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The japanese Association for Philosophical and Ethical Researches in Medicine 日本医学哲学 倫理学会 2015 年 8 月 医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育は 伝統的に個々の教員の裁量に任されており 現在でも

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医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育の

内容についての提言

  医療従事者の養成課程の中で医療倫理教育を担当される方へ   日本医学哲学・倫理学会 2015年8月

はじめに

 医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育は、伝統的に個々の教員の裁量に任されており、現在 でもその状況に大きな変化はないように見受けられます。しかしながら、欧米諸国では、早い例では1980 年代より医療倫理教育の改革が行われ1)、カリキュラムや学習方略等にまで踏み込んだ、一定の標準化が進 められてきました。わが国においても、医療倫理教育が持つ社会的意義はきわめて大きいものであり、その 教育に一定の質の確保が求められています。昨今、「医学教育モデル・コア・カリキュラム」2)に示されたよ うに、医療従事者に対する教育内容の標準化が進められており、医療倫理教育についても、わが国の医療従 事者の養成課程において必ず学習すべき最低限の教育内容を検討することが喫緊の課題となっております。  医学部・医科大学を含めて、わが国の医療従事者の養成課程には、専任の医療倫理教育担当者が配置され ている例はいまだに少なく、全国規模で医療倫理教育の標準化を検討する環境は整っているとは言えません。 私たち日本医学哲学・倫理学会では、教育委員会を中心に、2006年度からこの問題の検討を開始し、2008 年度に「医療倫理教育モデルカリキュラム(たたき台)」3)を公表いたしました。その後、2010年度の「医 学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂等の状況の変化にも鑑みて議論を重ねた結果、このほど、「医 療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育についての提言」を取りまとめることとなりました。ここ に全国の教育現場で医療倫理教育に関わっている方々にご案内させていただく次第です。  なお、私たちといたしましては、本提言は完成されたものではなく、医療倫理の教育研究に携わる多くの 先生方のご助言を賜りながら、さらに改善・改訂を必要とするものと考えております。内容につきまして、 忌憚のないご意見・ご要望等をお寄せいただければ幸甚に存じます。  2015年8月27日  日本医学哲学・倫理学会 会長 霜田 求 〈註〉  1)英国における医療倫理教育改革のための提言として、InstituteofMedicalEthics.Reportofaworkingpartyontheteachingof medicalethics(thePondReport).London,IMEPublications,1987.米国の医療倫理教育改革についての総説として、MilesSH,Lane LW,BickelJ,WalkerRM,CasselCK.Medicalethicseducation:comingofage.AcademicMedicine1989;64:705-714.  2)モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会、モデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会「医学教育 モデル・コア・カリキュラム―教育内容ガイドライン―」  3)日本医学哲学・倫理学会 教育委員会「医療倫理教育モデルカリキュラム(たたき台)」日本医学哲学・倫理学会ホームページ, http://pe-med.sakura.ne.jp/main/

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本提言の検討を行ってきた教育委員会委員 五十子敬子 (前尚美学園大学・教授) 板井孝壱郎 (宮崎大学・教授) 尾崎恭一  (東京薬科大学・客員教授) 樫 則章  (大阪歯科大学・教授) 勝山貴美子 (横浜市立大学・教授) 黒須三惠  (東京医科大学・教授) 佐藤 労  (藤田保健衛生大学・教授) 清水良昭  (前明海大学・准教授) 永田まなみ (熊本大学・講師) 服部健司  (群馬大学・教授) 藤野昭宏  (産業医科大学・教授) 前田義郎  (産業医科大学・准教授) 丸山マサ美 (九州大学・講師) 宮坂道夫  (新潟大学・教授) 宮脇美保子 (慶応義塾大学・教授) 村松 聡  (早稲田大学・教授)

Ⅰ 本提言の目的

1.多様な医療倫理教育を見据えて  各教員の自主性を重んじつつも、医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育において、一定の知 的基盤を定め、そこから各養成機関における医療倫理教育の目的、カリキュラム、授業形態等に応じた取捨 選択を適切に行えるように、教員の支援を行うことが、本提言の目的である。  医療従事者には様々な職種があり、職務やチーム医療における役割によって倫理問題への関わり方も異な る。そのため、私たちはまず医師の養成課程に必要とされる医療倫理教育を基盤に据え、その教育に必要と なる知的基盤を定め、その上で医師以外の多様な医療関連職種の養成課程に固有の医療倫理教育を検討する こととした。その理由は、チーム医療の時代と言われる今日において、医療従事者は医師と共通の基礎的な 医療倫理教育を受け、その上で各職種に固有の医療倫理教育を受けるべきであると考えたためである。  医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育は多様であり、科目の名称一つをとっても「生命倫 理」、「医療倫理」、「医学倫理」、「医の倫理」、「看護倫理」等、様々なものが存在している。私たちはこれら の科目を広く「医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育」として取り扱うこととした。 2.あるべき医療倫理教育のかたちを求めて  そのような多様性を認めつつも、わが国の医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育に一定の共 通理解に基づく改革が必要なこともまた明らかである。1980年代から医科大学での医療倫理教育の改革を 行ってきた諸外国では、低学年に単一の科目を設置するスタイルは医療倫理教育の効果が低く、1年次から 最終学年までの教育課程の中で複数の学年に科目を設置する多段階式教育が効果的であることが指摘され、 医療倫理教育のカリキュラム改正に活かされている。わが国においても、初学年で生命倫理の基礎的事項を 教え、臨床教育と平行して臨床倫理などの実践的事項を教えるなど、多段階的なカリキュラムを組むことが 望ましい。そのようなカリキュラム改正に際して、医療従事者の養成課程全体の中で、どのような内容の医

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療倫理教育を教えるべきかを定める必要がある。  医療倫理教育が単なる知識の習得を目標とするのではないことは論をまたない。臨床や研究の現場におい て倫理的な問題を把握する能力、道徳的な省察や推論によって適切な判断を行う能力、他職種を含む同僚と の協働によって問題解決をはかる能力等が重要であることは指摘されているが、そうした能力をどのような 教育プログラムによって向上させることが可能で、またどのような視点・方法によって教育効果を確認・評 価すべきかについては、先進的な取り組みをしてきた諸外国においてもなおも議論が続いている。  本提言はその内容のうち、特に不可欠な最小限の内容を示すものである。多くの項目で「概説できる」こ とを到達目標としているのは、これらについての一定の知識・理解を獲得することを学習者に求めているこ とを意味している。しかしながら、これを臨床や研究の現場における態度・実践のレベルにおいて向上させ、 それを評価する方法については、教育実践を行う教員の智恵をさらに結集しながら、今後の課題としてさら なる検討を行いたい。

Ⅱ 学習者のための目標設定

 今日の医療従事者の養成においては、教育する側ではなく学ぶ側の視点に立ち、学習者が目指すべき目標 を明示することが望ましいとされており、これは医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育につい ても同様であると考えられる。学習者のための目標設定の方法には様々なものがあるが、ここでは「医学教 育モデル・コア・カリキュラム−教育内容ガイドライン−」に準じて、学習目標(GIO:GeneralInstruc-tionObjective)および到達目標(SBO:SpecificBehavioralObjective)に分けて、医療従事者の養成課程の 中で行われる医療倫理教育の目標設定について提示する。 一般目標(GIO) 1.医療に関する倫理的問題に通底する基礎的な概念について述べることができる。 2.実際の臨床場面における倫理的問題を発見的に捉え、問題解決に向けて事例に則して具体的に考え ることができる。 3.医学系研究について倫理的観点からその妥当性を検討できる。 到達目標(SBO) 1)医療の倫理の基盤となる哲学・思想について概説できる。 2)医療の倫理の歴史について概説できる。 3)医療の倫理の主な理論について概説できる。 4)臨床倫理について概説し、臨床事例に適用できる。 5)研究倫理について概説し、研究の立案、実施及び成果の公表に際して適切な倫理的配慮を行うこと ができる。 〔解説〕  「医療に関する倫理的問題」は医療のすべての領域で生じており、その全体像をすべて網羅的に述べるこ とは困難である。しかしながら、全領域に通底する基礎的な概念についての知識については、最低限理解し ておくべきである。さらには、全領域に適用可能な、問題点の把握と解決に導くための方法論の基礎につい ては、最低限理解しておくべきである。これについて、臨床場面におけるものと、研究の立案等におけるも のとを分けて、目標設定を行うべきだと考えられる。

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〔対応関係〕 GIO と SBO は、以下のように対応する。  GIO1. →  SBO1)、2)、3)  GIO2. →  SBO4)  GIO3. →  SBO5)

Ⅲ 到達目標ごとの教授項目

到達目標(SBO) 1.医療の倫理の基盤となる哲学・思想について概説できる。 教授項目 1-1) 全人的な人間理解の基礎  (以下の各事項について概説できる。)   1-1)-① 人間の尊厳と人権   1-1)-② 死生観、健康観、疾病観   1-1)-③ 人間のアイデンティティと人生史 〔解説〕 1-1)-①  まず、世界共通の倫理規範は人類の歴史的成果として国際連合「世界人権宣言」(1948)やユネスコ「生 命倫理と人権に関する世界宣言」(2005)などに結実しており、その核心がこの項目である、という認識 に基づいて教授されるべきである。さらに具体的な医療問題に即して、人間の尊厳を尊重する視点からど んな人権が守られるべきかを判断できるよう教授することが望ましい。 1-1)-②  診療の方法や目標は、患者や医療者の死生観、健康観、疾病観によって大なり小なり異なる。そのため、 診療決定に関わる話し合いに備え、それらの諸類型の特徴について理解できるよう教授するべきである。 1-1)-③  疾病により人生を自ら決定するのが困難な状況に直面し、患者は自らのアイデンティティを守るにはど んな治療が適切かを知ろうとする。これに応えて医療者が適切な診療方針を提案できるようにするため、 この項目が教授されるべきである。具体的な事例に即して、患者のアイデンティティ等を文化的社会的背 景から理解できるよう教授することが望ましい。 2.医療の倫理の歴史について概説できる。 教授項目 2-1) 伝統的な医の倫理  (以下に掲げる伝統的な職業倫理について概説でき、現在の職業倫理から見た意義と限界について概説で きる。)   2-1)-① 「ヒポクラテスの誓い」   2-1)-② パーシバル『医の倫理』(1803) 2-2) 現代の主な倫理綱領  (以下に掲げる倫理綱領の内容について、特に専門家としてのプロフェッショナリズムと、患者の権利に

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ついての要点を述べることができる。患者の権利に関しては、世界医師会「患者の権利に関するリスボン 宣言」(1981)にうたわれている諸権利について、具体的に列挙できる。)   2-2)-① 「ニュルンベルク綱領」(1947)   2-2)-② 世界医師会「ジュネーブ宣言」(1948)   2-2)-③ 世界医師会「医の倫理の国際綱領」(1949)   2-2)-④ 世界医師会「ヘルシンキ宣言」(1964)   2-2)-⑤ 世界医師会「患者の権利に関するリスボン宣言」(1981) 〔解説〕 2-1)及び2-2)  医学・医療は健康と生命という人々にとって重大な価値に関わるがゆえに倫理と相即不離の関係にある こと、医学・医療に関する倫理が20世紀半ばから後半にかけて歴史的な大転換を迎えたこと、そしてその 大転換の背後にそれを引き起こす社会的変化があったこと  これら三つの大きな枠組みのなかでこの項 目が教授されるべきである。また「ジュネーブ宣言」、「医の倫理の国際綱領」、「ヘルシンキ宣言」、「リス ボン宣言」のそれぞれの変遷についても教授されることが望ましい。 3.医療の倫理の主な理論について概説できる。 教授項目 3-1) 基本的な倫理理論  (以下の各事項について概説できる。)   3-1)-① 事実と価値の違い   3-1)-② 記述倫理と規範倫理の違い   3-1)-③ 法、倫理、モラル(個人の良心・信念)の違い   3-1)-④ 帰結主義、義務論、徳倫理   3-1)-⑤ ケアの倫理 3-2) 医療の倫理についての諸原則  (以下の各事項について概説できる。)   3-2)-① 生命倫理の四原則   3-2)-② 欧州連合「バルセロナ宣言」(1998)   3-2)-③ ユネスコ「生命倫理と人権に関する世界宣言」(2005)の15原則 〔解説〕 3-1)-①  医療関係者がインフォームド・コンセント取得手続きにおいて事実を伝えていると思いながら、実際に は自らの価値が反映している情報を伝えている場合が多い。こういった点を考えて、事実理解と価値を伴 った解釈のちがいを明確にすることが目的である。 3-1)-②  規範倫理は、医療関係者が守らねばならない規範としての倫理のことである。一方、記述倫理は、どの ように倫理が考えられてきたか、歴史的な倫理理解を記述し、また道徳的能力がどのように成立したか、 あるいは倫理はどのように習得されるかといった事実問題を記述する。両者は明確に区別しなければなら ない。とりわけ初学者は両者を混同しがちである。

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3-1)-③  コンプライアンスを倫理の遵守と勘違いする間違いは避けなければならない。また、個人的なモラル(個 人の信念や良心)を倫理と混同する間違いなどに配慮し教授することを目的としている。 3-1)-④  帰結主義は主に功利主義を指しているが、行為のもたらす結果について、倫理的規範を示す。義務論は 行為そのものついて、倫理的規範を示す。徳倫理は行為する主体の在り方について倫理的規範を示す。そ れぞれ異なる観点からの倫理的規範を的確に把握することが目的である。 3-2)-①及び②  ビーチャムとチルドレスが明確化した生命倫理の四原則の教授は必須であるが、同時に、EU の生命倫 理の宣言である「バルセロナ宣言」で表明された、生命倫理の四原則にはない諸原則についても触れるこ とが望ましい。 4.臨床倫理について概説し、臨床事例に適用できる。 教授項目 4-1) 患者の権利の尊重と安全の確保  (以下の各事項について概説できる。)  4-1)-① 患者の権利と利益の保護  4-1)-② インフォームド・コンセント、インフォームド・アセント  4-1)-③ 判断能力  4-1)-④ 代理決定  4-1)-⑤ セカンド・オピニオン  4-1)-⑥ 医療安全とリスク管理  4-1)-⑦ 事前指示、事前ケア計画 4-2) チーム医療の中での臨床倫理  (以下の各事項について概説できる。)  4-2)-① 各医療職種の相互理解と連携  4-2)-② 患者の自己決定の支援  4-2)-③ 患者、家族、医療従事者に共有された意思決定 4-3) 臨床倫理の実践的な方法と組織的対応  (以下の各事項について概説できるとともに、臨床事例に適用することができる。)  4-3)-① 四分割法、決疑論的アプローチ  4-3)-② ナラティヴ・アプローチ  4-3)-③ 臨床倫理委員会  4-3)-④ 臨床倫理コンサルテーション 〔解説〕 4-1)及び4-2)  医療安全管理業務や医療の質向上など、病院機能評価をはじめとする医療マネジメントを考える上でも、 今や「倫理」は欠かせない時代である。学習者に対しては医療における「倫理」問題というのは、医師や 看護師などの「モラル」の問題に矮小化されるものではないことが教授されなければならない。 4-3)-①及び②  また「臨床倫理」の目的とは、いわゆる「倫理原則」を臨床現場に「当てはめる」トップ・ダウンでは

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なく、具体的な個々の臨床ケースからボトム・アップでアプローチすることによって、日常診療の現場で 生じた倫理問題を同定、分析し、具体的な解決策を提示することを通じて、医療の質向上を目指すもので あることを教授することが大切である。 4-3)- ③及び④  「臨床倫理委員会」や「臨床倫理コンサルテーション」の役割についても、医療者の行為を糾弾したり する「懲罰委員会」のようなものでは決してなく、現場スタッフだけでは治療・ケア方針の決定が困難な 場合、例えば患者・家族と医療従事者との話し合いの中で合意が得られない場合、あるいはまた医療従事 者同士の話し合いの中でも合意が得られない場合等のケースに対して、複数の専門家によって構成された チームもしくは委員会において検討し、現場スタッフに対し助言を行うサポート機能を有していることを 教授すべきである。 5.研究倫理について概説し、研究の立案、実施及び成果の公表に際して適切な倫理的配慮を行うこと ができる。 教授項目 5-1) 研究公正  (以下の各事項について概説できる。)   5-1)-① 捏造、改ざん、盗用   5-1)-② 不適切なオーサーシップや二重投稿等の好ましくない研究行為   5-1)-③ 文部科学省「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(2014)、医学雑 誌編集者国際委員会「生物医学雑誌への統一投稿規程」(1979) 5-2) 人を対象とする医学系研究の歴史的背景   5-2)-① 負の遺産(歴史上の非人道的な人体実験など)   5-2)-② 「ニュルンベルク綱領」(1947)   5-2)-③ 生物医学及び行動科学の研究対象者保護のための全米委員会「ベルモント・レポート」(1979) 5-3) 人を対象とする医学系研究に関する主な倫理綱領、ガイドライン   5-3)-① 世界医師会「ヘルシンキ宣言」(1964)   5-3)-② 国際医学団体協議会「人を対象とする生物医学研究の国際倫理指針」(1982)   5-3)-③ 文部科学省・厚生労働省「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(2014)、文部科学 省・厚生労働省・経済産業省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(2001) 〔解説〕 5-1)  近年、研究不正事例が相次いで社会問題化したことを受けて、大学等において研究倫理に関する教育や 啓発が求められている。医療従事者の養成課程の中で行われる医療倫理教育においても、研究倫理教育は 必須の項目と考えなければならない。研究倫理教育の不可欠な要素は、まずは捏造、改ざん、盗用といっ た研究不正について、実際に生じた事例を通して具体的に教えることであるが、それらに加えて不適切な オーサーシップや二重投稿等の好ましくない研究行為についても具体的に教える必要がある。また、研究 不正を防止するための組織的取組みの必要性や論文投稿の基本的作法も教授されるべきである。 5-2)  研究者倫理の向上のためにどのような教育が有効であるかは、教育現場での試行錯誤が必要と思われる が、最低限の知識として、人を対象とする医学系研究の歴史的背景を教えることが不可欠だと考えられる。 すなわち、研究倫理の「負の遺産」としての歴史上の非人道的な人体実験の事例を教えるとともに、こう

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した事例の発生に対して、「ニュルンベルク綱領」や「ベルモント・レポート」等が作られたことを到達 目標2と併せて教授する必要がある。 5-3)  研究倫理教育のもう一つの内容として、主な倫理綱領、ガイドラインについての知識もまた不可欠であ る。研究倫理の原則的な考え方を定めた世界医師会の「ヘルシンキ宣言」や、国際医学団体協議会の「人 を対象とする生物医学研究の国際倫理指針」等について学習者が概説できるように、その要点を教授すべ きである。その上で、研究の種別等によって様々なガイドラインが定められていることを教え、自らの研 究に関連したものを取捨選択できるようにすることが必要である。多くの医学系研究に共通のものとして、 「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」や、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に ついては、基本的な内容を教授すべきである。

参照

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