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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

多義語派生義の学習法に関する考察 : 学習活動・習 熟度・透明性の観点から韓国人日本語学習者を対象 にして

麻生, 迪子

https://doi.org/10.15017/1440999

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(比較社会文化), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

多義語派生義の学習法に関する考察

-学習活動・習熟度・透明性の観点から韓国人日本語学習者を対象にして-

九州大学大学院比較社会文化学府

麻生迪子

平成 263

(3)

本 論 文 の 要 旨

本論文は、韓国人日本語学習者を対象に多義語派生義の学習法にかかわる問題を学習者の習 熟度、学習語彙の特性の観点から明らかにしたものである。第1章では、本論文の目的と対象 および構成について述べた。

第2章では、本論文の理論的枠組みについて述べた。本論文は、認知意味論の理論的枠組み と記憶研究の理論的枠組みに基づく。認知言語学の応用研究として、多義語習得研究と多義語 学習法研究について概観した。多義語習得研究では、中心義(プロトタイプ的意味)は日本語 学習者に習得されやすいが、派生義(非プロトタイプ的意味)は習得されにくいことが先行研 究で示された。多義語学習研究では、派生義の効果的な学習法についての詳細な報告はない。

また、記憶研究の理論的枠組みとして、処理水準仮説について概観した。処理水準仮説では、

意味について考える活動は精緻化活動とも呼ばれ、記憶保持をもたらすという。処理水準仮説 を第二言語(L2)語彙学習に応用した研究は数多く報告されている。しかし、多義語の未知の 派生義を取り扱ったものはない。また、意図的語彙学習研究を概観したところ、対象語の特性

(例えば透明性)や学習者の習熟度が学習成績にどのような影響を与えるのか、十分に検討さ れたものはない。

以上の先行研究を概観した結果、第3章では以下の3つの研究課題を設定し、操作的定義に ついても記述した。

外国語しての日本語(JFL)環境での韓国人日本語学習者の多義語派生義学習において、

①どのような学習活動が有効なのか。

②日本語の習熟度によって、学習効果がどのように現れるのか。

③語の透明性によって、学習効果はどのように変わるのだろうか。

第4章では、研究課題①を解明するために、韓国人日本語学習者60名を対象に、次の3つ の学習活動の効果を比較検討した。1 つは、意味推測に基づく精緻化活動群である。2 つ目の 活動群は、精緻化活動ではないが、調査協力者に実験文と派生義の対訳を与えて、学習させる 意味付与学習群である。3 つ目の活動群は、意味について検討するのを妨げる目的で形式に焦 点を置いた形式学習群である。比較した結果、事後テストと事前テストの間には、有意な差が 認められた。しかし、学習活動間には有意な差が認められなかったが、意味付与学習群、意味 推測活動群、形式学習群という順で、学習成績がよかった。また、語によって学習成績に差が あることも認められた。実験の結果、研究課題①の答えとして、派生義の学習においても、意

(4)

味について検討する精緻化活動が有効であることが示された。ただし、非精緻化活動であるは ずの意味付与学習活動が有効であった理由は不明のままであった。

第5章では、意味付与学習が有効であった原因を探り、かつ、語の透明性を明らかにするた めに、調査を行った。調査では、派生義を含んだ実験文とその意味を与え、派生義の意味がど れほど理解しやすいのかを4段階で測定した。調査協力者である48 名の韓国人日本語学習者 を日本語習熟度によって、3群に分けた。調査協力者の評定を習熟度要因で1要因分散分析を 行ったところ、習熟度による有意な差は認められなかった。そこで、調査協力者のうち 17 名 にフォローアップインタビューを行い、調査協力者の解答を KJ 法で分析した。派生義の理解 ストラテジーについて検討したところ、上位群になるにつれ、語彙知識を利用したストラテジ ーが用いられていることが示唆された。これは、日本語習熟度が向上するにつれて、語彙知識 が豊富になるためであると考えられる。

第6章では、研究課題②と研究課題③を明らかにするために実験を行い、連語について検討 する連語学習法と意味について検討する意味付与学習法を比較考察した。対象語は9語で、調 査協力者は48 名の韓国人日本語学習者である。学習活動の異なる2つの群を設定し、これら の学習群を調査協力者の日本語習熟度によって上位群と中位群に分けた。テスト要因、習熟度 要因、学習活動要因の3要因分散分析を行ったところ、テスト要因については主効果が認めら れたが、残る2つの要因については、主効果が認められなかった。さらに、1次の交互作用、2 次の交互作用も認められなかった。学習成績から、連語学習群と意味付与学習群の間には差が ないことが示された。また、学習成績にカイ二乗検定を実施したところ、中位群は各語におい て意味付与学習群と連語学習群は同等の学習量であったのに対して、上位群では1語を除き全 ての語が同等の学習量であった。さらに、第5章で明らかにした透明性値によって対象語を2 つに分け、透明性要因と習熟度要因で2要因分散分析をおこなったところ、透明性、習熟度と もに主効果が認められなかった。また、交互作用も認められなかった。さらに、習熟度別にク ラスター分析を行ったところ、中位群では2つのグループに分かれ、上位群では3つのグルー プに分かれた。考察した結果、研究課題②の答えとして、習熟度によって学習効果に違いはな かった。ただし、習熟度が高まると、学習活動によっては、語の特性の影響が生じ、学習効果 の現れ方が異なる、ということを明らかにした。そして、研究課題③の答えとして、透明性の 高低は学習効果を予測するものではないことを明らかにした。その理由として、習熟度に応じ て、語の知識量が異なるため、透明性の高低とは異なる要因で学習量が決定していくことが示 された。

(5)

第7章では、本論文の要約を行うとともに、研究の意義について述べた。最後に本研究の成 果を元にした教室活動例について記述し、本研究の限界点についても記述した。

(6)

目次

1 章 序論 ... 1

1. 1 研究の目的 ... 1

1. 2 本研究の対象 ... 4

1. 3 論文の構成 ... 6

2 章 先行研究概観 ... 9

2. 1 認知意味論による理論的背景 ... 9

2. 1. 1 多義語習得研究 ... 15

2. 1. 1. 1 英語学習者を対象にした多義語習得研究 ... 15

2. 1. 1. 2 英語学習者を対象にした多義語学習法研究 ... 19

2. 1. 1. 3 日本語学習者を対象にした多義語習得研究 ... 23

2. 1. 1. 3. 1 基本動詞を対象とした習得研究………..23

2. 1. 1. 3. 2 複合動詞を対象とした習得研究………...25

2. 2 記憶研究における理論的枠組み ... 27

2. 2. 1 L2語彙意図的学習研究... 33

2. 2. 1. 1 キーワード法による語彙学習研究 ... 35

2. 2. 1. 2 文脈を利用した意図的語彙学習研究 ... 36

2. 2. 1. 3 意味の理解のしやすさと意図的語彙学習研究 ... 37

2. 2. 1. 4 共起表現学習に関する意図的語彙学習研究 ... 39

2. 2. 1. 5 学習活動とテストに関する研究 ... 41

2. 3 先行研究のまとめと問題点 ... 43

3 章 研究課題と研究方法 ... 45

3. 1 研究課題 ... 45

3. 2 操作的定義 ... 46

3. 2. 1 派生義 ... 46

3. 2. 2 学習活動 ... 48

3. 2. 3 日本語習熟度 ... 49

3. 2. 4 学習効果 ... 52

3. 2. 5 意味の透明性 ... 57

(7)

3. 3 研究方法 ... 59

4 ... 61

実験 1 :精緻化活動の有効性と派生義の学習容易性 ... 61

4. 1 実験の目的と概要 ... 61

4. 2 実験協力者 ... 62

4. 3 実験手続き ... 63

4. 3. 1 対象語 ... 63

4. 3. 2 事前テストの作成 ... 64

4. 3. 3 事前テストの実施と結果 ... 65

4. 4 学習活動 ... 66

4. 4. 1 推測活動群 ... 67

4. 4. 2 意味付与学習群 ... 68

4. 4. 3 形式学習群 ... 68

4. 5 事後テスト ... 69

4. 6 結果と考察 ... 69

4. 6. 1 学習活動の結果 ... 69

4. 6. 2 研究課題1の考察:精緻化活動の検討 ... 70

4. 6. 3 研究課題2の考察:意味の学習容易性の検討 ... 72

4. 7 まとめと課題 ... 73

5 章 予備調査:派生義の透明性と理解方略 ... 75

5. 1 調査の目的と概要 ... 75

5. 2 句の分類 ... 77

5. 3 対象表現 ... 82

5. 4 調査方法 ... 83

5. 5 実験協力者 ... 85

5. 6 質問紙:透明性調査 ... 85

5. 7 研究課題1:習熟度による透明性の変容 ... 86

5. 7. 1 結果 ... 86

5. 7. 2 考察 ... 90

5. 8 研究課題2: 派生義理解のストラテジー調査 ... 95

(8)

5. 8. 1 分析方法 ... 96

5. 8. 2 結果と考察 ... 97

5. 9 総合的考察 ... 110

5. 10 まとめと課題 ... 111

6 ... 112

実験 2 :精緻化活動と習熟度・派生義の透明性の検討 .. 112

6. 1 実験の目的と概要 ... 112

6. 2 調査協力者 ... 1144

6. 3 対象語 ... 1155

6. 4 学習活動 ... 1188

6. 4. 1 連語学習活動 ... 1188

6. 4. 2 意味付与学習活動 ... 11919

6. 4. 3 事後テスト ... 1200

6. 5 学習活動結果 ... 1200

6. 6 考察 ... 1211

6. 6. 1 研究課題1:連語学習群と意味付与学習群の比較 ... 1211

6. 6. 2 研究課題2:学習成績に対する学習活動・習熟度の影響 ... 1222

6. 6. 3 研究課題3:学習成績に対する透明性の影響 ... 1244

6. 7 総合的考察 ... 1322

6. 8 まとめ ... 1377

7 章 結論 ... 1388

7. 1 本研究の要約 ... 1388

7. 2 本研究の意義 ... 1411

7. 3 教育現場への応用 ... 1422

7. 4 今後の課題 ... 1444

参考文献 ... 1477

付録Ⅰ:資料 ... 164

資料A 日本語習熟度テスト ... 1644

資料B 第4章 推測活動実験文 ... 1755

資料C 第5章 意味の透明性調査用紙 (抜粋) ... 180

(9)

資料D 第6章 連語学習活動実験文 ... 184

資料E 第6章 意味付与学習実験文 ... 190

付録Ⅱ:図表一覧

図1-1 本論文の構成………8

図2-1 百科事典的意味論... 11

図2-2 ネットワークモデル... 12

図2-3 説明用のネットワークモデル ... 12

図2-4 瀬戸(2007, p. 41)による意味ネットワーク ... 14

図2-5 学習者母語(L1)多義語と学習言語(L2)多義語、学習者中間言語(IL) の意味領域 ... 18

図2-6 コア図式による意味構造表示 ... 20

図2-7 「over」のコア図式 ... 21

図2-8 「~こむ」のコア図式... 25

図2-9 語彙項目 ... 28

図2-10 記憶の多重貯蔵モデル ... 29

図2-11キーワード法のプロセス ... 34

図3-1 語彙項目 ... 52

図3-2 語彙学習研究のための一般的な実験デザイン ... 60

図4-1 本調査の流れ ... 62

図5-1 学習者母語(L1)多義語と学習言語(L2)多義語、学習者中間言語(IL) の意味領域 ... 76

図5-2 宮地(1985)による句の分類 ... 77

図5-3 クラスター分析デンドグラム ... 89

図5-4 透明性平均値クラスター別表示 ... 89

図5-5 学習者母語(L1)と学習言語(L2)、中間言語(IL)の意味領域と 対象表現 ... 94

図6-1 透明性分類別表示... 118

図6-2 中位群における活動別正答者数 ... 127

図6-3 上位群における活動別正答者数 ... 129

図6-4 中位群における派生義に適する学習法 ... 133

(10)

図6-5 上位群における派生義に適する学習法 ... 134

図6-6 中位群・上位群における活動別正答者数 ... 135

表1-1 習得を促進する要因... 4

表3-1 Nation(2001)の語彙知識の枠組み ... 54

表3-2 Laufer & Goldsten(2004)による語彙知識の定義 ... 55

表4-1 調査協力者の日本語習熟度 ... 63

表4-2 対象語候補一覧 ... 64

表4-3 事前テスト例文 ... 65

表4-4 事前テストの正答者数 ... 66

表4-5 事前テストおよび事後テストの結果 ... 69

表4-6 (旧)日本語能力試験における漢字レベル ... 72

表4-7 各活動別正答者数・誤答者数 ... 72

表4-8 語別正答者数・誤答者数 ... 73

表5-1 連結の固定度と意味の固定度 ... 79

表5-2 対象表現一覧 ... 84

表5-3 調査協力者の日本語習熟度 ... 85

表5-4 対象表現の透明性一覧 ... 88

表5-5 派生義理解ストラテジー ... 108

表6-1 調査協力者全体の日本語習熟度 ... 114

表6-2 調査協力者の日本語習熟度 ... 115

表6-3 事前テスト一覧 ... 116

表6-4 事前テスト正答者数... 117

表6-5 透明性による分類... 118

表6-6 事前テストおよび事後テストの結果 ... 120

表6-7 連語ルール抽出人数... 122

表6-8 活動別・習熟度別正答者数 ... 123

謝辞 ……….195

(11)

1

1 章 序論

1. 1 研究の目的

本研究は、多義語1の派生義2を対象とした学習法3に関する研究である。本研究の目的は、

新たな学習法を実践し、検証するのではなく、これまでの学習活動に関わる問題を検討す ることにより、新たな派生義学習法の開発につながる基礎的な資料となることである。

言語使用においては、語彙の知識は、文法知識とともに欠かせない知識であるというこ とは言を俟たない4。例えば、Koizumi(2005a, 2005b)は、日本人英語学習者を対象に発表 語彙知識がスピーキング能力に強い影響を与え、かつ、発表語彙能力によりスピーキング 能力を予測できる可能性があることを指摘している。また、読解成績と語彙に関しても報 告がある。小森・三國・近藤(2004)は、読解文における既知語率の閾値に着目し、読解 成績と閾値となる既知語率の関係を調査した。調査の結果、小森・三國・近藤(2004)は、

読解文を正しく理解するためには、少なくとも、読解文の95~96%の既知語率が必要であ るということを述べた。さらに、三國・小森・近藤(2005)では、聴解材料文と既知語率 の関係について、報告しており、聴解材料文の既知語率は、93%であることが示された。

1 「1つの語が異なった2つ以上の意味を持っていること」(辻, 2002, p. 144)。多義語の意味構造について は、第2章で概観を行い、第3章で定義を行う。

2 本論における派生義の定義は、第3章で行う。

3 本論では、学習法を指す用語として、「活動」「学習活動」という用語を用いるが、意味に差はない。

4 バックマン&パーマー(2000)では、言語知識を「容認可能な発話や文を発話、理解するため、および、

これらの発話や文を組織して、口頭および文章のテキストを作り上げるために、言語の形式的知識を調整 するために必要である」(p. 78)という構造的知識と「発話や文およびテキストを、その意味や言語使用 者の意図や言語使用の設定の関連する特性に関係づけることにより、談話を作り出したり、解釈すること を可能にしている」(p. 80)語用論的知識に分けている。語彙の知識は、構造的知識の下位領域に位置づ けられる(バックマン&パーマー, 2000)。

(12)

2

三國・小森・近藤(2005)は、小森・三國・近藤(2004)で明らかになった読解活動にお ける既知語率の割合と聴解材料文中における既知語の割合を比較することにより、聴解活 動において、語彙知識の量的側面が内容理解に与える影響は、読解文における語彙知識の 量的側面よりも低いと報告した。また、金庭(2003)では、語彙量と発話能力の関係につ いて考察している。金庭(2003)は、OPI(Oral Proficiency Interview)5による発話データ を分析し、発話能力が向上するにつれて、基本動詞の多義語表現の活用が多用されるとい うことを報告している。

Koizumi(2005a, 2005b)をはじめとする、語彙と4技能に関する研究が示していること

は、語彙学習の重要性であり、学習者の日本語能力の向上を目指すのであれば、語彙につ いて、なんらかの教育的介入が必要であるということである。

これまで語彙学習法に関する研究は、英語を対象言語とする習得研究領域において、膨 大な量の研究が積み重ねられている。例えば、インターアクションやアウトプット活動に よって学習する語彙の量や活動法について検討した研究(Loschky, 1994; Ellis, 1995; Newton, 1995; Newton & Kennedy, 1996; Ellis & He, 1999; de la Fuente, 2002, 2006; Kim, 2008など)、

読解活動を対象とし、読解文中における語の出現回数による学習効果や語を使った練習活 動や意味推測ストラテジーの効果などについて検討した研究(Mondria & Wir-de Boer, 1991;

Fraser, 1999; Rott, 1999; Rott, Williams & Cameron, 2002; Mondria, 2003; Kim, 2006; Pulid, 2009 など)、発話において語彙の流暢さを高めるタスク研究(Joe, 1995,1998)、翻訳すること で語の形式と意味を定着させるタスク活動(Webb, 2005; Laufer, 2006; Laufer & Girsai, 2008 など)や作文や穴埋め作業など筆記活動により語を定着させる活動について検討した研究

(Folse, 2006など)、記憶研究の知見を活かし、イメージを活用し語形と意味を対連合さ せる活動の検証(Pressley, Levin & Miller, 1982; Ellis, N & Beaton, 1993a, 1993bなど)や提示 する語の意味関係によって成績が異なるのかを検討した研究(Tinkham, 1997; Erten & Tekin,

2008; Finkbeiner & Nicol, 2003など)など、枚挙にいとまがない。これらの研究は、主に未

知の単義語を対象に、実証を行っており、先行研究が示唆することは、語彙学習の成果は、

学習者の母語、学習活動、学習者の習熟度、語の意味などの様々な要因から影響を受けて いるということである。

5 OPI(Oral Proficiency Interview)とは、ACTFL(American Council on the Teaching of Foregin Languages:全米外 国語教育協会)によって開発された、外国語発話能力を測定するテストのことである(山内, 2009)。

(13)

3

では、ここで、日本語における語彙学習研究についてみてみよう。日本語を対象とする 語彙学習に関する研究は、英語を対象とする研究に比べて、極めて少ない。語彙学習研究 は、連語を対象に指導法について考察した研究(三好, 2007, 2011, 2012)や読解活動におけ るタスク効果について検討した吉澤(2010)、意味推測について検討した山方(2008)、

谷内・小森(2009)などがあるのみである。すなわち、日本語における語彙学習研究は、

英語を対象とした研究と比べるとその数は不足しており6、英語を対象とする語彙学習研究 の結果が日本語でもそのまま適用されるのか検証する必要がある。また、アイゼンク(1984, p. 114)は、学習活動と記憶は、以下の要因の影響を受けると述べており、検証にあたって 要因を統制する必要がある。

(1)被験者に与える課題の性質

(2)被験者に与える刺激材料の種類

(3)被験者の個人特性(たとえば、個々人で異なる知識)

(4)記憶測定に用いられるテストの種類

効率的な語彙学習法を明らかにするためには、(1)~(4)の要因がどのような関係 であるのかを明らかにする必要があるだろう。特に、これまでの学習研究では、(1)

が重視され、(2)について、詳細に検討されてこなかった。Laufer(1997)は、単語自 体に習得しやすい語と習得しにくい語があることを報告しており、語の特性を検討した 上で、学習法について考察する必要がある。Laufer(1997)は、単語の学習のしやすさ に関する先行研究を概観することで、語彙習得に関わる要因について考察している。表 1-1に、Laufer(1997, p. 154)の「習得を促進する要因」をまとめる。

6 山内(2000)は、日本語における語彙習得に関する研究自体が、文法習得研究に比較すると少ないと報告し ている。

(14)

4

表 1-1 習得を促進する要因 7(Laufer, 1997, 相沢, 2003 を基に筆者作成)

表1-1が示すように、音韻と文法については、母語(以下、L1)との類似の有無、規則 性の有無、規則の複雑さが学習を困難にさせている。従来の語彙学習研究では、上記の語 の特性について、統制をとることが多く、特性によって、学習効果にどのような差が生じ るのかということについては、あまり検討されていない。

そこで、本研究は、語彙の多義性に着目し、効率的な語彙学習活動の検討とともに、習 熟度、語彙の学習容易性がどのように関わりあっているのか、という点を明らかにする。

1. 2 本研究の対象

本研究は、韓国で外国語として日本語を学習する韓国人日本語学習者を調査協力者とし、

多義語における未知の派生義を学習項目とする。

韓国人日本語学習者を調査協力者として設定したのは、学習言語と母語の距離が類似し ているためである。L2学習においては、学習言語と母語の間にある距離が学習成果に大き く影響を与える(Swan, 1997)。学習言語と母語の間の距離が近ければ、正の転移が生じ、

学習が促進されるが、遠い場合は正の転移とならず、学習が困難であることが知られてい る。

7 1-1では、相沢(2003)と同様、語彙学習への影響が不明である「単語の長さ」「品詞」「具調性・抽象 性」を含めていない。

習得を促進する要因 困難さに含まれる要因 音韻的要因 母語に近い音素 母語にはない音素

音素配列の規則性 音素配列の不規則性

強勢位置の規則性 強勢位置の不規則性

音声と綴りの一貫性 音声と綴りの不一致 文法的要因 屈折形・派生形の規則性 屈折形・派生形の不規則性

形態素の透明性 形態素の不透明性

意味的要因 意味の一般性 意味の特殊性

使用域の中立性 使用域の制限

イディオム性

意味の一義性 意味の多義性

(15)

5

特に韓国語と日本語は、表現法が非常に類似しており(林, 2002, 李, 2007など)、日本 語は韓国人母語話者にとって、学びやすい言語であると言えよう。しかし、韓国語と日本 語は、全て同じというわけではない。特に、基本動詞の多義語の場合、同じ事柄を述べる に当たって、異なる動詞を使う場合が少なくない。以下、(1)~(4)に、例を示す。

【日韓同じ意味の動詞を用いる例】

(1)留守番をする(=家をみる)=집을보다(家をみる)

(2)推薦する(=人をおす)=그를 책임자로 밀어주다.

(彼を責任者に推薦してあげよう)

(=彼を責任者におしてあげよう)

【日韓異なる意味の動詞を用いる例】

(3)注射を打つ=주사를 놓다(注射を置く)

(4)仮名を振る=토를 달다(ふりがなを書き入れる)

(( )内の日本語訳は小学館・金星出版社(1993)、門脇他 (2008)をもとに作成)

(1)と(2)の例で用いる動詞は中心的な意味ではなく派生的意味を表すが、韓国語にお いても同様の動詞を使う。すなわち、(1)と(2)は、日韓ともに共通した中心的意味と 派生義を有している。しかし、(3)、(4)は、日本語の派生的意味は、韓国語において は、異なる動詞の派生的意味で表されることを示す。(1)~(4)の例が示すことは、韓 国人日本語学習者にとって、未知の多義語派生義の理解にあたっては、日本語動詞を韓国 語動詞に直訳で置き換えればいいというものではない、やっかいな項目であるということ である8。このように日本語と調査協力者の母語が類似しており、転移が生じやすい中で、

転移を妨害する学習効果を検討することは、今後のL2語彙学習研究の発展の一助になる と考える。L2語彙学習において、L1の影響は必ず生じるものである。L2語彙学習研究の

8 Laufer(1989)では、読解文中、未知の多義語派生義に遭遇した学習者は、未知の多義語派生義の意味を既に

知っていると誤って認識することから、誤った読解理解を導くと述べている。

(16)

6

発展を考えるのであれば、学習者の母語別に詳細に検討する必要がある9。本研究では、類 似という条件の中でその学習効果を検討する。

加えて、頻度の高い語ほど多義であることを踏まえると、このような多義語派生義の学 習法の効果を検討することは、日本語教育への貢献という点において、非常に意義がある と考える。

そして、本研究が、韓国で外国語としての日本語(JFL)学習環境の学習者に特化した 理由としては、学習法の効果を検証する場合、調査協力者へのインプットが均質であり、

制限されていることが望ましいと考えたためである。また、第二言語としての日本語(JSL)

環境の日本語学習者を対象者とした場合、本論が取り扱うような派生義はすでに既知であ る可能性があり、実験調査を行う場合調査協力者の知識の面で、統制が取りにくいと考え たためである。

1. 3 論文の構成

本論の構成は、図1-1で示すとおりである。第2章では、認知言語学と記憶研究の理論 を概観することで、本論の立場を示す。認知言語学における理論的背景を概観し、背景を 踏まえ、日本語と英語を学習言語とする多義語習得研究について述べたい。多義語習得研 究がどこまで進んでいるのかを示し、派生義習得がどのように説明されているのかについ て述べる。そして、記憶研究の理論的背景を踏まえ、語彙学習研究において、どのような 活動が有効であると言われているのか、本研究が検討する学習活動の枠組みを提示する。

さらに、意図的語彙学習において、主要な学習活動を概観することにより、派生義学習に おいて、どのような学習活動が有効なのかを検討する。そして、派生義学習法を検討する 上で、学習成績に影響を与える要因についても概観する。第3章では、第2章の先行研究 を踏まえ、研究課題の設定とともに用語の操作的定義、研究方法について記述する。第4 章では、研究課題1について取り組む。学習法に関する実験を行い、研究課題1に対する 答えを導き出す。第5章では、研究課題2と研究課題3を解明する上で、必要となる実験 材料の統制や仮説を構築する。そのためには、第4章で示されたことを踏まえて、派生義 の特性に着目し、派生義の理解について、量的・質的に検討することを試みる。質問紙に よって、派生義の特性を量的に測定し、フォローアップインタビューを分析することで、

9 中俣(2013)では、構文の習得にあたっても学習者の母語について検討する必要があると述べる。

(17)

7

派生義の理解がどのように行われているかを明らかにする。第5章は、第6章を行う上で の予備調査として位置づけられる。続く、第6章では、研究課題2と研究課題3について 解明する。分析にあたって、調査協力者の習熟度や第5章で示された派生義の特性を基に 学習成績の分析を行う。そして、総合的考察として、多義語派生義には、どのような学習 法が有効なのかを考察をする。第7章では、本論文によって明らかになったことと、本論 文の知見を教育活動においてどのように応用できるか検討する。そして、最後に、本論文 の限界と今後の課題を示す。

(18)

8

1章 序論 本研究の目的

3章 本研究の課題 本研究の研究課題 操作的定義・研究方法 第2章 先行研究概観

L2多義語習得研究 L2語彙学習研究概観

4章 研究課題1の検証

実験1:精緻化活動の有効性検証

派生義の意味特性による学習効果確認

5章 予備調査

調査1:派生義の透明性調査

6章 研究課題2 研究課題3の検証

実験2-1:学習活動と習熟度の関係

実験2-2:学習活動と透明性の関係

7章 結論 本研究の要約 教育への応用 今後の課題

図 1-1 本論文の構成

(19)

9

2 章 先行研究概観

本論が取り扱う「多義語」とは、言語学と心理学両面から研究されている項目であり、

その研究の歴史は、はるか昔ギリシャ哲学の時代から始まり、現代に至るまで様々な言語 において、膨大な量の研究が積み重ねられている。歴史をたどると、1980年代の認知意味 論の登場に伴い、多義語研究は大きな転換を迎えた。本章の目的のうち1つは、多義語の 習得研究を観することである。

本章のもう1つの目的は、L2語彙学習研究における本研究の立ち位置を示すことである。

L2語彙学習研究の礎となる記憶研究の枠組みについて概観し、語彙がどのように記憶され ているのかについて説明を行う。そして、L1記憶研究で得られた知見が、L2語彙学習で どのように応用されているのかを述べる。

2. 1 認知意味論による理論的背景

本研究は、意味を辞書の意味記述に従うものの、その理論的裏付けを認知言語学に背景 を求める。多義語については、「1つの語が異なった2つ以上の意味を持っていること」

(辻, 2002, p. 144)であり、かつ、複数の意味のうち、最も典型性が高い意味が、プロトタ イプ的意味と呼ばれる。田中(1990, p. 101)は、プロトタイプ的意味の認定の仕方につい ては、「具体性などの言語学的な基準に基づくもの」を「理論的プロトタイプ10」とし、

「心理学的な顕著性(連想想起力)を基準とするもの」を「心理的プロトタイプ11」と分

10 理論的プロトタイプの認定研究として、代表的な研究として、籾山(1995)を挙げる。籾山(1995)は、言 語学的な基準として、多義語の複数の意味のうち、用法上の制約がない、あるいは、相対的に少ないものを プロトタイプ的意味と認定するという方法を提案し、「遠い」などといった「空間」と「時間」の両方の意 味を持つ語の分析を行っている。

11 心理的プロトタイプの認定を行った研究として、Kellerman(1979)や田中(1990)やShirai(1995)、松田

(2000)、加藤(2005)などがある。Shirai(1995)は、putを学習項目とし、日本人英語学習者を対象に、

(20)

10

類しているが、プロトタイプ的意味については、母語話者として、比較的直観によって理 解しやすいのではないだろうか。本研究における「意味」をどのように定義するのか、取 るべき立場について、整理を行う。ラネカー(2011, pp. 48-49)では、意味とは、「概念化

(conceptualization)のプロセス」であり、「(1)個々の話者の心の中で強化されており、

(2)言語共同体のメンバーによって慣習化されているという点で、言語の一部として認識 されている」ものであると述べている。同時に、「限られた意味の配列のみがこれらの基 準を満たし、確立された言語ユニット(linguistic units)として地位を得ている」とも述べ ている。この「概念化」とは、「把握事態に対する解釈(捉え方)」(辻, 2002, p. 23)12の ことである。すなわち、認知言語学においては、主体者が事態を捉えた結果が、その意味 であるという立場をとる。ラネカー(2011, p. 38)は、概念化を「あらゆる心的経験のさま ざまな側面を取り込めるように、広く定義している」。例えば、辻(2002)の「概念化」

の記述を見てみよう。「蹴る」という単語を例にとって説明すると、「蹴る」という事態 に遭遇する、つまり、特定の筋肉や神経組織を使う事態に遭遇すると、「心のうちに一定 の出来事が喚起されるようになる。」(辻, 2002, p. 22)。これは、「脳内における電気信 号の伝達によって特定の神経組織の活性化が繰り返され、固定化」(辻, 2002, p. 22)する ようになるということである。固定化するということは、「蹴る」という行為表象が獲得 されているということであり、表象こそが、「蹴る」の意味となる。語の意味を、個々の 話者の心の中で強化されている表象が表すものとして、さらにラネカー(2011)は、「百 科事典的意味論」という考え方を採用している。この考え方は、「語彙の意味は、あるモ ノのタイプに関する開かれた知識の総体へとアクセスする特有の方法にある」(p. 50)と いう考え方である。これについては、図2-1に示す。知識の総体は、中心性の程度によっ

putを使った典型性の高い文を作成するという自由産出テストを行っている。また、松田(2000)も、「割る」

を対象語に、調査協力者に、第一に思いつく例文を書かせる自由産出テストを行っている。また、加藤(2005)

は、中国語母語話者を調査協力者とし、典型性を9段階で評価を行う典型性判断テストを行っている。

12 事態を分類する概念化は、「カテゴリー化」と呼ばれ、対象・出来事を理解するための概念は、「スキーマ」

と呼ばれる(辻, 2002, p. 6)。ラネカー(2011, p. 21)では、カテゴリー化を「それまでに存在する構造に関 連させて経験を解釈する認知プロセスである」と説明している。スキーマはカテゴリー化に際に用いられる

(ラネカー, 2011)

(21)

11

て、差があり、細字の円で示される。太字の楕円は、状況に応じて、活性化される知識で ある。

図 2-1 百科事典的意味論(ラネカー, 2011, p. 49 より転載)

これは、語彙の意味とは、完全に固定されていないものであり、文脈等、使用状況に応 じて、その表す意味が変容していることを示す。しかし、ラネカー(2011)は文脈に応じ て、その表す意味が変容するといえども、高頻度で用いられる語彙項目の多義は、ある程 度慣用化されており、ネットワーク関係でつながっているとも述べている。

ラネカー(2011)の「意味」に関する記述を踏まえると、個人の語彙ネットワークにお いて、確立しており、かつ、共同体で慣習化された使用法が語義であると考えことができ る。しかし、個人の語義ネットワーク、および、共同体で慣習化された用法全てを探し当 てることは難しい。現実的に可能な方法としては、百科事典的意味論を認めつつも、辞書 を参照することによって、最低限共同体で慣習化されていると認められている用法を語義 として認定することである。

では、語義同士は、どのように意味ネットワークを構築しているのだろうか。意味ネッ トワークのとらえ方には、二つの立場がある(Langacker, 1987)。第1の立場は、多義語 が持つ用法に、共通する抽象的なスキーマ(scheme)があるとする立場である(Langacker,

1987; ラネカー, 2011; 田中, 1990; 籾山, 2001など)13 。スキーマ(scheme)とは、「同じ

事物を指す他の表示よりも概略的で詳細を省いた記述がされている意味, 音韻, 表象」と定 義される(辻, 2002, p. 16)。田中(1990)が提案する意味ネットワークについては、松田

(2004)や田中・佐藤・阿部(2006)に応用されており、2.1.1節において記述する。また、

13 Langacker(1990)が図示するネットワークは、ネットワークモデルと呼ばれる。田中(1990)が図示するモ

デルは、コア図式と呼ばれる。コア図式については、2. 1. 1. 2節にて説明をしている。Langacker(1990)と 田中(1990)は図示の仕方が異なるが、両モデルともに、意義間に共通する抽象的なスキーマを設定する点 は共通している。

(22)

12

籾山(2001)は、ラネカーのネットワークモデルを応用させたものである。ここでは、多 くの先行研究に引用されているラネカーのネットワークモデルについて述べたい。ラネカ ーのネットワークモデルは、図2-2、図2-3のように図示される。図2-2は、Langacker (1990,

p. 271)によって提出されたネットワークモデルである。瀬戸(2007)は、図2-2のネット

ワークモデルを説明するため、図2-3のネットワークに改変し説明している。

図 2-2 ネットワークモデル(Langacker, 1990, p. 271 より転載)

図 2-3 説明用のネットワークモデル(瀬戸, 2007, p. 39 より転載)

多義語の有する意義は、スキーマCの事例化14(instantiation)、あるいは、詳細化(elaboration)

と考え、プロトタイプ的意味である意義Aから、メタファー(metaphor)による拡張

(extension)によって、意義Bが生じるとする。メタファーとは、「2つの事物、概念の 間に類似性が成り立つとき、一方の形式で他方を表現すること」(辻, 2002, p. 17)を言う。

Langacker(1987)、ラネカー(2011)、籾山・深田(2003)の記述を元に、図2-3の説明

14 事例化(instantiation)とは、スキーマから事例が実現される過程のことである(瀬戸, 2007)。

(23)

13

を行う。英語「ring」には、<輪状の装飾品>、<指につける輪状の装飾品><鼻につけ る輪状の装飾品>という3つの意味が確立されている(籾山・深田, 2003)。ラネカー(2011)

では、<指につける輪状の装飾品>が「ring」のプロトタイプ的意義Aであるとし、この 意義から「輪状の装飾品」という類似点に基づいたメタファーによって意義B<鼻につけ る輪状の装飾品>という意義が生じていると述べる。意義A<指につける輪状の装飾品>

と意義B<鼻につける輪状の装飾品>の間には<輪状の装飾品>という点が共通しており、

<輪状の装飾品>を意義Cとしてスキーマ化15することが可能である。瀬戸(2007)の説 明によれば、A、B、Cから新たなる意味がメタファーによって意味拡張していき、そこか ら新たなるスキーマが抽出されていく可能性があり、ネットワークが複雑化していくとい う。なお、籾山・深田(2003)、瀬戸(2007)では、スキーマCと意義A、意義Bの関係 をシネクドキの関係であると考察している。シネクドキとは、「包括関係(類と種の関係)

に基づいて転義(意味のズレ)が起こる比喩で、上位概念で下位概念を指したり、下位概 念で上位概念を指すもの」(辻, 2002, p. 158)である。すなわち、図2-3は、一つの階層と 見なし、意義A<指につける輪状の装飾品>とは、上位概念であるスキーマ意義C<輪状 の装飾品>の形式を利用して、指示されているということである。

一方、語義同士に共通するスキーマは設定せず、プロトタイプ的意味を中心義とし、メ タファー、メトニミー、シネクドキなどにより、意味拡張していくと考える立場もある(レ イコフ, 1993; Tyler & Evans, 2003; 瀬戸, 2007など)。メタファー、シネクドキについては、

前述したので、メトニミーについて説明を行う。メトニミーとは、「隣接性に基づく」(辻, 2002, p. 35)比喩である。例えば、「電話をとった」という文では、実際の動作は受話器を とっている。これは、「『電話機』という全体で、その部分である『受話器』を指してい る」(辻, 2002, p. 35)。前述のメタファーが異なる領域間(例:指輪と耳輪)での類似性 に基づく意味拡張であるのに対して、メトニミーは、同一の領域内の隣接性から生じる意 味拡張である。隣接性は、「受話器」と「電話機」というように、「部分」で「全体」を 示す関係であったり、「容器」で「中身」を示す(例:やかん(>水)が沸騰する)、「制 作者」で「産物」を示す(例:漱石(>作品)を読んだ)といった複数の関係がある(辻, 2002, p. 35)。

15 スキーマ化とは、「複数の経験から固有の共通点を抽出し、高次の抽象化に到達する認知プロセス」であ る(ラネカー, 2011, p. 21)。カテゴリー化をする際に用いられる(ラネカー, 2011)。

(24)

14

瀬戸(2007)は、メトニミーによる意味拡張は、図2-2、図2-3のネットワークに組み込 むことはできないと述べている。それは、図2-2の意味拡張にメトニミーによる意味拡張 を組み込むと、共通したスキーマを抽出することができず、意味ネットワークの拡張が停 止してしまうためである。そこで、瀬戸(2007)は、プロトタイプ的意味を中心義とし、

共通したスキーマを設定しない意味ネットワークを提案している。この意味ネットワーク は、図2-4が示す通り、中心義からメタファー・メトニミー・シネクドキという経路によ って、意味拡張していく。

図 2-4 瀬戸(2007, p. 41)による意味ネットワーク

瀬戸(2007, p. 53)では、図2-4の意味ネットワークを利用した意味記述を例にあげてい る。

crawl v. <人・虫などが>這う

0<人・虫などが>這う a. 水面で這う

1. 多くの人が這うように動く

(25)

15 a. 場所で人がひしめく

2 乗物・雪が這うように進む

a. 視線・数値・時間が這うように進む 3. 人が利を求めてすり寄る.

(瀬戸(2007, p. 53)の一部を改変し、抜粋)

「crawl」には、複数の意味があるが、意味ネットワークに従い、メタファー、メトニミー によって、その意味拡張を説明することができる。まず、「crawl」の中心義を「<人・虫 などが>這う」と設定し、中心義からメタファーにより、0-a「水面で這う」という派生義 を設定している。さらに、中心義から、メタファーによって、1「<多くの人が>(俯瞰的 に見て)虫が這っているように動き回る」という派生義が生じている。そして、派生義1 からメトニミーにより1-a「<場所が>(人・虫などで)不快なほどいっぱいである」と いう派生義が生じる。中心義から、メタファーにより、2「<乗物・雲などが>這うように ゆっくり進む」という派生義が生じている。さらに、2の派生義から、メタファーにより、

2-a「<視線・数値・時間などが>這うように進む」という派生義が生じ、また、2から、

メタファーによって2-b「<道が>(移動する物の動きに合わせて)這うように先に延び る」という派生義が生じている。さらに、中心義からメタファーによって、3「<人が>(人 に)取り入るために腰を低くしてすり寄る」という派生義も生じている。

2. 1. 1 多義語習得研究

2. 1. 1. 1 英語学習者を対象にした多義語習得研究

前節で述べた多義語の意味研究は習得研究に応用されており、習得研究は、大きく2つ に分けられる。多義語の有する意味が、どのようにL2学習者に習得されるのか、なぜそ のような習得状況になるのか、ということを明らかにするという習得の質的な観点から行 われた記述的な研究と、有効な学習法とは何かということを検討する研究に分けられる。

主として、習得の質的な観点からの研究が多く、学習法研究は少ない。以下、習得の質的 な観点の研究から述べる。

習得状況の記述研究は、Kellerman (1979)から始まり、Tanaka & Abe(1985)、今井

(1993)、Shirai(1995)と続く。Kellerman(1979)は、認知心理学のRosh(1973)の「プ

(26)

16

ロトタイプ理論」を理論的根拠に用い、転移の観点からオランダ人英語学習者を対象に考 察を行った。Kellerman(1979)の関心は、多義的意味のうち、どの意味が習得され、どの 意味が習得されにくいか明らかにすることであった。その結果、母語(以下、L1)におい てプロトタイプ性が高い語義は、習得されやすいが、L1においてプロトタイプ性が低い語 義は習得されにくいという結果となった。Kellerman(1979)の研究は、プロトタイプ的意 味が転移によって習得されやすいことを明らかにし、L1の転移とは、無秩序に生じるので はなく、ある一定のルールによって生じるものであるということを示した研究である。

Tanaka & Abe(1985)は、Kellerman(1979)の主張の追認を行うと同時に、プロトタイ プ性による転移は「正の転移」だけでなく、「負の転移」においても生じることを主張し

た。Tanaka & Abe(1985)は、284人の日本人英語学習者を対象に、空間表現「in」(日本

語対応「~の中に」の典型性の高い意味 (1)There’s plenty of coffee(in)the pot. (2)

John lives(in) a new brick house.と典型性の低い意味 (3)John’s driving(in) heavy fog. (4)

There’s a hole(in) the wall.を対象に、空所補充課題を行った。空間表現「in」は、日本語 の「~の中に」に対応するが、(2)と(4)は、「in」を「~の中に」という日本語にそ のまま直訳するのは、不自然である。しかし、調査の結果、(2)の正答者が(4)の正答 者より、有意に多かった。つまり、典型性の高い意味(2)については、「正の転移」によ り、習得されやすいが、典型性の低い意味については、L1の「負の転移」が生じ、習得さ れにくいことを意味する。

ところで、多義語の意味知識はレイコフ(1993)によると、ネットワーク形式で貯蔵さ れていると述べられている。レイコフ(1993)は、多義語の複数の意味をカテゴリーとと らえ、その中に中心的な意味を設定し、イメージスキーマの変換によって意味拡張が生じ ていると考えている。すなわち、多義語の意味構造を放射状カテゴリーとして捉えている。

レイコフ(1993)の研究により、母語話者の多義語知識には、一貫した構造があると想 定されていたが、今井(1993)は、多義語の知識が母語話者と非母語話者でどのように異 なるかを検討した。日本人英語学習者とアメリカ人母語話者を対象に、多義語「wear」の 意味知識がどのように習得されているかを比較検討した。調査方法として、「wear」の用 法の類似性判断と受容評定判断を行った。その結果、アメリカ人母語話者と日本人学習者 の「wear」の知識は、異なっており、アメリカ人母語話者はプロトタイプ的意味を中心に、

メタファー意味拡張で意味転用させている、つまり、「wear」の意味知識は、レイコフ(1993)

が提示するような内的構造を持っていることが示された。しかし、日本人学習者は、意味

(27)

17

カテゴリーが拡散しており、派生義間にまとまりがない。つまり、派生義同士が点と点で 結びついている状態であることが示唆された。

また、アメリカ人母語話者の用例の適切性の判断は、意味用例が慣用的であれば、語の 字義的な意味から比喩的な意味まで受容することが明らかになったが、日本人学習者は、

「wear」の意味として確信をもって判断できるのは、日本語の「着る」の意味範囲のみで あり、意味範囲外の非慣用的な用法であったり、比喩的な用法といった、日本語の「着る」

に含まれていない用法については、確信をもって判断されなかった。今井(1993)の報告 を検討すると、学習者のL2多義語習得にあたっては、常にL1の字義通りの意味のみが転 移し、比喩的な、周辺的な意味については、プロトタイプ的意味とは別のカテゴリーと認 識され、何度、周辺的な意味を見ても、なかなか長期記憶に組み込まれない可能性がある ことが示された。この指摘は、習得されにくい派生義が生じることの説明を、「学習した 用法の個別性に依存した学習の結果」とするTanaka & Abe(1985)の指摘と重なる。Tanaka

& Abe(1985, p. 106)は、L1多義語AとL2において対応する多義語C、学習者の中間言

語をBとし、図2-5で示した。

(28)

18

図 2-5 学習者母語(L1)多義語と学習言語(L2)多義語、学習者中間言語(IL)の意味領域 (Tanaka & Abe, 1985, p. 106 の図を改変)

L1多義語AとL2多義語Cは、中心義を共有しているが、CとC’は、L2独自の派生義 である。Cの領域は習得されるが、C’の領域は、習得されにくい。これを、Tanaka & Abe

(1985) は、学習した用法の個別性に依存した学習の結果であると説明する。 C’の部分 の例として、Tanaka & Abe(1985)では、”listen to music”と” hear”を例に挙げて説明する。

例えば、”listen to music”という表現は、”listen to”と”music”が強く結びついて学習されてお

り、”hear”の学習を阻害する。本来なら、”hear”と答えるべき個所”Do you( ) the music

out there ? They are having a party or something ”において、” music”に引きずられて”listen to”

と答えてしまう場合である。つまり、C’の部分は、”listen”の観点から見れば過剰使用とな り、”hear”の観点から見れば過少使用となる。その結果、C’の部分は、習得されにくい部 分となっていくというのである。これは、すなわち、C’の派生義は、多義語ネットワーク として体系的に記憶されているのではなく、プロトタイプ的意味とは別の意味として記憶 されるということである。C’の派生義は、学習されたコロケーション(共起表現)がプロ トタイプとして記憶され、負の干渉となり、派生義が使用可能となる新たなるコロケーシ ョンの学習を阻害するのである。阻害の結果、今井(1993)が報告したように、L1対訳に 含まれない派生義は、プロトタイプ的意味と同じカテゴリーに含まれないと認識され、多 義語知識の意味構造は、意義同士にまとまりがなく、点と点で貯蔵されていくのではない かと考えられる。

学習者中間言語

(Interlaguage)B C

C’

L1多義語A L2多義語C

(29)

19

一方、Cの領域の派生義は、多義語ネットワークとして体系的に記憶されていくことが 可能、つまり、プロトタイプ的意味と派生義の間になんらかの認知的意味拡張を見出しや すい。つまり、同じカテゴリーに含まれると認識されやすい項目であるということを意味 するのではないだろうか。

今井(1993)とTanaka & Abe(1985)を統合すると、多義語のカテゴリーに含まれない と学習者に認識される派生義があり、そのような派生義の学習にあたっては、学習効果が 異なる可能性があることを示唆する。

また、Shirai(1995)は、語義における「プロトタイプ」の概念がL1とL2で異なるこ とに着目し、L1、L2両言語におけるプロトタイプ性の高い語義は習得されやすいことを実 証した。Shirai(1995)は、習熟度の異なる日本人英語学習者を調査協力者とし、「put」

を学習項目として、その習得状況について受容テストで測定した。Shirai(1995)の研究は、

L1においては、プロトタイプ性という概念が、転移に影響を与えているが、L2において は、学習可能性(learnability)が習得に影響を与えていると指摘する。Shirai(1995)の指 摘を踏まえるならば、語義習得において、学習可能性が習得に影響を与えるということよ り、語彙学習の成果も派生義によって異なる可能性があることを予測させる。

以上の通り、習得の質的な記述研究を概観したが、これらの研究は、認知言語学の枠組 みを用いることで、習得しやすい意味の抽出(L1、L2におけるプロトタイプ的意味)、そ して、習得しにくい意味(非プロトタイプ的意味)の存在説明という流れで、進化してい るといえる。習得しにくい意味(非プロトタイプ的意味)とは、学習者にとって、プロト タイプ的意味と同じカテゴリーであると認識されないことに起因する。つまり、非プロト タイプ的意味の習得に関しては、L2インプットが限られたFL環境においては、自然習得 することは困難であり、何らかの教育的支援が必要であると考えられる。

2. 1. 1. 2 英語学習者を対象にした多義語学習法研究

多義語学習に関する研究も、前述の習得研究の流れを受け、認知言語学の枠組みを利用 したものが多い(田中他, 2006; Matsumoto & Lowen, 2007など)。田中他(2006)は、多義 語の意味を「コア理論」(田中, 1990)を用いて、学習法を考案したのに対し、Matsumoto

& Lowen(2007)はその実証を行っている。「コア理論」とは、多義動詞の意味を記述す るにあたって、「コア」という文脈に依存しない(context- free)一般化された動詞につい

(30)

20

ての知識を設定し、そのコアが文脈調整を経て、文脈に依存した(context- sensitive)語義 を得るというのが、コア理論の考え方である(田中他, 2006)。つまり、多義語とは抽象的 なコアから文脈に応じて、複数の意味が生み出されている語と説明する。多義語の意味構 造は、図2-6のように、全ての意義の頂点に抽象的なコアがある、円錐状だと設定する。

田中他(2006)は、コアとは、図2-6の円の中核のように、意味の中核をイメージしやす いと述べる。しかし、実際のコアとは、円錐の頂点に位置づけられるものであり、多義語 の意味領域を円錐の下部の円とし、用法ごとに集約したものを、A、B、Cとグルーピング していき、さらにこれらから抽出した共通するものが、コアである(田中他, 2006)。

図 2-6 コア図式による意味構造表示

(田中他, 2006, p. 8 より一部改編)

コア理論では、コアを図によって表示する16ことで、多義語の複数の意味関係を説明す る。一つの形式に対し多数の語義が生じるのは、コア図式のどの側面に認知的な力点を当 てるかによるとし、焦点化によって、意味の連続性を説明している。例えば、「over」の コアは、図2-7のように示される。認知的な力点によって、4つの意味が生じていること を示している。図中の黒い四角は、対象物であり、田中他(2006)によると、コア図式の うち、Ⅰに焦点をあてた場合、「起点」という意味が浮き彫りとなり、「上を越える」と

16 2-6のように多義語全体の意味を表す図は、「コア図式」と呼ばれる。

円の中核 円錐の中核

(31)

21

いう意味が生じる(1)。そして、Ⅱに焦点をあてた場合、移動行程の意味が浮き彫りとな り、「真上に」という意味が生じる(2)。Ⅲに焦点をあてた場合、「全体を覆う」という 意味が際立つ(3)。最後に、Ⅳに焦点をあてた場合、目標点という意味が際立ち、「超え た向こうに」という意味が生じる(4)。

(1)The cat humped over the fence.

(2)The place is flying over the Pacific Ocean.

(3)He put a cloth over the table.

(4)There is a castle over the mountain.

(田中他, 2006, p. 43より抜粋)

「over」の(1)~(4)の用法は、図2-7を用いることで、連続した説明が可能となる。

コア図式学習法とは、言うなれば、多義語の意味構造を図などによって表示し、学習者に 意味の成り立ちを説明することで理解を図る学習法と言えよう。

図 2-7 「over」のコア図式

(田中他, 2006, p. 44 より一部改編)

Matsumoto & Lowen(2007)は、日本人英語学習者58名を対象に、コアを使った学習法

と対訳を用いた学習法、統制群の成績を比較した。コアを使った学習群は、「break」およ

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び「over」のコアの説明を受け、その派生の由来に関する説明を受ける。一方、対訳を用 いた学習群は、「break」および「over」のコアに関する説明や多義構造に関する説明を受 けずに、「break」「over」の多義に関する辞書的な意味説明を受け、英語から日本語への 翻訳活動を多めに行った。最後の統制群は、「break」「over」に関する教示を受けない。

学習活動後、文法性判断テストと絵を見て描写する産出テストという2種類の事後テスト を行った。事後テストは、学習効果の保持を見るために、2回実施された。その結果、「break」

については、文法性判断テストでは、第1回の事後テストにおいては、学習活動の間に有 意な差が見られなかった。第2回の事後テストでは、統制群と翻訳学習群の間に有意な差 が見られたものの、コア学習群と統制群の間、コア学習群と翻訳学習群の間に有意な差が 認められなかった。産出テストにおいては、事後テストにおいて、統制群が学習活動群(コ ア学習群、翻訳学習群)よりも有意に得点が低いことが示された。一方、「over」につい ては、第1回の文法性判断テストにおいてコア学習群が、翻訳学習群、統制群よりも有意 に得点が高いことが示された。なお、翻訳学習群と統制群の間には、有意な差が見られな かった。しかし、第2回の文法性判断テストでは、3群の間に有意な差が見られなかった。

また、第1回の産出テストにおいても、統制群が学習活動群(コア学習群、翻訳学習群)

よりも有意に得点が低いことが示され、第2回の産出テストでは、有意な差がみられなか った。Matsumoto & Lowen(2007)は、全てのテストを統合して、統制群と比較して、学 習活動(コア学習活動、翻訳学習活動)が学習を促進したと結論づけるものの、コア学習 と翻訳学習のいずれの活動が、より学習を促進するのか、ということについては、留保し ている。Matsumoto & Lowen(2007)では、コア学習と翻訳学習の間に差がでなかった理 由として、教師が、コア学習と翻訳学習の違いを学習者に教授できなかったという点、そ して、語彙知識は多面的な知識であり、1回の授業で知識の再構築は困難であったという こと、以上の2点を理由としてあげている。これは、コア学習は、十分に熟練した教師が 行わなければ、その効果を発揮させることができない可能性があることを示唆する。また、

特に産出テストにおいて、学習活動間に差が生じなかったことから、1回の学習活動では、

受容面に関する知識の再構築は行うことができても、産出面の知識の再構築は困難である と言えよう。

(33)

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2. 1. 1. 3 日本語学習者を対象にした多義語習得研究

日本語学習者を対象とした研究も、前述の英語習得研究の流れを受け、いくつか報告さ れている。その研究は、基本動詞を対象としたもの(松田, 2000; 加藤, 2005)と複合語を 対象としたもの(松田2004; 陳, 2005, 2007; 白, 2007, 2008; 照山, 2010)に分けられる。

2. 1. 1. 3. 1 基本動詞を対象とした習得研究

基本動詞を対象とした研究として、松田(2000)があげられる。松田(2000)は、動詞

「割る」を対象語とし、「基本動詞『割る』の意味を学習者がどのように理解しているか」

という問いについて、深谷・田中(1996)、および田中・深谷(1998)において、提唱さ れた「概念形成理論」に基づき検討している。概念形成理論とは、レイコフ(1993)を元 に提唱された理論である。この理論によると、語の概念(意味知識)とは、「差異化」「一 般化」「典型化」の3つの過程を経て、構築されるという。例えば、「りんご」という語 を例にとって説明すると、我々は、「りんご」という語の概念を獲得する場合、「りんご」

が他の果物と違うことを認識し(差異化)、「りんご」というカテゴリーの中に含まれる ものは何かということが認識できる(一般化)ようになる。また、「りんご」の中でも、

どの「りんご」が変わった「りんご」であり、どの「りんご」が普通の「りんご」なのか、

判断できるようになる(典型化)。「りんご」の概念(意味知識)を獲得するということ は、「差異化」「一般化」「典型化」の3つの認知プロセスを経ているということである

(松田, 2000)。

松田(2000, pp. 74-75)は、意味知識獲得の3つの認知プロセスに着目し、以下の研究課 題を設定し、多義語「割る」の概念が学習者の習熟度によって、どのように異なるのかを 報告している。

①意味的に関連した類義語との使い分けができるか(差異化)

②多義的な意味・用法が十分に使えるか(一般化)

③「割る」に対する典型概念(=プロトタイプ)が獲得されているか(典型化)

研究課題①については、受容判断テストによって、調査協力者が「割る」の分割用法と 関連語「切る」「分ける」を使い分けることが可能かどうか調査した。その結果、研究課 題①では、学習者は、学習が進むにつれ、母語話者に近い反応を示すということが明らか

参照

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