博士 (薬 学 )佐 々木 健 太郎
学 位 論 文 題 名
特異的リガンドを有する多機能性エンベロープ型 ナノ構造体の構築と遺伝子デリバリーへの応用
学位論文内容の要旨
【はじめに】
ウイルスベクターは高い遺伝子導入能カを有しており,これまで臨床用の遺伝子ベクターとして広く 用いられてきたが,近年の遺伝子治療における医療事故などのため,病原性のない非ウイルス性の人工 遺伝子ベクタ一開発の必要性が高まっている,そのため,私はウイルスの高度な遺伝子送達システムを 手本とし,核まで効率よく遺伝子を送達するための多様な仕掛けを組み込んだ新しい人工遺伝子ベクタ ーで ある多機能性エンベローブ 型ナノ構造体(MEND)を設計し た.MENDは,エンベロープ型ウイル スの構造的特徴を取り入れ,凝縮化されたDNAコアとそれを囲む脂質エンベロープから構成される.さ らにエンベローブ上に多様な機能性素子を搭載することが可能である.したがって,本学位論文は1) MENDの構 築方 法の 開発 :SUV' fusion法の確立,と2)MENDの 機能評価,から構成されてい る,
【1.MENDの構築方法の開発:SUV'fusion法の確立】
MENDの構築は次の5つのステップからなる,すなわち1)DNAの凝縮,2)界面活性剤用旨質混合ミセ ル の 相 互 作 用 ,3) 界 面 活 性 剤 除 去 ,4) 精 製 ,5) 機 能 素 子 に よ る 表 面 修 飾 で あ る . ま ず,種々の条件においてPLLによるDNAの凝縮化を検討し ,100 nm以下でカチオンチャ―ジを 有す るDNAコアパ―ティクルの調 製条件(N/P ratio〓 2.4)を見出したm.次に,ブラスミドDNAのバ ッケージング法として広く知られているCullisらのdetergent dialysis法めでDNAコアのパッケージを 試みたが失敗した.そこで界面活性剤濃度を下げ,ミセルが形成されない条件を検討したところ,パッ ケージに成功した.本研究で見出したパッケ―ジング条件,すなわち界面活性剤濃度がCMC以下では,
ミセルではなく,界面活性剤を含むりポソームSUV*カ鋪E在しているため,このSUV*がfusionすること により100 nmサイズの粒子をパッケージすることカ河能になったと推測された,このことから,我々 が 確 立 し た バ ッ ケ ― ジ 方 法 を SUV'fusion法 ( 特 願 2004‑360640)と 命 名 し た 鋤 ,
【2.MENDの機能評価】
MENDによって核まで遺伝子を 送達するための戦略を以下のように立案した,すなわち1)PEGによ って血清成分との相互作用を避け, 2y特異的リガンドであるトランスフェリン(Tf)リガンドによってレ セブタ―を介したエンドサイトーシスにより細胞に取りこませ,3)膜融合ペブチドGALAによってエン
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ドソ―ム脱出を誘起し4)DNAコアをサイ卜ゾルに脱出させる,鋤核移行性を付与したDNAコアを核へ 送達することで目的遺伝子を発現させる,
この戦略を実現する ために,SUV★fusion法によって作成したMENDに種々の機能素子を搭載し,機 能評価を行った,ショ 糖密度勾配分画による精製に より得られたMENDをTf及び コレステロール化 GALA及 びPEG化GALA (ChoトGALA,PEG‑GALA)で 修 飾 す る こ と に よ りTf/GALA修 飾MENDを 構 築した. TfのみのMENDはエンドソ―ムからDNAコア を放出できなかったが,GALAを導入すること によりDNAは効率よいエンドソーム脱出に成功した.しかしながら,有意な遺伝子発現は認められなか った.細胞内動態解析 の結果,DNAコアは核膜を突破できていないことが推測された.そこで,DNA 凝縮化ボリカチオンをPLLから,核移行性カ鋳甥待されるprotamineに代えたところ,有意な遺伝子発現 カtみとめられた,おそらくNLS様の配列を有するprotamineの核移行能によって高い発現効率カ鴾られ たものと推察された.T‐MENDにCho卜GALA及びPEG,GALAを修飾することにより,遺伝子発現活性 は10倍増大した,とこ ろが,CholIGALAとFIEG.GALAの併用によって遺伝子発現 量は100倍に増大 した.このことから2種 類のGALAが協奏的に働いていることが推測された恥,次に,血清存在下にお けるMENDの 遺伝 子発 現活 性を 評 価し た.nakedDNA及 びDNAコ アバ ーテ ィクル(protamineDNA) 複合体は,血清の存在により発現活性が消失した,しかしなカ ら,MENDの活性は,若干の低下が認め られたが,有意な発現活性カ甥特された,このことから,PEGを有するエンベ口一プカルヾリアとして働 き 血 清 成 分 に よ るDNAコ ア パ ー テ ィ ク ル の 分 解 を 紡 い でL` . る 事 カ ― 、 唆 さ れ た , 黼】
本研究において,私 は1)独自のアセンブル技術であるSUゾfusion法を開発することによってMEND の基本構築に成功した .2)MENDに特異的リガンドTf及びェンドソ―ム脱出素子GALAを搭載するこ とにより,効率よいエンドソ―ム脱出能カと高い遺伝子発現能カを有する新しい人工遺伝子ベクタ―
MENDの開発に成功した,
【参考文献】
1)KOgureK,MOr畸uChiR,SaSakiK,UenOM,Fu伯kiS,HaraShimaH.丿CDn蛔f月a起泊Se98:317123 (2004冫,
2)WheeIerJJ,PaImerL,OSSanlouM,MaCLaChlanI,GrahamRW,ZhangYP,HOpeMJ,SCherrerP, CumSPR.Gane7カelr6:271‐81(1999).
3)SaSakiK,KogureK,ChakiS,KihiraYIUenOM,HaraShimaH,lntJPharm296:142‐50(2005),
4)KakudOT,ChakiS,Fu恒klS,NakaSe|,AkajiK,KaWakamiT,MaruyamaK,KamiyaH,HaraShimaH. 8めGんenW§むy43:5618・28(2004).
5)SaSakjK,ChakiS,KOgureK,HamadaH,UenoM,FuぬkiS,HaraShimaH,Submi廿edforpubIiCation.
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
原島 井関 紙谷 菅原
学 位 論 文 題 名
秀吉
健 浩之
満
特 異的 リガ ンドを有する多機能性エンベロープ型 ナノ構造体の構築 と遺伝子デリバリーへの応用
ウイルスベクターは臨床用の遺伝子ベクターとして広く用いられてきたが,近年の遺伝子治療に おける医療事故などのため,病原性のない非ウイルス性の人工遺伝子ベクター開発の必要性が高ま っている.佐々木健太郎は、遺伝子を核まで効率よく送達するための多様な仕掛けを組み込んだ新 しい人工遺伝子ベクターである多機能性エンベロープ型ナノ構造体
(MEND)
を構築し、その機能解 析を行うことを研究目標に設定した,MENDは,エンベロープ型ウイルスの構造的特徴を取り入れ,凝縮化されたDNAコアとそれを囲む脂質エンベロープから構成されるナノ構造体である.エンベロ ープ上に多様な機能性素子を搭載することにより、細胞内動態の制御が可能となり、さらに遺伝子 導入機能を有するMENDの開発に成功した.
1
. MENDの構築方法の開発:SUV* fusion法の確立MEND
の構築は次の5つのステップからなる.すなわち1)DNAの凝縮,2)界面活性剤/脂賓混合 ミセル の相互作 用,3
)界面 活性剤除 去,4)精製 ,5
) 機能素 子による 表面修飾 である.まず,
100 nm
以下でカチオンチャージを有するDNA
コアパーティクルの調製条件(N/P ratio 2
.4)を見出したい.次に,プラスミドDNAのパッケージング法として広く知られているCullisら のdetergent dialysis法2)でDNAコアのパッケージを試みたが失敗した.そこで界面活性剤濃度 を下げ,ミセルが形成されない条件を検討したところ,パッケージに成功した,界面活性剤濃度がCMC
以下では,ミセルではなく,界面活性剤を含むりポソームsuv*が存在しているため,このSUV*がfusionすることにより
100 nm
サイズの粒子をパッケージすることが可能になったと推測され た.そこ、で,この新しいパッケージ方法をSUV* fusion法(特願2004
ー360640)と命名したm.。 l
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. MENDの機能評価MEND
によって核まで遺伝子を送達するための戦略を以下のように立案した.すなわち1)PEGに‑ 861
―よって血 清成分との相互作用を避け,
2
)特異的リガンドである卜 ランスフェリン(Tf)リガンドによf
っ てレ セプ タ ーを介したエ ンドサイ卜ーシスにより細胞 に取りこませ,3)膜融合ペ プチドGALAに よってエ ンドソーム脱出を誘起し→)
DNA
コアをサイトゾルに脱 出させる.4)核移行性を付与したDNA
コアを核へ 送達することで目的遺伝子 を発現させる,こ の 戦 略 を 実 現す る ため ,ま ず最 初に
MEND
をTf
及 びコ レス テ ロー ル化GALA
及 びPEG化GALA(Chol
―GALA
,PEG
−GALA)で 修 飾す るこ とに よ りTf/GALA修 飾MENDを 構築 し た.Tf
のみのMEND は エン ドソ ーム か らDNAコア を 放出 でき なか っ たが ,GALAを 導入 す るこ とに よりDNA
の効率よ いエンドソー ム脱出に成功した.しかしながら,有意な遺伝子発現は認められなかった.そこで,DNA
凝縮 化 ポリ カチ オン をPLLか ら,NLS
様の 配 列を 有す るprotamineに代 え たと ころ,有意な 遺 伝子 発現がみ とめられ,protamineの核移 行能によって高い発現効率が 得られたものと推察さ れた, Tf−MENDにCholーGALA及びPEG−GALAを修飾することにより, 遺伝子発現活性は10倍増大 し ,Cho卜GALA
とPEG―GALA
の併 用に よ って 遺伝 子発 現量 は100
倍 に 増大 した .こ のことから2 種 類のGALA
が協 奏 的に 働い てい るこ と が推 測さ れた.5)
.次に,血清存 在下におけるMENDの遺 伝 子発 現活 性を 評 価し た.naked DNA
及びDNA
コア パー ティ クル(protamine/DNA)
複合体は,血 清の 存在 によ り 発現 活性 が消 失した.し かしながら,MENDの活性は, 若干の低下が認められ た が, 有意な発 現活性が保持された,このこ とから,PEGを有するエンベ ロープがバリアとして 働 き 血 清 成 分 に よ る
DNA
コ ア パ ー テ ィ ク ル の 分 解 を 防 い で い る 事 が 示 唆 さ れ た .、丶
結諭
本 研究 に おい て, 佐々 木 健太郎は1)独 自のアセンブル技術であるSUV* fusion法を開発する こと によ っ てMENDの 基本 構 築に 成功 した ,2)MENDに 特異的リガンド
Tf
及びエンドソーム脱出 素子GALA
を 搭載 する こと に より,効率よい エンドソーム脱出能カと高 い遺伝子発現能カを有す る新 しい 人 工遺 伝子 ベク タ ーMENDの開発に 成功した.以上の研究成果 にっき主査、副査で審査 した 結果 、 博士 (薬 学) を 授与 する に十 分値 す ると 判断 した .1) Kogure K et al., J Control Release 98:317‑23 (2004) 2) Wheeler JJ et al., Gene Ther 6:271‑81 (1999).
3) Sasaki K et al., Int J Pharm 296:142‑50 (2005).
4) Kakudo T et al., Biochemistry 43:5618‑28 (2004).
5) Sasaki K et al., submitted for publication.
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