(3) 日本 食 品 低 温 保 蔵 学 会 誌 VOL.22 NO.4 1996 〔報 文 〕 191
活 性 炭 、 モ レ キ ュ ラ ー シ ーブ 、 パ ラ ジ ウ ム の
エ チ レ ン 除 去 特 性 の 評 価 †
山 下 市 二*・ 川 嶋 浩 樹*・ 近 藤 康 人*
壇
和 弘*・ 永 田雅 靖*
Evaluation
of Activated Carbon, Molecular Sieve and Palladium as Ethylene Absorbent
(Studies on Prevention of Ethylene Accumulation to Retain Quality of Fruits and Vegetables Part1)
YAMASHITA Ichiji*, KAWASHIMA Hiroki*,
KONDOH Yasuhito*
DAN Kazuhiro*and
NAGATA Masayasu*
* National Research Institute of Vegetables, Ornamental Plants and Tea,
Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheris, Ano- cho, Age-gum, Mie, 514-23
Ethylene has undesirable effects on the retention of quality in fruits and vegetables. Many
ethylene absorbents and ethylene scrubbers are available. However, their effects have not yet
been well confirmed. Activated carbon, molecular sieve andpalladium
(Pd) , which are
commonly used as ethylene absorbents, were examined for their efficency. The activated
carbon and the molecular sieve 4A, 5A and 13X were effective in reducing ethylene, however,
some amount of ethylene remained. The molecular sieve 3A had no effect on the removal of
ethylene. The other molecular sieves were significantly affected by a humid environment, and
they lost efficiency. The activated carbon as well as the molecular sieve, released the absorbed
ethylene when it was moistened by water. On the other hand, the removal of ethylene by PdCl2
was accelerated under highly humid conditions or by the presence of water. PdCl2 converted
most of the ethylene into acetaldehyde. Palladium carbon and palladium activated carbon were
more effective under dry conditions than a highly humid envionment, and they functioned as a
catalyzer rather than an absorbent.
(Received Feb. 23, 1996)
エ チ レ ン は青 果 物 の成 熟 ・老化 を促 進 す るホ ル モ ン で あ り,葉 緑 素 の分 解,黄 化,褐 変 の 促 進,苦 味 の 発 生, 組 織 の 軟 化 な ど,品 質 低 下 の原 因 とな る。 ま た,成 熟 し た青 果 物 や 障(傷)割 を受 け た青 果 物 が 発 生 す るエ チ レ ンが 健 全 な青 果 物 に作 用 して(他 感 作 用),品 質 や 鮮 度 を低 下 させ る こ とが 知 られ て い る。 さ らに,カ ー ネ ー シ ョンの 蕾 の 不 開 花 現 象(眠 り病)を 引 き起 こす な ど, 野 菜,果 実,花 卉 の 品質 保 持 にお いて,エ チ レ ンの 除 去 が 重要 な課 題 とな っ て い る。 こ の こ とか ら,小 袋 詰 め エ チ レ ン除 去 剤,シ ー トあ る い は フ ィ ル ム状 の 除去 資材 や エ チ レ ン除 去 装 置 が 市 販 さ れ て い る。 しか し,こ れ らの なか に は,特 別 な効 果 が み られ な か っ た と報 告1)∼5)され て い る もの もあ り,エ チ レ ツ 除去 資材 や 装 置 の評 価 お よ び適 正 使 用 法 の確 立 が 望 ま れ て い る。 今 回,各 種 エ チ レ ン除 去 剤(材)お よび エ チ レ ン除 去 † 青 果 物 の 鮮 度保 持 に お け るエ チ レ ンの 除 去 に 関 す る研 究(第1報) *農 林 水 産 省 野菜 ・茶 業 試 験 場(〒514-23 三 重 県安 芸 郡 安 濃 町 大 字 草 生360)192 日本 食 品低 温保 蔵 学 会 誌 VOL.22 NO .4 1996 (4) 装 置 の 評価 と適 正 利 用 法 の確 立 に 関す る研 究 の一 貫 と し て,活 性 炭,モ レ キ ュ ラー シー プ お よ び パ ラ ジ ウ ム の エ チ レ ン 除 去 速 度,除 去 率,湿 度 お よ び 吸 水 の影 響 を 調べ た の で報 告 す る。 な お,ア セ トア ル デ ヒ ド等 の 除去 機 能 を 同 時 に 有 す る資 材6),7)や微 生物 利 用 資 材8),9)につ い て は,す で に 学会 誌 等 に報 告 さ れ て い る の で対 象 に し な か った 。 実 験 方 法 1. 実 験 材 料 1)資 材 の 種 類 試 験 に 用 い た 資 材 は,活 性 炭 (和光 純 薬 顆 粒 状,粉 末Darco G-60,北 越 炭 素F -17,SD-Pの5種 類),モ レ キュ ラー シー プ(和 光 純 薬3 A1/16,4A1/16,5A1/16,13×1/16の4種 類)お よび パ ラ ジ ウ ム(和 光 純 薬 塩 化 パ ラ ジ ウ ム,5%パ ラ ジウ ム カ ー ボ ン,10%パ ラ ジ ウ ム活 性炭 の3種 類)で あ る。 2) 資 材 の 処 理 乾 燥 処 理 : 資材 を135℃ の 通 風 乾燥 器 で1時 間加 熱 乾 燥 し,デ シ ケー タ 内 で冷 却 した。 RH75%処 理 : NaCl固 相 共 存飽 和 液 を デ シケ ー タ に 入 れ25℃ に保 ち(相 対 湿 度75.8%),資 材 を1週 間保 持 した。 RH95%処 理 : Na2HPO4・12H2O固 相 共 存 飽 和 液 を デ シ ケー タ に入 れ20℃ に保 ち(相 対 湿 度95%),資 材 を 1週 間保 持 した。 2. エチ レン除 去 特 性 評 価 方 法 1) エ チ レン濃 度 と量 予備 試 験 に お い て,プ ロ ッ コ リー の 通 常 の 流 通形 態(ポ リエ チ レ ンフ ィル ムハ ン カチ 包 装 に よ る 内装,段 ボー ル 箱 詰 め)で 黄化 す る ま で10℃ で 貯 蔵 し た と こ ろ,袋 内 エ チ レ ン濃 度 は 最 大 で 1ppmで あ っ た。 包 装 内容 積(18の を考 慮 す る と, 袋 内の エ チ レ ン量 は純 エ チ レ ン換 算 で,最 大0.018謡 と 推 定 され た。 そ こ で エ チ レ ン除 去 特性 の 評価 に は,容 積300謡 の広 口瓶(Bibby Sterilin社 製)を 用 い,エ チ レ ン0.015ml(50ppm相 当)使 用 す る試 験 区 と,青 果 物 の エ チ レ ン発 生 量 が 品 目や 熟 度 そ の他 の 条件 に よっ て大 き く異 な る こ とに 配慮 して,0.15ml(500ppm相 当)使 用 す る試 験 区 を設 け た 。 2) 資 材 の 量 市 販 除 去 剤 の1袋 当 た りの 量(多 くは109前 後)お よび 後 で 述 べ る活 性 炭 に よ るエ チ レ ン除 去 試 験 の 結 果(7.59∼109で 除 去 率 が 安 定)等 を 考 慮 して,特 に記 さ ない 限 り,99と した 。 3) 測 定 方 法 上 記 広口 瓶 の ね じ キ ャ ップ に 穴 を 開 け,ガ ス ク ロマ トグ ラ フ(GC)注 入 ロ ゴ ム栓 を取 り 付 け て試 料 容 器 と し,資 材 を入 れ て栓 を した 後,エ チ レ ン0.015m脇 るい は0.15謡 をガ ス タイ トシ リン ジで 注 入 した。 容 器 内 の エ チ レ ン濃 度 の 経 時 的 変 化 をGCで 測 定 し,残 存 エ チ レ ン量 を求 め た。GCは 島津GG7Aを 用 い, 活性 ア ル ミナ(60∼80メ ッシ ュ)を 充 填 し た3mm×1.5 mの ガ ラ ス カ ラ ム とFID検 出器 を使 用 した。 カ ラム 温 度 は80℃ と し た。 ま た,ア セ トア ル デ ヒ ドの 測 定 に は, 島津GC4BMを 用 い,PEG6000を 充 填 した3mm×2m の ガ ラス カ ラ ム とFID検 出 器 を使 用 し,カ ラム 温 度 は 60℃ と した 。 実 験 結 果 お よ び 考 察 1. 活 性 炭 市 販 エ チ レ ン除 去 剤 に は 活 性 炭 をべー スに して い る も のが 多 い,そ こ で,活1生 炭 の エ チ レ ン除 去 特 性 を調 べ た。 用 い た5種 類 の 活 性 炭 の 間 で,エ チ レ ン除 去 特 性 に 顕 著 な相 違 が み られ なか った の で,こ こで は,和 光 純 薬 粉 末 活 性 炭 の 実 験 結 果 の み を示 した 。 1) エ チ レ ン濃 度 の 影 響 乾 燥 活 性 炭1gを 試 料 容 器 に 入れ,エ チ レ ン50ppm(300mの ∼500ppm (300ml;以 下 容 量 の 記 載 は省 略)の 範 囲 で,3時 間 後 の 残 存 エ チ レ ン量 をGCで 測 定 して,エ チ レ ン 除去 率 を 調 べ た 。 そ の 結 果Fig.1に 示 し た よ う に,残 存 エ チ レ ン量 は添 加 し たエ チ レ ンの初 期 濃 度 に ほ ぼ 比例 し,ど の 試 験 区 に お い て も除 去 率 は 約56%で あ っ た。 こ れ は, この 条 件 では,活 性 炭 に よ るエ チ レ ンの 吸 着 と離 脱 が 吸 着 率56%で 平 衡 状 態 に 達 す る た め と考 え ら れ た 。 す な わ ち,エ チ レ ン量 に 比 べ て 活 性 炭 が 十分 量 存 在 しな い 条 件 で は,か な りの 量 の エ チ レ ンが 除 去 され ず に 残 る こ とを示 し て い る。 この こ とは,す で に 小 役 丸10)によ って 指 摘 され て い るが 活 性 炭 に よ るエ チ レ ン除 去 に お い て は留 意 す べ き点 であ る。
Fig. 1 Effect of C2H4 concentration on removal by activated carbon Activated carbon : lg ; C2H4 : 300ml
(5) 〔報 文 〕 活 性 炭 、 モ レ キ ュ ラー シー プ 、 パ ラ ジ ウ ム の エ チ レ ン除 去 193 2) 活 性 炭 量 の 影 響 エ チ レ ン50ppmお よ び500 ppmの2試 験 区 で 活 性炭 量 を0.01∼159と し,3時 間 後 のエ チ レ ン 除去 率 を調 べ た。 そ の結 果,両 試 験 区 と も,0.01∼0.1gで は,ほ とん どエ チ レ ン 除去 効 果 が 認 め られ ず,19で はFig.1と ほ ぼ 同 じ除 去 率50%を 示 した。 活 性 炭 を59使 用 す る と,除 去 率 は 約85%ま で 上 昇 し,7.59,109使 用 時 の 除去 率 は,89%と91%で あ っ た 。 しか し,159使 用 して もエ チ レ ン を完 全 に 除 去 す る こ とは で きず,Fig.2に 示 し た よ うに,50ppm 区 の 除 去 率 は94%,500ppm区 で は97%で それ ぞれ 3お よび15ppmの エ チ レ ンが 残 存 した 。 3) 湿 度 の 影 響 野 菜 の 流 通 ・貯 蔵 環 境 は高 湿 度 状 態 に あ る こ とか ら,吸 湿 に よ る活 性炭 の エ チ レ ン除 去 能 力 の 低 下 が 懸 念 され る。 そ こ で エ チ レ ン50ppm, 500ppm試 験 区 に お け る,乾 燥,RH75%処 理RH95 %処 理 活 性 炭 それ ぞ れ の99の エ チ レ ン 除去 特 性 を調 べ た 。 な お,RH75%,RH95%に1週 間保 持 し た とこ ろ, 重 量 は そ れ ぞ れ9.989お よび10.299と な っ た が 実 験 に は乾 燥 重 量 で99を 使 用 した。 50ppm区 で は,乾 燥,RH75%,RH95%の 活性 炭 の 30分 後 の エ チ レ ン除 去 率 は,そ れ ぞ れ93,91,89%で あ っ た。500ppm区 の 除去 率 は,50ppm区 とほ ぼ 同 じ で,乾 燥 状 態 で95%,RH75%で88%,RH95%で86% で あ っ た。 こ の よ うに,吸 湿 に よ って 活 性 炭 の エ チ レ ン 除去 能 力 はや や 低 下 す る傾 向 に あ る もの の,大 き く影響 を受 け る こ とは なか っ た。 ま た,50ppm区,500ppm区 と も,湿 度 条 件 に か か わ らず,24時 間 後 の 除 去 率 は30 分 後 の 値 とほ とん ど変 わ りが なか った 。即 ち,活 性 炭 の エ チ レ ン除 去 速 度 は きわ め て 速 い が 除 去 は不 完全 で, ホル モ ン として の 活 性 を示 す の に 十分 と考 え られ るエ チ レ ン量 が 残 存 し た(Fig.3)。 4) 吸 水 の 影 響 青 果 物 の 長期 貯 蔵 で は,多 量 の 結 露 水 が 生 じ る こ とか ら,結 露水 に よっ て 活性 炭 が吸 水 す るお そ れ が あ る。 そ こで,吸 水 の影 響 を調 べ た。 す な わ ち,エ チ レ ン50ppm区 に お い て,乾 燥 活 性 炭99に よ るエ チ レ ン除去3時 間後 に 試料 容 器 内 に シ リン ジ で水 18ml(活 性 炭99を 均 一 に 吸 水 させ る の に 必 要 な量) Fig.2 Effect of the amount of activated
carbon on removal of C2H4
Table1 Release of C2H4 from absorbent by addition of water
194 日本 食 品低 温 保 蔵学 会 誌 VOL.22 NO.4 1996 (6) を注 入 し,容 器 ヘ ッ ドスペ ー ス のエ チ レ ン量 を測 定 した。 そ の 結 果,水 注 入 前 の残 存 エ チ レ ン 濃 度 は4ppmで あ っ た が 水 を添 加 して30分 後 の エ チ レ ン量 は23ppmで あ っ た(Table 1)。 これ は,活 性 炭 は 吸 水 す る と,吸 着 した エ チ レ ン の 約50%を 直 ち に 放 出 す る こ と を示 し て お り,野 菜 の流 通 ・貯 蔵 の場 面 で エ チ レン 除去 剤 とし て活 性 炭 を使 用 す る場 合 の 問 題 点 であ る。 2. モ レキ ュ ラ ー シ ー プ モ レ キ ュ ラー シー プの エ チ レ ン除 去 作 用 は,基 本 的 に は活 性 炭 と同 じ く微 細 孔 に よ る吸 着 作 用 で あ る。一 定 の 大 き さの 微 細 孔 を人為 的 に 設 け た合 成 ゼ オ ライ トが エ チ レ ン除 去 剤 として 市 販 され て い る。 1) 種類 間 差 モ レキ ュ ラー シー プ に よ るエ チ レ ンの 吸 着 は,微 細 孔 の 大 き さに影 響 され る もの と推 察 さ れ る の で,乾 燥 モ レ キ ュ ラー シ ー プ3A4A,5A13 Xの エ チ レ ン除 去 特 性 を50ppmお よ び500ppm試 験 区 で 調べ た 。 そ の 結 果Fig、4に 示 した よ うに,3Aで は 全 くエ チ レ ンが 除去 され なか ろ た。 一 方,4A, 5A, 13Xの エ チ レ ン 除 去 速 度 は 極 め て 速 く,30分 後 の 残 存 エ チ レ ン は, 50ppm試 験 区 で そ れ ぞ 礼0.5,0,0.5ppmで あ り, 500ppm試 験 区 で は,4,1,4ppmで あ った 。 これ は, 除去 率99∼99.7%に 相 当 した が,30分 後 以 降 も エ チ レ ン 除 去 率 に は変 化 が な く,24時 間 経 過 し て も上 記 の エ チ レ ンが 残 存 した。 実 験 に 供 し た モ レキ ュ ラー シー プ3Aに エ チ レ ン 除 去 能 が 認 め られ な か っ た の は,エ チ レ ン の 短 径 ×長 径 が 31×4.6Aで あ る こ とに よ る と考 え られ る。 ま た,乾 燥 モ レ キ ュ ラー シー プ4A, 5A, 13X間 に は,実 質 上 エ チ レ ン吸 着 速 度,吸 着 率 に 差 異 は な い とい え る。 2) 湿 度 の 影 響 しば しば モ レ キュ ラー シー プ は 除 湿 剤 として 使 用 され る。 これ は,モ レ キュ ラー シー プ の 微 細 孔 が 水 分 を吸 着 す る性 質 を利 用 して い る。 した が って,高 湿 度 条 件 で は エ チ レ ンの 吸 着 が 阻 害 され る と推 察 され る こ とか ら,湿 度 の 影響 を調べ た 。 その 結 果 乾 燥状 態 で エ チ レ ン吸着 が み られ な か っ た モ レ キ ュ ラー シーブ3Aだ け で な く,4A, 5A, 13Xも RH75%お よ びRH95%で 一 週 間保 持 す る と,エ チ レ ン 除 去 能 を 完 全 に 失 っ た。 こ こ で は,5Aの デ ー タ を Fig.5に 示 した。
モ レキ ュ ラー シーブ が水 蒸 気 を 吸着 す る と,エ チ レン 吸着 能 を失 うこ とは,ゼ オ ラ イ ト系 除去 剤 の保 管,利 用
Fig.4 Effect of pore size on removal of C2H4 by molecular sieve
(7) 〔報 文 〕 活 性 炭 、 モ レキ ュ ラー シー プ、 パ ラ ジ ウ ム の エ チ レ ン 除去 195 時 の吸 湿 対 策 が 不 可 欠 で あ る こ とを示 して い る。 3) 吸 水 の 影 響 モ レ キ ュ ラー シー プ に よ るエ チ レ ン 除去 に お け る吸 水 の影 響 を調 べ た。 試 料 容 器 に乾 燥 モ レ キ ュ ラー シー プ9gを 入 れ,エ チ レ ン0.015謡 を添 加 し,3時 間後 の 試料 容 器ヘ ッ ドスペ ー スの エ チ レ ン濃 度 を測 定 した 結 果,3Aが48ppm,4A,5A,13Xは い ず れ も0.5ppmで 上 述 の乾 燥 試料 の 実 験 結 果 と等 しか っ た 。 次 に,氷 水 上 で冷 却(水 を加 え る と発 熱 す る た め)し なが ら,冷 水18mlを 添 加 し た と こ ろ,Table1 に示 した よ うに,3Aは47ppm,4A,5A,13Xは,そ れ ぞれ。4,6,33ppmで あ っ た 。 こ の よ うに 吸 水 に よ るエ チ レン の放 出 が み られ,特 に13Xで は 吸 着 し た エ チ レ ンの60%以 上 を放 出 した 。 この結 果 か ら,エ チ レ ン分 子 の大 き さ とモ レキ ュ ラー シー プ の 細 孔 の 大 き さが近 い ほ どエ チ レ ンは離 脱 しに く い と推 察 され た が,ゼ オ ラ イ ト系 の エ チ レン 除 去 剤 に つ い て も,保 管 時 お よび使 用 時 の 吸 湿 お よび 吸 水 対 策 が 不 可 欠 で あ る とい え る。 3. パ ラ ジ ウム パ ラ ジ ウム(Pd)は,エ チ レ ン と水 の 水 和 反 応 を触 媒 し,反 応 の 持 続 性 に 富 む が 除 去 に は 長 時 間 を要 す る と い わ れ て い る11)。通 常Pd触 媒 は,活 性 炭 にPdを5%程 度 担 持 させ た も の が使 用 され12),市 販 のPd系 エ チ レ ン 除 去 剤 に は,少 量 の 塩 化 パ ラ ジ ウ ム(PdCl2)を 活 性 炭 に 吸 着 させ た と表 示 さ れ て い る もの が あ る。 そ こ で, PdCl2,5%パ ラジ ウム カー ボ ン(Pdカ ー ボ ン),10% パ ラ ジ ウ ム 活 性 炭(Pd活 性 炭)の エ チ レ ン 除 去 特 性 を 調 べ た。 な お,Pdカ ー ボ ン とPd活 性 炭 は99使 用 し た が10%Pd活 性 炭99中 のPd量 がPdCl2換 算 で 約1.5 9に 相 当す る こ とか ら,PdCl2は,1.59使 用 した。 1) 湿 度 の 影 響 PdCl2の エ チ レン50ppm区 お よ び500ppm区 にお け る30分 後 の 除 去率 は,26%と20%で ∼ 活 性 炭 や モ レ キ ュ ラー シーブ よ り も除去 率 が 著 し く低 く, 3時 間後 で も,そ れ ぞれ,17お よび304ppmも の 多 量 の エ チ レ ンが 残 存 した。24時 間 後 に は,50ppm区 で エ チ レン が完 全 に 除去 さ れ たが500ppm区 では95ppm残 存 した。 こ の実 験 結 果 は,PdCl2の 触媒 作 用 は持 続 性 は あ るが 反 応速 度 が遅 い とさ れ て い る こ と と一 致 した。 しか し,RH75%お よ び95%に 保 持 したPdC12の30分 後 の 残 存 量 は,50ppm区 で,5お よ び1ppm,3時 間 後 は 両 区 と も不 検 出 で あ っ た。 即 ち,活 性 炭 や モ レ キ ュ ラー シー プ と異 な り,PdCl2は,湿 度 が 高 い ほ どエ チ レ ン除 去率 が 高 くな る とい う結 果 が得 られ た。 こ の現 象 は, エ チ レ ン500ppm試 験 区 で い っ そ う明 瞭 に 認 め ら れ た (Fig.6)。 水 が 関 与 す るPdCl2の 触 媒 反 応 で は,エ チ レ ンは ア セ トア ル デ ヒ ドに 変 換 され る13)ので,乾 燥 お よびRH95%, 500ppm区 の3時 間 後 の 試 料 容 器 内ヘ ッ ドス ペ ー ス ガ ス をGCで 分 析 した と こ ろ,除 去 さ れ た エ チ レ ンの ほ と ん ど全 てが ア セ トアル デ ヒ ドに 変 換 され て い た(デ ー タ 省 略)。 す な わ ち,水 分 の 有 無 に か か わ らず,PdCl2は Wacker法14)同 様 の 触 媒 作 用 に よ っ て,エ チ レ ン は ア セ トア ル デ ヒ ドに酸 化 され た もの と考 え られ る。 次 に,Pdカ ー ボ ン お よびPd活 性 炭 につ い て,エ チ レ ン 除 去 特 性 を調 べ た。 この 両 者 のPd量 は,5%と10% で あ る が エ チ レ ン 除去 特 性 に明 瞭 な差 異 は なか った の で,以 下,Pd活 性 炭 の 結 果 に つ い て の み 記 す 。50ppm に お け る乾燥,RH75%,RH95%のPd活 性 炭 の30分 後 の エ チ レ ン残 存 量 は0,3,2ppmで,3時 間 後 で は 0,1,2ppmで あ っ た。 ま た,500ppm区 に お け る24 時 間後 の残 存 エ チ レン は乾 燥 試 料 で は不 検 出 で あ っ たが RH75%,RH95%区 で は,そ れ ぞ れ。14ppmお よ び18 ppmで あっ た(Fig.7)。 す な わ ち,Pd活 性 炭 は,乾 燥 条 件 下 で は,PdCl2よ りもエ チ レ ン除去 能 が 高 い が 高 湿 度 条 件 でエ チ レ ン除 去 が 促 進 され る とい う結 果 は得 られ なか っ た 。PdCl2単 Fig.6 Effect of moisture on removal of C2H4 by PdCl2
196 日本 食 品低 温 保 蔵 学 会 誌 VOL .22 NO.4 1996 (8) 独 の エ チ レ ン 除去 特 性 とPd活 性 炭 の エ チ レ ン除 去 特 性 の こ の よ うな相 違 につ い て は,本 実 験 で は明 らか に で き なか っ た。 RH95%Pd活 性 炭,500ppm試 験 区 の ヘ ッ ドス ペ ー ス ガ ス をGCで 分 析 した とこ ろ,ア セ トア ル デ ヒ ドは検 出 され なか っ た。 これ は,エ チ レ ンか らア セ トア ル デ ヒ ドへ の 変 化 が な っか た の か,生 成 した ア セ トア ル デ ヒ ド が 活 性炭 に 吸着 され るた め検 出 さ れ な か っ た のか は不 明 で あ る。 な お,こ の 試料 に水 を添 加 して もア セ トア ル デ ヒ ドは検 出 され な か っ た。 ア セ トア ル デ ヒ ドは青 果 物 の 生 理 障 害 の原 因 と な るが 市 販 のPd系 エ チ レ ン 除 去 剤 は,活 性 炭 と併 用 さ れ て い るの で,エ チ レ ンが 触 媒 作 用 で ア セ トア ル デ ヒ ドに酸 化 され て も,除 去 剤 か ら放 出 さ れ る こ とは な い もの と推 察 され る。 2) 吸 水 の 影 響 活 性 炭 お よび モ レキ ュ ラー シー ブ に つ いて 実 施 し たの と 同 じ実 験 条 件 で,乾 燥PdCl2 , Pdカ ー ボ ン,Pd活 性 炭 の エ チ レ ン除 去 に 及 ぼ す 吸 水 の 影 響 を調 べ た 。但 し,PdCl2は1.59使 用 し,水 は1ml 添加 した 。Table1に 示 した よ うに,こ れ ら試 料 の3時 間 後 の 残 存 エ チ レ ン は,そ れ ぞ れ13,0.5,1ppmで あ っ た。 水 添 加 に よ って,PdCl2で は0.5ppmに 減 少 し, 逆 にPdカ ー ボ ン,Pd活 性 炭 で は3お よ び4ppmに 増 加 した。 こ の結 果 か ら,PdCl2で は,水 添 加 に よ りエ チ レ ンの ア セ トア ル デ ヒ ドへ の 変 化 が促 進 さ れ れ る こ と,Pdカ ー ボ ンお よ びPd活 性 炭 で は,数ppmの エ チ レ ンが 触 媒 作 用 で は な く,カ ー ボ ン あ る いは 活 性 炭 に 吸 着 され た 状 態 で存 在 して い た こ とが 分 か っ た。 しか し,活 性 炭 で は 20ppm以 上 の エ チ レ ン が 水 添 加 に よ っ て 放 出 さ れ た (Table1)こ と を考 え る と,Pdカ ー ボ ンお よ びPd活 性 炭 は3時 間 以 内に か な りの 量 の エ チ レ ン を触 媒 作 用 で 除 去 して い る もの と考 え られ る。 要 約 青 果 物 の鮮 度 保 持 を 目的 と して使 用 され る各 種 のエ チ レ ン除 去 資 材 の べー ス とな る活 性 炭,モ レ キ ュ ラー シー ズ パ ラ ジ ウム(Pd)の エ チ レ ン除 去 特 性 を評 価 した。 活 性 炭 は,除 去 速 度 は 速 い が エ チ レ ン を完全 に 除 去 す る こ とは で き なか った 。 また,吸 湿 に よ る除 去率 の低 下 は 小 さか った が 吸 水 に よ り,除 去 した エ チ レ ンの約50 %を 放 出 し た。 モ レ キ ュ ラー シー ブ3Aに は エ チ レ ン 除 去 能 は な く,4A,5A13Xの 除 去 速 度 は 速 か っ た が 微 量 の エ チ レン が残 存 し,高 湿 度 下 で は 除去 能 が著 し く 失 わ れ た。 また,吸 水 に よ る エ チ レ ン の放 出 も認 め られ た。 塩 化 パ ラ ジ ウ ム は,乾 燥 状 態 よ り も高 湿 度 条 件 あ る い は水 の存 在 下 でエ チ レ ン除 去 能 が 高 く,エ チ レ ンの 大 部 分 が アセ トア ル デ ヒ ドに な っ た 。Pdカ ー ボ ン,Pd活 性 炭 は,乾 燥 状 態 の 方 が 除 去 能 が 高 く,そ の 除 去 機 能 は 主 として 触 媒 作 用 に よ る もの で あ った 。 文 献 1) 北 川 博 敏:農 流 技 研 会 報,118,13(1989) . 2) 〓 一 平 ・阿 部 一 博 ・茶 珍 和 雄:日 食 低 温 誌,16, 145(1990)。 3) 太 田 英 明 ・與 座 宏 一 ・中 谷 明 雄 ・椎 名 武 夫 ・井 尻 勉 ・石 谷 孝 佑:日 食 低 温 誌17,106(1991). 4) 薛 国 栄 ・内 野 敏 剛 ・松 尾 昌 樹:農 機 誌,53,61 (1991). 5) 徐 歩 前 ・ 邨 田 卓 夫:日 食 低 温 誌,19,111 (1993). 6) 筬 島 豊 ・園 田 毅 ・山 本 房 江.中 島 正 利:農 化, 57,1127(1983). 7) 筬 島 豊 ・和 田 浩 二 ・伊 東 裕 子:園 学 雑,55, 524(1987).
(9) 〔報 文 〕 活 性 炭 、 モ レ キ ュ ラー シー プ、 パ ラ ジ ウ ム の エ チ レ ン除 去 197 8) 白 普 和 ・阿部 一 博 ・岩 田 隆 ・橋 本 正 ・森 田 昭彦:日 食低 温 誌15,119(1989). 9) 阿部 一博 ・森 田昭 彦 ・山 田孝 和 ・寺 田正 樹 ・奥 田 義 二:日 食低 温 誌,18,91(1992). 10) 小 役 丸 孝 俊 ・包 装 技 術,32,31(1994). 11) 阿部 一 博:88年 食 品 流 通 機 材 ダ イ ジ ェ ス ト(流 通 シ ス テ ム研 究 セ ン タ ー 編),133(1988). 12) 大 木 道 則 ・大 沢 利 昭 ・田 中 元 治 ・千 原 英 昭:化 学 大 辞 典(東 京化 学 同 人,東 京)p.1799(1989). 13) 大 木 道 則 ・大 沢利 昭 ・田 中 元 治 ・千 原 英 昭:化 学 大 辞 典(東 京化 学 同 人,東 京)p.323(1989). 14) 大 木 道 則 ・大 沢利 昭 ・田 中 元 治 ・千 原 英 昭:化 学 大 辞 典(東 京化 学 同 人,東 京)p.2569(1989). (平成8年2月23日 受 理)