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学位論文題名NN/IR Study of Intramolecular Dimer Antifreeze Protein RD3

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Academic year: 2021

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序 論

博 士 ( 理 学 ) 二 浦 和 紀

     学位論文題名

NN/IR Study of Intramolecular Dimer     Antifreeze Protein RD3

(分子内二量体不凍夕ンパク質RD3 のNMR 法による構造解析)

学位論文内容の要旨

    不 凍 夕 ン バ ク 質 (Antifreeze Protein、AFP) は、 南極 など の寒 冷水 域に 生息 する 魚類の血漿中に存在するタンバク質である。このタンパク質は、0℃以下の温度で血漿中に 生成する氷結晶と結びっき、その結晶成長を妨げ、血漿の凝固点を下げる機能(不凍機能)

を 持っ てい る。 氷の結 晶成 長は 、1気圧 下で 通常生 成す る氷結晶(六方晶系)の主にプリ ズ ム面 に垂 直な 方向に 向か って すす むこ とが 知ら れて いる。提唱されているAFPの不凍機 能 モデ ルに よれ ば、AFPは 氷結 晶の プリ ズム 面に結 合し 、この面の結晶成長を阻害すると さ れて いる 。そ の結果 、氷 結晶 は六 角す いを2っあ わせ たようなバイピラミッド型の結晶 を 形成 する 。こ の結晶 成長 阻害と、凝固点を著しく降下させる活性との関係は次のように 説 明さ れる 。AFPの結 合し てい る隙 間の 結晶 表面は 凸状 になって安定する。この凸状表面 の 化学 ポテ ンシ ャルは 、そ の曲率に比例する(ケルビン効果)。この凸状表面にさらに水 分 子が 結合 する ための ェネ ルギーコストは、通常の氷の成長する場合に比べ大きいため、

凝 固 点 が 降 下 す る の であ る 。 魚 類 のAFPは こ れ ま でに 、TypeIか らTypeIVの4つ の タ イ プ が発 見さ れて いる。 我々 は、その中でも低濃度で凝固点を効果的に下げる能カを有して いるRD3と名付けられているAFPに注目した。

    近 年 新 規 のAFPで あ るRD3が 単 離 さ れ た 。RD3は 、 南 極 ゲ ン ゲ ( りcodichth ys dearbo rnめ の 血 液 か ら 単 離 さ れ たType IIIに 属 するAFPで あ る 。RD3は 、64残 基 と61 残 基か らな る2つ のド メイ ンか ら構 成さ れ、 各々は 既知 のType III AFPと高い相同性を有 し てい る。2つの ドメ イン は9残 基か らな る連 結部 位に より 結ば れて いる 。この よう な分 子 内 二 量 体 を 形 成 し て い るAFPは、RD3が 唯一 の例 であ る。 本研 究に おい ては多 次元NMR 法により、RD3の水溶液中での立体構造解析を行った。また、その運動性を調べるために、

is N‑NMR緩 和時 間解析 を行 った 。さ らに 、RD3の特 徴的 な活性発現様式と、得られた立体 構造解析の関係を議論する。

実 験 方 法 及 び 結 果

    大 腸 菌 大 量 発 現 系 お よ び 各 種 ク 口 マ ト グ ラ フ イ ー を 用 い て、 高 純 度 のRD3を 約 100 mg得 た 。 多 次 元NMR実 験に 必要 な安 定同 位体15N及 び13 C/15Nラ ベル 化試料 をそ れ ぞ れ 約15 mg得 た 。 こ れら の試 料を 用い て、 凝固点 測定 、顕 徴鏡 観察 、及 び各 種NMR実 験を 行っ た。

    凝固 点 測 定 は 、 不 凍活 性の 測定 で標 準的 に使 われ てい る浸 透圧 計を 用いる 方法 で 行っ た。 比較の ため にRD3のNドメ イン と連 結部 位を 含むRD3ーNI、 およ びり ゾチームも

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測 定し た。 リゾ チーム の凝 固点はモル凝固点降下に従って濃度に対し直線的に変化するの に 対し 、RD3およ びRD 3‑NIの場 合、 低濃 度域 で大 きく 増大 し、 高濃 度域 で飽和 に達 する と いう 結果 を示 した。 この 性質 は他 のAFPで も共通 して 観測されるもので、確かに我々の 用 意し たサ ンプ ルが不 凍活 性を 有し てい るこ とが 確か めら れた 。ま た、RD3とRD 3‑NIを 比 較し た場 合、 高濃度 域で の飽和した凝固点はほとんど変わらないのに対し、低濃度域で の 活性 増加 の度 合いがRD3のほうが大きく、同一濃度では最大6倍以上の活性を発現した。

    顕 微 鏡 観 察 は 凝 固 点 測 定 に 用 い た も の と 同 じ 試料 を 用 い て 行 っ た 。RD3の 場合 、 0.4 mM以下 の濃 度では 、顕 微鏡で観察できる大きさのバイピラミッド型の結晶は観察され な かっ た。 これ らの濃 度で 観察 でき た結 晶は 針状 結晶 で、これはAFP溶液をその凝固点以 下まで温度を下げたときに、全体が凍るときに観察される形状である。これに対し、0.5 mM 以 上の 濃度 では 、パイ ピラ ミッド型の結晶が観測された。ここで観察された形状は、単量 体のAFPが高濃度で存在するときにみられる形状であった。

    NMR実 験 は 、 非 ラ ベ ル 化 お よ び 安 定 同 位 体 ラ ベ ル 化 試 料 を 用 い てNMR試 料 溶 液 を 調製 し、 構造 解析に 必要 な各 種多 次元 実験 を行 った 。NMR実験は、氷に作用する温度域 に 近 い4℃ で 行 っ た 。NMR分 光 計 と し てJEOL JN M‑A5 00、 お よ びVARIAN UNITY‑500 を 使 用 し 、 プ ロ ト ン の 共 鳴 周 波 数500 MHzで 行 っ た 。NMRデー タの 処理 とス ペク トル の 帰 属は 、ワ ーク ステー ショ ン上 で、NM RPipeおよ びPIPPプ ログ ラム を用 いて行 った 。立 体 構 造 計 算 に 用 い る 構 造 情 報 に は 、NOE1507個 、 水 素 結 合40個、2面体 角¢80個 を用 い た 。 こ れ ら の 情 報 を 満 足 す る 立 体 構 造 を 、X‑ PLOR  3.851プ 口 グ ラ ム のDistan ce geomet ry/simulated an nealingプ口トコルを用いて計算した。合計40個の収束した構造を 得 た。Nドメ イン 、Cド メイ ン、 連結 部位 の主 鎖のRM SDは、 それ ぞれ0.65、0.61、 およ び1.07Aで あ っ た 。 得 られ たRD3の ニ つ の ド ヌ イ ン の立 体 構 造 は 、 そ れ ぞ れX線 およ び NMR法 で 決 定 さ れ た 他 のAFP Type IIIと 非 常 に よ く 似 た 構 造 で あ っ た 。RD3の2つの ド メ イン を結 ぶ連 結部位 は大 きく 湾曲 した 構造 を持 って いることが示された。2つのドヌイ ン の空 間的 な位 置の関 係は 、通 常の 二量 体夕 ンパ ク質 でよく見られる、2回軸を持った位 置ではなく、並進の位置に配置していることが明らかになった。

    連 結 部 位 の 運 動 性 を 調 べ る た め に 、 安 定 同 位 体15Nで ラ ベ ル さ れ て い る ア ミド 基 のNMR緩 和時 間 を 測 定 し 、 残 基ご との 運動 性の 解析を 行っ た。 緩和 時間 の解 析に は、 モ デルフリー解析によりOrder parameter (S2)および運動の相関時間を算出した。連結部位の 運動性がNドメインより高いことが示された。

考 察

    RD3の ニ つ の ド メ イ ン の 相 対 位 置 は 、 並 進 の 関 係 に あ る こ とが 示 さ れ た 。こ のこ と は、 氷と 結合す る活 性面 の相 補的 な厳 密性を変化させることなく、結合面の面積を2倍 に増加させることを可能にしている。このドメイン間の位置関係のため、単量体のType III AFPの場 合バ イピ ラミ ッド 結晶 を形 成す るのに 必須 であ るAsn14が、 両ドメイン問に挟ま れ る位 置に 存在し てお り、 機能 して いな いと 考え られ る。RD3の 場合 、Cドヌインの相同 の位置にあるAsn84がその役割を担っていると考えられる。

    RD3の 活 性 発 現 の 濃 度 依 存 性 が 、 単 量 体 の 場 合 と 異 な っ て い る こと は 、AFPの 結 晶 成 長 阻 害 お よび ケル ビン 効果 で説 明す るこ とが でき る。RD3が0.4 mM以 下の 場合 、同 濃 度 の 単 量 体AFPに比 べ、 吸着す る表 面積 が約2倍 であ る。そ のた め、AFP分子 間の 隙間 が 狭く 、そ こに形 成さ れる 凸状 表面 の曲 率が大きくなる。このためRD3は同濃度の単量体 AFPに 比ベ6倍 程 度 ま で 高 い 活 性 を 発現 す る と 考え られ る。 これ に対 し、0.5 mM以 上の 濃 度 で は 、RD3の 活性 はほ とんど 飽和 に達 して いる 。RD3の活 性面 の表 面積 が約2倍 であ る こと から 、AFPが吸 着可 能な 残存 氷結 晶面が 、単 量体 のAFPに 比べ 低い濃度のうちに飽 和に達してしまうからであると考えられる。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教  授 教  授 助教授 助教授 主任研究官

新田 田中 佐々木 出村 津田

勝利      直樹     

    栄 (通産省北海道工業技術研究所)

     学 位 論 文 題 名

    NMR Study of Intramolecular Dimer     Antifreeze Protein RD3

( 分 子 内二量 体不 凍夕 ンパ ク質RD3 のNMR 法 による 構造 解析 )

本研究は南極などの寒冷水域に生息する魚類の血漿中に存在するタンパク質である 不凍夕ンパク質(Antifreeze Protein 、AFP )の溶液中での立体構造を核磁気共鳴 法を用いて解明することを第1 の目的とした。このタンパク質は、O ℃以下の温度 で血漿中に生成する氷結晶と結びっき、その結晶成長を妨げ、血漿の凝固点を下げ る機能(不凍機能)を持っている。

   本研究の対象であるRD3 は、南極ゲンゲ(Lycodichthys dearborni) の血液から 単 離さ れたType III に 属する AFP で ある。 RD3 は、 64 残 基と 61 残基からなる 2 つのドメインから構成され、各々は既知のType III AFP と高い相同性を有レてい る。2 つのドメインは9 残基からなる連結部位により結ばれている。このような分 子内二量体を形成しているAFP は、RD3 が唯一の例である。本研究においては多 次元NMR 法により、RD3 の水溶液中での立体構造解析を行った。また、その運動 性を調べるために、15N‑NMR 緩和時間解析を行った。さらに、RD3 の特徴的な活 性発現様式と、得られた立体構造解析の関係を議論した。

   同位元素置換と多次元NMR 法を駆使して合計40 個の収束した構造を得て立体

構 造を 決定し た。 N ド メイ ン、C ドメイン、連結部位の主鎖のRMSD は、それぞ

れ0.65 、 0.61 、および1.07A であった。得られたRD3 のニつのドメインの立体構

造 は、 それぞ れX 線お よび NMR 法で決定された他のAFP Type III と非常によく

似た構造であった。RD3 の 2 つのドメインを結ぷ連結部位は大きく湾曲した構造を

持っていることが示された。2 つのドメインの空間的な位置の関係は、通常の二量

体夕ンパク質でよく見られる、2 回軸を持った位置ではなく、並進の位置に配置レ

ていることが明らかになった。

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  RD3 のニつのドメインの相対位置は、並進の関係にあることが示された。このこ とは、氷と結合する活性面の相補的な厳密性を変化させることなく、結合面の面積 を2 倍に増加させることを可能にレている。このドメイン間の位置関係のため、単 量体のType ni AFP の場合バイピラミッド結晶を形成するのに必須であるAsn14 が、両ドメイン間に挾まれる位置に存在しており、機能していないと考えられる。

RD3 の場合、C ドメインの相同の位置にある Asn84 がその役割を担っていると考 えられる。

   申請者は得られた結果を用いて凝固点降下のメカニズムを論議している。この2

量体凝固点降下夕ンパク質の立体構造の解明によってメカニズム解明の進展が図ら

れた。学位論文の公開発表の質疑応答では、申請者は自ら行った実験の結果や過去

の 論 文の 内 容 を 引 用 し 、 豊 富 な 知 識に 基 づ い て 質 問 に 明 快 に 回答 し た 。

審査員一同はこれらの成果を高く評価レ、申請者が北海道大学博士(理学)の学位

を授与される資格が充分にあるものと認定した。

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