九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
学校から職業への移行の国際比較
吉本, 圭一
九州大学助教授
http://hdl.handle.net/2324/18518
出版情報:日本労働研究雑誌. (457), pp.41-51, 1998-07-01. 日本労働研究機構 バージョン:
権利関係:
特集●変わる就職,採用
移行システムの効率性と改革の方向
吉本 圭一
(九州大学助教授)
欧米および日本を対象として学校から職業への移行の国際比較を行った。普通教育中心の 教育拡大を経験する国が多くあるとともに,それらの国々で若年失業が無視できない問題
となっている。他方,ドイツでは,デュアルシステムによる円滑な移行を維持している。
北欧諸国では,職業教育のシェアを拡大する動きもみられる。職業への移行にかかわる政 策について,ドイツのデュアルシステム,北欧諸国における不利益層のための「青年の進 路保障」理念,フランスや英国などの職業教育資格の改革,アメリカなどでの広範な「職 業体験的学習」について検討し,最後に学校が重要な役割を占めている日本の今後の移行 支援の方向性について考察した。
目 次 1 はじめに
ll 社会的関心と検討の枠組み 皿 学校から職業への移行の現実
】V 移行システム改革の方向 V 結論と考察
1 はじめに
「学校から職業への移行」に関する関心が,近 年世界的に高まっている。国ごとに,あるいは教 育段階ごとに,また教育サイドと労働サイドなど 関係する立場ごとに,この関心は多様である。そ れゆえ,その多様な現実と多様な社会的関心のも とでの「移行」にかかわる諸制度の改革が,個々 の文脈に応じてそれぞれ独自に,そして広範に展 開されている。しかし,それらの移行にかかわる 政策が展開されるプロセスにおいて,他の国々の,
あるいは他の段階や領域の改革を参照しあるいは 調和させようとする傾向が多く観察される。また,
そうした調整プロセスは読みとれないにしても,
結果的にみて相互に他の制度に近づこうとするよ
うな方向性が読みとれる場合もあろう。もちろん,
それぞれの国や制度においてまだ社会的関心が欠 落している領域も多く指摘できる。
本稿は,こうした「移行」に関するいかなる国 際的な関心が,どのように発達しているのか,そ うした関心や改革はどのような方向性を指し示し ているのか,移行に関する現実データと政策的取 り組みを国際的に比較するなかで論じることを課 題とする。具体的には,第1に,「移行」につい ての国際的に幅広い関心を整理し,第2に,諸外 国の学校から職業への移行の効率性に関する現実 をデータから比較する。そして第3に,「学校か ら職業への移行」にかかわる支援の政策や改革プ ログラムに関する今日のさまざまの方向性を検討 し,制度特性と改革方向との多様なパターンから 4点を抽出して論じる。そして最後に,わが国に おける今後の政策の可能性についての検討を行う6 特集.変わる就職,採用
学校から職業への移行の国際比較
一一移行システムの効率性と改革の方向一一
吉 本 圭 一
(九州大学助教授)
欧米および日本を対象として学校から職業への移行の国際比較を行った。普通教育中心の 教育拡大を経験する国が多くあるとともに,それらの国々で若年失業が無視できない問題 となっている。他方, ドイツでは,デュアルシステムによる円滑な移行を維持している。
北欧諸国では,職業教育のシェアを拡大する動きもみられる。職業への移行にかかわる政 策について, ドイツのデュアルシステム,北欧諸国における不利益層のための「青年の進 路保障」理念,フランスや英国などの職業教育資格の改革,アメリカなどでの広範な「職 業体験的学習
J
について検討し,最後に学校が重要な役割を占めている日本の今後の移行 支援の方向性について考察した。目 次 I はじめに
E
社会的関心と検討の枠組みE
学校から職業への移行の現実N
移行システム改革の方向V
結論と考察I
は じ め に「学校から職業への移行」に関する関心が,近 年世界的に高まっている。国ごとに,あるいは教 育段階ごとに,また教育サイドと労働サイドなど 関係する立場ごとに,この関心は多様であるO そ れゆえ,その多様な現実と多様な社会的関心のも とでの「移行」にかかわる諸制度の改革が,個々 の文脈に応じてそれぞれ独自に,そして広範に展 開されているo しかし,それらの移行にかかわる 政策が展開されるプロセスにおいて,他の国々の,
あるいは他の段階や領域の改革を参照しあるいは 調和させようとする傾向が多く観察されるOまた,
そうした調整プロセスは読みとれないにしても,
結果的にみて相互に他の制度に近づこうとするよ
日本労働研究雑誌
うな方向性が読みとれる場合もあろうO もちろん,
それぞれの国や制度においてまだ社会的関心が欠 落している領域も多く指摘できるO
本稿は,こうした「移行」に関するいかなる国 際的な関心が,どのように発達しているのか,そ うした関心や改革はどのような方向性を指し示し ているのか,移行に関する現実データと政策的取 り組みを国際的に比較するなかで論じることを課 題とするO 具体的には,第 1に,
r
移行」についての国際的に幅広い関心を整理し,第
2
に,諸外 国の学校から職業への移行の効率性に関する現実 をデータから比較するO そして第3
に,r
学校から職業への移行」にかかわる支援の政策や改革プ ログラムに関する今日のさまざまの方向性を検討 し制度特性と改革方向との多様なパターンから
4
点を抽出して論じるO そして最後に,わが国に おける今後の政策の可能性についての検討を行うo41
ll 社会的関心と検討の枠組み
1 移行についての国際的な関心の高まり
バブル崩壊後,わが国でも新規学卒での就職困 難の問題が顕在化し,「学校から職業への移行」
への社会的な関心が高まってきた。海外でも,学 校から職業への移行の改善が,今日多くの国々の 雇用政策,文教政策上の大きな課題となっている。
すなわち,移民と学業遅滞,早期離学者,若年失 業,パート・アルバイトなどの不安定就業,移行 期の長期化,高学歴化と職業教育の魅力低下,教 育訓練と職業分野の非対応など,社会的・経済的 ならびに教育的な文脈によってそれぞれに異なる けれども,いずれも「学校から職業への移行」へ の関心と重なり合うものとなっている(日本労働
研究機構1997a)。
たとえば,アメリカでは,1994年にその名も まさしく「学校から職業への機会法(Sch・・1−
to.Work Opportunity Act)」が立法化され,コープ
(学校=企業連携)教育,青少年訓練生制度,学校 内の模擬企業,キャリアアカデミーなどの移行プ ログラムを財政的に支援することを通して,とく に,これまで制度的な支援の対象として「無視さ れてきた」中等教育修了で職業へ移行する者に焦 点をあてて,「移行」の円滑化を図ろうというも のである(上西1997)。
オーストラリアや英国では,個々の職業教育改 革も注目されることながら,学校サイドと雇用サ イドの関心を相互に調整していくために,行政の 中央レベルでの組織再編成が行われ,教育雇用省 が発足している(吉本1996および小林1998,46頁)。
OECDにおいても,1997年からスタートした
「初期教育から職業生活への移行に関するテーマ 別レビュー」プロジェクト(OECD 1996c)には,
それぞれに移行にかかわる課題を抱えて,多数の 国がこれに参加している。アジア地域では,
APECもこれに連動するプロジェクトを1998年
から発足させる。
42
2 「移行」検討の範囲
今日の「学校から職業への移行」を国際的に比
較しようとすれば,広義には,OECDの上記プロ ジェクトで採用されている検討範囲と同じく,① 15歳から30歳程度までの範囲での生徒・青年の 社会への移行を視野に入れ,②フルタイムの学業 生活を続けてきた状態からフルタイムでの職業生 活の状態までのそれぞれの若者がさまざまの経験 を経ていく移行プロセスを対象とし,③そこでの 教育・訓練制度や労働市場がそうした移行を円滑 に機能させるためにどのような接続の仕組みをもっ ているのかに注目すること,また,④今日的な状 況において,各国は「移行」に関して何を問題と 考え,何を教育訓練面でのあるいは労働市場面で の政策的な課題とし,いかなる政策的イニシアチ ブが発揮されているのか,を比較検討することが,
研究の枠組みとして採用されるべきであろう
(OECD 1996c, pp. 5−6)o
本稿でも,こうした枠組みを念頭にいれつつ,
主として中等教育段階における移行の準備と移行 支援を中心に論じていくことにしたい。
対象とする国については,本稿では,主として フランス,ドイツ,英国,米国と日本をカバーす る。このことは,OECD(1gg6c)でも指摘すると ころのいわゆる経済大国比較型のアプローチとなっ ているけれども,事例を交えながら検討するため には紙数の制約が生じる。とくに,北欧圏の取り 組みなど注目する点については部分的に詳述する けれども,包括的に表を提示するものではない。
すなわち,5力国を中心とする統計表などを提示 するけれども,それは必ずしも特定の因果関係を 検証したり国ごとの格差を指標化するという性質 のものではなく,それぞれの国の改革との関連を 仮説的に抽出するためのデータとして用いている
ものである。
1皿 学校から職業への移行の現実
1 若年者と成人の失業率
学校から職業への移行について,表1では,ド イツ,フランス,英国,米国,日本の失業率(若 年および成人一般)を比較している。なお,参考と
してデンマークのデータを表示する。日本とドイ
No.457/July 1998
表1 若年者と一般成人の失業率 1979
P5−19歳 25−54歳
1983
P5−19歳 25−54歳
1989
P5−19歳 25−54歳
1994
P5−19歳 25−54歳
ドイツ 男子
落q
2.4 S.7
2.0 R.8
8.8 P1.0
6.3 W.0
4.7 U.2
5.4 V.9
5.8 U.8
6.9 P0.3
フランス 男子
落q
13.8 R2.6
3.2 T.5
20.2 S2.1
4.4 V.7
13.9 Q5.2
6.0 P1.2
21.9 R4.5
9.7 P3.1
英国 男子
落q
23.3 Q1.1
9.4 X.7
11.7 X.2
6.0 U.5
20.8 P6.1
9.8 U.4
米国 男子
落q
15.9 P6.4
3.4 T.2
23.3 Q1.3
8.2 V.7
15.9 P4.0
4.1 S.4
19.0 P6.2
4.9 T.0
デンマーク 男子
落q
16.1 Q6.1
7.6 W.5
7.9 X.5
7.0 W.0
8.5 T.1
6.7 X.0
日本 男子
落q
5.4 Q.7
1.6 P.9
7.1 T.1
2.0 Q.4
8.0 U.0
1.5 Q.2
8.3 U.8
2.0 Q.8 資料出所:OECD(1996a)Table4.3より作成。
ッで,未成年者の失業率は,男女とも一貫して 10%を下回っているのに対して,フランス,英国,
米国では,1970年代品から一貫して若年失業率 はほぼ10%を超えており,とくにフランスの女 子で3割を超す高い失業率がみられる。日本とド イツで,若者の職業生活への移行において効率的 なシステムがあるということが指摘される場合の,
論拠のひとつがこの若年失業率の低さである。
ただし,こうした若年失業率の趨勢は,成人一 般の失業率と連動するものでもあり,それぞれの 時点の各国の景気動向を反映している。つまり,
上述の日面の未成年の失業率の低さは,ある面で 一般的な雇用情勢の良好さの恩恵を受けたものな のである。
そこで,成人一般の失業率に対する未成年の失 業率の比に注目して,その数値からそれぞれの国 の労働市場における若年失業の相対的促進(逆は 抑制)率をみると,多くの国の多くの時期でこの 比(相対的促進率)は1を超えており,未成年の.方 が成人一般よりも高い比率で失業を経験している。
そして,この比をみると,日本の場合には,必ず しも,フランス,英国,米国以上に,未成年が失 業から保護されているとはいいがたい。むしろ,
この比は近年大きくなっており,特に男子では 1980年代末からこの5力国の中でもっとも若年
失業促進率(1989年に5.33,92年に4.15)が高くなっ ている1)。
ドイツの場合には,成人一般の失業率よりも,
未成年者の失業率の方が低くなっている(1992年 の若年失業促進率は男子0.84,女子0.66)。成人の失
業率が上昇してきた1980年代後半から,この
「逆転」現象が観察されており,デュアルシステ ムなどの職業教育・訓練制度による若年失業の抑 制効果について指摘することができる。
なお,デンマークでは,1989年以後に若年失 業率が男女とも10%を下回っており,とくに女 子について,若年失業率の方が成人より低い「逆 転」現象がみられる。
2 学校卒業後の職業への移行
日本の学校から職業への移行の特徴は,以上の 検討からも,若年者一般ではなく,むしろ新規学 卒者が円滑に最初の職業へ移行することにある。
このことは,学校基本調査において,学校卒業直 後の段階で,大多数の卒業者の進路および就職先 などが把握されているという事実からしても,ご く常識的な事柄に属している。ただし,その後の 職業への移行は把握されていない。後ほど分析す るように,学卒無業および学校等の公的機関の支 援なしに「あがきもがき」しながら職業へ移行し ていった層は,単に把握されていないだけであっ て,実態としては無視できない規模になっている
(吉本1996)。
これに対して,学校卒業直後に就職先が決定し ていないことの多い諸外国では,一定の学年段階 や卒業時のコーホート単位で追跡調査を実施して,
43
表2 学校を離れて1年後の失業率
(o/o)
中等後教育 前期中等教育 後期中等教育
大学外 大学
米国 1991 37 12 6 8
英国 1993 15 13 一 一
フランス 1992 57 24 8 12
カナダ 1988
一 一 8 9
スペイン 1991 34 36 13 26
アイルランド 1992 35 24 8 〜 12
スイス 1993 一 一
⁝3
6
デンマーク 1991 9 15 11 12
スウェーデン 1992 16 5
一 一
資料出所:OECD(1996b)Table4.7より作成。
最終的な職業への移行を見届けるという方策を採っ ている。表2は,OECD(1gg6a)が,フランス,
英国,アメリカなど12力国のそれぞれの追跡調 査などによって,学校を離れて1年後の失業率
(一部で調査期間が異なる)を比較したものである。
フランスなどでは,定期的にこうした全国レベル,
全教育レベルでの追跡調査が実施されているけれ ども,他の国々では単発的な追跡調査による場合 も多い。いずれにしても,多くの国々で,「学校 から職業への移行」への関心が高まっていること がわかる。
全般的な傾向として,教育段階が低いほど1年 後の失業率も高くなり,教育段階が上がれば失業 率が低くなっている。ただし,この例外のひとつ が,スペインとフランスにおける,大学と非大学 型高等教育機関との失業率の逆転である。すなわ ち,これらの国々ではアカデミックな教育主体で 職業への準備機能が弱い大学に対して経済界など からの批判が浴びせられている。フランスの場合 であれば,工業短期大学部IUTやリセ専攻科(技 師コース)STSなどが人気を集める背景がこうし た点にある(日本労働研究機構1993)。
もうひとつの例外的な特徴は,デンマーク,フィ ンランド,スウェーデンなどの北欧諸国で,いず れも中等教育段階の離学者の失業率が相対的に低 いことである。この点は別途検討することにしよ
う。
日本については,1986年に実施された雇用職
44
業総合研究所(1g8g)の日米英の青年の就職に関 する国際比較調査が,学校から職業への移行の効 率性を明らかにしている。最初の仕事につくまで に学校卒業・中退から3カ月以上かかった者は,
すべての学歴者を合わせて,日本では5.7%に すぎないのに対して,イギリスで13.1%,アメ
リカで18.2%であった。この移行のプロセスを みても,日本の若者は,平均1.8社に応募して初 学をみつけているが,米国では4.5社,英国では 4.3社に応募している。欧米の若者の方が,多く の試行錯誤をし,日本の若者は確率の高い応募を して仕事の世界に入っている。
ドイツについては,公式の統計や他の国との比 較データがないけれども,若年失業率が成人と比 較して相対的に他国よりも低水準で推移しつづけ ているという事実俵1参照)が,学校からデュ アルシステムを経て職業へ移行していくシステム の効率性を傍証しているとみることができる。
3 移行後の職業生活における定着
学校から職業への移行への社会的関心は,初職 の獲得に終わるものではない。若年期の,離転職 やパート就業などを含む多様な就業経験に関心が 寄せられている。表3は,各国の独自に実施され た調査研究をもとに,OECDが若年期(原則とし て16歳から25歳の範囲,日本では30歳まで)の職業 経験数,職業移動を把握しようとしたものである。
日本とドイツとでは,若年者の初期キャリアに
No.457/July 1998
論文学校から職業への移行の国際比較
おいて平均の移動回数は少なく,英国,米国で多 くなっている。
とくに米国で,就職後もほぼ1年半ごとにひと つの仕事を経験するという頻繁な移動がみられる。
このことが,Osterman(1g8g)らのいう,米国に おける第2次労働市場の特色である「あがきもが
き期(且・undering peri・d)」に相当するというわけ である。
この卜兆獲得以後の「移行期」がどこまで続く のだろうか。若者が長期的な雇用に入れないのか,
入ろうとしないのか。近年の若者の意識や多様な 就業形態がみられる労働市場・経済環境のもとで,
このことは,米国の問題だけでなく,国際的な共 通の関心ともなっている。
OECDは,その「移行」プロジェクトにおいて,
30歳までの範囲を想定している。さらに上の年 齢層は,もはや「移行」期の関心そのものではな い。しかしながら,表4をみると,30歳代後半 で4年以下の短期的な雇用契約で就業している労 働者の比率は,日本や欧州の男子ではほぼ3割以 下と少なくなっているけれども,米国では男子で 4割,女子で6割と多くなっている。Stern et磁
(1gg5, pp.6−7)は,移行期の長期化という観点も考 慮しなければならないと論じている。
4 移行の準備としての教育訓練の多様性と教育拡大
先に指摘したように,若年失業をはじめとする 移行にかかわるさまざまの労働市場の問題を背景 として,移行の前段階としての学校教育や職業訓 練における制度,カリキュラムや指導体制につい ての関心が高まっている2)(Hannan et al.1gg6,
OECD 1996c,日本労働研究機構1997a)。
とくに,表1で示したように,ドイツを除いて,
若年失業率が近年増加し,また成人一般の失業率 との開きが大きくなっている。それゆえ,政策的 にはドイツ型のデュアルシステムの模倣に向かう 傾向が生じている3)。
OECD(1996a, PP.125−126)では,1975−84年お よび1984−92年の問の普通教育と職業教育の在学 者シェアの変化を検討している。その結果,オラ ンダおよび,デンマーク,スウェーデン,ノル ウェーなど北欧諸国で,75年以後に職業教育の
表3 若者の離雨後の平均職業経験数 職業経験数 年平均の職業
o験数
ドイツ 男子
落q
2.6 Q.0
0.29 O.22
日本 男子
落q
1.6 P.5
0.17 O.17
英国 男子
落q
3.4 R.3
0.48 O.47
米国 男子
落q
7.7 U.8
0.86 O.76 資料出所:OECD(1996b)Table4.7より作成。
注:1)年齢は16−25歳,一部は16−30歳。
2)職業経験数は企業間異動による。
3)調査はいずれも1980年代前半までに実施のもの。
表4 30歳代後半の短期雇用契約者比率
(O/e)
年
男子 女子
ドイツ 1984 27.5 38.4
フランス 1986 21.7 27.2 アメリカ 1983 39.5 58.3
日本 1984 16.5 45.3
フィンランド 1985 33.6 41.0 スペイン 1987 26.6 36.2 オランダ 1985 24.2 36.2 資料出所:Stern et al. ed.(1995)Table 1より作成。
注:4年未満の短期雇用契約者の比率。
シェアが拡大している。
しかし,フランス,ドイツ,スペイン,フィン ランド,スイス,トルコの各国ではこの点の変化 はみられない。すなわち,重要な点は,今日まで の教育・訓練制度の発展は,必ずしもすべての国々 がドイツ型をめざして職業教育・訓練を拡大して いったのではないことである。多くの国で共通す るのは,むしろ後期中等教育および中等後教育全 体としての拡大傾向である。このことは,普通教 育中心のシステムにおいて若者の選択が大学等へ 向かうときに職業への移行の困難をもたらすこと もあり,また移行の困難が失業回避の場としてそ うした教育機関への進学・在学を延長させている という傾向もしばしば指摘されている(Raffe l998;
pp. 375−380) o
普通教育一職業教育のシェアについては,フラ ンスなど,普通教育主体の職業準備を行う国で,
この期間にほとんど変化していないことにも注目 すべきであろう。また,日本については,この二
45
表5 日本における各コーホート(中卒年基準)別の「移行」の推計
(o/o)
中学卒業年 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1991
高校非進学 27. 7 16. 5 6. 6 5. 0 5, 4 5. 0 4. 8
高専 O. 3 O. 6 O. 6 O. 5 O. 5 O. 6 O. 6
、高校進学 普通科 中退 2. 2 1. 4 2. 3 3. 4 3. 8 3. 5 3. 2
卒業 高等教育進学 就職 不明
19. 4
16. 5
4. 8
9白− 38. 2
14. 0
4. 9
41. 5 15. 6
4, 5
44. 4 14. 0
5, 7
49. 1
12. 3
4. 7
50. 6
10. 8
5. 1
職業科 中退 2. 0 2. 0 2. 5 2. 9 2. 5 2. 4 2. 2
卒業 高等教育進学 就職 不明
2. 6
22. 9 1. 7
5. 3
25. 0 2. 4
6. 0
22. 4 2. 4
5. 0
19. 9
1. 7
5. 4
16. 7
1. 6
6. 5
14. 7
L2
7. 1
13. 9
1. 6
中卒者計 構成比
実数
100,0 100.0 100,0 100.0 100.0 100,0 100.0
2,359,558 1,667,064 1,580,495 1,723,025 1,882,034 1,981,503 1,860,300 資料出所:文部省『学校基本調査報告書」各丁丁。
注:①中学校卒業年を基準として,卒業者に対するそれぞれ標準的な年数での進学者や就職者を統計より把握し,それらの差をもとに中退者,不明 者を推計。
②高等教育進学者は,現役・1浪・2浪以上の大学と短大,および現役の専門学校。
つの時期で唯一例外的に,職業教育のシェアを一 貫して低下させてきたと指摘されている。
さらに,OECD(1g96c)で言及していないアメ リカについても,在籍者を普通教育と職業教育に 2下するのは困難であるけれども,最終的な卒業 者の履修科目パターンでみれば,全体のほぼ8%
に相当する職業教育専攻者数が近年減少しており,
また彼らの中での職業教育科目の履修比率は2割 に満たない程度にとどまっており,職業教育の長 期的な減少傾向を指摘することができる(u.s.
Department of Educati6n 1996,仙崎編1998,23頁)。
すなわち,全体的な傾向としてまとめてみると,
普通教育を中心として中等後教育を含めて教育拡 大を経験ずる国が多くあるとともに,それらの国々 で若年失業が無視できない問題となっている。他 方で,ドイツでは,世代の3分の2をカバーする デュアルシステムによる円滑な移行を維持してお
り,北欧圏などの一部の諸国では,1980年代以 後の変化として職業教育のシェアを拡大する動き
もみられる。
46
IV 移行システム改革の方向
1 中等教育段階における移行システム改革の比較
このように,学校から職業への移行実態とその
変化を公式の統計データからみると,ドイツ型移 行モデルが安定しており,他の国々,特に普通教 育主体の中等教育システムをもつ国々では,日本 における職業への円滑な移行システムをのぞいて,
効率的な移行システムの形成はあまり進んでいな いようにみえる。
日本における職業への移行の円滑さ,とくに高 卒就職の効率性については,多くの文献で注目さ れてきた(天野編1988,雇用職業総合研究所1989,苅 谷1991など)。しかし,その日本においても,表 1でみたように,若年と成人一般の失業率の格差 は大きくなってきており,学卒者の無業問題も無 視できない規模に達している。この点の推計を進 めたものが表5である。すなわち,1991年の中 卒者コーホートを100%とすると,高校から直接 就職する者が24.7%であるのに対して,高校を 卒業しているけれども学卒で就職せず,かつ高等 教育機関に最終的に進学しなかった者が6.7%あ り,また高校中退で社会に出ている者が5.4%あ る。高卒就職を含めた三者を合わせた36.8%が 今日の高卒学歴での就職の潜在的プールであると 仮定すれば,その職業への移行については,潜在 的高卒プールの3分の2がいわゆる新規学卒就職 という日本的移行メカニズムによってカバーされ ているにすぎないという推計になる4)。
ところで,欧米の諸国が特にモデルをドイツに
No. 457/July 1998
論文学校から職業への移行の国際比較
求める傾向が強いとしても,しかし,ドイツ型の 制度をそのまま移植することが可能なような国は どこにもない。むしろ,普通教育中心の国々では,
移行の支援充実のために,デュアルシステム型の 国々とは異なる政策的アプローチがあるはずであ る。Ainley(lgg6)は,特に,普通教育主体のシス テムを対象として,そこでの職業への移行準備に かかわる実態をさまざまの角度から把握し,各国 の職業への移行支援のプログラムを比較している。
本稿では,.ドイツモデルについてコメントした 後,むしろ,普通教育主導システムにおける移行 支援について検討する。ここでは,日本の職業へ の移行の改革課題を考察するために,各国の職業 への移行にかかわる政策的な努力について四つの 方向から取り上げる。第1の方向は,ドイツのデュ アルシステムであり,第2の方向として,北欧諸 国における「青年の進路保障(Y・uth Guarantees)」
理念である。これは,不利益層のための職業教育 のシェアを拡大し,また,中等教育段階修了者の 職業への移行を円滑化する施策の基礎理念となっ ているものである。第3には,普通教育中心の教 育・訓練制度をもつフランスや英国など,職業教 育資格の改革によって,職業訓練や職業教育から さらに中等後教育への接続性を高めるという方向 性である。そして,第4にアメリカをはじめ広範
な広がりをもつ「職業体験的学習」について言及
したい。
2 ドイツのデュアルシステムを通しての 職業への移行
「学校から職業への移行」に関する国際比較に おいては,これまで,ドイツおよびドイツ語圏の 諸国における,徒弟訓練およびそこでの教育が一 体的に運用されるデュアルシステムがつねに注目 されてきたし,わが国にも多くの紹介がある(近 年では日本労働研究機構1997bおよび岩木1998を参照)。
しかしながら,ドイツの制度の根幹は,ギルド の発達の延長として歴史的に形成されてきた国家 レベルでの連邦,州の深い関与,地域レベルでの 企業(商工会議所等)と学校との連携の緊密さに秘 訣がある。連邦が企業の職業訓練に責任をもって 対応し,州政府が職業学校に責任をもって対応す
るという明確な責任体制とその連携の社会的蓄積 とによって,学校と職業との結合型の職業教育が 実現している。
ドイツでは,中等教育修了後の就職に関して,
「たとえアビトゥアを取っていてもその直後入職 する若者は就労市場統計ではただの未熟練労働者 と見なされ9年間の義務教育を受けた者と同じ扱 いをする」(タイヒラー1996,72頁)とされる。す なわち,デュアルシステム修了者は,国家的な資 格制度のもとで,職業教育の労働市場的価値に関 する明確な社会的認識に支えられており,かつ社 会保障の枠組みにはいるなどの恩恵を受けて,こ うした制度的条件が「円滑な移行」を支えてい
る。
北米諸国をはじめ多くの国々で,若年失業が重 大関心となっている場合には,ドイツ型の職業訓 練の導入が検討され,実験的にさまざまに実施さ れてきた(OECD 1996c, pp.11−12)。しかし,同じく 徒弟訓nV apprenticeshipという用語を用いなが
らも,ドイツ語圏のように教育と雇用における行 政や各機関の役割,雇用者の関与の仕方などを取 り決めている包括性と比較してみれば,それを参 考にしたアメリカなどにおける実験的な徒弟訓練 プログラムは,まったく別物である5)。アメリカ での徒弟訓練の各種プログラムによる経済的な効 果については,Sternらの推計がある。しかし,
雇用拡大から所得増加に至る効果については,い ずれのプログラムについても,あまり芳しいもの
ではないと報告されている(Stern et al.1995, p.121,
および上西1997,P.38)。ただし,ドイツにおいて も,今日,高学歴化をはじめとする,これまでの 制度的慣行を揺さぶるさまざまの社会変動のもと で,システムの「硬直性」にかかわる問題の指摘 が多くなされている(岩木1998)。
3 北欧諸国における学校職業教育と青年の進路保障
1980年代に職業教育の比重を増加させた国々 の中に北欧諸国がある。この職業教育拡充などの 背景に,Hummeluhr(1gg7)は,「青年の進路保 障(Y・uth・Guarantees)」という北欧諸国に共通の 理念があると指摘する。すなわち,Hummeluhr によれば,1960年代から70年代にかけての若年
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失業率の高さに対して,北欧諸国においても,一 般的な教育機会の拡大政策での対応がなされてき た。しかし,この対応は,低所得層や下層階級を,
教育と雇用の機会から置き去りにして,長期的な 失業者を出現させた。このため,デンマークにお いては1979年に長期失業者のための9カ月の雇 用保障政策が導入された。若年失業率が低かった スウェーデンでも,1984年に10%に達した未成 年失業率に対して,伝統的な訓練プログラムでは なく,一般労働市場における雇用を保障する政策 が導入された。これらが北欧諸国での「青年の進 路保障」理念の誕生である。
この概念は,労働の機会保障だけでなく,さら に教育の機会保障にも適用されるようになってい る。すなわち,経済的な理由で後期中等教育や高 等教育への継続的学習を妨げられることがないよ うに,すべての青年の進路を保障するという政治 的な目標として社会的に認知を得ている。1995 年には,フィンランドでは「2000年までの教育 研究に関する開発計画」が策定され,すべての青 年のための後期中等教育段階の定員枠を保障し,
同世代の60−65%に対して中等後教育の定員を保 障することが計画されている。
こうした北欧諸国の取り組みが,若年失業をど のように改善したのか,その因果関係を明らかに するのは容易ではない。ただし,デンマークにつ いては,すでに野中にデータを提示した通り,後 期中等教育における職業教育のシェアが1970年 野末から1980年代前半まで拡大しており,これ とその後の失業率の低下(表1),および中等教育 段階からの移行困難の少なさ(表2)などが観察 できる。すなわち,経済的な不利益層の教育継続 への手段としての職業教育の拡大と,雇用面での 雇用保障とが連動して状況を展開させている可能 性を仮説的に把握できる6)。
4 学習経路Pathwaysの整備,職業教育と 普通教育の威信の対等性
後期中等教育段階での職業への移行準備が,学 校普通教育主体でなされている国々の多くでは,
政策担当者たちは,職業への移行においてメリッ トの大きい職業教育セクターの方へいかに生徒た
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ちを方向づけるのか,困難な現実に直面している。
それは,わが国の職業高校で1970年代の職業教 育の多様化以後に不本意就学が大きな問題となっ てきためと同様であり,普通教育と職業教育の
「評価の対等性(Parity・f Esteem)」の問題ともかか わっている。両者の威信の不平等を改善するため に,進学や就職の道筋をより縦横に柔軟に整備し ようとする方策が,学習経路Pathwaysアプロー
チである(OECD ed.1998,とくにRaffe 1998)。職業 教育から就職だけでなく中等後教育への進学機会 を整備し,また普通教育と職業教育との間の移行 を容易にする方向である7)。
フランスでは,長い伝統をもつ普通教育主体の 学校体系の中に,1985年に,職業リセでの2年 間の課程で職業教育修了証(BEP)などを取得し た者を対象として,上級コースとしての2年課程 を整備し,その資格として「職業バカロレア資格 Bac−Pro」を制度化している。この「職業バカロ レア」は,さらに高等教育への進学という学習経 路も可能となっており,アカデミックな課程と職 業教育の課程との「評価の対等性」を追求してい る。ただし,現実には,多くの改革が,正統的な 普通教育学校体系を前提として,周辺的な職業教 育系列から普通教育系列への接続可能性を高める という結果に帰着する傾向があり,職業教育の社 会的評価は低いままで学習経路における迷路ない し錯綜状態を提示していることも多く指摘されて いる(日本労働研究機構1993,夏目1998)。
イギリスは,従来,学校教育ではもっぱら普通 教育を施し,雇用対策としての職業訓練プログラ ムや継続教育機関は学校教育との適切な関連をも たず展開するという「混合型」とよぶべきもので あった。しかし,EU統合の流れに沿って,これ まで教育・訓練の供給サイドがばらばらに設定し ていた資格制度の標準化を手がけている。とくに,
1992年に導入された「全国一般職業資格(GNVQ)」
は,86年前導入された「全国職業資格(NVQ)」,
および伝統的な「アカデミックな資格系列」と並 んで,それら両者への移行を可能にする第3の系 列として,イギリスにおける相互のヨコの移動が 可能で,かつ対等な三系列による教育制度の再構 築の要として位置づけられている。こうした制度
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によって職業教育の評価を高めていけるかどうか,
その可能性を判断するには時期尚早である。しか し,教育省と雇用省が合併して教育雇用省という 新しい組織をつくっており,教育訓練制度の根幹
における整合性を図る前提条件が整ってきた点は 注目される(小林1998)。
アメリカにおいては,「学校から職業への移行 機会法」を通して,連邦が職業教育の充実と中等 後段階の職業・技術教育への接続・学習継続の拡 大を図っている。すなわち,若者たちを,高卒後,
直接職業生活に導くのではなく,高校からコミュ ニティーカレッジへの進学を円滑にし,これを経 由して労働市場に出ていく,すなわち高卒の周縁 的な労働市場ではなく,より中間的労働市場への 参入を期待している8)。このために,個別のコミュ ニティーカレッジと高校とで,さまざまの教育内 容の接続性の向上のためのプログラムが展開して おり,1990年度には約7%の高校でこうした
「Tech−Prep」プログラムを実施している(Stern et
al. 1995)o
5 職業体験学習とそれを支援する社会的な パートナーシップ
職業への移行にかかわるもっとも基礎的なアプ ローチが,普通教育カリキュラムを職業教育カリ キュラムと「統合」することであり,この統合は,
三つのレベルで議論される(OECD ed.1998など参 照)。すなわち,学習内容におけるアカデミック な教育と職業的な教育訓練の統合であり,またそ の探求の方向性において理論的な学習と応用的・
実践的学習との統合であり,教育・訓練の場にお ける学校と企業との連携である。これらを企業で の訓練を主体に統合したものがデュアルシステム であるのに対して,学校における普通教育主体の システムを主体に統合的な姿を描くとすると,さ まざまの「職業体験的学習」となる。
こうした実験的要素においては,圧倒的にアメ リカにその事例が豊富にあり,このことは,
Dewey以来のプラグマティズムの伝統を背景と
して読みとることができよう(Watts ed.1983)。
特に,高等教育段階におけるインターンシップ は,今日の日本の教育および移行システムの改革
に直接の影響を及ぼしている部分である。学生・
生徒がすでに入学以前に,あるいは在学中に,パー トタイムなどの雇用体験を持っている者もアメリ カで多くなっており,そうした雇用の補足的な,
あるいは仕上げ的なプログラムとして,インター ンシップが位置している(欧州への影響については
Vickers 1995参照)。
中等教育段階でも,職業への移行を支援するた めの職業体験的なプログラムは,全高校において,
「コープ教育」が49%,「その他の職業体験的な 学習プログラム」34%,「学校内企業」19%など,
広範に実施されている(Stern et al.1995)。
こうした実験的手法の成否は,地域の企業側と の連携次第である。それゆえ,とくに高度な知識 を用いる先端的な分野にはきわめて有効であり,
シリコンバレーなどの大学とハイテク産業との連 携の成功は,そうした精神に支えられている。し かし,同様に高校段階においても,ベンチャー企 業とのパートナーシップのもとでの先端的な職業 技術学習は,それが現実の社会でリアルに活用さ れているものを学ぶだけに生徒たちの関心を引き つける効果をもつであろう。またこうしたプログ ラムが「学校から職業への機会法」によって一段 と活性化しつつあることが指摘されている。ただ し,高校から雇用への移行についてどのような結 果につながっているのか,この点は,アメリカの
「学校から職業への機会」政策の究極的なねらい が,より上級学校への進学促進にある点を,考え 合わせて評価していく必要があろう(上西1997,
仙崎編1998などを参照)。
V 結論と考察
学校から職業への移行に関する欧米諸国の多種 多様な取り組みの中から,近年の主な改革につい て四つの方向性をとりだした。もっとも広範な広 がりをみせているのが,普通教育制度の中での職 業体験的な学習の導入であった。
これに対して,わが国においては,広範な新規 学卒労働市場が成立したことによって,移行シス テムの特徴として,企業と個々の学生とを介在す る機能を,学校が果たすことを可能としてきた。
そのカバーする範囲およびこれからの見通しにつ いては疑問もあるけれども,ともあれ,日本の学 校が職業への移行へ直接的に関与しているという ことが,国際的にみて五つ目の方向を示すものと いってもよいであろう。濃淡の差はあるけれども,
これは,学校と外部機関との一種の社会的なパー トナーシップが形成されていることでもある。
こうしたパートナーシップが,とくに職業体験 的学習などを充実させる上で,つまり,よりひろ
く教育訓練の内容や,その実施の方法や場につい ての協力関係を形成する方向へと発展していくか
どうかが,今後の最大の注目点である。
特に,大学におけるインターンシップや高校の 普通科における勤労体験学習などが,政策的に試 行的な導入が進められている。こうした一定の試 行段階をふまえた後,そうしたプログラムがわが 国にいかに定着するのか,検討する時期がくるは ずである。その際には,職業への移行にかかわる 直接的な就業先の発見という効果と,職業への移 行に積極的に関与していこうとする職業観の形成 という,より基礎的なかつ根本的な効果とを検討 しながら,どの教育段階での職業体験的学習がもっ とも効果的であるのか,吟味していく必要がでて くるであろう。
1)5力闘以外のデータも含めて1994年の男子21乱国の回帰 分析をしてみると,成人一般と若年の失業率の相関は高く,
y=1.655v+6.971(メ=.522)である(x:成人の失業率,
y:未成年の失業率)。しかしながら,成人の失業率が他よ りも顕著に低い日本においては,若年失業率も回帰直線の下 方に位置する。
2)Hannan et al.(1996)によれば,教育訓練制度については,
①標準化と,②機能分化の程度が,重要なシステム特性とし て注目されており,また,学校と職業とのマッチングの形態 については,①デュアルシステム,②市場におけるシグナル の強弱,③日本の学校における職業紹介などが注目されてい
る。
3)World Bank(1991)では,開発援:助としての重装備の公 的職業教育訓練の効率性に対する疑義が投げかけられている。
ただし,これは先進国における職業教育の問題と同列に扱う ことはできない。
4)本来であれば,中卒コーホートを追跡調査することで,よ り適切な傾向を把握することができるはずであるけれども,
類似する傾向を把握するデータとしては,高卒者後の追跡調 査を行った日本労働研究機構(1996)がほとんど唯一のもの である。このデータも先の推計と同様に,日本の高校の職業 斡旋の網から漏れる層が無視できない比率に達していること を明らかにしている(吉本1996)。
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5)米国でもYouth Apprenticeshipなどの移行面での効果や教 育面での期待に対して批判的な指摘もなされている
(Gregson 1995).
6)高卒就職者の中でも縁故など「学校および職業安定所経由」
以外の就職者があり,また,高等教育進学後の中退者なども 含めていけば,いわゆる狭義の「日本的」な学校と企業との ネットワークがカバーしている範囲については,従来の議論 以上に限定して理解すべきであろう。
7)欧州内で職業教育が共通化し,そのための「モジュール化」
の促進が各国で論じられている(Selhn 1996)。
8)中間的な技能労働市場についての関心が,アメリカでは Grubb(1996),英国ではRyan ed.(1991)などに積極的に 取りあげられている。
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よしもと・けいいち 1954年生まれ。東京大学大学院教 育学研究科博士課程単位取得満期退学。九州大学大学院人間 環境学研究科助教授。主な論文に「戦後経済と教育の構造変 動一選抜システムの成熟と組織的取引の発達一」『教育 社会学研究』第48集,1991年など。教育社会学専攻。
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