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―大学生が直面した困難の分析と大学による支援の検討―

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1.本調査の目的と調査方法

本調査は、新型コロナウィルス感染症拡大が大学生に与えている影響を把握し、大学に求め られる支援のあり方を検討することを目的に実施したものである。調査はアンケート調査とイ ンタビュー調査の二種類行った。アンケートのプレ調査および本調査ならびにインタビュー 調査の実施に際しては、調査方法やデータの取扱い等について、人権問題研究所内に設置する 調査倫理審査会で承認を得ている。一部調査過程には、「『近大発、ポストコロナ社会の設計図』

プロジェクト」 を通じての呼びかけに応じた学生の協力が含まれる(以下「参加学生」と記 す)。

アンケート調査は、プレ調査として2020年8月3日から9日の期間に Google フォームを用 いて実施し261名の回答を得た。プレ調査の自由回答を参加学生とともに分類化、カテゴリー

「 “オール近大”新型コロナウィルス感染症対策 支援プロジェクト」におけるアンケート

ならびにインタビュー調査の結果から

―大学生が直面した困難の分析と大学による支援の検討―

熊 本 理 抄*

“All-Kindai University Support Project Against COVID 1 9”

From the Results of Questionnaires and Interview Surveys

―Analysis of Difficulties Faced by University Students and Considerations for Institutional Support―

(KUMAMOTO Risa)

1 本調査は、2020年度「“オール近大”新型コロナウィルス感染症対策支援プロジェクト」の助成を 受けたものである。

2 2020年度「“オール近大”新型コロナウィルス感染症対策支援プロジェクト」の提案企画の一つと して実施された(代表者:安田直史・社会連携推進センター)。

*人権問題研究所教授 〔キーワード〕学生交流、居場所、学習意欲、生活自立、地域 連携

(2)

化する作業を経て項目を検討し、さらに参加学生が調査した他大学、他機関の同種のアンケー ト の項目を追加しながら共同研究者 間での議論を踏まえ、「新型コロナウィルス感染症拡大 が学生に与える影響に関する調査」の項目を完成させた。アンケート調査は、2020年11月18日 から12月23日の期間に、Google フォームを用いて実施した。調査対象者は、共同研究者が行 う授業の受講生、さらには共同研究者が所属する学部以外の教員に協力を依頼し承諾を得た当 該教員が担当する授業の受講生であり、1,091人から回答を得た。

インタビュー調査は、参加学生の発案により計画されたものである。したがって参加学生と 教員が二人ペアになり実施した。参加学生、共同研究者、共同研究者が所属する学部以外の教 員を通じて紹介された学生に対し、2020年12月3日から22日の期間に調査を実施した。インタ ビュー当日には、調査の目的、方法、倫理的考慮について調査対象者に説明したのち、同意書 の提出をもって同意したものとみなしインタビューを始めた。インタビュー内容は、先に実施 したアンケートの項目に基づいて構成し、講義、学生生活、日常生活、自分の健康状態、感染 への不安や感染予防、自分の経済状況、将来展望や就職、人間関係、ストレスを含む精神状態、

社会状況の10項目について質問しながら1時間程度インタビューを行った。感染対策の観点か らインタビューは Zoom で実施している。誰がインタビューするのかを明らかにするため、イ ンタビュアーは教員、参加学生ともに冒頭のみカメラをオンにし、その後、全員がカメラをオ フにして実施した。インタビュー対象者は、1 

年生6人、2 

年生2人、3 

年生5人、最終学年 生10人の合計23人である。同意を得て録音した音声データを文字起こしし、文字化されたデー タに基づいて分析を行った。インタビュー内容の確認を希望した調査対象者には確認の手続き を経ている。なお、本稿においてインタビューデータを引用する際には、インタビュー番号に

「学生」を付け表記する。

3 京都ノートルダム女子大学(2020)『オンライン授業に関するアンケート(学生)結果概要報告』

『今後のオンライン授業に向けて学生からの提案』https://www.notredame.ac.jp/news/news/2159/

(最終閲覧日2021年3月30日)、立命館大学学友会(2020)『2020年度春セメスター全学アンケート集 計速報』https://www.ritsumei.club/2020/0928_8962/(最終閲覧日2021年3月30日)、全国大学生 活協同組合連合会(2020)『緊急!大学生・院生向けアンケート』https://www.univcoop.or.jp/

covid19/enquete/index.html(最終閲覧日2021年3月30日)、World Health Organization Regional Office for Europe.(2020). Survey tool and guidance: rapid, simple, flexible behavioural insights on COVID19. https://apps.who.int/iris/handle/10665/333549(最終閲覧日2021年3月30日)。 4 「COVID19および SDGs の時代におけるレジリエントな社会づくりに関する調査研究プロジェク

ト」の代表者である筆者を含む計10名である。

(3)

2.調査結果分析

本稿の目的は、アンケート結果の全体像を概観しつつ、インタビューデータから具体的な語 りを紹介し、大学としての教育活動支援のあり方について検討することである。

 アンケート回答者の属性

表1から表5は、アンケートに回答した1,091人の属性を示す。アンケートは授業内に実施も しくは協力依頼をしたため1年生および2年生が回答者の8割を超えている。4 

年生以上の実 態を十分に把握しているとは言えない点に注意が必要である。2020年4月以降の主な居住先は、

実家が70.3%、一人暮らし(アパート・マンションなど)が25.0%である。

表1 学年

パーセント 度数

32.5 355

1年生

48.1 525

2年生

16.1 176

3年生

2.9 32

4年生

0.1 1

5年生

0.2 2

7年生以上

100.0 1,091

合計

表2 所属学部

パーセント 度数

19.3 211

法学部

4.5 49

経済学部

5.4 59

経営学部

9.6 105

理工学部

14.8 162

建築学部

13.4 146

薬学部

6.2 68

文芸学部

13.0 142

総合社会学部

10.9 119

国際学部

2.7 29

短期大学部

0.1 1

生物理工学部

100.0 1,091

合計 表3 自認する性

パーセント 度数

44.5 486

女性

54.9 599

男性

0.5 その他(回答が難しい/ 6

選択肢に当てはまらないなど)

100.0 1,091

合計

表4 留学生であるかどうか パーセント 度数

1.6 17

はい

98.4 1,074

いいえ

100.0 1,091

合計

表5 2020年4月以降の主な居住先(複数回答)

列の回答 % 応答数

70.3%

814 実家

25.0%

290 一人暮らし(アパート・

マンションなど)

0.4%

5 シェアハウス

0.3%

4 友人宅

1.7%

20 親族・知人宅

0.9%

11 学生寮

1.2%

14 高齢者および/または慢性疾

患を有する人と住んでいる

100.0%

1,158 合計

(4)

 経済状況、健康状況、精神状態(ストレス)

図1は過去3か月の経済状況、健康状況、精神状態(ストレス)を示す。「悪化している」

の割合は「精神状態(ストレス)」が最も高く40.6%である。

図表は省略するが、「経済状況」が「悪化している」の回答は、1 

年生の13.0%に対し3年生 は33.5%と20ポイント以上高い。「精神状態(ストレス)」については学年別で、「悪化してい る」の回答に大きな開きは見られない。居住形態別では、実家暮らしの18.7%が「経済状況」

について「悪化している」と回答し、一人暮らしの同回答は28.6%であり10ポイント近くの差 がある。「精神状態(ストレス)」については居住形態別で、「悪化している」の回答に大きな 開きはない。

図2は、新型コロナウィルス感染症拡大以降の「経済状況」に関する5つの設問について

「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の回答を合計した割合が高いものから順に並べ ている。「今後さらに経済状況が困窮するのではないかと不安だ」の回答が66.2%で最も高い。

図1 過去3か月の経済状況・健康状況・精神状態(ストレス)

図2 新型コロナウィルス感染症拡大以降の「経済状況」について

(5)

また、「経済的な理由による退学や休学を検討したことがある」と回答した学生が18.8%にのぼ る。

図表は省略するが、「交際費、交通費、食費、家賃などお金を節約できるようになった」に 同意する割合は、一人暮らしより実家暮らしのほうが高い(実家暮らし64.6%、一人暮らし 58.3%)。一方、「マスク購入など感染症対策のための出費が増えた」に同意する割合は、一人

暮らしのほうが高い(実家暮らし57.1%、一人暮らし70.0%)。

経済状況について検討する際、大学生として一括化できない状況をインタビューデータは示 す。経済的な変化はないと話す一人暮らしの学生のなかには、収入は減ったが外出自粛で出費 も減ったという者がいた。以前から実家にパソコンやプリンター、インターネット環境があっ た学生と、オンライン授業に備え本人使用のパソコンを新たに購入した学生がいる。実家暮ら しで食費等経済的負担のない学生と、食費不足により栄養を十分に摂取できていない一人暮ら しの学生がいる。仕事や収入の面で新型コロナウィルス感染症拡大の影響を家族が受けなかっ た学生、家族からの支援で経済的負担のない学生がいる一方、そうでない学生の実態を今回の インタビューからは把握することができなかった。必要な講義資料をその都度コンビニエンス ストアに印刷に行き、感染不安と出費を蓄積させている者もいた。

表6は、アルバイトに関する設問への回答である。「していたが、なくなった」、「したいが、

見つからない」、「しているが、時間と収入が減った」を合計すると36.4%となる。「しており、

時間と収入が増えた」が13.2%、「しており、変化はない」が29.8%である。

インタビュー対象者のなかには、飲食店、ホテル、イベント系、塾などの業種でアルバイト をしていた者がいる。コロナ禍で大きな影響を受けた業種でもあるためシフトや給料が減るな か、感染への不安を抱えながらも、生活費や家賃など経済的な必要性からダブルワークをして

表6 「アルバイト」をしているか(複数回答)

列の回答 % 応答数

18.8%

217 していない

6.9%

80 していたが、なくなった

5.9%

68 したいが、見つからない

23.6%

272 しているが、時間と収入が減った

13.2%

152 しており、時間と収入が増えた

29.8%

344 しており、変化はない

1.8%

21 その他

100.0%

1,154 合計

(6)

いる者もいた。一方で、感染への不安からアルバイトを辞めた学生もいる。さらには緊急事態 宣言期間中の出勤で時給が増えた、テイクアウトが増え時間や収入は変化しなかった、と語っ た者もいる。

外出自粛が社会参加を制限し、オンライン授業が学習意欲の維持や人間関係の構築を難しく するなか、アルバイトがそれらの回復に重要な役割を果たしたことを示す語りが次である。

学生14(3年生):社員さんから結構褒めてもらったりとか、応援してもらったりとか、

声をかけてもらうことで、ずっと家で一人っきりでこもっている時よりは社会になじめて る気がして、気持ちはちょっと楽です。(中略)モチベーションとか、自己肯定感。(中略)

やっぱりなんか、バイトをしていることで、人に感謝されたりとか、自分自身がちゃんと 働けてる、人と話せてる、ちゃんと接客できている、みたいなのが、ちょっと自信につな がっていた部分もあったので。

表7は、インターンや就職活動に関する回答結果である。アンケート回答者の8割が1年生 と2年生であり、「まだ始めていない(該当しない)」の回答が78.1%を占める。オンラインに よる就職活動についてアンケートでは、肯定的な意見が5.5%、否定的な意見が11.4%であった。

インタビューではオンラインによる就職活動の利点として、マスク着用や面接官とのアイコ ンタクトが必要でなかったため楽だった、自宅から参加でき安心だった、交通費を節約できて 時間も都合をつけやすい、移動がない分準備ができた、移動時の感染不安を軽減できた、など の意見が出た。一方、視線を合わせることが難しく表情が読み取れない、緊張感が軽減される 一方練習や対策へのモチベーションが上がらない、社員や企業の雰囲気を知ることができない、

表7 「インターンや就職活動」をしているか(複数回答)

列の回答 % 応答数

78.1%

914 まだ始めていない(該当しない)

4.2%

49 インターンシップや就職活動が中止・延期になっている

11.4%

134 オンラインになり、インターンシップや就職活動に

関する情報収集やコミュニケーションに不便がある

5.5%

64 オンラインになり、インターンシップや就職活動に

関して時間とお金を節約できる

0.9%

10 その他

100.0%

1,171 合計

(7)

会社訪問しないままに迎える最終面接は不安だった、などオンラインによる就職活動の難しさ が言及された。

図3は、新型コロナウィルス感染症拡大以降の「自分の健康状態」に関する6つの設問につ いて「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の回答を合計した割合が高いものから順に 並べている。「オンライン授業等による目の疲れがある」が最も高く84.1%を示し、「運動不足 により体力の衰えや体調不良を抱えている」が66.7%、「筋力の低下や体重の増加がある」が65.6%

と続く。

インタビューでは健康状態の悪化や運動不足による体力低下について、23人中17人が言及し た。身体の疲れやだるさ、精神的疲労、視力の低下や目の乾燥、体重増加、食欲不振、腰痛、

頭痛、睡眠不足などである。目の疲れに関しては、オンライン授業の影響だけでなく、在宅で 可能なストレス発散が、テレビ、電子書籍、ゲームといったツールであったことも影響したと 語る者がいた。多くの語り手が、YouTube を見ながらのトレーニング、ゲームを使った運動、

ジョギング、縄跳び、筋トレ、ストレッチ、半身浴、水分摂取、ダンスなど健康状態の改善に 工夫しながらとりくんでいた。

図4は、「感染への不安や感染予防」に関する11の設問について「そう思う」と「どちらか と言えばそう思う」の回答を合計した割合が高いものから順に並べている。「感染対策や衛生 管理を意識しながら生活している」の項目への賛同は9割を超える。「行動範囲や生活圏が狭 くなっている」、「周囲の人間が感染に対して神経質・敏感になっているのを感じる」、「人の目 を気にして行動するようになっている」の項目には8割以上、「健康に対する意識が向上して

図3 新型コロナウィルス感染症拡大以降の「自分の健康状態」について

(8)

いる」、「感染への不安を抱えながら生活している」、「新型コロナウィルス感染症に関し必要な 情報を得られている」、「感染への不安から外出や移動が自由にできなくなっている」、「感染に 対して自分が周囲の人間に神経質・敏感になっている」の項目には7割以上が同意している。

インタビューでは、健康に配慮する意識が向上し体調不良を感じると無理せず休むようになっ た、感染予防を徹底することで体調不良を感じる時が減ったなど、健康に対する意識の向上と 具体的な健康回復に言及する者がいた。一方、もし感染すれば進路への影響が容易に予想され たため恐怖感を抱きながら生活していたという者もいる。また自身の健康以上に語り手が意識 していたのは、自分が感染した場合に周囲の人間に与える影響であり、その不安が吐露された。

アルバイト先の塾で生徒に感染させないよう行動を自粛した、バイト先で感染させてしまう恐 怖心があった、保険や医療の仕事に従事する親とその職場の人に迷惑をかけないよう外出を最 小限にした、受験を控えたきょうだいがいて警戒意識が強くなっていた、周囲に感染させない よう外出したくない、といった語りである。

アンケートでは感染に対して、「自分が周囲の人間に神経質・敏感になっている」と思う回 答者が71.0%であるのに対し、「周囲の人間が神経質・敏感になっているのを感じる」と思う回 答者が80.4%であった。この結果とも関連していると推測できる語りが次である。感染による 自身の「健康」への影響を不安視する以上に「周りの目」が恐怖を与えている点に注意が必要

図4 「感染への不安や感染予防」について

(9)

である。

学生09(最終学年生):自分自身の怖いっていうのよりは、自分がかかってしまった後の 周りの目であったり、周りの人に与える影響っていうほうが怖くて感染意識を上げたって いう感じだと思います。

図5は、新型コロナウィルス感染症拡大以降の「精神状態(ストレスを含む)」に関する8 つの設問について「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の回答を合計した割合が高い ものから順に並べている。「だるいと感じることが増えている」、「モチベーションが低くなっ ている」、「物事に集中しにくくなっている」が7割を超える。

相関分析を行った結果、「自己肯定感が低下している」の項目と次の項目との間に正の相関 が認められた。「感情のコントロールが難しくなっている」(r=.667)、「モチベーションが低く なっている」(r=.593)、「だるいと感じることが増えている」(r=.591)、「イライラすること が増えている」(r=.618)、「物事に集中しにくくなっている」(r=.573)、「憂鬱に感じる日が 増えている」(r=.668)といった項目である。これら項目と「自己肯定感が低下している」の 間に正の相関が認められた(いずれも p<.001)。

外出を自粛し自宅で日夜オンライン授業を受講するという生活が学生の精神状態に影響を与 えたことをインタビューデータから読み取れる。外出自粛が新しいことを始めたり積極的に行 動したりする意欲を失わせた、家に閉じ込められていることがストレスを上げた、オンライン

図5 新型コロナウィルス感染症拡大以降の「精神状態(ストレスを含む)」について

(10)

授業では学習意欲を維持できず集中力を継続できない、生産的なことがなにもできておらず虚 無感に襲われる、といった語りにあらわれる。こうした精神状態が無自覚のうちに蓄積してい るようだと言う者もいた。

さらにこのような精神状態は自己肯定感とも関連することを先述した相関分析の結果が示す。

またアンケートで、「精神状態(ストレスを含む)」と他の設問との相関分析を行った結果、「精 神状態(ストレスを含む)」に関する設問との間に正の相関が認められた設問の範囲は、講義、

学生生活、日常生活、自分の健康状態、感染への不安や感染予防、自分の経済状況、将来展望 や就職、人間関係、社会状況のすべてに及ぶ。学生支援は総合的に行われる必要があると言え る。

一人暮らしだと頻繁に親と会って相談することができない、「がんばれ」という空気感が社 会に蔓延している、大学の友人と直接会って会話や交流をする機会が少なくなった、帰国する 友人が多く連絡や接触ができなくなった、と語られるように孤立感がストレスを増幅している 可能性を読み取れる。ストレス解消法について、学生07は次のように語る。

学生07(最終学年生):結構皆、ちょうど前期は就職活動の時期だったので、お互い支え合っ たりですとか。他にも高校の時の友達とか、地元の友達とかもある意味ネット上でつながっ ていて、電話しようやっていうふうになったりもしましたし。(中略)それこそ結構皆で 電話した時に「ほんまにしんどない」みたいな感じで話したりして、あとはすごく笑った ので、話してると、それがストレス発散になりましたし。そういう面では結構ストレスた まったら友達と電話してみて、みたいなお互い発散し合うっていう状況で乗り切ったこと もあるかもしれないです。(中略)もともと何年も知ってる友達なんで、そんなに顔を見 なくても今どういう顔をしてるのかとかも大体わかるんで。はい。(中略)顔を見なくて も話してるだけで笑えてくるんで。

顔が見えなくても電話の向こうにいる相手の顔を想像できる。電話を通じて相手の声を聞け ば笑い合える。声を聞けば辛苦もストレスも発散できる。そのような電話の対話とは異なり Zoom を使ったオンライン空間での関係構築や対話の限界を指摘した語りが次である。

学生02(最終学年生):学校に行って対面授業を受ける場合は、あの、周りの学生と、周

(11)

りの学生が先生と、なんて言うか、日常の会話をする時間がありまして。(中略)大した 用事とか、大したことではないです。ただあの、くだらない会話とか余計な会話とかその 時間だけで日本語能力がすごい伸びるんです。でもコロナ以来はそういう日常の会話がな かなかできないので、あのなんて言うか、わざと別に用事がないとたぶん他者とあんまり 連絡しない。Zoom とかわざわざ開いて会話する、たぶんしないので。(中略)コロナ以来 は他者と会話することが非常に少なくなっていて、でも改めて他者と会話する時間とか、

他者の大切さを認識しましたね。(中略)他者と会えないこそ、やはり他者の存在がすご い大事だなと認識しました。

大学という場で周囲の人間と無用に思える内容を交わす日常の余白部分にある他者との関係 性が生みだす対話と、用事を必要とし会話と関係性の機会をつくるためにツールを能動的に用 い意識的に場をつくりだすオンライン空間の対話では、他者の存在認識が異なる。それが言語 を通じた自己認識にも影響を与えるという重要な指摘である。

 日常生活、人間関係

図6は、新型コロナウィルス感染症拡大以降の「日常生活」に関する6つの設問について

「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の回答を合計した割合が高いものから順に並べ ている。「自宅で食事をとる機会が増えている」が87.6%、「自由な時間や好きなことをする時 間が増えている」が74.3%、「居住している都道府県外や海外への移動制限にストレスを感じ る」が73.5%である。図表は省略するが、実家暮らしと一人暮らしの回答に差が大きいのは、

図6 新型コロナウィルス感染症拡大以降の「日常生活」について

(12)

「帰国・帰省ができなくて困る」(実家暮らし29.3%、一人暮らし68.0%)、「食生活や栄養バラ ンスが乱れている」(実家暮らし45.5%、一人暮らし65.2%)である。

インタビューではオンライン授業の利点および日常生活の変化として、通学中の感染や通学 費の心配をする必要がなかった、1 

限がオンライン授業になり睡眠時間を確保できた、友人と 遊ぶ時間がなくなり規則正しい生活になった、通学やアルバイトがなくなったことで時間の使 い方を工夫し新しいことを始める機会になった、資格取得や試験対策の勉強に励んだ、計画を 立てて勉強するようになった、といった意見が出された。

一方の欠点および変化として、日常の時間軸が混乱し昼夜逆転している、怠慢な生活で疲れ がとれなくなった、課題が増えて生活リズムや睡眠サイクルが乱れた、大学に行かなくなった ため生活リズムが崩れ睡眠の質が低下している、自堕落な生活をしたり時間を持て余したりし た、朝起きる時間が遅くなり体がなまってきている、自分次第のペース調整が逆に生活リズム を狂わせているなど、生活習慣、睡眠の質、食生活、運動習慣の乱れが指摘された。学生19は、

外で活動しない日常生活はメリハリがなく「ていたらく」になっている、家事や食事などが疎 かになり気力がない、睡眠も含めて生活全般が課題の提出を中心に動いている、として次のよ うに語る。

学生19(1年生):私の場合は下宿でこっちに越してきて生活しているんですけど、一日 を全部家の中で過ごす。で、土日も課題とかがあるので、あまり家から出ることもなくっ て。うーんと、本当に布団と勉強机を行ったり来たりするっていうなかで。(中略)なん となくどんよりとした気持ちで一日中を過ごすという感じになってきました。(中略)な んか無気力な時間がどんどん増えていっているなという感じがします。(中略)もう自分 ではカバーできなくなりつつあるというか、もうなんかどこから整えていけばいいのかっ ていうくらい、ほんとに全般悪いって感じですね。

学校に通うきょうだいや近所の子どもたち、毎日通勤する親や会社員など、多くの人間が日 常生活を取り戻していくなかで、大学生である自分だけ「置いてけぼり感がすごい」と学生19 は語る。社会からの孤立と自宅にこもった生活が、学生19の生活習慣やメンタルヘルスに強い 影響を与えている。

他方で当初は混乱や当惑のなかにあった日常生活も1年が過ぎ、その生活に順応していると

(13)

語る者もいる。最初苦痛だったことが麻痺していく、皆同じ状況だから仕方がないと割り切っ た、慣れてきているのが怖い、ただ流れているだけの感覚になっている、コロナだからと諦め たり義務として受け入れていたりする、といった語りである。そうした日常生活が学生にどの ような影響を及ぼしているかを次の語りが示す。

学生17(1年生):普通の大学生活を送ったことがないので、もうなんか感覚的にはもう 大学とはこういうもんみたいな。(中略)体はそういうふうになってしまっているのかなっ ていうふうに感じていますよね。

学生19(1年生):1年近くこの生活を続けているから、なんか自分がどれくらいストレ スを抱えているのかっていうのに気づかなくって。(中略)本当に日常生活、日常生活っ て、この生活をしていると気づかないんですよ。なんか、無気力になっていくだけで、辛 いとか悲しいとかも。人に会うからこそ初めて、なんか、なんて言うんだろう、気づける というか。(中略)楽しいもないし、悲しいもないし、なんにもないみたいな感じ。なん か、あの、まあ、生活のなかで授業受けて、課題やって、寝て起きて食べて、のなかにな んにもないじゃないですか。なんて言ったら、なんか感情が動くところがないから。でも たぶんストレスはちょっとずつたまっていってて、気づかないんですよね。なんか、なん かもうこれ以上、一人で生活していたらやばいなって自分で思っているんで。

人が自己の感覚、感情、身体、精神、意欲を意識化するには、他者の存在が必要であること を学生の語りは示す。そして大学という場はそうした意識化の機会を提供してきたと言えるだ ろう。

図7は、新型コロナウィルス感染症拡大以降の「人間関係」に関する11つの設問について

「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の回答を合計した割合が高いものから順に並べ ている。「コミュニケーションや交流の機会が減った」、「友だちに会いたいときに会えなくなっ た」、「家族や友人の大切さに気付いた」、「人との物理的距離や接触を常に気にしなければなら なくなった」が8割を超え、「SNS 上でのコミュニケーションやオンライン上の交流が増えた」

が7割を超える。図表は省略するが、「頼れる人や相談できる人がいない」の回答は、学年別

(14)

では1年生が最も割合が高くて49.6%を示し、居住別では実家暮らしより一人暮らしのほうが 高くて48.6%である。

「家族と過ごす時間が増え摩擦が増えた」のアンケート設問に同意した割合は33.6%であった

(図7)。インタビューでは、コロナ禍が家族関係にもたらした影響を語る者がいた。学校や職 場に通うなど日常に戻っていく家族構成員との間に齟齬が生じる、家にいる時間が長くなり家 族とのトラブルが起きる、勉強したくても家にいる時間が長くなると家事責任が増える、親の

「コロナ疲れ」の影響を間接的に受ける、といった語りである。

さらには、「面倒な交流やコミュニケーションをとらなくてよくなった」のアンケート設問 に58.9%が同意している(図7)。友人関係に生じた変化については、インタビューで次のよう に語られた。

学生14(3年生):大学の子とはあんまり、本当に特定の子としか連絡をとらなくなったなっ て感じです。(中略)露骨な言い方になるんですけど、話したくない人と話さないように、

かなりそれでストレスはなくなったな、というのは。

学生15(最終学年生):もともとあの、LINE とかで連絡とるわけじゃないけど、会ったら 図7 新型コロナウィルス感染症拡大以降の「人間関係」について

(15)

話す程度の子たちと、なんだろう、コミュニケーションがなくなったことが変化ですかね。

(中略)やっぱり世間話するくらいの人は本当にゼロになったような感じです。(中略)そ こまでなんか、LINE してまであの、話したいとは思わないけど、でも時々会うと嬉しい、

なんていうの、楽しみがなくなってしまったので、それはちょっと悲しいな、というふう に感じています。

学生13(最終学年生):友人も友人で何かしら、そのコロナで大変ななかでしんどい思い をしているかもしれないところにこういう相談をしていいのかなみたいな、戸惑いはあり ました。(中略)人の相談にも乗りたいし、自分もしんどい時はしようっていう気持ちに ちょっと変わってきて。変わりましたね。

学生19(1年生):なんなら授業に関することで聞いてもいいとか、連絡しようねって対 面の時に結構言って別れることとかあるんですよ。わからないところ LINE するねって、

結構皆言うんですけど、全然しないですね。(笑い)

学生11(最終学年生):疎遠になるので、普段仲が良かった子でも、授業でも一緒に隣で 授業を受けてた子でも、結局オンライン授業になったせいで授業内でも結局しゃべること もなく、終わったり。なんでしょうね、もう、そうですね、仲良かった友達が結局、たま に LINE するくらいの関係になってしまいましたね。(笑い)(中略)なんか、一緒に帰っ たりしてるからこそ、なんか二人の話題とかも増えて、あの時の話やけど、とかで LINE したりとかするので。会わんかったら、なんやろ、こんなことも伝えんでええかなって思っ ちゃうんですよね、なんか。普段やったら伝えてたであろうことも言わなかったりします。

大学という場は、面倒で厄介な人間関係、顔を合わせて挨拶をし世間話だけをする間柄など 多様な距離感と境界線を保ちながら友人関係を構築する場であった。一定の関係遮断は、スト レスの主要因である対人関係から解放される一方、喜楽といった感情を味わう機会も失ってし まう。

不安と困難課題の共有は、同様の状況に置かれた友人への相談のハードルを下げ関係性を強 化する場合もあるという。他方で SNS などのコミュニケーション・ツールは、対話が成立し

(16)

ている関係性においての副次的なもの、対話を成立させる補完的なものにすぎず、その前提で ある対話を成立させる共有経験とそのための場が必要であることを語りは示す。

 将来展望や就職

図8は、新型コロナウィルス感染症拡大以降の「将来展望や就職」に関する6つの設問につ いて「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」の回答を合計した割合が高いものから順に 並べている。「先行きが見えないことによる不安がある」、「就職できるかどうか不安である」、

「就職先が安定しているかどうか不安である」という回答は8割を超えている。図表は省略す るが、学年別ではこれら設問について同意する意見は3年生の割合が高い。

インタビューでは、内定取り消しを不安視する者、就職の志望分野を変更した者がいた。企 業による採用状況や日本社会の経済状況が及ぼす影響について次のように語る。

学生04(最終学年生):外国との交流がないから、外国人を採用しないような企業も多くなっ たので、いつもよりは大変だったと思います。(中略)やっぱり中止になる企業が多くなっ たので、中止に、ある業界が中止になったら、またその業界を狙っていた人が他の業界に 就職しようと行ってしまうので、なんかなかなか難しくなるのが一番大変でした。

学生18(2年生):結構、そのコロナ前と比べて就職率がかなり減っているというか、採 用する人材を極端にもう減らしているという企業が結構増えているので、そこについてそ

図8 新型コロナウィルス感染症拡大以降の「将来展望や就職」について

(17)

の、就活がちゃんとうまくいくのかなとか、その、企業をどうやって選んでいけばいいの かなっていう不安はあります。

一方で、コロナ禍だからこそスキルや先見性を高める努力が求められると語る者もいる。

学生16(2年生):ゼミを考えるのも来年のコース選択を考えるのもやっぱり、真剣、よ り真剣に考えるようになったというか。(中略)イベントに参加させてもらって自分のス キルアップをこう考えたり。今コロナ禍だからこそできることがあるんやったらやろうっ ていうふうに思うようになりました。

就職活動については先輩やキャリアセンターから情報収集をしたり、友人と Zoom を使って 企業研究をしたりする者もいた。インタビューで指摘されたのは、就職活動に必要な情報とサ ポートである。オンライン授業への移行や入構規制を受け、先輩から情報や助言を得る機会を 失った不安が語られた。またコロナ禍がもたらした就職活動の変容に先輩の経験や助言が生か されない困難も語られている。

学生16(2年生):授業、何とったらいいですかって聞くのも先輩で、インターンどうい うところに行っていたんですかとかって聞いていたのも先輩だったので。やっぱりその先 輩と会う機会がなかったら、聞く、なんか情報量もやっぱり少ないので。はい。そういう ところが不安ですね。

学生19(1年生):本当に何も情報を得られなくって、先輩との交流もないので。(中略)

サークルとかの話も入ってこないし、就職関係も聞けないし。(中略)私たち本当に何も わからないままやってきてしまって、なんか、うん、先輩とのつながりはあったほうがい いと思う。

学生18(2年生):就活がオンライン化していくとなった時に結構その、たぶん就活する にあたって、先輩から結構助言とかももらっていたと思うんですけど、就活生は。それで も結構このご時世になってから、それがうまく、その、なんて言うんでしょう、対策とし

(18)

て生かされないという部分があったと思うので、そういった点は結構、その、なんと言い ますか、まあ、大変だなと感じました。

進学や留学を断念したり予定が立てられなかったり、また社会や経済が混沌とするなかで、

将来に対する漠然とした不安について語ったものが次である。

学生16(2年生):まあ、ただでさえ、東京オリンピック来た後で、私らの年代は不況やっ て言われてたのに、コロナで、コロナが来てもっと不況になって、オリンピックがずれて どうなるかわからないっていう状況なので、なんかその、仕事、どういう仕事に就きたい かとかは、考えたりしたりしても、自分のなかではやっぱり結論が出なくて。(中略)た だでさえ普通に不安もあったのに、ちょっと不安が増えたみたいなところはあります。

不安に押しつぶされないように過剰に考えない、状況がいかに変化しようが自分の努力次第 だと思考転換する、といった語りもある。

学生17(1年生):あまりなんか不安に思い過ぎてもなんかどうしようもないっていうか、

なるように、その時になってみないとわからんっていうのが正直あるんで。なんか不安に 思い過ぎてもなっていう気はしているので、あまり考えていないというか、考えないよう にしているというか、そんな感じでしょうかね。

学生18(2年生):不安に感じている部分に対してまだ直接的に触れあってないというか、

自分の問題としてあまり意識できてないというか、してない部分があるので、でもそこで そのちゃんと、なんと言うんでしょう、自分の問題になる時が来た時にその、そこで結構 対策とかその、工夫とかをして取り組んでいく時に、多少の、その、メンタル面でのその 苦しみというか、そういう面はあると思います。

学生14(3年生):がんばれるかがんばれないかは自分次第だなと思っているので。(中略)

悩み過ぎたら悩んでいるのもあほらしく思えてくるじゃないですけど。そういう時には前 向きな思考に転換することが多い。

(19)

学生22(1年生):まあ、不安はゼロではもちろんないですけど。今それを考えても、ま あ、本当にどうなっているかわからないことなんで。(中略)どっちにしろ自分ががんば らなきゃいけないこと、状況関係なしにがんばらなきゃいけないことは事実なんで。だっ たらそこになんか、いろいろああだこうだって考えているんだったら、そんなとこにとら われないほうが楽しめるし、なんか、いいふうにいくのかなとは思っています。(中略)

やばいから、やばい、やばいだけで、その、その、なんもしないっていうのはないです。

 講義、学生生活

図9は、今年度の「講義」に関する10の設問について「そう思う」と「どちらかと言えばそ う思う」の回答を合計した割合が高いものから順に並べている。

講義について本稿では四点にしぼり、アンケートとインタビューの結果を確認する。一点目 は課題に関するものである。アンケートで91.8%の回答者が「課題の量が増えた」と回答して いる。図表は省略するが、学年では2年生の割合が最も高い。

インタビューでは、課題の量が多く、ストレスや睡眠不足に影響していると言及された。学 生19(1年生)は、土日も課題に追われ、「勉強とその息抜きの境目がほぼない状態」で「平 日の疲れとかは土日に癒して、また平日がんばる、みたいなサイクルが健康的」だが、それが 曖昧になっていると語った。学生17は、課題の多さを次のように表現した。

図9 今年度の「講義」について

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学生17(1年生):その課題みたいなのが出るのも、全部メールとかクラスルームとかの 文字で来て、付属でなんか、ルールとかルールというか概要みたいな資料が添付されてて、

それを見逃さずにチェックして、それをよく読んで、えっとそれを理解して、それどおり 締め切りとかやり方とか全部書いてあるのを守ったうえでやって、提出するっていうサイ クルなんですけど。終わりが見えない言いますか、次から次へと、授業とっている分、次 から次へと来るんですよね。(中略)先生が自分の言葉で課題の説明をされるっていうの を聞いたほうがより理解というか、具体的に、なるほど、あ、こうやったらええんやって イメージが付くと思うんですけど、全部文字っていうのやと、そのしゃべってる、お話さ れている感じからのその先生の印象というか、意図というか、そういうものが見えづら かったりするし。あの、なんやろ、なんか目で見える、例えばノートとか教科書とかボン ボンボンって視覚的に積み上がっていくよりも、なんか、メールとかクラスルームってい う、そういう目に見えないもの、架空のものというか、そういうものが積み上がっていく イメージっていうのは、そっちのほうが重いような感じがして。それがどんどんのしかかっ てくるようなイメージっていうんですかね。なんか机の上になんか教科書とかプリントが ドンって置いてあって、はい、じゃあ、全部でこれだけです、これをいついつまでに片付 けてくださいって言われるのと、目に見えない頭の中というかで、積み上がってくるもの を消化するっていうのは、やっぱり違うかなっていうふうに感じていて。そういう意味で はやっぱり、なんか重い物がのしかかってくるイメージで、重さが感じられます。

眼前に存する具体的な人間から非言語情報も含めて具体的に発せられる発話情報と、オンラ イン上でやりとりされる文字情報とでは理解の方法が違うと指摘する。また積み上げられた課 題の量も身体感覚として視覚的に認識できるものと、バーチャル空間に積み上がってくるもの ではのしかかる重さが異なるとも言う。課題の量のみならず課題提示と提出の過程で、注意、

確認、読解、理解、調整、対応といった複数のスキルがオンライン授業では要求されることを 語りは教えてくれる。そのように次から次へと提示される課題に対し納得できない質のまま課 題を提出するという語り手もいるなか、次のように語る学生もいる。

学生22(1年生):普通に三徹[三日連続の徹夜]とかして授業受けてる時とかあります。

(中略)70時間くらい寝ないで、そのまま授業とかあります。(中略)課題が出てて、それ

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に時間が割けるんだったら、なんか結構こだわりたいタイプなんで。やり始めたら止まら ないっていうか。

講義に関する二点目は、教員との交流についてである。アンケートで「教員との交流が少な い」に同意する回答が80.0%を示す一方(図10)、63.6%が「教員からのフィードバックが増え た」と回答している(図9)。学年では前者の回答は1年生、後者の回答は2年生の割合が最 も高い(図表省略)。インタビューでは、対面授業に比べてオンライン授業のほうが、教員か らの細やかな指導が受けられた、ツールを活用して教員への質問や教員とのコミュニケーショ ンが容易になった、教員のフィードバックが増えた、教員との距離が縮まった、連携は密になっ た、といった発言があった。

三点目はオンライン授業の利点と欠点である。対面授業に比べてオンライン授業のほうが良 かった点としてインタビューでは、通学時間が減った、復習ができる、家のほうが集中できた りリラックスできたりする、自分で進行具合を調整できる、といった意見が出た。アンケート で「自分のペースで学べる科目が増えて快適である」の設問に同意する回答の割合は49.8%で あるが(図9)、1 

年生(45.4%)は3年生(63.6%)より18.2ポイント低い。

欠点は、コミュニケーションの難しさである。アンケートで「オンラインでの授業やコミュ ニケーションは快適である」の設問に対し「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と回答 した割合は全体で35.0%であり(図9)、1 

年生(27.4%)は3年生(41.4%)より14.0ポイン ト低い。インタビューでは23人中16人が、オンライン授業の欠点としてコミュニケーションの 困難性に言及した。第一は、教員への質問や教員による指導など教員とのコミュニケーション の難しさ、第二は、学生同士のグループワークやディスカッションの難しさである。前者につ いては、教員の研究室を訪れたり講義後に質問や相談をしたりしながら学びの機会を積極的に つくっていた学生にとって、Zoom やメールはその代替にならなかったという。学生間のコミュ ニケーションについては、次のように語られた。

学生14(3年生):対面だと気まずくて誰かが絶対しゃべり出すと思うんですけど、Zoom だとたとえ気まずくてもなんかしゃべらなくてもいいや、みたいな雰囲気があるのかなっ て気がします。

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学生02(最終学年生):いつ話したらいいのか、誰に向けて話すのか、他者、複数の人が いるじゃないですか。だからいつしゃべったらいいのか、誰に向けてしゃべっているのか。

私の問題かもしれないですけど、なかなかうまくいけないですね。

学生16(2年生):オンラインって逃げ道がないっていうか、相手に。パソコンに向かっ てしゃべるしかないから。(中略)オンラインでしゃべっていたら、顔、めちゃめちゃ顔 が見えているじゃないですか、周りの背景とかがなく。だから自分、すぐに相手を見てい て思ったんですけど、なんか相手が嫌がってる、嫌やねんなって思っていたらすぐにわか るというか。顔に出にくい子でも、なんか今の嫌やったんかなって気にしてしまう時があっ て。

学生17(1年生):授業でもペアワークやったりとか、他の学生と何か共同作業みたいな。

あの、そういうのでも人間関係っていうのは教育とすごい密接な関わりをもってるのかな というふうに感じているので、今のこのオンラインでのやり方だとそれが非常にやりづら いというか。(中略)あの、やっぱりその画面オンにしてお互いしゃべっていても、なん かあれですよね、顔を合わせて普通に対話するのとは何か違いが、違いというか、なんか ありますよね。顔が見えていたらオッケーとか、そういうことでは全然ないんやなってい うふうな新たに感じたことというかは、すごいあります。

四点目は、困難性とニーズが学年によって異なる点である。アンケートで、「通信環境や機 器トラブルに学修の質が左右される」、「一人で勉強するため、勉強のしかたがわからなかった りペースがつかみにくい」、「パソコン、ソフト、データ、IT を使いこなせるようになった」の 各設問に7割以上が同意する(図9)。いずれの項目も学年では1年生の割合が最も高い(図 表省略)。「一人で勉強するため、勉強のしかたがわからなかったりペースがつかみにくい」に ついては、3 

年生では58.0%だが1年生では79.7%と20ポイント以上高かった。

インタビューでは、講義数の少ない最終学年生がオンライン授業で困ることはそれほどなかっ たと発言したのに対し、1 

年生のなかには、必要な学力や知識が身についていない現状のまま での進級を不安に思う者がいた。一人で授業を受ける不安、自宅で孤独に課題に向き合うつら さ、人間関係を構築する機会を失った心苦しさ、友だちに授業の相談ができない退屈さに言及

(23)

し、1 

年生が置かれた状況に思いを馳せる高学年生の語りが次である。

学生16(2年生):一人暮らしの子やとしゃべる人も少ないと思うんですよ、なんか。そ れはその子にしかわからない気持ちだけど、やっぱりその子たちがつながれる環境ってい うのがたぶん少ないと思うので。例えば入学して1年目とかだとやっぱり友達少なかった りして、情報量得るのも難しくて、というのもあると思うので。その子にもっとしゃべり に行きやとは言えないし。なんかそこがやっぱりつながれる場が社会的にないことに対し ては、なんか悲しさじゃないですけど、どうしたらええんかなっていうふうに感じること は多々ありました。

さらに以下の発言にあるように、高学年生のインタビューデータから解釈できるのは、学校 という空間や友人という関係性が学習への動機づけとなっている点だ。

学生08(最終学年生):僕自身がちょっと家だとやる気が起きないというのがあって。(中 略)結構その、そこの場所に行くからやるっていうのがあって。自分自身、絶対1、2 

回 生だったらさぼっちゃうなっていうのは思っています。

学生10(最終学年生):やっぱ学校に来て友達にどれだけ進んだみたいな、やっぱ話をす るじゃないですか。課題どれだけやったみたいな話を。その際にちょっとやばいかもって 焦ってやってた部分も多少なりともあったんで。刺激は少しはあったほうがよかったかも しれないです。(中略)家の中におったらやっぱり誰とも情報が入ってこなくて、いつい つ終わったとか、終わったでみたいな情報が入ってこない、危機感がなかったんでしょう ね、たぶん。

学生11(最終学年生):もう全然違うなって感じるのが、まずモチベーションの上げ方が、

やっぱり授業、学校で受けていると周りの人たちが勉強しているし、自分もなんて言うん ですか、がんばらなとか、なんて言うんですかね、もっと周りも学校という場ですから、

結構自分も勉強のやる気は出るんですけど。(中略)周りにおるかいないかが結構僕は意 識しちゃいますね。

(24)

高学年生の困難性として、論文のための実験ができない、実験・実習が延期や中止になって いる、オンラインでは実験の授業が理解できないし共同作業ができない、研究につながる学外 の体験ができない、などの語りがあった。高学年生のなかには友人と一緒に Zoom を用いて自 主的に勉強を続ける者もいた。

図10は、今年度の「学生生活」に関する6つの設問について「そう思う」と「どちらかと言 えばそう思う」の回答を合計した割合が高いものから順に並べている。「学生同士の交流が少 ない」が91.3%、「友人をつくりにくい」が84.4%、「大学生活の充実度や満足度が低下してい る」が84.0%、「教員との交流が少ない」が80.0%、「大学の施設・設備を使えなくて困る」が79.2%

と続く。図表は省略するがすべての項目において、1 

年生の回答割合が高い。学年別の回答差 が最も開いたのは、「新しい環境になじめない」の設問で、3 

年生が33.0%であるのに対し1年 生は76.1%を示し、43ポイント以上1年生のほうが高い結果となった。

インタビューでは、語学を学習する機会がなくなったこと、授業が履修登録者のみに限定さ れたため様々な授業を聴講する機会がなくなったこと、図書館の利用が制限されるなど授業以 外の学習の機会と手段を失ったこと、登校規制や学校の施設利用の制限により学習や研究、論 文指導が進まなかったことが語られた。授業前後のたわいない会話、授業後の友人との飲食、

居場所としての大学、大学生としての日常が奪われた喪失感は大きい。授業以外で友人との接 点をつくることが難しかったと次のように語る。

図10 今年度の「学生生活」について

(25)

学生08(最終学年生):家で集中できない子らっていうのは、何人かいるので。そういう 人たちっていうのは学校に、やっぱ家が嫌だから、じゃあどこ行こう、学校でやろうかな、

みたいにたぶんなるのかわからないですけど、まあそこで、今日おったんや、みたいなこ とはあります。

学生15(最終学年生):やっぱりキャンパスに行ったら誰か友達がいて、あのちょっと無 駄、世間話してって感じに過ごしていたので、それがなくなってしまったのがちょっと大 きいかなっていうふうに感じています。

学生19(1年生):あんまり愚痴だったりとか辛いとかそういうことを言える仲でもなくっ て、まだなんか探り探りでやっぱりお互いにいい印象でありたいので、なんか、どうして も楽しい話だったりとか、無難な話しかできないっていうのが実際のところなのかなとい うふうに思います。(中略)本当に、あの入学初日の当たり障りない会話がずっと続いて いるっていう感じで、本当に不思議な感じです。(中略)例えば一緒にご飯食べたりとかっ ていう学生生活だったらあたりまえのことが何一つできていないなかで、どうやって交流 を深めていけばいいのかが全然わからなくて、そんな感じですね。(中略)普通に学校に 行って、普通にちゃんと90分しっかり授業を受けて、それ以外の外と言えばバイトをする 時間だったりとか、友達と遊ぶ時間とかも含めて、もちろん大学生活だと思っているんで。

学生12(1年生):前期は本当に大学の誰とも話さないようなことが。まったく把握もで きてない状況でした。後期に入ってからは多少、対面の授業の時にたまたま席が近くなっ た人とかと、習得した授業が被っていたっていうのをきっかけに課題の教え合いとかって いうので多少、LINE とかでも授業外でのつながるような人が何人かはできたんですけど。

やっぱり周りを見てても、どうしてもかなり狭い、交友関係が狭くなっているような、あ まり広い交友関係が築けてない感じがします。

SNS や Zoom、サークルといったツールや場で積極的に人間関係を広げた1年生もいる。

学生22(1年生):自分らが集まり始めたら、なんか周りも結構同じような感じで集まり

(26)

始めて、みたいな感じです。(中略)不安っていったら確かに不安ですけど、でも、だか ら不安だからっていって何もしなかったら本当になんもない大学生活で終わっちゃうから。

うん、まあ、自分のそれこそ最低限のやれることはやって、まあ、そのなかでできる限り 自分が楽しめればいいなっていう感じなので。

表8はサークル活動や部活動に関するアンケートの回答結果である。「加入予定だったが、

保留となっている」と「加入しているが、4 

月から活動はない」を合計すると20.7%であり、

「加入しており、現在、活動を再開している」が23.1%である。

インタビューでは、サークル活動や部活動ができなくなった、あるいは活動がオンラインに なった、そのため人間関係を広げられない、学生の自主的な活動の場を失ったことでモチベー ションも低下した、といった語りがあった。学生20は、サークルの存在が自身の変化に果たし た役割を次のように語る。

学生20(3年生):自由に開放されてて、誰でもいつでも来ていい、みたいな場所のおか げで先輩と仲良くなれたりとか、先輩からむしろ来てくれたりとか、友達が悩んでいるの を見てちょっとアドバイスをしてあげたりとか。(中略)大学でちょっとサークルみたい なのの、ちょっと幹部的なポジションになった時に自分で考えないと生きれないなと思っ て、変わりました。(笑い)(中略)なんかこのままでいいんかなっていうのを考えた時に、

やっぱりそこで出会う友達とかが、結構自分の好きなように、自分の行動に自分で責任を もって動いているのを見て、なんか、自分で親の言った道を進むってちゃんと決めている のに文句を言うのはなんかすごいよくないな、周りにとっても自分にとってもよくないなっ ていうのをその友達たちが教えてくれたんで。

表8 サークル活動や部活動

パーセント 度数

53.3 582

現在、加入していない

6.2 68

加入予定だったが、保留となっている

14.5 158

加入しているが、4月から活動はない

23.1 252

加入しており、現在、活動を再開している

2.8 31

その他

100.0 1,091

合計

(27)

アンケートで、「大学による学生支援として、あなたが必要だと思うことを提案(要望)し てください」という自由記述の設問には、回答者1,091名から653件の回答があった。KH Coder を用いて共起ネットワーク分析を行ったものが図11である。学費や施設利用料の減額や返還、

金銭援助や経済支援、アルバイト収入が減った学生への生活支援、授業方針や課題提示の検討 といった提案(要望)が挙げられている。

図11で囲みをしたグループに着目すると、学生の交流の機会を設けてほしいといった提案

(要望)についてはインタビューでも言及された。イベントやゼミ活動が中止になり学生の交 流機会が減っている、大学側と教員や学生との間に齟齬が生じている、そうした状況を改善す るために、学生間の交流や学生のニーズ把握といった取り組みが次のように提案されている。

学生01(3年生):前でも留学生のためにいろんなイベント、イベントがあり、私も参加 したけど、もしこれからもそういうイベントがあればもっとたぶん、不安が解消できるか

図11 大学による学生支援への提案(要望)

(28)

なと思います。(中略)例えば留学生のためにサポーター、留学生が日本に来て日本人の 友達が少ない子も多いので、こういう大学の中でサポーターを作るのもいいかなと思って。

(中略)そういう支援があれば、留学生たちもよりいい日本の生活ができるかなと思います。

学生12(1年生):学校側からこう学年関係なく、こう関わりがとれるような手段を提供、

雑談とかができるような手段を提供してくれたらかなりいいんじゃないかなとは日々感じ ています。(中略)個人的には、やっぱり上の学年の方なんかと、もし可能であれば、や りたい□□(専門科目名)とかの話ができたらかなりストレスが……(聞き取りづらい)

やりたいことができて楽しいので、そういうような場を用意してくれないかなとちょっと 思う時があります。

学生19(1年生):ご飯食べ終わったらもう、あたりまえなんですけど、ぱっとマスクし て、常にその辺を意識しながら生活しているので、まあ大学側がもしそういうのを[大学 が学生交流の場を作ることを]してくれたら、私たちはある程度ちょっと緊張もほぐれて、

まあその対面授業以外のところで話せる場があるっていうのはすごい助かると思います。

学生02(最終学年生):皆が何もわからず疲れ果てた状態で授業が進んでいると思います。

学校は教員や学生とコミュニケーションをとって、お互いが何を考えているか、そのニー ズを共有したらよいと思います。

大学生活の充実度や満足度と他の設問の関係を見るためにアンケート回答の相関分析を行っ た結果、「大学生活の充実度や満足度が低下している」と、「大学の施設・設備を使えなくて困 る」の間(r=.552)、「学生同士の交流が少ない」の間(r=.587)に、正の相関が認められた

(いずれも p<.001)。学生同士の交流が大学生活の充実度や満足度を高めるために重要である と言える。後期になり一部対面授業が開始され登校し始めたことで、日常生活や大学生活が 戻ってきた、とインタビューで語った者もいる。

経済支援、学生交流の場、授業方針や課題提示の検討に加えて、大学側へのニーズとしてイ ンタビューで語られたのは、迅速かつ的確な情報提供である。感染した近畿大学関係者に関す る情報が不足しているという語りがある一方、感染対策に関する情報過多がプレッシャーになった

(29)

という語りもあった。錯綜した情報が学生に不安や混乱を生じさせていることを次の語りは示す。

学生17(1年生):親とか周りで大学に行った人が、自分一人もいなくて、周りに。聞け る人もあまりいなかったんで、不安は大きかったですね。(中略)学部によって対応が違 いますっていうことで、当然っていうか学部でも友達が一人もいないから、まだ聞ける相 手もいないですね。(中略)情報が錯綜していて。(中略)なのでちょっと振り回された感 といいますか、そういうものがありまして。(中略)重要な情報をキャッチし損ねている のではないかっていう不安もあったので。えっと正しい情報があるならあるで、ないなら ないで、未定なら未定で、いついつまでに次の情報をアップしますみたいな感じで、えっ とやってほしいなという思いはすごくありました。

 社会状況

図12は、新型コロナウィルス感染症拡大以降の「社会状況」に関する10の設問について「そ う思う」と「どちらかと言えばそう思う」の回答を合計した割合が高いものから順に並べている。

「情報やニュースが信頼できるかどうか不安である」の回答が最も割合が高く72.2%である。

新型コロナウィルス感染症拡大を契機に、社会課題や社会政策、日本の経済や雇用に関心を 図12 新型コロナウィルス感染症拡大以降の「社会状況」について

参照

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