様式8の1の1 別紙1
論文の内容の要旨
専攻名 システム創成工学 氏 名 Reem ALSEHNAWI
構造物の固有振動数や減衰定数などの動的特性値は動的作用を受ける構造物の動的挙動に顕著 な影響を与える.したがって,動的作用を受ける構造物の設計に際しては,できるだけ正確な動 的特性値を用いることが必要である.しかし,実際に完成した構造物の動的特性値は設計値と異 なることは避けられない.そこで完成した構造物の正確な動的特性値を得るために,しばしば振 動測定が行われる.また,構造物の振動測定は既設構造物の構造ヘルスモニタリングとして健全 度を診断するためにも有用である.しかし,構造物の動的特性値を自由振動実験や常時微動観測 により求める際には,動的特性値の振幅依存性が問題となっている.
そこで本研究では,実構造物を模擬した鋼製橋梁模型および鉄筋コンクリート橋梁模型を対象 として,動的特性値の振幅依存性を詳細に検討した.また,単体の鉄筋コンクリート橋脚模型を 対象として,振動台実験を併用し,橋脚の損傷とその動的特性値の変化および損傷した橋脚に補 修を行った場合の動的特性値の振幅依存性を詳細に調べた.さらに,実際に架設されている2径 間連続桁橋を対象として,小さい振動レベルの範囲ではあるが,動的特性値の振幅依存性を調べ た.その結果,橋梁模型および実際の2径間連続桁橋において,おもに1次振動モードの固有振 動数および減衰定数の振幅依存性を実験的に確認し,今後の構造物の振動計測や振動解析に対し て非常に有用な情報を得ることができた.
本論文は全7章から構成されており,その概要は以下のようである.
第1章では,本論文の研究背景や研究目的を述べるともに関連する既往の研究をまとめている.
第2章では,橋梁の振動試験で用いられる自由振動実験および常時微動観測から,動的特性 値としての固有振動数および減衰定数を算定する方法の概要を説明している.
第3章では,鋼製橋梁模型を対象として自由振動実験を行い,固有振動数および減衰定数の 振幅依存性を調べている.まず,模型橋梁に用いたゴム支承および橋脚のみの振動実験を行い,
それぞれの動的特性値を把握した.その結果を踏まえて,橋脚と上部構造からなる高架橋モデル に対して振動実験を行い,微小振動レベルから一般的な地震動レベルまでの振動レベルに対する 動的特性値の振幅依存性を広範に調べた.
第4章では,鉄筋コンクリート橋脚および鉄筋コンクリート梁からなる高架橋模型を対象と して,自由振動実験を行い,固有振動数および減衰定数の振幅依存性を詳細に調べた.まず,鉄 筋コンクリート橋脚の動的特性値の振幅依存性を調べた上で,上部構造と橋脚の結合条件として,
鋼板を用いて剛に接合した場合と積層ゴム支承を用いた場合について,広範な振動レベルにおけ る自由振動実験を行い,固有振動数および減衰定数の振幅依存性を調べた.
第5章では,上部構造を模擬した重りを有する鉄筋コンクリート橋脚模型を対象として,弾
性範囲および非弾性範囲において自由振動実験および振動台実験を行った.まず,損傷を受けて いない橋脚に対して自由振動実験を行い,動的特性値の振幅依存性を調べた.また,JMA釧路地 震波を用いた振動台実験によって橋脚が段階的に損傷を受けた場合について,その損傷の程度を 鉄筋ひずみなどで確認した上で,振動台実験後に自由振動実験を行い,損傷を受けた橋脚の固有 振動数と減衰定数を確認した.振動台で加振するレベルを段階的に大きくしてこの手順を繰返し,
橋脚の損傷のレベルとその固有振動数および減衰定数の関係を調べた.さらに,オリジナルの地 震波に対して160%の振幅を有するJMA釧路地震波による振動台実験が終わった段階で,振動レベ ルを変えた自由振動実験を行い,固有振動数および減衰定数の振幅依存性を確認した.次に,振 動台実験で損傷を受けた橋脚に対して,ひび割れ注入およびFRPシートで補修した橋脚に対して 改めて振動レベルを変えた自由振動実験を行い,固有振動数および減衰定数の振幅依存性を確認 した.その結果,ひび割れ注入だけでは補修効果はあまりなく,固有振動数および減衰定数は損 傷を受けた橋脚とあまり変わらないが,FRPシートで補修した場合には,振動振幅と固有振動数 あるいは減衰定数の関係は,損傷前の橋脚の関係と同等となることを確認した.
第6章では,1基の鉄筋コンクリート橋脚を有する2径間連続桁橋を対象として,微小振動の 範囲ではあるが,振動レベルを変えた場合の自由振動実験および常時微動観測を行い,実橋梁の 固有振動数および減衰定数の振幅依存性を調べた.ここでは,上部構造が架設される前の鉄筋コ ンクリート橋脚の振動実験を行った後,上部構造が架設された完成系橋梁に対して振動実験を行 い,動的特性値の振幅依存性を確認し,有用な情報を得ている.
第7章では,結論として各章で得られた結果を総括している.