平成29年度 学内研究助成金 研究報告書
研 究 種 目
■奨 励 研 究 助 成 金 □研究成果刊行助成金
□21世紀研究開発奨励金 (共同研究助成金)
□21世紀教育開発奨励金 (教育推進研究助成金)
研 究 課 題 名 RNA結合タンパク質を標的としたRNA顆粒形成調節薬スクリーニング法の 確立と難治性疾患治療への応用
研究者所属・氏名 研究代表者:薬学部 創薬科学科 助教 佐藤 亮介
1.研究目的・内容
本研究の目的は、Processing body(P-body:PB)やストレス顆粒(Stress granule:SG)とい ったRNA顆粒の形成を評価する「①細胞スクリーニング系」、およびRNA結合タンパク質の機 能を評価する「②in vitroスクリーニング系」を立ち上げ、化合物ライブラリを用いたケミカルバ イオロジーを駆使した生理活性評価システムを構築することである。さらに、2 つのスクリーニ ング系により得られたリード化合物を用いることで、RNA顆粒形成の調節メカニズムについて分 子生物学的に解明すると同時に、各種疾患への適用の可能性について評価することを目的とする。
2.研究経過及び成果
本研究では、分裂酵母および哺乳培養細胞を用いて、RNA 顆粒形成効率を評価するための「① 細胞スクリーニング系(図 1)」を立ち上げることで、RNA 顆粒形成調節薬を取得するための研 究基盤を構築した。さらに、RNA 結合タンパク質を標的とした RNA代謝調節薬の「②in vitro スクリーニング系(図2)」を新規に立ち上げた。①のスクリーニングは、直接「RNA顆粒形成」
を評価するものであり、②のスクリーニングは、RNA結合タンパク質のRNA結合活性を指標に
「RNA顆粒形成」を間接的に評価するものである。このように、互いに相補的なアプローチを展 開することで、有望なリード化合物を効率的に探索可能であると考えた(図3)。
①細胞スクリーニング系の構築:
「GFP融合SGマーカータンパク質」と「tdTomato 融合PBマーカータンパク質」を共発現 する分裂酵母株を樹立した。また、哺乳細胞ではSG マーカータンパク質と PBマーカータンパ ク質をそれぞれ特異的に検出する免疫染色法を確立した。分裂酵母を用いたシステムを1st スク リーニングとして用いることで、SGとPBの形成効率を同時にリアルタイムで評価可能である。
一方で、哺乳細胞を用いたシステムを2ndスクリーニングとして用いることで、高等生物のSG およびPBの形成に影響を与える化合物を正確に判定することが可能となる。
②in vitroスクリーニング系の構築:
研究代表者はこれまでに、シグナル伝達依存的にRNA結合タンパク質のRNA結合能が制御さ れ、結果的に標的RNAの安定性に影響を与えることを明らかにしている。以上の成果を基盤に、
RNA結合タンパク質の標的結合配列を利用したレポーターアッセイ系を立ち上げた。レポーター としてOplophorus gracilirostris由来のルシフェラーゼNanoLuc®(Nluc)を用いることで、高 感度かつ高精度で RNA 結合タンパク質の機能を評価することが可能となった。具体的には、通 常のホタルルシフェラーゼを用いた場合と比べて、100倍程度感度が上昇した。
化合物ライブラリを①および②のスクリーニングに投入することで、複数のリード化合物を取得 することに成功している。近年、SGやPBといったRNA顆粒が抗がん剤抵抗性獲得や様々な難 治性疾患に関与することが報告されている。特に、ハンチントン病やアルツハイマー病といった 神経変性疾患において、異常なRNA顆粒が観
察されており、RNA顆粒と疾患との関連が明 らかにされつつある(Kampers et al., FEBS Lett 1996; Savas et al., PNAS 2008; Ash et al., Brain Res 2014)。従って、本研究によっ て構築したシステムを応用してRNA顆粒形成 の調節化合物を取得することは、がんや神経変 性疾患などの疾病治療法の確立に大きく貢献 できると期待される。さらに、得られたリード 化合物の作用機序を解明することで、がんや神 経変性疾患などの疾病治療薬の開発に繋がる だけでなく、RNA顆粒形成機構を介した疾病 治療戦略における重要な分子基盤となりうる。
本研究によって得られた成果は、筆頭著者あるいは発表者として、2件の論文発表、5件の口頭 発表(うち国際学会1件)、2件のポスター発表(うち国際学会1件)として発信・公開した。
3.本研究と関連した今後の研究計画
「①細胞スクリーニング系」および「②in vitroスクリーニング系」が構築できたため、引き続 き化合物ライブラリを用いて、リード化合物の取得に専念する。また、すでに得られたリード化 合物群に関しては、遺伝子発現解析、細胞内シグナル解析、ロカリゾーム解析を行うことで、そ の作用機序の解明を目指す。さらに、副作用が少なく効果が高いと認められたリード化合物群に ついては、神経変性疾患や癌などに罹患した患者由来の組織および細胞を用いて、RNA顆粒の形 成に与える効果についても検証を進めたい。
本研究に関連する研究成果は、努めて学術雑誌で発表する。また、国内外の学会、シンポジウ ムにおいて積極的に成果発表を行う。研究成果はホームページを通じて発信することとし、特に 学術的・社会的貢献が大きいと判断されるものに関しては、研究機関を通じて新聞発表等を行う。
4.成果の発表等
発 表 機 関 名 種類(著書・雑誌・口頭) 発表年月日(予定を含む)
Genes to Cells 雑誌 2018年in press
医学書院「生体の科学」 雑誌 2018年in press 2017年度生命科学系学会合同年次大会 ポスター 2017年12月8日 2017年度生命科学系学会合同年次大会 口頭 2017年12月9日 第67回日本薬学会近畿支部総会・大会 口頭 2017年10月14日 酵母遺伝学フォーラム第50回研究報告会 口頭 2017年9月12日
Current Genetics 雑誌 2017年8月10日
第19回日本RNA学会年会 口頭 2017年7月21日 9TH INTERNATIONAL FISSION
YEAST MEETING (Pombe 2017) 口頭 2017年5月19日 9TH INTERNATIONAL FISSION
YEAST MEETING (Pombe 2017) ポスター 2017年5月15日
Genes to Cells 雑誌 2017年5月9日