• 検索結果がありません。

中国師範系学生の職業意識形成に関する研究―新たな奨学政策の有効性に着目して― [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中国師範系学生の職業意識形成に関する研究―新たな奨学政策の有効性に着目して― [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 1.目次 序章 研究の目的と概要 第一章 中国における教員養成と採用の転換の歴史 第 1 節 就職制度の転換と進路選択の課題 第 2 節 労働市場と教員の地域的配置 第 3 節 新たな奨学政策の導入 第二章 師範系学生の職業選択に関する研究動向 第 1 節 師範系学生の進路選択と職業意識 第 2 節 奨学政策の効果 第 3 節 課題の再設定 第三章 師範系学生の職業意識形成過程 第 1 節 入学動機と入学時の職業意識 第 2 節 入学時の職業意識と在学中の経験の関連 第 3 節 在学中職業意識の変化 第 4 節 職業意識の変化の契機と理由 第四章 奨学生・非奨学生の比較分析 第 1 節 職業意識 第 2 節 入学動機 第 3 節 在学中の学習行動 第 4 節 身につけた能力 第五章 結論と今後の課題 第 1 節 結論 第 2 節 今後の課題 2.概要 序章 研究目的と研究背景 近年、中国にでは教職に従事しない師範系卒業生が 多くなっており、師範系学生就職問題が注目されている。 中国における師範系学生の教職観に関する研究は教員養 成の開放化と共に、2000 年から蓄積されており、これら の研究では、師範系学生の教職志望低下の問題が共通し て言及されている(高,2012)。 そして、教員就職の就職率が低くなると、結果的に質 の高い人材を十分に教育界に供給できないこと、または 学部の存在意義と、投じられる国費の費用対効果を低減 させることにつながる。従って、師範系学部に入学して きた学生の教職志望意識を高く維持することにより、教 育界に優秀な人材の提供と師範系学生就職問題の改善に つなげていくための知見を得ることは重要である。 そこで、本研究では、師範系学生の教職志望意識に注 目し、調査の結果を分析することで、中国における師範 系学生の職業意識形成のメカニズムを明らかにする。 第一章 中国における教員養成と採用の転換の歴史 第 1 節 就職制度の転換と進路選択の課題 建国後、政府は経済の発展を全面的にコントロールし た。同様に、政府は経済の発展に対応して、高等教育の 人材養成もコントロールした。その結果、大学生は優遇 され、学費だけではなく、寮費と生活費も支給されてい た。1980 年代からの市場経済の発展に伴い、大学は徐々 に学費などを徴収する段階に入った。1997 年から、師範 系学生は非師範系学生と同様に、全員学費を支払うよう になり、2000 年代初頭から、師範系学生は本格的に自由 就職段階に入った。 第 2 節 労働市場と教員の地域的配置 そして、教員養成は開放されるようになった。1999 年 6 月、教育部は第 3 回全国教育会議が開催され、「中国共産 党中央公務員教育改革と資質教育の推進を深めることに 関する決定」が公布され、将来の教員養成においてさら に開放的で多様化したモデルを採用し、多様な人材の養 成及び創造的精神の涵養の要請に応えることを明記した。 教員養成制度の開放化に伴い、採用も多様化した。学 校側は師範系卒業生以外の人材も採用し、特に都市部で は、高学歴と銘柄大学の採用に偏重した。 東部や都市部の学校において教員数は十分であるに もかかわらず、中西部や農村部の学校において教員はま だ不足している。大学卒業生は農村部の学校を就職先と して希望しておらず、その傾向は同様に農村部出身の学

中国師範系学生の職業意識形成に関する研究

―新たな奨学政策の有効性に着目して―

キーワード:師範系学生,職業意識形成, 教職志望意識,奨学政策,有効性 教育システム専攻 劉 小愷

(2)

2 生に見られたと指摘された(于,2008)。東部や都市部と は違い、中西部や農村部の教育は遅れていると言え、教 員の不足は大きな問題である。地域間の教育格差が非常 に大きいと指摘されている。 第 3 節 新たな奨学政策の導入 地域間教育の発展の不均衡を改善し、長期間にわたり 教育に従事する質の高い教員を大量に養成し、教育の発 展を支えていくために、2007 年から新たな師範教育の奨 学政策が改めて実施されるようになった。この実施方法 の主なポイントは以下の通りである。 ①奨学政策を享受する学生は在籍する四年間に 学費と宿泊費を免除し、生活費を補助する。 そのための経費は中央財政から支出する。 ②学生は入学する前に学校及び地元の省級教育 行政部門と契約を結び、卒業してから最低 10 年間に小中学校の教育事業に従事することを 承諾する。都市部で働く学生は、農村部の義 務教育段階の学校で 2 年間働く必要がある。 ③学生が卒業した後、原則として出身地の小中 学校あるいは高校に就職する。契約が規定し たサービス期間以内の学校間の流動就職は許 可される。 ④奨学政策を享受する師範系学生は卒業前及び 契約期間内に、無職で修士課程に入るのが原 則として認められない。条件を満たす卒業生 は、教育専門職学位修士として採用できる。 しかし、仕事をしながら修士課程に進学する 必要がある。 第二章 師範系学生の職業選択に関する研究動向 第 1 節 師範系学生の進路選択と職業意識 高(2012)は師範大学大学生が就職する際に重視する 要素の順位に変化が生じていると指摘した。すなわち、 2000 年から 2002 年までの研究では、「経済的報酬」が次 位にあるが、2002 年から 2005 年までの研究結果では首 位に移行した。そして、2005 年以降の研究では「経済的 報酬」が重視される結果が見られるが、「安全感と貢献」 や「人間関係」など内面的な欲求を充実させようとする 意識が強まる動きが見出される(高、2012)。この点につ いて日本も同じ傾向があると安達(2004)は指摘した。 つまり、産業経済の発展によって豊かになったため、「生 計を支えるために働くことの価値が薄れ、 個性の発揮や 自己実現の大切さが強調されるようになった」(安 達,2004)。 また、近年進学競争の激化に伴う教員の多忙化や、複 雑な人間関係なども師範系学生の教職志望の低下につな がると考えられる。王(2014)は中国における高校教員 の労働実態及びストレスとその対策に関する研究を行っ た。ストレス要因について、多忙な労働実態と教員を取 り巻く職場環境・教育環境という二つが指摘された。 第 2 節 奨学政策の効果 河北、山西、内モンゴルなど 17 省の教育行政部門は第 1 期の卒業生の就職状況を統計した。この 17 省 4821 名 卒業生の就職率は 90%を超えた。また、卒業生の 41 名 は違約しており、0.9%を占めている。266 人は地域また ぎ就職、休学、予定通りに卒業できなかった状況にあっ た。そして、晋(2016)は学生が教職への動機付けが弱 いと指摘し、「入学時で半分以上の学生は教師になりたか ったにもかかわらず、卒業時期でその割合は 25%にも達 していない」と述べた。以上のように、奨学政策を受け たにもかかわらず、教職志望意識低下の問題も存在して いる。 第 3 節 課題の再設定 従来の師範系学生を対象にする先行研究は、卒業時期 においての職業選択や職業選好に関わる要因に注目する ものは多いが、その職業選択までの職業意識形成の過程 に注目するものは少ない。そして、奨学政策に関わる先 行研究も政策や地域格差のようなマクロレベルのものを 考察する一方、学生個人のキャリア形成にあまり注目し ていない。 しかし、学生は大学に入学してから、職業選択につい ての状態や意識と理解など大学生活を送る中で徐々に変 わりつつあるため、卒業段階だけに注目するのは十分で はない。職業選択の問題解決への取り組みにおいては、 学生の職業意識形成における変化に注目する必要がある と考えられる。 そこで、本研究では、師範系学生の教職志望意識に注 目し、調査の結果を分析することで、今日中国における 師範系学生の職業意識形成のメカニズムを明らかにする。 その中で、特に 2007 年から実施されてきた新たな奨学 政策は師範系学生の教職志望意識に与えている影響を究 明することで、奨学政策の有効性について検討する。 本研究において、「職業意識」については師範系学生が 教師になりたいか、なりたくないかという「教職志望意 識」を中心に取り扱うことにする。そして、「在学中の経 験」については学習行動と教員としての資質能力形成を 中心に取り扱うことにする。

(3)

3 【本研究の仮説】 仮説① 師範系学生の入学動機には、多元的な効用基準が ある。入学時の職業意識は在学中の経験に影響を 与える 仮説② 在学中の経験を通して教職志望意識が変わって いく可能性がある。教員としての資質能力への自 覚と自信によって、教職志望意識が変化する 仮説③ 奨学政策は入学動機と在学中の経験を通して、師 範系学生の職業意識形成に影響を与える 【研究方法】 本研究では、まず中国における師範系学生の職業意識 形成と新たな奨学政策の実施効果に関する先行研究をま とめ、その不足点を明らかにする。次に、学生アンケー トを行い、入学動機、在学中の経験、教職志望意識等を 調査し、これらの検討を通して師範系学生の職業選択の メカニズムを明らかにする。そして、奨学政策が師範系 学生の職業意識に与えている影響を分析する。 本研究は三つの大学(西南大学、長春師範大学、上海 師範大学)で奨学生と非奨学生を対象にして調査を行っ た。対象学年は大学三年生と大学四年生である。今回は 師範系学生の職業意識形成に注目し、専攻を限定してい ない。 第三章 師範系学生の職業意識形成過程 第 1 節 入学動機と入学時の職業意識 師範系学生の入学動機には、「教職への動機づけ」以外 に、「専攻に対する興味」、「学校のレベル」、「両親の意見」、 「将来教員就職の機会」、「学校の位置」、「親友のアドバ イス」、「学費」、「奨学金や生活補助金」、など、多元的な 諸要素が含まれている。その中で、「学校のレベル」が最 も重視されている効用基準として挙げられる。 奨学生にとっては、「教職への動機づけ」が最も重要 な効用基準として挙げられ、一方で、学費と奨学金や生 活補助金の影響が非常に大きいとは言えない。そして、 非奨学生について、「専攻に対する興味」が一番重要な 動機となり、「将来教員以外の就職機会」に関しては奨 学生より重視していると読み取れる。 第 2 節 入学時の職業意識と在学中の経験の関連 師範系学生の入学動機には多元的な効用基準があ り、教職を目指したいため入学したとは限らないと分 かった。そして、入学時の教職志望が今後大学在学中 の学習行動と教員としての資質能力形成に重要な影 響を与えていることは明らかである。 第 3 節 在学中職業意識の変化 入学時から調査時点までに教職志望意識変化の概観 を見ると、変化なしの人は 42.3%しか占めていなく、過 半数の人の教職志望意識が変化したことが分かった。 教職志望意識の「ぜひ目指したい」と「目指したい」 を統合し「目指したい」にし、「目指したくない」と「全 然目指したくない」を「目指したくない」に統合後に、 入学時と三年後期の意識の変化を明らかにした。その結 果、14.1%の人が上昇したのに対して、30%の人が下降し た。変更なしの割合は 55.9%にとどまっている。変更な し組の中に、終始一貫して目指したい人は全体の 39.6% を占めており、目指したくない人は 5.7%を占めている。 10.5%の人が「どちらとも言えない」状態が続いている。 第 4 節 職業意識の変化の契機と理由 入学時と三年後期の教職志望意識に変化があった学 生を「上昇組」と「下降組」と分けて比較した。 在学中の学習について、「大学の授業でよい成績を取 りたい」という項目に関しては、「上昇組」の得点が有意 に高いと分かった。身に付けた能力について、「学級管理」、 「教授・指導力」、「子どもとの関係構築」という教員と しての資質能力に対する自信は学生の教員志望意識に関 係していると考えられる。 そして、入学動機と自分の能力に対する自信の他にも 教職志望意識に影響を与える要素があると考えられるた め、本研究では、若松(2012)の自由記述形式の調査の 結果を参照し、入学時から調査時点まで教職志望意識変 化があった学生に、変化の契機と理由を確認させた。そ の結果、「教育実習・模擬授業を体験して」、「大学の授業 を受けて」、「同学年や先輩と話して」「教員の仕事内容と 環境を知って」「親友の仕事の様子を見て」などの契機を 通して、教育に対する興味や、教職に対する認知、自分 の適性、教員就職の可能性について考えることにより、 教職志望意識が変化したと分かった。 第四章 奨学生・非奨学生の比較分析 第 1 節 職業意識 入学時点でも現時点でも、「教職だけを考えている」奨 学生は非奨学生より多く、教職志望意識が強いとみられ る。奨学政策は教育に従事したい学生の養成に有効性が 見られる。そして、教職と教職以外の職業両方考えてい る非奨学生が非常に多く、就職難の状況の中で教員就職 が一つの選択肢として検討している人が多いと考えられ る。 第 2 節 入学動機

(4)

4 「教職だけを考えている奨学生」は「学校のレベ ル」、「将来教員就職の機会」を重視している。地方で奨 学生しか募集していない重点大学もあるため、奨学政策 はレベルの高い大学に行く機会を提供しているので学生 の興味を引いた側面も含んでいると考えられる。そし て、奨学政策の中で教員就職の可能性と就職機会の保証 が魅力的だと考えられる。 「教職以外も考えている奨学生」は「教職への動機 づけ」に関して、「教職だけ考えている奨学生」と「教 職だけ考えている非奨学生」より重視していない。奨学 政策は教職に興味を持ち、将来教職に従事したい学生を 多く集めた一方、最初からあまり教職に興味を持ってお らず、将来にも教職以外の職業も考えている学生を集め たことが考えられる。 第 3 節 在学中の学習行動 「学習意欲が高く、毎日コツコツ勉強している」、「大 学の授業でよい成績を取りたい」について、「教職だけ考 えている非奨学生」は「教職だけを考えている奨学生」 と「教職以外も考えている奨学生」より重視している。 奨学政策は特に「教職以外も考えている奨学生」の学 習意欲の向上にはマイナスの影響を与えていると考えら れる。それは奨学政策が将来の就職機会を保証している ことに関係していると考えることができる。それに対し て、教職を目指している非奨学生は将来教員就職の機会 が保証されていないので、自分の努力が不可欠と分かっ ており、在学中の学習を通して競争力を高めていきたい ので学習意欲が一番高いと考えられる。 第 4 節 身につけた能力 「学級管理」、「教授・指導力」、「子どもとの関係構築」 という教員としての資質能力に関して、「教職以外も考え ている奨学生」は「教職だけを考えている非奨学生」よ り低い。奨学政策は学習意欲に影響を与えることにより、 在学中の能力形成に影響しており、能力の向上にマイナ スの効果を及ぼす可能性も含んでいると考えられる。 第五章 結論と今後の課題 第 1 節 結論 (1) 師範系学生の入学動機には、多元的な効用基準があ る。現在、中国の師範系学生の入学動機が「教員になり たい」からであるとは限らないと言える。そして、入学 時の教職志望意識が今後大学在学中の学習行動と教員と しての資質能力形成に重要な影響を与えている。 (2) 在学中の経験を通して教職志望意識が変わっていく 可能性がある。しっかり勉強して大学でよい成績をとり、 教員としての資質能力に自信を持っている学生の教職志 望意識が上昇傾向にある。そして、教職に対する認知、 自分の適性、教員就職の可能性なども教職志望意識の変 化に影響を与えると分かった。 (3) よい大学で教育を受け、将来教員就職の機会を提供 しているため、奨学政策は教育に従事したい学生の養成 には有効であると言える。しかし、奨学政策は就職機会 を保証することで、在学中の学習行動と能力向上に関し てはマイナスの効果を及ぼす可能性も含んでいると考え られる。奨学政策は教員を多く育成することから見ると 量的には有効性が高いが、質的にはまだ不十分なところ があり、今後奨学生の選抜のあり方について再検討の余 地があると考えられる。 第 2 節 今後の課題 (1) 本研究では主に奨学政策が学生の教職志望意識に与 える影響を検討した。今後はカリキュラムや就職状況を 踏まえて、「地域別」と「大学別」の視点から奨学政策の 有効性をさらに深く分析していく必要がある。 (2) 本研究では、師範系学生在学中の教職志望意識の変 化とその理由を明らかにした。今後、大学のカリキュラ ムや教育体制、キャリアガイダンスなどをどのようなも のにすることで、学生の志望意識を維持し、あるいは高 めていけるのかを課題として検討する必要がある。 主要な参考文献 安達 智子,2004,「大学生のキャリア選択―その心理的背 景と支援―」, 『日本労働研究雑誌』,NO.533 PP27-37 王 穎,2014,「中国における高校教員の労働実態及びスト レスとその対策に関する研究」,北海道大学,博士(教 育学)学位論文 高 暁楠 ,2012,「中国の師範大学師範系学生の就職意識 に関する研究ー私立学校に対する意識に着目してー」, 『東京大学大学院教育研究科教育行政学論叢』,第 32 号,pp.1-13 若松 養亮, 2012,「教員養成学部生における教職志望意 識の変動要因」,『滋賀大学教育学部紀要 教育科 学』,NO62,pp.87-97 晋 婷婷,2016,「关于免费师范生职业竞争力提升的思考 (無償教育を受ける師範系学生の職業競争力の向上 に関する考察)」,『高等教育』,2016 年 12 月,P101 于 春娥,2008,「建国以来大学生就业制度的沿革与职业价 值观的的演变(建国以来大学生就職制度の沿革及び職 業価値観の変遷)」,山東大学,修士学位論文

参照

関連したドキュメント

「職業指導(キャリアガイダンス)」を適切に大学の教育活動に位置づける

ハンブルク大学の Harunaga Isaacson 教授も,ポスドク研究員としてオックスフォード

一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

 履修できる科目は、所属学部で開講する、教育職員免許状取得のために必要な『教科及び

 履修できる科目は、所属学部で開講する、教育職員免許状取得のために必要な『教科及び

就職後の職場定着が最大の使命と考えている。平成 20 年度から現在まで職場 定着率は