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子どもは大人になりたいか

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(1)

子 どもは大人 にな りたいか

Do Children Want to Be GrOwn―

UpsP

発達心理学教室 田

Toshitaka Tamaru* :Do children want to be grown―upsP(Journal of the Faculty of Education,

Tottori l」niversity,〈Education Science〉 ,1989,31-2)

は じめ に 子 どもに とって

,大

人 は大切 な存在である。 これ は

,至

極 当 り前の ことのように聞 こえるか も知 れない。た しかに

,子

どもは大人 に養育 されなければ

,育

つ こともで きない し

,生

きてい くことさ えで きないのだか ら。 しか し

,子

どもにとっての大人 の意味 はそれだけで はない。 子 どもは

,大

人 に保護 され

,育

て られ る。 しか し

,そ

の際子 どもは年齢 の積 み重ねだけで大人 に なるわけで はない。子 どもは

,大

人 を目標 に自ら成長 し大人 になるのである。 とい うの も

,人

間で ある以上子 どもも

,目

的に

,自

らの行動 を選択 しつつ生 きているか らであ り

,大

人 は子 どもに とっ ての選択 の目標であるか らである。 もちろん

,子

どもは

,ふ

だんか らある大人 を具体 的に選択 の目 標 とし

,生

きているとい うわけで はない。子 どもの心のなかにある大人 は

,日

常明確 に意識 されて いるというわ けで はないだ ろう。 しか し

,そ

れで も

,子

どもは大人 になることに対 し

,あ

る種 の考 えや気持 ちを持 っていることは十分考 えられ る。 もっ とも

,子

ども自身 そうした自分の思いに気が つ くのは

,あ

る種 の質問 をされてはじめての ことであろうが。 ところで

,子

どもの目標 となる大人 は

,直

接 自分 を育てて くれている人 とは限 らない。 それ は, 社会的存在 としての大人である。子 どもに将来 どんな人 にな りたいか を聞 えば

,さ

まざまな人や職 業が表現 され る。 なん らかの形で社会的役割 を担 っている大人が言い表 され る。子 どもは

,大

人の なかに単独 の人間 を見ているので はな く

,社

会 を見ているのである。 この ことは

,た

とえ子 どもが 「父親のような人 にな りたい」とか「母親 のような人 にな りたい」とい うときで さえ

,そ

う言 える。 その とき

,子

どもは父や母 だけを見 ているので はな く

,さ

まざまな人々 と,ヒ較 しなが ら

,や

はり社 会 を見ているのである。大人 になるということは

,社

会 を引 き受 けるとい うことを意味す るのであ る。 そのため,「将来 どのような大人 にな りたいか」とか「将来何 にな りたいか」とい う問題 と同時に, 「早 く大人 にな りたいか

Jと

い う問題 も成 り立つのである。一定範囲の速 さで年齢 は否応 な くたっ 一局 敏 丸

(2)

てい くので

,子

どものままでいることは生物的にはで きない。 しか し

,心

理的 には

,子

どもは「大 人 にな りたいか」「子 どもの ままがいいか」迷 いなが ら成長 していると言 えない こともない。子 ども が大人 にな りたいか どうか考 える際 には

,子

ども自身がいまの社会 をどう見ているか とい うことが 問題 になる。 そこには

,現

在 の社会的状況が反映 され る。子 どもは

,大

人のなかに社会 を見

,大

人 を1つの目標 にしつつ

,大

人 を理解 し

,批

判 し

,そ

して

,大

人 を乗 り越 えて成長 し

,新

しい社会 を 築いていかざるを得 ない。 本研究 は

,子

どもが大人 にな りたい と思 っているか どうか

,ま

たその理由 は何か とい うことを明 らかにしようとするものである。 そのためには

,当

面2つの観点が必要である。

1つ

,そ

れを社 会認識 の問題 として捉 えること

,も

う1つは

,そ

れ を発達的に捉 えることである。 子 どもが大人 にな りたいか どうか考 える際

,子

どもは「大人」 を単独 に表象すれ ばいいわけで は ない。そ こで問題 になっているの は

,社

会人 としての大人

,す

なわち

,あ

る社会的関係の担 い手 と しての大人 なのであるか ら。子 どもは

,大

人 にな りたいか どうかを問われて

,大

人 の社会 について, おそ らく

,

とりわけ大人が従事 してい る労働 について考 えざるを得 ないだろう。 それ は

,子

どもに とつて1つの社会認識 の問題 なのである。 そ こには

,現

在 の子 どもと社会 の関係がなん らかの形で 表現 され ることになる。 子 どもは

,大

人 にな りたいか どうか考 えてある結論 を出す。 その理 由付 けで は

,い

っそう思考が 要求 される。な りたいか どうかの結論 は同 じで も

,そ

れ に至 る思考 は同 じとは限 らない。そこには, 子 どもの発達的特徴が示 され るであろう。われわれ は

,こ

の間子 どもとの対話 を通 じて

,子

どもが 社会 をどのように理解 しているか について調べて きた。すると

,子

どもは

,社

会認識 において独特 の困難 に突 き当たるとい うことがわかった。小学校低学年 までの子 どもは

,店

で買物 するときに, お金 を払 うことは知 っていて もそのお金が どうなるか は皆 目見当がつかない。おつ りの場合以外 に は思い当た らないのである。これ は

,社

会認識上 の場面的拘束 とで も呼べ るものである(1ち また

,子

どもは,「お金 をいっぱい造れば

,み

んながお金持 ちになるはずだ。」 と考 える。「 そ うしないのは, きっ としまって置 く場所がないか らだろう。」これ は

,社

会的関係 と個人的関係 とを区別す る困難 を 表わ しているPち また,自然認識 と 'と 較 した場合 の社会認識 の困難 もある。なぜ,スイカ はバ ナナ よ り値段が高いのか。大 きいか らか

,お

い しいか らか。子 どもは一生懸命スイカ とバナナ とを比べ る がなかなかいい答 えが見つか らない。子 どもは

,

もののなかに自然的性質 は発見で きて も

,社

会的 性質 は発見で きないC3J。 この ように

,子

どもは

,社

会 について認識 しようとす るい ろい ろな困難 に遭 遇す るのである。そ して

,こ

れ らの困難 を子 どもそれぞれの年齢特有 の形態で「解決」す る。大人 にな りたいか どうか考 える際 にも

,

こうした発達的特徴 は十分問題 になろう。 以上 の観点 に基づ き

,本

研究で は

,子

どもに「早 く大人 にな りたいか」 とい う質問 をし

,子

ども が大人 になることを期待 しているか どうか を明 らか にするとともに

,そ

の ときの子 どもの理 由付 け の仕方 を分析す ることにより,子どもが大人 について考 える際の思考過程 の特徴点 を示 してみたい。 的 法 方 子 どもの考 え方の特質 は

,質

問 に対 す る最終的な回答結果 と同時 に、それ に至 る思考過程 によ く

(3)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 31巻 第

2号

(1989) 示 され る。 したがって

,認

識発達研究 において は

,思

考過程 を現わす対話法 に大 きな利点がある。 質問紙調査法 は

,資

料 を大量 に集めることがで きるとい う特徴があるが

,多

くの場合回答の選択肢 があらか じめ限定 され るので

,そ

れ を選ぶ際の子 どもの思考過程 は不明のままになる。 そうした理 由で本研究で は

,対

話法 を採用するが

,考

察 においては

,こ

れ まで行 なわれて きた質問紙調査法 に よる同様 な研究 も比較検討 したい。 対象児 米子市

A小

学校100名 (男53名

,女

47名) うち

2年

生 31名 (男15名

,(女

16名)

4年

生 38名 (男22名

,女

16名)

6年

生 31名 (男16名

,女

15名) 日 時

1987年

12月 場 所

A小

学校教室 手続 き 子 どもと

1対 1で

向い合い,子どもの社会認識 にかかわ る一連 の事柄 について質問す る(質 問項 目数23)。 その際

,回

答結果 よ りも

,子

どもの考 え方

,思

考過程 を取 り出そ うと努力す る。インタヴュー時間 は

1人

あた り20分 か ら30分程度である。対話 の様子 は

,カ

セ ッ トテ ープレコーダーに録音 し

,そ

れ を起 こした ものを

1次

資料 とした。今回取 り上 げる質問項 目は,「あなた は

,早

く大人 にな りたいですか」 というものである。 結 果 と考 察

A.「

早 く大人 にな りたいか」に対する回答 はじめに

,質

問「早 く大人 にな りたいか」に対 す る子 どもの回答 を

,学

年別 に整理す る。表

1は

, その結果 を示 した ものである。 「早 く大人 にな りたい」 と答 えた子 どもは

, 2年

生13人 (42パーセ ン ト

), 4年

生11人 (29パーセ ン ト

), 6年

8人

(26パーセ ン ト

)で

あった。 また

,答

え方に男女差 はあまり見 られず

,学

年差が 大 きい。

2年

生で は

4割

を越 えていたのに

, 4年

生で は約

3割

にな り

, 6年

生で は約

4分

の 1と な る。学年 を追 うごとにだんだん「大人 にな りたい」子 どもの割合が減少す る。 表 1.「 早 く大人 にな りないか」に対する学年別回答結果 学 年 は ヤゝ い い え そ の 他 計 2年 14 (7, 45 4 13 4年

25(16,9)

66 2 5 38(22,16) 6年 8 26 1 3 (男

,女

) (パーセント) 粘黙   ︿ 口 人 割

(4)

では

,な

ぜ大人 にな りたい子 どもがあまり多 くないのか。そ もそ も

,子

どもは大人 なんかにな り たが らない ものなのか。 また

,学

年 を追 うごとに「 な りたい」子 どもが減 るのはなぜだろうかも ここで は

,問

題 を提出す るに とどめ

,子

どもの理 由付 けの分析 に移 ろう。

B.理

由付 けの分析 本研究では

,子

どもに「早 く大人 にな りたいか」尋ねた後

,そ

の理 由 も求 めた。 そこで

,自

発的 に理由を述べた子 どもを対象 に

,理

由付 けの分類 を行 なってみる。子 どもが述べた理 由のテーマ を 分類 したのが

,表

2で

ある。「仕事」 とい うのは

,あ

る仕事が したいか ら早 く大人 にな りたい とか, 仕事がたいへんだか ら大人 にな りた くない といった理 由付 けを指 している。「お金」は

,お

金が もら えるか ら大人 にな りたい といった理由付 けである。「遊 び」は

,大

人 になると遊べないか らな りた く ない とい うもので,「学校・勉強」 は

,学

校や勉強 を理 由に大人 にな りたいか どうか判断 した もので ある。「成長・老化」 は,カロ齢 をテーマにした もので

,死

ぬか ら大人 にな りた くない とか

,能

力 を増 すので大人 にな りたい とかい うものである。「 自由」は文字 どお り大人 にな りたいか どうかを大人 の 自由さと結びつけて考 えた ものを指す。「人間関係」は

,友

達や親 との別離 までを理 由に大人 にな り た くない と考 えるものな どを指す。「 その他」は

,以

上 に入 らない もの

,た

とえば

,自

分 の将来 の夢 との関係 を言 つた ものな どがある。理由付 けは

,各

1種

類 とは限 らない。 表

2.理

由付 けの分類 学 年 理 由 を 述 べ た 子 ども 仕 事 お 金 遊 び 学校 勉 強 成長 老化 自 由 人 間 関係 その 他 2年生 28ノ氏、 1 2 4 4年生 5 7 3 4 6年生 3 ユ ユ 0 5 注

1人

で複数 の理 由付 け有 り 「早 く大人 にな りたいか」 に対する回答の理 由付 けのなかで

,ま

,仕

事 について言及 している ものが多い ことがわか る。 その割合 は

,理

由を述べた子 どもの うち

, 2年

生では54パーセン ト

, 4

年生で は50パーセ ン ト

, 6年

生で は64パーセ ン トである。そのほか の理由付 けとして

,仕

事 に関連 が深いお金 に

,あ

るいは

,遊

,学

校や勉強

,加

齢 (成長 と老化・死

),自

,人

間関係 (友達や親) に言及 しているものが見 られる。 理 由付 けの中心テーマが仕事 であるようであるが

,仕

事 について言及 した子 どものうち,「早 く大 人 にな りたい」 とい う子 どもと答 えた子 どもと「な りた くない」 と答 えた子 どもとを分類す ると, 表3のようになる。 仕事 について言及 した子 どもの うち,「早 く大人 にな りたい」とい う子 どもは

,2年

生で は

8人

(53 パーセ ン ト

)で

あるが

, 4年

生 は

5人

(29パーセ ン ト

), 6年

生 は

5人

(28パーセン ト

)と

少 ない。

(5)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 31巻 第

2号 (1989) 443

また,「な りたい」とい う子 どもの仕事 の取 り上 げ方 には

,重

要な特徴がある。 それ は

,ま

,仕

事 を具体 的に考 えている とい う特徴である。

2年

生では

8人

6人

, 4年

生で は

5人

3人

,仕

事 を具体的に述 べている。 大人の労働 大人 と子 どもとの明 らかな相違点 は

,大

人 は労働す ることによって社会的役割 を果た しているとい うこと である。子 どもは

,大

人 について考 えるとき

,ま

ず労 働 を思い浮かべ る。子 どもに とって,「大人」は「労働」 と対 を為 している。本研究 において も,「早 く大人 にな りたいか」と問われて

,そ

の答 えの理 由付 け で「労働」について自発的 に言及 した子 どもの数 は多い。 以下,「早 く大人 にな りたいか」と聞かれた ときの子 どもの答 えを

,対

話 のままの形で とり上 げ検 討 してみよう。 小

2(女

)

「 はい。」一― どうして早 くな りたいですか

?―

― 「いろんなお仕事 したいか ら。」― 一 じゃあね

,ど

んなお仕事 したいのかな

?一

―「お菓子屋 さん とかね

,果

物屋 さん とか。」一一 じゃ, どうしてお仕事 したいのかな

?一

―「お もしろそうだか ら。」 小

2(女

)

「(うなづ く)。」一一 それ は

,ど

うして

?―

―「 な りたい仕事 とかある。」一一 うん。 どんな仕事 な りたい

?一

―「歯医者 さん。」 小

2(男

)

「(うなづ く)」 一一 どうして

?一

―「ぼ く

,大

きくなった らね

,設

計 した りす る人 に な りたい。」 小

2(男

)

「はい。」一― なぜですか

?―

―「大人 になって

,絵

描 きにな りたい。」 女

4(女

)

「な りたい。」―― どうして

?―

―「 あのね

,私

も働 いてみたいか ら。」―― そう。 ど んな ことしてみたいの

?一

― 「看護婦 さんにな りたい。」 女

4(女

)

「 な りたい。」―― どうして

?一

―「お店屋 さん とかが したい。」一一早 く働 きたい? 一― 「 うん。」 最初

,子

どもにとって労働 は

,具

体的な姿で

,す

なわち

,仕

事 として思い浮かべ られ る。 こうし た子 どもたちは

,早

く大人 になることを肯定す る。 労働経験の乏 しさと労働の拍象化 労働 は必ず しもその具体的な姿で思い浮かべ られ るとは限 らない。む しろ

,多

くの場合 は

,目

的 的行為全体 として具体的 に表象 されるので はな く

,あ

る面 だけが

,た

とえば苦労の面 だけが

,と

り 表

3,仕

事 について言及 した子 ども 学 年 言及 し た総数 な りたい な りた くない 2年生 15人 8 7 4年生 5 6年生 5

(6)

出されて抽象的 に表象 され る。 その とき

,労

働 は否定的な もの とな り

,大

人 になることも否定 され やすい。子 どもは

,事

象 を全体 的 にとらえることが困難である。労働が抽象的な形態で表象 されれ ば

,具

体的な形態 は見失われ る。「対 の思考」 は

,事

象の両側面 を比較・ 勘案す ることを許 さない。 小

2(男

)

「 な りた くない。」―一 どうして

?一

―「大人 になると働かん といけんけん (働かない といけないか ら)。」― 一 どうして働 きた くない

?一

―「だって

,大

変だ しね

,頭

使 わん といけんし, 重たい ものを持 たない といけん し。」 河ヽ

2(女

)

「.中 な りた くない。」 ― どうして

?一

― 「。

"大

人 になるとえらいか ら。」一一 え らい

?何

がえらい

?―

「仕事 した りす るのが。」 小

4(男

)「

いいえ

,あ

ん ま り早 く大人 にな りた くあ りません。」一― じゃあね

,働

きたいですか? 一―「働 きた くあ りません。」―一 それ はどうして

?十

一「働 くと疲れた りして

,も

う厭 になった り するか らや りた くない と思い ます。」―― ほかにないかな

?―

―「それ とか

,会

社で

,お

金が少 しに なった り

,多

くなった り

,そ

うい う風 になった りす るか ら

,い

やです。」 小

4(女

)

「そんなに思いません。」―一 どうして思わん (思わないか

)?一

―「大人 になったら, なんか頭 を使 って仕事 とか もしない といけない し

,そ

れ とかお金 のこともちゃん と計算 してや らな い といけないか ら。」―― じゃ

,働

きたい と思 う

?一

― 「別 に働 きたい とは思いません。」一一 どう して

?一

―「働 いた りする と疲れ るし.中」 小

4(男

)

「 そうで もない。」一― どうして

?一

―「ん―

,な

ん とな く

,大

人 になった らた くさん 働いて大変だか ら。」 小

4(男

)

「 あん ま り。」一 ― な りた くない

?―

―「大人 にな った ら

,働

いてす ご くえ らい (疲れ る)。」― 一 あ―

,し

ん どい けなあ。働 きた くない

,あ

ん ま り

?一

―「。…

1回

な んかや って みたい, どれ くらい え らいか。」 本児 は

,最

後 に1回働 いてみたい とい う。本児 は

,実

際労働がたいへんか どうか は知 らない。おそ らく

,親

か ら聞いているだけであろう。 したが って

,た

いへんそ うだなあ と思 う一方で

,働

いてみ たい とも思っている。 部分化 された労働 労働 の抽象化 は

,年

齢が上が るほど進む。高学年 になれば

,親

か ら見聞 きした ことやテレビや新 聞等 を通 じて

,労

働 のさまざまな側面が

,

とりわけ

,部

分化 された

,あ

るいは疎外 された労働 の側 面が

,表

象 され る。労働が

,そ

の本来の姿で

,目

的的行為 として表象 されない とき

,労

働 は

,子

ど もにとって好 ましくない活動 になる。 小

6(女

)

「いや

,な

りた くは。中 ないですね。」―一 どうしてそう思 うのかな

?一

―「 えっと, なんていうのかな

,仕

事 した りなんか

,な

んか

,お

茶 くみ とか

,な

んか

,そ

うい うのになってしま

(7)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 31巻 第

2号

(1989) った り,"。 あの仕事 していた ら

,そ

れ とかあ となんか

,会

社がつぶれ ることはないか も知れないけ れ ど

,つ

ぶれた りす ることもあった り

."(笑

)。」 小

6(女

)

「な りた くない。」―― なんで

?―

―「いろいろ子 どもの世話 とか しな きゃい けないか ら。“

,働

かな くて はいけない し

,水

道代 とかい ろい ろや らな きゃいけないか ら。」――働 きた くな いですか

?―

―「働 きた くないってことはないけど.…体が持たな くなってしまうか もわからない。ぃ。」 労働 とお金 との結合 「大人」が「労働」 と結びつ き

,そ

の労働 が抽象的に把握 された り

,あ

るいは労働 その もので は な く労働 の結果 だけが表象 されて も

,そ

れが「お金」 と結びつ くことがある。子 どももお金 に対す る欲求 は強い。す る と,「大人」 は再 び肯定的 に評価 され る。

2(女

)

(う

なづ く

)」

―― どうして

,一

―「えっとね

,TWJく

とお金がもらうから。」

4(男

)

「 はい。」―― なんで早 く大人 にな りたい

?一

―「早 く働 きたいか ら。」一― なんで? ――「働いた ら

,お

金 を

,お

給料 をもらって

,お

父 さんお母 さんに分 けてあげる。」 小

6(男

)

「はい。」―― それ は

,ど

うしてですか

?一

―「仕事 とかで きるか ら。」―― じゃあ, 仕事 とか したいの

?一

― 「仕事 とか してお金 をもらいたい。 そして

,大

きな家 を建 てた りで きるか ら。」 小

6(女

)

「 はいと」―― それ は, どうしてですか

?―

―「 えっ と

,あ

の仕事 とかで きるか ら。」 一― どうして仕事 とか したいんですか

?一

―「 えっ と

,お

母 さん とかお父さん とか

,仕

事 をしてや って きて

,お

金 を稼 いで食費 とか出 して くれ るってい うか

,だ

か ら

,そ

の出 して もらった分 ぐらい 返 してあげる。」 小

6(女

)

「はい。」―一 どうして

?一

―「大人 になって

,い

ろいろ一生懸命働 いて

,お

金 を貯 め ていろんなものを買いたい。」 お金 による判断基準の形成 お金 は

,社

会的交換 の物質的尺度である。お金 は

,労

働 を表現 し

,社

会的労働 の結果 としての生 産物 の価値 を表わ している。疲労や苦労 も労働 の結果であるとすれば

,お

金 も労働 の結果 である。 中・ 高学年で は

,お

金 は労働 のある側面 (たとえば

,仕

事 の苦労

)と

比べ られ る。 その比較 を通 し て

,大

人 にな りたいか 。な りた くないかの理 由付 けが行われ る。 ものごとの2つの側面 の考慮が始 まる。 小

4(男

)

「な りた くない。子 どもの ままがいい。大人 になったら

,お

金 もらってい ろい ろ買 え るけど

,大

人 になってほしい ものを買 って も

,子

どもの方がお もしろいも ファミコン

,大

人 になっ て買 って もお もしろ味ないし

,興

味な くなるし

,大

人 は仕事熱心 になってしまうし。中0」

き た くないの

?―

―「 うん

,あ

んまり。」

(8)

4(女 )

「 えっ と

,大

人 は

,な

んか,laV出 てぉ金 を もらえるけ ど,、 なんか

,す

ご く働 くのが大 変 だか ら

,子

ど もの方が いい と思 う。」 小

6(男

)

「 まだ もう少 し子 どもでいたいです。」一― なんで

?一

―「 よ くお父 さんや お母 さんの 仕事 は見 に行 くけ ど

,そ

うい うの を見 てち ょっ とたいへ んだな と思 い ます。」一― じゃあ

,早

く働 き たいですか

?一

―「 はい

,そ

うい うの はあ ります。」一― なんで早 く働 きたい

?一

―「 い まお ば あ さ んが い るんだ け ど

,そ

うい う人 に も楽 をさせ て あげたいか らです。」 大人 :子ども

=労

働 :あそび 「大人 」は「子 ども」 と対 になってい る。「子 ども」は「遊 び」 と対 にな ってい る。「大人 」 は「労 働 」 と対 になってい る。 そのため,「 遊 び

Jと

「労働 」 とは対比 され る ことにな り,「 労働 」 は「遊 び」 とは異 な り

,楽

し くない もの として異 い浮 かべ られ る。 そ うな る と,「 労働 」 の楽 しい側面 は, ,F除 され る。 また,「 大人」か ら「遊 び」 は排 除 され る。 小

2(男 )

「 な りた くない。」一― どうして な りた くない

?―

― 「お もしろいか ら。」― ― 何 が ? 一 ― 「遊 ぶ の。」―― そ うか

,遊

んで い たいか。 じゃあね

,0く

ん は働 いてみたい

?一

― 「(首を振 る)」 一 一 どうして働 いてみた くない

?―

― 「 つ ま らない。」 本 児 は, どうして大人 にな りた くないのか理 由 を尋 ね られて,「 お もしろいか ら」 と答 えてい る。 ここに は

,省

略 が み られ る。「大人 」 は「子 ども」 と対 を為 し,「子 ども」 は「遊 び」 と対 を為 して い る。「子 ども」 とい う対 を介 して

,本

児 は,「 大人」 か らい きな り「遊 び」 を思 い浮 かべ る。 そ し て,「 お もしろいか ら」 とい う答 えに至 る。対 に よる思考 の特徴 が よ く表 われてい る。 小

4(男 )

「 な りた くない。子 どもの ままが いい。大人 にな った ら

,お

金 もらって い ろい ろ買 え るけ ど

,大

人 にな って ほ しい もの買 って も

,子

ど もの方がお もしろい。 ファ ミコン

,大

人 にな って 買 って もお もしろ味 ない し

,興

味 な くな る し

,大

人 は仕事熱心 になって しまうし。中0」

きた くないの

?一

― 「 うん

,あ

ん ま り。」 小

4(女)

「 思 わ な い。」一一 どうして

?一

―「子 どものほ うが なんか まだ遊 べ る し

,大

人 にな っ た ら

,あ

のなんか仕事 しない とい けないか ら。」 小

6(女

)

「 い い え。」― ― なんで

?―

―「 大人 にな る とい ろい ろ仕事 が あ って

,な

か なか遊 べ な くな るか ら。」――早 く働 きたいですか

?一

― 「 まだ働 きた くないです。」一 ― なんで

?―

― 「 まだ い ろい ろな ことが したいか ら。」 大入 :子ども

=労

働 :勉強 「労働 」 は「勉 強 (学校)」 とも対比 され る。 小

2(男

)

「 うん。」一― なんで

?一

―「.… だ って

,ち

っち ゃい ときは

,学

校 へ行 か な い とい け

(9)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第31巻 第

2号

(1989) ないで し ょ。大人 になった ら

,あ

ん ま り行 かんでいいか ら。」 学校 にいかな くて済むだけが大人で はない。大人 は

,そ

の分 もっ といろい ろなことをしな くては な らない。 しか し

,い

ったん「学校」が問題 になると他の ことは考慮 の範囲か ら脱落する。 これ も 対 の思考の特徴である。 小

4(女

)

「な りた くあ りません。」一― どうして

?―

―「大人 になると

,な

んかね

,働

かなきゃ いけな くなるし

,い

ろんなこともしな くちゃな らない し

,年

を とるか ら

,い

や。」―準Ⅸ の嫌 い? 一―「あまり好 きじゃない。」一― どうして

?一

―「朝早 く起 きて

,ほ

とん ど休 み

,学

校みたいに体 憩 ほとん どない し

,だ

か ら。」一―休 憩ないって どうして知 って るの

?一

― 「お母 さんが言 う。」 小

4(男

)

「いや。」一一 どうして

?一

―「年 をとりた くない。働 いた り

,あ

,子

どもとただ勉 強 した り遊 んだ りして るだけだか ら。」一一 じゃ

,働

きたい と思 う

?一

― 「 うん。」一一 それ はどう してだ

,大

人 にな りた くないけど

?一

― 「ずっ と僕 ら

1年

生の頃か ら言 ってたんだけど

,働

いてお 金儲 けして

,お

母 さんたちをどっかに連れて行 った り

,あ

,い

ろいろな ことをしてあげられるか ら。」 小

6(男

)

「いいえ。」―― どうして大人 にな りた くないの

?一

― 「働 きた くない。」一一 どうし て働 きた くないの

?一

―「勉強 していた方が気が楽 だか ら。」― 一お父 さん見ていると.… たいへん そうか

?一

― 「たいへんだ と思い ます。」 本児 は

,勉

強の方が楽 だ と考 える。しか し

,次

の子 どもは,「勉強」と,ヒベ ることを強要 されて「働 くほうがいい」 と考 えを改める。 小

6(男

)

「いいえ。」―― どうして

?一

― 「大人 になると

,子

どもの ときよ りかずっと働 いて, 働 くのが働いて

,働

くのが えらい。」一一勉強 しとった方が楽 なの

?―

― 「 ううん。」一一 じゃあ働 きたいですか?―一一―「イまヤゝ。J 加齢

,す

なわち

,成

長 と老化 (死) 「加齢 (成長 と老化)」 も「大人」 と結びついたテーマである。加齢が成長 (能力の拡大 を含む) と結びついた とき

,大

人 になることは肯定 され るが

,老

化や死 と結びついた とき

,大

人 は否定 され る。低学年で は

,一

方 は他方 を排除す る。 小

2(男

)

「 ううん

,な

りた くない。」―一 どうして

?―

―「あのね

,大

人 になった ら早 く年 をと って死ん じゃうけん (死んで しまうか ら

),子

どもの ままで遊 ん どりたい。」 小

2(男

)

「な りた くない。」―― どうして

?―

―「 それ はね

,早

く年 をとってね

,お

じいさんみ たいに変なふ うになる。」 小

2(男

)

「早 く大人 になってお金 をもうけたい。」一一早 く大人 にな りたい

?―

―「(う なづ く)」

(10)

――・・・―一一 それ はどうして

?―

―「 えっとね

,早

く大人 になった ら

,お

金 は何円持って もい いし

,え

っと

,そ

れだ し

, 2年

生 よ りか強 くなれ るし

,ぼ

くは魚が大嫌 いだか ら

,大

きくなってか らはちゃん と食べて暮 らしてい きたい。」 小

2(男

)

「 はい。」一― どうしてかな

?―

―「働 いた りす るな ら

,体

力がついた り

,そ

,大

山 登山にいって頂上 に行 った りしてみたいか らです。」 小

4(男

)

「早 く大人 にな りたいです。」一一 どうして

,早

く大人 にな りたいですか

?一

―「子 ど もの頃だ となんか気楽す ぎて

,な

んかゆった りす るような ことがあるけど

,大

人 になると

,し

ゃか しゃか しゃきっ

,ち

ゃん としていかない といけないか ら

,ぼ

くはそんな風 に早 くな りたいような気 がす るので

,ぼ

くは

,早

く大人 にな りたいです。」 小

4(男

)

「 えっ とね

,ま

だ大人 になった ら

,

うん とどうせ

,大

人 になって どん どん どん どん育 っていって

,そ

れでい ろんな友達 とか も働 くためにどこかへ行 って しまうか ら

,今

の子 どものまん まのほうがいい。」一一ほかの理 由がある

,子

どものまん まがいいってい う

?―

―「大人 になった ら, した ら

,え

っ と

,死

んで しまうか ら。 えっ と

,な

んか死 ぬよ り子 どもの まん ま幸せ に暮 らしたい。」 小

4(女 )

「 な りた くない。」一― なんで

?―

― 「早 く死 ぬか ら。J 小

4(男

)

「僕 は

,そ

んなに早 く大人 にな りた くあ りません。」一一 それ は

,

どうしてですか

?一

―「え― と

,大

人 になると死 ぬ

,な

んか

,年

をとった りす るのが僕 はいやで._。」 大人 と自由 大人 になることは自由になることを意味する。 小

2(女

) 「 ううん。」一― な りた くない

?―

―「 うん。」―― どうして

?一

―「子 どもの方がいい。」―一何 で

?―

―「わか らん。」一一理由はない

?一

―「理由はないけど

,何

だか働かない といけんでしょう。」 ――で

,働

きた くない とい うことか

,簡

単 に言 うと

?十

一「 そういいわ けじゃないけどな

,な

んか, 大人 にあんま りた りた くないね―。」一―働 くだけじゃないか

,理

由は

?―

―「 ん―

,そ

れだけじゃ ない。なんかね―

,め

ん どう くさいってい うか。」一一何 が

?一

―「なんか,Vゝろいろ

,な

んつ―か ね

,頭

かた くなってい くで しょ

,い

ろいろ

,ん

,

もうち ょっ と

,ど

げで もえ―。なって もいいけ ど

,ま

,え

えわ

,な

ろう。」一一早 くな りたいか どうかを聞いたんだよ。一― 「早 くな りたいか。 な りたい。」―― なんで― ?さ っ きはな りた くないって。一―「 な りたい。ヤゝや

,

もう何で もいいや。 早 く大人 にな りたい と。」― ―なんでだいや

?一

―「大人 になった ら

,遅

くまでテレビ見れるし

,う

,別

に怒 る人 もお らな くなるし

,自

由になれ るわけだ。」 小

4(男

)

「 はい。」―― なんで早 く大人 にな りたい

?一

― 「自由にな りたい。」 小

6(男

)「

え―

,早

く?あ―

,わ

か らん。」― 一 どっちかな

?な

りた くない

,な

りたい

?―

―「 じ

(11)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 31巻 第

2号

(1989) ゃあね

,え

っ と, じゃ

,な

りたい。」― 一 どうしてな りたいのかな

?―

―「 ま―, どっちで もいいけ ど

,え

―。」―一大人 にな りたい とした らどうしてかな

?―

―「 えっ と

,自

由な ことがで きるか ら。」 ―一 ほかには

?一

―「ない。」一― じゃあね

,Nく

んは働 きたいですか

?一

―「働 きたいって ことは ないけど

,働

かない といけん とちゃう。」――働 きた くはないんですか

?一

―「そ りゃまあ

,働

かん でお金 もらえるんだった らいい。だけ

,働

く。」― 一 どうして働かんほんがいい

?―

―「 そ りゃ楽だ けん。楽がで きる。」 小

6(男

)

「 はい

,な

りたいです。」一一 どうして

?一

―「 えっ と

,あ

,お

酒が飲 めるし

,あ

と は

,自

分でい ろいろ好 きな ことがで きるし

,親

か ら離れてあ と働 いてみたい し

,そ

うい うことで早 く大人 にな りたいです。」

C.子

どもは大人にな りたいか この問題 について考 えるとき

, 2う

の ことを考慮 しな くて はな らない。1つは

,子

どもの発達で あ り

,も

う1つは

,社

会的状況である。前者 について言 えば

,子

ども (主として

, 9才

以前 の子 ど も

)は

,物

事 を全体的に把掘 し

,理

論的に判断す ることにはまだ手が届かない。 そのかわ りに

,子

どもは「対」を用いて思考す る律ち 子 どもは

,大

人 について考 えるとき

,そ

れ 自体単独 で考 えるとい うことはない。子 どもにおいて,「大人」は何か と対 を為 している。その対 を為す ものに影響 されて, 大人 になることは

,肯

定的に も否定的 に も判断 され る。 まず,「大人」は「労働」と対 を為す。ただ し

,そ

の労働が どのような もの として表象 され るかによって

,大

人 になることに対 す る考 え方 も変 わちて くる。低学年で は

,労

働 は具体的で

,目

的的な営みである仕事 として表象 され る。 これ は, 主 として経験 によるものであろう。子 どもは

,仕

事 に興味 を持 っている。子 どもは

,仕

事 を身近 に 経験することによって

,そ

れに惹かれて,「大人 に早 くな りたい」と思 う。次 に

,労

働 は抽象化 され る。その とき

,労

働 は “labour"[苦役]と して子 どもに浮かぶ。 これ は

,直

接経験 とい うよりは, 親 の様子 を見 た り親か ら聞いた りした ことが大 きいようである。伝聞 によって

,部

分化 された

,疎

外 された労働 も考 える。その とき

,そ

うした労働 と結 びついて

,大

人 になることも否定 され る。低 学年で は

,労

働 の具体的側面 と抽象的側面 とを同時 に把握 した り

,交

互 に 'ヒ 較 した りす ることは困 難である。一方 を表象すれば

,他

方 は思考の過程 に入 って こない。 現代社会で は

,労

働 は賃労働 とい う形態 をとっている。「労働」は「お金」と対 を為す。お金 に対 す る欲求 を持 つ子 どもは,「労働」を「お金」と結びつけるときは

,大

人 になることも肯定す る。中・ 高学年で は

,労

働 の結果であるお金 と労働 の苦役的側面 との比較が行 なわれ る。 そして

,大

人 にな ることの損得 を考 える。 「大人」 と「労働」 とが結びつ くとき,「子 ども」 と「遊び」 とが結 びつ くことがある。「労働」 が「遊 び」 と対比 されるため,「大人」か ら「遊び」が排除 される。大人 はもう遊 ぶ ことがで きない と子 どもは考 える。勉強や学校 も同様 な関係 にある。大人 は勉強 しな くて もよい と考 えられる。 「カロ齢」 とい うことも「大人」 と対 を為す。カロ齢 も2つの側面 を持つ。一方で は

,成

長・発達が あ り

,他

方で は

,老

化・死がある。低学年で は

,成

長 と老化 とを同時 に考 えることは難 しい。一方 を思い浮かべ ると

,他

方 は消 える。 その どち らかが思い浮かぶかによって

,大

人 になることは肯定 され ることもあ り

,否

定 され ることもある。 最後 に,「大人」 は「 自由」 と対 を為す。 この とき

,子

どもは「早 く大人 にな りたい」 と思 う。

(12)

さて,も う1つの子 どもを取 り巻 く社会的状況の問題 を考 えてみよう。先 に示 したように,「大人 にな りたい」子 どもは

,学

年 とともに減少 した し

,ま

た全体 として も少数であった。子 どもは

,そ

もそも大人 なんかにはな りた くない ものなのだろうか。1979年に

,NHKは

全国の小学

6年

生 と中 学

2年

生 と各900人を対象 に質問紙調査 を行 なっている。そのなかに,「あなたは早 く大人 にな りた い と思い ますか。 それ ともそうは思い ませんか」とい う質問項 目がある。「そう思 う」と答 えた人 は, 小

6で

22%,中

2で20%だ

った。ち「 そ うは思わない」と答 えた人 は

,小

6で

74パーセ ン ト

,中

2で

76パーセ ン トであった。また

,1984年

の調査で は

,小

学校

4∼ 6年

生で,「そう思 う」と答 えた人 は, 29パーセ ン ト,「そうは思わない」と答 えた人 は68パーセ ン トとなっている。ち セゝづれ にして も

, 6

年生 を見 る限 り

,対

話法 による本研究 と似か よった結果 と言 える。 しか し

,旭

通信社が1979年にア メ リカで行 なった調査で は,「早 く大人 にな りたい」子 どもが

52%で

あった とい う171。 っ まり ,「大人 にな りたい」 とい う者が少数である とい う傾向 は

,日

本的な ものではあって も世界共通 な もの とは 言 えないようである。 ここには日本的な事情が反映 していそうである。 その日本的事情 については,「労働」が子 どもたちの前 に どのように示 されているか に関わ りがあ りそうである。 日本の場合

,近

年の急激 な産業構造 の変化 にともない

,物

質的財貨 の生産 に携わる 人 口が激減 し

,一

般 に労働 の具体的な姿が見 えに くくなっている。そのことは子 どもの意識 に もな んらかの影響 を与 えざるを得 ない。労働 が仕事 としてその全体的な姿 において現われなければ

,苦

役だけが残 る。働 くことの楽 しみは

,労

働 の結果の1つであるお金 に求めざるを得 ない。 そうなれ ば

,大

人 になることはそうよい ことで はなさそうだ ということになる。また,日 本で は

,大

人が堂々 と遊 ばない

,あ

るいは遊べない とい うの も

,大

人 になることをお もしろ くなさそ うにさせている要 因か も知れない。大人の遊びが

,会

社 の付 き合 いか家族 (子ども

)サ

エ ビスで しかないのならば, 遊びは無 いに等 しい。 これ は,「労働」と「遊 び」とを対立 させたままにさせてお くような対 の思考 にとって都合 のよい状況である。老化が どの程度好 まし くない ものか は

,社

会的状況 によって左右 される。大人 の自由さについて も当然社会的状況 によって現右 され る。詳細 について は今回の研究 か らは推測 の域 をでないが,「早 く大人 にな りたいですか」に対す る子 どもの回答 には

,日

本 の大人 社会の現実的状態が反映 していることは否 めないだ ろう。 江 場面に拘束 された思考については,次の論文参照。 田丸敏高

1987

対話事例 にみる児童の社会認識の発達 鳥取大学教育学部研究報告(教育科学

)29-1 55

-71ページ 社会的関係 と個人的関係 との区別の困難性 については

,次

の論文参照。 田丸敏高

1988

子 どもはどのようにして社会 を認識 し始めるか 鳥取大学教育学部研究報告 (教育科学) 30-1 203 229ペ ージ 自然的関係 と社会的関係 との区別の問題 については,次の論文参照。 田丸敏高

1989

児童の価格 と利子の理解 にみる社会認識の発達 鳥取大学教育学部研究報告 (教育科学) 31--1 213--2247ペ ミージ 「対」による思考 については,フロンが自然物 を話題にした子 どもとの対話において

,詳

細 に検討 している。 Wa■on,H,1945,Les origines de la pensoe chez l'enfant,1945 滝沢武久・ 岸田秀 (訳

)

子 どもの思考 の起源 (上

)

明治図書 1968 80-2o4ページ

1979年に

NHKが

行なった「小学生 と中学生の生活 と意識」に関する調査については

,次

の文献参照。

(13)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 31巻 第

2号 (1989) 451

俯)1984年に

NHKが

行なった「小学生の生活 と意識」に関する調査 は,次の文献か ら引用 した。 総務庁青少年対策本部 青少年白書 昭和61年版 大蔵省印刷局 1986 34ページ

(14)

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