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第5章 結   語

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結語

第5章 結   語

 

 本書で報告した第26次調査地点は、鹿田遺跡の南西部に当たる。この周辺では、第6・7・9・11・20A・25 次調査地点の報告書が刊行されており、弥生~古墳時代にかけての集落や中世の屋敷地の展開に関する調査成果 が報告されている。本地点では、弥生時代後期~古墳時代前期前葉の井戸・小区画溝群・帯状高まり、古代の土 坑、中世前半の井戸・溝、近世の土坑などが確認された。本調査地点の成果は、これら既往の調査成果の広がり についての理解を深めるものとなった。ここでは、遺構の多かった弥生時代後期~古墳時代前期前葉と中世前半 の成果を周辺の調査地点の成果と合わせて評価し、結語としたい。

【弥生時代後期~古墳時代前期前葉】

 弥生時代後期では、A地点で焼土溜まりと溝、B地点で畦畔の可能性がある帯状高まりが確認された。旧地形 は、A地点の北部が高く南東部およびB地点へ向けて低くなる様相を呈す。この遺構配置と旧地形からは、主に A地点は活動域、B地点は生業域であったことが指摘できる。それぞれの活動域の境界は、CJ・CKライン間で あると推測できよう。古墳時代前期前葉になると、A地点では井戸や小区画溝群、B地点では溝などが確認され た。井戸はA地点でも南部に構築され、南東端部に小区画溝群が展開していた。この時期の地形は概ね平坦であ る。すなわち、古墳時代になると前代の低位部は埋没してより南方へ移動したために、活動空間が拡大されたこ とがうかがえる。生業空間も、これに合わせてより南方へ移動したものと考えられる。この変化は、花粉分析の 結果からも得られている。弥生時代後期では、近辺にクロマツ海岸林の存在が指摘されるのに対し、古墳時代前 期前葉になるとアカガシ亜属やクリが存在していたとする。これは、沖積化などによる海岸線の南下を示してい ると考えられ、本調査地点の地形と遺構の変化とも整合的な結果であると考える。

 本調査地点の成果で注目されるものの1つに、小区画溝群がある。溝で囲まれた不整長方形の空間が連続的に 展開する状況は、畝と畝間の溝の関係性、すなわち畠の可能性を考えさせた。そこで、土層の軟X線写真観察、

花粉およびプラント・オパール分析を実施した。軟X線写真観察では、土層が乱されていたために残念ながら土 壌構造を観察することはできなかった。また、イネ由来やハトムギの可能性がある植物珪酸体などが検出された ものの、少量であることから畠の可能性は低いことが指摘された。こうした結果から、本遺構を畠と明確に認定 することはできなかったが、今後の資料の増加を待って、改めて評価する必要があろう。

 本調査地点の周辺では、北側にある第6・7次調査地点で微高地に展開する古墳時代初頭の竪穴住居が、東側 の第9・11・20A・25次調査地点で、弥生時代後期~古墳時代にかけての水田域が確認されている。以上のよう な状況から、本調査地点は北側の集落の縁辺部に当たること、および東側に展開する水田域が本調査地点の南部 にまで広がっていたことが明らかとなった。

【中世前半】

 本時期では、2段階の遺構の変遷を考えることができる。第1段階は13世紀前葉で、東西方向に走る溝17と南 北方向に走る溝18による区画が特徴的である。第2段階は13世紀前半で、前代の溝17・18と重複する形で大型の 溝22a・bによって区画され、これが14世紀まで継続する。溝22a・bは、本調査地点の北側にある第7次調査 地点の溝20~23に接続すると考えられ、屋敷地の区画をなす。区画の規模は、東西に走る第7次調査地点の溝20

~23と本調査地点の溝22b間の距離が南北約57mで、約1/2町であることが明らかとなった。ただし、本調査 地点以南では屋敷地の展開はなかったものと思われる。それは、本調査地点の南側における試掘・確認調査によ って中世以降の耕作地の広がりが確認されていることによる。溝22aがどこまで南に伸びていたのかは定かでは ないが、中世前半においても、本調査地点は鹿田集落の南西端部であったと考えられる。 (山口)

参照

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