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平成26年度  厚生労働科学研究費補助金(食品安全確保推進研究事業)

分担研究報告書

研究課題名:食品添加物等の遺伝毒性発がんリスク評価法に関する研究

分担研究課題名:トランスジェニック動物を用いた定量的遺伝毒性評価に関する研究 分担研究者:  増村健一  国立医薬品食品衛生研究所  変異遺伝部  室長

研究要旨

トランスジェニック齧歯類遺伝子突然変異試験(TG試験)データベースを作成し、TG 試験結果と発がん性の相関について検討した。発がん性未知物質についてTG試験を実施 する際は、肝臓を第一の解析臓器とすることが適当と考えられた。

キーワード:トランスジェニック齧歯類遺伝子突然変異試験、発がん性

A.研究目的

食品添加物等の化学物質の発がんリスク評価 においては、非遺伝毒性発がん物質であれば一般 に閾値があると考えられ ADI の設定が可能であ るが、遺伝毒性発がん物質と評価された場合は、

使用を禁止するか、許容リスクレベルを考慮した 管理が必要となる。遺伝毒性試験データを発がん リスク評価に利用するためには、試験結果の適切 な量的評価が不可欠である。突然変異検出用のレ ポーター遺伝子をゲノム中に導入した遺伝子組 換えマウスやラットを使用するトランスジェニ ック齧歯類遺伝子突然変異試験(TG 試験)は、

任意の臓器・組織において突然変異を検出可能で あるため、発がん標的臓器、代謝等を考慮した評 価に有用なin vivo突然変異試験である。

本研究では、遺伝毒性試験データをヒト発がん リスク評価に利用するための基盤として既存の TG 試験のデータベースを作成した。26 年度は、

前年に引き続いてデータベースの充実化をはか り、TG 試験データと発がん性との相関を検討し た。また、作成したデータベースを用いて肝臓に

を行った。

B.研究方法

TG試験はOECDガイドライン(TG488:

Transgenic Rodent Somatic and Germ Cell Gene Mutation Assays)が2011年に公開され、

2013年に一部改訂されている。ガイドライン策 定に先立ってまとめられたOECDのDetailed Review Paper On Transgenic Rodent Mutation Assays (2009) をもとに、TG試験関連学術文献 の試験データをデータベースに追加した。また、

過去に厚生労働省が委託試験等で行ったTG試験 データを追加した。TG試験データが存在する物 質については、TG試験の解析臓器の情報、さら に発がん性の情報をデータベースに追加した。作 成したデータベースを基に、TG試験データと発 がん性との相関を検討した。陽性を陽性と評価す るSensitivity、陰性を陰性と評価するSpecificity、

および全体の一致率Concordanceを計算した。さ らに、肝臓におけるTG試験結果と発がん性の相 関を調べた。

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(倫理面への配慮)

  本研究は遺伝毒性データベース作成に関するもの であり、倫理上の問題はない。

C.研究結果

昨年度までに計280件をデータベースに追加し た。今年度は、その内容を精査し各物質について 個々の解析臓器のTG試験結果の情報をコメント 欄に追加した。また、重複データを削除、統合す るとともに、一部の物質の判定ならびに発がん性 カテゴリの修正・変更を行った。その結果、デー タ件数は計273件となった。内訳は、発がん物質

123、非発がん物質23、発がん性未知物質65、複

合曝露49、溶媒13物質であった。このうち、複

合曝露および溶媒対照については今回のデータ には含めなかった。従って、本データベースに含 まれるのは211件(発がん物質123、非発がん物

質23、発がん性未知物質65)となった

(Aappendix 1)。

発がん性物質123物質のうち、TG試験が発が ん標的組織で実施されているものは102物質、発 がん標的組織以外で実施されているものは21物 質あった。TG試験データがある123の発がん性 物質と23の非発がん性物質を用いて、TG試験の 判定と発がん性の有無との相関について検討し た(Appendix 2, 3)。陽性を陽性と評価する sensitivityは91/123 = 74.0%であった。陰性を陰 性と評価するspecificityは15/23 = 65.2%であっ た。全体の一致率concordanceは(91+15)/146 =

72.6%であった。発がん性物質123のうち、TG

試験データのある発がん標的臓器全てでTG陰性 のものが25物質あった。非発がん性物質23のう ち、TG試験陽性のものは8物質あった。

また、発がん性物質についてAmes試験結果と TG試験との相関を検討した(Appendix 2, 3)。 発がん性物質123のうち、Ames試験が陽性かつ TG試験が陰性のものが13物質あった。また、

Ames試験が陰性かつTG試験が陽性のものが15

さらに、肝臓におけるTG試験結果と発がん性 の相関を調べた(表1)。発がん性物質123のう ち、肝臓のTG試験データがあるものが92あり、

このうち 肝臓TG陽性が62、肝臓TG陰性が30 であった。肝臓TG陰性30のうち9物質は肝臓 以外の組織でTG陽性結果が得られていた。非発 がん性物質23のうち肝臓のTG試験データがあ るものが15あり、このうち TG陽性が4、TG陰 性が11であった。このことから、発がん物質が 肝臓でTG陽性となるsensitivityは62/92 =

67.4%、非発がん物質が肝臓でTG陰性となる

specificityは11/15 = 73.3%と算出された。

<表1>

Liver TG 陽性

Liver TG 陰性

Liver TG data な し Carcinogen

(total 123)

62 30* 31

Non carcinogen (total 23)

4 11 8

*肝臓以外でTG陽性結果がある9物質を含む。

D.考  察

  現在TG試験の推奨プロトコルはOECDガイ ドラインによると28日間反復経口投与、最終投 与3日後に組織採取とされている。しかしこれに 準拠して実施された試験データは少ない。特にガ イドライン作成以前に実施された試験の多くが 単回投与を含む短期間の投与実験であり、個別の 試験によって用量設定や解析組織の選択手法も 統一されていない。本研究で作成したデータベー スはガイドライン公開以前の文献資料に基づい ているため、検出感度や判定の統一性については 限界がある。しかしながら個別研究の学術文献を 基にしていることから、各物質に応じた試験デザ インが検討されていると考えられ、対象物質の変

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検討するためには今後はガイドライン準拠の試 験データの充実が求められる。その上でプロトコ ルの最適化等を検討する余地があるものと考え る。

TG試験データベースの273件のうち、発がん

性物質が123、非発がん性物質は23であり、発

がん性物質に偏っている。TG試験結果と発がん 性の相関性を検討するためには非発がん物質の 情報を増やすことが重要である。また、発がん試 験と遺伝毒性試験で同一種の動物を用いること で両者の比較が可能になることから、ラットを用 いたTG試験データの充実も課題である。

TG試験データがある123の発がん性物質と23 の非発がん性物質を用いて、TG試験の判定と発 がん性の有無との相関について検討した結果、

Sensitivityは74.0%、Specificityは65.2%、

Concordanceは72.6%であった。データベースの 偏りに留意する必要はあるが、TG試験の

SensitivityとSpecificityは比較的高いと考えら れた。また、発がん標的においてTG陰性の発が ん物質に関しては、mode of actionの観点からい わゆる非遺伝毒性発がん物質とされるものが含 まれており、その場合TG陰性は妥当な結果と考 えられる。この点をふまえると、遺伝毒性発がん 物質に限ればTG試験のSensitivityはさらに高 いと予想される。一方で、TG試験は投与の方法、

期間および用量が発がん試験と異なり、一般的に は発がん試験より短期間のため総投与量が低い ことには注意する必要がある。

119の発がん性物質についてAmes試験結果と TG試験との相関を検討した結果、Ames試験が 陽性かつTG試験が陰性のものが13物質あった。

また、Ames試験が陰性かつTG試験が陽性のも のが15物質あった。In vitro試験のみでみられた 変異原性についてはメカニズムに関する議論が 必要と考える。

変異原性と発がん性との量的相関を調べるた めには、発がん性試験と同条件の試験を行い、発

設定は不可能である。TG試験はコストの点から 解析する組織の数が限られるため、曝露や毒性の 情報を考慮しつつ、解析組織を注意深く選択する ことが必要である。化学物質の代謝を考慮すると、

肝臓は解析臓器の有力候補のひとつである。そこ で、データベースを用いて肝臓におけるTG試験 結果と発がん性の相関を調べた。その結果、発が ん物質がliver TG陽性となるSensitivityは 62/92 = 67.4%、非発がん物質がliver TG陰性と なるSpecificityは11/15 = 73.3%であった。限ら れたデータの範囲内ではあるものの、肝臓を用い たTG 試験は、遺伝毒性発がん物質を陽性、非遺 伝毒性発がん物質を陰性と判定する能力は高い と考えられた。一方で、肝臓以外のTG dataがな い場合に発がん物質を偽陰性判定してしまうリ スクは9/92 = 9.8%であった。逆に言えば、肝臓 以外のTG dataを追加することでSensitivityは 9.8%増加した。これらの結果から、発がん性未知 物質についてTG試験を実施する際は、肝臓を第 一の解析臓器とすることが適当と考えられた。

TG試験から遺伝毒性の定量的指標を導出する ためには、多くの化学物質の試験を共通のプロト コルで行い結果を比較することが有効と考えら れる。具体的な指標としてはNOGELやBMDL が有効と考える。一方で、投与プロトコルを統一 することの欠点もある。化学物質の体内動態、曝 露量や組織のターンオーバーの差によって遺伝 子突然変異の固定にかかる時間が各組織によっ て異なるため、変異原性の検出感度に影響を与え る。例えば肝臓はTG試験において重要な解析臓 器であるが、組織のターンオーバーが比較的遅い こと、毒性影響によって細胞増殖活性が変化する ことなどから、現行の28日間投与後3日目採取 というプロトコルでは突然変異の固定が十分で はなく、変異原性を過小評価している可能性があ る。TG試験において発がん試験と同等の長期試 験は現実的ではないが、より精度の高い遺伝毒性 の量的指標を求めるためには、試験条件の最適化

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E.結  論

  既存の TG 試験データが存在する発がん物質

123、非発がん物質 23、発がん性未知物質65 に

ついてデータベースに追加した。TG 試験の判定 と発がん性の有無の一致率は72.6%であった。発 がん性未知物質についてTG試験を実施する際は、

肝臓を第一の解析臓器とすることが適当と考え られた。

F.健康危機情報   なし 

G. 研究発表   1.  論文発表

1) Kawamura Y, Hayashi H, Masumura K, Numazawa S, Nohmi T, Genotoxicity of phenacetin in the kidney and liver of Sprague-Dawley gpt delta transgenic rats in 26-week and 52-week repeated-dose studies, Toxicology, 2014;324:10–17.

2.  学会発表

1) Masumura K, Toyoda-Hokaiwado N, Ishii Y, Umemura T, Honma M, Nishikawa A, Nohmi T, Point mutations and deletions induced by aging in liver of gpt delta transgenic rats, 4th Asian Conference on Environmental Mutagens, India (2014.12) 2) 増村健一,豊田尚美,石井雄二,梅村隆志,

能美健彦,西川秋佳,本間正充, gpt deltaラ ットの加齢により誘発される点突然変異お よび欠失変異の解析, 第 37 回日本癌学会学 術総会, 横浜 (2014.9)

3) 増村健一,大杉直弘,豊田尚美,能美健彦,

本間正充,gpt deltaマウスを用いた加齢に伴 い蓄積する遺伝子突然変異の解析,日本進化 学会第16回大会,大阪 (2014.8)

64回定例会,静岡 (2014.6)

H.知的財産権の出願・登録状況 なし

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Appendix.1 Appendix.1

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Appendix.2 Appendix.2

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Appendix.3 Appendix.3

参照

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