格子型錯視の空間的・時間的特性―方位の要因の検討を通して [ PDF
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(2) 目的 格子の交差点上に重ねる正四辺形の方位を操作し,錯. 本実験では,きらめき格子錯視の図形を全体的に回転 させ、相対方位の役割を検討した。. 視の強度にどのような影響を及ぼすかを検討した。 方法 被験者. 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 5 名. 方法 被験者. 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 5 名. (男性4名,女性1名,内 4 名が実験1,2の参加者) が. (男性 2 名,女性 3 名,内 3 名が実験1の被験者) が実験. 実験に参加した。. に参加した。. 刺激,手続き 実験 3 は,以下の点を除いて実験 1 と同. 刺激,手続き 実験 2 は,以下の点を除いて実験 1 と同. 一であった。実験の刺激図形には 8×8 個の正方形から. 一であった。パッチには一辺 0.59°の正四辺形を用いた。. なる格子であった。刺激図形の全体的な大きさは. 方位は 0,15,30,45,60,75 度の 6 種類であった。6. 15.51° ×15.51°であった。パッチに 0.59°の円形,. 種類の刺激図形はそれぞれ 2 回ずつ現れ,計 12 刺激が. 菱形,正方形を用いた。また,相対方位を検討するため,. 被験者ごとにランダムな順序で呈示された。. 「直立」と「回転」という 2 タイプの錯視図形を用いた。. 結果 錯覚的黒点の強度について,正四辺形の方位につい. 「直立」タイプは実験 1,2 に用いられたオリジナルの きらめき格子錯視図形であった。それに対して, 「回転」. ての 1 要因の分散分析を行った結果,方位の主効果は有. タイプはオリジナル図形を全体的に 45 度回転したもの. 意であった [F(5,20)= 56.432, p<.0001]。方位の主効果. であった。したがって,計 6 種類の刺激図形が用意され. に基づく Ryan 法による多重比較の結果,0 度30 度,0. た。6 種類の刺激図形はそれぞれ 2 回ずつ現れ,計 12. 度45 度,0 度60 度,0 度75 度,15 度30 度,15 度45. 刺激が被験者ごとにランダムな順序で呈示された。. 度,15 度60 度,30 度45 度,30 度75 度,45 度75 度, および 60 度75 度のペアには有意な強度差が見られた (p<.05)。. 結果 パッチ形状と図形のタイプについての 2 要因の分散分 析を実施したところ,両要因の主効果及び交互作用が有 意であった [形状: F(2,8)=139.182, p<.001; タイプ: F(1,4)=45.375, p<.005; 交互作用: F(2,8)=8.432, p<.05]。 5%水準で下位検定を実行した。有意な交互作用に基づ くパッチ形状と図形タイプの単純主効果の検定を行った ところ,両タイプともに有意であった [直立: F(2,16)=71.437, p<.001; 回転: F(2,16)=61.065, p<.001]。 パッチ形状については,正方形条件で有意な単純主効果 がみられたが [F(1,12)=41.667, p<.0001],円形及び菱形 条件下では,有意な単純主効果がなかった (p>.05)。. 図 4.実験 2 における錯覚的黒点の強度。 考察 実験2では,パッチのエッジ方位がきらめき格子錯視 の強度に強い影響を及ぼすことが明らかとなった。この 結果は,きらめき格子錯視の生起がパッチに対する視覚 的方位処理に基づく可能性を示唆する。ただし,ここで はパッチの方位のみの検討に留まっていたが,もう一つ の可能性として,パッチ自体の絶対方位のみならず,パ. 図 5.実験 3 における錯覚的黒点の強度。. ッチと格子の相対方位も錯視強度に影響することが考え. 考察. られる。次の実験では,きらめき格子錯視の錯視量を変. 実験3の結果から,パッチの絶対方位のみならず,パ. 調する要因が絶対方位なのか相対方位なのかを検討した。 実験3 目的. ッチと格子の相対方位も錯視に影響を及ぼすことが明ら かになった。以下の 2 つの条件のいずれか 1 つが満たさ れれば錯視が弱くなるものと考えられる:.
(3) 1,パッチのエッジの方位が垂直・水平. 形状―時間: F(14,154)=3.546, p<.0001; 形状―サイズ:. 2,パッチのエッジと格子のバーが平行・直交. F(14,154)=4.880, p<.0001; 形状―サイズ―時間:. 以上の 3 つの実験を通じて,きらめき格子錯視の生起. F(28,308)=2.031, p<.005]。 実験 4 の結果をまとめると,. にとって非常に重要な要因として「方位」要因が新たに. まず,0.33°のパッチにおいて,観察時間が長いほど錯. 示された。しかしながら,以上の全ての実験では時間的. 視の強度が強くなった。0.46°の時には,円形・菱形条. 要因の影響は検討されなかった。先行研究では,速すぎ. 件で,観察時間が長いほど錯視が強くなったが,正方形. る運動速度及び短すぎる呈示時間は錯視の効果を弱める. 条件では例外的に,観察時間が長いほど錯視が有意に弱. ことが示されている (Schrauf, Wist, & Ehrenstein,. くなった。. 2000)。実験 4 では,刺激の時間的側面が方位要因の役 割に影響する可能性を検討した。. 考察 短時間呈示条件においては,視覚系は画像中の低空間. 実験4. 周波数成分のみを分析可能である。従って,比較的高い. 目的. 高空間周波数成分のエッジで定義されるパッチの形状は. 本実験では呈示時間を変化させながら,きらめき格子 錯視に与える方位要因の影響を検討した。 方法. 同条件においては正確に弁別できない可能性があった。 そのため,各形状を視覚系が弁別できなかったために, 錯視強度がほぼ一致していたものと思われる。観察時間. 被験者 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 12 名. が長い場合には,形状の識別が容易であったため,正方. (男性 7 名,女性 5 名,内 3 名が実験1,2,3 の参加者). 形の錯視強度が下がった。. が実験に参加した。. なお,パッチの形状に関わらず,短時間呈示の時に錯. 刺激 実験 4 の刺激は,以下の点を除いて実験 1 と同一. 視強度が低かった。その原因は 2 つ想定される。一つは. であった。観察距離は 42cm であった。パッチは円形,. 方位処理が不完全であったために,錯視が生じなかった. 正方形,および菱形の 3 種類を用いたが,形状ごとのサ. という考えである。もう一つは,注意移動が生じずに「き. イズは実験 1 で強度の変化が顕著に見られた 0.33°,. らめき」が生じなかったためなのかもしれない。. 0.46°,および 0.59°の 3 種類だけを用いた。また,先. 実験 4 においては,きらめき格子錯視に関係する時空. 行研究を参考して (Schrauf, et al., 2000),図形の呈示時. 間要因に焦点をしぼって検討した。ハーマン格子錯視と. 間を 40,70,140,210,350,490,700,1000ms の 8. きらめき格子錯視は同じメカニズムで生起する錯視であ. 種類,合計 72 試行を行った。. るか否かについては断定できなかった。本研究はきらめ. 手続き 評定に入る前に,被験者に 9 つの刺激図形を観. き格子錯視について 「方位」 要因の重要さを究明したが,. 察させた。 スペースキーを押して観察フェーズを始めた。. この要因は両格子錯視に共通に重要であるか否かを検討. そこでは呈示時間をコントロールせずに,被験者に自由. する必要がある。ハーマン格子錯視ときらめき格子錯視. に観察させた。被験者は各刺激の観察が十分だと思った. との類似性と差異を検討するため。両錯視における格子. 時点でスペースキーを押して次の図形をまた観察した。. に空間間隔を空けた刺激を考案し,錯視の強度変化を比. この作業を 9 つの刺激図形すべてについて行い,その後. 較した。. 評定フェーズに移った。スペースキーを押すと刺激図形. 実験5. が現れた。刺激図形呈示終了後,白と黒の丸いドットで. 目的. ランダムに構成されたマスクを 490ms 間呈示した。マ. 本実験は両錯視における格子の交差点の間に存在する. スク呈示終了後,評定用ゲージのある画面に移った。試. バーの空間間隔量を操作した。 錯視の強度変化を比較し,. 行ごとに錯視の強さについて 04 の 5 段階で評定させた。. 両錯視の共通性と差異について考察した。. 結果 実験 4 のデータを用い,パッチの形状,パッチのサイ. 方法 被験者 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 7 名. ズ,呈示時間についての 3 要因分散分析を行った。パッ. (男性 4 名,女性 3 名,内 3 名が実験1,2,3,4の参. チの形状,パッチのサイズ及び呈示時間について,いず. 加者) が実験に参加した。. れの主効果も有意であった [形状: F(2,22)=38.509,. 刺激 実験 5 では,きらめき格子錯視とハーマン格子錯. p<.0001;サイズ: F(2,22)=17.023, p<.0001; 呈示時間:. 視の両方を用いた。きらめき格子錯視におけるバー,背. F(7,77)=3.489, p<.005]。また,各要因の交互作用も全て. 景,パッチの輝度,及びバーと背景の黒い正方形のサイ. 有意であった [形状―サイズ: F(4,44)=9.865, p<.0001;. ズは実験 1 と同一であった。きらめき格子錯視で用いら.
(4) れたパッチは 0.46°の円形であった。ハーマン格子にお. きらめき格子錯視の強度について,間隔の幅について. ける背景の輝度及びバーと背景の正方形のサイズはきら. の 1 要因の分散分析を行った。間隔についての主効果は. めき格子錯視と同じであった。ハーマン格子錯視におけ. 有意であった [F(5, 30)=29.698, p<.0001]。ハーマン格. る格子の輝度はきらめき格子錯視のパッチの輝度と同じ. 子と同じように,バーにおける間隔は 0°から 0.57°ま. であった。両錯視にはいずれも 8×6 本のバーからなる. で拡大した際に,錯視の強度が有意に弱くなったが,間. 格子があった。刺激図形の全体的な大きさは 15.51° ×. 隔は 0.57°から 1.43°まで拡大した時には錯視の強度. 11.99°であった。観察距離は 42cm であった。. が有意に変化しなかった。. 格子における 2 つの交差点 (きらめき格子錯視の場合は. 以上の結果から,十字形の図形構成はハーマン格子錯. パッチ,ハーマン格子錯視の場合は十字) の間にあるバ. 視の強度を弱めた。特に間隔の幅が十字の翼より広い際. ーの中点に背景と同じ黒色の間隔を加えた。黒色の間隔. に (間隔の幅が 0.57°以上になる場合),錯視が見えなく. の幅は 0°,0.29°,0.57°,0.86°,1.14°,1.43°. なった。次に,パッチ間に存在する格子に空間間隔を与. の 6 種類であった。間隔の幅が 0°の場合には間隔が存. えた場合のハーマン格子錯視ときらめき格子錯視の変化. 在せずオリジナルの錯視図形が呈示されたが。間隔の幅. 傾向は類似することが明らかになった。つまり,両錯視. が広くなるほど格子のバーの長さが短くなった。間隔の. が生じる為には,一定の格子の長さが必要であると考え. 幅によって,きらめき格子錯視とハーマン格子錯視はそ. られる。ハーマン格子錯視には方位処理が関係すると主. れぞれに 6 種類の刺激が用いられた。. 張する先行研究がある (Schiller, & Carvey, 2005)。一方. 手続き ハーマン格子錯視ときらめき格子錯視の観察・. で本研究における実験1〜4の結果は,きらめき格子錯. 評定は全て個別のブロックにて行った。 評定に入る前に,. 視においても方位処理が重要であることを示す。上記知. 刺激図形の事前観察も実施した。事前観察では呈示時間. 見に基づくと,錯視生起に一定の格子の長さが必要な理. をコントロールせずに,被験者に自由に観察させた。事. 由として, 方位情報の空間統合が錯視生起に重要であり,. 前観察が終了してから評定フェースに移った。評定フェ. 空間統合を保証しない方位成分が与えられた場合には錯. ースには各刺激がランダムな順序で 5 回ずつ呈示された。. 視が生起しないことが挙げられる。. 合計で 30 試行を行った。 観察時間は制限されなかった。 観察終了後キーを押すと評定画面に移った。キーボード. 結論. を用い,試行ごとに錯視の強度について 04 の 5 段階で. 本研究では,格子型錯視について,以下の点を明らか. 評定させた。. にした。 結果と考察. ハーマン格子錯視の強度について,間隔の幅について の 1 要因の分散分析を行った。間隔についての主効果は 有意であった [F(5,30)=56.506, p<.0001]。つまり,バー における間隔が 0°から 0.57°まで拡大するにつれて, 錯視の強度が有意に下がったが,間隔が 0.57°から 1.43°まで更に拡大されても,錯視の強度には有意な変 化が生じなかった。. 1,パッチ並びに格子の方位はきらめき格子錯視生起 にとって重要な要因であることを示した。 2,きらめき格子錯視とハーマン格子錯視のメカニズ ムが共通する可能性を示唆した。 3,方位要因による錯視の強度変化は,呈示時間に依 存して変化することが明らかにした。 4,視覚システムにおける方位処理の空間相互作用は, 格子型錯視の生起メカニズムである可能性が高い。 主要引用文献 Schiller, P. H., Carvey, C. E. (2005). The Hermann grid illusion revisited. Perception, 34, 13751397. Schrauf, M., Lingelbach, B., Wist, E. R. (1997). The scintillating grid illusion. Vision Research, 37, 10331038. Schrauf, M., Wist, E. R., & Ehrenstein, W. H. (2000). The scintillating grid illusion during smooth pursuit, stimulus motion, and brief exposure in. 図 6.間隔の幅による両格子錯視の強度。. humans. Neuroscience Letter, 284, 126128..
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