九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
アフリカツメガエル卵の受精時におけるEmi2による APC/C-Ube2S相互作用の制御
迫, 洸佑
https://doi.org/10.15017/1456000
出版情報:Kyushu University, 2014, 博士(理学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
氏 迫
洸 佑
論 文 題 名: Regulat10n ofAPC/C‐ Ube2S interactions by Emi2
(アフ リカ ツ メガ エ ル 卵 の受 精 時 にお け る 回
mi2に
よupon fertilization of Xe盟 OPus eggs るAPC/C‐
Ube2S相
互 作 用 の 制 御)分 : 区
論 文 内 容 の 要 旨
脊 椎 動 物 の成 熟 卵(未受 精 卵)は 、 二 回 の 連 続 した 分 裂 期
(M期
)を経 て 第 二 減 数 分 裂 の 中期 (Meta‐II)で細胞 周期 を停止 させ 、受精刺激 を待つ。Meta‐II停 止 は未 受精卵 の単為発 生抑制 のため に非常 に重要 な機 構 で あ り、細胞分裂停 止 因子(CSF i cytostatic ttctOr)に よって 引き起 こ され る こ とが 分 か っ て い る。CSFは
、E3ユ
ビキ チ ン リガ ー ゼ で あ る後 期 促 進 因子(APC/C i anaphase
promoting complex/cyclosOme)の 活性 を阻害 し、サイ ク リンBの
分解 を抑制 す る こ とでMeta‐II停 止 を引 き起 こ してい る。CSFの
構 成 因子 は主 に、卵減数分裂特異 的 に活性化す るMos‐A/1APK経
路 、 お よび そ の最 下流 に位 置 しAPC/C抑
制 能 を持 つ Emi2(Early mitOtic inhibitOr 2/別 名Erpl:Em主
1related protein l)で あ る。 そ して、受精刺激 後 は
Emi2と Mosが
分解 され 、APC/Cが
活 性 化す る こ とでサイ ク リンBの
分解 が起 こ り、結果 と して細胞周期 が進行す る。Emi2が APC/Cを
抑制す る際 には、自身 のC末
側 に存在 す るdestructiOn bOx(D‐ box)に よってサ イ ク リンBな
どの基 質 の結合 を阻害 し、zinc‐binding region(ZBR)で APC/Cの
ユ ビキチ ン リガー ゼ活性 を抑制す る こ とが知 られ てい る。 また、それ らの部位 が機能す るためには、Emi2の C末
端 に存在す るRL―ta主1と い う配列 が直接APC/Cと
結 合す る こ とが必 要 で あ るこ とも知 られ てい る。APC/Cは 14個
のサ ブユ ニ ッ トKAPCl―APC15,APC9は
存在 しない)か らな る巨大 な複合 体 タン パ ク質 で ある。APC/Cは
、サ イ ク リンBや
セ キュ リンの様 な細胞周期制御 因子 のポ リユ ビキチ ン化 を行 い、26Sプ
ロテ ア ソー ム依存 的 なタンパ ク分解 を促進す る役割 がある。脊椎動物 を含 めた高等 真核 生物 にお い て 、APC/Cは Kllを
介 したユ ビキチ ン鎖 の伸長 を行 うこ とが知 られ てお り、そ の 伸長 反応 にはE2ユ
ビキチ ン結合酵素で あ るUbcH10と Ube2Sが
関与 して い る こ とも知 られ てい る。UbcH 10は
主 に基 質 に対す るモ ノユ ビキチ ン化 (も しくはポ リユ ビキチ ン化 の開始)に
関与 し てお り、Ube2Sは
ユ ビキチ ン鎖 の伸長 に関与 してい る。しか しなが ら、過去 の研究 において、Ube2S
は細胞種 によって必要性が異なること、紡錘体チェ ックポイン トか らの脱出時にのみ重要性がある ことな どが判明 していた。 また最近の研究か ら、ツメガエル卵において、
UbcHloに
よるサイ ク リ ンBlの
複数力所へのモ ノユ ビキチン化 のみでも、26Sプ
ロテア ソーム依存のタンパ ク分解が起 こ ることも明 らかになってきてい る。以 上 の こ とか ら、他 の生物 学 的 に重要 な時期(例えば脊椎動44J卵の受精 時)にお いて も、サイ ク リ ン
Bの
分解 にUbe2Sが
何 らかの役割 を果 た してい る可能性 が考 え られ たた め、今 回筆者 はMeta‐II停 止 時 の ツメガエル 卵 の抽 出液(CSF extract)を 用 い てその解析 を行 った。その結果 、受精刺激後 の サイ ク リン
B分
解 時 にお け るUbe2Sの
役 割 や 、Emi2と Ube2Sの
相 互排 他 的 なAPC/Cへ
の結合性(Meta"II停 止 時 において
Emi2は Ube2Sと
競合 しAPC/Cへ
の結合 阻害 を引 き起 こす)、お よび結 合 してい るAPCサ
ブユ ニ ッ トが明 らか になったので報告す る。受 精 刺 激 後 の サ イ ク リン
B分
解 に はUbe2Sが
必 要 で あ る今 回 の研 究 を行 う上 で
Ube2Sと UbcHloに
対 す る特異 的 な抗体 を外注 し、その抗 体 を用 いて解 析 を行 った。幸い な こ とに、外 と した抗体 はCSF extract中
にお け る内在性Ube2Sお
よびUbcH lo
の免疫沈 降(IP)が可能 で あ り、 なお かつ 中和抗体 として も使用 で きるもので あった。まず 、
Ube2Sお
よびUbcH10そ
れ ぞれ の depletiOnと addしback実
験 を行 い 、受精刺激 後 のサイ ク リンBの
急 速 な分解 にUbe2S(お
よびUbcH10)が
必 要 で あ るこ とが分 か つた。また、抗体 を中和 抗 体 と して使 用 し、受 精 後 にお け る精 子 核 膜 形 成 の遅延 が確 認 で きた こ とか ら、Ube2S(お
よびUbcH10)の
生理 的意義 について も確認 す ることがで きた。受 精 刺 激 後 に お い て
APC/C‐ Ube2Sの
結 合 が 増 加 す る│
APC/Cの IPを
行 う際 には、 コアサ ブユ ニ ッ トで あ るCdc27の
抗 体 を用 い るのが一般 的 であ るも そ こで、受精刺激 前後 にお け るUbe2Sお
よびUbcHloの APC/Cに
対 す る結 合 を、Cdc27‐IPに
よ つて確認 した ところ、Ube2Sの
結合 が受精 後 に約5倍
も増加 す るこ とが判 明 した(UbcH10の
結 合 は検 出で きず 、これ は過去 の知 見 と一致 していた)。 また 、この結合上昇 はEmi2の
分解 に同調 して 起 こって い た。Emi2は C末
端 の RLtttailを 介 してAPC/CttUbe2Sの
結 合 を 阻 害 して い るEmi2の
分解 に伴 って APC/C‐Ube2Sの
結合 が増加 していた こ とか ら、筆者 は APC/C‐Emi2の
結 合 と何 らかの相互 関係 が あ るので はないか と仮説 をたて解析 を行 った。Emi2 depletiO五 、お ょび結 合 阻害剤 に よって APC/C‐Emi2の
結 合解 離状態 を擬似 的 に作 り出 した ところ、受精刺激 が無 い に も 関 わ らず APC/C‐Ube2Sの
結 合 上昇 が見 られ た。 また、Emi2の C末
を含 んだ組換 えタンパ クを大 腸 菌 に よって作製 し、Cdc27‐IP時
に過宋Jに加 え る と、受精刺激後 の APC/C‐Ube2Sの
結合 増加 が抑え られ た。 さらに、化学合成 したRL白tailペプチ ドを用 いて も同様 の結果 が得 られ た。
過 剰 な
Ube2Sの
発 現 はAPC/C‐ Emi2の
結 合 を 阻 害 す る過 去 の知 見 にお いて、
Ube2Sの C末
端 が APC/C‐Ube2Sの
結合 に必 要 で あ る こ とが分 か っていた。そ こで、
Emi2と Ube2Sの C末
端 を比較す る と、Ube2Sが Emi2の
RL‐tailに 酷似 した配列 を持 つてい る ことが判 明 した。 さらに、Ube2S C末
の組 換 えタンパ クを大腸 菌 で作製 し、Cdc27‐IPの
際 に濃 度 を振 って加 える と、その濃度依存 的 に APC/C‐Emi2の
結 合 が減少す るこ とが分 か つた。ま た 、Ube2S C末
タ ンパ クをCSF extractに
直接 添加 す る と、CSFリ
リー スが 引 き起 こ され る こ と、さ らには
C末
端 を欠 損 させ た場合 にはCSFリ
リー スが起 こ らない こ とが判 明 した。 また、Emi2
と
Ube2Sの APC/Cへ
の結合力 を比較 した場合 、Emi2の
結合 力 が10倍
以 上 強 い こ とも分 かった。Emi2と Ube2Sは
そ れ ぞ れAPC10に
対 して 結 合 、 お よび 競 合 す る最後 に、
Emi2と Ube2Sが APC/Cの
どのサ ブユ ニ ッ トに対 して結合 してい るか を、in vitroのmRNA翻
訳 シ ステ ム で あ る ツサ ギ網 状 赤 血 球 の無 細胞 抽 出液(RRL)を
用 い て解 析 した。14個
のAPC/Cサ
ブ ユ ニ ッ ト全 て のmRNAを
そ れ ぞ れ 発 現 させ 、Emi2お
よびUbe2Sの
組 換 え タ ンパ クでPull‐
dOwnし
た と こ ろ 、APCloの
み が結 合 す る こ とが 分 か っ た(APC10は APC/Cの
コア クチベ ー ター で あ るCdc20と
協 調 して基 質認 識 を行 うこ とが 知 られ て い るサ ブユ ニ ッ トで あ る)。以 上 の結 果 か ら、回
m12は
受 精 刺 激 前 にお い て 、 自身 のC末
端 配 列(RL‐ tail)を介 してAPC10ヘ
結 合 し、