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博 士 ( 薬 科 学 )    古 川    見

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 科 学 )    古 川    見

学 位 論 文 題 名

ミトコンドリア標的型核酸デリバリーシステムの開発 学位論文内容の要旨

  

ミト コン ド リア

DNA (mtDNA)

は,ミトコンドリア の最深部・マトリックスに存在し,

エ ネル ギー 産 生に 必須 の13種類 のタ ンパ ク質 ,22種類 のtRNA,

2

種類 のrRNAを コー ド してい る.mtDNAの変異により引き 起こされる疾患は多彩で,ミトコンドリア病と呼ばれ る 特 徴 的 な 病 態 を 呈 す る . 疾 患ミ トコ ン ドリ アで は正 常mtDNAと変 異

mtDNA

が 混在 し て お り , 病 態 の 発 症 に は 閾 値 が存 在す る 。従 って ,正 常mtDNAの補 充 や異 常mtDNAの 排除を 戦略とする遺伝子治療・核酸医薬はミトコンドリア関連疾患治療に有用であり,そ の開発 が強く望まれている,治療用プラスミドやアンチセンス 核酸(ASO)をミトコンドリ アで機 能させるためには,キャリアの細胞内導入,エンドソーム脱出,ミトコンドリア標 的化の 各素過程を克服し,マトリックスヘ核酸を送達する必要がある.薬剤分子設計学研 究室で は,人工的なナノデバイスの構築を目指し,膜融合を介して内封物質を送達するミ トコン ドリア標的型リポソーム,MITO‑Porterの開発を行ってきた.本論ではMITO‑Porter を基盤 技術とした,ミトコンドリア標的型核酸デリバリーシステムの開発を最終目標とす る .第 一章に,エンドソーム脱出素子・ GALA修飾MITO‑Porterによる機能性核酸のミト コンド リアヘの送達および機能評価,第二章に,ミトコンドリ ア移行性RNA aptamerによ る

MITO‑Porter

の ミ ト コ ン ド リ ア標 的化 能促 進機 構の 解明 ,第 三章 に

mitochondrial transcription factorA(TFAM)

に よ る 外 来 遺 伝 子 の 転 写 活 性 化 に つ い て 述 べ る ,

1

. エン ドソ ーム 脱出 素子 ・ GALA修飾MITO‑Porterによる機能性核酸のミトコンドリア への送 達および機能評価

  

ミト コンドリア核酸医薬の開発において,キャリアの細胞内動態を最適化することは重 要 であ る.筆者はエンドソーム脱出の亢進を目的と して,pH応答性ペプチド.GALAに着 目 し た , 本 研 究 で は

GALA

修 飾

MITO‑Porter

に よる アン チセ ンス

RNA (ASO)

のミ トコ ン ドリア ヘの送達および,標的遺伝子の抑制効果について評価した.はじめに,螢光標識ASO を封入 したMITO‑Porterをトランス フェクションし,その細胞内動態を共焦点レーザー顕 微 鏡に より 評 価し た. 従来 型の

MITO‑Porter

を 用い て導 入されたASOは主にエンドソー ム に局 在し た .一 方,

GALA

修飾

MITO‑Porter

に より 導入 されたASOは細胞質に分布し,

そ の 一 部 は ミ ト コ ン ド リ ア に 局 在 し た , 次 に , ミ ト コ ン ド リ ア

mRNA

の コ ー ド す る

cytchromecoxidase subunitn(COX2)

に 対 す る

ASO

を 封 入 し た ,

GALA

修 飾

MITO‑Porter

をト ラン スフ ェク ションし,24時間後 におけるCOX2発現量を定量的逆転写

―1084ー

(2)

PCRに よ り 評 価 し た . そ の 結 果 ,ASO (COX2)ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン に よ り40% の 抑 制 効 果 が 認 め ら れ た . こ の 際 , 細 胞 当 た り のmtDNA量 に は 変 化 が 認 め ら れ な か っ た , さ ら に ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン48時 間 後 に お け るCOX2タ ン パ ク 質 を 免 疫 染 色 し た と こ ろ , 標 的 タ ン パ ク 質 の 抑 制 効 果 が 観 察 さ れ た . 最 後 に ,48時 間 後 に お け る ミ ト コ ン ド リ ア 膜 電 位 を 測 定 し た と こ ろ , 膜 電 位 の 低 下 が 認 め ら れ た . こ れ ら の 結 果 は , ASO封 入GALA修 飾 MITO‑Porterが , 標 的 遺 伝 子 の 抑 制 に よ ル ミ ト コ ン ド リ ア 膜 電 位 の 低 下 を 誘 導 す る こ と を 示 唆 し て い る ,

2. ミ ト コ ン ド リ ア 移 行 性RNAア プ タ マ ー に よ るMITO‑Porterの ミ ト コ ン ド リ ア 標 的 化 促 進 機 構 の 解 明

  筆 者 はMITO‑Porterの ア ン チ セ ン ス 効 果 の 増 強 を 目 的 と し て , ミ ト コ ン ド リ ア 移 行 性 RNAア プ タ マ ー に 着 目 し た . 本 ア プ タ マ ー は 核 酸 に 直 接 修 飾 す る こ と で , ミ ト コ ン ド リ ア ヘ の 移 行 性 を 有 す る こ と が 報 告 さ れ て い る , 本 研 究 で は ,RNAア プ タ マ ー をMITO‑Porter 表 面 に 修 飾 し , そ の ミ ト コ ン ド リ ア 移 行 性 の メ カ ニ ズ ム に つ い て 評 価 し た .3種 類 のRNA ア プ タ マ ー 修 飾MITO‑Porterを ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン し ,3時 間 後 の 細 胞 内 導 入 量 を フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー に よ り 評 価 し た と こ ろ ,RP修 飾MITO‑Porterは 従 来 型MITO‑Porterと 比 較 し て2倍 高 い こ と が 示 唆 さ れ た . 次 に ミ ト コ ン ド リ ア 移 行 性 を 共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 に よ り 観 察 し ,Image Pro Plus (Ropper Industries)を 用 い て 画 像 解 析 を 行 っ た と こ ろ , す べ て の ア プ タ マ ー 修 飾MITO‑Porterに お い て 従 来 型MITO‑Porterと 比 較 し て 有 意 に 高 い 移 行 性 を 示 し た . ま たRP修 飾MITO‑PorterはATPase阻 害 剤 に よ ル ミ ト コ ン ド リ ア 移 行 性 が 阻 害 さ れ た こ と か ら ,ATP依 存 性 の ミ ト コ ン ド リ ア 移 行 を 示 す 可 能 性 が 示 唆 さ れ た , 最 後 に ASOを 封 入 し たRP修 飾MITO‑Porterに よ り , 標 的 遺 伝 子 の 抑 制 に 成 功 し た . 3. mitochondrial transcription factorA(TFAM)に よ る 外 来 遺 伝 子 の 転 写 活 性 化   ミ ト コ ン ド リ ア 遺 伝 子 治 療 の 実 現 に は , マ ト リ ッ ク ス ヘ の 外 来 遺 伝 子 の 導 入 , お よ び 導 入 さ れ た 外 来 遺 伝 子 か ら の 転 写 ・ 翻 訳 が 鍵 と な る . 筆 者 は 導 入 後 の 外 来 遺 伝 子 の 過 程 に お い て ,mtDNAの パ ッ ケ ー ジ ン グ 様 式 を 模 倣 す る こ と が 有 用 で あ る と 考 え た . 本 研 究 で は 外 来 遺 伝 子 の ミ ト コ ン ド リ ア 内 で の 転 写 活 性 化 を 目 的 と し ,mtDNA結 合 タ ン パ ク 質 ・TFAM に 着 目 し ,TFAIVUDNA複 合 体 が 転 写 に 与 え る 影 響 に つ い て 評 価 し た . は じ め に , TFAM/DNA複 合 体 を 形 成 さ せ ,T7 RNAポ リ メ ラ ー ゼ を 用 い たin vitro転 写 反 応 を 行 つ た . そ の 結 果 , 至 適 な モ ル 比 で1.8倍 の 転 写 効 率 の 上 昇 が 認 め ら れ た . ま た , 過 剰 量 のTFAM に よ るDNA複 合 体 は 転 写 を 阻 害 し た . 次 に ,TFAMの パ ッ ケ ー ジ ン グ 構 造 が 転 写 に 与 え る 影 響 を 調 べ る た め に , 塩 基 数 の 異 な る 環 状DNAと 直 鎖DNAを 用 い て 複 合 体 形 成 さ せ , 転 写 に 与 え る 影 響 に つ い て 調 べ た . そ の 結 果 , 転 写 活 性 化 に 必 要 と す るTFAM量 は 両 者 の DNAで 異 な っ た .TFAM1分 子 がDNAに 結 合 す る 塩 基 数 の 間 隔 と 転 写 効 率 と の 関 係 を プ ロ ッ ト し た と こ ろ , 直 鎖DNA, 環 状DNA共 に 同 様 の 挙 動 を 示 し , 転 写 活 性 化 に 必 要 な 塩 基 数 の 間 隔 は 約17 bpで あ る こ と が 示 唆 さ れ た . 本 研 究 で は ,TFAMは 外 来 遺 伝 子 の 転 写 活 性 化 に 有 用 な パ ッ ケ ー ジ ン グ タ ン パ ク 質 で あ る こ と を 明 ら か と し た .

−1085−

(3)

学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教 授    原 教 授    菅 准教授    秋 准教授    武

島秀 吉 原    満 田英 万 隈    洋

学 位 論 文 題 名

ミトコンドリア標的型核酸デリバリーシステムの開発

博 士 学 位 論 文 審 査 等 の 結 果 に つ い て (報 告)

  

遺 伝 子 治 療 や 核 酸 医 薬 は タ ン パ ク 質 の 合 成 を 制 御 可 能 な 革 新 的 医 薬 品 と し て 期 待 が 集 ま っ て お り , 本 薬 剤 を 特 異 的 に 標 的 オ ル ガ ネ ラ に 送 達 さ せ る ド ラ ッ グ デ リ バ リ ー シ ス テ ム に 関 す る 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ て い る . し か し そ の 多 く は 核 や 細 胞 質 へ の 遺 伝 子 , 核 酸 送 達 に 主 眼 が 置 か れ て お り , ミ 卜 コ ン ド リ ア を 標 的 と し た 核 酸 送 達 に 関 す る 報 告 は 皆 無 で あ る . 本 論 文 は , 遺 伝 子 治 療 , 核 酸 医 薬 の ミ ト コ ン ド リ ア 関 連 疾 患 へ の 応 用 を 目 指 し , ミ ト コ ン ド リ ア 標 的 型 核 酸 デ ル バ リ ー シ ス テ ム の 開 発 を 目 的 と し て 研 究 さ れ て い る .

  

第 一 章 で は , 「

GALA

修 飾

MITO‑Porter

に よ る 機 能 性 核 酸 の ミ ト コ ン ド リ ア へ の 送 達 お よ び 機 能 評 価 」 に つ い て 論 じ ら れ て い る , 本 章 で は , エ ン ド ソ ー ム 脱 出 素 子 ,

GALA

の 修 飾 に よ り , 効 率 的 に 機 能 性 核 酸 を ミ 卜 コ ン ド リ ア に 送 達 し , ミ ト コ ン ド リ ア 内 の 標 的 遺 伝 子 を 抑 制 す る こ と に 成 功 し た . 人 工 的 な ナ ノ キ ャ ル ア を 用 い た ミ 卜 コ ン ド リ ア 遺 伝 子 の ノ ッ ク ダ ウ ン は 世 界 初 の 報 告 例 で あ る . 第 二 章 で は , 「 ミ ト コ ン ド リ ア 移 行 性

RNA

ア プ タ マ ー に よ る ミ ト コ ン ド リ ア 標 的 化 能 促 進 機 構 の 解 明 」 に つ い て 述 べ ら れ て い る , 従 来 の 脂 溶 性 , カ チ オ ン 性 ベ プ チ ド に よ る 膜 電 位 依 存 性 の ミ ト コ ン ド

1J

ア の 標 的 化 で は な く ,

RNA

ア プ タ マ ー を 用 い る こ と で , 膜 電 位 非 依 存 性 の ア ク テ ィ ブ タ ー ゲ ッ 卜 を 実 現 し た 点 に お い て 新 規 性 を 有 し て い る . 第 三 章 で は , ミ ト コ ン ド リ ア 遺 伝 子 治 療 の 実 現 を 目 指 し , 「

Mitochondrial transcription factorA(TFAM)

に よ る 外 来 遺 伝 子 の 転 写 活 性 化 」 に つ い て 述 べ ら れ て い る , 本 研 究 は

TFAM/DNA

複 合 体 の 複 合 体 形 成 機 構 , お よ び 塩 基 対 数 依 存 性 の 転 写 活 性 化 を 明 ら か と し た . 本 研 究 は

mtDNA

の バ ッ ケ ー ジ ン グ 様 式 を 模 倣 し た 点 に お い て 新 規 性 が あ り , 将 来 に お け る ミ ト コ ン ド リ ア 遺 伝 子 治 療 の 実 現 に 寄 与 す る と 期 待 さ れ る .

  

一 連 の 結 果 は , ミ ト コ ン ド リ ア を 標 的 と し た 遺 伝 子 治 療 , 核 酸 医 薬 の 基 盤 技 術 に 関 す る 新 た な 知 見 を 得 た も の で あ り , 本 オ ル ガ ネ ラ に 対 す る 革 新 的 医 薬 品 の 創 製 に 貢 献 す る 事 が 期 待 さ れ る 。 よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 薬 科 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

―1086―

参照

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