研究代表者 玉置
5
0
0
全文
(2) 様. 式. C-19、F-19-1、Z-19、CK-19(共通). 1.研究開始当初の背景 本研究は,今日の消費者はソーシャルメデ ィア上で製品の購入や使用に関する情報交 換を行い,さらには価値観を共有した関係を 構築するようになっているということを背 景としている。このソーシャルメディア上の 情報収集や情報発信が消費を通じたアイデ ンティティ形成の手段となっており,ソーシ ャルメディア上のコミュニケーションの視 点から見た消費者行動の解明が求められて いるという点に根底の問題意識がある。 さらに本研究は,消費を通じて社会的課題 の解決を導く消費に着目をした。研究開始当 初から今日に至るまで,消費者が購買・使 用・処分という消費過程において,その倫理 性・道徳性の追求や他者の支援につながる消 費を選択する傾向が強まっている。環境製品 をはじめとして,動植物の負担なき生産,取 引や流通の公正性を追求した製品を選好し たり,寄付金付き製品の購入など,倫理的消 費(エシカル消費)とも呼ばれ,我が国でも 定着しつつある。 2.研究の目的 このような背景のもと,本研究はソーシャ ルメディアにおける消費者の行動をアイデ ンティティ形成と倫理的消費の視点から捉 え,そこでの情報発信や情報探索を分析する ことを目的とした。とはいえ,当初から両者 を包括的に捉えるのは困難であり,第 1 に, ソーシャルメディアにおける消費者情報発 信や関係の構築をアイデンティティ形成や 自己表現の視点から分析する手法の検討を 目的とした。また研究対象としてオンライン での情報発信が行われるようになった当初 からある電子掲示板など関心に基づいたコ ミュニティにおける情報発信を研究対象と し,その分析手法の検討を目的とした。次に, 当該研究を進めるためには,倫理的消費それ 自体の解明も必要とされた。第 2 の目的とし て,倫理的消費がいかなる動機や心理によっ てなされるのかということを解明すること を目的とし,本研究のテーマである消費者の アイデンティティ形成の視点を中心に分析 を行うことを目的とした。第 3 に,第 1 の研 究で検討した分析手法によって,第 2 の研究 で検討した倫理的消費に関する消費者意識 がどのようにソーシャルメディア上で展開 されるということを解明することを特に近 年の特徴的なコミュニケーション形態であ る個人がアカウントを開設し発信するとい う SNS における情報発信を明らかにする手 法の検討と分析を研究目的とした。 3.研究の方法 まず,第 1 の研究方法については,テキス トマイニングを用いて,消費者のソーシャル メディアにおける情報発信の分析を行った。 食をテーマとするオンライン上のコミュニ ティを研究対象とし,内容だけでなくその文. 章に含まれる感情の分析を試みた。近年では, テキストマイニングの手法や内容や感情を 分析するためのコーパスが多数開発・公開さ れており,それらの有用性の評価を行いつつ 研究を進めた。 第 2 の研究目的である倫理的消費について は,質問紙調査による解明を試みた。また一 部の研究では,消費者の実際の購買データと アンケート調査による分析を行った。という のも人間の道徳的行動については,態度と実 際の行動には乖離が存在すると考えられて おり,アンケートなどによる態度の調査では 十分に倫理的な購買を解明できないと考え られる。また,近年ではビッグデータと呼ば れる大規模なデータ分析の研究への応用も 期待されていることから,小売業より匿名化 した購買データの提供を受け,顧客へのアン ケートと ID よる紐付けし分析を行った。 第 3 の研究については,SNS における情報 発信を分析する上で,膨大に存在する SNS 上の消費者情報を収集し,分析対象となる倫 理的消費に関する情報のみを抽出する手法 それ自体の検討を行いつつ研究を実施した。 また,研究期間初期に行ったテキストマイニ ングの手法についても再検討を行い,より着 実な研究成果に結びつく手法の検討を行っ た。 4.研究成果 本研究の研究成果については以下の通り である。まず研究目的 1 については,生活協 同組合のコミュニティを研究対象とした。イ ンターネットにおける生協の組合員同士の 商品に関する情報交換を組合員の自己実現 という視点から分析した。まず既存研究より, オンライン・コミュニティにおける組合員の 情報発信は生協の商品利用を通じた自己実 現のための自己表現であることを位置づけ た。次に,オンライン・コミュニティにおけ る組合員の商品に関するおすすめ投稿(コメ ント数 68,534 件,投稿者数は 6,530 人)を テキストマイニングにより分析した。分析で は,文章に含まれる感情表現を分析し自己表 現としての意味を検討した。また,コメント における特徴語から,投稿の内容を 3 つに分 類した。その結果,オンライン・コミュニテ ィにおける組合員の商品に関する投稿は(1) 自己にかかる感情表現,(2)商品にかかる感情 表現,(3)生協にかかる感情表現という 3 つの タイプが見られ,それぞれのタイプごとに特 定の商品カテゴリーや家族や要望という特 徴的な話題との関連性があることが明らか になった。まず,(1)自己にかかる感情表現は 商品カテゴリーでみると,非必需的食品,デ ザート・パンカテゴリーにおいて発信される ことが多く,また家族コメントや商品が良い こと起因する要望・リクエストに多くみられ たり,僅かではあるが利用点数の多い組合員 に多いという結果がみられた。このことから, 自己にかかる感情表現によって組合員は,自.
(3) 身の商品利用,とりわけ非必需的な商品の消 費を通じたライフスタイルや暮らしぶりを 発信し,その自らのライフスタイルを他の組 合員に披露したり,共感を得ようとすること で「こうありたい」と願う暮らしをおくって いる自己の姿を実感し,それが自己実現につ ながるという姿が明らかになった。次に(2) 製品にかかる感情表現は,畜産,冷凍・加工 食品カテゴリーに多く見られ,家族コメント 図表3:仮説検証における分散分析の結果 図表3:仮説検証における分散分析の結果 より非家族コメントに多く,良い商品のリク エストというよりは,悪い・不満足であった 商品について感情的に改善の要望を発信す △流行・おしゃれ - 低群 ること,また僅かではあるが利用点数の少な △流行・おしゃれ - 低群 ○流行・おしゃれ - 高群 ○流行・おしゃれ - 高群 い組合員に多く見られた。このことから,製 品にかかる感情表現によって組合員は,コミ ュニティに対して商品の良し悪しの評価を 投稿することそれ自体や読み手の商品購入 の役に立つという自分に価値を求めて自己 実現をなしとげるための自己表現をしてい ると考えられる。最後に(3)生協にかかる感情 表現は,野菜・果実カテゴリーに多く,また 生協に対する期待とその裏返しと捉えられ る失望という感情をもって発言がなされて ※交互作用無し いるということが明らかになった。この生協 ※交互作用無し にかかる感情表現によって,生協にメッセー ジむけてメッセージを発信する自己やその 流行・おしゃれを通じた 流行・おしゃれを通じた アイデンティティ形成意識 サンプル数 メッセージによって生協を動かしていると アイデンティティ形成意識 サンプル数 △低群 ○高群 △低群 32 ○高群 32 低群 いう感覚を得ることにより自己の存在価値 社会的意識 低群 32 32 高群 39 55 社会的意識 高群 39 55 を実感したいという自己実現という心理が あり,そのための情報発信をしているという 組合員の意識が考察された。これに基づき, オンライン・コミュニティにおける組合員の 情報発信は(1)自身のライフスタイルの表現 による自己表現,(2)おすすめコメントの投稿 による自己表現,(3)生協へメッセージを投げ かけることによる自己表現として位置づけ, そこから組合員の 3 つの自己実現スタイルを 提起した。(5.主な発表論文等(9)に所収) 第 2 の研究目的である,倫理的消費につい ては,以下の研究を行った。 第 1 の研究成果として,倫理的製品の購買 行動を消費によるアイデンティティ形成意 識と倹約志向・特売志向という 2 つの節約意 △ブランド価値 - 低群 △ブランド価値 低群 ○ブランド価値 - 高群 識の視点から明らかにした。既存研究のレビ ○ブランド価値 - 高群 ューの結果,倫理的製品の購買に対して消費 者のアイデンティティ形成意識と倹約志向 ブランド価値を通じた がその促進要因となる一方で,特売志向はそ サンプル数 アイデンティティ形成意識 ブランド価値を通じた △低群 ○高群 サンプル数 アイデンティティ形成意識 の抑制要因となるという仮説を設定した。次 低群 △低群 40 ○高群 24 社会的意識 高群 47 47 低群 40 24 に質問紙調査と購買履歴データを用いて,農 社会的意識 高群 47 47 産物を対象とする倫理的製品の購買行動に ついての仮説検証を試みた。倫理的農産物の 購買において, (1)社会的意識と自己イメージ △自律的消費による倹約 - 低群 ○自律的消費による倹約 - 低群 高群 と所有物の一貫性やブランド価値の投影に △自律的消費による倹約 ○自律的消費による倹約 - 高群 よる消費によるアイデンティティ形成意識 が相乗して倫理的農産物が多く購買される ことが明らかになった。一方で(2)社会的意識 が高くとも,特売志向も高ければその購入は 抑制され,特売志向の低さと相乗して多くの 倫理的農産物の購買につながることが明ら かになった。また,(3)倹約志向については,. ※交互作用無し ※交互作用無し 自律的消費による倹約志向. 自律的消費による倹約志向については,その 高低に関わらず社会的意識が高ければ倫理 的農産物をより多く購入する,また貯蓄のた めの消費抑制による倹約志向については,そ の低さと社会的意識の高さが相乗して倫理 的農産物が多く購入されることが明らかに なった。 (下図参照,また,5.主な発表論文な ど(8), (10)に所収). △一貫性 - 低群 △一貫性 -- 高群 低群 ○一貫性. ○一貫性 - 高群. サンプル数 サンプル数 低群 社会的意識 低群 社会的意識 高群 高群. 所有物の一貫性を通じた 所有物の一貫性を通じた アイデンティティ形成意識 アイデンティティ形成意識 △低群 ○高群. △低群47 47 61. ○高群16 16 33. 61. 33. △特売志向 - 低群. △特売志向 -- 高群 低群 ○特売志向 ○特売志向 - 高群. サンプル数 サンプル数 低群 社会的意識 低群 高群 社会的意識 高群. 特売志向 △低群特売志向 ○高群 △低群35 ○高群28. 35 52 52. 28 42 42. 第 2 の研究成果として,本研究では消費者 の他者に対する共感と倫理的消費の分析を 行った。このような倫理的消費は,単に消費 者の社会的意識だけが動因となって行われ ているのではなく,様々な消費者の感情的要 因が折り重なって行われているということ を問題意識として,アイデンティティだけで なく,消費者もつ共感性の高さが倫理的消費 を促進することを明らかにした。今日の特徴 的な消費者行動である倫理的消費に着目し, 既存研究より倫理的消費は単に消費者の社 △貯蓄のための消費抑制による倹約 - 低群 ○貯蓄のための消費抑制による倹約 △貯蓄のための消費抑制による倹約 -- 高群 低群. ○貯蓄のための消費抑制による倹約 - 高群 貯蓄のための消費抑制.
(4) 会的意識によって行われているのでは無い ことを明らかにした。次に,共感が道徳的・ 倫理的意思決定や向社会行動を生む要因と されていることを既存研究から確認した上 で,認知的共感と情動的共感という 2 つの共 感に関する視点を取りあげた。既存研究の整 理をふまえた上で,消費者が持つ共感性の高 さが倫理的製品の購買意図により強い影響 を及ぼすという仮説を設定し,消費者に対す る質問紙調査から得たデータを用いて構造 方程式モデリングによる分析を行った。分析 の結果,消費者がもつ共感性の高さが倫理的 製品の購買意図に影響をもたらすことが明 らかになった。(5.主な発表論文等(6)などに 所収) 第 3 の研究成果として,倫理的購買だけで なく,消費過程における倫理的なコミュニテ ィ参加を明らかにした。研究では,消費者の 倫理的コミュニティの参加について,消費者 の倫理的なライフスタイルによるアイデン ティティ形成意識と共感の視点からの検討 を試みた。質問紙による調査と構造方程式モ デリングによる分析の結果,単なる社会的意 識よりも社会的意識を基盤として自己のラ イフスタイルを消費によって構築しようと する倫理的ライフスタイル意識の方が倫理 的コミュニティの参加を促すことが明らか になった。また,消費者の社会的意識は消費 者特性としての共感の高さが影響すること が明らかになった。 (下図参照,5.主な発表論 文(3)などに所収) ライフスタイル. CFI = 0.784; GFI = 0.964; AGFI = 0.957; RMSEA = 0.072; df = 655; Chi-square = 2859.906; p = 0.000; n = 647. による. アイデンティティ. 0.209***. 商品以外の. コミュニティ参加. 0.113*. *観測変数・誤差変数の表記は省略した。 0.236***. 0.111** 共感. 0.438***. 社会的意識. n.s.. 商品に関する. コミュニティ参加. ***... p < 0.01; **… p < 0.05; *… p < 0.1. また,第 4 の研究成果として,アイデンテ ィティと共感概念を売り手と買い手におけ る利他的意識にまで問題意識を拡大して研 究を進めた。売り手と買い手の共感関係の構 築という視点から検討し,共感関係が従業員 と顧客とって利他的行動・協同的行動や自己 の存在価値の実感につながり,利用や業務に 対する満足感や愛着につながっていること を考察した。さらにその共感関係の構築のた めのマネジメントにおいては基本方針の具 体性,一貫性とそれに基づいた行動の実績が 組織内での共有を促すことを考察した。5.主 な発表論文など(1), (4), (7)などに所収) 第 3 の研究目的については,Twitter にお ける調査と分析を通じて,SNS から特定の商 品カテゴリーの情報発信のみを抽出する方 法をオーガニック食品やフェアトレード食 品の消費者行動を事例に検討した。また,SNS 上の共通の関心や共感関係に基づくコミュ ニケーションの分析のために,同一の商品カ. テゴリーにおけるツイートを消費者の意 識・関心によって分類する方法,今日の SNS で特徴的な自らの言葉に拠らない,いいねや シェアといった反応的な情報発信,画像を用 いた情報発信に着目し,消費者間の関係にお けるコミュニケーションを分析する方法と 実態を検討した。 5.主な発表論文等 (研究代表者、研究分担者及び連携研究者に は下線) 〔雑誌論文〕(計 10 件) ① 玉置 了(2016)「共感関係と自己の実感が 生み出す協同とマネジメント」, 『協同組合研 究誌 にじ』一般社団法人 JC 総研・春号・ 658 号,pp.32-40. (査読無) ② 若林靖永(2016)「『協同の拠りどころ』と しての店の役割‒『集いの館』構想」,『協同 組合研究誌 にじ』一般社団法人 JC 総研・ 春号・658 号,pp.4-15. (査読無) ③ 玉置 了 (2016) 「消費者の倫理的意識に 基づくコミュニティへの参加行動」, 『商経学 叢』 (近畿大学商経学会)第 61 巻・第 3 号, pp. 709-722. (査読無) ④ 玉置 了(2016)「生協における共感関係の マネジメント」, 『生協研究会報告書』(くらし と協同の研究所),pp. 4-14. (査読無) ⑤ Shunya Hamada and Yasunaga Wakabayashi (2015), Gamification in Marketing: An Empirical Study of Differences in User Psychology Among Services Using Gamification, The Kyoto Economic Review, Vol.83 No.1-2, pp. 6-12. (査読有) ⑥ 玉置 了(2015)「消費者の共感性が倫理的 消費にもたらす影響」,『商経学叢』 (近畿大 学商経学会)第 61 巻・第 3 号,pp. 709-722. (査読無) ⑦ 玉置 了 (2014) 「生協における共感関係 の構築」, 『くらしと協同』増刊号(くらしと協 同の研究所),pp. 32-39. (査読無) ⑧ 玉置 了 (2014)「倫理的消費におけるア イデンティティ形成意識と節約意識の影響」, 『流通研究』pp.25-48. (査読有) ⑨ 玉置 了・若林靖永・堀川宣和 (2014) , 「オンライン・コミュニティにおける組合員 のコミュニ ケーションと自己実現」,『生協 総研賞・第 10 回助成事業研究論文集』 (公 益財団法人・生協総合 研究所),pp. 107-128 . (査読無) ⑩ 玉置 了(2013) 「消費者の倫理的意識と ライフスタイル」,『日本商業学会第 63 回全 国研究大会報告論集』,pp.242-252. (査読無) 〔学会発表〕(計 1 件) ① 玉置 了「消費者の倫理的意識とライフ スタイル」日本商業学会・第 63 回全国研究 大会,2013 年 5 月 26 日,立命館大学・びわ こ・くさつキャンパス(滋賀県・草津市).
(5) 〔図書〕(計. 0. 件). 〔産業財産権〕 ○出願状況(計. 0. 件). 0. 件). 名称: 発明者: 権利者: 種類: 番号: 出願年月日: 国内外の別: ○取得状況(計 名称: 発明者: 権利者: 種類: 番号: 取得年月日: 国内外の別: 〔その他〕 ホームページ等 なし 6.研究組織 (1)研究代表者 玉置 了 (TAMAKI, Satoru) 近畿大学・経営学部・准教授 研究者番号:40434849 (2)研究分担者 若林 靖永 (WAKABAYASHI, Yasunaga) 京都大学・経営管理大学院・教授 研究者番号: 7024047 (3)連携研究者 なし (4)研究協力者 堀川 宣和(HORIKAWA, Nobukazu).
(6)
関連したドキュメント
えて リア 会を設 したのです そして、 リア で 会を開 して、そこに 者を 込 ような仕 けをしました そして 会を必 開 して、オブザーバーにも必 の けをし ます
ら。 自信がついたのと、新しい発見があった 空欄 あんまり… 近いから。
話者の発表態度 がプレゼンテー ションの内容を 説得的にしてお り、聴衆の反応 を見ながら自信 をもって伝えて
建設機械器具等を保持するための費用その他の工事
市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本
参加者は自分が HLAB で感じたことをアラムナイに ぶつけたり、アラムナイは自分の体験を参加者に語っ たりと、両者にとって自分の
★代 代表 表者 者か から らの のメ メッ ッセ セー ージ ジ 子どもたちと共に学ぶ時間を共有し、.
わな等により捕獲した個体は、学術研究、展示、教育、その他公益上の必要があると認められ