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中村裕昌ほか : 片側性肺水腫に対し VV ECMO を使用した 2 例 173 図 1 症例 1 の術前心エコー高度の僧帽弁逆流と, 前尖 (A2) の逸脱を認める. も改善傾向を認めず, 手術目的に当科紹介となる. 既往歴 : 特記すべき所見なし. 心エコー所見 :Dd/Ds:51/35(mm)

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開心術後発症した片側性肺水腫に対して,

VV ECMO を使用し救命しえた 2 例

中 村 裕 昌 山 口 裕 己 中 尾 達 也 徳 永 宜 之 光 山 晋 一 渡 邊 晃 佑 開心術後に発生した片側性肺水腫に対して VV ECMO を施行し軽快した 2 症例について報告する.症例 1 は 35 歳女性.重度の僧帽弁閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症を認め,右開胸で僧帽弁形成術および三尖弁形成術 を施行した.人工心肺離脱後に酸素化の維持が困難となったために,大腿静脈送血,内頸静脈脱血の VV ECMO を施行した.胸部 Xp では右肺片側性の肺水腫を認めた.術 5 日目に VV ECMO を離脱した.その 後深部静脈血栓を認め IVC フィルターを装着したが,経過良好で独歩退院となった.症例 2 は大動脈弁置 換術後の 67 歳男性.弁輪部膿瘍を認め,大動脈基部置換術を施行した.人工心肺離脱後,酸素化の維持が 困難となり両側大腿静脈脱血,送血で VV ECMO を施行した.胸部 Xp では右肺片側性の肺水腫を認めた. 術後 5 日目に VV ECMO を離脱し,術 60 日目に独歩退院となった.術直後の呼吸不全症例に対して VV ECMO は有効と考えられるが,静脈血栓などの問題もあり,引き続き検討していく必要がある.日心外会誌 40 巻 4 号:172-176(2011) キーワード:片側性肺水腫,VV ECMO

Two Cases of Unilateral Pulmonary Edema after Heart Surgery : Successful Strategy Using Veno-venous Extracorporeal Membrane Oxygenation

Hiromasa Nakamura, Hiroki Yamaguchi, Tatsuya Nakao, Yu Oshima, Noriyuki Tokunaga, Shinichi Mitsuyama and Koyu Watanabe(Department of Cardiovascular Surgery, Shin-Tokyo Hospital, Matsudo, Japan)

We report 2 patients with unilateral pulmonary edema after heart surgery who were successfully treated using venovenous extracorporeal membrane oxygenation(VV ECMO). Case1 : A 35-year-old woman presented with dyspnea. Echocardiography showed severe mitral regurgitation(MR)and tricuspid regurgitation(TR)and therefore, mitral valve plasty(MVP)and tricuspid annular plasty(TAP) were performed via right thoracotomy. After weaning from cardiopulmonary bypass, respiratory failure occurred with expectoration of foamy sputum and it was difficult to maintain oxygenation. Therefore, we performed VV ECMO to maintain oxygenation. A chest X-ray film after surgery showed ipsilateral pulmonary edema. After weaning from VV ECMO, deep venous thrombosis occurred and therefore we inserted an IVC filter. Case 2 : A 67-year-old man, who had previously received aortic valve replacement experienced dyspnea and visited our hospital. Echocardiography showed an aortic root abscess, and therefore Bentall operation was performed. After weaning from cardiopulmonary bypass, oxygenation was difficult to maintain, and therefore we performed VV ECMO. A chest X-ray film post operatively showed right ipsilateral pulmonary edema. The patient was weaned from VV ECMO 5 days post operatively and was discharged 60 days post operatively. We believe that VV ECMO can be beneficial for patients with respiratory failure after heart surgery, but complications related to this approach such as DVT should also be considered. Jpn. J. Cardiovasc. Surg. 40 : 172-176(2011)

Keywords:unilateral pulmonary edema, VV ECMO

片側性肺水腫は稀な病態であり気胸や実質性肺疾患など で発生することがあるが,心不全に伴い発生するとの報告 もある.今回我々は術中に発生した片側性肺水腫に伴う呼 吸不全に対して,静脈脱血,静脈送血の Extracorporeal

membrane oxygenation(Veno-venous ECMO : VV ECMO)

を使用して救命しえた 2 例を経験したので,これらに関す る文献を交えて報告する. 症例 1:35 歳女性. 主訴:呼吸困難. 現病歴:3 カ月前に歯の治療を受けたのち,呼吸苦が出 現したため外来を受診した.胸部 X 線上肺水腫を認め, かつ心エコーで重度の僧帽弁閉鎖不全症,中等度の三尖弁 閉鎖不全症を認めた.利尿剤などによる内科的加療を行う 2010 年 8 月 5 日受付,2011 年 1 月 28 日採用 新東京病院心臓血管外科 〒271-0077 松戸市根本 473-1

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も改善傾向を認めず,手術目的に当科紹介となる. 既往歴:特記すべき所見なし.

心 エ コ ー 所 見:Dd/Ds : 51/35(mm),EF58% MR :

se-vere(A2 prolapse),TR : moderate, 明 ら か な vegetation

は認めなかった(図 1). 心電図:洞調律 72/min. 以上より,歯の治療に伴う感染性心内膜炎による僧帽弁 閉鎖不全症の診断のもと,手術を行う方針となった.患者 は 35 歳女性であり,かつ動脈硬化も少ないことから右開 胸による僧帽弁形成術および三尖弁形成術を行う方針とし た. 手術所見:右大腿動脈より送血管(18Fr.),右内頸静脈 および右大腿静脈より脱血管(それぞれ 14Fr. 27Fr.)を 挿入し人工心肺を確立したのち,右第 4 肋間開胸でアプ ローチした.上行大動脈にルートカニューレを挿入し,上 行大動脈を遮断した.順行性に心停止液を注入し,心停止 を得た.右側左房切開で僧帽弁にアプローチした.僧帽弁 を観察すると,明らかな活動性の感染の所見は認めなかっ た.前尖の A2 の領域が逸脱しており,また弁輪の高度な 拡大を認めた.このため,CV-5 を 4 本使用して人工腱索 を 作 製 し,24 mm の Carpentier-Edwards Physio II ring (EDWARDS LIFESCIENCES LLC.)を使用して僧帽弁形 成術を施行した.その後左房を閉鎖し,28 mm の

Ed-wards MC3ring(EDWARDS LIFESCIENCES LLC.)を使

用して三尖弁形成術も施行した.右房を閉鎖したのち,大 動脈の遮断を解除した.術中の経食道エコーでは,僧帽弁 の逆流は認めず,人工心肺離脱もスムーズに行えた.しか し,その後酸素化不良となり(PaO2/FiO2=57 mmHg), 酸素化維持が困難となった.心機能および血行動態は維持 されており,酸素化維持のために VV ECMO(右内頸静脈 脱血,右大腿静脈送血)を装着した.術後の胸部 X 線写 真では,右肺のみの著明な肺水腫を認めた(図 2).手術 時間は 360 分,人工心肺時間は 225 分,大動脈遮断時間は 150 分であった. 術後経過:術後,VV ECMO を使用して酸素化を維持し つつ(ACT range: 140∼160 秒),かつ持続的血液濾過透 析(Continuous hemodia filtration : CHDF)を使用して除 水を行った.術後 5 日目に VV ECMO を離脱することが できたが,右大腿静脈から膝窩静脈にかけて静脈血栓を認 めたため IVC フィルターを挿入した.ACT を測定しつつ, へパリンを投与し血栓溶解を行った.人工呼吸器からの離 脱が困難であり,術後 10 日目に気管切開術を施行した. 術後 20 日目に人工呼吸器を離脱し,術後 22 日目に IVC フィルターを抜去した.その後気管切開用カニューレも抜 去し,術後 30 日目に独歩退院となった. 症例 2:67 歳男性. 主訴:めまい,呼吸困難. 現病歴:平成 21 年 1 月に大動脈弁置換術(Magna 23 mm 生体弁)および冠動脈バイパス術(Ao-SVG-4PD)を 施行した.術 1 年後に感冒症状が出現し,さらにめまい, 呼吸困難が出現した.心電図検査では 1 度 AV ブロックを 認 め,心 エ コ ー で は 大 動 脈 弁 位 に perivalvular leak (moderate-severe AR)を認めた.経食道エコーでは,無 冠尖から左冠尖にかけての弁輪部膿瘍を認めた.心不全も 発症しており,内科的加療は困難であり,加療目的に当科 紹介となった. 既往歴:高血圧,糖尿病(内服コントロール),高脂血 症. 心エコー所見:Dd/Ds : 44/30 mm, EF : 60.2%,大動脈 弁輪部膿瘍を認める(図 3). 以上より感染性心内膜炎に伴う弁輪部膿瘍の診断で,大 動脈基部置換術および再冠動脈バイパス術を行う方針とな った. 図 1 症例 1 の術前心エコー 高度の僧帽弁逆流と,前尖(A2)の逸脱を認める.

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手術所見:右腋窩動脈に 8 mm の人工血管を縫着し,こ こより送血管,右大腿静脈より脱血管を挿入し人工心肺を 確立した状態で正中切開を行った.心膜と周辺組織は強固 に癒着していたが,これを剝離し,弓部大動脈にも送血管 を挿入して full flow での送血を開始した.また,上大静脈 にも脱血管を挿入して 2 本脱血とした.上行大動脈を遮断 した後に大動脈を切開し,選択的冠灌流を行い,心停止を 得た.前回縫着した大動脈弁は無冠尖と右冠尖の部位が外 れていた.また大動脈弁輪の下に vegetation を認め,かつ 大動脈基部と右房の間に交通を認めた(図 4).大動脈弁 を可及的に取り外したのちに vegetation を除去し,デブ リードメントを行った.大動脈基部を自己心膜で補強した の ち,23 mm Freestyle 弁(Medtronic Inc., Minneapolis,

MN, USA)を 2-0 Ticron プレジェット付き 15 針で大動脈 基部に装着した.冠動脈は Carrel Patch で吻合した.つづ いて Triplex 24 mm 人工血管(テルモ社製)を使用して上 行大動脈を置換した.また大動脈基部と右房との交通部位 は直接閉鎖を行った.その後,大伏在静脈を使用して冠動 脈バイパス術(Ao-SVG-PDA)を施行した.止血を確認 し,大動脈の遮断を解除した.人工心肺を離脱したが,そ の直後より泡沫状の痰を大量に認め,酸素化を維持できな くなった(PaO2/FiO2=68 mmHg).心機能および血行動 図 2 症例 1 の胸部 Xp の推移 術直後に右片側性の肺水腫を認める. 図 3 症例 2 の術前心エコー 膿瘍腔を認め,かつ paravalvular leak を認める.

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態は維持されており,酸素化の維持のために両側大腿静脈 より送血管,脱血管を挿入して VV ECMO を行った.そ の後酸素化を保つことができた状態で手術を終了した.手 術時間は 560 分,人工心肺時間は 356 分,大動脈遮断時間 は 258 分であった.術後の胸部 X 線写真では,右肺水腫 を認めた(図 5). 術後経過:VV ECMO を使用して酸素化を維持しつつ, CHDF を使用して除水を行った(ACT range: 140∼160 秒).しだいに泡沫状の痰は認めなくなり,酸素化も改善 してきた.術後 5 日目に VV ECMO を離脱した.しかし 人工呼吸器からの離脱は困難であり,術後 7 日目に気管切 開を施行した.術後 26 日目に人工呼吸器を離脱し,術後 31 日目に気管切開チューブを抜去した.その後リハビリ を進め,術後 60 日目に独歩退院となった. 肺水腫は肺毛細血管の静水圧の上昇や透過性の変化,コ ロイド浸透圧の減少などで肺に液体成分が蓄積されること により起こる.多くの場合は両側に起こるが,片側の肺の みに起こることがある1∼4).片側肺水腫は稀な病態であり, 多くは気胸やシャント,実質性肺疾患,片側のみの交感神 経切除後の肺の再拡張時に見られる.この肺水腫の原因と して毛細血管の血流の増加,サーファクタントの低下,虚 脱肺の急速な拡張,交感神経切除後の細静脈の括約筋機能 低下などがある5, 6).また,心不全に伴う片側肺水腫の報 告もみられ,多くの場合は右側に起こることが多い.心不 全に伴う片側性肺水腫の正確な原因については分かってい ないが,重力や姿勢,肺静脈圧の変化,毛細血管の浸透圧 の変化などが原因と考えられる7∼9).治療方針としては心 不全に準じ,Swan-Ganz カテーテルを挿入し利尿剤やカテ コラミンを使用して対応するのが一般的とされている. 今回我々が経験した症例は,術中の人工心肺離脱後に肺 水腫を発症し酸素化の維持が困難な状態となった.心機能 は薬剤を使用し維持できる状態であったため,術中に ECMO を使用し,酸素化を維持する方針とした.血行動 図 4 右房への穿破を認める. 図 5 症例 2 の胸部 Xp の推移 術直後に右片側性の肺水腫を認める.

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態の管理や出血のコントロールの問題を考慮し,動脈送 血,静脈脱血の ECMO ではなく,VV ECMO を使用する こととした.ECMO は体外式ガス交換を行い,肺が回復 してくるまでの間,高圧での人工呼吸器管理を避け,血液 および組織の酸素化に寄与する10∼15).ECMO は ARDS や 保存的加療で十分な回復の得られない重症心不全に対して 使用される.Hermans らは ICU において ECMO を使用 した 23 例について報告している16).動脈送血,静脈脱血 の ECMO は心機能が良好な症例では,自己の病的肺を通 過する血液が多いため,酸素化が十分になされていない自 己心拍血液と ECMO から送られてきた血液が競合し,全 身の動脈血酸素分圧の不均衡が生じることがある.また術 直後に使用する場合,へパリン化に伴う出血の問題が出て くる.静脈送血,静脈脱血の ECMO は静脈内で酸素化が 行われるため,病的肺を抱える肺循環により酸素化された 血液が還流可能であること,体循環での自己心拍と補助循 環との競合が生じないことなどの利点がある.海外での報 告もあり,Hermans は ICU で施行した ECMO 23 例中 16 例(うち 2 人は後に動脈送血,静脈脱血の ECMO に変 更)に静脈送血,静脈脱血の ECMO の使用を報告してい る16).本邦でも,福島らが冠動脈バイパス術後に静脈送 血,静脈脱血の ECMO を使用し救命した例を報告してい る17) 今回経験した症例は 2 例とも VV ECMO で酸素化を維 持しつつ,その間に肺水腫を改善することができた.この 間,血行動態の破綻や出血の問題は生じなかった.しかし 1 例に静脈血栓を認め IVC フィルターを装着する必要があ った.VV ECMO 使用の際のへパリンやフラグミンの適正 使用に関して今後検討していく必要がある. 開心術後片側性肺水腫に伴う呼吸不全症例を経験し,か つ VV ECMO を使用することで救命しえた 2 例を経験し た.術直後に肺水腫を生じ,呼吸不全を生じた症例に対し て VV ECMO は有効と考えられるが,静脈血栓などの問 題もあり,今後引き続き検討していく必要がある.

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