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日本調理科学会誌 Vol. 47 No. 1(214) 学生, 親, 祖父母, 一般の 619 名を対象に調査を実施した 調査時期は平成 21 年 12 月 ~ 平成 22 年 8 月である これらの中, 本研究は, 年中行事と通過儀礼における認知と経験について検討を行ったものである データは単純集

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北海道の行事食・儀礼食の特徴および親子間における伝承

Festival and Ceremonial Meals in Hokkaido

— The Differences in Recognition and Experience between

Parents and Children —

菅原久美子*

§

菊 地 和 美** 木 下 教 子*** 酒 向 史 代****

Kumiko Sugawara Kazumi Kikuchi Noriko Kinoshita Fumiyo Sako

This study focused on understanding the actual situation, in terms of recognition and experience, between parents and children, regarding meals consumed at festivals and on ceremonies in Hokkaido. In terms of the degree of rec-ognition, meals associated with New Year were most commonly recognized, while those associated with the Autumn, Spring and Chrysanthemum festivals were less recognized. On a national level, the degree of experience of the Vernal and Autumnal equinox, the Winter solstice were high, whereas those for the Autumn, and Spring festivals were low. The recognition and experience of the traditional meals associated with O-Shichiya was significantly lower, indicating that the survival of this tradition is under some pressure. However, the level of experience regard-ing traditional meals associated with weddregard-ing, funeral and Buddhist memorial services includregard-ing 3 generations of the family was extremely high. Hokkaido families, however, differed from the rest of the country in their high degree of recognition of the celebratory meals associated with weddings and landmark birthdays for the aged, but a low degree of recognition for those associated with the 7-5-3 birthday celebrations for children. There was a high level of agreement between parents and children in the degree of recognition of meals associated with events such as New year, Christmas and New Year’s Eve, and for those associated with celebrations such as birthdays, funeral and 7-5-3 birthdays celebrations. However, there was a low level of agreement between parents and children in the degree of recognition of meals associated events such as the Autumn, Spring and Chrysanthemum festivals and celebrations such as engagements and O-Shichiya.

キーワード: 行 事 食・儀 礼 食 festival and ceremonial meals;北 海 道 Hokkaido;認 知 recognition;経 験  experience;伝承 tradition

* 札幌国際大学短期大学部

(Sapporo International Junior College) ** 藤女子大学

(Fuji Women’s University) *** 北翔大学

(Hokusho University) **** 北海道教育大学

(Hokkaido University of Education)

§ 連絡先 札幌国際大学短期大学部 〒 004-8602 札幌市清田区清田 4 条 1 丁目 4 番 1 号 TEL 011(881)8844 FAX 011(885)3370 1. 緒  言  伝統的な祝いや祭りの年中行事は,日常生活の節目とな り,風土に根ざした行事食が作られ,また,通過儀礼の際 の儀礼食も家庭で作られて,日本各地で様々な形で伝承さ れてきた。  北海道は全国から集まった人々が開拓した土地であり, 行事食・儀礼食は,各々の生まれ故郷のものがもととなっ ている。この点で,他地域とはその歴史がやや異なる。し かし,新しい土地で北海道の風土に合わせ,また,食を通 して交歓し,支え合う中で,例えばくじら汁のような北海 道独自のものも生まれている。そして,北海道の食は明確 な地域性をもち,道南地方,道央地方,道東地方,道北地 方の 4 つに区分できる。これに伴い,行事食・儀礼食もそ れぞれ特徴がみられる1)  一方,近年,核家族化,少子化が進み,生活様式が大き く変っている。そして,食意識の変化に伴って食生活は簡 便化,洋風化,社会化,多様化している。また,北海道は 食料自給率がカロリーベースで 200%程度を維持していて, 都道府県別で最も高く,食との関わりは大きいものがある。 前述したように,地域や食の歴史が他とは異なる北海道に おいて,食生活の変化に伴って,行事食・儀礼食が現在ど のように認知・経験され,親から子へ伝承されているかに ついては興味深いものがある。  本研究では,平成 21~23 年度に実施された日本調理科学 会特別研究「調理文化の地域性と調理科学─行事食・儀礼 食─」で,北海道における行事食・儀礼食の認知・経験の 状況を世代別に実態把握し,全国データと比較することに よって地域の特徴を明らかにすることを目的とした。また, 親子間(学生とその親)の伝承の現状についても検討した。 2. 調査方法  日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学」 (平成 21~23 年度)に基づき,北海道に 10 年以上居住する

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学生,親,祖父母,一般の 619 名を対象に調査を実施した。 調査時期は平成 21 年 12 月~平成 22 年 8 月である。これら の中,本研究は,年中行事と通過儀礼における認知と経験 について検討を行ったものである。データは単純集計およ び年代別,家族構成別,親子間のクロス集計を行い,χ2 定により分析した。また本研究における行事食・儀礼食の 全国データは,日本調理科学会特別研究データベース(平 成 23 年)より各行事別に集計し,全国平均値を算出したも のである。 3. 結果および考察 (1) 調査対象者の属性  表 1 に 示 す と お り,調 査 対 象 者 619 名 の う ち 女 性 (95.8%)が多数を占めた。年齢層は 10・20 歳代(41.8%) が最も多く,次いで 50・60 歳代(27.3%),30・40 歳代 (26.3%)であった。家族構成は二世代が半数を占め,次い で同世代(29.7%)であり,三世代(6.6%),本人一人 (12.9%)は少なかった。なお親子間の分析は上記 619 名の うち,親子共に回答が得られた 181 組,計 362 名を対象と した。 (2) 行事食の認知と経験 1) 行事食の認知度  行事食の認知度について図 1 に示した。認知度は正月 (99.0%)が最も高く,次いでクリスマス,節分,大晦日 (97%以上),お月見,七夕,上巳の節句,冬至(95%以 上),春分の日,土用の丑,端午の節句,秋分の日,七草 (90%以上),盂蘭盆(66.6%)の順であった。認知度が低 かったものは秋祭り,春祭り,重陽の節句(16.0~17.3%) であった。次に五節句の認知度では七夕,上巳の節句,端 午の節句,七草が高く,重陽の節句が著しく低かった。齋 藤2)の北海道・東北の調査では,重陽の節句が極端に低い ことを報告している。北海道のみの本調査結果でも,重陽 の節句は認知度が低く同様な結果であった。  認 知 度 を 年 代 別 で み る と 10・20 歳 代 は,盂 蘭 盆 (53.8%),重陽の節句(11.0%),春祭り(9.4%),秋祭 り(5.1%)が低く,他の年代と有意差(p<0.01)がみら れた。また春分の日,秋分の日,土用の丑,七草の認知度 は(82.7%~89.4%),8 割以上であるが,他の年代と有意 差(p<0.01)がみられた。  認知度が低い行事は,各年代ともに秋祭り,春祭り,重 陽の節句であり,全国調査では,渕上ら3)も春祭り,秋祭 り,重陽の節句の認知度は一般(23~41%),学生(16~ 23%)も低かったと報告している。これらのことから,秋 祭り,春祭り,重陽の節句の認知度が低いことは全国的な 傾向であった。 2) 行事食の経験度  行事食の経験度について図 2 に示した。正月(98.2%), 大晦日(96.7%),クリスマス(96.6%),節分(95.3%)が 95%以上,次いで上巳の節句(93.2%),冬至(89.0%), 土用の丑(79.7%),春分の日(79.1%),お月見(75.9%), 端午の節句(75.8%),七夕(71.2%),秋分の日(69.7%), 七草(62.8%)の順であった。盂蘭盆(43.6%)は 5 割を 下回り,春祭り(10.0%),秋祭り(9.7%),重陽の節句 (4.0%)は特に低かった。次に五節句の経験度は,上巳の 節句(93.2%),端午の節句(75.8%),七夕(71.2%), 七草(62.8%),重陽の節句(4.0%)の順であった。加藤 ら4)も,行事食の経験度について,五節句よりも正月,大 晦日,クリスマス,土用の丑などの方が喫食経験が多く, 春祭り,秋祭りの経験が少ないと報告している。本調査で も春祭り,秋祭り,重陽の節句については,経験度が低 かった。次に行事食の経験度について年代別でみると 10・ 20 歳代の経験度が全般に低く,上巳の節句(88.8%),冬 至(79.2%),土用の丑(67.1%),春分の日(63.7%),お 月見(60.9%),端午の節句(56.0%),秋分の日(47.7%), 七草(46.7%),盂蘭盆(23.9%),春祭り(5.8%),秋祭 り(2.3%)は他の年代と有意差(p<0.01)がみられた。 加藤ら4)も,学生は春分の日,秋分の日,盂蘭盆の喫食経 験が少ないと報告している。また,行事食の経験度につい て家族構成別に分析したが,有意差はみられなかった。松 本ら5)は核家族より拡大家族の方が,七夕,盂蘭盆,お月 見および彼岸の実施率が有意に高いことを報告している。 現代の家族形態をみると核家族が増加し,かつて行事食を 伝承してきた三世代同居が著しく減少したことから,若年 者の行事食の認知度,経験度が低くなっていると推察され る。 表 1.  調査対象者の属性 性  別 年  齢 年  代 家族構成 男 26( 4.2) 20 歳未満 170(27.5) 10・20 歳代 259(41.8) 同世代 184(29.7) 女 593(95.8) 20 歳代 89(14.4) 30・40 歳代 163(26.3) 二世代 305(49.3) 30 歳代 31( 5.0) 50・60 歳代 169(27.3) 三世代 41( 6.6) 40 歳代 132(21.3) 70 歳以上 28( 4.5) 本人一人 80(12.9) 50 歳代 111(17.3) その他 9( 1.5) 60 歳代 58( 9.4) 無回答 4( 0.6) 70 歳代 25( 4.0) 80 歳以上 3( 0.5) n=619  人(%)

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99.0 90.8 97.7 95.5 92.4 93.4 17.3 66.6 95.6 92.7 17.3 96.4 92.1 16.0 95.3 97.9 97.6 0 20 40 60 80 100 正月 七草 節分 上巳の節句 端午の節句 春分の日 春祭り 盂蘭盆 七夕 土用の丑 重陽の節句 お月見 秋分の日 秋祭り 冬至 クリスマス 大晦日 全体 (%) 100.0 82.7 97.6 93.3 86.7 89.4 9.4 53.8 95.3 87.0 11.0 94.5 87.5 5.1 92.9 97.6 97.2 100.0 98.2 100.0 98.8 98.2 97.5 22.7 74.2 97.5 99.4 19.0 100.0 96.3 25.8 99.4 100.0 100.0 99.4 96.4 97.0 96.4 95.8 95.8 22.0 75.5 95.2 96.4 19.6 97.0 95.8 23.8 95.8 97.6 97.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 32.1 92.9 96.4 96.4 50.0 100.0 96.4 14.3 100.0 100.0 100.0 0 20 40 60 80 100 正月 七草 節分 上巳の節句 端午の節句 春分の日 春祭り 盂蘭盆 七夕 土用の丑 重陽の節句 お月見 秋分の日 秋祭り 冬至 クリスマス 大晦日 10・20歳代 30・40歳代 50・60歳代 70歳以上 (%) 年代別 ** ** ** ** ** ** ** ** 図 1.  行事食の認知度(全体・年代別) χ2検定 **p<0.01 3) 行事食の認知度と経験度の比較  表 2 に北海道と全国の行事食の認知度,経験度,差(認 知度と経験度の差を算出したもの)について示した。認知 度と経験度の差が大きい行事は,北海道では七草,七夕, 盂蘭盆,秋分の日,お月見であり,全国では七夕,秋分の 日,お月見,七草,春分の日,盂蘭盆であった。これらは 行事食として食卓に準備されることが少ないことが判明し た。次に認知度と経験度が共に高い行事食は,北海道では, 正月,大晦日,クリスマス,上巳,節分であり,全国も同 様であった。  次に全国との比較を行った結果,北海道は認知度,経験 度ともに重陽の節句がやや低く,秋祭り,春祭りが著しく 低かった。これらの秋祭り,春祭りにおける行事食は,認 知度,経験度ともに低く地域特性と考えられる。年中行事 の祭りは以前は子どもから大人まで娯楽の場であったが, 現代では少子化の影響や,子どもの遊びも多様化し,祭り に対する思いが変化している。親世代においては,農業・ 漁業等に従事しない産業構造の変化,女性の社会進出,住 環境の変化などから,しだいに地域交流や祭りの運営も縮 小傾向にある。その影響により祭りの行事食も衰退してき たものと思われる。  一方,北海道では,冬至,秋分の日,春分の日の認知度,

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98.2 62.8 95.3 93.2 75.8 79.1 10.0 43.6 71.2 79.7 4.0 75.9 69.7 9.7 89.0 96.6 96.7 0 50 100 正月 七草 節分 上巳の節句 端午の節句 春分の日 春祭り 盂蘭盆 七夕 土用の丑 重陽の節句 お月見 秋分の日 秋祭り 冬至 クリスマス 大晦日 全体 (%) 97.7 46.7 94.6 88.8 56.0 63.7 5.8 23.9 66.3 67.1 2.7 60.9 47.7 2.3 79.2 95.8 95.1 99.4 69.3 97.5 96.9 90.2 87.7 10.4 49.1 76.7 92.6 4.3 85.3 87.1 14.1 98.2 100.0 100.0 97.6 77.5 93.5 95.9 88.8 91.7 13.7 63.0 72.2 84.6 5.3 87.0 84.0 16.6 93.5 94.1 95.5 100.0 85.7 100.0 96.4 96.4 96.4 25.0 75.0 78.6 92.9 7.1 92.9 85.7 10.7 100.0 100.0 100.0 0 50 100 正月 七草 節分 上巳の節句 端午の節句 春分の日 春祭り 盂蘭盆 七夕 土用の丑 重陽の節句 お月見 秋分の日 秋祭り 冬至 クリスマス 大晦日 10・20歳代 30・40歳代 50・60歳代 70歳以上 年代別 ** (%) ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 図 2.  行事食の経験度(全体・年代別) χ2検定 **p<0.01 表 2.  行事食の認知度・経験度の全国との比較 北 海 道 全  国 北海道と全国の比較 認知度(%) 経験度(%) 差 認知度(%) 経験度(%) 差 認知度の差 経験度の差 正月 99.0 98.2 0.8 97.0 95.5 1.5   2.0   2.7 七草 90.8 62.8 28.0 85.7 61.5 24.2   5.1   1.3 節分 97.7 95.3 2.4 93.1 88.8 4.3   4.6   6.5 上巳の節句 95.5 93.2 2.3 90.1 82.9 7.2   5.4  10.3 端午 92.4 75.8 16.6 86.7 69.9 16.8   5.7   5.9 春分の日 93.4 79.1 14.3 83.9 61.6 22.3   9.5  17.5 春祭り 17.3 10.0 7.3 30.3 19.8 10.5 -13.0 -9.8 盂蘭盆 66.6 43.6 23.0 60.2 40.3 19.9   6.4  3.3 七夕 95.6 71.2 24.4 89.3 61.4 27.9   6.3  9.8 土用の丑 92.7 79.7 13.0 90.4 82.4 8.0   2.3 -2.7 重陽の節句 17.3 4.0 13.3 19.5 4.8 14.7 -2.2 -0.8 お月見 96.4 75.9 20.5 91.7 65.6 26.1   4.7  10.3 秋分の日 92.1 69.7 22.4 83.4 57.0 26.4   8.7  12.7 秋祭り 16.0 9.7 6.3 31.3 20.7 10.6 -15.3 -11.0 冬至 95.3 89.0 6.3 88.8 72.2 16.6   6.5  16.8 クリスマス 97.9 96.6 1.3 95.1 93.0 2.1   2.8   3.6 大晦日 97.6 96.7 0.9 94.7 92.6 2.1   2.9   4.1 北海道と全国の比較:認知度の差・経験度の差は,北海道の値から全国の値を差し引いた数値である

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83 23.8 55.5 74.7 100 99.2 96.4 89.2 94.4 80.9 90.5 98.8 93.1 97.5 78.3 95 98.2 100 100 100 99.3 98.8 96.9 100 100 100 90.9 85.8 96.3 97 100 100 100 100 100 95.1 97.6 100 100 100 92.9 92.9 100 100 100 100 100 100 85.7 96.4 100 100 0 20 40 60 80 100 出産祝い お七夜 百日祝い 初誕生 誕生日 七五三 成人式 結 納 婚 礼 厄払い 長 寿 葬儀 法事 10・20歳代 30・40歳代 50・60歳代 70歳以上 ** ** 年代別 (%) ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 89.8 58.2 78.7 88.2 100 99.7 98.5 95.3 97.4 89.2 95.2 99.5 97.2 0 20 40 60 80 100 出産祝い お七夜 百日祝い 初誕生 誕生日 七五三 成人式 結 納 婚 礼 厄払い 長 寿 葬儀 法事 全体 (%) 図 3.  儀礼食の認知度(全体・年代別) χ2検定 **p<0.01 経験度がともに高いことに特徴がみられる。冬の暮らしが 長い北海道では,冬至を境に厳寒期に向かい,寒さが緩む 時期である春分の日など生活の節目として,定着したもの と思われる。  さらに北海道で,認知度が高くても,経験度が低い行事 は,土用の丑,七草,盂蘭盆であり,これらの行事は若年 者において,さらに認知度,経験度は低かった。行事食は 一家の無病息災,先祖の供養や,収穫への感謝の意などを 料理に込めて受け継がれてきたが,現代は核家族化により 以前よりますます行事食の伝承はされにくく,希薄化して いることが懸念される。 (3) 儀礼食の認知と経験 1) 儀礼食の認知度  通過儀礼における儀礼食の認知度の全体と年代別の 結果を図 3 に示した。全体の認知度は誕生日(100%), 七五三(99.7%),葬儀(99.5%),成人式(98.5%),婚礼 (97.4%),法事(97.2%),結納(95.3%),長寿(95.2%) の順であり,いずれも 9 割を超える高い値を示し , 広く認知 されている状況であった。これに対してお七夜(58.2%), 百日祝い(78.7%)の認知度は低く,有意差がみられた (p<0.01)。  認知度を年代別に比較すると,13 項目中 9 項目において

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有意差がみられた (p<0.01)。誕生日を除く全てにおいて 10・20 歳代の認知度が他の年代よりも低く,その傾向は出 産祝い(83.0%),お七夜(23.8%),百日祝い(55.5%), 初誕生(74.7%)に顕著であり,子どもの誕生や成長に伴 う儀礼の認知度は極めて低いことが確認できた。中でもお 七夜は,全体の認知度も 6 割弱ではあるものの,10・20 歳 代が極めて低く,儀礼食として認知されていない状況が把 握できた。  また図には示していないが家族構成別にみると,お七夜, 厄払い,長寿に有意差がみられた(p<0.01)。特に三世代 家族は 13 項目中 7 項目の認知度が 100%と儀礼認知度が高 く,特に厄払い,法事に顕著であり,長寿や葬祭に関わる 儀礼の認知度は,家族構成に強く影響されることが示唆さ れた。 2) 儀礼食の経験度  通過儀礼における儀礼食の経験度の全体と年代別の結果 を図 4 に示した。経験度には行事間に有意差がみられ(p< 0.01),誕生日(99.0%),葬儀(92.5%)が高く,次いで 七五三(87.4%),法事(85.9%),初誕生(70.2%),婚 礼(69.5%),成人式(65.4%)の順となった。上記以外の 15.1 4.6 23.1 42.3 99.2 85.8 30.0 7.2 34.0 27.2 30.4 84.5 72.2 79.8 40.5 75.0 90.2 99.4 89.0 90.8 75.0 92.6 65.2 67.3 97.5 96.9 82.2 57.7 76.5 89.1 99.4 89.0 91.0 82.3 95.8 59.5 77.6 98.2 94.5 78.6 60.7 75.0 89.3 92.9 82.1 82.1 82.1 96.4 40.7 78.6 100.0 92.9 0 20 40 60 80 100 出産祝い お七夜 百日祝い 初誕生 誕生日 七五三 成人式 結納 婚礼 厄払い 長寿 葬儀 法事 10・20歳代 30・40歳代 50・60歳代 70歳以上 年代別 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** **** ** (%) ** 53.6 31.2 53.9 70.2 99 87.4 65.4 48.8 69.5 46.8 55.4 92.5 85.9 0 20 40 60 80 100 出産祝い お七夜 百日祝い 初誕生 誕生日 七五三 成人式 結納 婚礼 厄払い 長寿 葬儀 法事 全体 (%) 図 4.  儀礼食の経験度(全体・年代別) χ2検定 **p<0.01

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儀礼食はいずれも 6 割以下であり,特にお七夜(31.2%) が顕著に低い結果であった。  経験度を年代別に比較すると,七五三を除く 12 項目にお いて有意差がみられた (p<0.01)。10・20 歳代は誕生日 (99.2%),七五三(85.8%),葬儀(84.5%),法事(72.2%) を除く 9 項目において 50%以下の経験度となり,他の世代 に比べると 30 ポイント以上も低いことに特徴がみられた。  図には示していないが家族構成別では,お七夜,百日祝 い,初誕生,結納,婚礼,法事に有意差がみられた(p< 0.01)。中でも三世代家族の婚礼(77.5%),葬儀(97.6%), 法事(95.1%)が極めて高く,これらを経験する機会が多 くあることをうかがわせる結果であった。 3) 儀礼食の認知度と経験度の比較  儀礼食における認知度と経験度を比較した結果を表 3 に 示した。総じて北海道の儀礼食の経験度は,認知度に比べ ると低い値であったが,誕生日と葬儀に関しては認知度と 経験度の差がそれぞれ 1.0%,7.0%でありほぼ一致してお り,両者については儀礼食として定着している様子がうか がわれた。これに対して認知と経験の差が大きいものは結 納が 1 位にあげられ,次いで厄払い,長寿,出産祝いの順 であった。  次いで全国データと比較を行った。表 3 の「北海道と全 国の比較」欄に示したとおり,認知度,経験度ともに北海 道が 5 ポイント以上高いものは百日祝い,初誕生,厄払い であった。一方,経験度においてお七夜,七五三,成人式 が全国よりも低いことに特徴がみられた。渕上ら3)は,全 国では七五三の経験が高い(学生 89.5%,一般 88.3%)と 報告しているが,本研究では北海道の七五三の経験度は全 国に比べると 6.1 ポイント低く,全国とは異なる傾向を示 した。儀礼食としての定着の度合いが相違していることを うかがわせ,地域特性を示すものと考えられる。七五三は 子どもの成長を神社仏閣に詣でる行事であるが,寒冷地で ある北海道では 11 月よりも 10 月頃に実施する場合が多く, 実施日においても厳格な決まりはない。北海道においては 七五三という儀礼的な行事が簡略化されている様子がうか がえた。  本調査では,通過儀礼における儀礼食の多くが若年世代 に伝承されていないことが推察される結果であった。旧来, 儀礼食は家族,親族,近隣地域の繋がりの中で伝承されて きたが,核家族化,少子化,高齢化,世帯規模の縮小化の 進行が影響してのことと考えて良いであろう。本調査にお いても,厄払いや法事,葬儀など長寿や葬祭に関わる儀礼 に関しては,三世代家族が高率を示し,家族構成に強く影 響されることが示唆された。鷲見ら6)は食文化伝承の現状 について調査した結果,今日では行事食の伝承は「父母」 からが多く,家族形態として二世代家族が増えたためと報 告している。三世代家族の「祖父母」からの継承は今後さ らに困難になるであろうことが推測される。特に北海道は 全国でも核家族化率,少子化率,高齢化率が高く推移して おり,今後,若年世代への継承が困難になることが懸念さ れる。通過儀礼およびそれに伴う儀礼食を今後どのように 継承していくかが課題といえよう。 (4) 親子間における認知度と経験度 1) 行事食の認知度と経験度  行事食の認知度と経験度に対する親子間の比較を表 4 に 示した。行事食で子が親よりも高くなった項目は,認知度 がクリスマス,大晦日,節分,七夕であり,経験度は節分, クリスマス,正月であった。経験度の差をみると秋分の日 (32.1),春分の日(26.0),盂蘭盆(23.8),お月見(21.0), 端午の節句(18.2),土用の丑(16.6)は親子間で有意差が みられた(p<0.01)。 2) 儀礼食の認知度と経験度  儀礼食の認知度と経験度に対する親子間の比較を表 5 に 示した。儀礼食は認知度・経験度ともすべての項目で親が 子よりも高くなった。認知度の差をみるとお七夜(60.8), 百日祝い(37.6),初誕生(23.7),厄払い(15.4)は,親 表 3.  儀礼食の認知度・経験度の全国との比較 北 海 道 全   国 北海道と全国の比較 認知度(%) 経験度(%) 差 認知度(%) 経験度(%) 差 認知度の差 経験度の差 出産祝い 89.8 53.6 36.2 90.8 52.8 38.0 -1.0  0.8 お七夜 58.2 31.2 27.0 53.9 33.4 20.6  4.3 -2.2 百日祝い 78.7 53.9 24.8 62.8 45.6 17.2 15.9  8.3 初誕生 88.2 70.2 18.0 80.0 61.8 18.2  8.2  8.4 誕生日 100.0 99.0 1.0 99.7 98.6 1.0  0.3  0.4 七五三 99.7 87.4 12.3 99.3 93.5 5.8  0.4 -6.1 成人式 98.5 65.4 33.1 98.1 65.7 32.3  0.4 -0.3 結納 95.3 48.8 46.5 91.9 44.3 47.6  3.4  4.5 婚礼 97.4 69.5 27.9 95.4 62.1 33.3  2.0  7.4 厄払い 89.2 46.8 42.4 82.9 38.4 44.5  6.3  8.4 長寿 95.2 55.4 39.8 91.1 43.8 47.2  4.1 11.6 葬儀 99.5 92.5 7.0 98.1 87.3 10.8  1.4  5.2 法事 97.2 85.9 11.3 94.5 80.9 13.6  2.7  5.0 北海道と全国の比較:認知度の差・経験度の差は,北海道の値から全国の値を差し引いた数値である

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子間で有意差がみられた(p<0.01)。一方,経験度の差をみ ると結納(76.8),出産祝い(67.4),成人式(61.3),婚礼 (58.5),百日祝い(53.0),お七夜(46.9),初誕生(46.4), 長寿(37.4),厄払い(34.6)は,親子間で有意差がみられ た(p<0.01)。 3) 親子間における認知度・経験度の分布  親子間における認知度・経験度の分布を図 5 に示した。 行事食で認知度・経験度について親子共に高かったのは正 月であった。畑井7)においても,正月祝いが行事食の高い 認知度として示している。また,散布図に近似曲線を追加 表 4.  行事食の認知度と経験度に対する親子間の比較 認 知 度 経 験 度 親(%) 子(%) 差 χ2検定 親(%) 子(%) χ2検定 正月 100.0 99.4  0.6 正月 98.3 98.9 -0.6 お月見 98.9 96.1  2.8 大晦日 98.3 97.2  1.1 クリスマス 98.9 99.4 -0.6 クリスマス 97.8 98.9 -1.1 大晦日 98.9 99.4 -0.5 上巳の節句 95.6 94.5  1.1 節分 98.3 100.0 -1.7 冬至 95.0 79.6 15.5 冬至 97.8 94.5  3.3 節分 94.5 97.8 -3.3 上巳の節句 97.2 97.2  0.0 端午の節句 88.9 70.7 18.2 ** 七草 96.7 85.1 11.6 春分の日 88.4 62.4 26.0 ** 春分の日 96.7 88.4  8.3 お月見 85.6 64.6 21.0 ** 端午の節句 96.7 91.7  5.0 土用の丑 85.1 68.5 16.6 ** 土用の丑 96.7 87.2  9.5 秋分の日 84.0 51.9 32.1 ** 秋分の日 96.7 90.1  6.6 七夕 72.9 65.7  7.2 七夕 95.0 96.7 -1.7 七草 68.0 50.8 17.1 盂蘭盆 75.7 58.0 17.7 盂蘭盆 54.7 30.9 23.8 ** 秋祭り 25.4 6.6 18.8 秋祭り 14.4 3.3 11.0 春祭り 23.2 10.5 12.7 春祭り 12.2 6.6  5.6 重陽の節句 16.6 11.6  5.0 重陽の節句 5.5 2.8  2.8 n=181(親),181(子) 親の年代別の内訳:30 歳代 1.1%,40 歳代 54.1%,50 歳代 39.2%,60 歳代 4.4%,70 歳代 1.1% 子の年代別の内訳:10 歳代 71.3%,20 歳代 28.7% **p<0.01 表 5.  儀礼食の認知度と経験度に対する親子間の比較 認 知 度 経 験 度 親(%) 子(%) 差 χ2検定 親(%) 子(%) χ2検定 葬儀 99.4 97.8 1.6 誕生日 98.3 97.8 0.5 法事 99.4 93.4 6.1 葬儀 96.1 83.4 12.7 誕生日 98.9 98.9 0.0 婚礼 93.9 35.4 58.5 ** 七五三 98.9 96.1 2.8 法事 93.9 70.7 23.2 成人式 98.9 93.9 5.0 初誕生 90.6 44.2 46.4 ** 結納 98.3 87.3 11.0 七五三 90.6 85.6 5.0 婚礼 98.3 91.7 6.6 成人式 89.0 27.6 61.3 ** 長寿 96.7 87.8 8.9 結納 84.5 7.7 76.8 ** 初誕生 96.1 72.4 23.7 ** 出産祝い 82.9 15.5 67.4 ** 出産祝い 93.4 78.5 14.9 百日祝い 76.8 23.8 53.0 ** 厄払い 93.3 77.9 15.4 ** 長寿 66.9 29.4 37.4 ** 百日祝い 92.3 54.7 37.6 ** 厄払い 61.1 26.5 34.6 ** お七夜 79.0 18.2 60.8 ** お七夜 50.8 3.9 46.9 ** n=181(親),181(子) 親の年代別の内訳:30 歳代 1.1%,40 歳代 54.1%,50 歳代 39.2%,60 歳代 4.4%,70 歳代 1.1% 子の年代別の内訳:10 歳代 71.3%,20 歳代 28.7% **p<0.01 すると行事食では,認知度:y=0.8697X+15.784,経験 度:y=0.9026X+17.394,儀 礼 食 で は,認 知 度:y= 0.2396X+76.293,経 験 度:y=0.3146X+69.372 で あ っ た。このことから行事食では親が認知し,かつ経験してい ることは子にも伝承されているが,儀礼食では親のみ認知 し,経験していることがうかがえた。今回,盂蘭盆は認知 度・経験度が親子共に中等度に位置する行事であったが, 齊藤2)によれば,盂蘭盆の名は東北・北海道においては聞 きなれない名称であった可能性もあり,回答率に影響した のではないかとのべている。

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行事食の認知度 行事食の経験度 儀礼食の認知度 儀礼食の経験度 y = 0.8697x + 15.784 0 50 100 0 50 100 子(%) 親 (% ) y = 0.9026x + 17.394 0 50 100 0 50 100 子(%) 親 ( % ) y = 0.2396x + 76.293 0 50 100 0 50 100 子(%) 親 ( % ) 0 50 100 0 50 100 子(%) 親 ( % ) 盂蘭盆 正月 重陽の節句 春祭り 秋祭り 盂蘭盆 秋祭り 春祭り 重陽の節句 クリスマス 誕生日 お七夜 お七夜 百日祝い 百日祝い 節分 誕生日 クリスマス 節分 正月 y = 0.3146x + 69.372 図 5.  親子間における認知度・経験度の分布 4) 行事食と儀礼食における親子間の回答状況  行事食と儀礼食における認知度と経験度の回答状況を表 6 に示した。これは,「親子共に認知度・経験度の肯定的回 答が一致」,「親子共に認知のみ回答が一致」,「親子共に経 験のみ回答が一致」,「親子間で別回答」,「親子間で認知 度・経験度の否定的回答が一致」,「不明」の 6 つに分類し, 行事食と儀礼食で比較したものである。  行事食で「親子共に認知度・経験度の肯定的回答が一致」 が高かったのは,正月,クリスマス,大晦日,節分,上巳 の節句であり,90%以上を占め,低かったのは,春祭り, 秋祭り,重陽の節句であった。また,儀礼食で「親子共に 認知度・経験度の肯定的回答が一致」が高かったのは,誕 生日,葬儀,七五三であり,80%以上を占め,低かったの は,結納,お七夜であった。  「親子共に認知度・経験度の肯定的回答が一致」は,行事 食(57.9%)が儀礼食(41.9%)よりも高く,有意差がみ られた(p<0.01)。親子データ(181 組)の属性である子 の年代別の内訳をみると 10 歳代 71.3%,20 歳代 28.7%で あることから,子の経験度が少ないことの影響や儀礼食を 受け継ぐことの難しさもあると推察する。一方,「親子共に 認知のみ回答が一致」(儀礼食 37.1%,行事食 16.3%)や, 「親子間で別回答」(儀礼食 14.9%,行事食 8.4%)は,儀 礼食は認知度に対する回答が行事食よりも高くなっていた。 これまで伝承されてきた食生活とは地域の産物を無駄なく 利用し,季節性,保存性を重視し,ハレとケを区別した合 理的なものである8)と言われている。したがって,親子間 で食文化の伝承をしていくことは,季節ごとに地域の食材 を取り入れた食教育にもつながっている。河野9)において も,おせち料理の伝承がある者は伝承のない者と比較する と,母親,学生ともにおせち料理の伝承に対する意識が高 いことが報告されている。このことから,今後はさらに, 北海道における特徴的な行事食・儀礼食の親子間による伝 承について検討する必要性が示唆される。 4. ま と め  北海道の行事食と儀礼食の認知・経験状況を年代別,家 族構成別,親子間で比較検討した結果は,以下のとおりで ある。 1.  北海道の行事食の認知度は,正月,クリスマス,節分, 大晦日が上位をしめ,秋祭り,春祭り,重陽の節句は著 しく低かった。 2.  北海道の行事食の経験度は正月,大晦日,クリスマス, 節分が高く,秋祭り,春祭り,重陽の節句が低かった。 若年者の経験度が全般に低く,特に秋分の日,七草,盂

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表 6.  行事食と儀礼食における認知度と経験度の回答状況 (%) 行 事 認知度・経験度の肯定的回答が一致 認知度のみ回答が一致 経験度のみ回答が一致 親子間で別回答 認知度・経験度の否定的回答が一致 不明 計 行事食 正月 97.8 0.0 0.0 0.0 0.0 2.2 100.0 クリスマス 97.8 0.0 0.0 0.0 0.0 2.2 100.0 大晦日 96.7 1.1 0.0 0.0 0.0 2.2 100.0 節分 93.4 5.0 0.0 0.0 0.0 1.7 100.0 上巳の節句 91.2 3.9 0.0 2.2 0.0 2.8 100.0 冬至 77.9 14.9 0.0 3.9 0.0 3.3 100.0 土用の丑 65.2 19.9 0.0 10.5 0.6 3.9 100.0 端午の節句 64.1 24.3 0.6 6.6 0.0 4.4 100.0 お月見 60.2 34.8 0.0 1.7 0.0 3.3 100.0 春分の日 59.1 28.7 0.6 6.6 0.6 4.4 100.0 七夕 54.7 38.1 0.6 1.1 0.6 5.0 100.0 秋分の日 49.7 37.0 0.6 6.1 0.0 6.6 100.0 七草 47.5 34.8 0.0 12.7 0.0 5.0 100.0 盂蘭盆 23.2 27.6 0.6 28.7 12.2 7.7 100.0 春祭り 2.8 2.8 0.0 23.2 56.4 14.9 100.0 秋祭り 2.2 2.8 0.6 20.4 60.2 13.8 100.0 重陽の節句 0.6 1.1 0.0 19.9 65.2 13.3 100.0 行事食の平均 57.9 16.3 0.2 8.4 11.5 5.7 100.0 儀礼食 誕生日 96.7 1.1 0.0 0.0 0.0 2.2 100.0 葬儀 82.9 14.4 0.0 0.6 0.0 2.2 100.0 七五三 82.3 13.3 0.0 1.1 0.0 3.3 100.0 法事 69.1 23.8 0.0 2.8 0.0 4.4 100.0 初誕生 46.4 24.3 0.6 23.8 0.6 4.4 100.0 婚礼 34.8 54.7 0.0 7.2 0.0 3.3 100.0 長寿 28.7 56.9 0.0 9.4 0.0 5.0 100.0 成人式 27.1 65.7 0.0 3.3 0.0 3.9 100.0 厄払い 27.1 47.0 0.0 17.7 1.7 6.6 100.0 百日祝い 24.2 28.0 1.1 39.6 0.5 6.6 100.0 出産祝い 14.9 60.8 0.6 18.2 1.1 4.4 100.0 結納 7.2 79.6 1.1 8.8 0.0 3.3 100.0 お七夜 3.9 12.7 1.1 61.9 12.2 8.3 100.0 儀礼食の平均 41.9 37.1 0.3 14.9 1.2 4.5 100.0 行事食と儀礼食の平均 **p<0.01 蘭盆,春祭り,秋祭りは他の年代と有意差(p<0.01)が みられた。 3.  北海道の経験度を全国と比較すると春分の日,秋分の 日,冬至が高く,秋祭り,春祭り,重陽の節句は低いこ とが判明した 4.  北海道の儀礼食の認知度は,お七夜と百日祝いが他の 行事に比べて有意に低く,その傾向は 10・20 歳代に顕著 であった。また三世代家族の厄払い,法事の認知度が顕 著に高く,家族構成による有意差がみられた(p<0.01)。 5.  北海道の儀礼食の経験度は,誕生日,葬儀が極めて高 く,お七夜は低かった。三世代家族の婚礼,葬儀,法事 の経験度は極めて高い値であった。 6.  誕生日と葬儀は,認知度と経験度がほぼ一致していた。 一致していないものは結納,厄払い,長寿,出産祝いが 上位であった。北海道は七五三の経験度が低く全国とは 異なる傾向を示し,地域性がみられた。 7.  行事食で子が親よりも高くなった項目は,認知度がク リスマス,大晦日,節分,七夕であり,経験度は節分, クリスマス,正月であった。儀礼食は認知度・経験度と もすべての項目で親が子よりも高くなった。 8.  親子共に認知度・経験度の肯定的回答の一致度が高 かったのは,行事食では正月,クリスマス,大晦日,節 分,上巳の節句,儀礼食では,誕生日,葬儀,七五三で あった。肯定的回答の一致度が低かったのは,行事食で は,春祭り,秋祭り,重陽の節句,儀礼食では,結納, お七夜であった。  本研究は,平成 21~23 年度日本調理科学会特別研究によ り,行うことができました。研究をすすめるにあたりご協 力いただいた関係各位に厚くお礼申し上げます。 文 献 1) 矢島睿他編(1986),「日本の食生活全集① 聞き書 北海 道の食事」,農山漁村文化協会 , 東京 , pp. 350-352 2) 齊藤寛子(2012),特別研究「調理文化の地域性と調理科学 ―行事食と儀礼食―」東北・北海道支部,日本調理科学会誌, 45,456-459

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和文抄録  本研究は北海道の行事食と儀礼食について,親子間の認知状況や経験状況などの実態把握を行い,地域性を明らかにす ることを目的として検討した。行事食の認知度は,正月が最も高く,秋祭り,春祭り,重陽の節句は低く,経験度も同様 の傾向であった。北海道は全国よりも春分の日,秋分の日,冬至の経験度が高く,秋祭り,春祭りの経験度が低かった。 儀礼食は認知度,経験度ともにお七夜が儀礼食間では有意に低く,伝承が困難な様子がうかがわれた。三世代家族の婚礼, 葬儀,法事の経験度が極めて高いことに特徴がみられた。北海道は七五三の経験度が低く,全国とは異なる傾向を示した。 親子間で認知度・経験度の肯定的回答の一致が高かったのは,行事食では正月,クリスマス,大晦日,節分,上巳の節句, 儀礼食では誕生日,葬儀,七五三であった。肯定的回答の一致度が低かったのは,行事食では春祭り,秋祭り,重陽の節 句,儀礼食では,結納,お七夜であった。 3) 渕上倫子,桒田寛子,石井香代子,木村安美(2011),特別 研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食・儀礼食」―全 国の報告―行事食・儀礼食の認知・経験・喫食状況,日本調 理科学会誌,44,436-441 4) 加藤和子,千田真規子,松本睦子,土屋京子,成田亮子, 宇和川小百合,色川木綿子,赤石記子,佐藤久美,長尾慶子 (2011),本学学生の家庭における世代間にみた行事食・儀礼 食の現状について,東京家政大学研究紀要,51,1-8 5) 松本美鈴(2006),現代家庭における年中行事と食べもの, 青山学院女子短期大学総合文化研究所年報,14,3-20 6) 鷲見孝子,石原加代子,本間恵美(2005),食文化伝承の現 状,東海女子短期大学紀要,31,13-19 7) 畑井朝子(2012),日本型食生活と北海道の伝統料理,日本 食生活学会誌,22,271-276 8) 畑井朝子(2006),北海道の食材と食文化,日本食生活学会 誌,16,296-301 9) 河野篤子(2004),九州地方のおせち料理の実態,伝統食品 の研究,27,7-15 (平成 25 年 5 月 10 日受付,平成 25 年 11 月 16 日受理)

表 6.  行事食と儀礼食における認知度と経験度の回答状況 (%) 行 事 認知度・経験度の 肯定的回答が一致 認知度のみ回答が一致 経験度のみ回答が一致 親子間で別回答 認知度・経験度の否定的回答が一致 不明 計 行事食 正月 97.8   0.0 0.0   0.0   0.0   2.2 100.0クリスマス97.8  0.00.0  0.0  0.0  2.2100.0大晦日96.7  1.10.0  0.0  0.0  2.2100.0節分93.4  5.00.0  0.0  0.0  1.710

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本報告書は、日本財団の 2016

本報告書は、日本財団の 2015

ここでは 2016 年(平成 28 年)3

一方で、平成 24 年(2014)年 11

モノーは一八六七年一 0 月から翌年の六月までの二学期を︑ ドイツで過ごした︒ ドイツに留学することは︑

○「調査期間(平成 6 年〜10 年)」と「平成 12 年〜16 年」の状況の比較検証 . ・多くの観測井において、 「平成 12 年から