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臨床音楽教育学の構築に関する研究-音楽療法を視点として-

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Academic year: 2021

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(1)臨床音楽教育学の構築に関する研究      音楽療法を視点として一. 教科・領域教育学専攻 芸術系コース(音楽). 学籍番号  M07227F. 氏 名  加戸敬子 【研究の問題と目的】. 導する意義とは何であるのかという原点に立ち.  平成19年、特別支援教育が学校教育法に位. 戻る必要がある。. 置づけられ、すべての学校において行われるこ.  音楽教育家であり音楽療法家のE.T.Gast㎝. とになった。文部科学省が行った調査によると、. は、音楽科教育の理想とする形について「音楽. 通常学級で発達障害児の在籍率は63%で、制. の機能面を十分に理解することは、生徒と生徒. 度上の病弱児を含む、何らかの病気を持ってい. に及ぼす音楽の影響をよりよく理解することにな. る子どものクラス在籍率は13%である。ここで注. る」と述べている。音楽の諸機能を利用して行う. 目すべき点は、病弱児のうち心身症の占める割. 治療法に音楽療法があるが、そのような観点か. 合が第二位であるということである。. ら、教育者や研究者によって、音楽療法的アプ.  一方、健常児においても、不登校や突発的な. ローチによる実践が報告されている。しかし、そ. 攻撃性(キレる)、いじめなど、心の問題を抱えた. の多くは特別支援教育であり、普通学級での健. 子どもたちが実に多い。つまり現在の通常学級. 常児に対する実践は少ないと思われる。. は、社会的相互交渉やコミュニケーションの質.  一方、近年、学校教育現場で起こっている諸. 的障害を抱えた発達障害児と、心の問題を抱え. 問題に対応すべく生まれたのが、臨床心理学の. た健常児が混在しているのである。これらの子ど. 方法を教育学に応用した「臨床教育学」である。. もたちに共通する特徴の一つとして、人間関係.  河合は「臨床教育学」の方法と特徴として、研. とその調整に関わるといわれる情動発達の未成. 究者が研究対象に自ら関わり、客観的観察者の. 熟があげられる。そのような情動発達の促進が. 立場は取らないこと、個を重視しその中に普遍. 教育現場において急務であるといえよう。. を求めること、教える側ではなく学ぶ側の視点を.  情動は音楽と深く関わっており、音楽には情. 重視すること、仮説の立場ではなく発見的な研. 動の喚起や抑制を促すなどの機能がある。つま. 究プロセスが重要であること、などを述べている。. り音楽は、心の発達に深く関わるものと認知され. こうした学間の性格と研究方法は、とりわけ音楽. ている。にもかかわらず、学校教育での音楽科. 療法の特徴と共通する要素である。. は授業時間数が削減され、音楽教科の存在そ.  非言語で身体や情動に直接はたらきかける. のものの意義が問われている。そこで、そもそも. 音楽の機能をr臨床教育学」に取り入れ、心の. 人間にとって音楽とは何か、子どもに音楽を指. 教育ができないだろうかという発想が、筆者の考. 一448一.

(2) える噛床音楽教育」構想の経緯である。. 察した。.  「臨床教育学」が主に言葉を中心に子どもと. 【結論と課劇. 関わるのに対し「臨床音楽教育」は、非言語的.  本論文で得られた知見は次の四点である。. な音楽という媒体を用いることで、発達的に言葉.  1.臨床音楽教育は、臨床教育学に依拠す. の使用が苦手な子どもや、精神的な問題を抱え. るという意味で、現象の中で研究対象の視点. て言語表現の苦手な子どもに、教育の中でその. に立ち、個の尊重を方法論の柱とする。. 苦手を克服し、音楽を通して直接心地よさや.  2.臨床音楽教育は、自由で個性的な音楽. 生きる価値を与えることを目的とするのである。. 表現を促し、その表現を教師やセラピストが. 【本請文の構成】. 受容することで、自尊感情を育成することを. 第1章音楽の概念と現代の音楽教育の課題. 目指す。. 第2章臨床教育学の特徴と方法.  3.臨床音楽教育は、怒りや不安、悲しみ. 第3章臨床音楽教育の可能性. などの普段抑制している感情を、音楽という. 第4章臨床音楽教育の展開. 媒体を通して表現させ、ストレスを発散する. 【研究の概要】. というカタルシス効果を持っている。.  第1章では、その起源から感情表現や癒しと.  4.臨床音楽教育は、現場において研究者. しての意味を持った音楽が、文明の発達によっ. が対象者との関係の中に、発見的なプロセス. て二分化され、教育が「心」としての音楽を切り. を重要視すること、つまり対象に対して即興. 捨てた結果、生じた問題について考察した。. 的な音楽や関わりを特徴とする。.  第2章では、学校教育現場で「心」の問題に.  今後の課題として、臨床音楽教育を現行の. 対応する臨床教育学を、河合隼雄の論ずる特. 学校教育現場で、具体的にどうように実践し. 徴と方法から考察した。そして、主に言語で子ど. ていくのか、授業の頻度、時間などと、教員. もに関わる臨床教育学に、非言語で関わる芸術. 養成カリキュラムでの即興演奏の導入につい. 領域の必要性を提案し、その学際性と方法論の. て検討する必要がある。. 中に音楽療法と共通する点を挙げた。.  また、臨床音楽教育の主要な要素として三.  第3章では、第2章で挙げた臨床教育学での. つ挙げたが、第4章で実践事例として挙げた、. 非言語によるアプローチとして音楽療法を挙げ、. rドオン!」やr毛穴で感じる音楽」などは. 「臨床音楽教育」の可能性として、音楽療法. 三つの観点では収まらない臨床音楽教育の可. 的視点を生かした音楽教育について考察した。. 能性を示唆しているように思われる。この点. そして、臨床教育学と音楽療法の理論から、臨. も今後の課題である。. 床音楽教育のキーワードをr個の尊重」r自尊感 情の育成」rカタルシス効果」の三に焦点化し、 それらの要素を、事例を元に分析した。. 主任指導教員草野次郎.  第4章では臨床音楽教育の具体的な実践に.   指導教員岡本信一. 向けて、既存の教育的、臨床的実践をもとに考. 一449一.

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