博 士 ( 獣 医 学 ) 佐 藤 雪 太 学 位 論 文 題 名
一 ●
Studies on prevalence , transmiss10nandrapid deteCtionofLymediSeaSeSpirOCheteSintheFarEaSt
(極東地域におけるライム病ボレリアの分布,伝播および迅速検出法に関する研究)
学位論文内容の要旨
ライム病はボレリア属スピ口へー 夕Borrelia burgdorferi,B.garinii およびB.afzeliiによ る マ ダ ニ 媒 介 性 の 人 畜 共 通 感 染 症 で あ る 。 本 症 は1982年 に ア メ リ カ 合 衆 国 コ ネ チ カ ッ ト 州 ラ イ ム 地 方 で 病 原 体 が 確 認 さ れ た 新 興 感 染 症(Emerging infectious disease)で、 現在 まで に 北 半 球 の ほ と ん ど の 地 域 で 病 原 体 、 媒 介 マ ダ ニ 、 保 菌 動 物 、 さ ら に 年 間 数 万 人 に 及 ぶ 感 染 者 が 確 認 さ れ て い る 。 日 本 で は1987年 に 長 野 で 第1例 が 認 め ら れ 、 こ れ ま で に 北 海 道 お よび長野を中心に100例を越す患者が確認されている。
本 研 究 で は 、 日 本 を 含 む 極 東 地 域 に お け る ラ イ ム 病 ボ レ リ ア の 分 布 、 媒 介 マ ダ ニ に お け る病原体の伝播様式、および病原体 の迅速検出法について検討した。
エ . 極 東 地 域 に お け る ラ イ ム 病 ボ レ リ ア の分 布
1. 極 東ロ シア にお ける ライ ム病 ボレ リア の調 査
1995年5月 に ハ バ ロ フ ス ク 、 ウ ラ ジ オ ス ト ッ ク お よ び ュ ジ ノ サ ハ リ ン ス ク で マ ダ ニ お よ び 野 生 齧 歯 類 を 調 査 し た 。 採 取 し た シ ュ ル ツ ェ マ ダ ニ(Ixodes persulcatus)の ボ レ リ ア 保 有 率 は 平 均 で26.6% で あ っ た 。 分 離 さ れ た 菌 のう ち 、62.2% がBorrelia garinii、11.6%が B. aheliiと 同定 され た。 また 、 保菌 動物 はノ ヽン トウ アカ ネズ ミ(Apodemus penjnSulae)お よび タイ リク ヤチ ネズ ミ( のe曲n〇ロ 〇mysru′〇canus)で 、感染率は平均で20,8%、 分離菌 種 は 46. 9% が B. gar血 jjお よ び 12. 5% が B. aた e´ nと 同 定 さ れ た 。 2. 韓国 にお ける ライ ム病 ボレ リ アの 調査
1997年5月 に 韓 国 ・ 忠 州 で マ ダ ニ を 調 査 し た 。 採 取 し た タ ネ ガ タ マ ダ ニ(Ixodes nipponensis)の ボ レ リ ア 保 有 率 は66.7% で あ っ た 。 分 離 さ れ た 菌 は81.3% がB.afzelii、 18.8%がB,gariniiと 同定された。韓国ではタネガタマダニからB.afzeliiおよびB.afzelii類 似 の ボ レ リ ア が 分 離 さ れ て い る が 、B. gariniiが 分 離 さ れ た の は 今 回 が 初 め て で あ る 。
H. 自 然 界 に お け る ボ レ リ ア の 伝 播
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1.マダニの 再吸血行 動とボレ リア伝播
マダニが吸 血途中で 宿主の死 亡などに より吸血が継続できな<なった場合を想定して以 下の 実 験を 行った。 シュルソ エマダニ 幼虫および 若虫のマ ウスでの 吸着期間 は3〜4日問 であ る 。そ こ で 幼虫 ま たは 若 虫 を曝 露 して1‑2日後 にマウス を殺すと 、幼・若 虫ともに 宿主が死亡 して3時間 後から離 脱が始ま り、翌日 にはすべ ての個体が 宿主から離脱してい た。これら 吸血途中 マダニを 新たなマ ウスに暴露すると再吸血行動が見られ、飽血個体を 飼育すると 正常吸血 個体と同 様に次発 育期へ脱皮した。また、ボレリア感染マウスを途中 吸血した幼 虫が未感 染マウス を再吸血 する際にボレリアをマウスヘ伝達することも確認さ れた。
2. 媒介マダ ニ間の伝 播
ボ レリア感 染若虫と 未感染幼虫を同時にマウスに吸 ま で発育さ せてボレ リア伝播 の有無を調べた。その結 群 ではボレ リアの伝 播が起こ ることを明らかにした。
背 皮に別々 に吸血さ せた群で は伝播は見られなかった シ ュルツェ マダニで はライム病ボレリアが経卵伝播 生 齧歯類を 吸血して 初めて病 原体を受け取るが、今回 菌 若虫から 未感染幼 虫ヘボレ リアが伝播する経路も存
m, ラ イム 病 ボレリ アの迅速 検出と同 定法の開 発
着さ せ、飽血 した幼虫を回収し若虫 果、 若虫と幼 虫を一緒に吸血させた 一方 、若虫と 幼虫をそれぞれ頭皮と
。
しな いため、 幼虫は感染している野 の結 果から、 宿主の皮膚を介して保 在 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。
ライム 病の診断 は、臨床 症状、マ ダニ刺咬既 往歴、血清診断、培養検査などの結果から 総合的 に判断し て行われ ているが 、国際的な 診断の基準化はまだ確立されていない。現時 点では 遊走性紅 斑部組織 の培養に よるボレリ ア分離がもっとも確実な診断法である。しか し本菌 の培養に は数週間 を要する 欠点があり 、分離された菌の同定も培養後に行われてい たため 、迅速な 検出およ び同定法 の開発が待 たれてい た。
そこで ボレリア 鞭毛遺伝 子を標的 としたPCR法で 感染を判 定し、増 幅産物の 制限酵素切 断 断片 長 多 型(RFLP)によ り 起 因菌 種 の特 定 も 行う こ とが で き る迅 速 な ライ ム 病診断 法 につい て検討し た。
皮 膚 組 織 で は1回 のPCR増 幅 でシ グ ナル が 検 出で き な いた め 、1回目 は 鞭 毛遺 伝 子約 1,OOObp中の800bpを、2回目 はさらに その内側 の580bpを増幅す るNested法を用 いた。は じめに ボレリア を感染さ せたマウ ス皮膚から 抽出したDNAを用いてNested PCRを行い、増 幅 産 物 のRFLPか ら 起 因 菌 を 決 定 した 。 また 、 培 養法 とPCR法 に よ る検 出 感 度の 比 較も 行った 。同様に 遊走性紅 斑の出現 でライム病 が疑われた患者の生検皮膚組織からの検出も
試 みた。
そ の結果、
ボ レリア種と た 。臨床例で 分 類された。
に 検出および 無 および感染
以上の結果から、日本と極東ロシアではBorrelia gariniiが主に分布し、シュ少ツェマダ ニが 主 要な べ ク ター で 、ア カ ネズミと ヤチネズ ミが保菌 動物である 点が類似 している こ と、韓国ではタネガタマダニがB. afzeliiを高率に保有していることが明らかになった。ま た脊椎動物・媒介マダニ間でのボレ1Jア伝播以外に、マダニの再吸血行動に伴う伝播やマダ ー276−
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学 位 論文 審 査 の 要旨 主 査 教 授 神 谷 正 男 副 査 教 授 喜 田 宏 副 査 教 授 高 島 郁 夫 副査 助教授 奥 祐三郎
学 位 論 文 題 名 ・ ●
Studies on prevalence , transmlSSlonandrapid deteCtionofLyn ユ ediSeaSeSpirOCheteSintheFarEaSt
(極東 地域におけるライム病ボレリアの分布,伝播および迅速検出法に関する研究)
申 請 者 は 極 東 地 域 に お け る ラ イ ム 病 ボ レ リ ア の 分 布 、 媒 介 マ ダ ニ に お け る 病 原 体 の 伝 播 様式 、お よび 病原 体の 迅速 検出 法に つい て検 討し た 。
1)1995年5月 に ハ バ ロ フ ス ク 、 ウ ラ ジ オ ス ト ッ ク お よ び ユ ジ ノ サ ハ リ ン ス ク で マ ダ ニ お よ び 野 生 齧 歯 類 を 調 査 し た 。 採 取 し た シ ュ ル ソ ェ マ ダ ニ の ボ レ リ ア 保 有 率 は 平均 で26.6
%、 分離 菌種 の62.2% がBorrelia garinii、11.6%がB.afzeliiであっ た。保菌動物はハント ウ ア カ ネ ズ ミ お よ び タ イ リ ク ヤ チ ネ ズ ミ で 、 感 染 率 は20.8% 、 分 離 菌 種 は46.9% がB. oaarinii、12.5% がB.aheliiで あっ た。
2)1997年5月 に 韓 国 で マ ダ ニ を 調 査 し た 。 採 取 し た タ ネ ガ タ マ ダ ニ の ボ レ リ ア 保 有 率 は66.7%、 分離 菌種 の81.3%がB,afzelii、18.8%がB.gariniiであっ た。また、夕ネガタマ ダニ からB.gariniiが 初め て分 離さ れた 。
3) ボ レ リ ア 感 染 マ ウ ス に 幼 虫 ま た は 若 虫 を 曝 露 後 、 飽 血 す る 前 に マ ウ ス を 殺 す と 自 然 離 脱 が 観 察 さ れ た 。 こ れ ら 吸 血 途 中 マ ダ ニ を 未 感 染 マ ウ ス に 曝 露 す る と 再 吸 血 行 動 が 見 ら れ、 その 際に マウ スヘ のボ レリ ア伝 播が 認め られ た 。
4) ボ レ リ ア 感 染 若 虫 と 未 感 染 幼 虫 を 同 時 に マ ウ ス に 吸 血 さ せ 、 幼 虫 へ の ボ レ リ ア 伝 播 の 有 無 を 調 ぺ た 結 果 、 宿 主 の 皮 膚 を 介 し た 保 菌 若 虫 か ら 未 感 染 幼 虫 へ の ボ レ リ ア 伝 播 が 認 めら れた 。
5) 鞭 毛 遺 伝 子 を 標 的 と し たPCR‑RFLPに よ る ボ レ リ ア の 検 出 お よ び 同 定 法 に つ い て 検 討 し た 。 実 験 感 染 マ ウ ス お よ び 臨 床 サ ン プ ル い ず れ を 用 い て も 標 的 配 列 の 増 幅 シ グ ナ ル が 得 ら れ 、RFLP解 析 か ら 感 染 源 の ボ レ リ ア 種 を 特 定 す る こ と が で き た 。 本 法 は 従 来 の 培 養 法と も検 出感 度に 差が なく 、2日 間で 結果 が得 られ た。
以 上 の よ う に 、 申 請 者 は 極 東 に お け る ラ イ ム 病 ボ レ リ ア の 分 布 お よ び 媒 介 マ ダ ニ 種 な ど
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