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学生と図書館
わたしの好きな昔話( 11 )
(ちりめん本)
岡林 花波
日本には、江戸時代初期頃から続く「寄席」
という文化があります。寄席とは、落語・浪曲・
講談・漫才・手品などの技芸(演芸)を観客に 見せるための席亭のことです。私が今回紹介す る『日本の咄家』というちりめん本によると、
この本が書かれた明治32年頃には、東京に寄席 は243軒あったと書かれています。しかし、現 在狭義としての寄席は4軒しかなく、全国でも 寄席を行っている小屋と呼ばれるものは10軒に も満たないのです。みなさんは、寄席に行った ことがあるでしょうか。
本書は、フランス公使館員のジュール・アダ ンが咄はなしか家(落語家)と寄よ せ席について紹介した話 を、オスマン・エドワーズが英語に翻訳して、
フランス語版と同年に刊行したものです。文明 開化時の「寄席」の文化について、著者の日本 文化についての深い知識と共に描かれていま す。「咄家」は落語家の古い言い方で、口演の みを行っている人のことです。本書の特徴とし ては、扉絵に寄席の建物が描かれており、そこ に掲げられた看板には三遊亭圓えんしょう生、小こ圓えん遊ゆうと いった名跡に混じり「英国人ブラック」とあり ます。著者は本文中で“Mr.B...”と紹介す るブラックにとても関心を抱き、なんとか会お うと奔走したことや、神戸で彼の寄席を聞いた
ことなどを述べると共に、人気を博していたブ ラックを同じ欧米人として誇らしいと称賛して おり、この「咄家の名手となった流暢な日本語 を話すイギリス人の紹介にかなりの頁を割いて います。本書が書かれたのは明治36年頃で、当 時日本語を話す外国人は既に多くいたと思われ ますが、咄家として日本人と同じ舞台に立つ外 国人がいたことは、わたしにとっても驚きでし た。現在の落語家の方の話し方を思い出してみ てください。私には表情豊かに、様々な日本語 を操っている姿が思い出されます。人を耳で楽 しませる芸事の一つである咄家です。現在では 日本の文化が外国の方に認知されるようになっ ています。しかし、当時の日本で口演だけの芸 事に興味を持ち、その職業に精通した外国人が いたことは日本人にとっても非常に興味深く、
また少し誇らしいことだと思います。
みなさんは寄席に行ったことがありますか。
落語を聞いたことがありますか。これから世界 を舞台に働く外大生のみなさんだからこそ、日 本の文化に誇りを持ってもらいたいと思いま す。
おかばやし かなみ(日本語学科4年次生)