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バ ル ト リ ハ り の 時 間 論

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 文 学 ) 小 串 正 直

学 位 論 文 題 名

バ ル ト リ ハ り の 時 間 論

一絶対者の「二つのカ」

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

論文の構成(目次)

はじめに 目次 序論

1 バルトリハりの著作 1.1 Mahabhasyadzpika 1.2 VakyapadT̲ya   1.2.1 構成と内容

  1.2.2 主 要 な テ キ ス ト ・ 翻 訳 一 覧 2 バルトリハりの思想的特徴

2.1 バルトリハりの人物

2.2 ノくノレト|リノヽりの年代

213 注 釈 者 へ ー ラ ー ラ ー ジ ャ に つ い て 2.4 文法学の歴史におけるバルトリハりの位置 2.5 思想的特徴

3 VP.3.9. (Kalasamuddea) に対する先行研究 3.1 Peri に よ る VP.3.9. の 内 容 構 成 3.2 本論文の着眼

本論

4 Vakyapadiya の時間論 4.1 「絶対者」の時間論 4.2 VP. の時間論

  4.2 .1kalaakti

  4.2.2 pratibandha と abhyanujna 413 まとめ

5 バルトリハりと仏教の時間論 5.1 仏教語の使用

5.2 VP.3.9.49 −61 における議論   5.2 .lVP.3.9 .49 ―56

  5.2.2 VP.3.9.57 .58

10 ‑

(2)

  5,2.3 VP.3.9.59―61 5.3ま と め

6『 マ ハ ー バ ー ラ タ 』 に 見 ら れ る 妨 害 と 許 可 6.1バ ル ト リ ハ り の 時 間 論 の 特 徴

6.2バ ル ト リ ハ リ 時 間 論 と の 類 似 性

6.3『 マ ハ ー バ ー ラ タ 』 に お け る 類 似 箇 所 614ま と め

7天 体 と 時 間

7.1天 体 の 動 き に よ っ て 区 分 さ れ る 時 間 7.2『 マ ハ ー バ ーラ タ 』 にお け る 時間 論 と の 類似 性 713ま と め

8ヴ ァ イ シ ェ ー シ カ 学 派 の 時 間 論 と の 類 似 性 8.1 VP.に お け る 時 間 論 の 特 徴

8.2ヴ ァ イ シ ェ ー シ カ の 時 間 論 と の 関 連 8.3ま と め

9シ ャ ン カ ラ 不 二 一元 論 と の関 連‑ avidyaと akti‑

9.1世 界 展 開 に お け るsaktiの 役 割

9.2 Vakyapadryaに お け る avidyaの 用 例 913シ ャ ン カ ラ に お け るavidya説

914ま と め 結 論

VP.3.9. (Kalasamudde a)番 お 訳 は し が き

VP.3.9.内 容 目 次 翻 訳

略 号 表 参 考 文 献 索 引

本論文の観点と方法

  言語哲学者バルトリハリ(5世紀後半)の著した『ヴァーキヤパディーヤ』( Vakyapad T‑ya, 以 下VP.)に 韜け る 時 間論 の 研 究。 第3章 第9飾「 時間に関 する考 察」とへ ーラー ラージャ 注 の 翻 訳 を併 載 。 これ ま で のバ ル ト リハ り の 時 間論 に 関 する 研 究 はVP.3.9.にお ける議論 の 紹 介 や 問題 点 の 指摘 に と どま る も ので あ っ た り、 あ る いはVP.3.9.の ご く一部 の研究で あ っ た。本論 文では 、VP.3.9.全 体の議 論をへー ラーラ ージャ(9‑10世紀 )の注釈 を含めて詳細 に 分析し、 それを ふまえて バルト リハりの 「絶対者 」の時 間論を様 々な側 面から検討する。

ま た 、 バル ト リ ハり の 「 絶対 者 」 の時 間 論 を通じ て、彼以 前のイ ンドにお ける万 物の生成 と 破 壊 を司 る 時 間と い う 思想 が ど のよ う に 発展し ていった かとい うインド 思想史 の変遷を 解明することに寄与する。

本論文の内容 はじめに序論

  1.バルトリハりの著作:      Mahabhasyad T̲pikaとVP.にっいて、特にVP.の構成と内容、主要

(3)

  な テ キス ト・ 翻訳 一覧 を 挙げ る。

2. バ ル ト リ ハ り の 思 想 的 特 徴 : 人 物 と 年 代 、 注 釈 者 ヘ ー ラ ー フ ー ジ ャ に つ い て 紹 介 し 、   文 法 学 の 歴 史 に お け る バ ル ト リ ハ り の 位 置 と 思 想 的 特 徴 と し て 、 「 語 ブ ラ フ マ ン 」     と 「ス ポー タ」 を挙 げ る。

3. VP.3.9. (Kalasamudde a)に 対 する 先行 研究 :VP.3.9.を英訳したPeriの内容構 成を挙げ、

  Periの 要 約 の 問 題 点 を 指 摘 し 、 本 論 文 の 着 眼 点 を 上 述 「 本 論 文 の 観 点 と 方 法 」 の 通   り 提 示す る。

本論

  4. Vakyapad−ly4の時 間論 :本 論 のテーマである「時 間」について、バルトリハ りのk五la§akti     説 、 す な わ ち 、 ブ ラ フ マ ン は 時 間 (k甜a) と 呼ば れる カ( §akti)を 有し 、時 間 のカ の働 き     は 、pratibandha( 妨害 ) とabhyanuj五 貳許 可 )か らな り、VP.に 頻出 する 両概 念 は時 間を 前     提としていることを明らかに する。

  5. バ ル ト リ ハり と仏 教の 時 間論 :仏 教語 の使 用 が指 摘さ れるVP.3.9●49−61に っ いて 、注 釈     で 引 用 さ れ い る サ ー ン キ ヤ ・ ヨ ー ガ 学 派 の 説 と 『 倶 舎 論 』 等 で 説 か れ る 有 部 の 時 間     論 に は 多 く の 共 通 点 が あ り 、VP.3.9.57で 説 か れ る 時 間 論 と 経 量 部 の 時 間 論 に は 同 じ     く観念的な側面があることを 検証する。

  6. 『 マ ハ ー バ ー ラ タ 』 に 見 ら れ る 時 間 のVP. と の 類 似 性 : 『 マ ハ ー バ ー ラ タ 』 に お け る     時 間 は 唯 一 絶 対 的 な ブ ラ フ マ ン と 同 一 視 さ れ て お り 、 存 在 物 の 生 成 と 消 滅 の 原 因 と     し て 位 置 づ け ら れ て い る 。 そ の 点 に お い て はVP, に お け る 時 間 と 同 じ も の で あ る と     言えるが、時間のカ(k訂a§akti)、「許可」(abhyanuj五a,anu厂j轟五,prayojika)、「妨害」

    (pratibandha,pratibaddha,niyama)と い った 用例 は『 マ ハー バー ラタ 』に 見 られ ない た     め 、 確 実 に バ ル ト リ ハ り の 時 間 論 の 起 源 が 『 マ ハ ー バ ー ラ タ 』 に あ る と 言 え る 証 拠     は な ぃ 。 た だ し 、 こ の 両 方 で 説 か れ る 時 間 の 概 念 が 類 似 す る こ と を 多 く の 用 例 に よ     って検証する。

  7. 天 体 と 時 間 : 唯 一 不 可 分 の 時 間 が 、 天 体 等 の 動 き に よ っ て 仮 に 区 分 を 得 て 、 世 間 で 呼     び 習 わ さ れ る 様 々 な 名 称 を 獲 得 す る と い う バ ル ト リ ハ り の 時 間 論 は 、 『 マ ハ ー バ ー     ラ タ 』 に も 見 ら れ る 。 バ ル ト リ ハ り は 叙 事 詩 で 説 か れ る よ う な 世 間 的 な 思 想 を 取 り     入れつつ、独自の思想を展開 していることを検証する。

  8. ヴ ァ イ シ ェ ー シ カ 学 派 の 時 間 論 と の 類 似 性 : 時 間 の 許 可 の 働 き に よ っ て 存 在 物 は 生 じ 、     妨 害 の 働 き に よ っ て 存 在 物 は 消 滅 す る 。 同 じ 妨 害 の 働 き に よ っ て 存 在 物 は 存 続 し 、     妨 害 と 許 可 に よ っ て 生 成 ・ 消 滅 を 繰 り 返 す こ と で 時 間 的 な 順 序 が 生 じ る 。 ヴ ァ イ シ     エ ー シ カ 、 あ る い は ニ ヤ ー ヤ の 時 間 論 に 、 バ ル ト リ ハ り の 「 妨 害 」 と 「 許 可 」 の 時     間論との明確な共通点が発見 される可能性を指摘する。

  9. シ ャ ン カ ラ 不 二 一 元 論 と の 関 連 ―avidy五 と §akti― : シ ャ ン カ ラ に お い て 「 付 託 」 す     る も の は 「 無 明 」 で あ っ た が 、VP. 本 文 に お い て は 専 ら 「 力 」 で あ る と い う よ う に 、     シ ャ ン カ ラ で は 「 無 明 」 に つ い て 語 ら れ る も の が 、 ノ く ル ト リ ハ り で は 「 力 」 に つ い     て 語 ら れ て い る 。 こ の よ う に バ ル ト リ ハ り に お け る 「 力 」 と 「 無 知 」 の 理 論 に は 意     味 合 い の 違 い が あ る が 、 明 確 な 区 別 が さ れ て い な か っ た た め 、 後 の シ ャ ン カ ラ 等 の     理 論 で は 「 無 知 」 の ー っ に ま と め て 説 か れ る よ う に な っ た こ と を 明 ら か に す る 。

結 論

  『 ヴ ェ ー ダ 』 以 来 の 、 存 在 物 の 生 成 と 破 壊 を 司 る 「 絶 対 者 」 と し て の 時 間 と い う 思 想 は :

12

(4)

『マハーバーラタ』等の叙事詩に受け継がれ、それがバルトリハりにおいて文法学の伝統 や仏教の理論を取り入れて彼独自の時間論となり、バルトリハリ以降はシャンカラの理論 に影 響 を 与 え 、 ヴ ェ ー ダ ー ン タ 学 派 の 思 想 に 継 承 され てい った ことを 結論 する 。

翻訳:以上、前半の研究編に対して、後半は、翻訳編として、VP.3.9 「時間に関する考察」

をへーラーフージャの注釈とともに全訳する。これまで唯一の英訳であったPeri の翻訳を

大幅に改良するとともに、索引として主要なサンスクリット語とその訳語を示し、難解な

バル トリ ハり の用語を現代語として理解されることに注意深い配慮がなされている。

(5)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

バルトリハ1J の時間論

― 絶 対 者 の 「 二 つ の カ 」

本論文の研 究成果は学界に様々な新知見を呈するものであり、以下 に要約される。

1.バ ルト リハ りと 仏教 の時 間論 に関 して 、注 釈で 引 用さ れているサー ンキヤ・ヨーガ学 派 の 説 と 、 『 倶 舎 論 』 等 で 説 か れ る 有 部 の 実 体 的 な 時 間論 には 多く の共 通点 が あり 、 VP.3.9.57で説 かれ る時 間論 と経 量部 の時 間論 には 同 じく 観念的な側面 があるということ を明 らか にし た。 とり わ け、 有部 の時間論と類似する雨衆外道のヴァー ルシャガニヤの引 用が へー ラー ラー ジャ の 注に 見ら れることからも、有部の時間論に近い ものであると言え るこ とを 指摘 した 。

2. 「 絶 対 者 」 の 時 間 論 と い う 点 で 、 『 マ ハ ー バ ー ラ タ 』 に お け る バ ル ト リ ハ り の 時 間 論 と の 共 通 点 を 新 た に 見 出 し た 。 す な わ ち 、 唯 一 不 可 分 の 時 間 の 分 割 (Mbh.4.47.1−2, 12.217.52ー53)。 存 在 物 の 生 じ る も と で あ る 種 子 に 喩 え ら れ る 時 間 (16.9.33)。 存 在物 を生 成 ・生 滅さ せる 時 間(1.1.187,1.1.189,6.4.2−3,6.9.20,12.230.19−20)。永遠不減の時間

(6.32−33)。 存 在 物 を 駆 り 立 て る ( 厂kal)時 間 (6.32.30)。 川 の 流 れ に 喩 え ら れ る 時 間 (3.36.1) 。糸 に喩 えら れる 時 間(3.154.35)。成 熟 させ る時 間(1.1.188,3.154.34,5.126.31, 5.130.3,5.154.26,8.27.24,12.220.40,12.220.84,12.220.102,12.231.25,12.309.90,17.1.3)。

3.天体に区分 される時間は、『マハーバーラタ』第12章Santi―parvanのMoksadharma‑parvan に含まれる第216−220章(BaliとVasavaの話)、および224―248章(SukaとVyasaの問答)、ま た、『マハーバーラタ』第13章Anusasana−parvanのDanadharma‑parvan(1ー166)において集 中的 に説 かれ てい るこ とを 見 出し 、唯 一不可分の時間が様々な名称で呼ばれ て分割される こと(217.52−53)、時間が不減(asasvata)であること(220.92)、また時間が昼夜、一月等に 区分 され るこ と(220.97)、 語 ブラ フマ ン論(224.60)、時間は多様であると同 時に無始無終 で あ る こ と (224.71) 等 、 VP.と の 類 似 性 を 数 多 く の 用 例 で 検 証 し た 。

14

明 公

典 教

田 井

細 藤

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

4 .シヤンカラの説く「無知(avidya) 」には世界展開の原動カと個人の迷いの原因というニ つの意味があるが、バルトリハりの説く「無知(avidya) 」は専ら世界展開の原動カとして のもののみであることを論じ、両者の対比を通じて、シャンカラ以降のヴェーダーンタ思 想 に バ ル ト リ ハ り の 思 想 が 取 り 込 ま れ て い っ た 過 程 を 明 ら か に し た 。 5 .翻訳として第3 章第9 節「時間に関する考察」をへーラーラージャの注釈とともに全訳。

本邦初の翻訳であり、従来の英訳では不明瞭であった内容が大幅に改良され、今後のバル ト リ ハ リ 研 究 の み な ら ず 、 イ ン ド 思 想 史 研 究 に 大 き な 貢 献 を 果 た し た 。    問題点として、このような「絶対者」としての時間という思想の変遷を明らかにするた めには、さらに後期ウパニシヤッドに説かれている、時間を万物の根本原理とする「時論 師」の思想や、シャンカラ以降のヴェーダーンタ学派の時間論などを検討していくことが 求められる。

   またバルトリハりの時間論解明のためには、彼がとりわけ大きな影響を受けている仏教 の時間論、具体的にはVP.3.9.85 −88 と関連がある中観派の時間論や、59 に見られた経量部 と関連する唯識や瑜伽行派の時間論をふまえた上で、 VP. を読み解いていく必要がある。

   以上の通り、本論にはいくっかの問題点は指摘されるが、各論においては、いずれも新 知見を提示し、時間論を中心としたバルトリハリ研究に寄与するものとして評価される。

   本委員会は、以上の審査結果に基づき、全員一致して、本申請論文が博士(文学)の学位

を授与するにふさわしいものであると判定した。

参照

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