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ドイツにおける定住外国人の言語教育と社会的「統合」に関する一考察 [ PDF

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(1)ドイツにおける定住外国人の言語教育と社会的「統合」に関する一考察 キーワード:外国人、統合、言語、母語、異文化間教育. 発達・社会システム専攻 伊藤. 亜希子. 1. 目次. ホスト社会のマジョリティ言語を獲得しなければならない. はじめに 課題設定とその目的. が、それだけではかれらの社会的「統合」は達成されてこ. 第一章 ドイツ社会における「外国人」. なかった。それは、 「外国人」の持つ文化的要素がマジョリ. 第一節 「外国人」受け入れの経緯. ティ側から肯定的にその保持を認められなかったためであ. 第二節 外国人労働者から定住外国人へ. る。そのため、マジョリティがかれらの文化的要素の保持. 第三節 外国人政策の理念の変遷. を肯定的に認め、マイノリティと共生していくためにも、 マイノリティのもたらす多様性を社会の豊饒化への契機と. −ローテーション原理とインテグレーション原理−. して捉える必要がある。そのような意識をもたらす教育の. 第四節 1990 年代の「外国人」の流入. 重要性は高まっており、これはマジョリティとマイノリテ. 第二章 社会的統合と言語教育の意味. ィが共生するための教育の必要性を示唆している。. 第一節 「外国人」の同化と統合. 本論では、 「外国人」の社会的「統合」やマイノリティと. 第二節 「外国人」にとっての言語の意味. マジョリティの共生を意識した異文化間教育の視点が言語. 第三節 教育の目的と言語の関係. 教育にどのように導入されうるのか、その可能性の一端を. 第三章 言語教育モデルの変遷 第一節 常設文部大臣会議にみる言語教育モデル. 明らかにすることを目的とした。そのため、まず、ホスト. 第二節 諸州の言語教育モデル. 社会における社会参加のために必要な言語であるマジョリ ティ言語と「外国人」の「アイデンティティに関わる言語」. −バイエルン・モデルとベルリン・モデル− 第三節 異文化間教育と言語教育. としての「母語」の双方に着目し、特にかれらの「母語」. 第四章 諸州における言語教育の変化. が社会的「統合」に重要な言語であることを明らかにした。 そして、1950 年代半ばから外国人労働者を受け入れ、1964. 第一節 バイエルン州における実験モデル. 年の時点からかれらの子どもの母語保障に言及しているド. −「外国人生徒の通常学級における統合」− 第二節 ベルリン州立ヨーロッパ学校の導入. イツ政府の言語教育政策に焦点を当てた。なかでも、連邦. 第三節 両州の新たな取り組みに関する分析. レベルと諸州(バイエルン州とベルリン州)の言語教育モ デルを概観した。また、1990 年代初頭に始められた「外国. −異文化間教育の視点から−. 人」とドイツ人の子どもの両者を対象とする言語教育モデ. 第五章 新たな社会的「統合」のための言語教育 第一節 定住外国人に対する母語教育の課題の革新. ルを、 「外国人」の社会的「統合」を可能とする教育の事例. 第二節 言語教育による異文化間能力獲得の可能性. として取り上げ、マイノリティとマジョリティの相互作用 と共生という観点から分析を行った。. おわりに. 以上の点を明らかにするために、第一章では、まず、ド イツ社会が「外国人」を受け入れるようになったその経緯. 2. 概要 今日、多くの「外国人」1を抱える先進諸国にとって、か. について述べた。ドイツにおける「外国人」とは、三つの. 2. れらをホスト社会へ 「統合」することは重要な課題である。. カテゴリーに大別され、それぞれ外国人労働者、帰還移住. 「外国人」がホスト社会へ参加するには、まず、かれらが. 者、庇護権請求難民に分けられる。外国人労働者とは、戦. 1.

(2) 後ドイツの労働力不足を補充するために受け入れられた. 「外国人」の社会参加のために同化が求められるのだが、. 人々であり、1973 年の石油危機を機に募集は停止された。. 文化的要素の放棄は求められない。他方、多元的統合では、. 帰還移住者とは、敗戦後旧ドイツ領から追放された人々で. 政治参加をも含んだ社会参加について言及されるが、ここ. あり、敗戦直後から今日に至るまでドイツに帰還している. で重要なのは、共存している他集団との相互作用が強調さ. 人々である。庇護権請求難民は、本国で迫害を受け、ドイ. れるという点である。. ツに庇護を求めてやってくる人々であり、ドイツ政府はこ. これらの同化、統合においてホスト社会との関わりを持. れらの人々に対し基本法で庇護権の享受を規定している。. つためには、言語が重要なものとなる。言語的に多様な環. 帰還移住者と庇護権請求難民に関しては、受け入れの際、. 境におかれる「外国人」にとって、ホスト社会で話される. 連邦諸州の財政的負担が大きく、受け入れを制限する方向. 言語の獲得は容易ではない。また、かれらの母語保持に関. へと進んでいる。. する課題も生じてくる。ここでは、スウェーデンの言語学. 今日のドイツ社会における「外国人」の多くは、本人も. 者であるスクットナブ=カンガスの議論から、言語の重要. しくは家族が外国人労働者として、ドイツに入国し、その. 性を示した。言語は、自己と他者とを「結びつける(tie)」も. まま定住した人々である。そのため、第二節では外国人労. のであり、 「道具(tool)」としての側面も有しているため、多. 働者が定住するに至ったプロセスを概観した。この背景に. 言語の環境においては、マジョリティと関わるにも「外国. は、第三節で示した外国人政策の理念の変遷も関連してい. 人」同士で関係を築くにも言語が重要であることがわかる。. る。ドイツ政府は当初、外国人労働者は一定期間ドイツに. 同化を指向するか、あるいは統合を指向するかによって、. 滞在し、就労した後、本国に帰国するというローテーショ. マジョリティ言語と「外国人」の母語の位置づけは異なっ. ン原理をとっていた。しかし、これは雇用者側からみると. てくる。同化圧力が強ければ、 「外国人」の母語は軽視され、. 非効率的であり、企業は外国人労働者の長期滞在を求める. マジョリティ言語のみが重視される。ところが、 「外国人」. ようになった。政府はこれを受け、外国人労働者の滞在の. の文化的要素の保持が積極的に認められるのであれば、マ. 延長を許可することとなった。外国人労働者は長期滞在が. ジョリティ言語だけでなく母語も重視されることになる。. 可能になると、次第に家族を呼び寄せ、ドイツに定住する. また、 「外国人」の母語を肯定的に捉えることは、 「外国人」. ようになった。そのため、外国人政策の理念はローテーシ. が自己の文化的アイデンティティを保持するためにも重要. ョン原理から、かれらの長期滞在を前提とし、かれらのド. である。スクットナブ=カンガスは、母語がきわめて重要. イツ社会への統合を重視するインテグレーション原理へと. であるとの認識に基づき、二言語の環境におかれる「外国. 移行することになった。. 人」にとっての母語を Origin、Competence、Function、. そのように「外国人」の統合を重視せざるを得ないのは、. Identification の四つの側面から定義している。そして、二言. 外国人労働者が定住したことだけに起因しているわけでは. 語の環境下にいる子どもに対する教育において、それぞれ. ない。外国人労働者募集停止後、また、帰還移住者や庇護. の言語がどのように位置づけられているかを示している。. 権請求難民の受け入れ制限の実施後も、実際には、ドイツ. それは、 「外国人」の母語をいかに捉えるかということにも. 社会に多くの「外国人」が流入していたのである。そこで、. 関係している。すなわち、 「外国人」がマジョリティ言語と. ドイツ政府は、1990 年代の外国人労働者受け入れである短. は異なる言語を持ち合わせていることを「欠損」とみなす. 期の就労プログラムを整備した。一方、これらのプログラ. のか、それとも、それを社会にとって「豊饒化」につなが. ムとは異なり、優遇的な措置がとられる IT 技術労働者も存. るものとみなすのかということである。これはそれぞれ「欠. 在している。以上のように、 「外国人」はさらに増加し、ド. 損理論」 、 「豊饒化理論」と呼ばれる。欠損理論に基づく教. イツ社会の多様性はますます高まっていくことと思われる。. 育は同化的なものであり、 「外国人」の母語の位置づけは低. 多様性が高まるにつれて、 「外国人」の「統合」はホスト. い。一方、豊饒化理論においては、究極的にはマジョリテ. 社会の重要な課題となる。第二章では、 「外国人」の同化と. ィをも含む社会全体がマジョリティ言語と「外国人」の母. 統合について示した。同化に関しては、ゴードンの同化理. 語とのバイリンガルな状態になることが目指される。その. 論を示し、特に「外国人」の「文化的同化」と「構造的同. ため、 「外国人」の母語の位置づけは必然的に高いものとな. 化」について述べた。ホスト社会は「外国人」の同化を求. る。かれらの母語の重要性をマジョリティ側が認識するこ. めるが、同化はうまくいかず、次第にかれらを統合しよう. とが、ホスト社会における「外国人」の社会的「統合」を. とすることになる。 「外国人」の統合に関しては、 「同化的. さらに促進することにつながる。以上のような言語のとら. 統合」と「多元的統合」の二つを示した。同化的統合では. え方は重要であり、ドイツにおける言語教育モデルの考察. 2.

(3) を行う際、重要な視点となりうる。. れらが相互に影響を及ぼしあう環境を作り出そうとするも. 第三章では、ドイツにおける言語教育モデルについて、. のである。このような原理を反映した教育が異文化間教育. 最初に常設文部大臣会議の決議から概観した。 「外国人」の. であり、ニーケはその発展段階を五段階に分け、提示して. 子どもの教育に関わる決議は1950 年代から行われているが、. いる。そのなかで、ニーケは「外国人」の母語が異文化間. 第一節では特に現在に至るまで効力を有している 1976 年の. 教育の構成要素となると指摘している。これには様々な課. 改訂協定で示された言語教育モデルを提示した。この改訂. 題があるが、かれらの母語を「出会いの言語」としてドイ. 協定では、ドイツの学校で外国人の子どもを受け入れる際. ツ人側に接する機会を提供する必要がある。. の授業形態として、準備学級、ドイツ語と母語とを用いる. 第四章では、これまでの言語教育における変化を示すと. バイリンガル・クラス、集中コース、促進時間が挙げられ. ともに、 「外国人」の子どもの母語を取り入れた教育の具体. ている。これらの授業形態の目的は外国人の子どものドイ. 例として、バイエルン州における実験モデル「外国人生徒. ツ語獲得である。母語に関しては、母語授業の管轄をドイ. の通常学級への統合」とベルリン州における「ベルリン州. ツ学校監督官庁が有している諸州によって1989 年に出され. 立ヨーロッパ学校(SESB)」の取り組みとその課題を提示し. た母語勧告がある。この勧告では、母語授業の意義、課題、. た。バイエルン州における実験モデルは、補完授業として. 方法、内容が詳細かつ明確に示されている。. 位置づけられていた母語授業を正規の授業として午前中に. 常設文部大臣会議およびその他関連機関によって出され. 導入している。このモデルの教育政策上の目標は、異文化. た勧告は、外国人の母語について言及してはいるものの、. 間教育的観点、学校組織の観点、言語学的観点、協働の観. 主としてドイツ語獲得を重視したものであった。諸州はこ. 点から設定されている。このような教育が 1990 年代に入り. れらの勧告を受け、各々の状況に応じた言語教育を実施し. 導入された背景には、 「外国人」の定住傾向があり、バイエ. た。これらの言語教育はドイツ語獲得を目指したものであ. ルン州の教育政策が「外国人」の分離から統合へとその方. ったが、外国人が定住するに従って、ドイツ生まれの外国. 針を転換したことを示している。一方、SESB は、ドイツ人. 人に対する「母語」教授も重要視されるようになっている。. と同数のドイツ語以外を母語とする子どもを受け入れ、バ. 第二節では、諸州における代表的な言語教育モデルとし. イリンガル教育(ドイツ語とパートナー言語)と異文化間. て、バイエルン・モデルとベルリン・モデルを提示した。. 教育に力点を置いている学校である。パートナー言語には、. 一般に、前者はローテーション原理に、後者はインテグレ. 英語やフランス語等の経済言語だけでなく、トルコ語のよ. ーション原理に基づいた教育モデルである。本節では、結. うな比較的有用性の低い言語も含まれている。パートナー. 城(1992)、佐藤(1994)、ニーケ(2000)の先行研究を検討し、. 言語となるには、その言語を母語とする子どもとその言語. それぞれのモデルの目的、授業形態、ドイツにおいて生じ. 学習を希望するドイツ人の子どもを同数ずつ確保する必要. たこれらのモデルに対する批判を整理した。バイエルン・. がある。それには、ドイツ人保護者のマイノリティ言語に. モデルの特徴は、外国人の子どもの母語を用いたバイリン. 対する理解が必要である。また、異文化間教育の視点から. ガル・クラスであり、他州と比べ、このクラスへの参加率. みると、その受け入れ制度から明らかであるように、 「外国. が高い。このクラスで外国人の子どもを受け入れることは、. 人」とドイツ人の子どもの相互作用が恒常的に促進される。. ドイツ人と外国人の子どもの分離につながるとして批判さ. これらの実験モデルは、いずれも 1990 年代初頭に始まっ. れた。他方、ベルリン・モデルは外国人の子どものドイツ. たものであり、現段階でその成果が十分に現れているとは. の学校制度への統合が目指され、かれらを通常学級に受け. 言い難いが、 「外国人」の母語を用いた異文化間教育の一例. 入れることが前提とされている。しかし、すべての外国人. として、第二章第三節で示したスクットナブ=カンガスの. を通常学級で受け入れることはできず、規定の割合を超え. 豊饒化理論を念頭に置き、異文化間教育の視点からそれぞ. たら、外国人通常学級が設置される。ベルリン・モデルは. れ分析を試みた。バイエルン州の実験モデルは、 「外国人」. バイエルン・モデルと異なり、外国人の子どもの母語は重. とドイツ人の子どもがともに学校生活を送ることにより、. 視されない。そのため、外国人の子どもに対し、一方的な. 相互理解を促進し、互いの偏見を解消しようと試みている。. ドイツ社会への統合を求め、かれらの母語・母文化への配. このモデルでは、これまでの分離から共生を意識した教育. 慮がなされない同化的統合であるとして批判される。. へと変化していることが明らかとなった。 「外国人」の子ど. これらの両モデルに対する批判から、多文化原理、ない. もの母語はドイツ人の子どもと分離して教授されるが、こ. しは異文化間原理と呼ばれる理念が生まれた。これは、ド. れをドイツ人の子どもにも開くことによって、このモデル. イツ人の子どもと外国人の子どもを分離することなく、か. の異文化間教育的側面は高められる。豊饒化理論に基づく. 3.

(4) と、母語の位置づけが限定的に高められたのみで、 「外国人」. けがなされ、諸州において言語教育が実施されてきたこと. の母語保持については十分に検討されていない。他方、ベ. を示した。次に、この「統合」を可能にする教育モデルと. ルリン州における SESB は、バイリンガリズムの観点から. して、バイエルン州とベルリン州の新たな言語教育の取り. 異文化間教育を指向した言語教育を行っており、異なる言. 組みの概要を制度的側面から提示した。また、これらの取. 語・文化への気づきという異文化間教育の視点をも含んで. り組みに異文化間教育の視点が含まれるようになったこと. いる。また、SESB の整備は、バランスのとれたバイリンガ. を指摘した。しかし、これらの点は、制度的側面から言及. リズムやドイツ語とパートナー言語を平等に位置づける学. したに留まり、マイノリティ側の視点から十分に言及する. 校システムに近づいている。これは豊饒化理論の最終的な. ことはできなかった。制度的側面から研究を蓄積するだけ. 段階とされる状態に迫っていることを示している。. では、マイノリティ側の視点を十分に取り入れた言語教育. 第五章においては、社会的「統合」のための重要な要素. は実施できないであろう。したがって、今後の課題は、こ. として「外国人」の「母語」を捉え、その保障が重要な課. れらを補完するために制度的側面からだけではなく、 「外国. 題であるということを示した。これまでの母語教育の目的. 人」の視点から、かれらに対して行われた言語教育を分析. を①「帰国能力の保持」 、②「第二言語獲得のための第一言. することである。かれら自身がドイツ語、外国語、 「母語」. 語の促進」 、③「言語的・文化的アイデンティティの保持」. といった言語をどのようなものとして捉え、言語教育をど. とし、それぞれの目的の下、実施される母語教育の課題を. のように考えているのかを明らかにすることが重要となる。. 明らかにした。また、ドイツ生まれの第三世代の「外国人」. これらを反映させた言語教育を行うことにより、 「外国人」. にとっての「母語」とはいかなる意味を持つのか、スクッ. の社会的「統合」を促進することにつながる。本論では、. トナブ=カンガスによる母語の定義に関する議論から論じ. バイエルン州とベルリン州の言語教育モデルのみを取り上. た。第三世代の「外国人」自身は家族の出身言語を「母語」. げたが、両州における新たな取り組みが他州だけでなく他. として学ぶことの重要性を認識しているが、その認識と実. 国においても応用可能か否かということを念頭に置き、言. 際の言語選択とが一致しているわけではない。 「外国人」の. 語教育の検討を行うことは重要である。これにより、ドイ. 子どもが望む「母語」能力の程度や外国語履修を可能にす. ツだけでなく、定住外国人を抱える諸国の言語教育と社会. るのが、第四章で示した取り組みであると思われる。. 的「統合」の発展に寄与することになると思われる。. 言語学習により、 「外国人」 、ドイツ人の双方に求められ ているのが、異文化間能力の獲得である。 「外国人」とドイ. 3.主要参考文献. ツ人の共生のために求められるこの能力は、1996 年の常設. 天野正治編、1997、 『ドイツの異文化間教育』 、玉川大学出 版部. 文部大臣会議による「学校における異文化間教育勧告」に 示されている。また、ニーケはこれまで移民に対してのみ. 天野正治・佐藤義雄、1994、 「ドイツにおける外国人子女の. 求められてきた異文化間能力をドイツ人も獲得していくべ. 教育」 、外国人教育研究会、 『主要国(米・独・仏)にお. きであるとしている。この異文化間能力とは、スティアー. ける外国人子女教育に関わる具体的施策の変遷』. (2003)によれば、自文化とは異なる文化内容に関する知識と. 結城忠、1992、 「ドイツにおける外国人労働者子弟の教育」 、. その文化と遭遇した際、どのように行動するかという対処. 『外国人労働者子弟の教育に関する基礎的研究−先進工. 能力であるとされている。これらの能力はまさしく文化. 業国における事例を中心として−』文部省科学研究費補. 的・言語的に多様な学校において獲得されるものである。. 助金(一般研究 B)研究成果報告書(代表 渡辺良). 先述の実験モデルと SESB は、 「外国人」自身の文化的要素. Gogolin, I., Neumann, U., Reuter, L., (Hrsg.), 2001, Schulbildung. である「母語」保持を可能とするだけでなく、ドイツ人に. für Kinder aus Minderheiten in Deutschland 1989-1999, Waxmann Nieke, W., 2000, Interkulturelle Erziehung und Bildung Wertorientierung. も「外国人」の母語に触れる機会を与え、マジョリティが 多様性を肯定的に捉える環境を作り出していると考えられ. im Alltag, Leske + Budrich, Opladen. る。そのなかで、 「外国人」とドイツ人の共生、 「統合」だ. Skutnabb-Kangas, T. ,1984, Bilingualism or Not, Multilingual Matters. けでなく、異文化間能力の獲得が可能となるのである。 1本論における「外国人」とは、ホスト社会の人々とは出自. 以上、本論においては、 「外国人」に関わる教育のなかで. が異なり、文化的に多様な背景を持った人々のことをさす。 2本論では、 「統合」とは、マイノリティ自身が文化的要素 を保持し、それをマジョリティが肯定的に承認し、相互に 影響を及ぼし合いながら社会を作り上げることとする。. も特に言語教育に着目し、言語教育モデルを概観すること により、以下の点を明らかにした。まず、ドイツ語教授、 母語教授は、分離、同化、統合のそれぞれにおいて意味づ. 4.

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