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格子型錯視の空間的・時間的特性―方位の要因の検討を通して [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)格子型錯視の空間的・時間的特性―方位の要因の検討を通して キーワード:きらめき格子錯視,ハーマン格子錯視,方位 所 属. 行動システム専攻心理学コース 氏 名. 問題と目的. 銭 琨. 合計 15 種類の刺激を用いた。. 格子型錯視には,ハーマン格子錯視ときらめき格子錯. 結果. 視の 2 種類が含まれる。ハーマン格子錯視とは図 1 のよ. 錯覚的黒点の強度について,パッチの形状とサイズに. うな格子状の図形で,白の交差点の部分が灰色,あるい. ついての 2 要因の分散分析を実施した。形状の主効果が. はやや影になったように見える錯視現象である。ハーマ. 有意であった [F(2,8)=8.604, p<.05]。パッチのサイズの. ン格子のバーを灰色に変え,その交差点上に白い円形の. 主効果も有意であった [F(4,16)=3.931, p<.05]。また交. パッチを置いた図形は、きらめき格子錯視と呼ばれる. 互作用は有意であった [F(8,32)=3.508, p<.01]。5%水準. (図 2)。本研究は,格子型錯視のメカニズムを明らかにす. で下位検定を実行した。有意な交互作用に基づくパッチ. ることを目的とした。. 形状とサイズの単純主効果の検定を行ったところ, 0.46°および 0.59°の時に形状の単純主効果が有意で あ っ た [0.46 deg: F(2,40)=4.853, p<.05; 0.59 deg: F(2,40)=14.773, p<.001]。一方,円形もしくは正方形の 時 に , サ イ ズ の 単純 主 効果 が 有 意 で あ った [ 円 形: F(4,48)=5.334, p<.005; 正方形: F(4,48)=4.595, p<.005]。 しかしながら,菱形では有意な単純主効果は得られなか った (p>.25)。. 図 1.ハーマン格子錯視. 図 2.きらめき格子錯視 実験1 目的. きらめき格子錯視を調べた先行研究では,すべて円形 のパッチを用いてきたため,円形とは異なるパッチを用 いた場合にどのような効果が生じるかという点はまだ調 べられていない。実験1はきらめき格子錯視図形におけ るパッチの大きさと形状を操作し,両者の相互作用につ いて検討した。 方法 被験者. 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 5 名. (男性 2 名,女性 3 名) が実験に参加した。. 図 3.実験1における錯覚的黒点の強度。 考察. 刺激 実験の刺激図形として,8×6 本のバーからなる格. 本実験の結果から,菱形条件と正方形条件では,パッ. 子を用いた。観察距離は 60cm であった。刺激図形の全. チサイズの変化に伴う強度の変化の傾向に違いがみられ. 体的な大きさは 15.51° × 11.99°であった。格子のバ. た。特に 0.59°条件において,正方形では錯視が消失し. ーの幅は視角 0.33°であり,背景の正方形の一辺の長さ. たが,菱形には強い錯視が残った。二つのパッチは同じ. は 視 角 1.43 ° で あ っ た 。 背 景 及 び 正 方 形 の 輝 度は. 面積であったが方位が異なっていた。そのため,錯視量. 2.21cd/m2,バーの輝度は 99.5 cd/m2 であった。パッチ. の違いに貢献する要因は「方位」である可能性が高い。. の輝度は 9.72 cd/m2 であった。パッチは,円形,正方形,. そこで,錯視の強度がパッチの方位要因に影響される可. および菱形の 3 種類を用いた。 形ごとに 0.20°,0.26°,. 能性について調べるために,実験 2 を行った。. 0.33°,0.46°, および 0.59°の 5 種類の大きさを設け,. 実験2.

(2) 目的 格子の交差点上に重ねる正四辺形の方位を操作し,錯. 本実験では,きらめき格子錯視の図形を全体的に回転 させ、相対方位の役割を検討した。. 視の強度にどのような影響を及ぼすかを検討した。 方法 被験者. 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 5 名. 方法 被験者. 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 5 名. (男性4名,女性1名,内 4 名が実験1,2の参加者) が. (男性 2 名,女性 3 名,内 3 名が実験1の被験者) が実験. 実験に参加した。. に参加した。. 刺激,手続き 実験 3 は,以下の点を除いて実験 1 と同. 刺激,手続き 実験 2 は,以下の点を除いて実験 1 と同. 一であった。実験の刺激図形には 8×8 個の正方形から. 一であった。パッチには一辺 0.59°の正四辺形を用いた。. なる格子であった。刺激図形の全体的な大きさは. 方位は 0,15,30,45,60,75 度の 6 種類であった。6. 15.51° ×15.51°であった。パッチに 0.59°の円形,. 種類の刺激図形はそれぞれ 2 回ずつ現れ,計 12 刺激が. 菱形,正方形を用いた。また,相対方位を検討するため,. 被験者ごとにランダムな順序で呈示された。. 「直立」と「回転」という 2 タイプの錯視図形を用いた。. 結果 錯覚的黒点の強度について,正四辺形の方位につい. 「直立」タイプは実験 1,2 に用いられたオリジナルの きらめき格子錯視図形であった。それに対して, 「回転」. ての 1 要因の分散分析を行った結果,方位の主効果は有. タイプはオリジナル図形を全体的に 45 度回転したもの. 意であった [F(5,20)= 56.432, p<.0001]。方位の主効果. であった。したがって,計 6 種類の刺激図形が用意され. に基づく Ryan 法による多重比較の結果,0 度­30 度,0. た。6 種類の刺激図形はそれぞれ 2 回ずつ現れ,計 12. 度­45 度,0 度­60 度,0 度­75 度,15 度­30 度,15 度­45. 刺激が被験者ごとにランダムな順序で呈示された。. 度,15 度­60 度,30 度­45 度,30 度­75 度,45 度­75 度, および 60 度­75 度のペアには有意な強度差が見られた (p<.05)。. 結果 パッチ形状と図形のタイプについての 2 要因の分散分 析を実施したところ,両要因の主効果及び交互作用が有 意であった [形状: F(2,8)=139.182, p<.001; タイプ: F(1,4)=45.375, p<.005; 交互作用: F(2,8)=8.432, p<.05]。 5%水準で下位検定を実行した。有意な交互作用に基づ くパッチ形状と図形タイプの単純主効果の検定を行った ところ,両タイプともに有意であった [直立: F(2,16)=71.437, p<.001; 回転: F(2,16)=61.065, p<.001]。 パッチ形状については,正方形条件で有意な単純主効果 がみられたが [F(1,12)=41.667, p<.0001],円形及び菱形 条件下では,有意な単純主効果がなかった (p>.05)。. 図 4.実験 2 における錯覚的黒点の強度。 考察 実験2では,パッチのエッジ方位がきらめき格子錯視 の強度に強い影響を及ぼすことが明らかとなった。この 結果は,きらめき格子錯視の生起がパッチに対する視覚 的方位処理に基づく可能性を示唆する。ただし,ここで はパッチの方位のみの検討に留まっていたが,もう一つ の可能性として,パッチ自体の絶対方位のみならず,パ. 図 5.実験 3 における錯覚的黒点の強度。. ッチと格子の相対方位も錯視強度に影響することが考え. 考察. られる。次の実験では,きらめき格子錯視の錯視量を変. 実験3の結果から,パッチの絶対方位のみならず,パ. 調する要因が絶対方位なのか相対方位なのかを検討した。 実験3 目的. ッチと格子の相対方位も錯視に影響を及ぼすことが明ら かになった。以下の 2 つの条件のいずれか 1 つが満たさ れれば錯視が弱くなるものと考えられる:.

(3) 1,パッチのエッジの方位が垂直・水平. 形状―時間: F(14,154)=3.546, p<.0001; 形状―サイズ:. 2,パッチのエッジと格子のバーが平行・直交. F(14,154)=4.880, p<.0001; 形状―サイズ―時間:. 以上の 3 つの実験を通じて,きらめき格子錯視の生起. F(28,308)=2.031, p<.005]。 実験 4 の結果をまとめると,. にとって非常に重要な要因として「方位」要因が新たに. まず,0.33°のパッチにおいて,観察時間が長いほど錯. 示された。しかしながら,以上の全ての実験では時間的. 視の強度が強くなった。0.46°の時には,円形・菱形条. 要因の影響は検討されなかった。先行研究では,速すぎ. 件で,観察時間が長いほど錯視が強くなったが,正方形. る運動速度及び短すぎる呈示時間は錯視の効果を弱める. 条件では例外的に,観察時間が長いほど錯視が有意に弱. ことが示されている (Schrauf, Wist, & Ehrenstein,. くなった。. 2000)。実験 4 では,刺激の時間的側面が方位要因の役 割に影響する可能性を検討した。. 考察 短時間呈示条件においては,視覚系は画像中の低空間. 実験4. 周波数成分のみを分析可能である。従って,比較的高い. 目的. 高空間周波数成分のエッジで定義されるパッチの形状は. 本実験では呈示時間を変化させながら,きらめき格子 錯視に与える方位要因の影響を検討した。 方法. 同条件においては正確に弁別できない可能性があった。 そのため,各形状を視覚系が弁別できなかったために, 錯視強度がほぼ一致していたものと思われる。観察時間. 被験者 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 12 名. が長い場合には,形状の識別が容易であったため,正方. (男性 7 名,女性 5 名,内 3 名が実験1,2,3 の参加者). 形の錯視強度が下がった。. が実験に参加した。. なお,パッチの形状に関わらず,短時間呈示の時に錯. 刺激 実験 4 の刺激は,以下の点を除いて実験 1 と同一. 視強度が低かった。その原因は 2 つ想定される。一つは. であった。観察距離は 42cm であった。パッチは円形,. 方位処理が不完全であったために,錯視が生じなかった. 正方形,および菱形の 3 種類を用いたが,形状ごとのサ. という考えである。もう一つは,注意移動が生じずに「き. イズは実験 1 で強度の変化が顕著に見られた 0.33°,. らめき」が生じなかったためなのかもしれない。. 0.46°,および 0.59°の 3 種類だけを用いた。また,先. 実験 4 においては,きらめき格子錯視に関係する時空. 行研究を参考して (Schrauf, et al., 2000),図形の呈示時. 間要因に焦点をしぼって検討した。ハーマン格子錯視と. 間を 40,70,140,210,350,490,700,1000ms の 8. きらめき格子錯視は同じメカニズムで生起する錯視であ. 種類,合計 72 試行を行った。. るか否かについては断定できなかった。本研究はきらめ. 手続き 評定に入る前に,被験者に 9 つの刺激図形を観. き格子錯視について 「方位」 要因の重要さを究明したが,. 察させた。 スペースキーを押して観察フェーズを始めた。. この要因は両格子錯視に共通に重要であるか否かを検討. そこでは呈示時間をコントロールせずに,被験者に自由. する必要がある。ハーマン格子錯視ときらめき格子錯視. に観察させた。被験者は各刺激の観察が十分だと思った. との類似性と差異を検討するため。両錯視における格子. 時点でスペースキーを押して次の図形をまた観察した。. に空間間隔を空けた刺激を考案し,錯視の強度変化を比. この作業を 9 つの刺激図形すべてについて行い,その後. 較した。. 評定フェーズに移った。スペースキーを押すと刺激図形. 実験5. が現れた。刺激図形呈示終了後,白と黒の丸いドットで. 目的. ランダムに構成されたマスクを 490ms 間呈示した。マ. 本実験は両錯視における格子の交差点の間に存在する. スク呈示終了後,評定用ゲージのある画面に移った。試. バーの空間間隔量を操作した。 錯視の強度変化を比較し,. 行ごとに錯視の強さについて 0­4 の 5 段階で評定させた。. 両錯視の共通性と差異について考察した。. 結果 実験 4 のデータを用い,パッチの形状,パッチのサイ. 方法 被験者 正常な視力 (矯正を含む) を有する成人 7 名. ズ,呈示時間についての 3 要因分散分析を行った。パッ. (男性 4 名,女性 3 名,内 3 名が実験1,2,3,4の参. チの形状,パッチのサイズ及び呈示時間について,いず. 加者) が実験に参加した。. れの主効果も有意であった [形状: F(2,22)=38.509,. 刺激 実験 5 では,きらめき格子錯視とハーマン格子錯. p<.0001;サイズ: F(2,22)=17.023, p<.0001; 呈示時間:. 視の両方を用いた。きらめき格子錯視におけるバー,背. F(7,77)=3.489, p<.005]。また,各要因の交互作用も全て. 景,パッチの輝度,及びバーと背景の黒い正方形のサイ. 有意であった [形状―サイズ: F(4,44)=9.865, p<.0001;. ズは実験 1 と同一であった。きらめき格子錯視で用いら.

(4) れたパッチは 0.46°の円形であった。ハーマン格子にお. きらめき格子錯視の強度について,間隔の幅について. ける背景の輝度及びバーと背景の正方形のサイズはきら. の 1 要因の分散分析を行った。間隔についての主効果は. めき格子錯視と同じであった。ハーマン格子錯視におけ. 有意であった [F(5, 30)=29.698, p<.0001]。ハーマン格. る格子の輝度はきらめき格子錯視のパッチの輝度と同じ. 子と同じように,バーにおける間隔は 0°から 0.57°ま. であった。両錯視にはいずれも 8×6 本のバーからなる. で拡大した際に,錯視の強度が有意に弱くなったが,間. 格子があった。刺激図形の全体的な大きさは 15.51° ×. 隔は 0.57°から 1.43°まで拡大した時には錯視の強度. 11.99°であった。観察距離は 42cm であった。. が有意に変化しなかった。. 格子における 2 つの交差点 (きらめき格子錯視の場合は. 以上の結果から,十字形の図形構成はハーマン格子錯. パッチ,ハーマン格子錯視の場合は十字) の間にあるバ. 視の強度を弱めた。特に間隔の幅が十字の翼より広い際. ーの中点に背景と同じ黒色の間隔を加えた。黒色の間隔. に (間隔の幅が 0.57°以上になる場合),錯視が見えなく. の幅は 0°,0.29°,0.57°,0.86°,1.14°,1.43°. なった。次に,パッチ間に存在する格子に空間間隔を与. の 6 種類であった。間隔の幅が 0°の場合には間隔が存. えた場合のハーマン格子錯視ときらめき格子錯視の変化. 在せずオリジナルの錯視図形が呈示されたが。間隔の幅. 傾向は類似することが明らかになった。つまり,両錯視. が広くなるほど格子のバーの長さが短くなった。間隔の. が生じる為には,一定の格子の長さが必要であると考え. 幅によって,きらめき格子錯視とハーマン格子錯視はそ. られる。ハーマン格子錯視には方位処理が関係すると主. れぞれに 6 種類の刺激が用いられた。. 張する先行研究がある (Schiller, & Carvey, 2005)。一方. 手続き ハーマン格子錯視ときらめき格子錯視の観察・. で本研究における実験1〜4の結果は,きらめき格子錯. 評定は全て個別のブロックにて行った。 評定に入る前に,. 視においても方位処理が重要であることを示す。上記知. 刺激図形の事前観察も実施した。事前観察では呈示時間. 見に基づくと,錯視生起に一定の格子の長さが必要な理. をコントロールせずに,被験者に自由に観察させた。事. 由として, 方位情報の空間統合が錯視生起に重要であり,. 前観察が終了してから評定フェースに移った。評定フェ. 空間統合を保証しない方位成分が与えられた場合には錯. ースには各刺激がランダムな順序で 5 回ずつ呈示された。. 視が生起しないことが挙げられる。. 合計で 30 試行を行った。 観察時間は制限されなかった。 観察終了後キーを押すと評定画面に移った。キーボード. 結論. を用い,試行ごとに錯視の強度について 0­4 の 5 段階で. 本研究では,格子型錯視について,以下の点を明らか. 評定させた。. にした。 結果と考察. ハーマン格子錯視の強度について,間隔の幅について の 1 要因の分散分析を行った。間隔についての主効果は 有意であった [F(5,30)=56.506, p<.0001]。つまり,バー における間隔が 0°から 0.57°まで拡大するにつれて, 錯視の強度が有意に下がったが,間隔が 0.57°から 1.43°まで更に拡大されても,錯視の強度には有意な変 化が生じなかった。. 1,パッチ並びに格子の方位はきらめき格子錯視生起 にとって重要な要因であることを示した。 2,きらめき格子錯視とハーマン格子錯視のメカニズ ムが共通する可能性を示唆した。 3,方位要因による錯視の強度変化は,呈示時間に依 存して変化することが明らかにした。 4,視覚システムにおける方位処理の空間相互作用は, 格子型錯視の生起メカニズムである可能性が高い。 主要引用文献 Schiller, P. H., Carvey, C. E. (2005). The Hermann grid illusion revisited. Perception, 34, 1375­1397. Schrauf, M., Lingelbach, B., Wist, E. R. (1997). The scintillating grid illusion. Vision Research, 37, 1033­1038. Schrauf, M., Wist, E. R., & Ehrenstein, W. H. (2000). The scintillating grid illusion during smooth pursuit, stimulus motion, and brief exposure in. 図 6.間隔の幅による両格子錯視の強度。. humans. Neuroscience Letter, 284, 126­128..

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