<論文>
ブランド・コミュニティ研究へのマルチレベル分析の適用可能性
―
Facebook ページへのリレーションシップがロイヤルティに及ぼす影響の検討―
竹内淑恵
要旨 多くの企業が、Facebook ページ(以下、FB ページ)を統合マーケティング・コミュニケーション戦略の 一環として活用している。これまでの研究では、FB ページを展開している企業が多数存在するにもかか わらず、少数のFB ページに限定して調査する、あるいは、多数の FB ページのデータを収集した後、集 計して分析するというアプローチが採られてきた。そこで本研究では、38 ブランドの FB ページに対する 消費者反応データを用いて、階層線形モデルの適用可能性を検討した。階層線形モデルは、個人レベル (消費者)と集団レベル(FB ページ)という階層的なデータを適切に分析するための手法である。分析の 結果、集団レベルの誤差を固定効果としたモデルよりも、変量効果としたモデルのほうが適合度が有意に 高いこと、個人レベルの効果に関して、FB ページ間の異質性を仮定したモデルのほうが、独立変数(信 頼、相互作用、コミットメント)による従属変数(推奨意図)に対する説明力が高いことが明らかになっ た。また、集団レベルの変数である、年齢、男女比率、人気ランキングには有意な効果が認められなかっ た。一方、満足度、快楽的動機においては、個人レベルの効果のみならず、集団レベルの効果を扱うこと により、モデルの説明力が高まることが見出された。 キーワード:階層線形モデル、リレーションシップ、ロイヤルティ、Facebook ページ、実証分析 AbstractMany companies use Facebook pages (hereinafter referred to as FB pages) as a part of integrated marketing communication strategies. In previous research, despite the fact that many companies have developed FB pages, studies either took the approach of studying only a small number of FB pages, or they collected the data of a large number of FB pages, aggregated statistics. Therefore, this paper, applying consumer response data for the FB pages of 38 brands, examines the applicability of a hierarchical linear model. A hierarchical linear model is a method for accurately analyzing individual level (consumer) and a group level (FB page) hierarchical data. The results show that the group level error applies significantly better to the random effects model than to the fixed effects model. Regarding effect at the individual level, it is clear that the model assuming heterogeneity among FB pages is highly effective in explaining the dependent variable (recommended intention) by the independent variables (trust, interaction, commitment). Furthermore, the group level variables, age, gender ratio and popularity ranking, have no significant effect. Meanwhile, with respect to satisfaction and hedonic motivation, model fitness is improved not only by individual level effect but also by group level effect.
1. はじめに Facebook(以下、FB と略す)のホームページ1によると、「2018 年 7 月のデイリーアク ティブ利用者は14 億 7000 万人、2018 年 7 月 30 日時点での月間アクティブ利用者数は 22 億3000 万人」にものぼる。FB のみならず、Twitter、Instagram、LINE 等のソーシャルネッ トワークサービス(以下、SNS と略す)には膨大な数のユーザーが存在し、しかも、これ らのネットワークは漸進的に成長している。そのため、企業のマーケティング担当者は SNS を利用している消費者とのコミュニケーションの可能性を認識せざるを得なくなって いる。今や、企業が統合マーケティング・コミュニケーション戦略の一環としてソーシャ ルメディアを組み込むことは驚くべきことではなく、SNS を自社のコミュニケーション活 動のための新しい手段として活用している。そして、SNS 上のブランドページを成功させ るためには、たとえばFB ページであれば、「いいね!」をクリックする、あるいは、Twitter であれば、「フォロー」をクリックして、消費者にそのページのメンバーやフォロワーに なってもらう必要がある。 ブランドページは特定のブランドに対して興味を持つ消費者が集まるネットワーク上の ブランド・コミュニティであるが、他のタイプの、たとえば企業のホームページ内にある ブランド・コミュニティやオフラインのブランド・コミュニティとは異なる面もあり、ブ ランドページ特有の特徴がある(Sicilia, Palazón, & López, 2016)。そのため、消費者のブラ ンドページへの参加動機も異なるであろうし、SNS 上に数多く存在するブランドページ自 体も、それぞれ異なる目的をもって、展開されている。しかしながら、これまでのブラン ドページに関する研究では、少数の製品カテゴリーのブランドを対象にする、あるいは、 それぞれのブランドページへの反応を集計して分析するというアプローチで行われている。 また、FB ページを対象とした研究は、海外では比較的多く実施されているのに対して、日 本国内での研究は十分に行われているとは言えない状況にもある。そこで本研究では、特 定のブランドページを分析対象にするのではなく、また、多くのブランドページへの反応 を集計して分析するのでもなく、マルチレベル分析の1 つである階層線形モデルを適用し、 多数のFB ページに対するリレーションシップがロイヤルティにどのような影響を及ぼす のかを検討する。また本分析を行うことにより、ブランド・コミュニティ研究においてマ ルチレベル分析を適用できるかどうか、その可能性についても検討する。 2. マルチレベルモデルについて マルチレベルモデルとは、階層的なデータを適切に分析するための手法であり、マルチ レベルは、データの多層性のことを意味している(清水, 2014)。そして、マルチレベルモ デルの中で利用されることが多いのが、階層線形モデルである。データが階層的になって いる例として、清水(2014)は、複数の国の人から集めたデータ、学級ごとに生徒をサン プリングしたデータ、家族単位で調査票を配布し、家族成員それぞれに回答を求めたデー タ等の事例を挙げている。また、Kreft and De Leeuw(1998)は、企業における労働者の収 入の差異、高校生を対象とした薬物防止プログラムの効果、学校の組織構造が生徒の成績 に与える影響等を挙げ、さまざまな分野でデータが構造的にネストされた事例があると指
摘している。これらの事例は、主に教育学、心理学、社会学、政治学、経済学等の研究領 域を対象にしており、集団を学校、チーム、企業、地域、国等のレベルで捉えている。こ のような捉え方を、経営学の分野、とくにマーケティングに当てはめると、企業を集団と して捉えるのみならず、さらに下位のレベルとして、ブランドという集団に適用すること もできる。個人としての消費者と、集団としてのブランドというレベルで階層的にデータ 捉えることにより、ブランド間の異質性を明示的に取り込むことが可能になる。 マルチレベルモデルを使うメリットとして、清水(2014)は、集団単位と個人単位の両 方の情報を持つ階層的データを適切に捉える点を指摘している。たとえば、重回帰分析や 構造方程式モデルでは、2 グループ、あるいは多くても 3 グループ間の差異は検討できた としても、より多くのグループで構成される集団の分析を適切に扱うことは困難である。 また、分散分析であれば多重比較によって複数グループ間の検定を行うことができるが、 変数間の因果関係の解明はできない。しかしながら、本研究で分析対象としているFB ペー ジは国内外を問わず多くのページが存在し、消費者は個人の興味・関心に基づいて、FB ページに参加しており、また、1 人で複数の FB ページを利用することも多い。そのような 状況を考えると従来の研究手法で分析するだけで、実態を把握できるのかという疑問が生 じる。調査に際しては、特定のFB ページを指定して、閲覧させて評価データを得る、あ るいは、いつも見ているFB ページへの評価を回答してもらい、FB ページの異質性を考慮 せずに分析することになる。 竹内(2018)では、FB ページにおけるリレーションシップ形成をテーマとし、競合関係 にある航空会社の2 つのブランド間で差異の検証を行ったが、有意な違いを見出すことは できなかった。これは、ライバルを意識して、互いに似たようなコミュニケーション活動 を展開していることが原因になっているためではないのかと推測される。共感について検 討した竹内(2015)では、食品分野の 2 つの競合ブランドを対象とし、FB ページ閲覧によ る共感の発生について実証分析を行うとともに、企業イメージの向上を比較した。その後、 竹内(2016)では、人気度は高いが、競合関係にない 2 つのサービス財の差異を検証した が、一般化には至っていない。そもそもサービス財と有形財を比較しても、企業の戦略や FB ページで目指している目的が異なっていれば、求める効果に違いが出ても当然だという 結論になってしまうのではないかという疑問も出てくる。 調査リクルートの段階で一定の興味関心度のある対象者を絞り、本調査時点で閲覧する FB ページを指定する方法では、いつも閲覧している FB ページであるとは限らず、リレー ションシップの形成を検討するデータとして適切であるのかという点で調査手法の限界が ある。また、どのFB ページを想起して回答しているのか不明なまま評価を取り、分析に 供するという場合も、それはそれで問題がある。階層線形モデルは教育学や心理学等のみ ならず、近年では経営学や人的資源管理(HRM)の領域における組織分析にも適用されて いる(竹内・竹内・外島, 2007)。そこで本研究でも、FB ページへのリレーションシップが ロイヤルティ形成に及ぼす影響を階層線形モデルの観点から検討する。世の中には数多く の企業やブランドが存在しており、このようなアプローチで分析を行うことは、マーケティ ングの研究分野、とくにブランド・コミュニティの研究分野として一定の意義があると考 える。
3. 先行研究の整理と仮説設定 以下では、FB ページにおけるリレーションシップがロイヤルティ形成にどのような影響 を及ぼすのかを検証するために、階層線形モデルを用いることを前提に先行研究を概観す る。その上で、本研究の仮説を記述する。 3.1 ネットワーク上のブランド・コミュニティの新しい形としてのブランドページ ブランド・コミュニティとは「ブランドのユーザー間で構造化された社会的関係に基づ く、地理的に特化していない特殊なコミュニティ」と定義されている(Muniz & O’Guinn, 2001)。ブランド・コミュニティはまずオフラインで開発され、参加メンバーは会議、社会 的活動、ブランドによって開催されるイベントにおいて、対面で会話するという形で展開 された(Sicilia et al., 2016)。その後、インターネットの発展とともに、ネットワーク上に ブランド・コミュニティが創出され、このプラットフォームを通じてメンバー同士の交流 が容易になった(Algesheimer, Dholakia, & Herrmann, 2005)。ネットワーク上のブランド・ コミュニティは、ブランドに対して共通の興味を持つ個人が相互に電子的にコミュニケー ションするグループとして概念化され(Sicilia & Palazón, 2008)、ブランドページは、SNS に埋め込まれた新しいネットワーク上のブランド・コミュニティの一形態となった(Habibi, Laroche, & Richard, 2014)。2013 年時点で、80%以上の欧州企業が既にブランドページを展 開している(Sicilia et al., 2016)。また、トライバルメディアハウスとクロス・マーケティ ング(2012)の調査報告によると、日本においても上級活用企業の 91.7%が Twitter を、 86.1%が FB を利用している。しかしながら、ブランドページのコミュニケーション効果や 効果測定に関する学術的な検証は十分とは言えない。 コミュニケーション手段としてのブランドページの現状と研究課題について検討した Sicilia et al.(2016)は、ブランドページと他のネットワーク上のブランド・コミュニティ について整理し、ブランドページの特徴として次の3 点を挙げている。①オープンアクセ スである。簡単にブランドページに参加したり、離れることができ、労力も、ブランドへ の高い関与も、コミュニティへの義務感なども必要がない。また、②幅広い視聴者という 特徴もある。FB や Twitter などのネットワーク上のブランドページでは、企業のホームペー ジに設置されたブランドページでは抱えられないほど多くのファンを獲得することができ る。情報拡散という点でも秀でた特徴を持っている。FB で「いいね!」を押す、コメント を投稿すると、その情報がネットワーク全体に配信されることになる。③相互作用性も他 のブランド・コミュニティとは異なっている。チャットルームやフォーラムなどのブラン ド・コミュニティでは仮名で参加することも多いが、FB では基本的に実名での登録であ る。そのため、ブランドページでのe-クチコミの信頼性にもプラスの効果がもたらされ る。このような特徴を踏まえた上で、リレーションシップやロイヤルティ形成という観点 からコミュニケーション効果について検討する必要がある。 3.2 ブランドページに参加する動機・目的について Sicilia et al.(2016)が指摘するように、ブランドページを成功させるためには、新しい メンバーを参加させる必要がある。そこで重要なのが、消費者がブランドページに参加し
ようと思う意思に影響する要因、すなわち、参加動機や目的に対する理解である。Pentina, Prybutok, and Zhang(2008)は、社会との一体化、エンターテインメント、情報探索、ステ イタスの強化、取引目的といった参加動機を挙げている。また、動機について包括的に文 献レビューを行ったPark and Kim(2014)は、社会的便益(他者との社会的交流)、情報的 便益(情報取得)、快楽的便益(楽しみ)、経済的便益(プロモーション取引)の4 つの便 益を特定している。しかしながら、実証分析において、Park and Kim(2014)は経験的便 益と機能的便益を取り上げて、リレーションシップの質やクチコミ等のロイヤルティ行動 に影響を及ぼすことを検証し、FB ページは企業と消費者との関係性を構築する上で重要な メディア戦略であると主張している。社会的便益と情報的便益に焦点を当てているのは、 Jung, Kim, and Kim(2014)である。分析の結果、FB ページへの再訪問意図、ブランドへ の信頼に対してプラスの影響があることを明らかにした。Kang, Tang, and Fiore(2014)で は、機能的、社会・心理的、快楽的、金銭的便益の4 次元に分類している。コミュニティ への参加度に対して、社会・心理的、快楽的便益はプラスの影響を及ぼすが、機能的、金 銭的便益の影響はないことを見出している。Sung, Kim, Kwon, and Moon(2010)は、エン ターテインメント、情報、インセンティブ、利便性の4 つを探索動機とし、Kuo and Feng (2013)は、知覚便益として学習的便益、社会的便益、自己評価的便益、快楽的便益の 4 つ を用いている。 上記の通り、便益に関してもいろいろな次元が提案され、諸説あることが判明した。本 研究は、FB ページを販売促進のためのプロモーションの場としてではなく、メンバー同 士、あるいは、メンバーと企業間のコミュニケーションの場であり、長期的なリレーショ ンシップを形成するプラットフォームとして位置づけて活用すべきであるという立場を取っ ている。そこで、参加動機については、経済的な便益を除き、社会的動機、情報探索動機、 快楽的動機の3 次元で捉え、FB ページという集団レベルを評価するための変数とする。 満足度は、先行研究でも広く扱われ、その定義はさまざまで複雑な概念であるが、本研 究ではリレーションシップの観点から満足度を捉えた先行研究の知見を確認する。Crosby, Evans, and Cowles(1990)は、満足度をリレーションシップの質の要素の 1 つと捉え、Severt (2002)はリレーションシップを構成するすべての側面の全体的な評価から生じる感情的状 態と定義している。実証分析において、たとえば、Sung et al.(2010)、De Almeida, Dholakia, Hernandez, and Mazzon(2014)では、FB ページへの全体的満足として、Steinmann, Mau, and Schramm-Klein(2015)は提供される情報への満足度として、Casaló, Flavián, and Guinalíub (2010)は参加による便益に対する全体的満足という視点で捕捉している。そこで本研究で は、全体的満足、情報への満足、参加による便益という観点から、FB ページという集団レ ベルの評価変数として、満足度を取り上げる。 3.3 ブランドページに対するリレーションシップについて リレーションシップという概念は、Berry(1983)が導入したと多くの研究で認められ (竹内, 2014)、マーケティング分野においてパラダイムのシフトを起こした。その後、国内 外を問わずさまざまな角度から研究が進められているが、以下ではブランドページに対す るリレーションシップに焦点を絞り、信頼、相互作用、コミットメントの観点から先行研 究の成果と知見を確認する。
まず信頼に関する先行研究を概観する。信頼は対人交流の基本原則であり、繰り返され る相互作用を通して徐々に発現する(Gefen, 2000)。また、ブランドへの信頼とは、ブラン ドが消費時に期待どおりに機能するという消費者の信念と定義されている(Ha & Perks, 2005)。ブランドページへの信頼が再購買意図、クチコミといったロイヤルティにいかなる 影響を及ぼしているのかを検討したHur, Ahn, and Kim(2011)は、コミットメントが媒介 変数となり、クチコミへ大きな影響を与えていることを明らかにした。Lin and Lu(2011) は、信頼のみならず、社会的な相互作用、価値の共有を説明変数とし、FB ページの継続的 な使用意思に重要な役割を果たしていることを見出している。信頼とコミットメント、態 度的ロイヤルティの関係をモデル化し、実証したAurier and Lanauze(2012)は、信頼とコ ミットメントは態度的ロイヤルティに直接影響を及ぼすとともに、信頼はコミットメント にも影響していることを明らかにしている。エンゲージメントを媒介変数として、ブラン ドへの信頼とロイヤルティについて検討したLaroche, Habibi, Richard, and Sankaranarayanan (2012)では、有意な関係を見出せなかったが、その後、Habibi et al.(2014)は、エンゲー ジメントの高低で消費者を分類し、信頼への影響を検討した。その結果、ブランドとの関 係性、他の顧客との関係性は、信頼にプラスの影響を及ぼすことを明確化している。Kang et al.(2014)、Kang, Tang, and Fiore(2015)においては、信頼のみならずコミットメントも変 数として組み込み、レストランのFB ページへの参加度と信頼、コミットメントに対する価 格プロモーションの影響を検討した。その結果、参加度がコミットメントに直接影響するこ と、信頼が媒介変数となってコミットメントが高まることを見出している。これらの先行 研究を見てわかる通り、信頼はリレーションシップ形成において重要な変数になっている。 次に、相互作用について検討している先行研究について確認する。相互作用とは「コミュ ニティのメンバー間およびメンバーとコミュニティの主催者間の情報交換」であり、情報 交換や対人交流、質疑応答の速さ、主催者とメンバーとの交流によって測定される(Jang et al., 2008)。Algesheimer et al.(2005)は、コミュニティメンバーは他のメンバーと交流 し、協力するといった本質的な動機づけを持っていると指摘している。従来型のマス媒体 を通じた一方通行のコミュニケーションとは異なり、ブランドページでは、相互作用によ り双方向のコミュニケーションが成立する。具体的な実証研究の事例としては、前述のLin and Lu(2011)と Kuo and Feng(2013)が挙げられる。Kuo and Feng(2013)では、「製品 情報の共有」、「コミュニティの相互作用性」、「コミュニティへのエンゲージメント」を相 互作用の変数と仮定し、コミットメント、ロイヤルティに対して影響を与えることを検証 している。なお、Kim, Choi, Qualls, and Han(2008)、Hur et al.(2011)では、他のメンバー との情報・意見交換をコミットメントの1 つの質問項目として取り上げているが、本研究 ではJang et al.(2008)に依拠し、メンバー間の相互作用として扱うこととする。
最後にコミットメントについてまとめる。コミットメントとは、行為や活動の方向性を 継続することへの意思であり、リレーションシップを維持したいという願望でもある(Hocutt, 1998)。コミットメントについては、前述の Hur et al.(2011)、Kim et al.(2008)、Kuo and Feng(2013)、Kang et al.(2014, 2015)をはじめ、多くの研究でリレーションシップ形成の 重要な成功要因として扱われている。以下に重複しない範囲で研究事例を挙げておく。 Liang, Ho, Li, and Turban(2011)では、リレーションシップ品質を信頼、満足、コミットメ ントの2 次因子と仮定し、ソーシャル・コマースへの意図と継続意図を検討している。ま
た、同一化、信頼、コミットメントを変数とし、Twitter のリツイートの有無による e-クチ コミの差異を検証したKim, Sung, and Kang(2014)や、FB ページへの知覚コスト、知覚ベ ネフィットによるコミットメントとブランド・ロイヤルティへの影響を検討したZheng, Cheung, Lee, and Liang(2015)もある。Zhou, Zhang, Su, and Zhou(2012)では、コミュニ ティとブランドの両側面から、同一化とコミットメントへの影響について検討し、同一化 とコミットメントの関係が支持された。後続の研究としてZhang, Zhou, Su, and Zhou(2013) が挙げられる。コミュニティへのコミットメントを継続的、感情的、規範的コミットメン トの3 要素に分類し、ブランドへの愛着を媒介変数として分析した結果、ブランド・コミッ トメントには感情的コミットメントが、また、ブランドへの愛着には3 要素が影響すると いう知見を得ている。したがって、リレーションシップ形成を検討する際の重要な変数の 1 つとしてコミットメントを扱う必要がある。 3.4 ブランドページへのロイヤルティについて ブランド・ロイヤルティとは、ブランドに対する消費者の忠誠心である。継続してその ブランドを購買するといった行動として、また、購買行動そのものだけではなく、継続的 な購買意図という態度として現れる場合もある。しかしながら、ネットワーク上のブラン ドページにおいては、当該ページをたびたび閲覧したいといった再訪意図を持つ、あるい は、情報を拡散したり、好意的なクチコミを広げたいといった推奨意図の形成という形で ロイヤルティが示されることもある。企業にとって継続的な購買行動や購買意図の形成の ほうが、販売に直結するという意味でより望ましく、プロモーションを活用目的にする場 合も多いだろう2が、FB ページにおいては、販売促進やキャンペーン告知よりも、企業の 担当者を含め、参加している人々が楽しくコミュニケーションできる、企業と消費者が対 等に会話できる場の提供のほうがより重要なのではないかと考える。いろいろなメディア を通じて消費者とのコミュニケーションが可能になった現在、FB ページに必要なのは長期 的なファンづくりであり、企業はリレーションシップの形成を目指すべきである(竹内, 2018)。したがって、ロイヤルティの測定においても従来とは異なる視点が必要となる。従 来は、継続的な購買、あるいは購買意図でロイヤルティを測定することが多かったが、FB ページ上でのコミュニケーションの場合、参加者は能動的に情報を閲覧したり、ときには 「いいね!」を押したり、コメントすることもできるため、そのような観点からロイヤル ティを捕捉することが可能になり、また、必要にもなった。そこで本研究では、ブランド に対するロイヤルティではなく、FB ページに対するロイヤルティとして測定する。先行研 究としては、FB ページ閲覧への継続意図を構成する 1 項目として友人への推奨を設定した Lin and Lu(2011)、友人や親戚への推奨意図としてロイヤルティを捉えた Algesheimer et al. (2005)を挙げることができる。また、Carroll and Ahuvia(2006)を参照した Park and Kim (2014)においても、友人や親戚へのクチコミ・推奨という観点から測定尺度を決定してい る。これらの先行研究を踏まえ、本研究では、FB ページに対する他人への推奨意図を従属 変数とする。
3.5 分析の枠組みと仮説
ルの特徴、たとえば、男性・女性向け、ターゲット年齢といったデモグラフィック変数、 人気ランキング、コメント数、参加動機や満足度等を加味せずに分析してよいのかという 問題意識から検証することを目的とし、個人レベルと集団レベルの効果について同時に分 析できるマルチレベル分析の適用可能性について検討するものである。そこで、本研究に おける分析枠組みを図1 のように設定する。 なお、個人レベルの信頼、相互作用、コミットメントと推奨意図の関係について、FB ページにおける消費者とブランドとのリレーションシップ構築に関して検証した竹内 (2018)では、 ① コミットメントに対する影響は、相互作用のほうが信頼より大きい ② 継続・推奨意図は、相互作用、信頼、コミットメントからプラスの影響を受ける ことを明らかにしている。しかしながら本研究では、階層線形モデルを適用するため、媒 介効果を仮定せずに、②の結果のみを参照する。 集団レベルの変数のうち、先行研究のレビューにおいて言及しなかった点について整理 しておく。前述の通り、ブランドページはオープンアクセスであり、幅広い視聴者が参加 している。したがって、代表的なデモグラフィック変数として、男女比率、ターゲット年 図1 本研究における分析枠組み (出所)筆者作成。
齢について検討する。また、竹内(2018)において、多母集団の同時分析を用いて男女間 の差異を明らかにしているという点を踏まえ、組み込んでいる。Sicilia et al.(2016)によ ると、人気ランキングという視点も重要であるため、1 つの変数として扱うこととする。 実証分析に際し、以下の仮説を設定する。 仮説1:個人レベルの効果に関して、FB ページ間の異質性を考慮せずに分析を行うより も、FB ページ間の違いを加味したモデルのほうが、独立変数(信頼、相互作 用、コミットメント)による従属変数(推奨意図)に対する説明力が高い。 仮説2:個人レベルの効果のみならず、集団レベルの効果を扱うことにより、モデルの 説明力はさらに高まる。 仮説2 で扱う集団レベル、すなわち第 2 水準の変数である、参加者の平均年齢、男女比 率、FB ページの人気ランキング、満足度、参加動機に対する仮説は以下の通りである。 仮説3-1:参加者の平均年齢は有意な負の影響3を与える。 男女比率は有意な正の影響4を与える。 仮説3-2:FB ページの人気ランキングは有意な正の影響を与える。 仮説3-3:満足度は有意な正の影響を与える。 仮説3-4:参加動機は有意な正の影響を与える。 4. モデルの定式化 上記の仮説に基づいてモデルを定式化する。従属変数は推奨意図(以下、REC と略す) とする。レベル1、すなわち、個人レベルの独立変数としては、信頼(以下、TRU)、相互 作用(以下、INT)、コミットメント(以下、COM)の 3 変数、レベル 2 の集団レベルの独 立変数は、年齢(以下、AGE)、男女比率(以下、SEX)、人気ランキング(以下、RANK)、 満足度(以下、SAT)、社会的動機(以下、SOC)、情報探索動機(以下、INF)、快楽的動 機(以下、HED)とする。変数として扱うデータの詳細については後述する。Null モデル は以下の通りである。 レベル1 モデル:RECij=β0j+rij レベル2 モデル:β0j=γ00+u0j 上記2 つのモデルを混合モデルの形式で表すと(1)式になる。 RECij=γ00+u0j+rij (1) (1)式において添え字の i は消費者個人を、j は集団レベルとしての FB ページを指す。β0j は独立変数を統制した際の全体の平均を示す切片であり、固定効果としてのγ00と変量効 果であるu0jで構成される5。rijは誤差項である。
3 つの独立変数を固定効果としたモデル 1 は以下の通りである。ここでレベル 1 の変数 は集団平均中心化して投入する。
レベル1 モデル:RECij=β0j+β1j*(TRUij)+β2j*(INTij)+β3j*(COMij)+rij レベル2 モデル:β0j=γ00+u0j
β1j=γ10
β2j=γ20
β3j=γ30
混合モデル:RECij=γ00+γ10*TRUij+γ20*INTij+γ30*COMij+u0j+rij (2)
(2)式において β1j、β2j、β3jは、それぞれ3 つの独立変数、すなわち、信頼、相互作用、コ ミットメントの傾きを示すパラメータである。レベル2 では、切片に変量効果(u0j)を仮 定しているが、独立変数については仮定していない。γ10、γ20、γ30はそれぞれβ1j、β2j、β3j の固定効果を表すパラメータである。 独立変数の傾きにグループ間変動を指定したモデル2 は(3)式の通りである。(2)式との違 いは、3 つの独立変数についても変量効果(u1j、u2j、u3j)を仮定している点である。
レベル1 モデル:RECij=β0j+β1j*(TRUij)+β2j*(INTij)+β3j*(COMij)+rij レベル2 モデル:β0j=γ00+u0j
β1j=γ10+u1j
β2j=γ20+u2j
β3j=γ30+u3j
混合モデル:RECij=γ00+γ10*TRUij+γ20*INTij+γ30*COMij
+u0j+u1j*TRUij+u2j*INTij+u3j*COMij+rij (3)
(3)式では、第 2 水準にグループ間の変動を説明する独立変数を組み込んでいないため、 (4)式に示す通り、平均年齢、男女比率を追加したモデル 3-1 を設定する。ここでレベル 2 の変数は全体平均中心化して投入する。
レベル1 モデル:RECij=β0j+β1j*(TRUij)+β2j*(INTij)+β3j*(COMij)+rij レベル2 モデル:β0j=γ00+γ01*(AGEj)+γ02*(SEXj)+u0j
β1j=γ10+γ11*(AGEj)+γ12*(SEXj)+u1j
β2j=γ20+γ21*(AGEj)+γ22*(SEXj)+u2j
β3j=γ30+γ31*(AGEj)+γ32*(SEXj)+u3j 混合モデル:RECij=γ00+γ01*AGEj+γ02*SEXj
+γ10*TRUij+γ11*AGEj*TRUij+γ12*SEXj*TRUij +γ20*INTij+γ21*AGEj*INTij+γ22*SEXj*INTij +γ30*COMij+γ31*AGEj*COMij+γ32*SEXj*COMij +u0j+u1j*TRUij+u2j*INTij+u3j*COMij+rij (4)
第2 水準の変数として人気ランキングを追加したモデル 3-2 は(5)式の通りである。 レベル1 モデル:RECij=β0j+β1j*(TRUij)+β2j*(INTij)+β3j*(COMij)+rij
レベル2 モデル:β0j=γ00+γ01*(RANKj)+u0j
β1j=γ10+γ11*(RANKj)+u1j
β2j=γ20+γ21*(RANKj)+u2j
β3j=γ30+γ31*(RANKj)+u3j 混合モデル:RECij=γ00+γ01*RANKj
+γ10*TRUij+γ11*RANKj*TRUij +γ20*INTij+γ21*RANKj*INTij +γ30*COMij+γ31*RANKj*COMij
+u0j+u1j*TRUij+u2j*INTij+u3j*COMij+rij (5)
同様に、満足度を第2 水準として追加したモデル 3-3 は、(5)式の RANK を SAT に置き換 えるだけであるため、ここでは記載を省略する。
第2 水準として、FB ページ参加動機に関する 3 変数を取り込んだモデル 3-46は(6)式の 通りとなる。
レベル1 モデル:RECij=β0j+β1j*(TRUij)+β2j*(INTij)+β3j*(COMij)+rij レベル2 モデル:β0j=γ00+γ01*(SOC_Mj)+γ02*(INF_Mj)+γ03*(HED_Mj)+u0j
β1j=γ10+γ11*(SOC_Mj)+γ12*(INF_Mj)+γ13*(HED_Mj)+u1j
β2j=γ20+γ21*(SOC_Mj)+γ22*(INF_Mj)+γ23*(HED_Mj)+u2j
β3j=γ30+γ31*(SOC_Mj)+γ32*(INF_Mj)+γ33*(HED_Mj)+u3j 混合モデル:
RECij=γ00+γ01*SOC_Mj+γ02*INF_Mj+γ03*HED_Mj
+γ10*TRUij+γ11*SOC_Mj*TRUij+γ12*INF_Mj*TRUij+γ13*HED_Mj*TRUij +γ20*INTij+γ21*SOC_Mj*INTij+γ22*INF_Mj*INTij+γ23*HED_Mj*INTij +γ30*COMij+γ31*SOC_Mj*COMij+γ32*INF_Mj*COMij+γ33*HED_Mj*COMij +u0j+u1j*TRUij+u2j*INTij+u3j*COMij+rij (6)
5. 調査概要 調査対象は男女20~59 歳とし、マスコミ関係者は対象外とする。エリアは全国を対象 に、県・ブロック別等の割付は行わない。調査回答者に対して、FB、Twitter、Instagram、 LINE 等の SNS を利用し、FB のアカウントを所有していることという条件を課している。 また、スクリーニング段階において、企業あるいはブランドのFB ページへのコメントや 「いいね!」経験の有無を確認した上で、本調査の対象者としている。20 代~50 代の 4 グ ループに分け、男女別に各300 サンプル計 2,400 サンプルのデータを web アンケート調査 にて収集した(回収した有効サンプルは各309、計 2,472)。本調査では、指定された特定 のFB ページを閲覧した上で回答するのではなく、回答者が想起した FB ページについて、
閲覧頻度(4 段階)、コメントや「いいね!」経験の有無(4 段階)、当該 FB ページへの評 価(7 段階のリッカート尺度)等を回答するという方式を採っている。2017 年 12 月 7 日 (木)~2017 年 12 月 8 日(金)に実査を行った。 6. 収集データの概要 前述の通り、回答者が想起したFB ページは自由記入式の回答である。そこで企業ブラ ンド・製品ブランドとしてどのようなものが想起されているのかについて、全サンプルを 見て確認した。まず業種を分類すべく、電通が毎年公開している「日本の広告費」におけ る業種分類基準7に従って、全サンプルを分類した。その結果、表1 に示す通り、第 1 想 起のFB ページとしてさまざまな業種の多様な企業が挙げられた。20 業種にも及ぶ業種に よる分析を行うことにも一定の価値があるが、第1 想起として具体的な FB ページ名を挙 げてもらっていることに着目し、データの整理をさらに行った(表2)。回答者総数は 2,472 名であるが、その中には企業ブランドや製品ブランド以外の回答8や、回答欄に記載され た内容に基づいて検索を実施しても、判明できなかったもの、さらに「覚えていない」、「忘 れた」等の回答もあり、それらを除き、また、個別グループとして分析可能であるように、 回答人数が8 名9以上の38 ブランド 966 名のデータを抽出した。これら 38 ブランドには、 表1 第 1 想起に挙げられた FB ページの業種一覧 業種 人数 業種 人数 情報・通信 330 官公庁・団体 38 食品・飲料 324 教育・医療サービス・宗教 34 交通・レジャー 305 金融・保険 17 流通・小売業 299 不動産・住宅設備 15 自動車・関連品 211 家庭用品 14 ファッション・アクセサリー 125 エネルギー・素材・機械 13 外食・各種サービス 108 嗜好品 3 趣味・スポーツ用品 103 薬品・医療用品 3 化粧品・トイレタリー 101 その他 46 精密機器・事務用品 70 特定できないもの 90 出版 48 不明 132 家電・AV 機器 43 合計 2,472 (注)「その他」は企業ブランドあるいは製品ブランド以外の個人名など、「特定できないもの」は回答欄 に記載された内容に基づいて検索を実施したが、判明できなかったもの、「不明」は覚えていない、忘れ た等の回答があったものである。 (出所)筆者作成。
表1 に記載した 100 名以上回答のあった上位の業種がすべて網羅されている。そこで本研 究では、個人レベルと集団レベルの効果の違いを同時に分析可能なマルチレベルモデル、 具体的には階層線形モデルを用い、38 ブランドの FB ページに対する消費者のリレーショ ンシップとロイヤルティ形成に対する効果を検証する。 次に、分析に用いる項目について記載する。表3 と表 4 は調査に用いた質問項目の一覧 である。各項目とも7 段階のリッカート尺度によって測定している。いずれの項目も竹内 (2018)を基本的には踏襲しているが、それ以前に実施された先行研究名も併記している。 7. 分析方法と結果 各独立変数と従属変数は、それぞれ複数項目から構成されるため、まず因子分析を行い、 尺度の信頼性について検討して妥当性を確認した上で、尺度得点化している。因子数の抽 出に際しては、設定した仮説と近い因子構造を抽出するため、ガットマン基準(Guttman, 1954)のみならず、堀(2005)による MAP と対角 SMC 平行分析の挟み込み法も併用し て、因子数を精査している。なお、結果の詳細は紙幅の関係で省略する。 レベル2 で用いる平均年齢は、38 グループそれぞれの FB ページを回答した人の平均値 を用いている。男女比率については男性0、女性 1 として算出した。人気ランキングは、 企業ソーシャル・パワーランキング12に基づいて、1 位~100 位までを得点化(100 点~1 表2 第 1 想起に挙げられたブランド名と人数 ブランド名 人数 ブランド名 人数 ブランド名 人数 サントリー 74 ホンダ 25 セブン・イレブン 10 コカ・コーラ 50 マツダ 12 ファミリーマート 8 キリン 37 スバル 12 イオン 8 アサヒ 30 ナイキ 18 楽天 44 スターバックス 23 アディダス 11 Amazon 34 マクドナルド 10 クラシル 25 Yahoo! 9 明治 8 デリッシュキッチン 17 ユニクロ 52 資生堂 22 クックパッド 8 無印良品 11 花王 10 C Channel 14 ディズニー 27 ソニー 30 au 32 ユニバーサル・スタジオ 8 パナソニック 30 ドコモ 28 ANA 46 トヨタ 70 ソフトバンク 24 JAL 37 日産 41 ローソン 11 合計 966 (出所)筆者作成。
点)し、100 位以下を 0 点とした。表 5 は記述統計量である。階層線形モデルでは、レベ ル1 の変数に対して集団平均中心化を行うことが推奨されている(清水, 2014)ので、集団
表3 レベル 1 で用いる変数名と質問内容の一覧
変数名 質問内容 出典
信頼
このFB ページは信頼できる。 Aurier and Séré de Lanauze(2012)、
Habibi et al.(2014)、Hur et al.(2011)、 Kang et al.(2014)、Kang et al.(2015)、 竹内(2018)
このFB ページは信頼できる情報を提供してい
る。
Hung, Li, and Tse(2011)、Kang et al. (2014)、Kang et al.(2015)、Lin and Lu
(2011)、竹内(2018)
このFB ページは正直だ。 Habibi et al.(2014)、Hur et al.(2011)、
竹内(2018)
このFB ページは約束を守っている。 Kang et al.(2014)、Kang et al.(2015)、
竹内(2018)
相互作用
他のメンバーと情報や意見を交換したい。 Hur et al.(2011)、Kim et al.(2008)、
竹内(2018)
このFB ページの他のメンバーを支援すること
ができる。
Kuo and Feng(2013)、竹内(2018)
このFB ページの投稿にすぐに対応することが できる。 コミットメ ント このFB ページに置き換えることができるサイ トを見つけるには長い時間がかかるだろう10。
Zhou et al.(2012)、Zhang et al.(2013)、 Zheng et al.(2015)、竹内(2018) このFB ページが利用できなくなったら、損失 を感じるだろう。 このFB ページとの関係は重要だ。 自分の生活の一部として、このFB ページを感 じる。 推奨意図 これからも他の人にこのFB ページをお勧めし たい。
Park and Kim(2014)、竹内(2018)
これからもこのFB ページについて良い評判を 広げたい。 これからも友人にこのFB ページのことを話し たい。 友人や親戚がFB ページを探していれば、この FB ページをお勧めする。
Algesheimer et al.(2005)、Lin and Lu
(2011)、竹内(2018)
平均中心化を、また、レベル2 の変数は全体平均で中心化をして投入した。分析には SPSS PASW Statistics18.0、Scientific Software International 社の HLM7.0(以下、HLM)を使用した。
まずデータの階層性の有無について判断を行う。清水(2014)によると、明確な基準は ないが、いくつかの説があり、①級内相関係数(ICC)13が有意、②ICC が 0.1(0.05 とい う主張もある)以上、③デザインエフェクト(DE)14が2 以上の場合等が基準とされる。 Null モデルの ICC を見ると、0.033 と低く(表 8)、DE も 1.856 と 2 以上となっていないた め、積極的にデータに階層性があるとは断言できない。したがって、本分析データの場合、 グループ数が少数の集団であればマルチレベルモデルではなく、多母集団分析等を用いる ほうが適切であるが、本データは前述の通り、38 グループという多数の集団から構成され ている。また、マルチレベルモデルがマーケティング分野の研究にも適用できるかどうか を試みるという目的を持っているため、階層線形モデルに当てはめて分析を進めることと する。結果は表6 に示す通りである。 表4 レベル 2 で用いる変数名と質問内容の一覧 変数名 質問内容 出典 満足度11 このFB ページで提供されている情報に満足して いる。
Steinmann et al.(2015)、Casaló et al. (2010)、竹内(2018)
このFB ページに全体的に満足している。 Sung et al.(2010)、Steinmann et al.
(2015)、De Almeida, et al.(2014)、竹
内(2018)
このFB ページへの参加によっていくつかの利点
を得られる。
社会的動機
友達を見つけることができる。 Park and Kim(2014)、Jung, Kim and
Kim(2014)、竹内(2018)
他のメンバーとの関係を強化するのに役立つ。 Park and Kim(2014)、Kuo and Feng
(2013)、竹内(2018)
このFB ページへの参加を通してソーシャルネッ
トワークを広げることができる。
情報探索 動機
適切で詳細なレベルの情報を提供してくれる。 Park and Kim(2014)、竹内(2018)
特定のサービスやサービスの利用に関する知識を 向上することができる。
サービスの利用に関連する問題を解決したり、理 解を高めるのに役立つ。
提供される情報は新しくて、役に立つ。 Park and Kim(2014)、Jung, Kim and
Kim(2014)、竹内(2018)
快楽的動機
このFB ページは内容が楽しい。 Sung, Kim, Kwon, and Moon(2010)、
Kuo and Feng(2013)、竹内(2015)、
竹内(2016)、竹内(2018)
このFB ページを読むとリラックスできる。
このFB ページは退屈なときに時間を過ごすこと
ができる。 (出所)筆者作成。
Kreft and De Leeuw(1998)によると、HLM で推定した結果は通常の推定結果と、頑健 な標準誤差に基づく推定結果の2 種類が出力されるが、マルチレベルモデルの前提(グルー プごとの分散の等質性等)が満たされない場合にも、頑健な標準誤差を出すという点で後 者を参照するとよいと言われている。そこで本研究でも、すべてその数値で記載している。 またHLM では、推定方法として制限つきの最尤法と最尤法の 2 種類が用意されているが、 制限つき最尤法では尤度を用いて推定できるのは変量効果の分散成分のみであり、固定効 果について尤度比検定を行うことはできないこと、また、モデル選択において最尤法のほ うがより柔軟である(清水, 2014)ため、本分析では最尤法で推定している。 モデル1 では、信頼(0.299)、相互作用(0.326)、コミットメント(0.337)の 3 変数と も有意(0.1%水準)であった。Null モデルと比較すると、逸脱度は 1127.64 と大幅に減少 し、尤度比検定を行った結果、有意にモデルが改善されている。ただし、モデル1 では、 切片のみに変量効果(u0j)を仮定し、信頼、相互作用、コミットメントについては仮定し ていない。FB ページという集団レベルの影響の有無について検討するためには、これら 3 つの独立変数についても変量効果を仮定したモデル2 と比較する必要がある。表 6 に記載 した通り、モデル2 はモデル 1 よりも逸脱度が有意に減少した(χ2=30.53、0.1%水準で有 意)。そこで、より適合度の高いモデル2 を、以降の第 2 水準の変数を追加したモデルと比 較する基準モデルとする。 信頼(β1)の切片(γ10)の標準誤差において、モデル1 では、通常の推定結果と頑健な 標準誤差に基づく推定結果との間に乖離が見られたが、モデル2 では、その違いがほぼ消 失していた。この違いは、集団レベル、すなわち、レベル2 の誤差を固定効果とするか、 変動効果を仮定するかによって生起したと言える。また、上述の通り、モデル2 はモデル 表5 記述統計量 最小値 最大値 平均値 標準偏差 N 信頼 1 7 5.05 1.02 966 相互作用 1 7 4.12 1.31 966 コミットメント 1 7 4.05 1.49 966 推奨意図 1 7 4.36 1.30 966 平均年齢 28.29 46.65 39.46 4.75 38 男女比率 0.03 1.00 0.47 0.27 38 ランキング 0 96 23.74 25.9 38 満足度 4.63 6.04 5.09 0.31 38 社会的動機 3.33 4.92 4.04 0.42 38 情報探索動機 4.36 6.13 5.03 0.36 38 快楽的動機 4.38 5.88 5.02 0.35 38 (出所)筆者作成。
表 6 分析結果 Null モデル 1 :固定効果のみ モデル 2 :変動効果あり モデル 3-1 :年齢・男女比率 モデル 3-2 :ランキング モデル 3-3 :満足度 モデル 3-4-1 :動機 3 変数 (参考)モデル 3-4-2 :動機 3 変数切片モデル レベル 1 (個人レベル) 切片( γ00 ) 4.378*** 4.403*** 4.409*** 4.409*** 4.407*** 4.419*** 4.414*** 4.417*** 信頼( γ10 ) 0.299*** 0.328*** 0.328*** 0.327*** 0.326*** 0.317*** 0.316*** 相互作用( γ20 ) 0.326*** 0.302*** 0.302*** 0.306*** 0.299*** 0.299*** 0.306*** コミットメント( γ30 ) 0.337*** 0.332*** 0.332*** 0.335*** 0.334*** 0.342*** 0.340*** レベル 2 (集団レベル) 切片 AGE ( γ01 ) −0.024 † SEX ( γ02 ) 0.123 信頼 AGE ( γ11 ) −0.004 SEX ( γ12 ) 0.219 相互作用 AGE ( γ21 ) 0.006 SEX ( γ22 ) −0.042 コミットメント AGE ( γ31 ) 0.003 SEX ( γ32 ) −0.087 切片 RANK ( γ01 ) 0.000 信頼 RANK ( γ11 ) 0.001 相互作用 RANK ( γ21 ) −0.003* コミットメント RANK ( γ31 ) 0.003* 切片 SA T ( γ01 ) 1.1 14*** 信頼 SA T ( γ11 ) 0.344*** 相互作用 SA T ( γ21 ) −0.257*** コミットメント SA T ( γ31 ) − 0.082 切片 SOC ( γ01 ) 0.277*** 0.298*** INF ( γ02 ) 0.481*** 0.522*** HED ( γ03 ) 0.407*** 0.239*** 信頼 SOC ( γ11 ) 0.068 INF ( γ12 ) −0.174 HED ( γ13 ) 0.433*** 相互作用 SOC ( γ21 ) 0.039 INF ( γ22 ) −0.203 † HED ( γ23 ) −0.098 コミットメント SOC ( γ31 ) 0.075 INF ( γ32 ) 0.154 HED ( γ33 ) −0.216* ICC 0.033 逸脱度 3236.14 2108.50 2077.97 2070.39 2070.36 2030.96 1999.04 2019.81 χ 2値 1127.64*** 30.53*** 7.58 7.60 47.01*** 20.77*** 58.16*** 決定係数 0.013 0.705 0.718 0.719 0.720 0.724 0.728 0.722 自由度修正済み決定係数 0.010 0.703 0.713 0.712 0.714 0.719 0.720 0.716 (注) *** は 0.1 %水準、 ** は 1 %水準、 * は 5 %水準、†は 10 %水準を意味している。また、モデル 3-1 ~ 3-3 、 3-4-2 はモデル 2 と、モデル 3-4-1 はモデル 3-4-2 と χ 2検定を行った。 (出所)筆者作成。
1 より有意に改善されている。したがって、集団レベルの変動を加味したほうが説明力の 高いモデルになると結論づけることができ、仮説1「個人レベルの効果に関して、FB ペー ジ間の異質性を考慮せずに分析を行うよりも、FB ページ間の違いを加味したモデルのほう が、独立変数(信頼、相互作用、コミットメント)による従属変数(推奨意図)に対する 説明力が高い」は支持された。 次に、第2 水準の変数を追加したモデルについて言及する。モデル 3-1 は、デモグラ フィック変数という観点から年齢と性別に着目し、モデル3-2 は FB ページの人気ランキ ングを変数として投入したモデルである。モデル3-1 もモデル 3-2 も逸脱度を見ると、モ デル2 よりも若干当てはまりの悪いモデルとなり、尤度比検定の結果、有意差がないこと が明らかになった。したがって、第2 水準の変数として、年齢や男女比率、人気ランキン グを用いることは適切とは言えず、仮説3-1、仮説 3-2 は棄却された。また、これらの変数 を第2 水準の変数として組み込むというケースについては、仮説 2「個人レベルの効果の みならず、集団レベルの効果を扱うことにより、モデルの説明力はさらに高まる」も棄却 されることになる。 モデル3-3 は、FB ページ間の満足度の変動に着目したモデルである。表 6 に示した通 り、第2 水準の変数である満足度との交互作用項の切片(γ01)1.114、信頼(γ11)0.344、 相互作用(γ21)−0.257 はいずれも有意(0.1%水準)であったが、コミットメントの推定値 (γ31)は有意ではなかった。したがって、仮説3-3「満足度は有意な正の影響を与える」 は、切片と信頼に関して支持された。また、尤度比検定の結果、モデル2 と比べてモデル 適合度は高く、仮説2 は満足度に関しては支持された。ここで、満足度の調整効果15、す なわち、相互作用(γ21)がマイナスで有意である点について言及しておく。相互作用(独 立変数)には、推奨意図(従属変数)に及ぼす影響の方向性・程度を変化させる調整効果 が認められ、その調整を生む変数(モデレータ)である満足度がマイナス、つまり、相互 作用は推奨意図を高めるが、FB ページに対する満足度によりその影響が弱められることを 意味している。他のメンバーとの情報・意見交換、他のメンバーへの支援、投稿への迅速 な対応で構成される相互作用は、高関与の場合なら比較的容易であるが、そうでない場合、 面倒に感じ、満足度が高いほど、相互作用を負担に感じると解釈することが可能である。 FB ページの特徴はオープンアクセスであり、ブランドページへの参加も離脱も自由で、労 力もブランドへの高関与も、コミュニティへの義務感も必要がない。そうした意味で相互 作用と満足度の交互作用はマイナスになったと考えられる。 モデル3-4-1 では、参加動機を社会的動機、情報探索動機、快楽的動機の 3 要因に分類 し、その影響を詳細に検討した。ここでは、第2 水準の変数のうち、切片のみに変量効果 を仮定した切片モデル(モデル3-4-2)とモデル間比較を行った。表 6 に示した通り、逸脱 度は1999.04 であり、χ2検定の結果、モデル3-4-1 の適合度がより高いことが明らかになっ た。切片の変動に対して、社会的動機、情報探索動機、快楽的動機の3 変数ともプラスの 影響を及ぼしている。また、信頼と快楽的動機(プラスの影響)、コミットメントと快楽的 動機には交互作用(マイナスの影響)が認められた。コミットメントは推奨意図を高める が、FB ページに対する快楽的動機によりその影響が弱まることを意味している。ここで、 マイナスとなったコミットメントと快楽的動機の交互作用、つまり、調整効果については、 モデル3-3 の相互作用に対する満足度の影響と同様の解釈が可能である。楽しめて、リラッ
クスでき、退屈なときに時間を過ごすといった快楽的動機は、FB ページへの積極的な関わ りを要求するコミットメントとは逆に作用するのであろう。 次に、モデル3-4-1 を用いて、下位検定として単純効果を検討する。交互作用が有意で 調整効果が認められた①信頼×快楽的動機、②コミットメント×快楽的動機に着目する。 快楽的動機は2 値の変数ではなく、連続量である。清水(2014)によると、連続量の場合、 平均値から1SD 高い点と低い点について、それぞれ回帰係数を推定するという単純効果の 推定方法がよく使用されている。本研究においても、快楽的動機±1SD の 2 群に分け、 Preacher が提供する単純効果分析用のプログラム16を用いて分析を行った(Preacher, Curran, & Bauer, 2006)。 分 析 の 結 果 、 信 頼 に 対 す る 快 楽 的 動 機 の 単 純 効 果 に つ い て は 、 低 群 の 切 片 4.272 (SE=0.0488)、傾き 0.165(同 0.0661)、高群の切片 4.557(同 0.0519)、傾き 0.469(同 0.0682)であり、低群傾きは 1%水準、それ以外は 0.1%水準で有意であることが確認でき た(図2)。したがって、信頼の単純傾斜は有意に 0 とは異なると言える。また、信頼帯17 についてもあわせて検討した。図2 右図では横軸に快楽的動機、縦軸に単純傾斜をとり、 単純傾斜の信頼区間をプロットしている。信頼の推奨意図への影響は快楽的動機に依存す るが、快楽的動機が上がると単純傾斜(信頼の影響)が正の値をとる。一方、コミットメ ントに対する単純効果は、低群の切片4.272(同 0.0488)、傾き 0.417(同 0.0467)、高群の 切片4.557(同 0.0519)、傾き 0.266(同 0.0497)であり、0.1%水準で有意である(図 3)。 図3 右図では、コミットメントの推奨意図への影響は快楽的動機に依存するが、信頼とは 逆に、快楽的動機が上がると単純傾斜(コミットメントの影響)が負の値をとることがわ かる。 仮説3-4 では「参加動機は有意な正の影響を与える」と仮定した。上記の結果の通り、 快楽的動機については正負含め有意な影響が認められたが、情報探索動機、社会的動機に ついては有意な結果を見出せず、仮説3-4 は一部支持された。また、尤度比検定の結果、 第2 水準の傾きに 3 変数を組み込まない切片モデル(モデル 3-4-2)と比べてモデル適合度 は高く、仮説2 は支持された。表 7 は、仮説検証の結果の一覧である。 図2 信頼に対する快楽的動機の下位検定の結果(単純傾斜分析と信頼帯) (出所)筆者作成。
図3 コミットメントに対する快楽的動機の下位検定の結果(単純傾斜分析と信頼帯) (出所)筆者作成。 表7 仮説検証の結果一覧 仮説番号 仮説内容 検定結果 H1 個人レベルの効果に関して、ブランドページ間の異質性を考慮せず に分析を行うよりも、ブランドページ間の違いを加味したモデルの ほうが、独立変数(信頼、相互作用、コミットメント)による従属 変数(推奨意図)に対する説明力が高い。 支持 H2 個人レベルの効果のみならず、集団レベルの効果を扱うことにより、 モデルの説明力はさらに高まる。 年齢・男女比率 棄却 人気ランキング 棄却 満足度 支持 参加動機 支持 第2 水準の変数に関する仮説 H3-1 参加者の平均年齢は有意な負の影響を与える。 棄却 男女比率は有意な正の影響を与える。 H3-2 FB ページの人気ランキングは有意な正の影響を与える。 棄却 H3-3 満足度は有意な正の影響を与える。 一部支持 H3-4 参加動機は有意な正の影響を与える。 参加動機①:社会的動機 棄却 参加動機②:情報取得動機 棄却 参加動機③:快楽的動機 一部支持 (出所)筆者作成。
8. まとめと今後の課題 企業は、統合マーケティング・コミュニケーション戦略の一環としてSNS を活用し、FB ページやTwitter のブランドページ等を自社のコミュニケーション活動のための新しい手段 として用いている。FB ページをはじめ、ブランドページは特定のブランドに対して興味を 持つ消費者が集まるネットワーク上のブランド・コミュニティである。そこに参加するメ ンバー同士で、あるいは、メンバーと企業・ブランド間で双方向のコミュニケーションが 可能な場であり、長期的なリレーションシップを形成するプラットフォームとなっている。 こうした点に着目して、リレーションシップやロイヤルティ形成に関する研究が国内外で 行われているが、これまでのブランドページに関する研究では、FB ページを展開している 企業が多数存在するにもかかわらず、少数のFB ページを調査対象にする、あるいは、そ れぞれのFB ページへの反応を集計して分析するというアプローチが採られてきた。そこ で本研究では、可能な限り多くのFB ページへの反応データをそのまま生かし、しかも、 それらのデータを集計して分析するのではなく、マルチレベル分析の1 つである階層線形 モデルを用いて、FB ページに対するリレーションシップによるロイヤルティ形成への影響 について分析可能かどうか、その適用可能性を検討した。 調査・分析の結果、得られた知見は以下の通りである。 (1) 調査の結果として得られた知見 男女・年代別に収集した計2,472 名分のデータを、電通の「日本の広告費」に記載され ている業種分類基準に従って業種別に分類したところ、情報・通信(330 名)、食品・飲料 (324 名)、交通・レジャー(305 名)、流通・小売業(299 名)、自動車・関連品(211 名)、 ファッション・アクセサリー(125 名)、外食・各種サービス(108 名)、趣味・スポーツ用 品(103 名)、化粧品・トイレタリー(101 名)(以上 9 業種)のほか、20 業種にわたり、 さまざまな企業のFB ページへの閲覧・参加状況を確認できた。回答人数が 8 名以上とい う基準で、階層線形モデルの分析に供するための企業を絞り込んだところ、38 ブランド 966 名のデータが抽出された。これら 38 ブランドには、100 名以上回答のあった 9 業種が すべて網羅されている。消費者の第1 想起によるデータを収集すると、日ごろ閲覧・参加 しているFB ページの評価を得ることができるが、その内容は多岐にわたることが判明し た。したがって、これらを集計済データとして扱うよりも、集団レベルの特徴を明確化で きる分析手法を用いる必要があると言える。 (2) 階層線形モデルによる分析の結果として得られた知見 ・データの階層性の有無に対する明確な基準はないとも言われているが、まず階層性を 確認した。その結果、ICC(級内相関係数)、DE(デザインエフェクト)ともに低く、 積極的にデータに階層性があるとは断言できなかった。しかしながら、先行研究の実 証分析ではこうした場合も分析を実施しているため、本研究でも仮説通り分析を進めた。 ・集団レベルの誤差を固定効果としたモデル1 と、変量効果としたモデル 2 を比較した 結果、モデル2 の適合度が有意に高く、「個人レベルの効果に関して、ブランドページ 間の異質性を考慮せずに分析を行うよりも、ブランドページ間の違いを加味したモデ ルのほうが、独立変数(信頼、相互作用、コミットメント)による従属変数(推奨意 図)に対する説明力が高い」という仮説1 は支持された。
・レベル2、すなわち、集団レベルの効果を検討する変数として、年齢・男女比率、人 気ランキング、満足度、参加動機(社会的動機、情報探索動機、快楽的動機)を用い て分析した。その結果、年齢・男女比率、人気ランキングについては有意な効果が認 められず、仮説2「個人レベルの効果のみならず、集団レベルの効果を扱うことによ り、モデルの説明力はさらに高まる」は支持されなかった。しかしながら、満足度に おいては、切片と信頼との交互作用があり、プラス効果があることが明らかになった。 一方、相互作用に対して満足度はマイナス効果、つまり、調整効果をもたらしている ことが判明した。よって、満足度については仮説2 は支持された。参加動機において は、切片の変動に対して、社会的動機、情報探索動機、快楽的動機の3 変数ともプラ スの影響を及ぼしている。また、信頼と快楽的動機(プラスの影響)、コミットメント と快楽的動機(マイナスの影響)には交互作用が認められた。よって、参加動機につ いては仮説2 は支持された。第 2 水準の変数に関する仮説(H3-1~H3-4)について は、棄却、一部支持という結果になり、第2 水準の変数として取り上げる項目につい て、今後さらに検討する必要がある。 本研究は、消費者が実にさまざまなFB ページを見て、情報を取得したり、交流を楽し んだりしているという実態を捉え、特定のFB ページに限定せずに分析する手法を探索し たいという問題意識から、一つの試みとして階層線形モデルによる分析を行った。しかし ながら、分析を行う中でいくつかの問題点や課題を発見することができた。そこで最後に、 今後の課題について言及したい。 1 点目は、集団レベルの特徴を明確に表す変数についてである。本分析では、デモグラ フィック変数として年齢や男女比率を取り上げたが、2 変数とも有意な結果を得られなかっ た。たとえば、自動車のFB ページでは男性比率が高く、料理やレシピ、美容関係の FB ページでは圧倒的に女性比率が高いが、本分析ではその違いを見出せなかった。変数の扱 いの更なる工夫が必要なのか、あるいは、他の変数によって差異が説明できるのか等、検 討の余地が残されている。外部データである人気ランキングについても同様である。また、 満足度や参加動機については仮説を支持する結果も得られたが、必ずしもリレーションシッ プとロイヤルティ形成への影響を十分に説明できる結果とは言い難い。したがって、集団 レベルの変数について、今後の課題として精査する必要がある。 2 点目の課題は、1 つ目の課題と関連する。調査時点で、回答者が想起する FB ページを 自由に回答するという形式を採用した。その結果、1 名しか回答のない FB ページや、回答 内容が不正確なものも散見された。本研究では、一つの試みとしてこのようなデータ収集 を行うことによって、FB ページを活用している消費者の実態をある程度垣間見ることがで きた。しかしながら、研究という視点に立つと、対象とするFB ページを何らかの基準で 絞り、また、集団レベルの違いを的確に表す変数をあらかじめ想定した上で効果測定する ことも今後の課題として挙げられる。 オープンアクセスという特徴のために、複数のFB ページに参加している人も多く存在 する。本調査においても、最大10 個の FB ページまで回答を得ている。3 つ目の課題とし て、複数参加の場合についての検討が挙げられる。これに関連するのが4 つ目の課題であ る。多数のFB ページに参加しているとタイムラインで送信されるメッセージやコンテン ツに対して苛立ちといったネガティブな感情も生まれると考えられる。楽しいから、ある