェクトは実証という性格であるため、その製品 が高い環境影響を及ぼすか、又は改善のための最大の可能性を有しているかどう かなどの事項は決定要因とはならない。そのため、試験的実践のためのその製品
(又は複数の製品)の選出は、そうした特性の判断によるものではない。
欧州委員会は、各プロジェクトを約 12 ヶ月継続することを想定している。プロ ジェクトは、実施される作業についてすべての利害関係者と共通の理解を得た上 で開始される。同委員会は、次に示すように、各試験製品が解決策に向けた同一 の基本的な手順をたどることができると考えている。
(1) 製品のライフサイクル全体を通したすべての環境影響を文書化し、分析する。
(2) 現行の政策手段の効果の調査を含め、環境影響を軽減するためのすべての可 能な選択肢から起こりうる環境的、社会的、経済的な影響を分析する。
(3) 改善のための最も実行可能な選択肢を利害関係者とともに特定する。
(4) 多様な利害関係者グループの責任を明確にし、実施プランに合意する。
(5) 実施
参考とすべき実施例を下の囲みに示す。
車のタイヤの例
(1) そのタイヤの全ライフサイクル期間中の実態をつかむため、産業界が理想的 な形で提供している既存のライフサイクル・インベントリと LCA データが 収集され、分析される。いずれの評価も関連の規則と基準に従う。
(2) タイヤに関しては、ライルサイクルのすべての段階で影響を及ぼすことが明 らかである。しかしながら、この例においては、影響が使用段階に集中して いると想定する。この場合、タイヤの回転抵抗が、燃料消費によるCO2の排 出、すり減ったゴム粒子による土壌・水・大気の汚染、及びタイヤに付着し た化学物質に影響を及ぼす。CO2の排出はEUレベルで最も深刻であるため、
本例の後の部分はこの点に注目する。
(3) そうすると、CO2を削減するために必要な措置の特定を試みることができる。
その際、共同体の現行の政策によってすでに適用されている手段や措置を含 め、利用できる可能性があるすべての手段を検討しなければならない。タイ ヤの設計の刷新によって回転抵抗を少なくすることは一つの選択肢かもしれ ない。例えば、シリカ化合物の例から分かるように、新しい素材が役立つか もしれない。タイヤの再生は対処すべきもう一つの課題と思われる。もちろ んこれらはいくつかの例にすぎず、他の可能性が見つかるかもしれない。特 定の行動を決定する前に、ライフサイクル全体に沿って潜在的な影響を評価 することで、求められている改善よりもマイナスの影響が大きくなることを 防ぐであろう。当然ながら、一つの統合的アプローチにおいては、いずれの 選択肢も共同体の他の政策下の基準との一貫性を評価されなければならな い。選択肢には、コストと機能性も考慮に入れる必要があると思われ、この タイヤの例では運輸政策と交通安全を考慮しなければならない。
(4) 次の段階は、異なった措置を誰が引き受けるか、そしてそれらをどのように 実施するかについて合意することであろう。例えば、タイヤの設計に対処す ることとなった場合、産業界が新しいタイヤの設計を主導する必要があるだ
ろう。公共機関は、例えば、統一された証明書のような問題に対処しなけれ ばならないだろう。
(5) 最終段階は措置の実行、監視、経過報告となるだろう。
製品の試験的プロジェクトの実践から学ぶ教訓の一部は製品固有のものとなると 思われるのは明らかである一方で、欧州レベルでこうした実践が行なわれている のは実際初めてのことなので、欧州委員会は、こうした実践の原動力と組織化に ついて多くを学べると考えている。この実践によって、試験的プロジェクトと十 分な付加的な証拠を基に、バランスのとれた経済的・社会的・環境的な目標の統 合を妨げてている重大な政策の矛盾点が明らかになったならば、欧州委員会は、
現行の法的その他の手段の一貫性を高めるためにどのような活動が必要かを調査 する。
6.2 どの製品に環境を改善する最大の可能性があるかを確認する
試験的プロジェクトを通し、IPPに対する一般の意識を高めると同時に、欧州委 員会は、環境の改善に最大の可能性をもつ製品への対応を特定し、推進すること も目指す。この改善の可能性の評価において、変更から起こりうる社会経済的な 影響も考慮する。しかし、どの製品が最大の環境影響を及ぼすかに関する分析に 基づいたコンセンサスがまだなく、そのために環境改善に最大の潜在力を有して いる製品についても然りである。
そのため、欧州委員会はそうした製品を欧州レベルで特定するための方法論の開 発に着手する。これは、ベルギーの経験のような、既存の経験に基づいて開発さ れる44。次に、この方法論は、広範なレベルでのコンセンサスを得るために、利 害関係者らと協議される。その後さらなる研究を実施し、方法論に適用し、最大 の環境影響をもつ製品を特定する。これが終了したならば、リストの上位傾向に ある製品をさらに分析し、環境影響を軽減できるあらゆる可能な方法を特定する。
それらの可能な方法すべてについて、各措置によって起こりうる社会経済的影響 を評価する。これらすべてを実施するには3年から4年必要であろう。
この実施がすべて完了したならば、欧州委員会は、環境改善のために最大の可能 性をもつ製品のいくつかについて、少なくとも社会経済的コストに対する対処を
44 連邦の製品・環境政策のための主要製品を特定している 2002 年 11 月の最終報告書草案である Institut Wallon de Développement Èconomique et Social et d’ Amènagement du Territoire et Vlaamse Intelling voor Technologisch Onderzoek(2002)
個々に試みる。試験的プロジェクトの実施における経験は、このプロセスへの重 要な情報提供となるだろう。
7. 調整と統合
IPPアプローチは、異なった手法間の相乗効果の活用を必要とする。そのために は、「IPP思考」がこれらの手法のすべての管理面に浸透することを確保する必要 がある。同時に、IPP思考が環境だけでなく他の領域の政策内にもさらに統合さ れる必要がある。そのため、欧州委員会は、各分野に対し、「カーディフ(Cardiff)・ プロセス」45に従った報告書の中で、IPP アプローチをその作業内に統合しよう としている方法をより明確に述べるよう奨励する。
さらに、欧州委員会は調整と監視の進展を円滑にするために、多数のプロセスに 着手する。
欧州委員会は、各加盟国と欧州環境庁と協力し、IPPアプローチがもたらす環境 改善を測定するための適切な指標を開発する。
欧州委員会はまた、IPPの実施における進捗状況に関する報告書を作成し、欧州 議会と理事会に提出する。各加盟国は、IPPアプローチの実施において講じられ た措置と進捗状況を詳述した報告書を2006年末から3 年間毎に欧州委員会に提 出する必要があり、欧州委員会の報告書はそれらの報告書を基に作成される。産 業分野と消費者団体もまた同様の報告書の提出を求められる。
欧州委員会はまた、各加盟国と利害関係者の代表らが出席する定期会合の議長を 努める。会合は、欧州委員会によるIPPの開発と実施、及び加盟国の進捗状況の 観察を支援することになる。例えば、報告書式など、より周到な注意を払うべき 特定の事項がある場合、欧州委員会はワーキンググループ(作業部会)を組織す るか、又は既存の仕組みを利用することになろう。委員会は、加盟国の発議で設 立されたIPP非公式ネットワーク46が理事会議長国の議長の下で情報の共有とい う平行した任務の遂行を継続するよう提案する。さらに欧州委員会は、同ネット ワークの加盟が加盟決定国と加盟候補国にも拡大されることを奨励する。
45 1998年のカーディフ(Cardiff)での欧州理事会会合は、気候変動問題の解決と「アジェンダ2000」
プロセスにおける環境問題の前進を支援するために、他のいくつかの分野に対し(運輸・エネルギー・
農業)、指標を含めた統合戦略を策定するよう求めた。その後、このプロセスは他の分野にも拡大さ れている。
46 欧州委員会もオブザーバとして参加している。
欧州委員会は、環境と持続可能な開発のためのIPPアプローチの潜在的利益を説 明することで、国際的なレベルでの IPP アプローチの推進を目指す。途上国固 有のニーズを考慮したIPPアプローチの共通理解は、同アプローチの展開を促進 し、世界的な環境問題への対応を支援することになる。
欧州委員会は、意見の聴取の実施を含むすべての展開を、委員会のウェブサイト
(www.europa.eu.int/comm/envionment/ipp)とメーリングリストサービスを通 して利害関係者に通知する。