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連続晶析における粒度分布遷移過程の 状態空間モデルによる分析

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Academic year: 2022

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< 修 士 論 文 >

連続晶析における粒度分布遷移過程の 状態空間モデルによる分析

(要 旨)

滋 賀 大 学 大 学 院

デ ー タ サ イ エ ン ス 研 究 科 デ ー タ サ イ エ ン ス 専 攻

修了年度:2020年度 学籍番号:6019101 氏 名:秋山 浩希

指導教員:河本 薫

提出年月日:2021年 1 月20日

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背景と目的

本研究は、滋賀大学と住友金属鉱山株式会社(以下「住友金属鉱山」)の共同研究である。

住友金属鉱山では、晶析と呼ばれる技術を用いて様々な結晶を製造し、顧客へと納品して いる。納品する結晶は、その品質を担保しなければならない。すなわち、要求される品質 の結晶を製造できなければそれは不良品となり、損失を被ることになる。製造された結晶 の品質は、結晶の粒度などによって管理されている。結晶の粒度とは、結晶の大きさやそ のばらつき具合のことで、粒度分布を用いて表現される。しかし、晶析をおこなうための 晶析装置の運転条件が粒度に及ぼす影響については解明されていないことが多く、粒度の 管理は現場の勘と経験にたよらざるを得ない状況である。このような背景を踏まえて、本 研究の目的は、晶析装置の運転条件が粒度分布にどのような影響を与えるかを分析するこ とによって、粒度の安定化方法、すなわち結晶品質の安定化方法を探ることとした。

晶析と実験

晶析とは、我々が望む品質や特性を持つ結晶を、経済的かつ大量に生産するための技術 である。結晶とはたとえば、食塩や砂糖などの一粒一粒が結晶である。このような結晶の 特性は、個々の結晶の大きさや、集合体の大きさのばらつきなどの性質によって決まる。

たとえば砂糖の結晶であれば、中双糖(ザラメ)のように粗い粒は口内で溶けにくくコク のある味わいとなり、上白糖のように細かい粒は口内で溶けやすく強い甘みを感じる味わ いとなる。すなわち、同一物質の結晶でも、結晶の大きさやそのばらつきなどが異なる場 合、異なる特性を持ち得るのだ。このような理由から、結晶の大きさやそのばらつきを結 晶の粒度(粒の度合い)とすれば、結晶の粒度を管理することが、結晶の品質管理では重 要になるのである。

本研究で用いた実験装置は住友金属鉱山が作成したものである。装置の仕組みを簡単に 説明する。2つの溶液を反応槽へと供給して結晶を析出させ、析出した結晶をカメラで撮 像し、画像処理によって結晶の粒径を計測する。粒径は球相当径と呼ばれるもので測られ、

これは結晶が球体であると仮定したときの結晶の直径のことである。なお、本装置は溶液 を連続で供給し続ける連続晶析をおこなう装置である。連続晶析は主に大規模な生産に適 しており、装置の運転条件を操作することによって粒度を管理している。本研究では、運 転条件の1つである溶液濃度を変化させたときに、粒度分布にどのような影響を与えるか を調べるための実験をおこなった。

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分析

実験によって得られたデータの観察から、溶液濃度を薄い状態から濃い状態に変化させ たとき、結晶の粒度分布も変化していることがわかった。しかし、実験中に撮像した画像 輝度の低下や観測結晶数の低下などといった、溶液濃度の変化以外の変化が起きてしまい、

それらの変化と粒度分布の変化の関連性は不明であった。そこで探索的データ解析をおこ なった結果、粒度分布をいくつかの粒径域に分割し、各粒径域内の大きさの結晶が観測さ れる割合の遷移を見ることにした。なぜなら、分割した粒度分布の各粒径域の割合ならば、

輝度や観測結晶数の低下などをある程度無視できると考えられるためである。また、分割 した粒度分布の各粒径域の割合が濃度変化と同時に変化し、小さい結晶の割合が減少し、

大きな結晶の割合が増加している様子が見られた。以上のことから、溶液濃度を濃くした ことによって結晶の成長が起こっているのではないかという仮説を立てた。この仮説を検 証する1つの手段として、濃度に依存して結晶成長が起こるというモデルを、状態空間 モデルを用いて作成した。状態空間モデルを用いた理由は、分割した粒度分布の各粒径域 の割合について、直接観測できない反応槽の真の割合が濃度に依存して遷移していく様子 を、確率的に観測される各粒径域の割合から推定するためである。モデルのパラメータ推 定は、ベイズ統計学を基盤としたベイズ法を用い、MCMC法によって事後分布を求めた。

結果と今後の課題

MCMC法によって計算されたパラメータの事後分布は、すべてのパラメータについて 収束したと判断された。推定されたパラメータを用いて、構築した状態空間モデルより再 現されたデータは、観測された実験データをよく再現できていた。しかし、一部の粒径域 に対してはうまく再現ができなかった。原因は、輝度低下が分割した粒度分布の各粒径域 の割合には影響がないとした仮定が、誤っていたからではないかと考えられる。今後、本 研究で作成したモデルの検証やパラメータ推定方法の見直しなど、多くの課題が残されて いる。しかし、晶析装置の装置形式や運転条件を考慮したモデル化は今後の発展が期待さ れている。なぜなら、初期に組み立てられた晶析理論のみでは、工業装置内で起こる晶析 現象を理解するためには不十分であるからである。本研究のように観測されたデータより 示唆されることに基づいたモデルを作成することが、新たな晶析メカニズムを発見する一 助となることが期待される。

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参照

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