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スポーツにおける目標志向性に関する日米比較研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)スポーツにおける目標志向性に関する日米比較研究 キーワード:スポーツ、課題・自我志向性、個人・社会志向性、日米、文化的自己観 行動システム専攻 磯貝 浩久 1.はじめに. なく、多様な視点から目標の志向性について検討する必. スポーツ活動を生涯に渡って継続することは、運動不. 要性が指摘されている(Duda & Whitehead, 1998) 。つま. 足に伴う疾患やストレス関連疾患などの様々な疾病を予. り、理論的枠組みに基づいて、スポーツ場面でみられる. 防する上で、また豊かな生活を営む上で重要なことであ. 多様な目標を評価・検討することが、競技者の動機づけ. る。スポーツの継続に関与する重要な要因として、動機. を理解していく上で有効になると考えられる。このよう. づけの問題が指摘できる。スポーツに対する動機づけの. な観点から検討を行うことが、スポーツにおける目標志. あり方は、様々なスポーツ行動に影響を及ぼしていると. 向性に関する研究課題とみなされる。. いえる。さらに、スポーツ場面の動機づけは、満足感、. ところで、スポーツの持つ価値やスポーツの意味づけ. 爽快感などスポーツで得られる情動の変化に影響し、ま. は、個人が所属する文化によって異なることから、スポ. たスポーツにおける認知過程にも深く関与している。こ. ーツ場面の動機づけのあり方に文化的差異がみられるこ. れらのことから、スポーツにおける動機づけ研究の必要. とが示されてきた(Duda and Allison, 1990) 。すなわち、. 性が示唆される。. スポーツ場面で個人がどのような目標を志向するかとい. 従来の多くの動機づけ研究では、スポーツ競技者を如. う問題には、文化的要因が深く関与しているといえる。. 何にして動機づけるかという問題に焦点が当てられてき. 目標志向性と文化の関係を明らかにすることによって、. た。しかし、近年になり、如何にして動機づけるかとい. 目標志向性の概念の異文化間での妥当性が示されるとと. う観点よりも、何に対して動機づけるかという観点の重. もに、 日本人の特徴を把握することができると思われる。. 要性が指摘されるようになった (Nicholls, 1983; Dweck,. これらから、スポーツにおける目標志向性について、比. 1986) 。すなわち、競技者の動機づけの方向性により、ス. 較文化的観点から検討することが研究課題として指摘で. ポーツ場面での認知及び行動が影響を受けると考えられ、. きる。. この方向性を把握する必要性が指摘できる。このような. 本研究では、スポーツにおける目標志向性について比. 観点から、競技者の動機づけを検討するためには、目標. 較文化的観点から検討する。そのため、アメリカ合衆国. 理論(目標志向性理論)に基づいてアプローチすること. を比較対象国として選定した。その理由として、次の3. が重要といえる。. 点を挙げることができる。. 目標理論では、スポーツ場面で競技者が志向する目標. 1. スポーツにおける目標志向性の研究の多くは米国. やその意味づけによって、目標を成し遂げるための方法. で実施されており、そこで提示された知見が日本. や過程が影響を受け、その結果としてさまざまな行動が. 人に当てはまるかを比較検討できること。. 生じると捉える(Dweck, 1986; 上淵・川瀬, 1995) 。そ. 2. 学習に対する動機づけの日米比較研究が多数存在. して、競技者の目標志向性として、練習の過程や運動技. し、そこでは日米間に様々な相違が認められるこ. 術の進歩を重視する課題志向性と、自分の運動能力を重. とが報告されていること。. んじ他者との比較を重視する自我志向性の2つの志向性. 3. 文化的自己観の概念など自己に対する考え方が日. の重要性が指摘されてきた(Nicholls, 1983; Dweck,. 米で相違し、そのことが様々な動機づけに影響を. 1986; Ames and Ames, 1984) 。スポーツ場面でも課題・. 及ぼしていることが指摘されていること。. 自我志向性と満足感や不安などの感情との関係、行動の. 以上、スポーツにおける目標志向性を評価する新たな. 継続や学習方略との関係などについて検討され、理論の. 視点を提示し、日米の大学生競技者が抱く目標志向性を. 有効性が検証されている (細田・杉原, 1999; Duda et al.,. 比較することによって、両国の差異が明らかになり、そ. 1995; Tank and White, 1996) 。. のことが日本人競技者の目標志向性のあり方に対する理. しかしながら、スポーツ場面で競技者が抱く目標は、 課題・自我志向性という枠組みだけで捉えられるもので. 解を深めることに結びつくと考えられる。 ここに、本研究の重要な研究課題が設定できる。.

(2) 2.研究目的. また、基本仮説を基にした具体的な下位仮説は以下の. 本研究は、スポーツにおける目標志向性に関して新た. 3つである。. な視点を提示し、日米大学生競技者に2つの目標志向性. 仮説1 日本人競技者は米国人競技者と比較して、ス. 尺度を実施し、スポーツ場面の目標志向性に及ぼす文化. ポーツ場面で課題志向性が高く、自我志向性が低い傾向. の影響を明らかにすることを目的とする。そのため、以. にある。. 下の検討を行う。. 仮説2 日本人競技者は米国人競技者と比較して、ス. 第1に、スポーツにおける個人・社会志向性の概念を 示し、その評価尺度に関して、妥当性・信頼性を検証し、 尺度を作成する。. ポーツ場面で社会志向性が高く、個人志向性が低い傾向 にある。 仮説3. 日本人競技者の原因帰属には自己批判的帰. 第2に、日米の大学生競技者を対象に、スポーツにお. 属がみられ、米国人競技者には 自己奉仕的帰属がみら. ける個人・社会志向性尺度及びスポーツにおける課題・. れる。そのため、原因帰属と目標志向性の関係が日米で. 自我志向性尺度を実施し、 その等価性を検証すると共に、. 異なる。. 目標志向性の差異を明らかにする。 第3に、日米の大学生競技者のスポーツにおける目標 志向性と原因帰属の関係について分析し、その差異を明 らかにする。. 4.研究方法 本研究では、比較文化心理学の方法論を踏まえながら、 心理評価尺度(質問紙)を用いて実証的に検討する。特 に、評価尺度の内容や文法・意味が等しいかどうかに関. 3.研究仮説. して、訳し戻し法を用いることにより言語的等価性を保. 本研究の基本仮説は次の通りである。. 証し、因子的妥当性や信頼性など計量心理学的観点から. 「スポーツにおける目標志向性には相互独立的自己と、. 等価性を検証する。研究対象者は、大学における体育・. 相互協調的自己の文化的自己観が関係しており、そのた. スポーツ関連の授業を受講した学生とする。また、本研. め日本と米国の競技者の目標志向性がさまざまに相違す. 究ではスポーツ場面での動機に関係すると思われる要因. る。 」. (性、競技種目、競技経験年数、年齢、競技レベル)に. 基本仮説は、下図のように示される。. ついて、統制要因及び分析要因として取り上げ、分析を 行う。 5.論文の構成. スポーツ場面での. 本研究の目的を達成するために、論文は以下のように構. 様々な行動. <行動>. 成される。 第1章 序論 <スポーツ場面> <動機づけ>. <スポーツ場面>.   目標志向性. 第2章 スポーツにおける個人・社会志向性尺度作成 スポーツにおける個人・社会志向性という新たな.   目標志向性. 概念を提示して、予備調査及び先行研究から評価尺 度を作成し、 その信頼性と妥当性を検証する。 また、 その評価尺度を大学生競技者を対象として適用し、 日本人競技者のスポーツにおける個人・社会志向性 両親. コーチ. <自己>. 教師. 両親 兄弟. 自己 兄弟. コーチ 教師. 自己. 運動での友人. a:日本(相互協調的自己観). 友人. ら明らかにする。 第3章 スポーツにおける目標志向性の日米比較. チームメイト. 友人. に関する特徴を性、競技種目、競技レベルの観点か. チームメイト. 運動での友人. b:米国(相互独立的自己観). スポーツにおける個人・社会志向性尺度及びスポ ーツにおける課題・自我志向性尺度を用い、日米の 大学生競技者の比較を行い、両国の相違を明らかに する。日米という文化要因の他に、性、競技種目を 独立変数として分析を行う。これらから、スポーツ における目標志向性の文化的差異を明らかにして考.

(3) 察する。 第4章 スポーツにおける目標志向性と原因帰属の関 係についての日米比較 はじめに、スポーツ場面の帰属様式を5つの帰属. 名を対象として、スポーツにおける個人・社会志向性及 びスポーツにおける課題・自我志向性の日米比較を行っ た。主な結果は、以下の通りである。 (1). スポーツにおける課題・自我志向性尺度及びス. 次元(統制感、安定性、統御可能性、意図性、一般. ポーツにおける個人・社会志向性尺度の妥当性・. 性)で評価して、日米の相違を明らかにする。ここ. 信頼性が日米両国で示され、尺度の等価性が確認. では、日本人に自己批判的帰属の存在が認められ、. された。. 米国人に自己奉仕的帰属の存在が認められるかとい. (2). 日米競技者とも、課題・自我志向性及び個人・. う問題に焦点をあてる。そして、スポーツにおける. 社会志向性に年齢、競技レベルは関係しないこと. 目標志向性と帰属様式の関係について日米の相違を. が明らかになった。両尺度の因子間の関係につい. 明らかにする。. ては、日本では課題・自我志向性因子間及び個人・. 第5章 総括. 社会志向性因子間に相関が認められたのに対して、 米国では両因子間に相関が認められなかった。. 6.結果の概要. (3). 1)スポーツにおける個人・社会志向性尺度の作成とそ. が高いことが日米で共通に認められた。また、個. の適用. 人種目競技者は集団種目競技者と比べて、個人志. 350 名の大学生競技者を対象として、スポーツにおけ る個人・社会志向性尺度を作成し、性、競技種目、競技. 女性競技者は男性競技者と比べて、社会志向性. 向性が高いことが日米で共通に認められた。 (4). 日本人競技者は米国人競技者と比較して、自我. レベルの観点から特徴を分析した。主な結果は、以下の. 志向性が高く、課題志向性が低いことが示され、. 通りである。. 仮説1は支持されなかった。また、日本人競技者. (1). スポーツ場面で社会適応的特性を意味する社会. は米国人競技者と比較して、個人志向性が高く、. 志向性、スポーツで自己実現的あり方を意味する. 社会志向性が低いことが示され、仮説2は支持さ. 個人志向性の予備尺度が、予備調査及び先行研究. れなかった。. の項目を基に作成された。 (2). 因子分析の結果、スポーツにおける個人志向性 (8 項目) 、スポーツにおける社会志向性(10 項目). 3)スポーツにおける目標志向性と原因帰属の日米比較 日本人大学生競技者 374 名、米国人大学生競技者 216. の 2 因子構造であることが示され、内容的妥当性. 名を対象として、スポーツにおける目標志向性と原因帰. が確かめられた。また、本尺度と自意識尺度及び. 属の日米比較を行った。 主な結果は、 以下の通りである。. 個人志向性・社会志向性尺度との相関係数から、. (1). 本尺度の構成概念妥当性が示された。さらに、本 尺度とスポーツにおける内的適応と外的適応の重. (3). され、尺度の等価性が示された。 (2). 日本人競技者の帰属様式は性、競技種目など変. 視の程度との相関係数から、本尺度の基準関連妥. 化しにくい要因と関係し、米国人競技者の帰属様. 当性が示された。. 式は年齢、競技経験年数などスポーツ経験と共に. クロンバックのα係数及びスピアマン・ブラウ ンの公式を用いた折半法の結果から、本尺度の信. 変化する要因と関係することが明らかになった。 (3). 頼性が明らかになった。 (4). スポーツにおける帰属様式尺度の信頼性が確認. 日本人競技者は、統制感、安定性、一般性、統 御可能性、意図性の各帰属次元で自己批判的帰属. 本尺度の性差を分析した結果、女子競技者が男. がみられるのに対して、米国人競技者はこれらの. 子競技者より、社会志向性が高いことが明らかに. 帰属次元で自己奉仕的帰属が顕著であった。この. なった。また、本尺度の競技種目の差異を検討し. ことから、仮説3は支持された。. た結果、個人種目競技者は集団種目競技者と比べ. (4). 目標志向性と帰属様式の関係は、日本で自我志. て、個人志向性が高いことが示された。しかし、. 向性と統制感次元及び個人志向性と一般性次元で. 本尺度は競技レベルと関係しないことが示された。. 関係が示され、米国では課題志向性と安定性次元 及び個人・社会志向性と統制感次元で関係が示さ. 2)スポーツにおける目標志向性の日米比較 日本人大学生競技者 374 名、米国人大学生競技者 216. れた。.

(4) 7.仮説と結果に関する考察 本研究の仮説は、文化的自己観の概念から導かれてい. された欧米との比較など主観的・印象的なものが多い。 本研究の結果は、目標志向性という観点であるが、日本. たが、 目標志向性の結果が仮説を支持しなかったことは、. 人の社会志向性が低く、個人志向性が高いことを示して. 文化的自己観の概念を否定するものではなく、相互独立. おり、従来の指摘とは異なるものであった。従って、日. 的自己と相互協調的自己とスポーツにおける目標志向性. 本的スポーツ観等に関して、比較文化的観点から再度検. が直接的に結びつくものではないと捉えることが妥当な. 討していく必要性が示唆される。. ように思われる。すなわち、日本に関していえば、日本. 3)目標志向性を評価するための客観的尺度の活用. 人競技者は基本的に他者との関係で自己を捉えたり、他. 本研究で扱った目標志向性は、認知的動機づけ理論の. 者との関係や自分の役割を重んじているが、その内容は. 一つであり、評価尺度の妥当性が重要とされる。スポー. 時代とともに変化し、個を尊重する現代のスポーツ環境. ツにおける個人・社会志向性尺度の作成においては、因. においては、限られた範囲の役割、限られた他者との関. 子的妥当性、構成概念妥当性、基準関連妥当性、信頼性. 係といった消極的・限定的なものになっている可能性が. を確認した。また、日米比較においては、各尺度の妥当. ある。また、現代の日本スポーツにみられる価値観は、. 性、信頼性など等価性を検証した。これらの検討により. 個性を尊重する個人志向を推奨・容認しつつ、勝利や他. 作成された本研究の尺度は、スポーツ場面での動機づけ. 者より優ることも重視するといった傾向が強く、それを. 研究で活用できることが示唆される。. 競技者が受け取り個人志向・自我志向を強め、社会の期. 4)文化要素を考慮した比較文化的研究の推進. 待に応えようとしているとみなすことができる。 これに対して、スポーツの帰属様式では、成功場面で. スポーツ場面での目標志向性など動機づけに関する 比較文化的研究の多くは、米国で発展した概念や評価尺. 指導者・チームメートのおかげとみなし、失敗場面で自. 度の妥当性を異文化間で検証することを目的にしており、. 分の責任とする帰属の仕方が、社会から賞賛されたり、. 文化そのものについては考慮されてこなかった。そのた. 高い価値が与えられているため、自己批判的な傾向を示. め、本研究では文化的自己観という文化要素に着目し、. すのではないだろうか。このような観点に立つならば、. 文化的自己観が異なるという理由により日米比較を行っ. 競技者は重要な他者や社会全体のスポーツ及び競技者に. た。その意味で、本研究の試みはスポーツ心理学の領域. 対する期待や価値を受け止め、社会的に望ましい形で目. では新しいアプローチとして位置づけられる。このよう. 標を志向したり、帰属を行うとみなすことができ、両者. な研究方法により、目標志向性などの心理的諸過程と文. の結果の相違は決して矛盾したものではないと解釈する. 化の関係性を明確に示すことができると考えられる。従. ことができる。. って、文化要素を考慮した比較文化的研究を推進してい くことが示唆される。. 8.結果から得られる示唆 1)目標志向性研究における社会文化要因の考慮. 9.まとめ. スポーツ場面の目標志向性研究は、動機づけ理解のた. 本研究結果から、スポーツ場面での目標志向性の新た. めに重要な研究領域であり、これまでに数多くの検討が. な視点として、スポーツにおける個人・社会志向性の概. なされている。しかし、社会文化的な観点からの研究は. 念が示され、妥当性・信頼性のある評価尺度が作成され. 非常に少ない。本研究の結果から、日本人は米国人と比. た。スポーツにおける個人・社会志向性及びスポーツに. べて、スポーツにおける個人志向性及び自我志向性が高. おける課題・自我志向性は、 日米の大学生競技者間で様々. い傾向にあることが示された。このように、目標志向性. に相違することが示され、また原因帰属との関係も相違. のあり方は文化の影響を受けることが実証された。その. することが明らかになった。日米間の相違の仕方には、. ため、目標志向性研究においては社会文化的要因の影響. 文化的自己観の概念に合致するものとしないものが含ま. を充分考慮して研究を進めていく必要性が示唆される。. れていたが、スポーツにおける目標志向性に社会文化的. 2)日本的スポーツ観の再検討. 要因が影響することが明らかになった。これらのことか. 従来の日本的スポーツ観あるいは日本人競技者像に. ら、日本人競技者の目標志向性について探求するために. 関する論述においては、日本人はチームなどのスポーツ. は、文化的差異を考慮する必要性が指摘でき、そのこと. 集団の規範を重視する、個人よりも集団を重んじる、チ. により日本人に適合した理論・モデルを構築していくこ. ームメートなどとの協調的関係を大切にする等々が古く. とができると考えられる。. から指摘されてきた。これらには、日本の現状と理想化.

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参照

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