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一様流中で回転する円柱のまわりの流れ

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Academic year: 2022

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

一様流中で回転する円柱のまわりの流れ

種子田, 定俊

九州大学応用力学研究所 : 教授

天本, 肇

九州大学応用力学研究所 : 助手

http://hdl.handle.net/2324/4743584

出版情報:應用力學研究所所報. 46, pp.1-8, 1977-09. Research Institute for Applied Mechanics, Kyushu University

バージョン:

権利関係:

(2)

一様流中で回転する円柱 の まわりの流れ

種 子 田 定 俊 * 天 本

肇**

概 要

一様流中で自身の軸を中心として一様回転を行う円柱のまわりの流れをアルミ粉法 お よ び 電 解沈澱法により調べた.主な実験結果は次のとおりである.(1)流脈が円柱表面から離脱する 点を剥離点と定義するのが最も合理的である.(2)剥離は三次元的に行われる.(3)三 次 元 的

に剥離した流脈は円柱近傍の一つのよどみ点を通過して後方へ流れ去る.

1. 緒

一般的に言えば,非定常流の剥離点の位置を決定することは理論的にも実験的にも不可能である1)2).

よく知られているように,非定常流の場合には流線 (streamline)と流脈 (streakline)は一致しな い流線模様は速度場を示し,物体表面からの流脈は境界層の振舞を示す. しかるに,流線模様は観測 座標の取り方によって変化するので,流線で剥離点を決定するためには,物体表面に固定した座標を採 用 し な け れ ば な ら な い しかし物体表面が変形する場合には,物体表面に固定した座標から観測するこ とは不可能であるから,流線模様を利用して剥離点を決定することは原理的に不可能である.それに対 して物体表面から流出する流脈はあらゆる観測座標に対して不変に保たれるので,流脈が物体表面から 離脱する点を境界貯の剥離点と定義するのが最も合理的であると考えられる。 ところが,物体の速 度 又 は 姿 勢 が 一 定 の 状 態 か ら 急 激 に 変 化 し た 場 合 に は 流 脈 は 物 体 表 面 か ら 非 常 に 小 さ い 角 度 で 離 脱 す る の で,流 脈 の 剥 離 点 を 決 定 す る こ と は 実 際 上 ほ と ん ど 不 可 能 で あ る 結 局 , 非 定 常 流 の 場 合 に は , 流 脈 が 物体表面を離れる点を剥離点として定義することは唯一の意味のある定義法であると考えられるが,そ の剥離点を具体的に正確に決定することは不可能である.

一 様 流中で自身の軸を中心にして一様回転を行う円柱の場合は,その座標から観察するならば流れは 定常である. しかし,この場合,物体表面はその観測座標に対して一定の速度で移動していることに注 意 し な け れ ば な ら な い もし円柱とともに回転する座標から餞測するならば流れは非定常である.

本研究の目的は,流れは定常であるが壁が移動する場合の剥離の状況を調べることである.

2. 実験装濫と実験方法

実験は長さ200cm,幅40cm,深さ40cmの静水槽を使用して行われた.試験円柱は直径1.0cmおよ び2.2cm の二種類が使用された.円柱の長さは約30cmである.円柱には図1に示されるような装置

*九州大学教授,応用力学研究所

**九州大学助手,応用力学研究所

(3)

2  種子田・天 本 第46号

により, 0 2回転/秒 (rps)の回転を与える ことができる.円柱および回転装置は静水槽の 上方を水平方向に移動できる台車に載せられ,

電動機により0  3 cm/sの範囲で移動速度を 変化させることができる.

流れを可視化するために,アルミ粉法および 電解沈椴法が使用された.アルミ粉法は流線模 様を,電解沈澱法は円柱表面から出発する流脈 を可視化する.

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3. 実 験 結 果

図2は円柱に静止状態から回転運動と並進運 動 を 同 時 に 与 え た 場 合 の 流 線 模 様 の 一 例 を 示

す.運動開始の直後には,円柱に並進運動のみが与えられたときと同じポテンシャル流が現われる時

(a) 

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図1 円柱支持法略圏

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(c)  (d) 

図2 静止から回転と並進を同時に開始した円柱の流線模様

回転方向は時計まわり,流れは左から右へ, d=2.2 cm, U=O. 40 cm/s,  N=O.  l rps,  周速V=0.69cm/s,V/U=l.7, R=90.8 

(a) 述動開始後4.Os,  (b) 7. 4s, (c)  10. 6s,  (d) 17. 5s 

(4)

(a)  (b) 

(c)  (d) 

図3 静止から回転と並進を同時に開始した円柱の流脈模様 d=l.Ocm, U=0.50cm/s,  N=O.lrps,  V=0.31cm/s, V/U=0.63, R=50 

(a)  巡動開始後2.3s,  (b)  6. 6s, (c)  13. 2s, (d) 81s 

間の経過とともに次第に回転の彩替が現われはじめ,円柱背部から一偕の渦巻きが放出され,それが後 方へ流れ去り,つづいて円柱背部に新しく第二,第三の渦巻きが発生して死水領域が形成される.

図3は図2の場合と同じく,円柱に回転と並進を同時に与えたときの流脈模様の一例を示す.運動開 始後しばらくの間,流脈は円柱表面から流出しない しかし時間が経過すると,流脈は円柱の斜め前方 の一点から後方へ流出を開始する.注目すべきことは,流脈はただ一点のみから後方へ定常的に流れ出 ることである.

これらの写真からわかるように,円柱に回転と並進を同時に与えた場合,流線模様では円柱表面近傍 の二つの点から流線が離脱して後方に閉じた死水領域が形成されるのに対して,流脈の方は表面近傍の ただ一点のみから後方へ離脱する.それでは,円柱に最初に並進運動のみを与えておき,十分に定常状 態に達してから回転運動を与えた場合にはどうであろうか.図4はその場合の流脈模様の例を示す.最 初,並進のみの場合には円柱表面からの流脈は円柱表面上の二つの点から流出して後方に閉じた死水域

(5)

4  種子田 ・天 本 第46号

(a)  (b) 

(c)  (d) 

図4 一様流中で回転を開始した円柱の流脈模様

d= l cm, U=O. 50 cm/s, N=O. l rps, V=O.  31 cm/s, V/U=O. 63, R=50  (a) 運動開始後0s,  (b) 7.  5 s,  (c) 24. 3 s,  (d) 52 s 

領を形成している.しかし,回転開始とともに流脈が円柱から離れる点は急速に移動し,円柱の斜め前 方の一点に落ち着く.結局,最終的には,円柱に回転と並進と両方を同時に与えたときの流脈模様と完 全に一致する.

図5,図6は回転円柱の上流側において流れに注入された流脈の振舞いを示す.図5は周速度が並進 速度と同じ程度の場合であり,図6は周速度が並進速度の3.1倍の場合を示す.両方とも,円柱の斜め 前方のよどみ点を通過した流脈は後方へ滑らかに流れ去るのみで,死水領域に巻き込まれないことに注

目すべきである.

図 7 は以前に回転円柱の流れを観察したときの流線模様のスケッチである” この図は円柱近傍に A, Bの二つのよどみ点が存在すること,及び壁面摩擦力が消失する点は境界層の剥離と全く関係が無 いことを示している しかし,今回の実験結果から判断すれば,図 7は少し修正する必要があるように 思われる.図3 5から明らかなように,よどみ点Aを通過する流脈はよどみ点Bに到達することがで

(6)

図 5 一様流中で定常回転する円柱の流脈模様 d= 1 cm, U=l. 0 cm/s, N=O. 33 rps,  V/U=l. 05 

6 一様流中で定常回転する円柱の流脈模様 d= 1 cm, U=l. 0 emfs, N=l. 0 rps,  V/U=3. 15 

きないのである.従って,正しい流線模様は,図8の (a)ではなく,(b)又は(c)あるいは (d) でなければならないことになる.その中のいずれであるかは今後のさらに精密な観察が必要であるが,

現在のところでは (b)が最も有力であるように思われる.

ところで,流れの写真を見て生ずる大きな疑問は,なぜ円柱表面のトレーサーがよどみ点Aに到達で きるかということである.流れは定常であるから流線と流脈は一致すべきであるが, Aを通る流線は円 柱表面から離れているように見えるので,流脈も円柱表面からAへ到達することはできないと考えられ

(7)

6  種 子 田 ・ 天 本 第46号

w a l l  s h e a r   =  0  w a l l  s h e a r  =O 

図 7 一様流中で定常回転する円柱の流線のスケッチ

(b) 

(d) 

図 8 一様流中で定常回転する円柱の流線の予想図

るからである. この疑閂を解くかぎは円柱表面近傍の流れの持つ三次元性にあるように思われる.よく 知られているように,静止した流体中で自身の軸のまわりに回転を開始した円柱の表面近傍には整然た る渦輪の列が形成される4) 6).図9はその状況を電解沈澱法で観察した例を示す。図9の写真からわか

(8)

(a)  (b) 

(c)  (d) 

図9 静止流体中で回転を開始した円柱の境界層の振舞 d= 1 cm, N=l. 0 rps,  V=3. 1 cm/s,電解沈澱法 (a)  運動開始後3.5 S, (b)  12. 1 s,  (c) 17. 2 s,  (d) 22. 3 s 

るように,境界層は最初は一様にうすくて安定であるが,一定時間後に厚みにリング状の周期的変化が 現われ,厚い部分は急速に成長して円板状になり,やがて円板の外端は両側に分れてそれぞれ反対方向 の回転方向を持つ一対の渦輪を形成する. このようにして,円柱のまわりには多数の渦輪が並ぶように なるが,時間とともに渦輪は合体して次第に巨大になり,不規則な形に変形し,遂に崩壊し,水槽全体 の流体が乱れる.

一様流の中で回転する場合にも,円柱表面の近傍は粘性の作用によりほとんど静止しているので,静 止した流体中で円柱が回転を開始した場合と同様の渦輪の列を発生する7)8).その結果, 円 柱 表 面 の 流 体と外側の流体の交換が行われ,表面のトレーサーはよどみ点Aに到達できるわけである.

以上の考察から,流脈は円柱表面から三次元的に剥離したのち,よどみ点Aを通過して後方へ流出す るものと考えられる.すなわち,一様流中で回転する円柱の境界層の剥離は円柱表面上から三次元的に 行われるものであり,円柱表面から離れて存在するよどみ点(図8のA点および B点)を剥離点と呼ぶ

ことは不合理である.

謝 辞

本研究は文部省科学研究費の援助により行われたなお,原稿の作製については石村京子さんのお世 話になった.

(9)

8  種 子 田 ・ 天 本 第46号

文 献

1)  Taneda, S.  : Visual study of unsteady separated flows around bodies,  Progress in  Aerospace Sciences 17 (1977) ; to be published. 

2)  種子田,天本,石井,高田:非定常運動を行う楕円柱のまわりの流れの可視化,応用力学研究 所所報, 45号 (1976)61. 

3)  種子田:いくつかの非定常剥離渦の観察,日本航空宇宙学会誌, 20(1972) 600. 

4)  Chen, C.  F. and Christensen, D. K.'. Stability of flow induced by an impulsively  started rotating cylinder, Phys. Fluids. 10  (1967)  1845. 

5)  Kirchner, R. P.  and Chen, C.  F. : Stability  of  timedependent rotational  Couette  flow, Part 1, J. Fluid Mech. 40 (1970)  39. 

6)  Chen, C.  F. and Kirchner, R. P.: Stability  of  timedependent rotational  Couette  flow, Part 2, J. Fluid Mech. 48 (1971) 365. 

7)  Matsui, T. : Flow behind a rotating cylinder, Phys. Fluids 10‑II  (1967) S.  305.  8)  松井:円柱を過ぎる流れの剥離,日本航空宇宙学会誌. 20(1972)  610. 

(昭和52年5月31日受理)

参照

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